特許第6246564号(P6246564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー.の特許一覧

特許6246564パターン形成された透明導電体を製造する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246564
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】パターン形成された透明導電体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20171204BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20171204BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20171204BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20171204BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20171204BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20171204BHJP
   B32B 15/02 20060101ALI20171204BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01B13/00 503D
   H01B5/14 B
   H01B13/00 503B
   H01B5/14 A
   H05K3/10 C
   H05K3/12 610B
   B32B7/02 104
   B32B5/02 A
   B32B15/02
   D04H1/728
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-231740(P2013-231740)
(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公開番号】特開2014-146590(P2014-146590A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】61/726,213
(32)【優先日】2012年11月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェボム・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・クララック
(72)【発明者】
【氏名】ガロ・ハーナリアン
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・エム.オコンネル
(72)【発明者】
【氏名】ルージア・ブ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・トレフォナス
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−508418(JP,A)
【文献】 特表2010−537438(JP,A)
【文献】 特表2010−507199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
B32B 5/02
B32B 7/02
B32B 15/02
D04H 1/728
H01B 5/14
H05K 3/10
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀キャリヤー中に分散した銀ナノ粒子を含む銀インクコア成分を用意する工程と、
シェルキャリヤー中に分散した膜形成性ポリマーを含むシェル成分を用意する工程と、
基体を用意する工程と、
前記銀インクコア成分および前記シェル成分を共電界紡糸して、コアおよび前記コアを囲むシェルを有するコアシェル繊維であって、前記銀ナノ粒子が前記コアにあるコアシェル繊維を形成する工程と、
前記コアシェル繊維を基体上に堆積させて堆積コアシェル繊維を得る工程と、
前記堆積コアシェル繊維の一部分を選択的に処理して、パターン形成された透明導電体を得る工程と
を含む、パターン形成された透明導電体を製造する方法であって、
前記パターン形成された透明導電体は処理領域および未処理領域を有し、
前記処理領域は複数の電気的相互接続銀ミニワイヤーを含み、前記処理領域は導電性領域であり、並びに前記未処理領域は電気絶縁性領域である、
パターン形成された透明導電体を製造する方法。
【請求項2】
前記処理領域が前記基体上に制御されたパターンで形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御されたパターンが規則的パターンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記制御されたパターンが不規則的パターンである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記制御されたパターンが不規則的格子状パターンである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記パターン形成された透明導電体が1%以下のΔTransを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パターン形成された透明導電体が1%以下のΔHazeを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パターン形成された透明導電体が1%以下のΔHazeを示す、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記堆積コアシェル繊維の一部分を選択的に処理してパターン形成された透明導電体を得る工程が、前記堆積コアシェル繊維の一部分を、焼結、加熱およびこれらの組み合わせからなる群から選択される技術を使用して選択的に処理する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記銀インクコア成分と前記シェル成分との間の界面張力が2〜5mN/mである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、パターン形成された透明導電体の製造の分野に関する。特に、本発明は、目に見えないパターン形成された透明導電体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い透明度と組み合わせて高い導電率を示す膜は、例えば、タッチスクリーンディスプレイおよび光電池をはじめとする広範囲の電子工学用途における電極またはコーティングとして使用するために大いに価値がある。これらの用途のための現在の技術は、物理蒸着法をによって堆積したスズドープ酸化インジウム(ITO)含有膜の使用を伴う。物理蒸着プロセスの資本費用が高いことにより、代替の透明導電材料およびコーティング手法を発見することが望まれてきた。パーコレートネットワークとしての分散した銀ナノワイヤーの使用が、ITO含有膜の代替を約束するものとして現れた。銀ナノワイヤーの使用は、ロールツーロールを使用して処理可能であるという利点を潜在的に提供する。したがって、銀ナノワイヤーは、従来のITO含有膜よりも高い透明度および導電率を提供する能力とともに低コスト製造の利点を提供する。
【0003】
静電容量方式タッチスクリーン用途では、導電パターンが必要とされる。このような用途のための鍵となる課題の1つは、形成したパターンがヒトの目に見えない(またはほぼそうである)ものでなければならないことである。
【0004】
ナノワイヤーベースのパターン形成された透明導電体を提供するための1つの手法は、米国特許第8,018,568号でAllemandらにより開示されている。Allemandらは、基体と、基体上の複数の相互接続ナノ構造を含む導電膜とを含む光学的に均一な透明導電体であって、導電膜上のパターンは(1)第1の抵抗率、第1の透過率および第1のヘイズを有する非エッチング領域と、(2)第2の抵抗率、第2の透過率および第2のヘイズを有するエッチング領域とを規定し、エッチング領域は非エッチング領域よりも導電性が低く、第1の抵抗率の第2の抵抗率に対する比は少なくとも1000であり、第1の透過率は第2の透過率と5%未満異なり、第1のヘイズは第2のヘイズと0.5%未満異なる導電体を開示している。
【0005】
それにもかかわらず、導電性領域および非導電性領域を有するパターン形成された透明導電体であって、導電性領域および非導電性領域はヒトの目には本質的に区別がつかない(すなわち、導電性領域および非導電性領域により示される光透過率の差ΔTransおよびヘイズの差ΔHazeは、好ましくは共に1%以下である)パターン形成された透明導電体を製造する代替方法がなお必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8,018,568号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明は、銀キャリヤー中に分散した銀ナノ粒子を含む銀インクコア成分を用意する工程と、シェルキャリヤー中に分散した膜形成性ポリマーを含むシェル成分を用意する工程と、基体を用意する工程と、前記銀インクコア成分および前記シェル成分を共電界紡糸(coelectrospin)して、コアおよび前記コアを囲むシェルを有するコアシェル繊維であって、前記銀ナノ粒子が前記コアにあるコアシェル繊維を形成する工程と、前記コアシェル繊維を基体上に堆積させて堆積コアシェル繊維を得る工程と、前記堆積コアシェル繊維の一部分を選択的に処理して、パターン形成された透明導電体を得る工程とを含む、パターン形成された透明導電体を製造する方法であって、前記パターン形成された透明導電体は処理領域および未処理領域を有し、前記処理領域は複数の電気的相互接続銀ミニワイヤーを含み、前記処理領域は導電性領域であり、並びに前記未処理領域は電気絶縁性領域である方法を提供する。
【0008】
本発明は、本発明の方法により製造されたパターン形成された透明導電体を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用する「TransTreat」という用語は、ASTM D1003−11e1にしたがって測定される、本発明のパターン形成された透明導電体の処理部分により示される光透過率(%)を指す。
【0010】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用する「TransNon」という用語は、ASTM D1003−11e1にしたがって測定される、本発明のパターン形成された透明導電体の未処理部分により示される光透過率(%)を指す。
【0011】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用する「HazeTreat」という用語は、ASTM D1003−11e1にしたがって測定される、本発明のパターン形成された透明導電体の処理部分により示されるヘイズ(%)を指す。
【0012】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用する「HazeNon」という用語は、ASTM D1003−11e1にしたがって測定される、本発明のパターン形成された透明導電体の未処理部分により示されるヘイズ(%)を指す。
【0013】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用する「ΔTrans」という用語は、以下の式:
【数1】
により定義される、本発明のパターン形成された透明導電体の未処理領域と比較した処置領域により示される透過率の差を指す。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用する「ΔHaze」という用語は、以下の式:
【数2】
により定義される、本発明のパターン形成された透明導電体の未処理領域と比較した処置領域により示されるヘイズの差を指す。
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用する「目に見えないパターン形成された透明導電体」という用語は、1%以下のΔTransおよび1%以下のΔHazeを示すパターン形成された透明導電体を指す。
【0016】
本発明の方法を使用して製造された目に見えないパターン形成された透明導電体は、静電容量方式タッチスクリーン用途に特に有用である。このような用途に使用するために、導電性および非導電性領域のパターンを有する透明導電体を提供することが望ましい。このようなパターン形成された透明導電体を提供することにおける1つの重要な課題は、ヒトの目に検出不可能なパターン(すなわち、ΔTransおよびΔHazeの両方が1%以下)を製造してスクリーンのビュー特性の劣化を最小化することにある。
【0017】
好ましくは、本発明に使用する銀インクコア成分は、銀キャリヤー中に分散した50重量%以上(より好ましくは60重量%以上、さらにより好ましくは70重量%以上、最も好ましくは75重量%以上)の銀ナノ粒子を含む。
【0018】
好ましくは、銀インクコア成分に使用する銀ナノ粒子は、2以下(より好ましくは1.5以下、最も好ましくは1.1以下)のアスペクト比を示す。使用する銀ナノ粒子は、場合によって、銀キャリヤー中での安定な分散物の形成を促進し、かつ凝集体の形成を阻害するための処理または表面コーティングを含む。
【0019】
本発明の方法に使用する銀キャリヤーは、銀ナノ粒子が分散することができる任意の液体から選択され得る。好ましくは、銀キャリヤーは、水、アルコールおよびこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、銀キャリヤーは、水、C1〜4アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール)、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、リン酸トリメチルおよびこれらの混合物からなる群から選択される。最も、銀キャリヤーは水である。
【0020】
本発明の方法に使用する銀インクコア成分は、任意選択により、コア添加剤をさらに含む。コア添加剤は、界面活性剤、抗酸化剤、光酸発生剤、熱酸発生剤、クエンチャー、硬化剤、溶解速度調節剤、光硬化剤、光増感剤、酸増幅剤、可塑剤、配向制御剤、および架橋剤からなる群から選択され得る。好ましいコア添加剤としては、界面活性剤および抗酸化剤が挙げられる。
【0021】
好ましくは、本発明の方法に使用するシェル成分は、シェルキャリヤー中に分散した膜形成性ポリマーを含む。
【0022】
本発明の方法に使用する膜形成性ポリマーは、既知の電界紡糸可能な(electrospinnable)膜形成性材料から選択され得る。好ましい膜形成性ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルプロピレン、セルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース)、絹およびこれらのブレンドが挙げられる。より好ましくは、膜形成性ポリマーはポリエチレンオキシドである。最も好ましくは、膜形成性ポリマーは、10,000〜1,000,000g/molの重量平均分子量を有するポリエチレンオキシドである。
【0023】
本発明の方法に使用するシェルキャリヤーは、膜形成性ポリマーが分散可能な任意の液体から選択され得る。好ましくは、シェルキャリヤーは、膜形成性ポリマーのための任意の優れた溶媒であり得る。より好ましくは、シェルキャリヤーは、シェル成分と銀インクコア成分との間の界面張力が0.1mN/m超(好ましくは1mN/m超、より好ましくは2mN/m超、最も好ましくは2〜5mN/m)となるように選択される。銀キャリヤーとして水を含む銀インクコア成分と組み合わせて使用される場合、シェルキャリヤーは、好ましくは水アルコール混合物からなる群から選択され、ここでこのアルコールはアセトン、C1〜4アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール)およびこれらの混合物からなる群から選択され、水アルコール混合物は、50重量%以上(より好ましくは50重量%超)のアルコール濃度を示す。
【0024】
本発明の方法に使用するシェル成分は、任意選択により、シェル添加剤をさらに含む。シェル添加剤は、界面活性剤、抗酸化剤、光酸発生剤、熱酸発生剤、クエンチャー、硬化剤、溶解速度調節剤、光硬化剤、光増感剤、酸増幅剤、可塑剤、配向制御剤、および架橋剤からなる群から選択され得る。好ましいシェル添加剤としては、界面活性剤および抗酸化剤が挙げられる。
【0025】
本発明の方法に使用する特に好ましいシェル成分は、水およびC1〜4アルコール混合物シェルキャリヤー中に分散した1〜25重量%(より好ましくは1〜15重量%、最も好ましくは2〜10重量%)の膜形成性ポリマーを含む。好ましくは、シェルキャリヤーは、50重量%以上のアルコール濃度(最も好ましくは60重量%以上のアルコール)を有する水とC1〜4アルコールの混合物である。最も好ましくは、シェル成分は、シェルキャリヤー中2〜10重量%のポリエチレンオキシドを含み、ここで、このシェルキャリヤーは50重量%以上のエタノール含量を有する水エタノール混合物である。
【0026】
本発明の方法に使用する基体は、導電性基体と非導電性基体の両方を含む、任意の既知の基体から選択され得る。好ましい基体は透明である。より好ましい基体としては、ガラス(例えば、Corning,Inc.から市販されているWillow(登録商標)ガラス)および透明プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル)が挙げられる。
【0027】
本発明のパターン形成された透明導電体を製造する方法は、銀キャリヤー中に分散した銀ナノ粒子を含む銀インクコア成分を用意する工程と、シェルキャリヤー中に分散した膜形成性ポリマーを含むシェル成分を用意する工程と、基体を用意する工程と、銀インクコア成分およびシェル成分を共電界紡糸して、コアおよび前記コアを囲むシェルを有するコアシェル繊維であって、前記銀ナノ粒子がコアにあるコアシェル繊維を形成する工程と、前記コアシェル繊維を前記基体上に堆積させて堆積コアシェル繊維を得る工程と、前記堆積コアシェル繊維の一部分を選択的に処理して、パターン形成された透明導電体を得る工程とを含み、前記パターン形成された透明導電体は処理領域および未処理領域を有し、前記処理領域は複数の電気的相互接続銀ミニワイヤーを含み、前記処理領域は導電性領域であり、並びに前記未処理領域は電気絶縁性領域である。
【0028】
好ましくは、本発明の方法では、コアシェル繊維は、ランダム重複パターン、周期的パターン、非周期的パターンおよび制御された重複パターンからなる群から選択される重複パターンで基体上に堆積される。
【0029】
好ましくは、本発明の方法では、共電界紡糸する工程は、中心開口部および周囲環状開口部を有する共軸環状ノズルを通して銀インクコア成分およびシェル成分を供給する工程を含み、ここで、銀インクコア成分は中心開口部を通して供給され、およびシェル成分は周囲環状開口部を通して供給される。好ましくは、周囲環状開口部を通して供給されるシェル材料の体積流量VFRshellの、中心開口部を通して供給されるコア材料の体積流量VFRcoreに対する比は、流れの方向に垂直な周囲環状開口部の横断面積CSAannularの、流れの方向に垂直な中心開口部の横断面積CSAcenterに対する比以上である。より好ましくは、以下の式:
【数3】
が処理条件により満たされる。
最も好ましくは、以下の式:
【数4】
が処理条件により満たされる。
【0030】
好ましくは、本発明の方法では、銀インクコア成分は、0.1〜3μL/分(好ましくは0.1〜1μL/分、より好ましくは0.1〜0.7μL/分、最も好ましくは0.4〜0.6μL/分)の体積流量で中心開口部を通して供給される。
【0031】
好ましくは、本発明の方法では、シェル成分は、1〜30μL/分(好ましくは1〜10μL/分、より好ましくは1〜7μL/分、最も好ましくは4〜6μL/分)の流量で周囲環状開口部を通して供給される。
【0032】
好ましくは、本発明の方法では、共軸環状ノズルは、基体に対して正の電位差を印加されて設定される。より好ましくは、印加電位差は5〜50kV(好ましくは5〜30kV、より好ましくは5〜25kV、最も好ましくは5〜10kV)である。
【0033】
本発明の方法では、コアシェル繊維は基体上に直接共電界紡糸され得る。すなわち、コアシェル繊維は基体上に同時に電界紡糸および堆積され得る。あるいは、コアシェル繊維は基体以外の標的表面上に共電界紡糸され得る。次いで、コアシェル繊維は標的表面から回収され、任意のマトリックス材料および/または任意の媒体と組み合わせられて組み合わせ物を形成することができる。次いで、この組み合わせ物は基体上に堆積され得る。
【0034】
本発明の方法に使用する任意のマトリックス材料は特に限定的ではない。当業者であれば、本発明の方法を使用して調製される膜のために所望の最終用途に基づいて適当なマトリックス材料を選択することができるだろう。好ましくは、マトリックス材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、スチレン系物質、ポリウレタン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、セルロース、ゼラチン、キチン、ポリペプチド、多糖およびこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、マトリックス材料は、透明セルロースエステルポリマーおよび透明セルロースエーテルポリマーからなる群から選択される。
【0035】
本発明の方法に使用する任意の媒体は特に限定的ではない。当業者であれば、本発明の方法とともに使用するための適当な媒体を選択することができるだろう。好ましくは、媒体は、有機溶媒および水性溶媒からなる群から選択される。より好ましくは、媒体は、C1〜5アルコール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、水およびこれらの混合物から選択される。最も好ましくは、媒体は水である。
【0036】
回収されたコアシェル繊維、任意のマトリックス材料および任意の媒体は、周知の混合技術を使用して組み合わされて組み合わせ物を形成することができる。
【0037】
好ましくは、本発明の方法に使用する組み合わせ物は、2〜15重量%(より好ましくは2〜10重量%)のコアシェル繊維と、5〜70重量%(より好ましくは5〜20重量%)のマトリックス材料と、0〜85重量%(より好ましくは50〜75重量%)の媒体とを含む。
【0038】
組み合わせ物は、周知の堆積法を使用して基体の表面に塗布され得る。好ましくは、組み合わせ物は、噴霧塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷およびパッド印刷からなる群から選択されるプロセスを使用して基体の表面に適用される。より好ましくは、組み合わせ物は、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティングおよびグラビアコーティングからなる群から選択されるプロセスを使用して基体の表面に適用される。最も好ましくは、組み合わせ物は、スピンコーティングにより基体の表面に適用される。
【0039】
好ましくは、基体の表面上に堆積した組み合わせ物に含まれる揮発性成分が除去される。好ましくは、揮発性成分はベークにより除去される。好ましくは、揮発性成分の除去後のコアシェル繊維の濃度は、10〜40重量%(より好ましくは15〜35重量%、最も好ましくは15〜25重量%)である。
【0040】
本発明の方法では、堆積コアシェル繊維の一部分は選択的に処理されて、処理領域および未処理領域を有するパターン形成された透明導電体が得られる。好ましくは、処理領域は、焼結(例えば、光焼結、熱焼結)、加熱(例えば、バーンオフ、マイクロパルス光子加熱、連続光子加熱、マイクロ波加熱、オーブン加熱、炉加熱)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される技術を使用して処理される。より好ましくは、処理領域は、光焼結により処理領域中の堆積コアシェル繊維を選択的に処理することにより処理される。なおさらに好ましくは、処理領域は、堆積コアシェル繊維と光源との間にマスクを挿入し、光源から高強度光子パルスを放射することにより、処理領域中の堆積コアシェル繊維を選択的に処理することにより処理され、ここで、この処理領域中の堆積コアシェル繊維は高強度光子パルスに曝露され、および未処理領域中の堆積コアシェル繊維はマスクによって高強度光子パルスへの曝露から保護され、高強度光子パルスは処理領域中の堆積コアシェル繊維中の曝露された銀ナノ粒子を導電性ネットワークに変換する。より好ましくは、曝露された銀ナノ粒子は融合または焼結されて複数の電気的相互接続導電性構造となる。最も好ましくは、曝露された銀ナノ粒子は融合または焼結されて複数の電気的相互接続銀ミニワイヤーとなる。好ましくは、銀ミニワイヤーの集団は、5μm以下(好ましくは100nm〜5μm、より好ましくは1〜5μm)の平均直径Dおよび60μm以上(好ましくは60〜10,000μm、より好ましくは100〜10,000μm、なおさらに好ましくは200〜10,000μm、最も好ましくは500〜10,000μmの平均長さLを示す(好ましくは、銀ミニワイヤーのアスペクト比L/Dは150以上(より好ましくは200以上、なおさらに好ましくは500以上、最も好ましくは1,000以上)である)。
【0041】
好ましくは、本発明の方法では、処理領域は基体上に制御されたパターンで形成される。好ましくは、制御されたパターンは、規則的パターンおよび不規則的パターンからなる群から選択される。より好ましくは、処理領域は不規則的パターンで形成される。好ましくは、制御されたパターンは格子状パターンである。格子状パターンとしては、例えば、直線辺多角形(菱形、正方形、長方形、三角形、六角形など)、円形、多湾曲形状、湾曲および直線辺形状の組み合わせ(例えば、半円形)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
好ましくは、堆積コアシェル繊維の一部分を選択的に処理してパターン形成された透明導電体を得る工程は、マスクを用意する工程と、堆積コアシェル繊維の一部分の選択的処理を容易にするためにマスクを基体の表面上に配置して工程とを含む。当業者であれば、本発明の方法でマスクとして使用するための適当な材料を選択することを知っているだろう。好ましくは、マスクとして使用する材料は、堆積コアシェル繊維を選択的に処理するために使用するエネルギーを明らかには吸収しない反射影/光学マスクである。
【0043】
好ましくは、本発明の方法を使用して製造されたパターン形成された透明導電体は、1%以下(好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下)のΔTransを示す。好ましくは、本発明の方法を使用して製造されたパターン形成された透明導電体は、1%以下(好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下)のΔHazeを示す。最も好ましくは、本発明の方法を使用して製造されたパターン形成された透明導電体は、1%以下(好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下)のΔTransおよび1%以下(好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下)のΔHazeを示す目に見えないパターン形成された透明導電体である。
【0044】
好ましくは、本発明の方法を使用して製造されたパターン形成された透明導電体の処理領域は、700Ω/sq未満(より好ましくは100Ω/sq未満)のシート抵抗R(実施例において本明細書に記載する方法を使用して測定した場合)を示す導電性領域である。
【0045】
好ましくは、本発明の方法を使用して製造されたパターン形成された透明導電体の未処理領域は、100kΩ/sq超(より好ましくは300kΩ/sq超)のシート抵抗R(実施例において本明細書に記載する方法を使用して測定した場合)を示す電気絶縁性領域である。
【0046】
ここで本発明のいくつかの実施形態が以下の実施例で詳細に記載される。
【0047】
実施例で報告される透過率TTransデータは、BYK InstrumtのHaze−gard plus型透過度計を使用してASTM D1003−11e1にしたがって測定された。
【0048】
実施例で報告されるヘイズHHazeデータは、BYK InstrumtのHaze−gard plus型透過度計を使用してASTM D1003−11e1にしたがって測定された。
【0049】
実施例1:パターン形成された透明導電膜の調製
IME Technologies製のデュアルノズル電界紡糸機械モデルEC−DIGを使用してコアシェル繊維を電界紡糸した。使用するノズルは0.4mm直径を有する材料フローの方向に垂直な円形横断面を有する内側開口部および材料フローの方向に垂直な環状横断面を有し内側開口部と同心円状の外側開口部を有し、0.6mm内径および1.2mm外径を有する同軸ノズル(IME Technologies製のEM−CAX)とした。材料を紡糸する際、銀インクコア成分は同軸ノズルの内側開口部を通して供給し、シェル成分は同軸ノズルの外側開口部を通して供給した。銀インクコア成分およびシェル成分は、独立したシリンジポンプ(IME Technologies製のEP−NE1)を使用して同軸ノズルを通して供給し、銀インクコア成分の体積流量VFRcoreを2.5μL/分に、またシェル成分の体積流量VFRshellを18μL/分に制御した。電界紡糸プロセスは、20℃および25〜35%の相対湿度の気候制御実験室中、周囲雰囲気条件で行った。
【0050】
使用する銀インクコア成分は、水中に分散した50nmの公称粒径を有する70重量%の銀ナノ粒子(CSD95としてCabot Corporationから市販されている)を含んでいた。使用するシェル成分は、40/60重量%水/エタノール溶液中に溶解した5.5重量%ポリエチレンオキシド(Aldrich製の400,000g/mol)を含んでおり、銀インクコア成分とシェル成分との間の界面張力は2〜5mN/mであると測定された。
【0051】
使用する基体は188μm厚さ×12.7cm幅×30.48cm長さの透明可撓性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(SKC,Inc.から市販されているSkyrol(登録商標)V5200)とした。基体をIME Technologies製のModule EM−RDC回転ドラムコレクターの回転ドラムの周りに巻いた。
【0052】
紡糸操作についての残りのパラメータは以下の通りとした:回転基体とニードルとの間の距離を18cmに設定した;ノズルを6.5kVに設定した。基体下のプレートを−0.1kVに設定した;回転ドラムコレクター上のドラム回転速度(y軸)を250rpmに設定した;ニードルスキャン速度(x軸)を10mm/秒に設定した;ニードルスキャン距離を12cmに設定した;そして全紡糸時間を4分に設定した。
【0053】
紡糸操作後、コアシェル繊維が上に体積したPET基体を回転ドラムコレクターから取り外した。次いで、5cm×2.5cm試料を基体から切り抜いた。未処理試料の透過率TTransは79.3%であった。未処理試料のヘイズHHazeは11.8%であった。
【0054】
次いで、試料の半分を2.5cm×2.5cmの白色反射プラスチックマスクで覆った。次いで、マスクした試料を7.62m/分の速度に設定したコンベヤベルト上にNovacentrix製のPulseforge 3100光子発生装置を通るように供給した。この光子発生装置は、UVから短IRまで広いスペクトルにわたる光を発することができる高強度キセノンランプを備えていた。光子発生装置を200Vに設定して552mJ/cmを発生する連続モードで3Hz周波数の400μ秒パルスを生成した。光子発生装置を出る試料は、処理領域(パルスから保護されていない)および未処理領域(マスクによりパルスから保護されている)を有するパターン形成された透明導電体であった。マスクをパターン形成された透明導電体から除去した。次いで、パターン形成された透明導電体の処理領域および未処理領域を分析してその透過率TTransおよびヘイズHHazeを決定した。表2に示されるデータに基づいて、パターン形成された透明導電体は、0.5%のΔTransおよび0.7%のΔHazeを示した。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例1のパターン形成された透明導電体の処理領域についてのシート抵抗値は、Jandel Engineering Limited製のJendel HM−20 colliner4点プローブ試験を使用してASTM F390−11にしたがって測定した。処理部分のシート抵抗は612.73±107.96Ω/sqであった。
【0057】
比較例A1〜A2および実施例2〜3:処理領域の調製
比較例A1〜A2および実施例2〜3でIME Technologies製のデュアルノズル電界紡糸機械モデルEC−DIGを使用して銀ミニワイヤーを電界紡糸した。使用するノズルは0.4mm直径を有する材料フローの方向に垂直な円形横断面を有する内側開口部および材料フローの方向に垂直な環状横断面を有し内側開口部と同心円状の外側開口部を有し、0.6mm内径および1.2mm外径を有する同軸ノズル(IME Technologies製のEM−CAX)とした。材料を紡糸する際、銀インクコア成分は同軸ノズルの内側開口部を通して供給し、シェル成分は同軸ノズルの外側開口部を通して供給した。銀インクコア成分およびシェル成分は、独立したシリンジポンプ(IME Technologies製のEP−NE1)を使用して同軸ノズルを通して供給し、銀インクコア成分の体積流量VFRcoreを0.5μL/分に、またシェル成分の体積流量VFRshellを5μL/分に制御した。電界紡糸プロセスは、20℃および25〜35%の相対湿度の気候制御実験室中、周囲雰囲気条件で行った。
【0058】
繊維を回収するために使用する基体は60mm直径を有する0.16〜0.19mm厚さのガラススライドとした。紡糸操作中、ガラスプレートを接地電極の上に置き、紡糸ヘッドを基体の上方に垂直に置いた。紡糸中、正の電位を紡糸ヘッドに印加した。いったん紡糸プロセスが安定になったら、使用する電圧を紡糸の開始時の9kVから7kVまで変化させた。
【0059】
比較例A1〜A2および実施例2〜3中で言及される光子焼結は、Novacentrixから市販されているPulseforge 3100光子発生装置を使用して行った。この光子発生装置は、UVから短IRまで広いスペクトルにわたる光を発することができる高強度キセノンランプを備えていた。この光子発生装置を350Vに設定して2.46J/cmを発生する連続モードで5Hz周波数の400μ秒パルスを生成した。試料は7.62m/分の速度のコンベヤベルト上で光子発生装置を通るように供給された。
【0060】
光子焼結試料について表2で報告されるシート抵抗R値は、Jandel Engineering Limited製のJendel HM−20 colliner4点プローブ試験を使用してASTM F390−11にしたがって測定した。
【0061】
表2で報告される透過率パーセント対波長測定は、HP Lambda 9UV VIS分光計を使用して行った。
【0062】
実施例2〜3:処理領域の調製
実施例2〜3の各々で、コアシェル繊維を電界紡糸し、ガラススライド基体上に堆積させた。実施例2〜3に使用する銀インクコア成分は、水中に分散した50nmの公称粒径を有する75重量%の銀ナノ粒子(CSD95としてCabot Corporationから市販されている)を含んでいた。実施例2〜3に使用するシェル成分は、40/60重量%水/エタノール溶液中に溶解した6重量%ポリエチレンオキシド(Aldrich製の400,000g/mol)を含んでおり、この銀インクコア成分とシェル成分との間の界面張力は2〜5mN/mであると測定された。
【0063】
実施例2〜3の各々の未処理生成物のシート抵抗を光子焼結前後で測定し、表2に報告する。
【0064】
実施例2の焼結後処理領域を光学顕微鏡法により分析し、観察したところ1〜5μm範囲の直径および800〜1,000μm範囲の長さを有する銀ミニワイヤーが示された。
【0065】
実施例2の焼結後処理領域を分光計により分析し、観察したところ390nm〜750nmの可視スペクトルにわたり70%超の透過率パーセントが示された。
【0066】
【表2】
【0067】
比較例A1
使用する銀インクコア成分は、水中に分散した60重量%の銀ナノ粒子(PFI−722インクとしてPChem Associates,Inc.から市販されている)を含んでいた。以下を含む種々のシェル成分を使用した:
水中の6重量%ポリアクリル酸;
60/40重量%エタノール/水混合物中の4重量%ポリエチレンオキシド;
60/40重量%イソプロパノール/水混合物中の6重量%ポリエチレンオキシド;
30/20/50重量%水/イソプロパノール/ブタノール混合物中の8重量%ポリアクリル酸;
60/40重量%エタノール/水混合物中の4〜6重量%ポリエチレンオキシド;
60/40重量%エタノール/水混合物中の4〜8重量%ポリアクリル酸;
40/60重量%エタノール/水混合物中の4〜8重量%ポリアクリル酸。
これらの系の各々における銀インクコア成分とシェル成分との間の界面張力は0.4〜2mN/mであると測定された。
【0068】
列挙したシェル成分と組み合わせてこの銀インクコア成分を使用して、処理領域中に複数の相互接続銀ミニワイヤーを製造しようとする努力は全て失敗に終わった。
【0069】
比較例A2
使用する銀インクコア成分は、水中に分散した60重量%の銀ナノ粒子(PFI−722インクとしてPChem Associates,Inc.から市販されている)を含んでいた。以下を含む種々のシェル成分を使用した:
水中の6重量%ポリアクリル酸;
60/40重量%エタノール/水混合物中の4重量%ポリエチレンオキシド;
60/40重量%イソプロパノール/水混合物中の6重量%ポリエチレンオキシド;
30/20/50重量%水/イソプロパノール/ブタノール混合物中の8重量%ポリアクリル酸;
60/40重量%エタノール/水混合物中の4〜6重量%ポリエチレンオキシド;
60/40重量%エタノール/水混合物中の4〜8重量%ポリアクリル酸;
40/60重量%エタノール/水混合物中の4〜8重量%ポリアクリル酸。
これらの系の各々における銀インクコア成分とシェル成分との間の界面張力は0.4〜2mN/mであると測定された。
【0070】
列挙したシェル成分と組み合わせてこの銀インクコア成分を使用して、処理領域中に複数の相互接続銀ミニワイヤーを製造しようとする努力は全て失敗に終わった。