特許第6246572号(P6246572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6246572ビシクロヘプタン化合物およびエポキシ樹脂硬化剤およびエポキシ樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246572
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ビシクロヘプタン化合物およびエポキシ樹脂硬化剤およびエポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 237/34 20060101AFI20171204BHJP
   C07C 233/78 20060101ALI20171204BHJP
   C08G 59/54 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C07C237/34CSP
   C07C233/78
   C08G59/54
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-249419(P2013-249419)
(22)【出願日】2013年12月2日
(65)【公開番号】特開2015-105263(P2015-105263A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000179904
【氏名又は名称】山本化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085202
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 博
(72)【発明者】
【氏名】山口 亮二
(72)【発明者】
【氏名】和田 勝
(72)【発明者】
【氏名】政岡 俊裕
(72)【発明者】
【氏名】中塚 正勝
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/10253(WO,A1)
【文献】 特開2011−201952(JP,A)
【文献】 Journal of Polymer Science: Polymer Physics Edition,1981年,vol.19, No.2,p.281-292
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 233/00−237/52
C08G 59/00−59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1−B)で表される化合物。
【請求項2】
請求項1の化合物からなるエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項3】
少なくとも1種のエポキシ樹脂と、少なくとも1種のエポキシ樹脂硬化剤から成るエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂硬化剤が請求項1の化合物からなる硬化剤であるエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて成るエポキシ樹脂硬化物。
【請求項5】
一般式(1−A)で表される、請求項1の化合物の前駆体化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な構造を有するビシクロヘプタン化合物に関する。
さらに詳しくは、各種の機能性高分子材料(例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリカルボジイミド)、各種の機能性電子材料(例えば、有機電界発光素子材料、有機トランジスタ素子材料、光電変換素子材料)の製造原料として有用なビシクロヘプタン化合物、および該化合物から成るエポキシ樹脂硬化剤およびエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化社会の実現に向け、半導体分野、情報通信分野、表示装置分野、精密機械分野、輸送機器分野、航空宇宙分野などの技術進歩が著しく、それに伴い、各分野の進展を支える基礎材料として、各種の機能性高分子材料、各種の機能性電子材料に対する期待が高まっている。
各種の機能性高分子材料としては、例えば、種々のエポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリカルボジイミドなどが開発されてきている。
【0003】
各種の特性を有するポリイミドの製造原料として、種々のアミン化合物が提案されており、例えば、4,4’−ビス(アミノフェノキシ)ジフェニルスルフォン、4,4’−ビス(アミノフェノキシ)ベンゾフェノンは有用な化合物であることが報告されている(非特許文献1)。
また、4,4’−ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、および1,4−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼンも各種ポリイミドの製造原料として有用な化合物であることが報告されている(非特許文献1)。
2,5−ジアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンは、ポリイミドの製造原料として有用であることが報告されている(特許文献1、2)。
【0004】
また、エポキシ樹脂硬化剤として、アミン化合物、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンが知られている(特許文献3)。
また、エポキシ樹脂硬化剤として、脂肪族アミンが有用であることが報告されている(特許文献4、5,6)。
【0005】
しかしながら、これらのアミン化合物をエポキシ硬化剤として使用すると、製造されるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性は充分なものとは言えず、現在では、更なる改良が求められている。
このように、各種の機能性高分子材料を用いる分野においては、様々な特性の改良が望まれており、その特性の改良を行うためにも、製造原料として新規なアミン化合物が求められている。
【0006】
また、種々のアミン化合物は、各種の機能性電子材料(例えば、有機電界発光素子材料、有機トランジスタ素子材料、光電変換素子材料)として有用であることが知られている。
有機電界発光素子材料として、アミン化合物は、例えば、正孔注入輸送材料、発光材料として有用であることが知られている(非特許文献2)。
また、有機トランジスタ素子材料として、アミン化合物は、例えば、p−型の有機トランジスタ材料として有用であることが知られている(非特許文献3、4)。
さらに、光電変換素子(有機太陽電池)材料として、アミン化合物は有用であることが知られている(非特許文献5)。
これら各種の機能性電子材料の分野においても、更なる特性改良が望まれており、それに伴い、新規なアミン化合物の創出が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2002/010253号
【特許文献2】特開2011−201952号公報
【特許文献3】特開平7−258389号公報
【特許文献4】特表2005−537350号公報
【特許文献5】特開2010−37562号公報
【特許文献6】特開2011−57984号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Polymer,37、3683(1996)
【非特許文献2】J.Mater.Chem.,10、1(2000)
【非特許文献3】Chem.Rev.,107、1066(2007)
【非特許文献4】Angew.Chem.Int.Ed.,47、4070(2008)
【非特許文献5】Chem.Rev.,110、6689(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、前記特定構造を有するビシクロヘプタン化合物、およびエポキシ樹脂硬化剤およびエポキシ樹脂組成物を提供することである。
さらに詳しくは、ビシクロヘプタン骨格を有するジアミン化合物、および該ジアミンを製造するに際し前駆体となるジニトロ化合物を提供することである。
さらには、上記ジアミン化合物から成るエポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂組成物およびエポキシ樹脂硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、各種の化合物に関し、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(i)一般式(1)で表される化合物であり、
(式中、XおよびXはそれぞれ独立に、ニトロ基またはアミノ基を表す)
(ii)一般式(1−B)で表される化合物からなるエポキシ樹脂硬化剤であり、
(iii)少なくとも1種のエポキシ樹脂と、少なくとも1種のエポキシ樹脂硬化剤から成るエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂硬化剤が一般式(1−B)で表される化合物からなる硬化剤であるエポキシ樹脂組成物であり、
さらには、
(iV)前記(iii)記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて成るエポキシ樹脂硬化物に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、各種の機能性高分子材料(例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリカルボジイミド)、および各種の機能性電子材料(例えば、有機電界発光素子材料、有機トランジスタ素子材料、光電変換素子材料)を製造する際に有用な原料であるビシクロヘプタン化合物、および該化合物から成るエポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂組成物を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
本発明は、一般式(1)で表される化合物である。
(式中、XおよびXはそれぞれ独立に、ニトロ基またはアミノ基を表す)
【0013】
一般式(1)で表される化合物において、XおよびXはそれぞれ独立に、ニトロ基またはアミノ基を表し、より好ましくは、XおよびXが同時に、ニトロ基である一般式(1−A)で表される化合物、ならびにXおよびXが同時に、アミノ基である一般式(1−B)で表される化合物である。
一般式(1)で表される化合物において、XおよびXはそれぞれ独立に、アミド結合(−CO−NH−)に対して、オルト位、メタ位またはパラ位を表し、より好ましくは、メタ位またはパラ位を表し、さらに好ましくは、XおよびXが同時に、メタ位またはパラ位を表す。
【0014】
一般式(1−A)において、二つのニトロ基はそれぞれ独立に、アミド結合に対して、パラ位、メタ位またはオルト位を表し、好ましくは、二つのニトロ基が同時に、アミド結合に対してパラ位である一般式(1−A−p)で表される化合物、ならびに二つのニトロ基が同時に、アミド結合に対してメタ位である一般式(1−A−m)で表される化合物である。
【0015】
一般式(1−B)において、二つのアミノ基はそれぞれ独立に、アミド結合に対して、パラ位、メタ位またはオルト位を表し、好ましくは、二つのアミノ基が同時に、アミド結合に対してパラ位である一般式(1−B−p)で表される化合物、ならびに二つのアミノ基が同時に、アミド結合に対してメタ位である一般式(1−B−m)で表される化合物である。
【0016】
また、一般式(1)で表される化合物において、ビシクロヘプタン骨格に結合している二つのアミノメチル基の結合位置は、好ましくは、2位と5位、あるいは2位と6位である。
より好ましくは、一般式(1)で表される化合物において、ビシクロヘプタン骨格に結合している二つのアミノメチル基の結合位置および立体配置は、
2位がexo体であり、5位がexo体であり、
2位がexo体であり、5位がendo体であり、
2位がendo体であり、5位がendo体であり、
2位がexo体であり、6位がexo体であり、
2位がexo体であり、6位がendo体であり、
2位がendo体であり、6位がendo体である。
さらに好ましくは、
2位がexo体であり、5位がexo体であり、
2位がexo体であり、5位がendo体であり、
2位がendo体であり、5位がendo体であり、
2位がexo体であり、6位がexo体であり、あるいは
2位がexo体であり、6位がendo体である。
【0017】
すなわち、下記の結合位置、立体配置を有するビシクロヘプタン骨格が好ましいものである。

【0018】
一般式(1)で表される化合物において、XおよびXが同時に、ニトロ基である一般式(1−A)で表される化合物の製造方法に関しては、特に制限するものではないが、好ましくは、一般式(2)で表される化合物に、一般式(3)および一般式(4)で表される化合物を作用させることにより製造することができる。
また、一般式(2)で表される化合物の塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩)に、一般式(3)および一般式(4)で表される化合物を作用させることにより製造することができる。
(式中、ZおよびZはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、または水酸基を表す)
【0019】
一般式(2)で表される化合物は、例えば、ビシクロ[2.2.1]−ヘプテン−2−カルボニトリルに、パラジウム触媒とトリフェニルフォスハイト、あるいは0価のニッケル触媒の存在下で、シアン化水素を付加させた後、水素化することにより製造することができる(例えば、特開平3−81255号公報、特開2002−69043号公報に記載の方法を参考にすることができる)。

勿論、一般式(2)で表される化合物において、ビシクロヘプタン骨格に結合している二つのアミノメチル基の結合位置および立体配置は、一般式(1)におけるビシクロヘプタン骨格におけるアミノメチル基と同様であり、特に好ましい構造は、
2位がexo体であり、5位がexo体であり、
2位がexo体であり、5位がendo体であり、
2位がendo体であり、5位がendo体であり、
2位がexo体であり、6位がexo体であり、あるいは
2位がexo体であり、6位がendo体である。
【0020】
一般式(3)および一般式(4)において、ZおよびZはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、または水酸基を表し、より好ましくは、塩素原子、臭素原子、または水酸基を表し、さらに好ましくは、塩素原子を表す。
一般式(3)で表される化合物において、ニトロ基は、−COZに対して、オルト位、メタ位またはパラ位を表し、より好ましくは、メタ位またはパラ位を表す。
一般式(4)で表される化合物において、ニトロ基は、−COZに対して、オルト位、メタ位またはパラ位を表し、より好ましくは、メタ位またはパラ位を表す。
【0021】
一般式(1)および一般式(2)で表される化合物において、ビシクロヘプタン中の二つのアミノメチル基の置換位置の違い、さらには立体配置の違いにより複数の異性体が存在するが、本発明においては、一般式(1)および一般式(2)で表される化合物は、それら異性体の1種でもよく、あるいは複数存在した組成物、混合物の状態でもよい。

すなわち、一般式(1)および一般式(2)で表される化合物において、例えば、2位がexo体であり、5位がexo体である化合物、あるいは2位がexo体であり、5位がendo体である化合物のそれぞれ単独の化合物でもよく、さらには、これらの化合物の混合物でもよい。

尚、一般式(2)で表される化合物の内、2位がexo体であり、5位がexo体である化合物、あるいは2位がexo体であり、5位がendo体である化合物は、例えば、特開2011−201952号公報に記載の方法により製造することができる。

勿論、本発明においては、一般式(1)で表される化合物において、
2位がexo体であり、5位がexo体である化合物、
2位がexo体であり、5位がendo体である化合物、
2位がendo体であり、5位がendo体である化合物、
2位がexo体であり、6位がexo体である化合物、および
2位がexo体であり、6位がendo体である化合物から成る組成物をも包含するものである。
その場合、組成物中、異性体の含有割合は、特に制限するものではないが、一般に、各々の異性体の含有割合は、1〜60質量%程度が好ましく、2〜50質量%程度がより好ましい。
【0022】
一般式(1−A)で表される化合物は、例えば、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)において、Zがハロゲン原子である化合物、および一般式(4)において、Zがハロゲン原子である化合物を、塩基の存在下で作用させることにより製造することができる。
さらに、一般式(1−A)で表される化合物は、例えば、一般式(2)で表される化合物の塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩)と、一般式(3)において、Zがハロゲン原子である化合物、および一般式(4)において、Zがハロゲン原子である化合物を、塩基の存在下で作用させることにより製造することができる。
また、一般式(1−A)で表される化合物は、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)において、Zが水酸基である化合物、および一般式(4)において、Zが水酸基である化合物を、脱水剤(例えば、ポリリン酸、N,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド)を作用させることにより製造することができる。
【0023】
一般式(1−A)で表される化合物の製造において使用する一般式(3)および一般式(4)で表される化合物の量は、一般には、一般式(2)で表される化合物1モルに対して、それぞれ0.8〜1.2モル程度、より好ましくは、0.9〜1.1モル程度、さらに好ましくは、0.95〜1.05モル程度使用する。
【0024】
一般式(1−A)で表される化合物の製造において使用する塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの無機塩基、
例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、ナトリウム(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノラート)、カリウム(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノラート)、カリウム(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノラート)などの金属アルコキシド、
例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、キノリン、ピコリン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどの有機塩基などを挙げることができ、より好ましくは、無機塩基あるいは有機塩基である。
係る塩基は、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
塩基の使用量は、一般には、一般式(3)および一般式(4)で表される化合物の総量に対して、0.8〜4.0当量であり、好ましくは、1.0〜3.0当量使用する。
【0025】
一般式(1−A)で表される化合物の製造においては、有機溶媒の非存在下で実施することも可能であるが、好ましくは、有機溶媒の存在下で実施する。
さらに、一般式(1−A)で表される化合物は、水の存在下でも、製造することができる。
【0026】
係る有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、
例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、メシチレン、クメン、プソイドクメン、テトラリンなどの芳香族炭化水素溶媒、
例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどのエーテル系溶媒、
例えば、ジメチルスルフォキサイド、ジメチルスルフォン、スルフォラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ−n−ブチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルなどの非プロトン性極性溶媒などの有機溶媒を挙げることができ、より好ましくは、芳香族炭化水素溶媒、または非プロトン性極性溶媒である。
これらの有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。

一般式(1−A)で表される化合物の製造において、有機溶媒の使用量は、特に制限するものではないが、一般には、式(2)で表される化合物の濃度が、0.05〜6M程度、より好ましくは、0.08〜5M程度となる量に調製する。
【0027】
一般式(1−A)で表される化合物の製造において、一般式(2)で表される化合物、あるいは該化合物の塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩)、一般式(3)において、Zがハロゲン原子である化合物、および一般式(4)において、Zがハロゲン原子である化合物、有機溶媒あるいは水、および塩基の供給方法に関しては、特に制限するものではないが、例えば、
(ア)有機溶媒あるいは水の存在下、一般式(2)で表される化合物、あるいは一般式(2)で表される化合物の塩、および塩基の混合物に、一般式(3)において、Zがハロゲン原子である化合物、および一般式(4)において、Zがハロゲン原子である化合物を供給する方法、
(イ)有機溶媒あるいは水の存在下、一般式(2)で表される化合物、あるいは一般式(2)で表される化合物の塩に、一般式(3)において、Zがハロゲン原子である化合物、および一般式(4)において、Zがハロゲン原子である化合物を供給しながら、さらに塩基を供給する方法、などを挙げることができる。
【0028】
一般式(1−A)で表される化合物を製造する際の反応温度に関しては、特に制限するものではないが、一般には、−10〜200℃程度、好ましくは、0〜180℃程度、より好ましくは、0〜150℃程度で実施する。
一般式(1−A)で表される化合物を製造する際の反応時間に関しては、特に制限するものではないが、一般には、0.5〜20時間程度、より好ましくは、1〜15時間程度で実施することができる。

また、一般式(1−A)で表される化合物を製造する際の反応は、大気雰囲気下で実施することができるが、一般には、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)存在下で実施することが好ましい。
一般式(1−A)で表される化合物の製造に際して、反応は、常圧下で実施してもよく、所望により、減圧下または加圧下で実施することも可能である。
【0029】
このような方法で製造される一般式(1−A)で表される化合物は、反応終了後、例えば、必要に応じ、有機溶媒あるいは水を留去した後に、結晶として単離することができる。
さらには、反応溶媒に、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの非プロトン性極性溶媒を使用した場合には、
水と接触させた後に、一般式(1−A)で表される化合物を単離することができる。
また、一般式(1−A)で表される化合物は、所望により、再結晶法、クロマトグラフィー法などの公知の方法により単離、精製することができる。
【0030】
尚、一般式(1)において、XおよびXが同時にアミノ基である一般式(1−B)で表される化合物の製造方法に関しては、特に制限するものではないが、好ましくは、一般式(1−A)で表される化合物中のニトロ基を還元し、アミノ基へ変換することにより製造することができる。
【0031】
一般式(1−B)で表される化合物の製造方法としては、好ましくは、一般式(1−A)で表される化合物と、水素源を作用させる(水素化反応)ことから成る製造方法であり、
より好ましくは、触媒の存在下、一般式(1−A)で表される化合物と、水素源を作用させることから成る製造方法である。

水素源としては、例えば、プロトン酸(例えば、塩化水素、臭化水素)と還元剤(例えば、鉄、スズ、塩化第一スズなど)との組み合わせを包含するものであるが、より好ましくは、水素源自体が、水素供給能力を有するものであり、より好ましくは、水素、ヒドラジンを挙げることができ、より好ましくは、水素である。

尚、水素源として水素を用いる場合、水素は気体状態で使用してもよく、また有機溶媒に溶解させた溶液状態で使用してもよい。
水素源の使用量は、特に制限するものではないが、一般式(1−A)で表される化合物中のニトロ基をアミノ基に変換するに充分な量を使用するものであり、過剰量の水素源の存在下で実施することも可能であるが、一般には、水素源は、水素1モルに換算して、一般式(1−A)で表される化合物1モルに対して、4〜8モル程度使用し、より好ましくは、6モル程度使用する。
【0032】
触媒としては、好ましくは、周期律表の第8〜第10族から選ばれる金属原子を含有して成る金属触媒であり、より好ましくは、鉄、ロジウム、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、コバルトまたは白金原子を含有して成る金属触媒であり、さらに好ましくは、パラジウム原子を含有して成るパラジウム触媒である。
尚、触媒としては、該金属原子を、例えば、炭素、アルミナ、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウムなどの担体に坦持させた形態で使用することは好ましい。
係る触媒としては、例えば、塩化第二鉄/活性炭、パラジウム/炭素、パラジウム/アルミナ、パラジウム/硫酸バリウム、白金、酸化白金、白金/炭素、白金/シリカ、ロジウム/炭素、ロジウム/アルミナ、ルテニウム/炭素、ラネーニッケル、ラネーコバルトなどを挙げることができ、より好ましくは、パラジウム/炭素、パラジウム/アルミナなどのパラジウム触媒である。
触媒の使用量は、特に制限するものではないが、一般には、一般式(1−A)で表される化合物に対して、0.01〜40質量%程度、より好ましくは、0.1〜30質量%程度である。
【0033】
触媒の存在下、一般式(1−A)で表される化合物と、水素源を作用させる際には、好ましくは、有機溶媒の存在下で実施する。
係る有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、
例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、メシチレン、クメン、プソイドクメン、テトラリンなどの芳香族炭化水素溶媒、
例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、
例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、
例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどのエーテル系溶媒、
例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ−n−ブチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルアミドなどの非プロトン性極性溶媒などの有機溶媒を挙げることができる。
これらの有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
尚、有機溶媒の使用量は、特に制限するものではないが、一般には、一般式(1−A)で表される化合物の濃度が、0.05〜6M程度、より好ましくは、0.08〜5M程度となる量に調製する。
【0034】
一般式(1−B)で表される化合物の製造において、一般式(1−A)で表される化合物、触媒、有機溶媒および水素源の供給方法に関しては、特に制限するものではないが、例えば、
(ウ)有機溶媒の存在下、一般式(1−A)で表される化合物および触媒の混合物に、水素源を供給する方法、
(エ)有機溶媒の存在下、予め触媒を存在させて、一般式(1−A)で表される化合物の供給と共に、水素源を供給する方法、などを挙げることができる。
【0035】
一般式(1−A)で表される化合物と、水素源を作用させる際の反応温度に関しては、特に制限するものではないが、一般には、0〜200℃程度、好ましくは、10〜150℃程度、より好ましくは、20〜120℃程度で実施する。
また、一般式(1−A)で表される化合物と、水素源を作用させる際の反応時間に関しては、特に制限するものではないが、一般には、1〜50時間程度、より好ましくは、2〜30時間程度で実施することができる。
また、一般式(1−A)で表される化合物と水素源との反応は、水素源と共に、例えば、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)の共存下で実施することができる。
一般式(1−A)で表される化合物と、水素源を作用させる際、該反応は、常圧下で実施してもよく、所望に応じ、減圧下または加圧下で実施することも可能である。
【0036】
このような方法で製造される一般式(1−B)で表される化合物は、分子中にアミノ基を有していることから、例えば、酸(例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸)を作用させて、塩(例えば、塩酸塩、臭酸塩、硫酸塩)として単離することもできる。
その一般式(1−B)で表される化合物の塩は、塩基(例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を作用させることにより、一般式(1−B)で表される化合物へと変換することができる。
また、一般式(1−B)で表される化合物は、所望により、クロマトグラフィー法などの公知の方法により単離、精製することができる。
また、一般式(1−B)で表される化合物および該化合物の塩は、有機溶媒および/または水の存在下、例えば、活性炭、ゼオライトなどを作用させて、精製することもできる。
【0037】
尚、一般式(1−A)および一般式(1−B)で表される化合物の構造は、元素分析、MS(FD−MS)分析、IR分析、H−NMR、13C−NMRなどの各種分析方法により同定することができる。
【0038】
一般式(1−A)および一般式(1−B)で表される化合物を製造するに際して、使用する反応装置の種類、形態に関しては特に制限するものではないが、一般には、槽型、管型、塔型の反応装置を用いることができる。また、各製造工程を、回分式(バッチ式)で実施することができ、さらには、連続的に実施することも可能である。
また、一般式(1−A)および一般式(1−B)で表される化合物を製造するに際して、使用する反応装置は、様々な撹拌装置を備えることができる。係る撹拌装置としては、例えば、パドル型撹拌機、プロペラ型撹拌機、タービン型撹拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、ラインミキサー、ラインホモミキサーなどの高速撹拌機、さらにはスタティックミキサー、コロイドミル、オリフィスミキサー、フロージェットミキサーなどを挙げることができる。
尚、各製造工程における反応の進行は、例えば、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどの方法で追跡することができる。
【0039】
製造原料である一般式(2)で表される化合物として、複数の異性体の混合物を使用すれば、製造される一般式(1−A)および一般式(1−B)で表される化合物は、複数の異性体の混合物として製造されるが、所望により、各異性体を分離することもできる。
勿論、所望により、一般式(1−A)および一般式(1−B)に含まれる異性体の含有割合を調製することもできる。
【0040】
以下、本発明のエポキシ硬化剤、エポキシ樹脂組成物に関して説明する。
尚、本明細書において、「エポキシ樹脂」とは1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を表す。「エポキシ樹脂組成物」とは少なくとも1種のエポキシ樹脂、および少なくとも1種のエポキシ樹脂硬化剤とから成り、さらに所望に応じて、充填材、反応性希釈剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、難燃剤、消泡剤、湿潤剤、レベリング剤などを含有する未硬化状態の混合物を表す。また、「エポキシ樹脂硬化物」とはエポキシ樹脂組成物を、加熱して架橋反応させた高分子化合物であり、より好ましくは、ガラス転移温度が50℃以上を有するまで高分子量化した高分子化合物を表す。
本発明のエポキシ樹脂組成物の成分であるエポキシ樹脂としては、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であればよく、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する任意の構造を有する化合物を挙げることができる。
【0041】
係るエポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、ビスフェノールAF、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラヒドロビスフェノールF、ヘキサヒドロビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、または水素化ビスフェノールFなどのビスフェノール系化合物と、エピクロロヒドリンとを反応させることにより製造されるビスフェノール型エポキシ樹脂、
例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、プロピルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、ペンチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、またはノニルフェノールノボラックなどのノボラックと、エピクロロヒドリンとを反応させることにより製造されるノボラック型エポキシ樹脂、
例えば、カテコール、レゾルシン、トリヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスレゾルシノール、ハイドロキノン、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン、ジヒドロキシナフタレン、ビフェノールまたはビキシレノールなどの多価フェノールと、エピクロロヒドリンとを反応させることにより製造されるフェノール型エポキシ樹脂、
例えば、グリセロール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、またはポリプロピレングリコールなどの脂肪族多価アルコールと、エピクロロヒドリンとを反応させることにより製造されるポリグリシジルエーテル、
【0042】
例えば、p−オキシ安息香酸、またはβ−オキシナフトエ酸などのヒドロキシカルボン酸と、エピクロロヒドリンとを反応させることにより製造されるグリシジルエーテルエステル、
例えば、フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、ダイマー酸、または重合脂肪酸などのポリカルボン酸と、エピクロロヒドリンとを反応させることにより製造されるポリグリシジルエステル、
例えば、アミノフェノールまたはアミノアルキルフェノールと、エピクロロヒドリンとを反応させることにより製造されるグリシジルアミノグリシジルエーテル、
例えば、アミノ安息香酸と、エピクロロヒドリンとを反応させることにより製造されるジグリシジルアミノエステル、
例えば、アニリン、トルイジン、2,4,6−トリブロモアニリン、m−キシリレンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ヒダントイン、アルキルヒダントイン、またはシアヌル酸と、エピクロロヒドリンとを反応させることにより製造されるポリグリシジルアミン型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
これらエポキシ樹脂は1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
【0043】
本発明で使用できるエポキシ樹脂としては、ビスフェノール系化合物とエピクロロヒドリンとを反応させることにより得られるビスフェノール型エポキシ樹脂、あるいは、ポリグリジジルアミン型エポキシ樹脂であることが好ましい。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノールF型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
ポリグリジジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,O−トリグリシジルアミノフェノール、N,N,O−トリグリシジルアミノクレゾール、トリグリシジルイソシアヌレートなどを挙げることができる。
さらには、ビスフェノール型エポキシ樹脂とポリグリジジルアミン型エポキシ樹脂を併用することにより、エポキシ樹脂硬化物の接着性、耐熱性、剛性、さらには生産性を向上させることができる。
【0044】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の成分であるエポキシ樹脂硬化剤としては、一般式(1―B)で表される化合物を使用する。
勿論、一般式(1―B)で表される化合物は、複数の異性体の混合物として、エポキシ樹脂硬化剤として用いることができ、さらには、各異性体の一種を単独でエポキシ樹脂硬化剤として用いることができる。
【0045】
本発明において、一般式(1−B)で表される化合物であるエポキシ樹脂硬化剤の使用量は、エポキシ基1molに対し、活性水素1molを有するアミンを使用した場合を1当量と定めたとき、エポキシ樹脂中のエポキシ基に対して、0.5〜2.0当量であることが好ましく、0.8〜1.2当量であることがより好ましい。
エポキシ樹脂硬化剤の使用量が0.5当量未満であると、エポキシ樹脂硬化物の十分な耐熱性を得ることができない場合があり、また、2.0当量を超えると、エポキシ樹脂硬化物中の架橋点数は増加するが、架橋密度が低下し、充分な剛性および耐熱性が得られない場合がある。
【0046】
本発明においては、エポキシ樹脂硬化剤である一般式(1−B)で表される化合物は、エポキシ樹脂中に溶解、または分散させて使用することが好ましい。
エポキシ樹脂硬化剤をエポキシ樹脂中に溶解、または分散させる方法としては、特に制限するものではなく、公知の方法を適用することができる。
また、エポキシ樹脂硬化剤をエポキシ樹脂中に分散させた後に、ロールミル、ボールミル、ニーダー、押し出し機を用いて、微粒化、溶解させてもよい。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、製造されるエポキシ樹脂硬化物の特性を損なわない範囲で、所望に応じ、一般にエポキシ樹脂組成物に用いられる各種の添加剤、例えば、充填材、反応性希釈剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、さらには難燃剤、消泡剤、湿潤剤、レベリング剤などの公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0048】
充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、二酸化チタンなどの金属酸化物、例えば、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸化物、さらには、ガラスバルーン、シリカ、マイカ、タルク、ウォラストナイト、カーボンブラック、グラファイト、金、アルミニウム粉、鉄粉などを挙げることができる。
【0049】
反応性希釈剤としては、末端にグリシジルエーテル基を有する低粘度の液状樹脂を挙げることができる。
反応性希釈剤としては、例えば、ブチルモノグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリシジルアニリン、グリシジルオルトトルイジン、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルなどを挙げることができる。
【0050】
カップリング剤としては、例えば、シラン系化合物、アルミニウム系化合物、またはチタネート系化合物を用いることができる。
カップリング剤の具体例としては、例えば、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン系化合物、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウム系化合物、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートなどのチタネート系化合物を挙げることができる。
【0051】
界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、またはフッ素系界面活性剤などを用いることができる。
界面活性剤の具体例としては、例えば、Byk−300、Byk−306、Byk−335、Byk−310、Byk−341、Byk−344、またはByk−370〔商品名;ビック・ケミー(株)製〕などのシリコン系界面活性剤、Byk−354、ByK−358、またはByk−361〔商品名;ビック・ケミー(株)製〕などのアクリル系界面活性剤、フタージェント250、またはフタージェント251〔商品名;ネオス(株)製〕などのフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0052】
また、酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物などを用いることができる。
酸化防止剤の具体例としては、例えば、IRGAFOS
XP40、IRGAFOS XP60、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1135、IRGANOX 1520L〔商品名;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製〕などを挙げることができる。
【0053】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂硬化剤として、一般式(1−B)で表される化合物を用いるものであるが、本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、所望に応じて、一般式(1−B)で表される化合物と、公知の硬化剤および/または公知の硬化促進剤を併用することができる。
これら公知の硬化剤としては、例えば、ジエチルトルエンジアミン、トリアミノジエチルトルエン、ジシアンジアミド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、フェノールノボラック樹脂などのフェノール化合物、アミンアダクト型硬化剤、マイクロカプセル型硬化剤などを挙げることができる。
また、公知の硬化促進剤としては、例えば、モノメチルアミンのBF錯体、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、3級アミン、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、tert−ブチルカテコールなどを挙げることができる。
エポキシ樹脂硬化剤として、一般式(1−B)で表される化合物と、公知の他の硬化剤を併用する場合、総エポキシ樹脂硬化剤中、一般式(1−B)で表される化合物は、好ましくは、30モル%以上であり、より好ましくは、50モル%以上であり、さらに好ましくは、70モル%以上である。
【0054】
本発明のエポキシ樹脂組成物の製造方法に関しては、特に制限するものではないが、一般には、エポキシ樹脂と一般式(1−B)で表される化合物を、約10〜80℃で、より好ましくは、約20〜30℃で混合することが望ましい。
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、エポキシ樹脂組成物を、一般に、150〜200℃で、0.5〜5時間程度硬化させることにより製造することができる。
尚、エポキシ樹脂組成物の成形方法としては、特に制限するものではなく、例えば、注形法、含浸法、湿式積層法、乾式積層法、プルトルージョン法、トランスファー成形法、圧縮成形法、射出成形法などの公知の成形方法を適用することができる。
【0055】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、種々の用途に使用することができ、好ましくは、繊維強化複合材料用のエポキシ樹脂組成物として使用することができる。

本発明のエポキシ樹脂組成物は、これを強化繊維に含浸させることによって繊維強化複合材料の前駆体である「プリプレグ」を得ることができる。
強化繊維の種類に関しては、特に制限するものではなく、複合材料の強化繊維として用いられる繊維を用いることができる。
強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、さらには表面処理した有機繊維を挙げることができる。
強化繊維としては、1種を単独で使用してもよく、また複数種の強化繊維を使用することもできる。強化繊維としては、より好ましくは、炭素繊維である。
プリプレグの形態に関しては、特に限定するものではなく、一方向材、織物、組紐状織物、不織布などの任意の形態をとることができる。
【0056】
本発明のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させる方法に関しては、特に制限するものではない。
一般には、本発明のエポキシ樹脂組成物を、60〜90℃に加温して強化繊維に含浸させる方法(ホットメルト法)が好ましく適用される。
このようにして製造されたプリプレグは、公知の方法により繊維強化複合材料に成形される。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料の製造方法として、例えばハンドレイアップ法、ホットメルト含浸プリプレグ法、ウェット含浸プリプレグ法、FW(filament winding)法などを挙げることができる。
プリプレグ法とは、プリプレグを積層して、例えば、オートクレーブ中、または加圧プレス下の条件で、一般に、150〜200℃で、0.5〜5時間程度硬化させることにより繊維強化複合材料を製造する方法である。
また、FW法とは、例えば、エポキシ樹脂組成物を含浸した強化繊維をマンドレル(芯金)に巻き付け、一般に、150〜200℃で、0.5〜5時間程度硬化させることにより繊維強化複合材料を製造する方法である。
【0057】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、RTM(Resin Transfer Molding)法を利用した繊維強化複合材料の製造にも好適に用いることができる。
RTM法とは、強化繊維からなる繊維基材あるいはプリフォームを成形型内に設置し、その成形型内にエポキシ樹脂組成物を注入して強化繊維に含浸させ、その後に加熱し、エポキシ樹脂組成物を硬化させて、成形品である繊維強化複合材料を得る方法である。
また、繊維強化複合材料の諸特性(例えば、耐衝撃性)などの改良目的で、バインダーの存在下で、実施することができる。
係るバインダーとしては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂であるポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどを挙げることができる。
【0058】
エポキシ樹脂硬化剤として、一般式(1−B)で表される化合物を用いてなる本発明のエポキシ樹脂組成物と、強化繊維からなる繊維強化複合材料は、強化繊維の体積含有率が高く(一般には、50〜60%程度)、軽量であり、機械物性に優れている。
特に、強化繊維とエポキシ樹脂組成物の接着性が優れていることから、胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドア、座席および内装材などの航空機部材、外板、シャシー、空力部材および座席などの自動車部材、構体および座席などの鉄道車両部材、船体および座席などの船舶部材、モーターケースおよび主翼などの宇宙機部材、構体およびアンテナなどの人工衛星部材など多くの構造材料に好適に用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、ジアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンをNBDAと略記する。
[一般式(1)で表される化合物の製造]
【0060】
(実施例1)
窒素雰囲気下、2,5−[exo,exo]NBDA(26質量%)、2,5−[endo,exo]NBDA(36質量%)、2,6−[exo,exo]NBDA(20質量%)、および2,6−[endo,exo]NBDA(18質量%)からなる混合物15.4g(0.1モル)をトルエン(100ml)およびピリジン17.0g(0.215モル)溶液に加えた。
この溶液に、25℃で4−ニトロベンゾイルクロライド38.6g(0.215モル)のトルエン(200ml)溶液を1時間要して滴下した。
この反応混合物を、25℃1時間撹拌した後、90℃で3時間撹拌した。
反応混合物を、室温に冷却後、水(200ml)を加え、有機層を分離した。
さらに、有機層を2回(200ml×2)水洗した後、トルエン層を分離後、トルエンを減圧下で留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン/酢酸エチル)で分離して、一般式(1−A−p)で表される化合物41.6gを無色の固体として得た(収率92%)。
この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99%以上(面積比)であった。
この生成物の組成は、使用したNBDAの異性体の組成割合と同じであった。
【0061】
(実施例2)
実施例1で製造した一般式(1−A−p)で表される化合物31.6g(0.07モル)を含有するトルエン(300ml)溶液を、常圧下、水素ガス雰囲気下で、5質量%パラジウム/炭素(50質量%含水品、4.24g)を含むトルエン(50ml)溶液に撹拌下、60〜80℃で、3時間を要して加えた。
さらに常圧下、水素ガス雰囲気下、65〜70℃で2時間撹拌し、水素化を行った(この間に、反応混合物は、水素0.42モルを吸収した)。
室温に冷却後、反応混合物を濾過し、パラジウム/炭素を濾別した後、濾液のトルエン溶液からトルエンを留去し、目的とする一般式(1−B−p)で表される化合物26.9gを無色の油状物として得た(収率98%)。
この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99%以上(面積比)であった。
この生成物の組成は、使用した一般式(1−A−p)で表される化合物の異性体の組成割合と同じであった。
【0062】
(実施例3)
実施例1において、4−ニトロベンゾイルクロライドを使用する代わりに、3−ニトロベンゾイルクロライド38.6g(0.215モル)を使用した以外は、実施例1に記載の操作に従い、一般式(1−A−m)で表される化合物40.7gを得た(収率90%)。
この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99%以上(面積比)であった。
この生成物の組成は、使用したNBDAの異性体の組成割合と同じであった。
【0063】
(実施例4)
実施例2において、実施例1で製造した一般式(1−A−p)で表される化合物を使用する代わりに、実施例3で製造した一般式(1−A−m)で表される化合物31.6g(0.07モル)を使用した以外は、実施例2に記載の操作に従い、一般式(1−B−m)で表される化合物26.9gを得た(収率98%)。
この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99%以上(面積比)であった。
この生成物の組成は、使用した一般式(1−A−m)で表される化合物の異性体の組成割合と同じであった。
【0064】
(実施例5)
窒素雰囲気下、2,5−[exo,exo]NBDA(40質量%)、2,5−[endo,exo]NBDA(60質量%)からなる混合物15.4g(0.1モル)をN,N−ジメチルホルムアミド(80ml)およびピリジン17.0g(0.215モル)溶液に加えた。
この溶液に、25℃で3−ニトロベンゾイルクロライド38.6g(0.215モル)のN,N−ジメチルホルムアミド(80ml)溶液を1時間要して滴下した。
この反応混合物を、25℃で1時間撹拌した後、90℃で3時間撹拌した。
反応混合物から、N,N−ジメチルホルムアミドを減圧下で留去し、残渣に水を滴下した後、析出している固体を濾別し、水洗した。
この固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン/酢酸エチル)で分離して、一般式(1−A−m)で表される化合物42.9gを無色の固体として得た(収率95%)。
この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99%以上(面積比)であった。この生成物の組成は、使用したNBDAの異性体の組成割合と同じであった。
【0065】
(実施例6)
実施例2において、実施例1で製造した一般式(1−A−p)で表される化合物を使用する代わりに、実施例5で製造した一般式(1−A−m)で表される化合物31.6g(0.07モル)を使用した以外は、実施例2に記載の操作に従い、一般式(1−B−m)で表される化合物26.6gを得た(収率97%)。
この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99%以上(面積比)であった。この生成物の組成は、使用した一般式(1−A−m)で表される化合物の異性体の組成割合と同じであった。
【0066】
(実施例7)
実施例5において、2,5−[exo,exo]NBDA(40質量%)、2,5−[endo,exo]NBDA(60質量%)からなる混合物を使用する代わりに、2,5−[exo,exo]NBDA(40質量%)、2,5−[endo,exo]NBDA(15質量%)、2,5−[endo,endo]NBDA(5質量%)、
2,6−[exo,exo]NBDA(24質量%)、および2,6−[endo,exo]NBDA(16質量%)からなる混合物15.4g(0.1モル)を使用した以外は、実施例5に記載した操作に従い、一般式(1−A−m)で表される化合物42.5gを無色の固体として得た(収率94%)。
この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99%以上(面積比)であった。この生成物の組成は、使用したNBDAの異性体の組成割合と同じであった。
【0067】
(実施例8)
実施例2において、実施例1で製造した一般式(1−A−p)で表される化合物を使用する代わりに、実施例7で製造した一般式(1−A−m)で表される化合物31.6g(0.07モル)を使用した以外は、実施例2に記載の操作に従い、一般式(1−B−m)で表される化合物26.6gを得た(収率97%)。
この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99%以上(面積比)であった。この生成物の組成は、使用した一般式(1−A−m)で表される化合物の異性体の組成割合と同じであった。
【0068】
(実施例9)
窒素雰囲気下、2,5−[exo,exo]NBDA(22質量%)、2,5−[endo,exo]NBDA(16質量%)、2,5−[endo,endo]NBDA(3質量%)、
2,6−[exo,exo]NBDA(26質量%)、および2,6−[endo,exo]NBDA(33質量%)からなる混合物15.4g(0.1モル)を水(100ml)に加え、10℃に冷却した。
この溶液に、10〜15℃で、4−ニトロベンゾイルクロライド38.6g(0.215モル)のN,N−ジメチルホルムアミド(20ml)溶液、およびNaOH水溶液(0.1M)を、反応液のpHを9〜10に維持しながら、1時間要して滴下した。
この反応混合物を、10〜15℃2時間撹拌した後、析出している固体を濾別し、水洗した。
この固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン/酢酸エチル)で分離して、一般式(1−A−p)で表される化合物43.4gを無色の固体として得た(収率96%)。
この固体は、185℃で融解し始めた。
この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99%以上(面積比)であった。この生成物の組成は、使用したNBDAの異性体の組成割合と同じであった。
【0069】
(実施例10)
実施例9で製造した一般式(1−A−p)で表される化合物31.6g(0.07モル)を含有するN,N−ジメチルホルムアミド(50ml)溶液を、常圧下、水素ガス雰囲気下で、5質量%パラジウム/炭素(50質量%含水品、4.24g)を含むN,N−ジメチルホルムアミド(200ml)溶液に撹拌下、60〜90℃で、3時間を要して加えた。
さらに常圧下、水素ガス雰囲気下、70〜75℃で2時間撹拌し、水素化を行った(この間に、反応混合物は、水素0.42モルを吸収した)。
室温に冷却後、反応混合物を濾過し、パラジウム/炭素を濾別した後、濾液に水(300ml)を加えて、析出している目的とする一般式(1−B−p)で表される化合物26.6gを無色の油状物として得た(収率97%)。
この化合物の純度は、高速液体クロマトグラフィーの分析の結果、99%以上(面積比)であった。この生成物の組成は、使用した一般式(1−A−p)で表される化合物の異性体の組成割合と同じであった。
【0070】
[エポキシ樹脂の製造]
(実施例11〜15、比較例1〜3)
以下の実施例11〜15、および比較例1〜3で用いたエポキシ樹脂は、式(E−1)で表される化合物、または式(E−2)で表される化合物である。
尚、式(E−1)で表される化合物のエポキシ当量は、185であり、式(E−1)中、nは0〜2の整数を表す。
式(E−2)で表される化合物のエポキシ当量は、110である。
【0071】
また、実施例11〜15、および比較例1〜3で示した各種物性の試験方法は次に示すとおりである。
・エポキシ樹脂硬化物の熱変形温度(℃)
エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤をエポキシ基とアミノ基が当量になるように、25℃で混合し、180℃で2時間加熱し、エポキシ樹脂硬化物を得た。
このエポキシ樹脂硬化物の熱変形温度は、JIS K7196の方法に従い、針入法によるTMA(Thermal Mechanical Analysis)を行うことにより測定した。数値が大きいほど、熱変形温度が高く、耐熱性に優れていることを示している。測定結果は、第1表に示した。

・エポキシ樹脂硬化物の引張り接着強度(kgf/cm
エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤をエポキシ基とアミノ基が当量になるように、25℃で混合し、ステンレススチール試験片に塗布した後、もう1枚のステンレススチール試験片を圧着し、180℃で、2時間加熱して、2枚のステンレススチールを接着した。この接着した試験片をJIS K6849の方法により、引張り試験を行うことにより、接着強度を測定した。尚、測定は、25℃および100℃で実施した。
数値が大きいほど、接着強度に優れていることを示している。
測定結果は、第1表に示した。
【0072】
第1表には、実施例11〜15、および比較例1〜3で使用したエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤を示した。
尚、第1表中、実施例11で使用したエポキシ樹脂硬化剤は、実施例2で製造した化合物(第1表中、2と略記した)であり、
実施例12で使用したエポキシ樹脂硬化剤は、実施例4で製造した化合物(第1表中、4と略記した)であり、
実施例13で使用したエポキシ樹脂硬化剤は、実施例6で製造した化合物(第1表中、6と略記した)であり、
実施例14で使用したエポキシ樹脂硬化剤は、実施例8で製造した化合物(第1表中、8と略記した)であり、
実施例15で使用したエポキシ樹脂硬化剤は、実施例10で製造した化合物(第1表中、10と略記した)である。

また、第1表中、比較例1で使用したエポキシ樹脂硬化剤は、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン(第1表中、Cと略記した)であり、比較例2および比較例3で使用したエポキシ樹脂硬化剤は、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(第1表中、Dと略記した)である。
【0073】
【0074】
第1表より、本発明の一般式(1―B)で表される化合物をエポキシ樹脂硬化剤として用いてなるエポキシ樹脂硬化物の熱変形温度は高く、また接着強度も強く、特に高温下での接着強度に優れていることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明により、一般式(1)で表される新規なビシクロヘプタン化合物を提供することが可能になった。
本発明により、各種の機能性高分子材料(例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリカルボジイミド)、各種の機能性電子材料(例えば、有機電界発光素子材料、有機トランジスタ素子材料、光電変換素子材料)を製造する際に有用な化合物を提供することが可能になった。
さらに、本発明のエポキシ樹脂硬化剤を用いて製造されるエポキシ樹脂硬化物は、熱変形温度が高く、さらには、接着強度に優れており、耐熱性の要求される分野へ使用することができる。