特許第6246588号(P6246588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6246588一つ以上のフレネルレンズを使用する頭取付けディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246588
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】一つ以上のフレネルレンズを使用する頭取付けディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20171204BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   G02B27/02 Z
   H04N5/64 511A
【請求項の数】18
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2013-534454(P2013-534454)
(86)(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公表番号】特表2013-545130(P2013-545130A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】IB2011055826
(87)【国際公開番号】WO2012052981
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年12月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504242618
【氏名又は名称】ロッキード マーティン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】スミス デービッド アラン
(72)【発明者】
【氏名】ウィーズ ギャリー イー
(72)【発明者】
【氏名】クディヒ グレン クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ハリソン グレゴリー エー
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−278476(JP,A)
【文献】 特開平10−080575(JP,A)
【文献】 特開平07−134266(JP,A)
【文献】 特開2004−094005(JP,A)
【文献】 特開2010−020065(JP,A)
【文献】 特表2010−507833(JP,A)
【文献】 特表平06−509185(JP,A)
【文献】 特開2011−133633(JP,A)
【文献】 特開平08−190072(JP,A)
【文献】 特表2008−529064(JP,A)
【文献】 特開平07−244246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 − 27/02
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭取付けディスプレイ装置であって、
(I)ユーザの頭に取り付けられるのに適するフレームと、
(II)該フレームによって支持される画像ディスプレイシステムと、
(III)該フレームによって支持される連続反射光学表面であって、軸対称ではない表面であり、かつ、該ユーザの目に向かって光を収束するように構成される連続反射光学表面と、
(IV)該フレームによって支持されるフレネルレンズシステムであって、該フレネルレンズシステムと該画像ディスプレイシステムとの間にいかなる光学コンポーネントも介在することなく、該画像ディスプレイシステムから直接に該画像ディスプレイシステムによって放射される光を受けるように、かつ、該連続反射光学表面に向かう方向に該光を屈折させるように構成されるフレネルレンズシステムと、
を備え、
(a)該画像ディスプレイシステムは、少なくとも一つの発光表面を含み、
(b)該連続反射光学表面は、該少なくとも一つの発光表面の空間分離された部分の空間分離された仮想画像を反射するように構成され、該空間分離された仮想画像の内の少なくとも一つの仮想画像は、該空間分離された仮想画像の内の少なくとも一つの他の仮想画像から少なくとも100°角度的に分離され、前記角度的な分離は、該ユーザの目の回転中心から測定され、
(c)該連続反射光学表面の少なくとも一つのポイントは、該連続反射光学表面の少なくとも一つの他のポイントから少なくとも100°で角度的に分離され、前記角度的な分離は、該ユーザの目の回転中心から測定される、
ことを特徴とする頭取付けディスプレイ装置。
【請求項2】
該連続反射光学表面は、半透明であることを特徴とする請求項1に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項3】
該装置は、単一の連続反射光学表面を有することを特徴とする請求項1に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項4】
該装置は、該ユーザの各目に対して一つずつ、二つの連続反射光学表面を有することを特徴とする請求項1に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項5】
該フレネルレンズシステムは、単一のフレネルレンズ要素を有することを特徴とする請求項1に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項6】
該フレネルレンズシステムは、該ユーザの各目に対して一つずつ、二つのフレネルレンズ要素を有することを特徴とする請求項1に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項7】
該フレネルレンズシステムは、該画像ディスプレイシステムの該少なくとも一つの発光表面から発する光を少なくとも部分的にコリメートするように構成されることを特徴とする請求項1に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項8】
該連続反射光学表面は、該画像ディスプレイシステムの該少なくとも一つの発光表面から発する光を部分的にコリメートするように構成されることを特徴とする請求項1に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項9】
該フレネルレンズシステムは、少なくとも一つの湾曲フレネルレンズ要素を備えることを特徴とする請求項1に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項10】
該少なくとも一つの湾曲フレネルレンズ要素は、該連続反射光学表面に向かって凹状となっていることを特徴とする請求項に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項11】
頭取付けディスプレイ装置であって、
(I)ユーザの頭に取り付けられるのに適するフレームと、
(II)該フレームによって支持され、少なくとも一つの発光表面を有する画像ディスプレイシステムと、
(III)該フレームによって支持される連続反射光学表面であって、連続表面であり、かつ、該ユーザの目に向かって光を収束するように構成される連続反射光学表面と、
(IV)該フレームによって支持されるフレネルレンズシステムであって、該フレネルレンズシステムと該画像ディスプレイシステムとの間にいかなる光学コンポーネントも介在することなく、該画像ディスプレイシステムから直接に該画像ディスプレイシステムによって放射される光を受けるように、かつ、該連続反射光学表面に向かう方向に該光を屈折させるように構成され、該フレネルレンズシステムは、該連続反射光学表面及び該ユーザの目間の光路の外側に位置するフレネルレンズシステムと、
を備え、
該連続反射光学表面は、該フレネルレンズシステムのフレネルレンズと該連続反射光学表面からの光路に光学コンポーネントを介在することなく、該フレネルレンズシステムの該フレネルレンズから直接に該光を受け、該連続反射光学表面と該フレネルレンズシステムは、該少なくとも一つの発光表面の空間分離された部分の空間分離された仮想画像を生成し、該空間分離された仮想画像の内の少なくとも一つの仮想画像は、該空間分離された仮想画像の内の少なくとも一つの他の仮想画像から少なくとも100°で角度的に分離され、該角度的な分離は、該ユーザの目の回転中心から測定される、
ことを特徴とする頭取付けディスプレイ装置。
【請求項12】
該連続反射光学表面は、半透明であることを特徴とする請求項11に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項13】
該フレネルレンズシステムは、該画像ディスプレイシステムの該少なくとも一つの発光表面から発する光を少なくとも部分的にコリメートするように構成されることを特徴とする請求項11に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項14】
該連続反射光学表面は、該画像ディスプレイシステムの該少なくとも一つの発光表面から発する光を少なくとも部分的にコリメートするように構成されることを特徴とする請求項11に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項15】
該フレネルレンズシステムは、該連続反射光学表面に向かって凹状となっている少なくとも一つの湾曲フレネルレンズ要素を備えることを特徴とする請求項11に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項16】
該フレネルレンズシステムは、スタックされた構成の複数のフレネルレンズ要素を備えることを特徴とする請求項11に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項17】
該フレネルレンズシステムは、エッジによって互いに分離した複数のファセットを有する少なくとも一つのフレネルレンズ要素を備え、該エッジの少なくとも幾つかのエッジは、(i)該ユーザの目の回転中心を通過する、(ii)該ユーザの目の水晶体の中心を通過する、又は(iii)該ユーザの目の網膜の表面に対して垂直である、放射状ラインに沿って存在することを特徴とする請求項11に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【請求項18】
該連続反射光学表面は、該画像ディスプレイシステムの画素領域に対応してマッピングされた複数の表面領域を備え、該複数の表面領域は、それぞれの表面領域がマッピングされた対応する画素領域に向かう方向にそれぞれの表面領域から延びる第1ラインと、該ユーザの目の期待される位置に向かう方向にそれぞれの表面領域から延びる第2ラインとの間の角度に基づく、対応する表面法線を有することを特徴とする請求項1に記載の頭取付けディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年8月17日に出願された米国出願第13/211,365号及び米国仮出願第61/405,440号(2010年10月21日に出願されたHEAD−MOUNTED DISPLAYと題する)、米国仮出願第61/417,325号(2010年11月26日に出願されCURVED−STACKED FRESNEL ARCHITECTUREと題する)、米国仮出願第61/417,326号(2010年11月26日に出願されたCURVED−BEAM SPLITTER ARCHITECTUREと題する)、米国仮出願第61/417,327号(2010年11月26日に出願されたCOMBINED ARCHITECTURE OF FRESNEL LENSE AND FLAT BEAM SPLITTERと題する)、米国仮出願第61/417,328号(2010年11月26日に出願されCOMBINED ARCHITECTURE OF FRESNEL LENSE AND CURVED BEAM SPLITTERと題する)、及び米国仮出願第61/427,530号(2010年12月28日に出願されたCURVED MIRROR FOR HEAD MOUNTED DISPLAYと題する)に対する優先権を主張し、その開示内容全体が参考として本明細書で援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、一つ以上のフレネルレンズを使用する頭取付けディスプレイ装置に関する。また、ある実施形態において、本装置は一つ以上の反射光学表面、例えば、一つ以上の自由空間、超広角、反射光学表面(以降、“FS/UWA/RO表面”と略す)を使用する。ある実施形態において、全体の光学システムは、非瞳孔形成システムであり、即ち、全体のシステムの制御開口(開口絞り)は、ユーザの目の瞳孔である。
【0003】
一つ以上のフレネルレンズ及び、使用される場合、一つ以上の反射表面(例えば、一つ以上のFS/UWA/RO表面)は、ユーザの目に近接保持された発光ディスプレイシステムからの画像を表示するために使用される。
【背景技術】
【0004】
背景技術
ヘルメット取付けディスプレイやメガネ取付けディスプレイのような頭取付けディスプレイ(ここでは、“HMD”と略す)は、ユーザの片目、より一般的には、両目近くに位置する一つ以上の小さなディスプレイデバイスを有する個人の頭に装着されるディスプレイデバイスである。
【0005】
幾つかのHMDは、実世界画像とは対照的に、シミュレート(コンピュータ発生)画像のみを表示し、従って、それらは、しばしは、“仮想現実”或いは没入型HMDと呼ばれる。他のHMDは、シミュレート画像を非シミュレートの実世界画像に重ねる(組み合わせる)。非シミュレート画像とシミュレート画像の組み合わせによって、HMDユーザは、バイザーやアイピースを介して、例えば、実行されるタスクに関連する追加のデータがユーザの前方視界(FOV)に重ね合わされる世界を見ることができる。この重ね合わせは、時として、“拡張現実”或いは“混合現実“と呼ばれる。
【0006】
非シミュレートの実世界ビューとシミュレート画像との組合せは、部分的に反射され/部分的に透過する光学表面(“ビームスプリッター”)を使用して達成することができ、表面の反射性が使用されて仮想画像(光学的意味で)としてシミュレート画像を表示し、且つ表面の透過性が使用されてユーザが直接に実世界を見ることができる(“光学的透過システム”と呼ばれる)。実世界ビューとシミュレート画像との組み合わせは、実世界ビューのビデオをカメラから受け取りコンバイナーを使用して、それをシミュレート画像と電子的に混合することによっても行うことができる(“ビデオ透過システム”と呼ばれる)。次に、組み合わされた画像は、反射光学表面によって仮想画像(光学的意味で)としてユーザに提示することができる(この場合、その表面は、透過特性を有する必要はない)。
【0007】
前述から、反射光学表面が、ユーザに(i)シミュレート画像と非シミュレートの実世界画像との組み合わせ;(ii)シミュレート画像と実世界のビデオ画像との組み合わせ;(iii)純粋にシミュレートされた画像を提供するHMDにおいて使用され得ると理解することができる。(最後の場合は、しばしば“没入型”システムと呼ばれる。)これらの場合の各々において、反射光学表面は、ユーザが見る仮想画像(光学的意味で)を生成する。歴史的に、そのような反射光学表面は、射出瞳がユーザによって利用可能な動的視野のみならず静的視野をも実質的に制限する光学システムの部分であった。具体的には、光学システムによって生成される画像を見るために、ユーザは、ユーザの目を光学システムの射出瞳に合わせ、その状態を保つ必要があった。その場合でも、ユーザに見える画像はユーザの全静的視野を覆わない。即ち、反射光学表面を使用したHMDで使用される従来の光学システムは、瞳孔形成システムの一部であり、従って、射出瞳で制限されている。
【0008】
システムがそのように制限されているのは、人間の視野が顕著に大きいという基本的な事実に因る。目の中心視野と周辺視野の両方を含む、人間の目の静的視野は、水平方向で〜150°、垂直方向で〜130°である。(本開示の目的のために、150°を名目上の人間の目の正面の静的視野とする。)そのように大きな静的視野に適合可能な射出瞳を有する良好に較正された光学システムは極まれであり、あっても、高価且つ嵩高となる。
【0009】
更に、人間の目の動作視野(動的視野)は非常に大きい。なぜなら人間の目は、その回転中心回りに回転することができる、即ち、人間の脳は、目の凝視の方向を変えることによって異なる方向へ人間の目の中心+周辺視野を向けることができるからである。名目上では目に対して、運動の垂直方向範囲は、上方に〜40°、下方に〜60°であり、運動の水平方向範囲は、正面から±〜50°である。HMDで以前に使用された光学システムのタイプによって生成されるサイズの射出瞳では、目の小さな回転でさえ、目の静的視野と射出瞳との重なりが実質的に減少し、より大きな回転によって画像が完全に見えなくなった。理論的には可能であるけれども、ユーザの目と同調して動く射出瞳は、非実用的であり、極めて高価である。
【0010】
人間の目のこうした性質に鑑み、ユーザが自然の世界を見るのと同じ様に画像ディスプレイシステムによって発生した画像を見ることができる光学システムを提供することに関して関連する三つの視野がある。三つの視野の内最も小さいものは、ユーザの目を回転する、従って、外界にわたってユーザの中心視野を走査するユーザの能力によって定義されるものである。最大の回転は、正面から約±50°であり、この視野(中心動的視野)は約100°である。三つの視野の内中間のものは、正面の静的視野であり、ユーザの中心視野と周辺視野の両方を含む。上で論じたように、この視野(中心+周辺の静的視野)は、約150°である。三つの視野の内最大のものは、ユーザの目を回転する、従って、外界にわたってユーザの中心視野と周辺視野を走査するユーザの能力によって定義されるものである。約±50°の最大回転と約150°の中心+周辺静的視野に基づき、この最大視野(中心+周辺動的視野)は、約200°である。少なくとも100°から少なくとも150°までのそして少なくとも200°までの視野のスケールのこの増加は、直感的で自然な方法で画像ディスプレイシステムによって発生する画像を見るユーザの能力に関してユーザに対応する利益を提供する。
【0011】
人間の目がその目の10インチ以内にあるディスプレイに容易に焦点を合わせるために、コリメーションの形態がディスプレイから放射される光線に提供される必要がある。このコリメーションは、あたかも光線が目とディスプレイの間の実際の距離よりも大きな距離から発生するように現れるように働く。一方、より大きな見掛けの距離によって、目はディスプレイの画像に容易に焦点を合わせることができる。幾つかの頭取付けディスプレイは、ディスプレイからの光をコリメートしようとして複数のミラーやプリズムを使用している。複数のミラーやプリズムの使用は、容量と重量を増すことになり、そのような頭取付けディスプレイを希望のものよりも煩雑かつ重くする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、合焦点能力に並びに人間の目の少なくとも中心の動的視野に適合する頭取付けディスプレイが必要とされている。本開示は、これらの必要性に関するものであり、広い視野全体にわたるコリメート(又は実質的なコリメート)光を生成する頭取付けディスプレイを提供する。
定義
【0013】
本開示の残りの部分と請求項において、フレーズ“仮想画像”は、光学的意味で使用され、即ち、仮想画像は、特定の場所、実際には、認識される光がその特定の場所を起源としていないのだが、その特定の場所から来ていると認識される画像である。
【0014】
本開示全体を通して、以下のフレーズ/用語は、以下の意味/範囲を有する:
(1)フレーズ“反射光学表面”(ここでは、“反射表面”とも呼ばれる)は、反射性のみを備える表面並びに反射性と透過性の両方を備える表面を含む。いずれの場合においても、反射性は部分的でよく、即ち、入射光の一部がその表面を通して透過され得る。同様に、その表面が反射性と透過性の両方を備える場合、反射性及び/又は透過性は部分的であってもよい。以下で論じられるように、単一の反射性光学表面を両眼に使用することができ、また各目は、自己の個別の反射光学表面を有することができる。他のバリエーションは、両眼に対して又は各目に対して個別に複数の反射光学表面を使用することを含む。ミックス(混合)と一致の組み合わせも使用することができ、例えば、単一の反射光学表面は片目に使用することができ、複数の反射光学表面は他方の目に使用することができる。或いは、一つ以上の反射光学表面は、ユーザの片目のみに提供されてもよい。以下で記述される請求項は、ここで開示される反射光学表面のこれら及び他の適用をカバーすることを意図している。特に、反射光学表面を求める各請求項は、指定されたタイプの一つ以上の反射光学表面を含む頭取付けディスプレイ装置をカバーすることを意図する。
(2)フレーズ“少なくとも一つの発光表面を有する画像ディスプレイシステム”は、一般的にその表面を通過する光の透過、表面での光の発生(例えば、LEDのアレイによる)、他の光源からの光のその表面からの反射等のいずれかにより発光する表面を有する何らかのディスプレイシステムを含めて使用される。その画像ディスプレイシステムは、一つ以上の画像ディスプレイデバイス、例えば、一つ以上のLED及び/又はLCDアレイを使用することができる。反射光学表面と同様に、所与の頭取付けディスプレイ装置は、ユーザの目の一方又は両方に対する一つ以上の画像ディスプレイシステムを組み込むことができる。また、画像ディスプレイシステムを求める以下に記述の請求項の各々は、指定されたタイプの一つ以上の画像ディスプレイシステムを含む頭取付けディスプレイ装置をカバーすることを意図する。
(3)フレーズ“双眼鏡”は、各目に対する少なくとも一つの分離光学要素(例えば、一つのディスプレイデバイス及び/又は一つの反射光学表面)を含む装置を意味する。
(4)フレーズ“視野”及びその略記FOVは、オブジェクト(即ち、ディスプレイ)空間における“実”視野とは対照的な画像(目)空間における“見掛けの”視野を指す。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第一の態様に従って、頭取付けディスプレイ装置(100)が開示され、この頭取付けディスプレイ装置(100)は、
(I)ユーザの頭(105)に取り付けるのに適するフレーム(107)と、
(II)フレーム(107)によって支持される画像ディスプレイシステム(110)(例えば、このフレームは、HMDの使用中に、ユーザの視野外にある固定位置に画像システムデバイスを支持する)と、
(III)フレーム(107)によって支持される反射光学表面(120)であって、反射光学表面(120)は、三次元直交座標系の座標軸回りに回転対称ではない連続表面である(例えば、反射光学表面は、任意の原点を有する三次元直交座標系のx、y又はz軸回りに回転対称ではない(回転表面ではない)自由空間の超広角反射光学表面(120)であり得る)反射光学表面(120)と、
(IV)フレーム(107)によって支持されるフレネルレンズシステム(115)であって、このフレネルレンズシステム(115)は、画像ディスプレイシステム(110)と反射光学表面(120)との間に配置されるフレネルレンズシステム(115)と、
を備え、
(a)画像ディスプレイシステム(110)は、少なくとも一つの発光表面(81)を含み、
(b)使用中に、反射光学表面(120)とフレネルレンズシステム(115)は、少なくとも一つの発光表面(81)の空間分離された部分の空間分離された仮想画像を生成し、空間分離された仮想画像の少なくとも一つの仮想画像は、前記空間分離された仮想画像の少なくとも一つの他の仮想画像から少なくとも100°で角度的に分離され(幾つかの実施形態において、少なくとも150°、及び他の実施形態において、少なくとも200°)、この角度的な分離は、名目上のユーザの目(71)の回転中心(72)から測定され、
(c)使用中に、反射光学表面(120)の少なくとも一つのポイントは、反射光学表面(120)の少なくとも一つの他のポイントから少なくとも100°で角度的に分離され(幾つかの実施形態において、少なくとも150°、及び他の実施形態において、少なくとも200°)、前記角度的な分離は、名目上のユーザの目の回転中心から測定される、
ことを特徴とする頭取付けディスプレイ装置(100)である。
【0016】
この態様の場合、使用中に、空間分離された仮想画像の少なくとも一つの仮想画像は、反射光学表面の少なくとも一つのポイントを通過する凝視の方向に沿って配置され得、空間分離された仮想画像の少なくとも一つの他の仮想画像は、反射光学表面の少なくとも一つの他のポイントを通過する凝視の方向に沿って配置される。
【0017】
第二の態様に従って、頭取付けディスプレイ装置(100)が開示され、この頭取付けディスプレイ装置(100)は、
(I)ユーザの頭(105)に取り付けるのに適するフレーム(107)と、
(II)フレーム(107)によって支持される画像ディスプレイシステム(110)(例えば、このフレームは、HMDの使用中に、ユーザの視野外にある固定位置に画像ディスプレイシステムを支持する)と、
(III)フレーム(107)によって支持される自由空間の超広角反射光学表面(120)と、
(IV)フレーム(107)によって支持されるフレネルレンズシステム(115)であって、このフレネルレンズシステム(115)は、画像ディスプレイシステム(110)と自由空間超広角反射光学表面(120)との間に配置されるフレネルレンズシステム(115)と、
を備え、
(a)画像ディスプレイシステム(110)は、少なくとも一つの発光表面(81)を含み、
(b)使用中に、自由空間超広角反射光学表面(120)とフレネルレンズシステム(115)は、少なくとも一つの発光表面(81)の空間分離された部分の空間分離された仮想画像を生成し、空間分離された仮想画像の少なくとも一つの仮想画像は、前記空間分離された仮想画像の少なくとも一つの他の仮想画像から少なくとも100°で角度的に分離され(幾つかの実施形態において、少なくとも150°、及び他の実施形態において、少なくとも200°)、この角度的な分離は、名目上のユーザの目(71)の回転中心(72)から測定される、
ことを特徴とする頭取付けディスプレイ装置(100)である。
【0018】
第三の態様に従って、頭取付けディスプレイ装置(100)が開示され、この頭取付けディスプレイ装置(100)は、
(I)ユーザの頭(105)に取り付けるのに適するフレーム(107)と、
(II)フレーム(107)によって支持される画像ディスプレイシステム(110)と、
(III)フレーム(107)によって支持される反射光学表面(120)と、
(IV)フレーム(107)によって支持されるフレネルレンズシステム(115)であって、このフレネルレンズシステム(115)は、画像ディスプレイシステム(110)と反射光学表面(120)との間に配置されるフレネルレンズシステム(115)と、
を備え、
フレネルレンズシステム(115)は、湾曲された少なくとも一つのフレネルレンズ要素を含むことを特徴とする頭取付けディスプレイ装置(100)である。
【0019】
第四の態様に従って、頭取付けディスプレイ装置(100)が開示され、この頭取付けディスプレイ装置(100)は、
(I)ユーザの頭(105)に取り付けるのに適するフレーム(107)と、
(II)フレーム(107)によって支持される画像ディスプレイシステム(110)と、
(III)フレーム(107)によって支持されるフレネルレンズシステム(115)と、
を備え、
使用中に、フレネルレンズシステム(115)は、画像ディスプレイシステム(110)と名目上のユーザの目の間に配置され、
フレネルレンズシステム(115)は、エッジ(32)によって互いに分離される複数のファセット(31)を有する少なくとも一つのフレネルレンズ要素を含み、そこでは、頭取付けディスプレイ装置の使用中に、エッジ(32)の少なくとも幾つかは、(i)名目上のユーザの目(35)の回転中心(34)を通過する、(ii)名目上のユーザの天然のレンズ(即ち、名目上のユーザの水晶体)の中心を通る、或いは(iii)名目上のユーザの角膜表面に対して垂直である、放射状ラインに沿って存在する、
ことを特徴とする頭取付けディスプレイ装置(100)である。
【0020】
本開示の上記態様のある実施形態において、分離フレネルレンズシステム、分離画像ディスプレイシステム及び/又は分離反射表面(使用される場合)は、ユーザの目の各々に対して使用される。他の実施形態では、反射光学表面(使用される場合)は、フレネルレンズシステムによって提供される画像ディスプレイシステムからの光のコリメーション(実質的コリメーション)に寄与し、このようなコリメーション(実質的コリメーション)への寄与は、表面の局所曲率半径を介して達成される。
【0021】
種々の実施形態では、HMD装置は、両眼非瞳孔形成システムであってもよく、このシステムにおいて、目は、その通常得られる角度範囲全体にわたって外部瞳孔を通して見えることが制限されることなくその回転中心回りに自由に動く。従来のHMDデバイスは、広い視野を提供している、或いは、提供することができると主張しているが、これらのデバイスは、目が見通さなければならない外部瞳孔を含んでいる。目に提供される広い範囲の情報が有るが、目が回転すると、その情報がなくなってしまう。これは、瞳孔形成システムに関連する基本的な問題であり、反射表面及び特にFS/UWA/RO表面を使用する本開示の実施形態において回避される。
【0022】
本発明の態様の上記概要で使用される参照番号(その参照番号は、代表的なものであり、全てを含んでおらず或いは完全でもない)は、読者の利便性のために過ぎず、本発明を制限する意図もなく制限すると解釈されるべきでもない。より一般的には、前述の一般的な記述と以下の詳細な記述の両方は、単に、本発明の典型的なものであり、本発明の性質と特徴を理解するための概説や構成を提供することを意図している。
【0023】
本発明の更なる特徴及び利点は、続く詳細な記述で述べられ、一部は、その記述から当業者には容易に明らかになり、又は本明細書での記述によって例示されるように本発明を実施することによって認識される。添付の図面は、本発明の更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれると共にその一部を構成する。本明細書及び図面に開示される発明の種々の特徴は任意に及び組み合わせて使用され得ることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態例に従う頭取付けディスプレイ装置の側面図表示である。
図2図2は、図1の頭取付けディスプレイ装置の正面図表示である。
図3図3は、実施形態例に従うユーザの目の回転中心をエッジが通るファセットを有するフレネルレンズ要素の概略横断面図である。
図4図4は、実施形態例に従うフレネルレンズシステムと湾曲反射光学表面を含む頭取付けディスプレイ装置のための光学システムを描いている。
図5図5は、実施形態例に従うユーザの二つの目に対応する二つの湾曲反射光学表面の使用を描く頭取付けディスプレイ装置の平面図である。
図6図6は、真っ直ぐ前の凝視の方向に対する名目上の人間の目の静的視野を描く概略図である。
図7図7は、実施形態例に従うFS/UWA/RO表面と図6の静的視野との相互作用を描く概略図である。図7中の矢印は、光の伝播の方向を描いている。
図8図8は、実施形態例に従う光線が目に向かって反射される場合におけるディスプレイ上の所与の画素からの光路を描く(光)線の図である。
図9図9は、実施形態例に従う光線が目に向かって反射される場合におけるディスプレイ上の二つの画素からの光路を描く(光)線の図である。
図10図10は、実施形態例に従う反射器の局所法線の方向の選択に使用される変数を描く図である。
図11図11は、実施形態例に従う光路と共に湾曲反射器を表す。
図12図12は、実施形態例に従うフレネルレンズシステムを有する拡張現実頭取付けディスプレイ装置の側面図のブロック図である。
図13図13は、図12に示されるタイプの拡張現実頭取付けディスプレイ装置における光線を描く(光)線の図である。
図14図14は、図13の拡張現実頭取付けディスプレイ装置におけるディスプレイと外部光線を描く(光)線の図である。
図15図15は、実施形態例に従うフレネルレンズシステムを有する没入型頭取付けディスプレイ装置の側面図のブロック図である。
図16図16は、実施形態例に従うフレネルレンズシステムを有する没入型頭取付けディスプレイ装置の平面図のブロック図である。
図17図17は、図15図16に示されるタイプの没入型頭取付けディスプレイ装置における光線を描く(光)線の図である。
図18図18は、実施形態例に従うユーザの目に入射する光線を描く(光)線の図である。
図19図19は、実施形態例に従う反射表面に対する局所法線を計算するための形状を描く概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I.序文
上で論じられたように、本開示は、フレネルレンズシステム、これは、湾曲フレネルレンズシステム(以下を参照)であり得るが、これを使用してユーザにコリメートされた(又は、実質的にコリメートされた)画像を提供するHMDに関する。フレネルレンズシステムは、光学システムにおいて単独のコリメート源であってもよいし、湾曲反射光学表面、例えば、FS/UWA/RO表面を使用する実施形態では、フレネルレンズシステムのコリメーションは、湾曲反射光学表面の寄与するコリメーションと組み合わされてもよい。
【0026】
以下の論述は、FS/UWA/RO表面を使用する実施形態の記述(セクションII)から始まり、次にこれらの実施形態並びにここで開示される他の実施形態との使用のためフレネルレンズシステムの論述(セクションIII)に進む。セクションIIIは、フレネルレンズシステムを含む光学システムで使用されるFS/UWA/RO表面のための設計プロセスの論述も含む。セクション(III)に続いて、FS/UWA/RO表面ではない反射光学表面を使用する実施形態と湾曲フレネルレンズシステムについて論じられ(セクションIV)、画像ディスプレイシステムが、反射表面を使用することなく、湾曲フレネルレンズシステムを介して直接見る実施形態が続く(セクションV)。最後に、ここで開示された種々の実施形態に適用可能な一般的な論述が示される(セクションVI)。
【0027】
なお、提示の特定のセクションに現れるHMDの種々のコンポーネントの論述は、そのセクションの実施形態に制限されず、ここで開示される実施形態の全てに広く適用可能である。一実施例として、HMDで使用可能な画像ディスプレイシステムのタイプの論述は、セクションIの実施形態(そこでは、記述がある)だけでなく、セクションIVとVの実施形態に適用可能である。
II.FS/UWA/RO表面を使用するHMD
【0028】
図1図2は、ユーザ105によって装着されていることを示す頭取付けディスプレイ装置100の側面図と正面図である。頭取付けディスプレイ装置は、FS/UWA/RO表面120を使用する。
【0029】
一実施形態において、頭取付けディスプレイ装置100は、例えば、光透過拡張現実双眼鏡であり得る。光透過拡張現実双眼鏡は、典型的にはHMDの最も複雑な形態であるので、本開示は、最初に、このタイプの実施形態を論じる。なお、ここで論じられた原理が光透過拡張現実単眼鏡、ビデオ透過拡張現実双眼鏡と単眼鏡、及び双眼と単眼“仮想現実”システムに等しく適用可能である。
【0030】
図1図2に示されるように、頭取付けディスプレイ装置100は、ユーザによって装着されるのに適し、眼鏡の装着と同様、ユーザの鼻と耳によって支持されるフレーム107を含む。図1図2の実施形態において、並びにここで開示される他の実施形態において、頭取付けディスプレイ装置は、種々の構成を持つことができ、例えば、従来のゴーグル、眼鏡、ヘルメットお。等に似ていてよい。幾つかの実施形態において、ユーザの目に対して固定の位置にHMDフレームを保持するためにストラップを使用してもよい。一般論として、HMDパッケージの外側表面は、HMDディスプレイ(単数又は複数)とユーザの目に対して要求される方向に光学システムを保持する任意の形態を取ることができる。
【0031】
頭取付けディスプレイ装置100は、少なくとも一つの画像ディスプレイシステム110と、図1図2に示されるように、必要に応じて湾曲される自由空間超広角反射光学表面120、即ち、FS/UWA/RO表面120を含む。表面120は、純粋に反射性であってもよいし、或いは反射特性と透過特性の両方を有することができ、その場合、
“ビームスプリッター”の一タイプと考えられる。
【0032】
表面120は、ここでは、“自由空間”表面と称される。なぜなら、その局所空間位置、局所表面曲率及び局所表面配向がx−y平面のような特定の基板に縛られず、むしろ、表面設計中に、三次元空間に適用される基本的光学原理(例えば、フェルマーとヒーローの最小時間の原理)を使用して決定されるからである。表面120は、“超広角”表面と呼ばれる。なぜなら、使用中、少なくとも、FS/UWA/RO表面が名目上のユーザの目の動的中心視野を制限しないからである。従って、FS/UWA/RO表面が使用されるフレネルレンズシステムの光学特性に依存して、HMDの全体の光学システムは、非瞳孔形成であり得、即ち、ユーザの視野を制限する射出瞳を有する従来の光学システムとは異なり、ここで開示される光学システムの種々の実施形態のための有効な瞳孔は、外部の光学システムと関連するものとは対照的にユーザの目の入射瞳である。付随して、これらの実施形態のために、ユーザに対して提供される視野は、外部光学システム、ここでは、ユーザの目の外部光学システムの出射瞳との小さな照準ミスでさえユーザが利用可能な情報内容を実質的に減少し、より大きな照準ミスでは全体の画像が見えなくなるが、このような従来の光学システムよりもかなり大きい。
【0033】
FS/UWA/RO表面120は、少なくとも一つの画像ディスプレイシステム110だけではなく、一方又は両方の目完全に囲むことができる。特に、その表面は、利用可能水平方向視野を拡張するように目の両側周りに顔の両側に向かって湾曲することができる。一実施形態において、FS/UWA/RO表面120は、以下で論じられる図5に最も良好に示されているように、180°以上(例えば、200°超)まで広げることができる。図2に描かれているように、HMDは、フレーム及び/又は鼻堤ピース210によって別々に支持されるユーザの両眼のための二つの分離したFS/UWA/RO表面120Rと120Lとを含むことができる(以下参照)。或いは、HMDは、単一構造を有する両眼のための単一のFS/UWA/RO表面を使用することができ、その幾つかの部分は、両目で見ることができ、その他の部分は、片目でのみ見ることができる。
【0034】
直前で記述したように且つ図2に描かれているように、頭取付けディスプレイ装置100は、鼻堤ピース210を含むことができる。この鼻堤ピースは、ユーザの目の各々に対して一個、二つのFS/UWA/RO表面間を分離する垂直バーや壁であり得る。また、鼻堤ピース210は、ユーザの両眼の視野間を分離することができる。このように、ユーザの右目は、第1の画像ディスプレイデバイスと第1のFS/UWA/RO表面を介して右目に第1の画像を表示することによって環境の三次元の物理的実体の第1の表示が示され、他方、ユーザの左目は、第2の画像ディスプレイデバイスと第2のFS/UWA/RO表面を介して左目に第2の画像を表示することによって環境の三次元の物理的実体の第2の表示が示される。このように、別々のディスプレイデバイス/反射表面の組み合わせが、このようにユーザの各目に働いて、各目が、その環境で三次元物理的実体に対するその位置の正確な画像を見る。ユーザの二つの目を分離することによって、堤ピース210は、各目に対して適用される画像を他方の目から独立して最適化できる。一実施形態において、鼻堤ピースの垂直壁は、一方の側に一つ割り当てられる二つの反射器を含み、ユーザが鼻を介してユーザの目を左へ又は右へ回して画像を見ることができるようにする。
【0035】
前記少なくとも一つの画像ディスプレイシステム110は、FS/UWA/RO表面120の内側に取り付けられ、水平に配置されてもよいし水平線から僅かに角度をつけて配置されてもよい。或いは、前記少なくとも一つの画像ディスプレイシステムは、FS/UWA/RO表面の直ぐ外側に配置されてもよい。少なくとも一つのディスプレイシステム110、より具体的には、その少なくとも一つの発光表面の傾きや角度は、一般的に、画素、画像及び/又は表面120に反射される表示情報片の位置の関数である。
【0036】
幾つかの実施形態では、頭取付けディスプレイ装置100は、内部空間を作るように構成され、FS/UWA/RO表面は、この空間内の内側へ反射する。透過特性を有するFS/UWA/RO表面の場合、少なくとも一つの画像ディスプレイシステムからの画像や表示情報は、その空間内に反射され、その表面からユーザの目に反射されると同時に、光は、その空間内に入り、反射表面を通過することによって外部世界からユーザの目に入る。
【0037】
頭取付けディスプレイ装置は、少なくとも一つの画像ディスプレイシステム110によって表示される画像を制御するエレクトロニクスパッケージ140を含むことができる。一実施形態では、エレクトロニクスパッケージ140は、少なくとも一つの画像ディスプレイシステム110からの画像をユーザの活動と同期するために必要なロケーション、向き及び位置情報を提供する加速度計とジャイロスコープを含む。頭取付けディスプレイ装置100への及びそれからの電力とビデオは、エレクトロニクスパッケージ140へ連結された送信ケーブル150を介して又はワイヤレス媒体を介して提供され得る。
【0038】
一組のカメラ170を、例えば、“拡張現実”シーンのコンピュータ発生の制御を補助するためにエレクトロニクスパッケージへ入力を行なうように頭取付けディスプレイ装置100の両側に位置することができる。この一組のカメラ170を、電力と制御信号を受信し、エレクトロニクスパッケージソフトウエアにビデオ入力するためにエレクトロニクスパッケージ140に連結することができる。
【0039】
頭取付けディスプレイ装置において使用される画像ディスプレイシステムは、現在公知の或いは今後開発される多くの形態を採ることができる。例えば、そのシステムは、小型の高解像度液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、及び/又はフレキシブル有機発光ダイオード(OLED)スクリーンを含むOLEDディスプレイを使用することができる。特に、画像ディスプレイシステムは、高画素密度を有する高解像度スモールフォームファクタディスプレイデバイスを使用することができ、その例は、携帯電話産業界で見られる。また、光ファイバー束を画像ディスプレイシステムにおいて使用することができる。種々の実施形態において、画像ディスプレイシステムは、小型スクリーンテレビジョンとして機能すると考えられる。画像ディスプレイシステムが偏光を生成する場合(例えば、画像ディスプレイシステムが、すべての色が同じ方向へ線形に偏光される液晶ディスプレイを使用する場合)及びFS/UWA/RO表面がディスプレイが出射する光に対して直交するよう偏光される場合、光がFS/UWA/RO表面から漏れることはない。従って、表示された情報及び光源自体は、HMDの外側では見えない。
【0040】
本開示に従って構成された光学システムの実施形態、具体的には、“拡張現実”HMDのための光学システムの全体の動作は、図1のレイトレーシング、具体的には、光線180、185、及び190によって描かれている。本実施形態において、FS/UWA/RO表面120は、反射特性と透過特性の両方を備えている。表面120の透過特性を使用して、光線190は、環境からその表面を介して入射しユーザの目に向かって進む。表面120の同じ領域から、光線180は、その表面に反射され(その表面の反射特性を利用して)、光線190と結合してユーザがポイント195の方向を見た時、即ち、ユーザの凝視の方向がポイント195の方向である時、ユーザの目に入射する組み合わせ光線185を生成する。そのように見ている間、ユーザの周辺視覚能力によってユーザは、その表面120の透過特性を利用して、その表面を通過する環境の他のポイントからの光を見ることができる。
III.フレネルレンズシステム
【0041】
本開示に従って、少なくとも一つの画像ディスプレイシステムによって提供される画像及び/又はディスプレイ情報片は、ユーザの目(片方又は両方)に入射する前に、近景のために調節される。例えば、図1図2の実施形態において、この調節は、レンズシステム115によって実行される。レンズシステム115は、一つ以上のフレネルレンズ要素を含み、ディスプレイ表面から放射される光線のジオプター特性を変更するのに役立つため、全体の光学システムによって生成されるディスプレイの仮想画像にユーザが焦点を容易に合わせられる。図12図14及び図15図18は、フレネルレンズ要素を使用して、ディスプレイから放射される光のジオプター特性を変更する他の実施形態を示している。この機能に加えて、フレネルレンズ要素は、また、ユーザに提供される画像を拡大する。幾つかの実施形態において、3から6或いはそれ以上の倍率が、スタックされた構成に配置された複数のフレネルレンズ要素で得られる。
【0042】
以下でより詳細に論じられるように、ある実施形態では、フレネルレンズシステムは、一つ以上の湾曲フレネルレンズ要素、即ち、平らではなくて湾曲された基板上に構成されたフレネルレンズを含む。参照しやすいように、湾曲フレネルレンズ要素を含むフレネルレンズシステムは、ここでは、“湾曲フレネルレンズシステム”と呼ばれる。なお、湾曲フレネルレンズシステムで使用されるフレネルレンズ要素の全てが湾曲される必要はない。フレーズ“フレネルレンズシステム”は、ディスプレイ画像の近くにおいて目で見ることを容易にするために画像ディスプレイシステムから放射される光線のジオプター特性を変更する機能を果たす少なくとも一つのフレネルレンズ要素(湾曲している又は平ら)を含むレンズシステムの一般的ケースを記述するために使用される。以下でより詳細に論じられるように、FS/UWA/RO表面を使用する実施形態において、FS/UWA/RO表面は、必要に応じて画像ディスプレイシステムの少なくとも一つの発光表面に形成される画像の合焦点や目の近傍視に寄与する光学特性も有することができる。
【0043】
一般論として、ここで開示されるフレネルレンズシステムは、目がディスプレイに焦点を合わせることができるように、“拡張現実”HMDの場合には、外部環境のオブジェクトに焦点を合わせることができるように、画像ディスプレイシステムから放射される光のジオプターを調節するように選択された平らな及び/又は湾曲フレネルレンズの種々の組み合わせを備えることができる。湾曲フレネルレンズシステムにおける少なくとも一つのフレネルレンズの存在は、ユーザに提供される画像の収差を制御するための少なくとも一つの追加のパラメータ(即ち、レンズの曲率)を提供する。例えば、湾曲構成を有する一つ以上のフレネルレンズは、色収差を実質的に減少する。更に、湾曲基板上に製造されたフレネル表面は、軸外収差を提供することができる。
【0044】
より一般的には、フレネルレンズシステムとそれに含まれる一つ以上のフレネルレンズの光学特性は、実験的に或いは分析レイトレーシングを介して選択することができる。例えば、レイトレーシングによって、軍事トレーニング、フライトシミュレーション、ゲーム及び他の商業用途等の特定の実施のための装置パラメータの最適化が可能となる。最適化に利用可能なパラメータは、例えば、ディスプレイの曲率、ディスプレイの寸法、フレネルレンズの曲率、フレネルレンズシステム又は光学システムの他の部品が一つ以上の非球面を含む場合の非球面パラメータ、及びフレネルレンズ倍率対(i)ディスプレイスクリーンの前部と(ii)ユーザの目との距離を含む。
【0045】
幾つかの実施形態において、フレネルレンズ要素は、像面湾曲を生成せず、従って、広い視野が少数の薄い光学コンポーネントを使用して提供され得る。他の実施形態において、フレネルレンズシステムは、画像収差の修正を助けるために一つ以上の非球面を含むことができる。非球面は、フレネルレンズシステムの光学コンポーネントのいずれかの表面に適用され得る。名目上、フレネルレンズ要素の第1と第2の表面は、同じ基本的曲率半径(ベースカーブ)を有する(即ち、それらの厚みは、それらの開放口全体にわたって一定である)。追加の収差補正や機能性は、一つ以上のフレネルレンズ要素にそれらの第1と第2の表面上に異なる半径を持たせることによって達成可能である。
【0046】
種々の実施形態において、非球面フレネルレンズ要素を含むフレネルレンズ要素を使用して、光学システムを、大きな可視視野、典型的な人間の視覚解像度と釣り合う画像品質、及び低コストで大量に製造可能な全体構造を有するコンパクトで軽量のシステムとして実現することができる。必要ならば、フレネルレンズシステムは、色収差、特に、側方色収差を減少するために一つ以上の回折表面(回折コンポーネント)を含むことができる。例えば、レンズ要素810、1330、及び1135は、一つ以上の回折表面を含むことができる。このように、平らな画像ディスプレイデバイスを含む画像ディスプレイデバイスの修正画像は、フレネルレンズシステムの単独使用で或いはFS/UWA/RO表面との組み合わせ使用で達成され得る。ある実施形態において、一つ以上のフレネルレンズは、そのシステムにおける屈折力の大部分を提供し、単色収差を最小にするように設計されることができる。
【0047】
一実施形態において、隣接レンズ間にギャップをもって組み立てるフレネルレンズ要素は、典型的なレンズよりもかなり薄くすることができ、それによって、従来の厚いレンズに比較して、光学システムのスペースと重量が顕著に減少される。ガラスも使用することができるが、全てのレンズをプラスチックから作る事によって更にこの重量を減少することができる。プラスチックレンズは、ダイヤモンド機械加工やモールディングによって製造することができる。
【0048】
ある実施形態において、湾曲フレネルレンズ要素の一つ以上(又は全て)は、ファセットであって、そのエッジが名目上のユーザの目の回転中心を通る放射状ラインに沿って存在するファセットを有し得る。図3は、そのような実施形態を描いており、参照番号30はフレネルレンズを指し、31はフレネルレンズのファセットを指し、32はフレネルレンズのファセットのエッジを指し、33は名目上のユーザの目35の回転中心34を通る放射状ラインを示す。図3は、名目上のユーザの内部レンズ36(天然のレンズ(水晶体)36)も示す。或いは、湾曲フレネルレンズ要素の一つ以上(又は全て)は、名目上のユーザの天然のレンズ(水晶体)の中心を通る又は名目上のユーザの角膜の表面に対して垂直な放射状ラインに沿ってエッジが存在するファセットを有し得る。
【0049】
上述の通り、フレネルレンズは軽量であるため、HMDにおける使用に特に適している。しかしながら、レンズは、レンズ表面上のディスプレイを出る光波の入射角によって画像収差を生成し得る。特に、光波は、フレネルレンズの溝の意図しない区間を通過し得る。図3に描かれた実施形態に従って、そのような収差は、フレネルレンズにドーム形状、特に、フレネルファセットのエッジが、レンズ表面回りの全ての場所でドームの表面に対して垂直であるように、名目上のユーザの目の回転中心を中心とする球形状を提供することによって減少され得る。或いは、ドーム形状(球形状)は、名目上のユーザの天然のレンズ(水晶体)の中心を中心とすることができ、又は名目上のユーザの網膜と同心であることができる。このように、光線が、ファセットのエッジに平行にレンズを通過して、これらの非連続性に起因する光学収差が回避され、とりわけ、レンズの色応答を向上する。収束ファセットエッジは、それらのエッジの全てが上記条件の一つを厳密には満足しなくとも、例えば、エッジの全てが名目上のユーザの目の回転中心を厳密には通らなくとも、見た画像の光学的歪みを減少する。従って、フレネルレンズは、純粋な球形状を有するよりも、実質的に球形であり得(例えば、フレネルレンズは、非球面を有し得る)、そして少なくとも幾つかの収束ファセットエッジを有することから利益が得られる。
【0050】
必要ならば、正方形、矩形、或いは他の開放口形状を有するフレネルレンズ要素が使用されるが、一般的に、フレネルレンズは円形開放口を有する。大部分の用途において、フレネルレンズシステムを構成するレンズの最も小さな開放口のサイズは、全体の光学システムが、瞳孔形成システムであるか非瞳孔形成システムであるかに従って決まる。特に、フレネルレンズシステムとFS/UWA/RO表面を備える全体の光学システムの場合、そのシステムの射出瞳は、典型的には、最小の開放口の下流(即ち、ユーザの目に向かって)の光学要素によって生成されるフレネルレンズシステム最小開放口の画像である。即ち、システムの全体の開口絞りは、典型的には、フレネルレンズシステム中にある。その理由は、開口に関して、FS/UWA/RO表面は、あたかもそれらが非常に大きな開放口を有するように動作するからである。FS/UWA/RO表面によって(並びに最も小さな開放口を有する要素の下流側のフレネルレンズシステムの要素によって)生成されるフレネルレンズシステムの最小の開放口の画像のサイズとロケーションによって、全体のシステムが、ユーザに完全な中心動的視野、完全な中心+周辺静的視野、又は完全な中心+周辺動的視野を提供することができる。
【0051】
図4は、FS/UWA/RO表面、及び平らなフレネルレンズ810と図4に示されるように、互いに隣接している二つの湾曲フレネルレンズ815と820とを有するフレネルレンズシステム115を使用するHMD光学システムの実施形態を示している。光線830、835、及び840が、この図で示されており、光線840は環境から入射し光線830と組み合わさって、ユーザがポイント850の方向に見る時にユーザの目に入射する組み合わせ光線835を生成する。ユーザの周辺視覚能力によって、ユーザはポイント850以外のポイントからの光を見ることもできる。
【0052】
より具体的には、少なくとも一つの画像ディスプレイシステム110から放射される光860の発散波面は、フレネルレンズ810、815、及び820を有する正のジオプターフレネルレンズシステムに収束されてゼロジオプターと初期ジオプターとの間にある光830を提供する。少なくとも一つの画像ディスプレイシステム110から放射される光の初期ジオプターは、例えば、略D=1/(0.03[m])=33dptであり得る。フレネルレンズシステムを出た後、光は、FS/UWA/RO表面120に反射し、そこでは、必要ならば、追加のジオプター発散が以下で論じられる表面曲率技術を使用して除去され得る。
【0053】
全ジオプター変化は、例えば、33dptであり得、これは、種々の実施形態においてFS/UWA/RO表面とフレネルレンズとの間でスプリットされ得る。特に、FS/UWA/RO表面によって提供されるジオプター変化の量を減少することができ、それは、種々の実施形態において、FS/UWA/RO表面の設計及び製造において有利である。しかしながら、ジオプターは、加算的であるので、多くの輻輳が光学コンポーネントの一つによって提供され、他の光学コンポーネントによって供給される必要はない。(このジオプター値の加算特性は、フレネレレンズシステムとFS/UWA/RO表面のコリメーション効果を組み合わせる際だけでなく、フレネルレンズシステムを構成する個々のレンズ要素の効果を組み合わせる際に使用することができる。また、それは、全体のシステムの一部であり得る他の光学コンポーネントのコリメーション効果を考慮するために使用することもできる。)図4の実施形態において、33dptのジオプター変化は、コリメートされる(0dpt)或いは実質的にコリメートされる(〜0dpt)最終光線となる。これは、本質的に無限遠距離のポイントから来る光と等価であり、光の波面が平らであり、目への入口を横切る、光線835として示される、波面に対して平行な表面法線となる。コリメートされた反射光は、例えば、ユーザに対して無限遠に有効に存在するアイテムを外部世界が含む場合に望ましい。上述の通り、FS/UWA/RO表面120は、外部環境からの光線840を許容し、従って、内部画像が外部画像、及び特にユーザの目に対して無限遠に有効に存在する外部画像に重なることが可能となる。
【0054】
上記で論じられたように、反射光学表面を使用するHMDにおいて使用される従来の光学システムは、瞳孔形成であり、表示領域が制限され、典型的な視野は〜60°、あるいは、それ以下であった。このことは、従来の頭取付けディスプレイ装置の値と能力を大きく制限していた。種々の実施形態において、ここで開示される頭取付けディスプレイは、非常に幅広い視野(FOV)を有し、より小さな視野を有するHMDに比較して、非常に多くの光学情報をユーザに提供することができる。この幅の広い視野は、100°超、150°超、或いは200°超であり得る。より多くの情報を提供することに加えて、幅の広い視野は、ユーザによる追加の情報のより自然な処理を可能とし、表示された画像の物理的実体とのより良好なマッチングを介してより良好な没入型拡張現実体験を可能とする。
【0055】
具体的に、図5に描かれる実施形態において、真っ直ぐ前の凝視方向に対して、目は、湾曲FS/UWA/RO表面201と202によって図5に表される表示領域全体を得ることができる。これは、各目に水平方向視野(FOV)の少なくとも150°(例えば、水平方向FOVの約168°)に対応する。この視野は、目の中心視野とその周辺視野よりなる。更に、目は、目が物理的世界を見ている時に自然にするように、組み合わせ中心+周辺視野を凝視の異なる方向に向けるように目の回転中心の回りに自由に動くことができる。従って、ここで開示される光学システムによって、目は、目が自然の世界を見ている時の動作と同じように移動範囲全体を通して情報を得ることができる。
【0056】
図5をより詳細に調べてみると、この図は、上から見るようにユーザの頭200の前部の単純化したライン表示である。FS/UWA/RO表面201と202がユーザの目203と204の前に配置されていることを示している。上で論じたように、FS/UWA/RO表面201と202は、ユーザの鼻205の上に乗っており、FS/UWA/RO表面201と202は、ユーザの頭200の中心前部214で一緒になっている。以下で詳細に論じられるように、表面201と202の局部法線と局部空間ロケーションは、少なくとも一つの画像ディスプレイシステム(図5では示されていない)によって生成される画像が、各目に対して水平方向FOVの少なくとも100°、例えば、幾つかの実施形態では、少なくとも150°、及び他の実施形態では、少なくとも200°をカバーするように調節される。(任意ではあるが、以下でも論じられるように、局所曲率半径は、フレネルレンズシステムと組み合わされると、遠くの仮想画像を提供するようにも調節される。)例えば、局所法線と局所空間ロケーションは、各目に対して、真っ直ぐ前方の水平方向の静的視野でユーザの完全な〜168°をカバーするように調節され得、視線210、211及び212、213によって示されるように、その168°は、FS/UWA/RO表面201又は202のエッジからエッジまで延出する。このように、視線は、ユーザに提供される幅の広い静的視野(中心+周辺)に対応する。更に、ユーザは、コンピュータ発生画像を見続けながら、回転中心215と216回りに目を自由に動かす。
【0057】
図5において、並びに図11において、FS/UWA/RO表面は、表示を簡単にするために、球の一部として示されている。実際、表面は球ではなく、より複雑な構成を有し、それらの局所法線及び局所空間ロケーション(及び、任意ではあるが、局所曲率半径)は、望ましい静的及び動的視野(及び、任意ではあるが、望ましい仮想画像までの距離)を提供する。また、図5において、頭取付けディスプレイ装置の右側は、左側から独立して動作し、二つの側は、特定の用途のために望ましい場合は、異なっていてもよい。また、説明を容易にするために、図5図11は、少なくとも一つの画像ディスプレイシステムと反射光学表面との間に少なくとも一つのフレネルレンズを含む光学システムを示していないが、当然のことながら、本開示に従って、そのような光学システムがここで開示される実施形態において使用される。
【0058】
図6図7は、更に、ここで開示されるFS/UWA/RO表面によって提供される静的及び動的視野を描いている。図6は、真っ直ぐ前の凝視の方向73を有するユーザの法線方向右目71を示している。この目の中心+周辺視野は、円弧75によって示され、この円弧は、〜168°の角度範囲を有する。なお、表示を容易にするために、図6図8において、視野は、ユーザの瞳孔の中心又はエッジとは逆のユーザの目の回転中心に対して示されている。実際、人間の目によって達成される大きな視野(例えば、〜168°)は、かなり斜めな光線がユーザの瞳孔に入り網膜に達することができる網膜の大きな角度範囲の結果である。
【0059】
図7は、図6の視野のHMDとの相互作用を概略的に示し、このHMDは、(a)少なくとも一つの発光表面81が第1の発光領域82(矩形として描かれている)と第2の発光領域83(三角形として描かれている)を有する画像ディスプレイシステム及び(b)第1の局所法線85を有する第1の反射領域84と第2の局所法線87を有する第2の反射領域86を有するFS/UWA/RO表面を有する。
【0060】
上で指摘されたように、FS/UWA/RO表面は、“自由空間”表面と“超広角”表面の両方である。更に、上述し、以下でより詳細に論じるように、表面は、ユーザの目に入射する光のコリメーション(或いは部分的コリメーション)に関与する。そのようなコリメーションによって、FS/UWA/RO表面及びフレネルレンズシステムによって生成される仮想画像がユーザから遠く、例えば30メートル以上離れて位置するように現れ、それによって、ユーザは、リラックスした目で仮想画像に容易に焦点を合わせることができる。
【0061】
FS/UWA/RO表面の“自由空間”と“超広角”の態様は、FS/UWA/RO表面の所定の領域(その表面の所定のロケーション)から来るように、ユーザの目が少なくとも一つの画像ディスプレイシステムの発光領域を見るように表面の局所法線を調節することによって達成され得る。
【0062】
例えば、図7において、ユーザの凝視の方向が真っ直ぐ前方である場合、矩形の仮想画像88がユーザの網膜の中心部分によって見られること、及び、凝視の方向が、例えば真っ直ぐ前方の左へ約50°である場合、HMDの設計者は、三角形の仮想画像89がユーザの網膜の中心部分によって見られることが有利であると決定するかもしれない。そのとき、設計者は、矩形の仮想画像は真っ直ぐ前方、三角形の仮想画像はHMDの使用中真っ直ぐ前方の左へ50°となるように、少なくとも一つの画像ディスプレイシステム、FS/UWA/RO表面、フレネルレンズシステム、及びこのシステムの他の光学要素を構成する。
【0063】
このように、ユーザの凝視の方向(視線)がFS/UWA/RO表面と真っ直ぐ交差する時、矩形の仮想画像を、望ましくは、ユーザの目の中心で見ることができ、ユーザの凝視の方向(視線)が真っ直ぐ前の左へ50°でFS/UWA/RO表面と交差する時、三角形の仮想画像を、また望ましくは、ユーザの目の中心で見ることができる。図6図7には描かれていないが、同じアプローチは、垂直方向の視野に対して、並びに軸から逸脱した視野に対して使用される。より一般的には、HMD及びその光学コンポーネントの設計において、設計者は、目の凝視が特定の方向である場合、ディスプレイの望ましい部分がユーザの目に見えるようにディスプレイの少なくとも一つの発光表面を反射表面へ“マップする”。従って、目が水平方向及び垂直方向の両方へ視野を走査すると、FS/UWA/RO表面は、画像ディスプレイシステムの少なくとも一つの発光表面の異なる部分が人間の目に光る。前述の議論は、名目上のユーザの網膜の中心に関するものであるが、勿論、設計プロセスは、必要であれば、代わりに、名目上のユーザの窩のロケーションを使用する。
【0064】
尚、図7において、目を右へ回転すると、三角形の仮想画像89はユーザに見えなくなってしまう。このように、図7において、真っ直ぐ前へ又は真っ直ぐ前の左への凝視方向は、矩形と三角形の両方の仮想画像をユーザに提供し、他方、真っ直ぐ前の右への凝視方向は、矩形のみの仮想画像を提供する。勿論、仮想画像の視力は、仮想画像がユーザの中心視野又はユーザの周辺視野によって知覚されるか否かに依存する。
【0065】
HMDの設計者が、三角形の仮想画像を左へ離して残しながら図7において矩形の仮想画像を右へ離して置いた場合、矩形の仮想画像のみ見られる凝視の方向及び三角形の仮想画像のみ見られる凝視の他の方向があるであろう。同様に、ここで開示される原理に基づいて、設計者は、三角形の仮想画像が常に見え、矩形の仮想画像が幾つかの凝視方向では見えるが他の方向では見えないように、矩形の仮想画像と三角形の仮想画像を配置することができるであろう。更なるバリエーションとして、HMDの設計者は、矩形と三角形の仮想画像を、一つ以上の凝視方向に対して、画像がユーザに見えないロケーションに配置し得る。例えば、設計者は、真っ直ぐ前の凝視方向に対して、ユーザの静的視野の直ぐ外に画像を配置し得る。このように、本開示によってHMD設計者に対して提供されるフレキシビリティは、容易に明白となる。
【0066】
一実施形態において、反射表面の“自由空間”と“超広角”の態様は、光が最短(最小時間)光路に沿って移動するフェルマーとヒーローの原理を使用して達成される。G.Harrison、D.Smith及びG.Wieseの名義で本願と同時に出願され、“Methods and Systems for Creating Free Space Reflective Optical Surface”と題する、代理人整理番号IS−00354によって識別される同一出願人による同時係属の米国特許出願第13/211,389号は、その開示内容が参考として本明細書で援用され、フェルマーとヒーローの原理が使用されてHMDでの使用に適したFS/UWA/RO表面を設計する実施形態を記述している。また、G.Harrison、D.Smith及びG.Wieseの名義で本願と同時に出願され、“Head−Mounted Display Apparatus Employing One or More Reflective Optical Surfaces”と題する、代理人整理番号IS−00267によって識別される同一出願人による同時係属の米国特許出願第13/211,372号も参照のこと。その開示内容も参考として本明細書で援用される。
【0067】
フェルマーとヒーローの最小時間の原理によって、画像ディスプレイシステムの少なくとも一つの発光表面の“望ましい部分”(例えば、画像ディスプレイシステムの任意の画素)は、少なくとも一つの発光表面の望ましい部分からFS/UWA/RO表面での反射のポイントへ次にユーザの目の回転中心への光路が極値であるという条件で、FS/UWA/RO表面で反射の望ましいポイントを持つことができる。
【0068】
光路における極値は、光路長の一次導関数がゼロ値に達する、つまり、その光路長において最大値又は最小値を示すゼロ値に達したことを意味する。極値は、反射光学表面の局所領域を生成することによって視野の任意のポイントに挿入することができ、この法線は、(a)その局所領域からユーザの目へのベクトル(例えば、局所領域の中心からユーザの目の中心へのベクトル)と(b)局所領域から発光表面の“望ましい部分”へのベクトル(例えば、局所領域の中心から発光表面の“望ましい部分”の中心へのベクトル)を二等分する。図8図9は、画像ディスプレイシステムの少なくとも一つの発光表面の“望ましい部分”が画素である場合の処理を描いている。
【0069】
具体的に、図8は、光を頭取付けディスプレイ装置の前部へ向けて光線515の方向へ放射している画素の通常矩形アレイよりなる画像ディスプレイシステムの発光表面510を示している。光線515は、表示を容易にするために、図8では平面として示されている反射光学表面520に反射する。反射すると、光線515は、ユーザの目530に入射する光線525となる。
【0070】
各画素に対する反射器の表面法線を決定するために必要なのは、光線515と525に対応するベクトルの三次元二等分線を決定することのみである。図8において、この二等分線ベクトルは、ライン535として二次元形態で示されている。二等分線ベクトル535は、反射のポイント540で反射光学表面に対して垂直であり、このポイントは、発光表面510の画素545がHMDのユーザに可視である表面520上のロケーションである。
【0071】
具体的に、動作中、ディスプレイ表面510の画素545は、二等分線ベクトル535に対応する表面法線とその垂直平面550によって画定される角度で反射光学表面520で反射する光線515を発し、フェルマーとヒーローの原理によって、光線525に沿って目530によって見られる反射のポイント540で反射された画素を生じる。反射のポイント540での表面法線を正確に計算するために、光線525は、ユーザの目530の略中心555を通過できる。その結果は、ユーザの目が回転して周辺視野になったとしても、図6図7に関して上述されたように、ディスプレイのその領域がユーザの中心視野又は周辺視野で見ることができないほど多く目が回転するまで略安定したままである。
【0072】
表面法線の位置を計算するために、四元数の方法を用いることができ、
q1=光線515の向き
q2=光線525の向き
q3=望ましい表面法線535の向き=(q1+q2)/2
である。
【0073】
また、表面法線は、図10に描かれているように、ベクトル表記法で記述することができる。以下の式及び図10において、ポイントNは、反射光学表面の対象の領域の中心にあるポイントMから一単位離れており、ポイントMでの反射光学表面の接平面に対して垂直な法線の方向である。ポイントMでの反射光学表面の接平面は、以下の等式で表される関係を満足するように制御されて、三次元空間において、ポイントMでの表面法線がポイントMから対象の画素の中心のポイントPへのラインとポイントMからユーザの目の回転中心のポイントCへのラインを二等分する(参考のため、ポイントCは、目の前部から約13mm後方である)。
【0074】
ポイントMの表面法線上のポイントNを記述する等式は、以下のとおりである。
【0075】
【数1】
【0076】
式中、全てのポイントN、M、P、及びCは、任意の直交座標系における三次元空間のそれらの位置を指すコンポーネント(ベクトル成分)[x、y、z]を有する。
【0077】
結果としての法線ベクトルN−Mは、以下のユークリッド長を有する。
【0078】
【数2】
【0079】
その二つの垂直バー(縦線)は、以下で計算されるユークリッド長を表す。
【0080】
【数3】
【0081】
数値例として、以下のM、P、及びC値を考察する。
【0082】
【数4】
【0083】
法線に沿うポイントNは、以下のように計算される。
【0084】
【数5】
【0085】
及び
【0086】
【数6】
【0087】
形状は、図19に示されており、二等分線は、二つのより長いベクトル間にある。
【0088】
勿論、前述のことは、見る人に対して連続仮想画像を提示するように意図された反射領域の自由空間(自由形態)表面マニホルド(多様体)を作るポイントのフィールドのための局所接平面角度制限の決定において、フェルマーとヒーローの最小時間の原理の使用を示すのに役立つ代表的計算に過ぎない。唯一の実定数は、ユーザの目の中心であり、目の自然な視野である。全ての他のコンポーネントは、所与の画像ディスプレイシステムと反射光学表面の向きの適切な解法に達するまで反復して更新され得る。他の方法を見ると、画素画像反射ロケーションM1、M2、...、Mn及びそれらに関連する法線と曲率は、FS/UWA/RO表面が画像ディスプレイシステムによって形成されるコンピュータ発生画像の望ましい仮想画像処理を達成するように“湾曲”(調節)されるマトリックスと考えてもよい。
【0089】
尚、フェルマーとヒーローの原理の適用する際、幾つかの実施形態においては、ユーザが二つ以上のポイントで同じ画素反射を見るように法線が調節される状況を回避することが望ましい。また、幾つかの実施形態においては、反射光学表面の局所領域が非常に小さくてもよく、それが反射器上のポイントに対応することができ、ポイントが滑らかな表面を作るように他のポイント内にモーフィングする。
【0090】
説明を容易にするために、フレネルレンズシステムの存在の効果は、FS/UWA/RO表面を設計するためにフェルマーとヒーローの法則の使用の上述論述には明確には含まれていなかった。実際には、フレネルレンズシステムの存在は、フェルマーとヒーローの計算への入力として、光線がフレネルレンズシステムを構成する光学要素(又は、全体の光学システムにおいて使用される他の光学要素)を通過した後、光線の伝播の方向を使用することによって分析において容易に含まれる。伝播のこれらの方向は、例えば、ガウス光学技術を使用して決定することができる。必要ならば、フェルマーとヒーローの計算は、フレネルレンズシステムのフレネルレンズの度数を変化することによって制御される異なる初期の光輻輳セッティングに対して、望ましい仮想画像が得られるまで繰り返すことができる。
【0091】
確実にユーザが少なくとも一つの発光表面の“望ましい部分”の仮想画像(例えば、画素の仮想画像)上に容易に焦点を合わせられるよう、反射ポイントを囲む領域(反射エリア)の曲率半径は、フレネルレンズシステムを通過し、FS/UWA/RO表面で反射した後、コリメートされた(又は略コリメートされた)画像がユーザに到達するように制御される。上述の通り、コリメートされた(又は略コリメートされた)画像は、あたかも画像がユーザから離れた距離、例えば、数10から数100メートルで発生したように、より平行な光線を有する。そのような表面を達成するために、フレネルレンズシステムのコリメート度数に依存して、少なくとも一つの発光表面の“望ましい部分”(望ましい発光画素)に対応する反射光学表面の反射領域の曲率半径は、反射領域からディスプレイ上の発光表面の実際の“望ましい部分”(実際の画素)までの距離のおよそ半分の(しかし、半分よりも大きい)半径に保たれ得る。より具体的には、半径は、“望ましい部分”が反射領域のロケーションからフレネルレンズシステムを介して見られる時、反射領域から発光表面の“望ましい部分”までの見掛けの距離のおよそ半分である。
【0092】
従って、一実施形態では、対象の画素から隣接画素への内部反射画素法線ベクトルは、それらの画素が反射表面上の反射された画素のロケーションからフレネルレンズシステムを介して見られるディスプレイ画素の見掛け上のロケーションまでのベクトルの長さのおよそ略半分の曲率半径を確立することができる関係を満足する。このパラメータに影響を及ぼす調節は、少なくとも一つの発光表面のサイズと、その少なくとも一つの発光表面が歪曲されているか否かと、を含む。
【0093】
図9は、本実施形態を描いている。コリメートされた(又は略コリメートされた)画像がユーザに到達するように画素反射を囲む領域の曲率半径を制御するために、反射のポイント540においてのような二つの隣接画素反射領域を考察する。より多くの領域をより良好なバランスのために考察してもよいが、二つで十分である。図9を参照して、二つの画素反射ポイント540と610は、ディスプレイ表面510上の二つの画素545と615について夫々示されている。ポイント540と610での表面法線は、それらの方向間の角度と共に計算される。曲率半径は、これらの角度とポイント540と610との距離を知って計算される。具体的に、表面構成と、必要であれば表面の空間ロケーションは、曲率半径が、光線515と620の長さがフレネルレンズシステムの影響に応じて調節される場合、光線515と620の長さの平均のおよそ略半分になるまで調節される。このように、セロジオプター又は略ゼロジオプターの光がユーザの目に提供される。上述の通り、これは、本質的に無限遠にあるポイントから来る光と同等であり、その光波面は平らで、光の波面に対して平行な表面法線となる。
【0094】
局部曲率半径を制御することに加えて、幾つかの実施形態では、コリメートされた(又は略コリメートされた)画像を目に入射させる一次ポイント解像度として、少なくとも一つの発光表面がFS/UWA/RO表面から一焦点距離離れて名目上位置される。ここで、焦点距離は、FS/UWA/RO表面を作る種々の反射領域の曲率半径の平均値に基づく。
【0095】
フェルマーとヒーローの原理の適用の結果が、滑らかな反射表面に組み合わせることができる1組の反射領域である。この表面は、一般的には、球状や対称的ではない。図11は、そのようなFS/UWA/RO表面520の二次元表示である。上で論じたように、表面520は、フレネルレンズシステムのコリメート効果と組み合わされる場合、その表面によって反射されている画像ディスプレイシステムの少なくとも一つの発光表面からの画像のリラックスした眺めを提供する値に、ポイント710と720での曲率半径が設定されるように構成され得る。このように、ライン730によって表されるある方向を見ることは、ライン740によって表される異なる方向を見ることのように、コリメートされた(又は略コリメートされた)仮想画像を目530へ提供する。視野全域での全ての観察の滑らかな遷移を可能とするために、FS/UWA/RO表面の領域は、スプライン曲面のための非一様有理Bスプライン(NURBS)テクノロジーを使用して実行されるように、一つの制御ポイントから他の制御ポイントへ滑らかに遷移され、従って、反射表面全域での滑らかな遷移を生成する。場合によっては、FS/UWA/RO表面は、微細粒レベルで表面が滑らかになるように十分な数の領域を含むことができる。幾つかの実施形態では、より良好な製造可能性、実現及び画像品質を可能とするために、ディスプレイの各部分(例えば、各画素)に対して異なる倍率は、穏やかな勾配を使用して提供され得る。
【0096】
上述から、頭取付けディスプレイ全体は、以下の例示のステップ:望ましい視野を決定すること、ディスプレイ表面サイズ(例えば、幅と高さの寸法)を選択すること、反射表面に対するディスプレイ表面の向きを選択すること、ディスプレイと反射表面との間のフレネルレンズシステムのための候補ロケーションを選択すること、フレネレルレンズシステムのための候補構成を選択すること、フレネルレンズシステムを介して見られるディスプレイ表面上の各画素の位置を分類すること、及びディスプレイ表面からの各画素の反射表面上への表示のロケーションを選択すること、を用いて設計可能であることが理解される。ディスプレイ表面とフレネルレンズシステムは、目の上方へ配されかつ反射表面に向かって傾き、反射表面の曲率が光を装着者の目に反射することを可能とする。更なる実施形態において、ディスプレイ表面とフレネルレンズシステムを、目の側部や目の下方等の他の位置へ配することができ、その反射位置と曲率は、ディスプレイ表面からの光を適切に反射するように選択される、或いは異なる角度に傾けることができる。
【0097】
ある実施形態では、反射表面の三次元インスタンス化や数学的表示を生成することができ、上で論じたように、反射表面の各々の領域は、その領域の中心からユーザの目の中心へ及びその領域の中心からディスプレイ表面における画素の中心(フレネルレンズシステムの存在に起因する画素の見掛け位置の中心)へのベクトルを二等分する法線を有する局所領域である。また、上で論じたように、画素反射を囲む領域の曲率半径は、フレネルレンズシステムのコリメート効果と組み合わさって、コリメートされた(又は略コリメートされた)画像が視野の全域でユーザに到達するように制御され得る。コンピュータベースの反復を介して、視野の全域で光学性能の望ましいレベルだけでなく、審美的に許容可能な製造可能設計を提供するパラメータの組合せ(組)が識別されるまで、変更可能なパラメータ(例えば、局所法線、局所曲率、局所空間ロケーション、並びに、要素の数、要素の倍率、要素の曲率、及びフレネルレンズシステムのための要素のロケーション)を調節することができる。
【0098】
使用中、(幾つかの実施形態において、焦点の複数の局所領域のスプライン曲面から構成される)非対称FS/UWA/RO表面は、フレネルレンズシステムと組み合わされて、広い視野全体に及ぶ、画像ディスプレイシステムの少なくとも一つの発光表面の仮想画像を形成する。そのFS/UWA/RO表面は、プログレッシブミラーやプログレッシブ湾曲ビームスプリッター、又は自由形成ミラーや反射器と考えられる。目が視野全域、水平方向と垂直方向の両方、を走査すると、湾曲FS/UWA/RO表面によって、画像ディスプレイシステムの少なくとも一つの発光表面の異なる部分が人間の目に光る。種々の実施形態において、全体の光学システムは、低コストで大量に製造可能であると共に典型的な人間の視覚解像度と釣り合った画像品質を維持する。
IV.非FS/UWA/RO反射表面を使用するHMD
【0099】
上述の通り、図4は、湾曲FS/UWA/RO表面と湾曲フレネルレンズシステムを使用するHMD光学システムの実施形態を示す。また、FS/UWA/RO表面ではない湾曲反射表面を使用するHMD光学システム、並びに平らな反射表面を使用するHMD光学システムは、画像ディスプレイシステムと反射表面との間に湾曲フレネルレンズシステムを使用することから利益がある。図12図14は、平らな反射表面と湾曲フレネルレンズシステムを使用する実施形態を示す。
【0100】
図12において、光学透過拡張現実双眼鏡1310を含む頭取付けディスプレイを装着しているユーザ1300が示されている。双眼鏡1310は、少なくとも一つの画像ディスプレイシステム1320、少なくとも一つの反射表面1380、及びディスプレイの近接視界と幅広い視野を提供する少なくとも一つの湾曲フレネルレンズシステムを含む。典型的には、双眼鏡1310は、各目に対して一つのディスプレイシステム/湾曲フレネルレンズシステム/反射表面の組み合わせを含むが、必要ならば、これらコンポーネントの一つ以上が両眼のために働いてもよい。
【0101】
図12に示されるように、湾曲フレネルレンズシステムは、フレネルレンズ1330と1335を含む。平らなフレネルレンズ1330と湾曲フレネルレンズ1335の両方は、100°以上の視野を提供するために種々の実施形態において使用され得る。ここで論じられる他の実施形態と同様に、図12に示されるものよりも多い又は少ないレンズを湾曲フレネルレンズシステムにおいて使用することができる。一実施形態において、単一のフレネルレンズ要素を使用することができる。なお、FS/UWA/RO表面を使用する実施形態において、単一のフレネルレンズ要素、例えば、単一の湾曲フレネルレンズ要素を使用することができる。図13図14に描かれた他の実施形態において、3個のフレネルレンズ要素1125、1130及び1135が使用される。
【0102】
エレクトロニクスパッケージ1340は、少なくとも一つの画像ディスプレイシステム1320によって表示される画像を制御するために設けられる。エレクトロニクスパッケージ1340は、ユーザを検出し且つ位置決めするための加速度計とジャイロスコープを含むことができる。双眼鏡への及び双眼鏡からの電力とビデオは、送信ケーブル1350や無線媒体を介して提供されることができる。一組のカメラ1370は、例えば、拡張現実シーンのコンピュータ発生の制御を補助するためにHMDのソフトウェアパッケージに入力するようユーザの頭の両側に位置することができる。
【0103】
光学透過拡張現実双眼鏡1310は、少なくとも一つの内部発生画像を外部環境から双眼鏡に入射する少なくとも一つの画像に重ねることを可能とする少なくとも一つの反射光学表面1380を含む。特に、光1386は、反射光学表面1380を通過することによって外部環境から双眼鏡に入射する。この光は、画像ディスプレイシステムと湾曲フレネルレンズシステムからの、反射光学表面1380で反射した光1385と組み合わさってユーザの目に向かう。その結果、ユーザがポイント1390の方向を見る時にユーザの目に入射する組合せ光1387となる。ユーザの周辺視覚能力によって、ユーザは、ポイント1390から遠い反射光学表面1380の他の部分からの光を見ることができる。
【0104】
示されるように、一実施形態において、少なくとも一つの画像ディスプレイシステム1320と湾曲フレネルレンズシステム(例えば、フレネルレンズ1330と1335)は、ユーザの目(一方又は両方)の上方に支持され、目(一方又は両方)から離れるように突出する実質的に水平な平面に延出する。この実施形態に対して、少なくとも一つの反射光学表面1380は、HMDの前方への前部フレーム区間の底部エッジによって支持され(底部エッジに連結され)、光が少なくとも一つの画像投影デバイス(画像ディスプレイシステム)1320からユーザの目に反射されるように角度付けられる。一実施形態において、反射光学表面1380は、その頂端がユーザの顔から更に離れ、その下端がユーザの顔により近づくように角度付けられる。必要ならば、反射光学表面は、顔の側部に向けられる平らな(又は湾曲された)部分を含むことができる。
【0105】
図12に示されるタイプの頭取付けディスプレイ装置のレイトレーシング分析は、図13図14で提供される。図13図14の実施形態は、図12の二つのフレネルレンズ要素330と1335よりもむしろ、三つのフレネルレンズ要素1125、1130、及び1135を使用する。図13図14において、光線1430、1435、及び1440が示される。光線1440が環境から入射し、反射光学表面1380で反射した光線1430と組み合わされて、ユーザがポイント1442の方向を見るとユーザの目に入射する組合せ光線1435を生成する。ユーザの周辺視覚能力によって、また、ユーザは、ポイント1442から遠い反射表面1380の他の部分からの光を見ることができる。
【0106】
図14に最も良く示されているように、少なくとも一つの画像投影デバイス(画像ディスプレイシステム)1320から放射する光1460の発散波面は、フレネルレンズ1125、1130、及び1135を有する正のジオプターフレネルレンズシステムによって収束されて、平らな反射光学平面に衝突するゼロジオプター光1430を提供する。そこでは、その光は、目の瞳孔に入射するゼロジロプター光1435へと湾曲される。これは、本質的に無限遠に離れたポイントから来る光と等価であり、その光の波面は平らで、目への入射瞳全体にわたって光線1435として示される波面に対して平行な表面法線となる。また、反射光学表面1380は、外部環境からの光1440を許容し(図13を参照)、従って、内部画像を、図14にも示される外部画像に、外部から発された光線1510として、重ねることができる。
V.直視型HMD
【0107】
上記の用途に加えて、湾曲フレネルレンズシステムは、反射光学表面を介在することなく、画像ディスプレイシステムの直視のために使用され得る。このような構成は、没入型であるが、一つ以上のビデオカメラを使用して外部世界の情報を含むことができる。重ねられたフレネルレンズを備えるフレネルレンズシステムを使用することによって、短い焦点距離とディスプレイの画像を広い視野に投影することができる高い倍率を有する光学システムがコンパクトな空間に実現され得る。
【0108】
図15は、頭取付けディスプレイにおける没入型双眼鏡910を装着しているユーザ900の側面表示である。頭取付けディスプレイ装置の内側には、湾曲フレネルレンズシステム930で近接視界のために調節される各目に対する少なくとも一つの画像ディスプレイシステム920がある。エレクトロニクスパッケージ940は、ユーザの活動にディスプレイ上の画像を同期するために、表示される画像を制御し且つロケーション、配向及び位置情報を提供する加速度計及び/又はジャイロスコープを含むことができる。双眼鏡への及び双眼鏡からの電力とビデオは送信ケーブル950又は無線媒体を介して提供されることができる。ユーザ900と双眼鏡910の平面図が図16に描かれており、双眼鏡910に関連する目955と鼻960を含んでいる。フレネルレンズシステム930のフレネルレンズは、重ねられて湾曲されている。
【0109】
本実施形態において、少なくとも一つの画像ディスプレイシステム920は、ユーザの目の前方直ぐにHMDフレームに取り付けられ、画素が没入型仮想世界体験のためにユーザの目の方向へ直接に光を放射するように本質的に垂直に向けられている。湾曲フレネルレンズシステム930は、画像ディスプレイシステム920のディスプレイスクリーンとユーザの目との間に配置され、目は近接配置されたスクリーンに焦点を合わせることができる。
【0110】
図15図16に描かれた頭取付けディスプレイ装置の動作は、レイトレーシングを使用して見ることができる。図17は、フレネレレンズ1125、1130及び1135を有する正のジオプターフレネルレンズシステムによってコリメートされて略ゼロジロプター光1140をユーザの目の瞳孔1145へ提供する、少なくとも一つの画像ディスプレイシステム920から放射する光1120の発散波面を描いている。光1140は、本質的に無限遠距離のポイントから来る光と等価であり、光の波面が平らであり、目への入射瞳1145を横切る、光線1140として示される、波面に対して平行な表面法線となる。
【0111】
より具他的には、図17において、フレネルレンズ1125、1130、及び1135を有する湾曲フレネルレンズシステムによって、フレネルレンズ1125、1130、及び1135のエッジにて視野ポイント1155を通過する光1150は、ポイント1165で発する光線1160とは異なる方向から目に入ることができる。フレネルレンズ1125、1130、及び1135を有する湾曲フレネルレンズシステムによって、光が光線路1170に沿ってユーザの視野に入ったように見える。これによって、角度1175によって示される量の見掛けの視野(見掛けの視角)の増加が可能となる。
【0112】
図18は、瞳孔1145を介して目1205に入射し、最も高い視力が発生する窩1210上に焦点が合わされるコリメートされた平行光線1140を示すレイトレーシングである。周りの網膜1215は、より広い視野に応答するが、それは、例えばポイント1220と1225では視力はより低い。
VI.一般的考察
【0113】
HMDの全体構造に関して、表1は、本開示に従って構成されたHMDディスプレイが典型的に満足するパラメータの代表的で非制限例を述べている。更に、ここで開示されるHMDディスプレイは、適切な画像がユーザの視覚平面に確実に確立されるのに十分な小さな画素間距離を典型的に有する。
【0114】
ここで開示された頭取付けディスプレイに含まれ得る種々の特徴は、本発明を制限するものではなく、以下のものを含み、それらの幾つかは上記で参照されている。
(1)幾つかの実施形態において、反射光学表面(使用される場合)は、半透明であり、光が外部環境から入って来ることを可能とする。次に、内部ディスプレイ発生画像は、外部画像に重ねることができる。その二つの画像は、ジャイロスコープ、カメラ及びコンピュータ発生画像のソフトウエア操作等のローカライゼーション装置を使用して位置合わせすることができ、それによって仮想画像が外部環境において適切なロケーションに位置される。特に、カメラ、加速度計、及び/又はジャイロスコープは、それが物理的実体中にある所を装置に登録するのを補助し且つその画像を外側の景色に重ね合わせるのに使用することができる。これらの実施形態において、反射光学表面の透過性と反射性とのバランスは、適切な輝度特性を有する重ね合わせ画像をユーザに提供するよう選択され得る。また、これらの実施形態において、現実の世界の画像とコンピュータ発生画像は、略同じ見掛けの距離に共に現れることができ、目は一度に両画像に焦点を合わせることができる。
(2)幾つかの実施形態において、反射光学表面(使用される場合)は、その表面を通過する外部光の位置や焦点への影響を最小にするために可能な限り薄く保たれる。
(3)幾つかの実施形態において、頭取付けディスプレイ装置は、少なくとも100°、少なくとも150°、又は少なくとも200°の視界を各目に提供する。
(4)幾つかの実施形態において、頭取付けディスプレイによって各目に提供される視野は、大きくはユーザの鼻に重ならない。
(5)幾つかの実施形態において、反射光学表面は(使用される場合)、視野の全域にわたるその光学処方の穏やかな遷移を使用して利用可能ディスプレイエリア上の焦点を維持することができる。
(6)幾つかの実施形態において、レイトレーシングを使用して軍事トレーニング、戦闘シミュレーション、ゲーム及び他の商業用途等の特定の実施のための装置パラメータをカスタマイズすることができる。
(7)幾つかの実施形態において、反射光学表面(使用される場合)及び/又はディスプレイの表面、並びにフレネルレンズの特性とロケーション、及びディスプレイと反射光学表面(使用される場合)との距離と反射光学表面(使用される場合)と目との距離は、網膜及び/又は窩での変調伝達関数(MTF)仕様に関して操作され得る。
(8)幾つかの実施形態において、ここで開示されるHMDは、以下に制限されないが、スナイパー検出、商用トレーニング、軍事トレーニング及び軍事オペレーション、及びCAD製造等の用途で実施され得る。
(9)図面では平らに示されているが、画像ディスプレイシステムは、湾曲発光表面を有していてもよい。
【0115】
一旦設計されると、ここで開示される反射光学表面(例えば、FS/UWA/RO表面)は、現在知られている又は今後開発される種々の技術及び種々の材料を使用して生成、例えば、大量製造され得る。例えば、表面は適切に反射するように金属化されたプラスチック材料から製造され得る。研磨されたプラスチックやガラス材料も使用することができる。“拡張現実”用途のために、反射光学表面は、埋め込まれた小さな反射器を有する透過性材料から構成され得、入射波面の一部を反射すると共にその材料を介して光を透過する。ここで開示される湾曲フレネルレンズシステムに関して、システムの一つ以上の湾曲フレネルレンズは、すでに湾曲されている材料から得られる或いは組み付け時に湾曲することができる湾曲可能なガラスやプラスチックのような湾曲可能材料から作ることができる。
【0116】
プロトタイプ部品に対して、アクリルプラスチック(例えば、プレキシグラス)を、ダイヤモンド切削によって形成された部品と共に使用することができる。製造部品に対して、例えば、アクリルやポリカーボネートを、例えば、射出成型技術によって形成される部品と共に使用することができる。エッジでの2mmの最小厚みを用いることができ、その場合、整合的にサイズ決定されたフレネル部分を必要とする。典型的なフレネルファセット幅は、約200ミクロンであり得る。反射光学表面は、詳細なコンピュータ支援設計(CAD)記述として或いはCAD記述へ変換可能な非一様有理BスプラインNURBS表面として記述することができる。CADファイルを有することによって、デバイスを三次元印刷を使用して作ることが可能となり、CAD記述は、機械加工を必要とすることなく、直接に三次元オブジェクトとなる。
【0117】
上で論じられた数学的手法は、現在公知の或いは今後開発される種々のプログラミング環境及び/又はプログラミング言語で符号化されることができる。現在の好適なプログラミング環境は、イクリプスプログラマーインターフェースで実行するJava(登録商標)言語である。Microsoft Visual C#等の他のプログラミング環境も、必要に応じて使用することができる。また、計算は、PTC(マサチューセッツ州ニーダム)によって市販されているMathcadプラットフォーム及び/又はMathWork,Inc.(マサチューセッツ州ナティック)のMatlabプラットフォームを使用して実行され得る。得られたプログラムは、ハードドライブ、メモリスティック、CD、或いは同様のデバイスに格納することができる。その手順は、種々のベンダー、例えば、DELL、HP、TOSHIBA等から入手可能な典型的なデスクトップコンピューティング装置を使用して実行することができる。或いは、必要に応じて、“クラウド”コンピューティングを含むより強力なコンピューティング装置を使用することができる。
【0118】
本発明の範囲と精神から離れない種々の変更は、前述の開示から当業者には明らかである。以下の請求項は、ここで述べられた特定の実施形態、並びに変更形態、変形形態及びこれらの実施形態と同等のものをカバーすることを意図している。
【0119】
【表1】
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