(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246584
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】タッチパネル装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20171204BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
G06F3/041 460
G02F1/1333
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-267431(P2013-267431)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-125471(P2015-125471A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】上野 豊
(72)【発明者】
【氏名】桜井 聡
【審査官】
円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−193955(JP,A)
【文献】
実開平02−070398(JP,U)
【文献】
特開2005−123150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネル本体の上部シート上に貼り付けられる導電膜付きの除電シートと、
前記除電シートとグランドとの間の接続又は非接続を切り替えるスイッチと、
前記タッチパネル本体の操作時に、前記除電シートが前記グランドと接続するように前記スイッチを制御すると共に前記タッチパネル本体の非操作時に、前記除電シートが前記グランドと非接続になるように前記スイッチを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記除電シートの一端に設けられ、且つ前記スイッチと接続される第1FPC(フレキシブルプリント回路)と、
前記タッチパネル本体の下部シートに設けられた第2FPCとをさらに備え、
前記制御手段は、前記第2FPCからの出力信号の値に応じて、前記第1FPCが前記グランドと接続するように又は接続しないように、前記スイッチを制御することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記導電膜付きの除電シートの抵抗値は、10の7乗Ω/スクエア未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
タッチパネル本体の上部シートの上面に形成される導電膜と、
前記導電膜付きの上部シートの一端に設けられる第1FPC(フレキシブルプリント回路)と、
前記第1FPCとグランドとの間の接続又は非接続を切り替えるスイッチと、
前記タッチパネル本体の操作時に、前記第1FPCが前記グランドと接続するように前記スイッチを制御すると共に前記タッチパネル本体の非操作時に、前記第1FPCが前記グランドと非接続になるように前記スイッチを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項5】
前記タッチパネル本体の下部シートに設けられた第2FPCをさらに備え、
前記制御手段は、前記第2FPCからの出力信号の値に応じて、前記第1FPCが前記グランドと接続するように又は接続しないように、前記スイッチを制御することを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル装置。
【請求項6】
前記導電膜付きの上部シートの抵抗値は、10の7乗Ω/スクエア未満であることを特徴とする請求項4又は5に記載のタッチパネル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ユーザが保護シート上からタッチパネルに触れたときに静電気が発生しても、誤動作及び表示の乱れの発生を防止することができる液晶表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この液晶表示装置では、メッセージ表示画面の上方にタッチパネルが配設され、このタッチパネルの上方を覆うようにして透明の保護シートが設けられている。保護シートは、ユーザが接触する上面側が絶縁層とされ、タッチパネルに対向する下面側が導電層として形成され、当該導電層が接地されている。
【0003】
図1は、従来の抵抗膜式タッチパネルに除電シートを貼り付けたタッチパネル装置を示す断面図である。
【0004】
図1のタッチパネル装置1は、筐体2、液晶表示装置(LCD)3、両面テープ4、タッチパネル5、接着剤6、除電シート7及び導電性バネ8を備えている。LCD3、両面テープ4、タッチパネル5、接着剤6、除電シート7及び導電性バネ8は、この順番に従って下から積層されている。また、筐体2の上部には、枠部2aが設けられている。枠部2aの下面に、導電性バネ8が固定されており、導電性バネ8はグランド(GND)に接続されている。除電シート7は、10の7乗Ω/スクエア以上の高い抵抗値を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−279937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、タッチパネル装置1の除電シート7は、10の7乗Ω/スクエア以上の高い抵抗値を有している。仮に、10の7乗Ω/スクエア未満の低い抵抗値の除電シートが使用された状態で、除電シートに指が触れると、静電気による衝撃が操作者に発生し、操作者に不快感を与えてしまうという問題がある。一方で、除電シートの抵抗値が高い場合には(例えば10の7乗Ω/スクエア以上)、操作者に溜まった静電気の除電に時間がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、短時間で静電気を除電し、操作者に静電気による不快感を与えないタッチパネル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載のタッチパネル装置は、タッチパネル本体の上部シート上に貼り付けられる導電膜付きの除電シートと、前記除電シートとグランドとの間の接続又は非接続を切り替えるスイッチと、前記タッチパネル本体の操作時に、前記除電シートが前記グランドと接続するように前記スイッチを制御すると共に前記タッチパネル本体の非操作時に、前記除電シートが前記グランドと非接続になるように前記スイッチを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本明細書に記載のタッチパネル装置は、タッチパネル本体の上部シートの上面に形成される導電膜と、前記導電膜付きの上部シートの一端に設けられる第1FPC(フレキシブルプリント回路)と、前記第1FPCとグランドとの間の接続又は非接続を切り替えるスイッチと、前記タッチパネル本体の操作時に、前記第1FPCが前記グランドと接続するように前記スイッチを制御すると共に前記タッチパネル本体の非操作時に、前記第1FPCが前記グランドと非接続になるように前記スイッチを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、短時間で静電気を除電し、操作者に静電気による不快感を与えることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来の抵抗膜式タッチパネルに除電シートを貼り付けたタッチパネル装置を示す断面図である。
【
図2】本実施の形態にかかるタッチパネル装置の概略構成図である。
【
図3】タッチパネル装置のタッチパネル本体の断面図である。
【
図4】タッチパネル装置のタッチパネル本体の変形例の断面図である。
【
図5】タッチパネル装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図6のタッチパネル装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照し説明する。
【0015】
図2は、本実施の形態にかかるタッチパネル装置の概略構成図である。
図3は、タッチパネル装置のタッチパネル本体の断面図である。
図2のタッチパネル装置100は、タッチパネル本体150及び制御回路160を含む。タッチパネル本体150は、
図3に示すように積層構造であり、ガラス102、PET(ポリエチレン・テレフタレート)フィルム116及び除電シート120を備えている。尚、ガラス102の代わりにPETフィルムが使用されてもよい。
【0016】
ガラス102の上面に透明な導電材料が塗布され、ITO(インジウムスズ酸化物)膜104が形成される(
図3参照)。ITO膜104上には、絶縁層106が形成されている。さらに、絶縁層106上には、銀電極108が印刷されている。また、銀電極108は、座標検出用のFPC(Flexible Printed Circuits)124(第2FPC)に接続されている。座標検出用のFPC124は、ガラス102の一端で且つ絶縁層106上に固定されている。
【0017】
PETフィルム116の下面に透明な導電材料が塗布され、ITO膜114が形成される(
図3参照)。そして、ITO膜114上に、即ちPETフィルム116の下面に、銀電極112が印刷されている。この銀電極112が印刷されているPETフィルム116は両面テープ110を介して銀電極108が印刷されているガラス102に固定されている。
【0018】
除電シート120は、例えば、10の7乗Ω/スクエア未満の低い抵抗値を有するPET(ポリエチレン・テレフタレート)で形成される。除電シート120の上面には、導電ポリマー又はITO(インジウムスズ酸化物)による導電膜122が形成されている。除電シート120の下面は、接着剤118によりPETフィルム116の上面に貼り付けられている。また、除電シート120の一端には、除電用のFPC126(第1FPC)が固定されている。
【0019】
制御回路160は、例えば、マイコンなどのコントローラ162(制御手段)と、スイッチとしてのトランジスタ165とを備えている。コントローラ162は、座標検出用のFPC124に接続される第1ポート163と、トランジスタ165に接続される第2ポート164とを備えている。コントローラ162は、第1ポート163を介して座標検出用のFPC124からの出力信号を受信し、受信した出力信号に基づいて、押下位置の座標を検出すると共に、第2ポート164を介して、トランジスタ165に制御信号を出力し、トランジスタ165のオン/オフを制御する。
【0020】
また、トランジスタ165は、除電用のFPC126、第2ポート164及びグランド(GND)に接続されており、除電用のFPC126とグランドとの間の接続又は非接続を切り替える。トランジスタ165は、コントローラ162の第2ポート164からHigh信号(H)が入力されると、除電用のFPC126をグランドに接続する。これにより、操作者の体内の静電気が除電シート120、導電膜122及び除電用のFPC126を介して放電される。一方、トランジスタ165は、コントローラ162の第2ポート164からLow信号が入力されると、除電用のFPC126とグランドとの接続を遮断する、即ち除電用のFPC126は開放される。
【0021】
ここで、除電シート120及び除電用のFPC126を直接グランドに接続する場合、操作者が除電シート120に触れた瞬間に放電されてしまい、静電気による衝撃が操作者に生じる。従って、本実施の形態では、操作者が除電シート120に触れた後に、トランジスタ165は除電用のFPC126をグランドに接続する。
【0022】
図4は、タッチパネル装置のタッチパネル本体の変形例の断面図である。
図3のタッチパネル本体150では、PETフィルム116の上に接着剤118、除電シート120及び導電膜122が形成されている。
図4のタッチパネル本体150Aでは、接着剤118、除電シート120及び導電膜122の代わりに、PETフィルム116の上面にITO膜117が形成されている。ITO膜117付きのPETフィルム116の抵抗値は、例えば、10の7乗Ω/スクエア未満である。この場合、除電用のFPC126は、PETフィルム116の一端に固定される。
【0023】
図4では、除電シート120及び導電膜122が使用されないので、装置構成を単純化できるとともに製造コストを減らすことができる。
【0024】
図5は、タッチパネル装置の動作を示すフローチャートである。
【0025】
まず、未操作時には、コントローラ162は、タッチパネル本体150又は150Aのタッチ入力を待つ(ステップS1)。このとき、タッチ入力がされていないので、第1ポート163には、タッチ入力がされていないことを示す低電圧の出力信号(Low)が入力されており、押下位置の座標を示す高電圧の出力信号(High)が入力されない。また、コントローラ162は第2ポート164を介してトランジスタ165へLow信号を出力する(ステップS1)。従って、除電シート120は閉状態である。
【0026】
次に、タッチ開始時には、コントローラ162は、第1ポート163を介してタッチパネル本体150又は150Aからの出力信号を受信する(ステップS2)。
【0027】
コントローラ162は、タッチパネル本体150又は150Aからの出力信号を受信すると、第2ポート164からトランジスタ165へHigh信号を出力し、トランジスタ165は、除電用のFPC126をグランド(GND)に接続する(ステップS3)。これにより、操作者の体内の静電気が除電シート120、導電膜122及び除電用のFPC126を介して放電される。同時に、コントローラ162は、タッチパネル本体150又は150Aから受信した出力信号に基づいて、押下位置の座標を検出する(ステップS3)。
【0028】
次いで、操作終了時(つまり、操作者がタッチパネル本体150又は150Aの操作面から指又は操作ペンを離した時)には、コントローラ162は、第1ポート163を介して座標検出用のFPC124から低電圧を示す出力信号(Low)を入力する(ステップS4)。その後、コントローラ162は、第2ポート164を介してトランジスタ165へLow信号を出力する(ステップS5)。これにより、トランジスタ165は、除電用のFPC126とグランドとの接続を遮断する。手順はステップS1に戻る。
【0029】
つまり、本実施の形態のタッチパネル装置100では、操作者の指又は操作ペンが除電シート120に触れると、トランジスタ165は除電用のFPC126をグランドに接続し、操作者の静電気が放電され、操作者が除電シート120から指又は操作ペンを離すと、トランジスタ165は、除電用のFPC126とグランドとの接続を遮断する。このような処理が電源投入中は繰り返し実行される。
【0030】
また、本実施の形態のコントローラ162は、座標検出用のFPC124からの出力信号の値(即ち低電圧の出力信号(Low)又は高電圧の出力信号(High))に応じて、除電用のFPC126がグランドと接続するように又は接続しないようにトランジスタ165の動作を制御している。
【0031】
図6は、タッチパネル装置の変形例を示す図である。
【0032】
図6のタッチパネル装置100Aでは、除電用のFPC126が抵抗127を備えている。抵抗127は、除電シート120の抵抗値よりも高い抵抗値(例えば、10の7乗Ω/スクエア以上)を有している。また、制御回路160はトランジスタ165を含んでいない。その他の構成は、
図2のタッチパネル装置100と同様である。
【0033】
この構成では、操作者が除電シート120に触れると、静電気が抵抗127に流れ、電気エネルギーとして消費されるので、静電気による衝撃が操作者に生じない。トランジスタ165を使用する場合に比べて、放電に時間がかかるが、タッチパネル装置の構成を簡易化でき、製造コストを低減できる。
【0034】
尚、
図6では、除電シート120が使用されているが、
図4に示すように、除電シートを使用せずに、PETフィルム116の上面にITO膜117が形成されてもよい。この場合、除電用のFPC126は、PETフィルム116の一端に固定される。ITO膜117付きのPETフィルム116の抵抗値は、例えば、10の7乗Ω/スクエア未満であり、抵抗127は、ITO膜117付きのPETフィルム116の抵抗値よりも高い抵抗値(例えば、10の7乗Ω/スクエア以上)を有している。
【0035】
図7は、
図6のタッチパネル装置の動作を示すフローチャートである。
【0036】
まず、未操作時には、コントローラ162は、タッチパネル本体150又は150Aのタッチ入力を待つ(ステップS11)。このとき、タッチ入力がされていないので、第1ポート163には、タッチ入力がされていないことを示す低電圧の出力信号(Low)が入力されており、押下位置の座標を示す高電圧の出力信号(High)が入力されない。
【0037】
次に、タッチ開始時には、コントローラ162は、第1ポート163を介してタッチパネル本体150又は150Aからの出力信号を受信する(ステップS12)。このとき、操作者の静電気は抵抗127に流れ、放電されると共に、コントローラ162は、タッチパネル本体150又は150Aから受信した出力信号に基づいて、押下位置の座標を検出する(ステップS13)。
【0038】
操作終了時(つまり、操作者がタッチパネル本体150又は150Aの操作面から指を離した時)に(ステップS14でYES)、手順はステップS11に戻る。操作が終了していない場合には、ステップS13の手順を繰り返す。以上の処理が電源投入中は繰り返し実行される。
【0039】
本実施の形態によれば、タッチパネル装置100は、タッチパネル本体150のPETフィルム116上に貼り付けられる導電膜122付きの除電シート120と、除電シート120とグランドとの間の接続又は非接続を切り替えるトランジスタ165と、タッチパネル本体150の操作時に、除電シート120がグランドと接続するようにトランジスタ165を制御すると共にタッチパネル本体150の非操作時に、除電シート120がグランドと非接続になるようにトランジスタ165を制御するコントローラ162とを備えている。従って、短時間で静電気を除電し、操作者に静電気による不快感を与えないタッチパネル装置を提供することができる。
【0040】
本実施の形態では、スイッチング素子としてトランジスタ165が使用されているが、スイッチング素子はこれに限定されるものではなく、例えば、トライアックやサイリスタなどが使用されてもよい。
【0041】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
100,100A タッチパネル装置
150,150A タッチパネル本体
160 制御回路
102 ガラス
104,114 ITO膜
106 絶縁層
108,112 銀電極
110 両面テープ
116 PETフィルム
120 除電シート
122 導電膜
124 座標検出用のFPC
126 除電用のFPC
162 コントローラ
165 トランジスタ
163 第1ポート
164 第2ポート