特許第6246583号(P6246583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6246583-雄コネクタ及び医療用連結具 図000002
  • 特許6246583-雄コネクタ及び医療用連結具 図000003
  • 特許6246583-雄コネクタ及び医療用連結具 図000004
  • 特許6246583-雄コネクタ及び医療用連結具 図000005
  • 特許6246583-雄コネクタ及び医療用連結具 図000006
  • 特許6246583-雄コネクタ及び医療用連結具 図000007
  • 特許6246583-雄コネクタ及び医療用連結具 図000008
  • 特許6246583-雄コネクタ及び医療用連結具 図000009
  • 特許6246583-雄コネクタ及び医療用連結具 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246583
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】雄コネクタ及び医療用連結具
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/10 20060101AFI20171204BHJP
   A61M 1/28 20060101ALI20171204BHJP
   F16L 19/02 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A61M39/10 100
   A61M1/28 120
   F16L19/02
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-263923(P2013-263923)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-119758(P2015-119758A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088306
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮 良雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126343
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 浩之
(72)【発明者】
【氏名】齋木 勝
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−031178(JP,A)
【文献】 特開2012−225367(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0001388(US,A1)
【文献】 特開昭61−293470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/00 − A61M 39/20
A61M 1/14 − A61M 1/28
F16L 17/00 − F16L 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側にチューブと接続されるチューブ接続部と、前記チューブ接続部から先端側に突出した筒状の連結部とを備え、前記連結部に医療用バッグに繋がる雌コネクタ又はキャップが着脱可能に装着される雄コネクタであって、
前記連結部は、外周面に周設された凹溝と、前記凹溝の先端側壁面及び基端側壁面の径方向の外端に密着状態で挿入された弾性材料から成るリング状のシール部材とを有し、
前記シール部材は、先端側に前記凹溝より径方向外側に突出した先端側延出部と、基端側に前記凹溝より径方向外側に突出した基端側延出部とが形成され、
前記基端側延出部は基端方向に傾斜し、且つ前記基端側延出部の外周面は径方向外向きに凸な曲面であり、
前記連結部に前記雌コネクタ又は前記キャップが装着された際に、前記雌コネクタ又は前記キャップの内壁面に、前記各延出部の径方向外側の端部が押圧されて密着することを特徴とする雄コネクタ。
【請求項2】
前記凹溝は、前記連結部の基端側の外周面に周設されていることを特徴とする請求項1に記載の雄コネクタ。
【請求項3】
前記基端側延出部は、前記凹溝よりも基端側に突出していることを特徴とする請求項に記載の雄コネクタ。
【請求項4】
前記シール部材が、前記凹溝の前記各壁面及び底面の全面と密着していることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の雄コネクタ。
【請求項5】
前記先端側延出部の外周面が径方向外向きに凸な曲面であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の雄コネクタ。
【請求項6】
前記先端側延出部は、先端方向に傾斜していることを特徴とする請求項に記載の雄コネクタ。
【請求項7】
前記先端側延出部は、前記凹溝よりも先端側に突出していることを特徴とする請求項に記載の雄コネクタ。
【請求項8】
前記先端側延出部の先端側の面は、基端方向に凸な曲面であることを特徴とする請求項に記載の雄コネクタ。
【請求項9】
前記雄コネクタの前記連結部に前記雌コネクタ又は前記キャップが螺着されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の雄コネクタ。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載の雄コネクタと、該雄コネクタの前記チューブ接続部に接続されたチューブと、前記連結部に着脱可能に装着された前記雌コネクタ又は前記キャップとを具備することを特徴とする医療用連結具。
【請求項11】
前記医療用連結具が、腹膜透析用連結具であることを特徴とする請求項10に記載の医療用連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基端側にチューブ接続部と、先端側に付き出た筒状の連結とを備え、この連結部に医療用バッグに繋がる雌コネクタ又はキャップが着脱可能に装着される雄コネクタ、及びその雄コネクタを用いた医療用連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腎不全患者の人工透析には、腹膜を透析膜として用いる腹膜透析法がある。その腹膜透析患者の腹腔内に植え込んだ腹腔カテーテルに接続した交換チューブの先端に設けた雄コネクタと、腹膜透析液の入った医療用バッグに接続したバッグチューブの基端に設けた雌コネクタとを連結し、腹膜透析液を腹腔内に注入する。腹腔内への腹膜透析液の注入が終了したとき、雌コネクタを取り外した雄コネクタにキャップを装着し腹腔内に腹膜透析液を所定時間滞留させる。腹腔内に滞留する腹膜透析液には、腹膜内に分布する毛細血管内の血液中の老廃物や余分な水分、ミネラルが透析される。所定時間経過後に、腹腔内の腹膜透析液を空の医療用バッグに排出し、腹腔内に新たな腹膜透析液を滞留させる。患者はこの操作を一日3〜4回繰り返す。
【0003】
このように腹膜透析法では、雄コネクタと腹膜透析液の入った医療用バッグに接続された雌コネクタ又はキャップとの着脱が頻繁に行われ、その着脱は無菌状態で簡単に実施できることが要求されている。また、雄コネクタに雌コネクタ又はキャップを被着している状態において、腹腔内の圧力が外気圧よりも高くなった場合、或いは医療用バッグを押圧して腹膜透析液の圧力を高めた場合でも、腹腔内の液体又は腹膜透析液が雄コネクタと雌コネクタ又はキャップとの隙間から漏出しないことが要求されている。更に、入浴の際に、風呂水の圧力が腹腔内圧よりも高くなり、雄コネクタとキャップとの隙間から風呂水が侵入する等の雑菌含有流体の侵入防止も重要である。
【0004】
このような要求に応える雄コネクタと腹膜透析液の入った医療用バッグに接続された雌コネクタ又はキャップとを具備する医療用連結具が下記特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されている医療用連結具は、基端側が人体側となる雄コネクタの先端部側に突出する連結部の雄螺子と、腹膜透析液の入った医療用バッグに接続された雌コネクタ又はキャップの雌螺子とが螺着される医療用連結具であって、円形断面のリング状のシール部材が、前記連結部の基端部近傍の周面に周設された凹溝内に挿入されており、前記連結部に螺着された前記雌コネクタ又はキャップの内壁面に、前記シール部材が押圧されて密着されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−31178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された医療用連結具によれば、雄コネクタと雌コネクタ又はキャップとは、雄コネクタの連結部の雄螺子と雌コネクタ又はキャップの雌螺子とで着脱できるので、医療用バッグの交換作業を無菌状態で簡単に実施できる。更に、雄コネクタの連結部と雌コネクタ又はキャップとの隙間は、リング状のシール部材でシールされており、腹腔内の液体の漏出や風呂水等の雑菌含有流体の侵入を防止できる。
【0007】
この医療用連結具では、雄コネクタと雌コネクタ又はキャップとの連結が螺子で行われている。そのため螺着された両者の隙間を、円形断面のシール部材で十分にシールするには、雄コネクタの凹溝に挿入されているシール部材のうち、凹溝の開口部から突出する突出部分の大部分を、雌コネクタ又はキャップの内壁面に十分に密着することを要する。このような密着状態を得るには、雌コネクタ又はキャップの内壁面でシール部材の突出部分の略全体を押圧して十分に変形させることを必要とし、雄コネクタに雌コネクタ又はキャップを着脱する際に、雌コネクタ又はキャップの摺動抵抗が大きくなり、雌コネクタ又はキャップの回転トルクが大きくなる。
【0008】
しかしながら、腹腔内の腹膜透析液の交換作業を1日に3〜4回行わなければならない腹膜透析を必要とする高齢者の患者や合併症等で体力が衰えた患者は、指の力も衰えてきていることから、そのような患者でも雄コネクタに雌コネクタ又はキャップを簡単に回転して着脱できることが望まれている。一方、雄コネクタに雌コネクタ又はキャップを簡単に回転して着脱すべく、雌コネクタ又はキャップを緩く締め、雌コネクタ又はキャップの内壁面での押圧よるシール部材の突出部分の変形を小さくすると、両者間の隙間をシール部材で十分にシールできなくなるおそれがある。
【0009】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、例えば高齢者等の指の力が衰えた患者でも雄コネクタに雌コネクタ又はキャップを簡単に着脱でき、且つ装着した雄コネクタと雌コネクタ又はキャップとの隙間を十分にシールできる雄コネクタ、及びその雄コネクタを用いた医療用連結具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するためになされた本発明の雄コネクタは、基端側にチューブと接続されるチューブ接続部と、前記チューブ接続部から先端側に突出した筒状の連結部とを備え、前記連結部に医療用バッグに繋がる雌コネクタ又はキャップが着脱可能に装着される雄コネクタであって、前記連結部は、外周面に周設された凹溝と、前記凹溝の先端側壁面及び基端側壁面の径方向の外端に密着状態で挿入された弾性材料から成るリング状のシール部材とを有し、前記シール部材は、先端側に前記凹溝より径方向外側に突出した先端側延出部と、基端側に前記凹溝より径方向外側に突出した基端側延出部とが形成され、前記基端側延出部は基端方向に傾斜し、且つ前記基端側延出部の外周面は径方向外向きに凸な曲面であり、前記連結部に前記雌コネクタ又は前記キャップが装着された際に、前記雌コネクタ又は前記キャップの内壁面に、前記各延出部の径方向外側の端部が押圧されて密着するものである。
【0011】
前記雄コネクタの前記凹溝が、前記連結部の基端側の外周面に周設されていることが好ましい。これにより、凹溝に挿入されたシール部材が連結部の基端側に位置し、雌コネクタ又はキャップが装着された連結部の外周面の略全面を外部からシールできるため、連結部の外周面と雌コネクタ又はキャップの内周面との間に雑菌が侵入して繁殖することを防止できる。
【0012】
前記雄コネクタの前記シール部材が、前記凹溝の前記各壁面の径方向の外端と密着していることが好ましい。これにより、シール部材が凹溝の壁面の径方向の外端(開口縁)に密着しているため、シール部材と凹溝との間に雑菌が侵入して繁殖することを防止できる。
【0013】
前記シール部材は、前記基端側延出部が、前記凹溝よりも基端側に突出していることが好ましい。これにより、シール部材が凹溝の基端側壁面の径方向外端(開口縁)に確実に密着できる。
【0014】
雄コネクタの前記シール部材が、前記凹溝の前記各壁面及び底面の全面と密着していることが好ましい。これにより、シール部材と凹溝の内壁面との間の隙間からの内部液の漏出や外部液の進入を確実に防止できる。
【0015】
前記シール部材の前記先端側延出部の外周面が径方向外向きに凸な曲面であることが好ましい。これにより、雄コネクタに雌コネクタ又はキャップを着脱する際に、雌コネクタ又はキャップの摺動抵抗を低減できる。
【0016】
雄コネクタの前記先端側延出部が、先端方向に傾斜していることが好ましい。これにより、シール部材に加えられる内圧に対して確実にシールできる。
【0017】
前記シール部材の前記先端側延出部が、前記凹溝よりも先端側に突出していることが好ましい。これにより、シール部材が凹溝の先端側壁面の径方向外端(開口縁)に確実に密着できる。
【0018】
前記シール部材は、その前記先端側延出部の先端側の面が、基端方向に凸な曲面であることが好ましい。これにより、先端側延出部が径方向内側に変形しやすいため、摺動抵抗をより低減できる。
【0019】
前記雄コネクタの前記連結部に前記雌コネクタ又は前記キャップが螺着されることが好ましい。これにより、雌コネクタの連結部に雌コネクタ又はキャップの着脱を簡単に行うことができる。
【0020】
本発明の医療用連結具は、前述したいずれかの雄コネクタと、該雄コネクタの前記チューブ接続部に接続されたチューブと、前記連結部に着脱可能に装着された前記雌コネクタ又は前記キャップとを具備するものである。
【0021】
医療用連結具は、腹膜透析用連結具であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る雄コネクタによれば、シール部材に外圧が作用した際に、シール部材の基端側延出部が雌コネクタ又はキャップの内壁面とより密着するように変形する。このため、雌コネクタ又はキャップの内壁面での押圧によるシール部材の変形を小さくして雌コネクタ又はキャップを着脱する際の摺動抵抗を低減しつつ、雄コネクタの連結部と雌コネクタ又はキャップとの隙間を十分にシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明を適用する雄コネクタにキャップを被着した部分断面正面図及び部分拡大断面図である。
図2】本発明を適用する雄コネクタのシール部材の部分断面図である。
図3】本発明を適用する雄コネクタの連結部の部分断面正面図である。
図4】本発明を適用する雄コネクタに被着するキャップの部分断面正面図である。
図5】本発明を適用する雄コネクタのシール部材の他の態様を示す部分断面図である。
図6】本発明を適用する雄コネクタと雌コネクタとの連結直前の状態及び連結した状態を示す部分断面正面図である。
図7】本発明を適用する雄コネクタにキャップを被着した他の態様を示す斜視図である。
図8】本発明を適用する医療用連結具を治療に用いた一例を示す斜視図である。
図9】本発明を適用する雄コネクタとキャップとの連結の他の態様を示す部分断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明に係る医療用連結具を腎不全治療に用いた腹膜透析システムを図8に示す。図8に示す腹膜透析システムでは、医療用連結具10を構成する雄コネクタ20が、交換チューブ50の先端部に装着されている。交換チューブ50の基端部は、患者の腹腔内に植え込まれたカテーテル(図示せず)に接続されている。更に、交換チューブ50の途中には、クランプ52が装着されている。また、腹膜透析液が入った医療用バッグ60に先端部を接続したバッグチューブ62の基端部に雌コネクタ40が装着されている。患者の腹腔内に腹膜透析液を注入又は排出する際には、雄コネクタ20に雌コネクタ40が連結される。また、雌コネクタ40が非連結状態の雄コネクタ20には、キャップ30が被着される。尚、雄コネクタ20、雌コネクタ40及びキャップ30は、ポリカーボネイト、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成樹脂製であるが、金属製又はセラミック製であってもよい。
【0026】
医療用連結具10を構成する雄コネクタ20にキャップ30を被着した状態を図1に示す。雄コネクタ20は、基端側に交換チューブ50と接続されるチューブ接続部21と、チューブ接続部21から先端側に突出し、キャップ30が螺着される筒状の連結部24とから構成される。チューブ接続部21は、交換チューブ50の先端部に挿入されて接続される挿入接続部21bと、挿入接続部21bの外周面を覆う筒状のチューブカバー22と、フランジ21aとを有している。チューブカバー22には、交換チューブ50の先端部を挿入接続部21bに挿入できるように挿入孔22bと、手で把持する把持部22aとが形成されている。また、連結部24は、螺着されたキャップ30の内壁面が覆う連結部24の外周面に周設された凹溝26と、凹溝26に挿入されたリング状のシール部材28とを有している。連結部24及びチューブ接続部21には、その中心軸に沿って液体が通過する流路23が貫通している。
【0027】
シール部材28は、弾性材料で形成されており、凹溝26の連結部24の先端側の壁面26a(以下、先端側壁面26aという)及び連結部24の基端側の壁面26b(以下、基端側壁面26bという)に密着状態で挿入されている。シール部材28と凹溝26の両壁面との密着状態は、図1に示すように凹溝26の周縁である開口縁を含む開口縁近傍の部分が密着している。このシール部材28には、先端側壁面26a側に凹溝26より径方向外側に突出した先端側延出部28aと、基端側壁面26b側に凹溝26より径方向外側に突出した基端側延出部28bとが形成されている。また、基端側延出部28bは、基端方向に傾斜し、その径方向外側の端部の外周面が径方向外向きに凸な曲面に形成されている。この先端側延出部28a及び基端側延出部28bの各先端部は、連結部24に螺着されたキャップ30の内壁面に押圧されて密着している。これにより、図1の部分拡大断面図に示すように、シール部材28の基端側延出部28bが、外部圧力Pに応じてシール部材28とキャップ30の内壁面との隙間を閉塞するように変形する。このため、キャップ30の内壁面での押圧によるシール部材28の変形を小さくしてキャップ30を着脱する際の摺動抵抗を低減しつつ、雄コネクタ20の連結部24とキャップ30との隙間を十分にシールすることができる。
【0028】
また、図1に示す実施形態では、シール部材28は、凹溝26の周縁である開口縁、すなわち先端側壁面26a及び基端側壁面26bの径方向の外端に密着している。これにより、シール部材28と凹溝26との間に雑菌が侵入して繁殖することを防止できる。この凹溝26の底面(凹溝26の開口部に対向する面)近傍の壁面の一部とシール部材28とが非接触状態であってもよい。また、この実施形態では、基端側延出部28bは、凹溝26よりも基端側に突出している。これにより、シール部材28が凹溝26の基端側壁面26bの径方向外端(開口縁)により確実に密着し、シール部材28と凹溝26との間に雑菌が侵入して繁殖することをより確実に防止できる。この実施形態では、先端側延出部28aは、先端方向に傾斜し、その径方向外側の端部の外周面が径方向外向きに凸な曲面に形成されている。これにより、雄コネクタ20にキャップ30を着脱する際に、キャップ30の摺動抵抗を低減でき、且つ先端側延出部28aが内部圧力Pに応じてシール部材28とキャップ30の内壁面との隙間を閉塞するように変形するため、シール部材28とキャップ30の内壁面との隙間からの液体の漏出を防止できる。更に、この実施形態では、先端側延出部28aは、凹溝26よりも先端方向に傾斜している。これにより、シール部材28が凹溝26の先端側壁面26aの径方向外端(開口縁)により確実に密着し、シール部材28と凹溝26との間に雑菌が侵入して繁殖することをより確実に防止できる。
【0029】
また、この実施形態では、シール部材28の凹溝26から径方向外側に突出している部分のうち、キャップ30の内壁面に押圧されて密着されている部分は、先端側延出部28a及び基端側延出部28bの各径方向外側の端部である。このように先端側延出部28a及び基端側延出部28bの各径方向外側の端部がキャップ30の内壁面に押圧されて密着されていても、先端側延出部28a及び基端側延出部28bの間の外周面は、図1の部分拡大断面図に示すように径方向内側に向かって凹状に窪んでおり、キャップ30の内壁面に非接触状態である。このため、図1に示す雄コネクタ20に螺着したキャップ30の摺動抵抗は、円形断面のシール部材を凹溝26に挿入し、凹溝26の開口部から突出する部分の殆ど全体をキャップ30の内壁面で押圧して密着した場合に比較して略半減できる。このようなシール部材28が装着された雄コネクタ20へのキャップ30の着脱は、指の力が衰えた高齢者等でも簡単に行うことができる。
【0030】
この実施形態におけるシール部材28は、図2に示すように凹溝26の先端側壁面26a及び基端側壁面26bと密着する部分が平坦面28c、28cに形成され、凹溝26の底面側となる部分、すなわち内周面は、径方向内側に凸な形状、具体的には曲面28dに形成されている。これにより、シール部材28を凹溝26に挿入し易くなる。シール部材28の厚さ(平坦面28c、28cの間)は、挿入される凹溝26の開口幅よりも幅広とすることが好ましい。これにより、凹溝26に挿入されたシール部材28が、先端側壁面26a及び基端側壁面26bに確実に密着する。また、シール部材28に形成された先端側延出部28a及び基端側延出部28bは、平坦面28c,28cよりも径方向外側に突出し、径方向外側の端部の外周面が径方向外側に凸な曲面状に形成されている。この先端側延出部28a及び基端側延出部28bの間は径方向内側に向かって凹状に窪んで形成されている。先端側延出部28a及び基端側延出部28bの各寸法は略等しいので、基端側延出部28bの寸法について説明する。基端側延出部28bの長さ(L)は、基端側延出部28bが平坦面28cよりも径方向外側に突出している部分の長さであって、平坦面28cと基端側延出部28bとの境界を通過し、平坦面28cに対して直交する垂線と、この垂線と平行で且つ基端側延出部28bの径方向外側の端部(外周面)と接する接線との間の距離である。その長さ(L)は0.5〜1mmとすることが好ましい。また、基端側延出部28bの延出幅(W)は、基端側延出部28bが平坦面28cよりも基端側に突出している幅であって、平坦面28cと平行で且つ基端側延出部28bの基端と接する接線と、平坦面28cから延出された延長線との間の距離である。その延出幅(W)は0.2〜0.8mm程度とすることが好ましい。更に、基端側延出部28bの傾き(θ)は、基端側延出部28bの中心線と平坦面28cとの角度である。その傾き(θ)は30〜60°程度とすることが好ましい。このシール部材28を形成する弾性材料としては、シリコーンゴム、特にポリジメチルシロキサンを好適に用いることができる。尚、図1及び図2に示すシール部材28の先端側延出部28a及び基端側延出部28bの各径方向外側の端部の外周面は径方向外向きに凸な曲面に形成されているが、先端側延出部28aの先端部の周面は曲面に形成されていなくてもよい。
【0031】
この実施形態における連結部24は、図3に示すように、チューブ接続部21から先端側に突出するように形成され、その外周面の基端側に凹溝26が設けられている。これにより、凹溝26に挿入されたシール部材28が連結部の基端側に位置し、キャップ30が螺着された連結部24の外周面の略全面を外部からシールできるため、連結部24の外周面とキャップ30の内周面との間に雑菌が侵入して繁殖することを防止できる。また、連結部24には、凹溝26が形成された部分から先端側に突出し、外周面に雄螺子25aを具備する螺着部25が設けられている。すなわち、後述するキャップの雌螺子30aが螺着される螺着部25よりも基端側の連結部24の外周面に凹溝26が形成されている。これにより、キャップ30が螺着された連結部24の螺着部25を外部からシールできるため、アルコール綿等で消毒し難い螺着部25の雄螺子25aの螺子山間に雑菌が侵入して繁殖することを防止できる。更に、連結部24は、螺着部25から先端側に突出した環状カバー部24cと、環状カバー部24c及び螺着部25の内側に設けられた環状突起部24dと、環状カバー部24c及び螺着部25と環状突起部24dとの間に設けられた周溝24eとを有している。この環状突起部24dは、その先端面が環状カバー部24cの先端よりも基端側に位置するように形成されている。
【0032】
この実施形態におけるチューブ接続部21は、図3に示すように、交換チューブ50(図1)の先端部に挿入されて接続される挿入接続部21bと、チューブ接続部21の先端側、すなわち連結部24側に形成されたフランジ21aと、挿入接続部21bの外周面を覆う筒状のチューブカバー22とを備えている。チューブカバー22には、交換チューブ50(図1)の先端部を挿入接続部21bに挿入できるように形成された挿入孔22bと、手で把持する把持部22aとが設けられている。このチューブ接続部21及び連結部24には、その中心軸に沿って液体が通過する流路23が貫通している。尚、チューブカバー22及びフランジ21aは省略されていてもよい。
【0033】
図3に示す連結部24の螺着部25に螺着されるキャップ30を図4に示す。キャップ30の内壁面には、螺着部25の雄螺子25aに螺着される雌螺子30aが形成されており、連結部24の環状カバー部24cが挿入される周溝30bと環状突起部24dが挿入される挿入部30cとの間に環状隔壁30dが形成されている。この挿入部30c先端側には、凹部30eが連結されている。この凹部30eには、図1に示すように連結部24の螺着部25にキャップ30を螺着したとき、挿入部30cに挿入した環状突起部24dの先端面との間の隙間をシールするシール部材としてのO−リング32が挿入される。また、キャップ30の周溝30bの底部(先端部)には消毒薬が含浸された多孔質体例えばスポンジ34が挿入されている。この消毒薬により、図1に示すように連結部24にキャップ30を螺着したとき、周溝24eの各壁面、環状カバー部24cの先端部および外周面、螺着部25の外周面を消毒できる。尚、消毒薬としては、例えばイソジン(登録商標)を好適に用いることができる。
【0034】
図1に示す連結部24の凹溝26内に挿入されたシール部材28は、凹溝26の底面の一部と非接触状態であったが、図5(a)に示すように、シール部材28が凹溝26の壁面全面に亘って密着されていてもよい。これにより、シール部材28と凹溝26との間に雑菌が侵入して繁殖することをより確実に防止できる。このようにシール部材28を凹溝26の壁面全面に亘って密着するには、凹溝26内に挿入するシール部材28の部分を、凹溝26に倣って四角断面とすることが好ましい。
【0035】
図1及び図5(a)に示すシール部材28の先端側延出部28aは、先端側に傾斜し、且つ凹溝26よりも先端側に突出しているが、図5(b)に示すように、先端側延出部28aは、径方向と略平行に突出し、且つその外周面が径方向外向きに凸な曲面となる凸部28eとして形成されていてもよい。これにより、キャップ30を連結部24に着脱する際の摺動抵抗をより低減できる。また、この凸部28eは、図5(c)に示すように、先端側の面を基端方向に凸な曲面に形成することが好ましい。これにより、凸部28eの径方向外側の端部とキャップ30の内壁面との密着面積を狭くでき、図5(b)に示すシール部材28よりも更に低摺動化を図ることができる。また、図5(d)に示すように、先端側に傾斜した先端側延出部28aを凹溝26の先端側壁面26aよりも先端側に位置させ、基端側に傾斜した基端側延出部28bを凹溝26の基端側壁面26bよりも先端側に位置させてもよい。尚、シール部材28は、図1および図5(a)〜(d)に示す各実施形態を適宜組合せてもよい。
【0036】
図1図5は雄コネクタ20にキャップ30を被着した状態について説明してきたが、雄コネクタ20に医療用バッグに繋がる雌コネクタ40を連結する直前の状態及び連結した状態を図6に示す。図6(a)は雄コネクタ20と雌コネクタ40とを連結する直前の状態を示し、図6(b)は雄コネクタ20と雌コネクタ40とを連結した状態を示す。図6に示す雌コネクタ40の基端部には、医療用バッグ60(図8参照)に基端部が接続されたバッグチューブ62の基端部が挿入される周溝状のチューブ接続部42が周設されている。また、雄コネクタ20と連結される雌コネクタ40の基端部の構成は、キャップ30と略同一の構成である。具体的には、雄コネクタ20の螺着部25の雄螺子25aに螺着される雌螺子42aが雌コネクタ40の中途部の外周に周設されたフランジ44から延出された筒状部46の内壁面に形成されている。また、連結部24の環状カバー部24cが挿入される周溝40bと、環状突起部24dが挿入される挿入部40cとの間に環状隔壁40dが形成されている。この挿入部40cの先端側には、凹部40eが連結されている。凹部40eには、連結部24の螺着部25に雌コネクタ40が螺着されたとき、挿入部40cに挿入された環状突起部24dの先端面との間の隙間をシールするシール部材としてのO−リング48が挿入されている。この凹部40eの底面(先端部)には、雌コネクタ40を貫通する流路43が開口されている。流路43は、雄コネクタ20を貫通する流路23とバッグチューブ62の基端部とを連通する。
【0037】
図6に示す雄コネクタ20の凹溝26内に挿入したリング状のシール部材28は、上述した雄コネクタ20とキャップ30とを連結する場合と同一のものであるため、説明を省略する。
【0038】
図1図6に示す雄コネクタ20と、雌コネクタ40又はキャップ30との医療用連結具10を用いた腹膜透析方法を説明する。患者の腹腔内に腹膜透析液を注入する際には、図8に示すように腹膜透析液が入った医療用バッグ60に基端部が接続されたバッグチューブ62の基端部に装着した雌コネクタ40と、患者の腹腔内のカテーテルに接続されている交換チューブ50の先端部に装着した雄コネクタ20とを連結する。次いで、交換チューブ50の途中に装着されたクランプ52を緩め、医療用バッグ60内の腹膜透析液を患者の腹腔内に注入する。腹膜透析液の注入が終了した後、クランプ52を閉じ、雌コネクタ40を雄コネクタ20から取り外して、キャップ30を雄コネクタ20に被着する。雄コネクタ20にキャップ30を被着し、腹腔内に腹膜透析液を所定時間滞留させつつ、腹膜内に分布する毛細血管内の血液中の老廃物や余分な水分、ミネラルを腹膜透析液に透析する。その間、患者は、通常の生活ができ、入浴等も行うことができる。患者は所定時間経過後に、キャップ30を取り外して、空の医療用バッグに接続された雌コネクタ40と雄コネクタ20とを連結し、腹腔内の腹膜透析液を空の医療用バッグに排出する。その後、患者は、同様にして腹腔内に新たな腹膜透析液を注入し滞留させる。
【0039】
このような腹膜透析液の腹腔内への注入・排出を一日に3〜4回繰り返し実施する、例えば高齢者等の力の弱った患者にとって、図1図6に示す雄コネクタ20と雌コネクタ40又はキャップ30とによれば、雄コネクタ20の連結部24と雌コネクタ40又はキャップ30との隙間を十分にシールしつつ、その着脱を簡単に行うことができる。すなわち、雄コネクタ20に雌コネクタ40又はキャップ30が連結又は被着されたとき、図1図6に示すように雄コネクタ20に凹溝26に挿入されたシール部材28の基端側延出部28bが外圧に応じて雌コネクタ又はキャップの内壁面とより密着するように変形する。このため、雌コネクタ40又はキャップ30の内壁面での押圧によるシール部材28の変形を小さくして雌コネクタ40又はキャップ30を着脱する際の摺動抵抗を低減しつつ、雄コネクタ20の連結部24と雌コネクタ40又はキャップ30との隙間を十分にシールすることができる。
【0040】
図1図6に示す医療用連結具10では、雄コネクタ20にキャップ30又は雌コネクタ40を回転して螺着する際に、キャップ30又は雌コネクタ40の摺動抵抗が小さく、例えば高齢者等の力の弱い患者は螺着終了が判り難いため、キャップ30又は雌コネクタ40の締め付けが不完全になるおそれがある。このため、雄コネクタ20の螺着部25に形成した雄螺子25aと、キャップ30又は雌コネクタ40の筒状部46の内壁面に形成した雌螺子30a,42aとに、両者の螺着が終了したことを締付力が急増して知らせるクリック機構を設けることが好ましい。このクリック機構としては、例えば図7に示すように雄コネクタ20の連結部24に形成した雄螺子25aと、キャップ30の内壁面に形成した雌螺子30aとの各終端部に設けた突起27,33によるものを挙げることができる。このクリック機構によれば、雄コネクタ20の突起27に、キャップ30の突起33が当接し乗り越えるときに、キャップ30の締付力が急激に増加すると共に、「カタ」というクリック感が発生し、キャップ30を回転する患者にキャップ30の螺着が終了したことを知らせることができる。このクリック機構により、連結した雄コネクタ20と、雌コネクタ40又はキャップ30との不意な緩みが防止できる。尚、クリック機構としては、突起27,33の他に、凸部と凹部とによるものでもよい。
【0041】
以上説明してきた図1図7では、雄コネクタ20にキャップ30又は雌コネクタ40を螺着していたが、螺着によらず両者を着脱可能に連結できればよい。このような連結方法としては、図9に示すように、チューブ接続部21のフランジ21aから径方向外側に延出されたヒンジ部29aの径方向外側の端部に連結した係止部29の先端に設けられた爪29bとキャップ30の基端部のフランジ31とによる連結が挙げられる。この場合、係止部29の基端側に設けられた操作部29cを指で摘まむことでヒンジ部29aが基端側に曲がり、爪29bがキャップ30のフランジ31から離れ、キャップ30が雄コネクタ20から外れるようになる。同様に、雌コネクタの基端部にフランジ部を設けることで、雄コネクタ20と雌コネクタ40とを連結できる。図9では、爪29b付きの係止部29を雄コネクタ20に設けたが、雌コネクタ40又はキャップ30に爪29b付きの係止部29を設けてもよい。また、雄コネクタ20とキャップ30又は雌コネクタ40との螺着は螺子によらず、雄コネクタ20の連結部24の外周面に設けたガイド溝と雌コネクタ40の内周面に設けたガイド突起とで行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る医療用連結具は、腹膜透析用の他に、輸血用や栄養液を体内に注入する輸液用等に用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
10:医療用連結具, 20:雄コネクタ, 21,42:チューブ接続部, 21a,31,44:フランジ, 21b:挿入接続部, 22:チューブカバー, 22a:把持部, 22b:挿入孔, 23,43:流路, 24:連結部, 24c:環状カバー部, 24d:環状突起部, 24e、40b:周溝, 25:螺着部, 25a:雄螺子, 26:凹溝, 26a:先端側壁面, 26b:基端側壁面, 27,33:突起, 28:シール部材, 28a:先端側延出部, 28b:基端側延出部, 28c:平坦面, 28d:曲面, 28e:凸部, 29:係止部, 29a:ヒンジ部, 29b:爪, 29c:操作部, 30:キャップ, 30a,42a:雌螺子, 30b:周溝, 30c,40c:挿入部, 30d,40d:環状隔壁, 30e,40e:凹部, 32,48:O−リング, 34:スポンジ, 40:雌コネクタ, 46:筒状部, 50:交換チューブ, 52:クランプ, 60:医療用バッグ, 62:バッグチューブ, P:内部圧力, P:外部圧力, L:長さ, W:延出幅, θ:傾き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9