(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
杖の先端の石突きには、滑り止めのために、石突きゴムとも呼ばれる、加硫ゴム製の先ゴムが装着されている。
高齢者向けの歩行補助用杖は、殆どの場合市街地で使用されるので、先ゴムが取れてしまう、という不具合は殆ど起こらない。しかし、トレッキング用の杖の場合、山岳地で使用されるので、山道やぬかるんだ地面で使用される場合が頻繁に起こる。すると、石突きの先端が山道の石と石との間に挟まり先ゴムがとれてしまうことや、装着されている先ゴムの隙間に泥水が染み込み、摩擦係数が低下して先ゴムが抜け落ちてしまう、という不具合が度々生じていた。
先ゴムが杖から抜け落ちることが頻発すると、山岳地に先ゴムが散乱してしまう虞がある。
【0005】
本発明はかかる課題を解決し、杖の石突きから抜け落ちにくい、杖用緩衝部材及び杖を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の杖用緩衝部材は、杖の先端に装着するための装着孔を有する緩衝部材本体と、杖の先端が貫通する穴を有する抜け防止部材と、抜け防止部材と緩衝部材とを繋ぐ結合部材とよりなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、杖の石突きから抜け落ちにくい、杖用緩衝部材及び杖を提供できる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一の実施形態:杖101と先ゴム109の外観]
図1Aは、本発明の第一の実施形態に係る、先ゴム109を装着した杖101の外観図である。
図1Bは、杖101の先端部分の拡大図である。
図2A及び
図2Bは、先ゴム109と石突き108の外観斜視図である。
杖101は、トレッキングやハイキング、ウォーキング等の娯楽やスポーツにおいて、主に使用者の足の負担を軽減して、歩行を補助するために使用される。
杖101は、グリップ102が設けられている第一シャフト103、第二シャフト104、第三シャフト105を有する。各々のシャフトはアルミニウム合金やカーボンファイバー等の、軽くて剛性が高い材質で形成される。
【0010】
第一シャフト103は、第二シャフト104を内部に収納可能なように最も太く形成されている。
第一シャフト103より細い第二シャフト104は、第三シャフト105を内部に収納可能なように、第三シャフト105より太く形成されている。
第一シャフト103及び第二シャフト104の先端にはシャフトプロテクタ106a及び106bが設けられている。
第一シャフト103と第二シャフト104との間、第二シャフト104と第三シャフト105との間は、任意の長さに調節した後、第一シャフト103と第二シャフト104、又は第二シャフト104と第三シャフト105を回動させることで固定できる。なお、シャフトの固定手段はレバーによるロックも採用可能である。
【0011】
第三シャフト105の先端には、ぬかるみ等で杖101の沈み込みを防ぐためのバスケット107が設けられている。このバスケット107の更に先端には石突き108が設けられている。
石突き108の本体部分は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、PC(ポリカーボネート)、POM(ポリアセタール)その他各種のエンジニアリングプラスチックまたはCFRP、FRP等の、軽くて剛性が高い合成樹脂で形成されている。石突き108の先端部201は、ステンレス等の剛性が高い金属にて形成されている。
【0012】
石突き108の先端には、略円筒形状の先ゴム109が装着される。
先ゴム109は、石突き108を収納する先ゴム本体110(緩衝部材本体)と、先ゴム本体110に一体的に形成されている抜け防止リング111(抜け防止部材)と、抜け防止リング111と同様に先ゴム本体110と一体的に形成され、抜け防止リング111と先ゴム本体110とを繋ぐリンク112(結合部材)よりなる。
【0013】
先ゴム本体110は、石突き108の先端を収納する石突き装着孔202を有する。また、先ゴム本体110の先端側表面には、滑り止めのために同心円状の溝203が設けられている。
先ゴム109はその名の通り、適度な弾性と剛性、そして滑り止めとして必要な摩擦係数及び耐摩耗性を有する加硫ゴムにて形成される。なお、適度な弾性と剛性、そして滑り止めとして必要な摩擦係数及び耐摩耗性を満たすなら、シリコンゴム等の他の材質でもよい。
【0014】
抜け防止リング111は先ゴム本体110と一体的に形成されているので、同じ加硫ゴムにて形成される。そして、抜け防止リング111の穴111aは石突き108の本体部分の太さよりも僅かに小さい直径である。したがって、抜け防止リング111を石突き108に通すと、摩擦による引っ掛かりを生じる。
【0015】
リンク112も抜け防止リング111同様、先ゴム本体110と一体的に形成されているので、同じ加硫ゴムにて形成される。リンク112は抜け防止リング111の穴111aと先ゴム本体110の石突き108装着孔に石突き108が装着されることを考慮して、容易に屈曲する程度の柔軟性を備える。
【0016】
[第一の実施形態:先ゴム109の構造]
図3Aは、先ゴム109を先端側から見た図である。
図3Bは、先ゴム109を石突き装着孔202の側から見た図である。
図3Cは、先ゴム109の断面図である。
図3Dは、先ゴム109に石突き108を装着した状態における断面図である。
先ゴム本体110の先端側は、地面に接触し摩耗することから、滑り止めのために石突き装着孔202の側よりも太く形成されている。
先ゴム本体110の石突き装着孔202は、抜け防止リング111の穴111aとほぼ同じ直径の孔であり、石突き108の本体部分の太さよりも僅かに小さい。なお、抜け防止リング111は石突き108と密着して抜けにくくする必要がある。このため、穴111aの直径は、石突き装着孔202の直径と同じか、それ以下が望ましい。
【0017】
図3Cに示すように、石突き装着孔202の内部には、嵌合リング301が封入されている。嵌合リング301は、ステンレス等の剛性の高い金属で形成されている。この嵌合リング301は、石突き108の先端部201が嵌ることで、先ゴム109を石突き108に固定させる。
図3Dに示すように、先ゴム109を石突き108に装着する際には、リンク112を折り曲げて抜け防止リング111と石突き装着孔202を重ねる。その上で、抜け防止リング111と共に石突き108を石突き装着孔202に突き通す。
【0018】
図3A及び
図3Bに示すように、抜け防止リング111の両端にはタブ302が設けられている。タブ302の表面には滑り止め突起302aが形成されている。このタブ302に指を引っ掛けて強く引っ張ることで、先ゴム109を石突き108から取り外すことができる。先ゴム109は消耗品なので、交換し易くするために、抜け防止リング111にタブ302が設けられている。
【0019】
[第一の実施形態:先ゴム本体110、抜け防止リング111及びリンク112の作用]
図4は、石突き108から先ゴム109を引っ張り出した状態を示す図である。
ぬかるみに杖101の先端を沈めて引き抜いた際に、先ゴム109にぬかるみの泥を通じて強い引張力が加わったとする。すると、ぬかるみの泥水が先ゴム本体110の石突き装着孔202に入り込み、石突き108と先ゴム本体110との静止摩擦係数が低下する。そして、先ゴム本体110が石突き108から抜け落ち始める。
【0020】
しかし、先ゴム本体110にはリンク112を通じて抜け防止リング111が付着している。そして、先ゴム本体110に加わる引張力が、リンク112を通じて抜け防止リング111にも伝わる。すると、抜け防止リング111はリンク112によって引っ張られる。抜け防止リング111は
図4に示すように石突き108の本体部分に対して斜めに引っ張られる。すると、リンク112を通じて抜け防止リング111の穴111aの内周部分に強い力が加わることで、石突き108の本体部分と抜け防止リング111の穴111aが強固に噛み合う状態になる。
【0021】
リンク112の長さは石突き装着孔202の深さよりも短く形成されている。結果として、リンク112が切れない限り、先ゴム本体110から石突き108は抜け落ちなくなる。石突き108から先ゴム109を取り外すには、抜け防止リング111ごと取り外さなければならない。
なお、リンク112の長さが石突き装着孔202の深さよりも長いと、先ゴム本体110が石突き108から抜けて、石突き108の先端が露出してしまう。こうなると、リンク112を通じて抜け防止リング111の穴111aの内周部分に強い力が加わらなくなるので、抜け防止リング111も抜けやすくなってしまう。但し、抜け防止リング111が石突き108から抜け落ちない限り、あるいはリンク112が切れてしまわない限り、先ゴム109が杖101から抜け落ちて山岳地に散乱してしまうことはなくなる。
【0022】
すなわち、先ゴム109の石突き装着孔202の先端近辺から、石突き装着孔202の深さより短いリンク112を通じて、石突き108の本体部分の太さよりも僅かに小さい直径の穴111aを有する、ゴム質の抜け防止リング111を設ける事により、ぬかるみ等から杖101を引き出した際に先ゴム109が石突き108から抜け落ちる事故を防止できる。
【0023】
[第二の実施形態:先ゴム本体110及びリンク112の外観]
第一の実施形態では、先ゴム109は先ゴム本体110と抜け防止リング111とリンク112が一体成型されていた。リンク112は相当な引張強度に耐える必要がある一方、その性質上、材質は一切問わない。そこで、先ゴム本体110と抜け防止リング111を別体に形成し、これらを所定の強度を備える紐等で結束する構成にすると、第一の実施形態の先ゴム109と同等か、それ以上の効果が期待できる。
【0024】
図5は、本発明の第二の実施形態に係る、先ゴム501の外観図である。
先ゴム本体502の、石突き装着孔202の先端近辺には、ストラップホール502aが設けられている。
一方、抜け防止リング503にもストラップホール503aが設けられている。
先ゴム本体502のストラップホール502aと、抜け防止リング503のストラップホール503aには、紐504が結び付けられている。この紐504は石突き装着孔202の深さよりも短い。
紐504はナイロンや麻等の、引張強度が高い材質が好ましい。また、紐504の代わりにステンレス等の金属のチェーンを用いてもよい。
本実施形態の場合、任意の紐504やチェーン、或はリング等の結束用具がリンク112となる。勿論、これら結束用具の長さも石突き装着孔202の深さより短く形成されることが好ましい。
【0025】
上述の実施形態の他、以下のような応用例が考えられる。
(1)第一の実施形態の先ゴム109の、リンク112の強度を確保するために、ポリパラフェニレンテレフタルアミドやナイロン等の芯材を封入すると、より耐久性が期待できる。
(2)第二の実施形態の先ゴム501の、先ゴム本体502にストラップホール502aを設ける代わりに、先ゴム本体502に紐504を縛り付けるくびれを設けてもよい。
【0026】
(3)第一の実施形態の先ゴム109において、抜け防止リング111に設けられているタブ302がリンク112に対して設けられる方向は、縦方向、横方向のどちらでも良い。
図6は、第一の実施形態の先ゴム109を変形した、先ゴム601の斜視図である。
先ゴム601のリンク112は、抜け防止リング603に設けられている第一タブ602及び第二タブ603のうち、第一タブ602に結合されている。このように構成された先ゴム601も、第一の実施形態の先ゴム109と同等の作用と効果を奏する。
【0027】
本実施形態では、先ゴム109を開示した。
先ゴム109の石突き装着孔202の先端近辺から、石突き装着孔202の深さより短いリンク112を通じて、石突き108の本体部分の太さよりも僅かに小さい直径の穴111aを有する、ゴム質の抜け防止リング111を設ける事により、ぬかるみ等から杖101を引き出した際に先ゴム109が石突き108から抜け落ちる事故を防止できる。
【0028】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。