(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コア体は、プレス加工で形成された1枚の金属板で構成され、前記被検出体の通過方向がその厚み方向となるように配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のコイン状被検出体識別装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(コイン状被検出体識別装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるコイン状被検出体識別装置1の斜視図である。
図2は、
図1に示すコイン状被検出体識別装置1からケース体3を取り外した状態の斜視図である。
【0019】
本形態のコイン状被検出体識別装置1は、コイン状の被検出体であるメダル2の真贋の識別、および、真のメダル2の良不良(良品であるのかそれとも不良品であるのか、すなわち、真のメダル2に摩耗や変形等が生じて不良品になっているのか否か)の識別をするための装置であり、スロットマシン(図示省略)に搭載されて使用される。すなわち、本形態のコイン状被検出体識別装置1は、スロットマシンのメダル投入口から投入されたメダル2の真贋等を識別するための装置である。したがって、以下では、本形態のコイン状被検出体識別装置1を「メダル識別装置1」とする。
【0020】
メダル識別装置1は、
図1、
図2に示すように、ケース体3と、ケース体3に収容される磁気センサ4とを備えている。また、メダル識別装置1の内部には、メダル2が通過する通過路5が形成されている。本形態のメダル識別装置1は、複数種類のメダル2の真贋および良不良を識別することが可能になっている。メダル2は、金属材料で形成されている。また、メダル2は、円板状に形成されている。
【0021】
ケース体3は、直方体の箱状に形成されている。ケース体3の1つの側面(
図1の上面)には、メダル2が通過するスリット状の通過孔3aが形成されている。通過孔3aが形成される側面に平行な側面(
図1の下面)にも、メダル2が通過する通過孔が形成されている。この通過孔および通過孔3aは、通過路5に繋がっている。なお、ケース体3には、通過路3aへメダル2を案内するためのガイド部材(図示省略)が固定されている。
【0022】
磁気センサ4は、励磁用コイル8および検出用コイル9、10と、励磁用コイル8および検出用コイル9、10が巻回されるコア体としての環状コア11とを備えている。環状コア11は、磁性材料によって形成されている。たとえば、環状コア11は、フェライト、アモルファス、パーマロイ等の鉄系の磁性材料によって形成されている。また、環状コア11は、平板状に形成されている。以下、磁気センサ4の具体的な構成について説明する。
【0023】
(磁気センサの構成)
図3は、
図2に示す状態から励磁用コイル8、検出用コイル9およびボビン20、21を取り外した状態の斜視図である。
図4は、
図2に示す環状コア11の斜視図である。
図5は、
図2に示す環状コア11の平面図である。
【0024】
以下の説明では、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とする。また、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。さらに、X1方向側を「右」側、X2方向側を「左」側、Y1方向側を「前」側、Y2方向側を「後(後ろ)」側とする。本形態では、環状コア11の厚み方向と上下方向とが一致するように、磁気センサ4が配置されている。また、本形態では、メダル2は、環状コア11の厚み方向で通過路5を通過する。すなわち、上下方向は、通過路5を通過するメダル2の通過方向であり、環状コア11は、メダル2の通過方向がその厚み方向となるように配置されている。また、前後方向は、通過路5を通過するメダル2の厚み方向である。
【0025】
上述のように、磁気センサ4は、励磁用コイル8および検出用コイル9、10と、励磁用コイル8および検出用コイル9、10が巻回される環状コア11とを備えている。
【0026】
環状コア11は、環状に形成されている。具体的には、環状コア11は、左右方向に細長い略四角環状に形成されている。この環状コア11は、環状コア11の前側部分を構成するとともに左右方向と平行に配置される略直線状の第1コア12と、環状コア11の後ろ側部分を構成するとともに第1コア12と平行に配置される略直線状の第2コア13と、第1コア12の右端と第2コア13の右端とを繋ぐとともに前後方向と平行に配置される直線状の第1連結コア14と、第1コア12の左端と第2コア13の左端とを繋ぐとともに第1連結コア14と平行に配置される直線状の第2連結コア15とから構成されている。本形態の環状コア11は、プレスの打ち抜き加工によって形成されており、第1コア12と第2コア13と第1連結コア14と第2連結コア15とは一体で形成されている。すなわち、環状コア11は、プレス加工で形成された1枚の金属板によって構成されている。
【0027】
第1コア12と第2コア13とは、同形状に形成されており、第1連結コア14と第2連結コア15とは、同形状に形成されている。また、環状コア11は、
図5に示すように、前後方向における環状コア11の中心位置を通過する左右方向に平行な中心線CL1に対して線対称な形状に形成されるとともに、左右方向における環状コア11の中心位置を通過する前後方向に平行な中心線CL2に対して線対称な形状に形成されている。
【0028】
第1コア12には、第2コア13に向かって(すなわち、後ろ側に向かって)突出する凸部12a、12b、12cが形成されている。凸部12a〜12cは、長方形状に形成されている。凸部12a〜12cの後端面(すなわち、先端面)は、左右方向と平行になっており、凸部12a〜12cの左右の端面は、前後方向と平行になっている。また、凸部12a〜12cの後端面は、前後方向に直交する同一の平面上に配置されている。凸部12aは、右端側に配置され、凸部12bは、左端側に配置され、凸部12cは、凸部12aと凸部12bとの間に配置されている。具体的には、凸部12cは、左右方向における凸部12cの中心と第1コア12の中心とが一致するように配置され、凸部12aと凸部12bとは、中心線CL2を対称軸とする線対称の位置に配置されている。
【0029】
左右方向において、凸部12aと第1連結コア14との間には隙間が形成され、凸部12bと第2連結コア15との間には隙間が形成されている。また、左右方向において、凸部12aと凸部12cとの間には隙間が形成され、凸部12bと凸部12cとの間には隙間が形成されている。第1コア12は、中心線CL2に対して線対称な形状に形成されており、凸部12aと第1連結コア14との隙間と、凸部12bと第2連結コア15との隙間とは同じ大きさとなっており、凸部12aと凸部12cとの隙間と、凸部12bと凸部12cとの隙間とは同じ大きさになっている。
【0030】
凸部12aと凸部12cとの間、および、凸部12bと凸部12cとの間の第1コア12の後端面は、凸部12aと第1連結コア14との間、および、凸部12bと第2連結コア15との間の第1コア12の後端面よりも前側に配置されている。
【0031】
上述のように、第2コア13は、第1コア12と同形状に形成されており、中心軸CL1を対称軸とする線対称の位置に配置されている。そのため、第2コア13には、第1コア12に向かって(すなわち、前側に向かって)突出する凸部13a、13b、13cが形成されている。凸部13a〜13cは、凸部12a〜12cと同形状に形成されており、凸部13a〜13cの前端面(すなわち、先端面)は、前後方向に直交する同一の平面上に配置されている。
【0032】
左右方向において、凸部13aは、凸部12aと同じ位置に配置され、凸部13bは、凸部12bと同じ位置に配置され、凸部13cは、凸部12cと同じ位置に配置されている。第1コア12と同様に、第2コア13は、中心線CL2に対して線対称な形状に形成されている。
【0033】
また、左右方向において、凸部13aと第1連結コア14との間には、隙間が形成され、凸部13bと第2連結コア15との間には、凸部13aと第1連結コア14との隙間と同じ大きさの隙間が形成されている。また、左右方向において、凸部13aと凸部13cとの間には、隙間が形成され、凸部13bと凸部13cとの間には、凸部13aと凸部13cとの隙間と同じ大きさの隙間が形成されている。第1コア12と同様に、凸部13aと凸部13cとの間、および、凸部13bと凸部13cとの間の第2コア13の後端面は、凸部13aと第1連結コア14との間、および、凸部13bと第2連結コア15との間の第2コア13の後端面よりも後ろ側に配置されている。
【0034】
前後方向における凸部12a〜12cと凸部13a〜13cとの間は、通過路5となっている。通過路5は、左右方向に細長い長方形状に形成されている。上述のように、ケース体3には、通過孔3aにメダル2を案内するためのガイド部材が固定されている。このガイド部材は、凸部12a、13aの右端面と凸部12b、13bの左端面との間でメダル2が通過するように、メダル2を通過孔3aに案内している。すなわち、凸部12a、13aの右端面と凸部12b、13bの左端面との左右方向の距離L1(
図5参照)は、通過路5の左右方向の幅と等しくなっている。また、通過路5の左右方向の幅(すなわち、距離L1)は、メダル2の外径よりも大きくなっている。具体的には、通過路5の左右方向の幅は、スロットマシンのメダル投入口から投入されることが想定されるメダル2であって、最も大きな外径を有するメダル2の外径よりも大きくなっている。
【0035】
また、凸部12c、13cは、左右方向における通過路5のどの位置をメダル2が通過しても、前後方向から見たときに、凸部12c、13cの全体がメダル2と重なるように形成され、また、配置されている。すなわち、凸部12a、13aの右端面または凸部12b、13bの左端面と、メダル2の外周端とが一致するように、メダル2が通過路5を通過したとしても、前後方向から見たときに、凸部12c、13cの全体がメダル2と重なるように、凸部12c、13cが形成され配置されている。
【0036】
励磁用コイル8は、凸部12a〜12cに巻回されている。具体的には、
図2に示すように、凸部12a〜12cの上下両面、凸部12aの右端面および凸部12bの左端面を覆う略四角筒状のボビン20を介して、励磁用コイル8が凸部12a〜12cに巻回されている。すなわち、凸部12a〜12cの上下両面、凸部12aの右端面および凸部12bの左端面を覆うように、ボビン20を介して、励磁用コイル8が凸部12a〜12cに巻回されている。
【0037】
検出用コイル9は、凸部13a〜13cに巻回されている。具体的には、
図2に示すように、凸部13a〜13cの上下両面、凸部13aの右端面および凸部13bの左端面を覆う略四角筒状のボビン21を介して、検出用コイル9が凸部13a〜13cに巻回されている。すなわち、凸部13a〜13cの上下両面、凸部13aの右端面および凸部13bの左端面を覆うように、ボビン21を介して、検出用コイル9が凸部13a〜13cに巻回されている。
【0038】
検出用コイル10は、凸部13cに巻回されている。具体的には、
図3に示すように、凸部13cの上下両面、右端面および左端面を覆う略四角筒状のボビン22を介して、検出用コイル10が凸部13cに巻回されている。すなわち、凸部13cの上下両面、右端面および左端面を覆うように、ボビン22を介して、検出用コイル10が凸部13cに巻回されている。
【0039】
(メダル識別装置の回路構成)
図6は、
図1に示すメダル識別装置1の回路ブロック図である。
図7は、
図2に示す環状コア11を1枚のメダル2が通過するときの状態を示す図である。
図8は、
図2に示す環状コア11を1枚のメダル2が通過するときの検出用コイル9、10からの出力に基づいて生成されるコイル出力信号SG1、SG2を説明するための図である。
図9は、
図2に示す環状コア11を複数枚のメダル2が隙間なく連続で通過するときの状態を示す図である。
図10は、
図2に示す環状コア11を複数枚のメダル2が隙間なく連続で通過するときの検出用コイル9、10からの出力に基づいて生成されるコイル出力信号SG1、SG2を説明するための図である。
【0040】
図6に示すように、励磁用コイル8を構成する導線の一端には、交流電源25が接続され、励磁用コイル8を構成する導線の他端は接地されている。検出用コイル9を構成する導線の一端は、増幅回路26、整流回路27およびレベル調整回路28を介して、制御部としてのMPU(Micro Processing Unit)29に接続され、検出用コイル9を構成する導線の他端は接地されている。検出用コイル10を構成する導線の一端は、増幅回路31、整流回路32およびレベル調整回路33を介してMPU29に接続され、検出用コイル10を構成する導線の他端は接地されている。レベル調整回路28とMPU29との間には、コンパレータ35が並列に接続されている。
【0041】
磁気センサ4では、交流電源25から供給される電力によって励磁用コイル8が環状コア11の内周側に交流磁界を発生させている状態でメダル2が通過路5を通過すると、渦電流損失によって、環状コア11の内周側の交流磁界が変動する。環状コア11の内周側の交流磁界が変動すると、検出用コイル9からの出力および検出用コイル10からの出力が変動する。
【0042】
上述のように、検出用コイル9を構成する導線の一端は、増幅回路26、整流回路27およびレベル調整回路28を介して、MPU29に接続されており、検出用コイル9からの出力に基づいて生成されるアナログ状のコイル出力信号SG1がレベル調整回路28からMPU29へ入力される。同様に、検出用コイル10を構成する導線の一端は、増幅回路31、整流回路32およびレベル調整回路33を介してMPU29に接続されており、検出用コイル10からの出力に基づいて生成されるアナログ状のコイル出力信号SG2がレベル調整回路33からMPU29へ入力される。
【0043】
励磁用コイル8が交流磁界を発生させている状態でメダル2が通過路5を通過すると、メダル2に発生する渦電流によってメダル2を通過する磁束が減少するため、メダル2を通過する磁束の減少量をコイル出力信号SG1、SG2の信号レベルの変動として捉えることができる。本形態では、励磁用コイル8が交流磁界を発生させている状態でメダル2が通過路5を通過すると、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが高くなるように、メダル識別装置1の回路が構成されている。そのため、
図7に示すように1枚のメダル2が通過路5を通過すると(すなわち、磁気センサ4を構成する環状コア11を通過すると)、たとえば、
図8(A)に示すように信号レベルが変動するコイル出力信号SG1がMPU29へ入力され、
図8(B)に示すように信号レベルが変動するコイル出力信号SG2がMPU29へ入力される。
【0044】
また、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過する場合には、
図9に示すように、2枚のメダル2の境界部分が環状コア11を通過するときでも、前後方向から見たときに、環状コア11とメダル2との重なり部分が生じる。そのため、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過すると、たとえば、
図10(A)に示すように信号レベルが変動するコイル出力信号SG1がMPU29へ入力され、
図10(B)に示すように信号レベルが変動するコイル出力信号SG2がMPU29へ入力される。すなわち、環状コア11をメダル2が通過していないときの待機時のコイル出力信号SG1、SG2の信号レベルを待機レベルとすると、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過する場合には、2枚のメダル2の間において待機レベルまで信号レベルが低下する前に再び信号レベルが上昇していくコイル出力信号SG1、SG2がMPU29へ入力される。
【0045】
また、上述のように、凸部12a、13aの右端面と凸部12b、13bの左端面との左右方向の距離L1は、通過路5の左右方向の幅と等しくなっており、検出用コイル9は、凸部13a〜13cの上下両面、凸部13aの右端面および凸部13bの左端面を覆うように、ボビン21を介して凸部13a〜13cに巻回されている。そのため、検出用コイル9からの出力に基づくコイル出力信号SG1の信号レベルは、環状コア11を通過するメダル2の材質、厚みおよび外径の影響によって変動する。
【0046】
一方、凸部12c、13cは、凸部12a、13aと凸部12b、13bとの間に配置されるとともに、左右方向における通過路5のどの位置をメダル2が通過しても、前後方向から見たときに、凸部12c、13cの全体がメダル2と重なるように形成され配置されており、検出用コイル10は、凸部13cに巻回されている。そのため、検出用コイル10からの出力に基づくコイル出力信号SG2の信号レベルは、主として、環状コア11を通過するメダル2の材質および厚みの影響によって変動する。
【0047】
ここで、コイル出力信号SG1の信号レベルは、メダル識別装置1の周囲温度の変動等の影響によって変動することがある。本形態では、メダル識別装置1の周囲温度の変動等が生じても、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルがMPU29での測定可能範囲から外れてしまうのを防止するため、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが定期的に調整されている。具体的には、コイル出力信号SG1の信号レベルに基づいてMPU29から出力されレベル調整回路28に入力されるレベル調整信号に基づいて、レベル調整回路28がコイル出力信号SG1の待機レベルを定期的に調整し、コイル出力信号SG2の信号レベルに基づいてMPU29から出力されレベル調整回路33に入力されるレベル調整信号に基づいて、レベル調整回路33がコイル出力信号SG2の待機レベルを定期的に調整している。
【0048】
また、本形態では、MPU29は、コイル出力信号SG1の信号レベルが所定の閾値th以上となっているときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号値を取得する。具体的には、まず、コンパレータ35が、レベル調整回路28から入力されるコイル出力信号SG1の信号レベルと閾値thとを比較し、比較結果に基づくデジタル状の出力信号(比較出力信号)SG5をMPU29へ出力する。より具体的には、コンパレータ35は、コイル出力信号SG1の信号レベルが閾値th以上となっているときの信号レベルが「Hi」となり、コイル出力信号SG1の信号レベルが閾値th未満となっているときの信号レベルが「Lo」となる比較出力信号SG5を出力する。また、MPU29は、入力される比較出力信号SG5の信号レベルが「Hi」となっているときの範囲T内のコイル出力信号SG1、SG2の信号値を取得する。このように、コンパレータ35は、MPU29におけるコイル出力信号SG1、SG2の信号値の取得範囲(サンプリング範囲)を決めるための機能を果たしている。
【0049】
閾値thは、たとえば、
図9に示すように複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過する場合であっても、
図10(A)に示すように、複数枚のメダル2のそれぞれが環状コア11を通過するごとにコイル出力信号SG1の信号レベルが閾値thを横切るように設定されている。すなわち、隙間なく連続で環状コア11を通過する複数枚のメダル2のうちの1枚のメダル2の中心が環状コア11の中心を通過した後、次のメダル2の中心が環状コア11の中心を通過するまでの間に、コイル出力信号SG1の信号レベルのボトム値B1が閾値thよりも低くなるように、閾値thが設定されている。
【0050】
メダル2の種類によって、その材質、厚さおよび径が変わる。そのため、環状コア11を通過するメダル2の種類に応じて、メダル2が環状コア11を通過する際の渦電流損失が変わり、その結果、コイル出力信号SG1の信号レベルのピーク値P1、および、コイル出力信号SG2の信号レベルのピーク値P2が変わる。したがって、MPU29は、ピーク値P1とピーク値P2とに基づいて、環状コア11を通過するメダル2が、メダル識別装置1が搭載されるスロットマシンで使用されるべき真のメダルであるか否か等を識別する。具体的には、MPU29は、所定の上限値UL1と下限値LL1との間にピーク値P1があり、かつ、所定の上限値UL2と下限値LL2との間にピーク値P2がある場合に、環状コア11を通過するメダル2が真のメダルであったり、良品であると判断し、上限値UL1と下限値LL1との間からピーク値P1が外れていたり、上限値UL2と下限値LL2との間からピーク値P2が外れていたりする場合に、環状コア11を通過するメダル2が贋のメダルであったり、不良品であると判断する。
【0051】
なお、本形態のメダル識別装置1は、上述のように、複数種類のメダル2の真贋および良不良を識別することが可能になっている。そのため、MPU29では、上限値UL1および下限値LL1と、上限値UL2および下限値LL2との組合せが、複数種類のメダル2に応じて複数、設定されている。MPU29は、ある上限値UL1と下限値LL1との間にピーク値P1があり、かつ、この上限値UL1および下限値LL1と組み合わされる上限値UL2と下限値LL2との間にピーク値P2がある場合に、環状コア11を通過するメダル2が真のメダルであったり、良品であると判断する。
【0052】
(環状コアの厚み)
図11は、
図2に示す環状コア11の厚みとコイル出力信号SG1の信号レベルとの関係を説明するための図である。
図12、
図13は、
図1に示すメダル識別装置1において識別される複数種類のメダル2が複数枚隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG11〜SG16と環状コア11の厚みとの関係を説明するための図である。
【0053】
上述のように、閾値thは、
図9に示すように複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過する場合であっても、
図10(A)に示すように、複数枚のメダル2のそれぞれが環状コア11を通過するごとにコイル出力信号SG1の信号レベルのボトム値B1が閾値thよりも低くなるように設定されている。また、メダル識別装置1は、上述のように、複数種類のメダル2の真贋および良不良を識別することが可能になっているため、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちのどのメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過しても、複数枚のメダル2のそれぞれが環状コア11を通過するごとにコイル出力信号SG1のボトム値B1が閾値thよりも低くなるように閾値thが設定されている。
【0054】
上述のように、励磁用コイル8が交流磁界を発生させている状態でメダル2が通過路5を通過すると、メダル2に発生する渦電流によってメダル2を通過する磁束が減少するため、メダル2を通過する磁束の減少量をコイル出力信号SG1、SG2の信号レベルの変動として捉えることができる。メダル2に発生する単位体積当たりの渦電流損失をWeとし、メダル2が通過路5を通過する際の、前後方向から見たときの環状コア11とメダル2との重なり部分の左右方向の幅をL(
図7参照)とし、メダル2の電気抵抗率をρとし、励磁用コイル8によって凸部12a〜12cと凸部13a〜13cとの間に発生する磁束密度をBmとし、励磁用コイル8によって発生する交流磁界の周波数をfとすると、渦電流損失Weは、下式によって算出される。
We=(π
2L
2f
2Bm
2)/6ρ
すなわち、渦電流損失Weは、磁束密度Bmと周波数fとが一定であれば、理論的には、(L
2/ρ)に比例する。ただし、この渦電流損失Weは、単位体積当たりの損失であるため、渦電流損失Weに起因するコイル出力信号SG1、SG2の信号レベルの変動を考える場合には、メダル2の、磁束が通過する部分の体積を考慮する必要がある。したがって、環状コア11の厚み(上下方向の厚み)をhとし(
図7参照)、メダル2の、磁束が通過する部分の面積(すなわち、メダル2が通過路5を通過する際の、前後方向から見たときの環状コア11とメダル2との重なり部分の面積)をAとし(
図7、
図9参照)、メダル2の厚みをtとすると、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過する場合のコイル出力信号SG1、SG2の信号レベルは、以下の値に比例する。
(L
2/ρ)At=(L
2/ρ)Lht=L
3ht/ρ
そのため、環状コア11の厚みhが一定であれば、メダル2の外径が大きく、メダル2の厚みtが厚くかつ電気抵抗率ρが低いと、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過する場合のコイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが全体的に大きくなり、メダル2の外径が小さく、メダル2の厚みtが薄くかつ電気抵抗率ρが高いと、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過する場合のコイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが全体的に小さくなる。
【0055】
すなわち、環状コア11の厚みhが一定であれば、メダル2の外径が大きく、メダル2の厚みtが厚くかつ電気抵抗率ρが低いと、複数枚のこのメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のピーク値P1が高くなり、メダル2の外径が小さく、メダル2の厚みtが薄くかつ電気抵抗率ρが高いと、複数枚のこのメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のピーク値P1が低くなる。また、環状コア11の厚みが一定であれば、メダル2の外径が大きく、メダル2の厚みtが厚くかつ電気抵抗率ρが低いと、複数枚のこのメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のボトム値B1が高くなり、メダル2の外径が小さく、メダル2の厚みtが薄くかつ電気抵抗率ρが高いと、複数枚のこのメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のボトム値B1が低くなる。
【0056】
そのため、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちの外径が最も大きく、厚みtが最も厚くかつ電気抵抗率ρが最も低いメダル2を第1メダル2とし、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちの外径が最も小さく、厚みtが最も薄くかつ電気抵抗率ρが最も高いメダル2を第2メダル2とすると、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2が複数枚、隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のピーク値P1の中で、複数枚の第1メダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG11(
図11参照)のピーク値P11が最も高くなる。また、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2が複数枚、隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のボトム値B1の中で、複数枚の第1メダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG11のボトム値B11が最も高くなる。
【0057】
また、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2が複数枚、隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のピーク値P1の中で、複数枚の第2メダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG12(
図11参照)のピーク値P12が最も低くなり、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2が複数枚、隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のボトム値B1の中で、複数枚の第2メダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG12のボトム値B12が最も低くなる。本形態では、第1メダル2は、第1被検出体であり、第2メダル2は、第2被検出体である。なお、
図11では、第1メダル2および第2メダル2が同じ速さで環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG11、SG12が図示されている。
【0058】
また、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過する場合のコイル出力信号SG1、SG2の信号レベルは、(L
3ht/ρ)に比例するため、環状コア11の厚みhによっても変動する。具体的には、環状コア11の厚みhが厚くなると、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過する場合のコイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが全体的に大きくなる。したがって、メダル2の外径、厚みtおよび電気抵抗率ρが一定であれば、環状コア11の厚みhが厚くなるにしたがって、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のピーク値P1が高くなり、環状コア11の厚みhが薄くなるにしたがって、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のピーク値P1が低くなる。また、メダル2の外径、厚みtおよび電気抵抗率ρが一定であれば、環状コア11の厚みhが厚くなるにしたがって、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のボトム値B1が高くなり、環状コア11の厚みhが薄くなるにしたがって、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のボトム値B1が低くなる。なお、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のピーク値P1と、同じメダル2が1枚だけ環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1のピーク値P1とは等しい。
【0059】
ここで、上述のように、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちのどのメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過しても、複数枚のメダル2のそれぞれが環状コア11を通過するごとにボトム値B1が閾値thよりも低くなるように閾値thが設定されている。環状コア11の厚みhが所定の厚みに設定されており、
図11(A)に示すように、複数枚の第1メダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのボトム値B11が、第2メダル2が環状コア11を通過したときのピーク値P12よりも低くなっている場合には、ボトム値B11が閾値thよりも低くなるように、かつ、ピーク値P12が閾値thよりも高くなるように、閾値thを設定することができる。すなわち、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちのどのメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過しても、複数枚のメダル2のそれぞれが環状コア11を通過するごとにボトム値B1が閾値thよりも低くなるように、かつ、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちのどのメダル2が環状コア11を通過しても、コイル出力信号SG1のピーク値P1が閾値thよりも高くなるように、閾値thを設定することができる。
【0060】
一方、環状コア11の厚みhが厚くなり、
図11(B)に示すように、複数枚の第1メダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのボトム値B11が、第2メダル2が環状コア11を通過したときのピーク値P12よりも高くなってしまうと、ボトム値B11が閾値thよりも低くなるように、かつ、ピーク値P12が閾値thよりも高くなるように、閾値thを設定することはできない。すなわち、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちのどのメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過しても、複数枚のメダル2のそれぞれが環状コア11を通過するごとにボトム値B1が閾値thよりも低くなるように、かつ、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちのどのメダル2が環状コア11を通過しても、コイル出力信号SG1のピーク値P1が閾値thよりも高くなるように、閾値thを設定することはできない。
【0061】
そこで、本形態では、第1メダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのボトム値B11と、第2メダル2が環状コア11を通過したときのピーク値P12とが等しくなるときの厚みhを第1の厚みh1とすると、環状コア11の厚みhは、厚みh1未満となっている。本形態では、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2の外径は、20mm以上30mm以下であり、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2の厚みtは、1.3mm以上2.5mm以下であり、かつ、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2の材質は、ステンレス鋼(より具体的には、SUS304)、黄銅、青銅または白銅であるため、環状コア11の厚みhは、1.2mm未満となっている。この環状コア11の厚みhは、以下のように算出されている。
【0062】
すなわち、まず、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2の材質のうち、電気抵抗率ρが最も高いのはステンレス鋼(ρ=72×10
−8(Ωm))であり、電気抵抗率ρが最も低いは黄銅(ρ=5〜7×10
−8(Ωm))である。したがって、本形態では、黄銅で形成された外径30mmかつ厚み2.5mmのメダル2が第1メダル2であり、ステンレス鋼で形成された外径20mmかつ厚み1.3mmのメダル2が第2メダル2である。また、環状コア11の厚みhを変えながら、複数枚の第1メダル2、第2メダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG11、SG12をシミュレーションで求めると、
図12、
図13に示すように信号レベルが変化するコイル出力信号SG11、SG12が得られた。
【0063】
図12(A)は、環状コア11の厚みhが0.5mmのときのコイル出力信号SG11、SG12を示し、
図12(B)は、環状コア11の厚みhが1.0mmのときのコイル出力信号SG11、SG12を示し、
図13(A)は、環状コア11の厚みhが1.2mmのときのコイル出力信号SG11、SG12を示し、
図13(B)は、環状コア11の厚みhが1.5mmのときのコイル出力信号SG11、SG12を示している。
【0064】
なお、
図12、
図13には、
図11(A)のE部に相当する部分が示されている。また、
図12、
図13には、黄銅で形成された外径25mmかつ厚み2.5mmのメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1であるコイル出力信号SG13と、黄銅で形成された外径20mmかつ厚み2.5mmのメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1であるコイル出力信号SG14と、ステンレス鋼で形成された外径30mmかつ厚み1.3mmのメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1であるコイル出力信号SG15と、ステンレス鋼で形成された外径25mmかつ厚み1.3mmのメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG1であるコイル出力信号SG16とが図示されている。また、
図12、
図13では、それぞれのメダル2が同じ速さで環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG11〜SG16が図示されている。さらに、
図12、
図13では、環状コア11の厚みhが厚くなるにしたがって、コイル出力信号SG11〜SG16の信号レベル(縦軸)の縮尺の度合が大きくなっている。
【0065】
図12に示すように、環状コア11の厚みhが0.5mmあるいは1.0mmのときには、ボトム値B11はピーク値P12よりも低くなる。また、
図13(A)に示すように、環状コア11の厚みhが1.2mmのときには、ボトム値B11とピーク値P12とが等しくなり、
図13(B)に示すように、環状コア11の厚みhが1.5mmのときには、ボトム値B11がピーク値P12よりも高くなる。そのため、環状コア11の厚みhを1.2mm未満とすれば、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちのどのメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過しても、複数枚のメダル2のそれぞれが環状コア11を通過するごとにボトム値B1が閾値thよりも低くなるように、かつ、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちのどのメダル2が環状コア11を通過しても、コイル出力信号SG1のピーク値P1が閾値thよりも高くなるように、閾値thを設定することができる。したがって、本形態の環状コア11の厚みhは、1.2mm未満となっている。すなわち、第1の厚みh1は、1.2mmとなっている。
【0066】
環状コア11の厚みhが薄くなればなるほど、ボトム値B11が低くなるため、閾値thが設定しやすくなる。しかしながら、環状コア11の厚みhが薄くなりすぎると、メダル識別装置1を製造する際の環状コア11の取り扱いが難しくなる。また、磁路を形成する環状コア11には、所定の熱処理を行う必要があり、環状コア11の厚みhが薄くなりすぎると、熱処理に環状コア11が変形するおそれが高くなる。そこで、本形態の環状コア11の厚みhは、これらの要因を考慮して、0.5mmとなっている。なお、環状コア11の厚みhは、0.1mm程度であっても良い。
【0067】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、MPU29は、コイル出力信号SG1の信号レベルが閾値th以上となっているときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号値を取得している。そのため、本形態では、コイル出力信号SG1の信号レベルに関係なく一定のサンプリング周期でコイル出力信号SG1、SG2の信号値が取得される場合と比較して、MPU29で取得されて処理される信号値のデータ量を低減することが可能になり、MPU29での処理を簡素化することが可能になる。したがって、本形態では、MPU29での処理を高速化することが可能になり、その結果、メダル2を高速で識別することが可能になる。また、本形態では、MPU29は、コイル出力信号SG1の信号レベルが閾値th以上となっているときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号値を取得しているため、環状コア11を通過するメダル2の速度がばらついていても、コイル出力信号SG1、SG2のピーク値P1、P2を確実に取得することが可能になる。
【0068】
本形態では、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちの外径が最も大きく、厚みtが最も厚くかつ電気抵抗率ρが最も低い第1メダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG11のボトム値B11と、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちの外径が最も小さく、厚みtが最も薄くかつ電気抵抗率ρが最も高い第2メダル2が環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG12のピーク値P12とが等しくなるときの厚みh1よりも、環状コア11の厚みhが薄くなっている。そのため、本形態では、上述のように、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちのどのメダル2が複数枚、隙間なく連続で環状コア11を通過した場合であっても、複数枚のメダル2のそれぞれが環状コア11を通過するごとにコイル出力信号SG1の信号レベルのボトム値B1が閾値thよりも低くなるように、かつ、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちのどのメダル2が環状コア11を通過した場合であっても、コイル出力信号SG1の信号レベルのピーク値P1が閾値thよりも高くなるように、閾値thを設定することができる。
【0069】
したがって、本形態では、複数種類のメダル2の真贋や良不良を識別することが可能であっても、また、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過する場合であっても、MPU29で取得されて処理される信号値のデータ量を低減して、MPU29での処理を簡素化することが可能になる。そのため、本形態では、複数種類のメダル2の真贋や良不良を識別することが可能であっても、また、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過する場合であっても、MPU29での処理を高速化することが可能になり、その結果、メダル2を高速で識別することが可能になる。
【0070】
また、本形態では、複数枚のメダル2のそれぞれが環状コア11を通過するごとにコイル出力信号SG1の信号レベルのボトム値B1が閾値thよりも低くなるように閾値thを設定することができるため、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過する場合であっても、所定時間おきにメダル2ごとのコイル出力信号SG1の信号値を取得することが可能になる。したがって、本形態では、複数枚のメダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過する場合であっても、取得されたコイル出力信号SG1の信号値に基づいて、複数枚のメダル2のそれぞれの真贋や良不良を適切に識別することが可能になる。また、本形態では、環状コア11を通過するメダル2の数を容易に算出することが可能になる。
【0071】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0072】
上述した形態では、メダル識別装置1は、メダル2の真贋の識別、および、真のメダル2の良不良の識別をするための装置であるが、メダル識別装置1は、メダル2の真贋の識別、または、真のメダル2の良不良の識別の一方のみを行っても良い。
【0073】
上述した形態では、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2の外径は、20mm以上30mm以下であるが、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2の外径は、20mm未満であっても良いし、30mmを超えても良い。たとえば、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2の外径は、20mm以上32mm以下であっても良い。また、上述した形態では、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2の厚みtは、1.3mm以上2.5mm以下であるが、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2の厚みtは、1.3mm未満であっても良いし、2.5mmを超えても良い。
【0074】
上述した形態では、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2の材質は、ステンレス鋼、黄銅、青銅または白銅であるが、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2の材質として、これらの材質に代えて、あるいは、これらの材質に加えて、他の材質が使用されても良い。たとえば、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2の材質は、ステンレス鋼、黄銅、青銅、白銅またはアルミニウム合金であっても良い。
【0075】
上述した形態では、MPU29は、コイル出力信号SG1の信号レベルが閾値th以上となっているときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号値を取得している。この他にもたとえば、MPU29は、コイル出力信号SG2の信号レベルが所定の閾値以上となっているときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号値を取得しても良い。この場合には、第1メダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG2の信号レベルのボトム値と、第2メダル2が環状コア11を通過したときのコイル出力信号SG2のピーク値とが等しくなるときの厚みhよりも、環状コア11の厚みhが薄くなっている。
【0076】
上述した形態では、励磁用コイル8が交流磁界を発生させている状態でメダル2が通過路5を通過したときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが高くなるように、メダル識別装置1の回路が構成されている。この他にもたとえば、励磁用コイル8が交流磁界を発生させている状態でメダル2が通過路5を通過したときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが低くなるように、メダル識別装置1の回路が構成されても良い。この場合には、コイル出力信号SG1の信号レベルが所定の閾値以下となっているときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号値が取得される。
【0077】
また、この場合には、第1メダル2が隙間なく連続で環状コア11を通過したときのピーク値と、第2メダル2が環状コア11を通過したときのボトム値とが等しくなるときの厚みhよりも薄くなるように、環状コア11の厚みhが設定される。この場合には、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちのどのメダル2が複数枚、隙間なく連続で環状コア11を通過した場合であっても、複数枚のメダル2のそれぞれが環状コア11を通過するごとにコイル出力信号SG1の信号レベルのピーク値が閾値よりも高くなるように、かつ、真のメダル2および良品のメダル2と識別されるべき複数種類のメダル2のうちのどのメダル2が環状コア11を通過した場合であっても、コイル出力信号SG1の信号レベルのボトム値が閾値thよりも低くなるように、閾値thを設定することができる。したがって、上述した形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
上述した形態では、磁気センサ4は、2個の検出用コイル9、10を備えている。この他にもたとえば、磁気センサ4が備える検出用コイルの数は、1個であっても良いし、3個以上であっても良い。この場合には、検出用コイルの数に応じて、第2コア13に凸部が形成されれば良い。
【0079】
上述した形態では、環状コア11は、プレス加工で形成された1枚の金属板によって形成されている。この他にもたとえば、環状コア11は、磁性材料で形成される金属箔と、この金属箔が貼り付けられる薄い樹脂製の補強板とから構成されても良い。この場合には、補強板に貼り付けられる金属箔がコア体となる。また、コア体となる金属箔の厚みは、たとえば、15μmである。
【0080】
上述した形態では、磁気センサ4は、環状に形成される環状コア11を備えている。この他にもたとえば、磁気センサ4は、環状コア11に代えて、第1コア12、第2コア13、第1連結コア14および第2連結コア15の少なくともいずれか1箇所にギャップ(切れ目)が形成されたコア体を備えていても良い。この場合には、ギャップは非磁性材料で埋められても良い。また、上述した形態では、環状コア11は、略四角環状に形成されているが、環状コア11は、円環状、楕円環状または長円環状に形成されても良い。また、環状コア11は、四角環状以外の多角環状に形成されても良い。
【0081】
上述した形態では、メダル識別装置1は、スロットマシンに搭載されて使用されている。この他にもたとえば、メダル識別装置1は、メダル購入機やメダル計数機に搭載されて使用されても良い。また、上述した形態では、スロットマシンで使用されるメダル2を識別するためのメダル識別装置1を例に、本発明のコイン状被検出体識別装置の実施例を説明しているが、本発明が適用されるコイン状被検出体識別装置は、たとえば、ゲーム機で使用されるメダル等の他のコイン状の被検出体を識別するための装置であっても良い。また、本発明におけるコイン状の被検出体は、スロットマシンやゲーム機等で使用されるメダルに限定されず、硬貨であっても良い。なお、メダル購入機は、現金を入れてメダルを購入するための装置であり、スロットマシン間やホール入口に設置されている。また、メダル計数機は、各スロットマシンから集まるメダルの数を数えるための装置である。このメダル計数機は、たとえば、所定台数のスロットマシンに対して1台設置されており(たとえば、島ごとに設置されており)、メダル計数機が設置された島を構成する複数のスロットマシンから集まったメダル2の数を数える。また、メダル計数機は、たとえば、島ごとに集まったメダル2をさらに集めて、その数を数える一括集中処理機である。また、メダル計数機は、たとえば、メダル2を景品に換えるためにメダル2の数を数える装置である。