特許第6246593号(P6246593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6246593生物活性植物性化粧用組成物およびそれらの製造方法
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  • 特許6246593-生物活性植物性化粧用組成物およびそれらの製造方法 図000041
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246593
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】生物活性植物性化粧用組成物およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20171204BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A61K8/9789
   A61Q19/02
【請求項の数】8
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2013-555483(P2013-555483)
(86)(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公表番号】特表2014-506594(P2014-506594A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】US2012025899
(87)【国際公開番号】WO2012148527
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】13/032,187
(32)【優先日】2011年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596121138
【氏名又は名称】アイエスピー インヴェストメンツ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】コガノフ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥエバ−コガノフ,オルガ
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0175235(US,A1)
【文献】 特表2005−535566(JP,A)
【文献】 特開平04−247012(JP,A)
【文献】 特開2004−231558(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0099425(KR,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0828193(KR,B1)
【文献】 特開2011−020965(JP,A)
【文献】 特開2001−122757(JP,A)
【文献】 特開平11−279069(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0116696(US,A1)
【文献】 特表2009−527582(JP,A)
【文献】 特表2007−517907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
Thomson Innovation
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
STN(CA/CAplus)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新鮮な植物バイオマスから抽出された細胞ジュースに由来し、皮膚において抗酸化活性、およびメラニン生合成阻害または明色化/美白効果を有する細胞セラム画分ろ液であって、前記新鮮な植物バイオマスがムラサキツメクサ(Trifolium pratense)から選択される植物供給源由来である細胞セラム画分ろ液;ならびに
安定化剤
を含む、皮膚におけるメラニン生合成阻害または明色化/美白効果のための生物活性植物性化粧用組成物。
【請求項2】
前記安定化剤が保存剤および抗酸化剤からなる群から選択される、請求項1に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
【請求項3】
前記保存剤が、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、メチルパラベンナトリウムおよびクエン酸からなる群から選択される、請求項2に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
【請求項4】
前記抗酸化剤がメタ重亜硫酸ナトリウムである、請求項2に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
【請求項5】
前記細胞セラム画分ろ液が、前記生物活性植物性化粧用組成物の1〜10重量パーセントを構成する、請求項1に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
【請求項6】
哺乳動物への局所適用に適し、化粧品として許容される担体および化粧品として有効な量の請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物活性植物性化粧用組成物を含む、皮膚におけるメラニン生合成阻害または明色化/美白効果のための生物活性植物性化粧用調合物。
【請求項7】
前記化粧品として許容される担体が、親水性クリーム基剤、親水性ローション基剤、親水性界面活性剤基剤、疎水性クリーム基剤、疎水性ローション基剤および疎水性界面活性剤基剤からなる群から選択される、請求項6に記載の化粧用調合物。
【請求項8】
前記生物活性植物性化粧用組成物が、化粧用調合物の総重量の0.001パーセント〜95パーセントの範囲の量で存在する、請求項6に記載の化粧用調合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年5月7日に出願された米国特許出願第12/116,924号の一部継続出願であり、米国特許出願第12/116,924号は、2002年1月25日に出願された米国仮特許出願第60/351,886号に基づく優先権利益を主張する、2003年1月24日に出願された米国特許出願第10/351,910号(現在は米国特許第7,442,391号、2008年10月28日発行)の分割であり、これらの開示は、それらの全体が本明細書での参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、生物活性植物性化粧用組成物ならびにそれらの製造方法およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
過去数十年にわたって、化粧品業界は、様々な化粧用調合物および製品において植物および植物産物の使用を進んで受け入れてきた。この傾向は、続くことが予想されるが、化粧品業界および消費者に対して魅力がある特性を一貫して示す、より改良されて、より高い品質の植物性成分が求められている。これらの訴求力がある生物活性の特徴の一部としては、抗炎症および抗酸化活性が挙げられる。着色、安全性、適合性および有効寿命の増加も、植物性成分に由来する化粧用調合物の貴重な特性である。
【0004】
全体として化粧品業界は、業界にとって現在利用できる多くの単一のおよびブレンドした植物性成分を用いて、「天然」化粧用調合物を開発し、市場に出すためにその努力の支援を増してきた。この手法は、化粧品業界が、一貫した製品管理、性能および原料成分の有効寿命を有する化粧品を開発することを可能にしてきた、合成成分に基づく手法とは異なる。植物性成分の使用を主に妨げるものの一つは、特に生物活性植物性成分に関して、成分の性能と安定性との不一致である。化粧用調合物中の成分として現在使用される生物活性植物性化粧用成分の多くは、効力の損失、臭いの偏移、好ましくない色のくすみ、および望ましくない沈殿を示す。これらの負の特性は、生物活性植物性成分から製造された最終生成物に関して、微生物学的な汚染および増殖、不安定性、ならびに安全上の懸念の危険性を増加させる。
【0005】
品質、安全性および一貫性を確実にするために、化粧品業界は、様々な標準操作手順、および化粧用調合物での使用のために入ってくる原料のすべての厳格な仕様管理を開発および実行してきた。現在の植物抽出物のすべてではないにしても、ほとんどは、化粧品業界の増大する管理および一貫性の条件を満たすことができない。現在の植物抽出方法は、製品仕様条件を制限し、品質、性能および適合性について変動のウィンドウの多くを放置している。さらに、現在の抽出方法は、植物細胞内に存在する活性の全スペクトルを実現させることができない。したがって、植物ベースの化粧用調合物の全潜在能力は、生物活性植物性化粧用成分のための抽出方法の不十分さのために実現されていない。
【0006】
植物から生物活性成分を抽出する現在の方法の多くは、植物組織もしくはその組織中に含有される対象となる生物活性成分、またはこれら両方にとって、悪影響となる技術を含む。さらに、現在の抽出および分離方法の多くは、生物活性効力の損失、細胞毒性の増加、および有効寿命の減少をもたらし得る生物学的または化学的汚染物質を含有する粗植物抽出物を生成させる。さらに、より精製された植物抽出物を生成させるために、現在の抽出方法は、しばしば過酷な化学溶媒の使用を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、生物活性を維持し、かつロット間から一貫した結果物をもたらす、生物活性植物性組成物を抽出する方法が求められている。さらに、有効寿命、細胞毒性、品質および性能に関して業界標準を満たすことができる植物性組成物が、化粧品業界で求められている。
【0008】
本発明は、当技術分野におけるこれらの欠陥を克服することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(1)新鮮な植物バイオマスから抽出された細胞ジュースに由来する膜画分および(2)安定化剤を含む生物活性植物性化粧用組成物に関する。膜画分は、抗タンパク質分解活性、細胞増殖阻害活性、および/または抗タンパク質分解活性と細胞増殖阻害活性の両方を有する。抗タンパク質分解活性は、少なくとも1種のプロテイナーゼの阻害により、細胞増殖阻害活性は、少なくとも1つの型の細胞の増殖の阻害による。
【0010】
本発明はまた、哺乳動物への局所適用に適した生物活性植物性化粧用調合物に関する。生物活性植物性化粧用調合物は、化粧品として許容される担体および化粧品として有効な量の上記した生物活性植物性化粧用組成物を含む。
【0011】
本発明はまた、哺乳動物の皮膚組織における抗炎症活性を阻害する方法に関する。この方法は、上記の生物活性植物性化粧用組成物を皮膚組織における抗タンパク質分解活性を増強するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む。
【0012】
本発明はまた、哺乳動物の皮膚組織における細胞障害の正常化のための方法に関する。この方法は、上記した生物活性植物性化粧用組成物を皮膚細胞の不必要な過剰増殖を阻害するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む。
【0013】
本発明はまた、新鮮な植物バイオマスから抽出された植物細胞ジュースを準備する工程を含む、生物活性植物性化粧用組成物を調製する方法に関する。次いで、植物細胞ジュースは、それを膜画分と細胞ジュース上清とに分離するのに有効な条件下で処理される。膜画分は、抗タンパク質分解活性、細胞増殖阻害活性、および/または抗タンパク質分解活性と細胞増殖阻害活性の両方を示す安定な生物活性植物性化粧用組成物をもたらすために有効な条件下で変化させられ、ここで、抗タンパク質分解活性は少なくとも1種のプロテイナーゼの阻害により、細胞増殖阻害活性は、少なくとも1つの型の細胞の細胞増殖の阻害による。
【0014】
本発明はまた、上記の方法によって製造された生物活性植物性化粧用組成物に関する。
【0015】
本発明はまた、哺乳動物への局所適用に適した生物活性植物性化粧用調合物に関する。この調合物は、化粧品として許容される担体および化粧品として有効な量の上記の生物活性植物性化粧用組成物を含む。
【0016】
本発明はまた、哺乳動物の皮膚組織における抗炎症活性を阻害する方法であって、上記の生物活性植物性化粧用組成物を皮膚組織における抗タンパク質分解活性を増強するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む方法に関する。
【0017】
本発明はさらに、哺乳動物の皮膚組織の細胞障害の正常化のための方法であって、細胞増殖阻害活性を有する生物活性植物性化粧用組成物を、皮膚細胞の不必要な過剰増殖を阻害するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む方法に関する。
【0018】
本発明はまた、上記した方法によって製造された膜画分を含む生物活性植物性化粧用組成物に関する。
【0019】
本発明はまた、(1)新鮮な植物バイオマスから抽出された細胞ジュースに由来し、抗酸化活性、細胞増殖刺激活性、および/または抗酸化活性と細胞刺激活性の両方を有する細胞セラム画分、ならびに(2)安定化剤を含む、生物活性植物性化粧用組成物に関する。細胞増殖刺激活性は、少なくとも1つの型の細胞の増殖の刺激による。
【0020】
本発明はまた、化粧品として許容される担体および化粧品として有効な量の上記の生物活性植物性化粧用組成物を含む、哺乳動物への局所適用に適した生物活性植物性化粧用調合物に関する。
【0021】
本発明はさらに、哺乳動物の皮膚組織における抗酸化活性を増強する方法であって、上記した生物活性植物性化粧用調合物を皮膚組織における抗酸化活性を増加させるのに有効な量で哺乳動物の皮膚組織に適用する工程を含む方法に関する。
【0022】
本発明はまた、哺乳動物の皮膚組織における細胞増殖の刺激のための方法であって、上記した生物活性植物性化粧用調合物を皮膚組織における線維芽細胞増殖を刺激するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む方法に関する。
【0023】
本発明はまた、生物活性植物性化粧用組成物を調製する方法であって、新鮮な植物バイオマスから抽出された植物細胞ジュースを準備する工程を含む方法に関する。次いで、植物細胞ジュースは、植物細胞ジュースを膜画分と細胞ジュース上清とに分離するのに有効な条件下で処理される。細胞ジュース上清は、細胞ジュース上清を細胞質画分と細胞セラム画分とに分離するのに有効な条件下で加工される。細胞セラム画分は、細胞セラム画分ろ液をもたらすのに有効な条件下で精製される。細胞セラム画分ろ液は、抗酸化活性、細胞増殖刺激活性、または抗酸化活性と細胞増殖刺激活性の両方を示す安定な生物活性植物性化粧用組成物をもたらすのに有効な条件下で安定化される。
【0024】
本発明はまた、上記の方法によって製造された安定な生物活性植物性化粧用組成物に関する。
【0025】
本発明はまた、化粧品として許容される担体および化粧品として有効な量の上記の方法で製造された生物活性植物性化粧用組成物を含む、哺乳動物への局所適用に適した生物活性植物性化粧用調合物に関する。
【0026】
本発明はまた、哺乳動物の皮膚組織における抗酸化活性を増強する方法に関する。この方法は、上記した生物活性植物性化粧用組成物を皮膚組織における抗酸化活性を増加させるのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む。
【0027】
本発明はさらに、哺乳動物の皮膚組織における細胞増殖を刺激する方法に関する。この方法は、上記した生物活性植物性化粧用組成物を皮膚組織における線維芽細胞増殖を刺激するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む。
【0028】
生物活性植物性化粧用組成物を調製する方法は、植物細胞中に含まれる活性の全スペクトルを獲得する植物抽出物をもたらすという点において、現在利用できる方法よりも有利である。これらの抽出物は、それぞれの成分内に含まれる生物活性を依然として維持しながら、細胞セラムまたは膜成分のいずれかに分離され得る。さらに、本発明の方法によって生成された組成物は、他の従来の植物抽出物よりも皮膚に明らかにより安全である細胞毒性プロファイルを有する。加えて、本発明の組成物は、化粧品業界の微生物要件を満たす。したがって、その一貫性、品質、安全性、有効寿命、ならびに抗炎症能および抗酸化能に関しての顕著な生物活性効力のために、本発明の生物活性植物性化粧用組成物は、現在利用できる植物性化粧用成分を上回る顕著に改善されたものである。
【0029】
本発明の生物活性植物性化粧用組成物は、化粧品業界にとって価値のある抗炎症および抗酸化活性を示す。さらに、生物活性植物性化粧用組成物の細胞毒性プロファイルは、化粧用成分についての業界標準内であり、細胞増殖性刺激活性およびある種の細胞増殖阻害活性を局所皮膚化粧品として有利であるレベルで示す。本発明の生物活性植物性化粧用成分を調製する方法は、多種多様な植物に使用されて、一貫した、安定な、および良質の生物活性植物性化粧用組成物をもたらし得る。
【0030】
本発明の生物活性植物性化粧用組成物は、化粧品原料成分の微生物要件に関して業界標準を満たす。業界標準は、活性および不活性成分のすべて(すなわち、化粧用調合物の添加剤のすべて)は、それらが化粧品製品の最終調合物組成物に寄与しないことを要求する。典型的には、これらの最終調合物組成物は、製品の完全性を危険にさらし得る微生物汚染を予防する保存系を有する。保存系の保存力を試験するための業界による標準的な使用の一つでは、製品を28日間のチャレンジテストにかけ、この時間の間に微生物を製品中に植菌して、汚染された状態になることなくこれらの処理に耐えるかどうかをみる。さらに、化粧品業界では、製品のその後の汚染をもたらすか、またはそれが最適に保存されない場合に製品の有効寿命に危険をもたらすほどには微生物のレベルが高くないことを確認するために、各成分はまた精査される。
【0031】
具体的には、「化粧品分野における活性成分についての微生物学的要件は、グラムまたはml当たり最大100個の微生物の合計微生物計数は許容され得ると記載する。さらに、試料(10g)は、大腸菌(Escherichia coli)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、シュードモナス属の種(Pseudomonas sp.)、および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含んではならない」という業界標準統計値(G.A.Nowak、 "Cosmetic Preparations"、Verlag fur Chem.、Augsburg、 1:126頁(1985年)、この開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる)。本発明の生物活性植物性化粧用組成物は、上記要件を満たし、したがって、最終化粧用調合物組成物に危険をまったくもたらさない。
【0032】
本発明の生物活性植物性化粧用組成物は、例えば、抗炎症および抗酸化活性、ならびに細胞増殖刺激特性を含めて、皮膚に関して非常に有益である生物活性特性を有する。一般に、新たに生まれた皮膚細胞と死んだ皮膚細胞との間に均衡があることが知られている。皮膚の最適属性は、若くて健康な皮膚に見られる(すなわち、通常25歳未満の人に見られる)。この年齢の前では、皮膚細胞は、調節された状態にあり、再生の均衡のとれた系にあり;最深の基底層で生まれて、最終的に上部(すなわち、視覚的に認められる層)まで増殖する(すなわち、深い皮膚から上がる)。この自然に剥落する細胞の均衡は、再生の平衡の一部である。この均衡は、成人の老化の結果として失われ、新たな細胞が生まれた後の増殖速度は減速する。細胞増殖を増加させるまたは刺激するという概念は、「より若い」皮膚に見出される最適均衡の回復に基づく。これは、レチノイドおよびAHA(αヒドロキシ酸)などの細胞増殖刺激因子への関心につながった。このような成分は、基本的に作用の刺激モードによって増殖の速度を増加させ、細胞増殖の加速によってより滑らかで、より若く見える皮膚をもたらす。本発明の生物活性植物性化粧用組成物、特に細胞セラム画分に由来するものは、細胞増殖を刺激する能力を示す。
【0033】
より総合的な態様において、皮膚増殖の増加は、創傷治癒および皮膚科学的状態に対して重要である。皮膚増殖が過剰増殖状態となりがちな、ある種の皮膚科学的状態が存在する。これらの状態は、皮膚上に現れる疾患状態との境にあり、疾患状態へと移行する。乾癬、湿疹およびふけ症などの状態は、すべて過剰増殖状態である。その場合には、皮膚の細胞増殖阻害剤は、速度を正常化するために増殖の速度を減速することへの、明白な、かつ勧められる手法である。本発明の様々な生物活性植物性化粧用組成物、特に膜画分に由来するものは、このような細胞阻害特性を示す。
【0034】
炎症は、皮膚上の多くの理由のために起こる。通常損傷に関連して、今日の専門家は、微小炎症のカスケード効果を理解し始めている。この皮膚の微小炎症は、石鹸および細胞毒性成分などの刺激性成分、最小日光などの通常のUV線から生じ得、また日光への強い曝露からのより劇的な態様を生じ得る。最近、皮膚老化に対する炎症の役割が、より明らかに理解され、フリーラジカルの形成への間接的経路であることが示唆されており、これらは、膜脂質酸化におけるそれらの役割に明らかに関係があるとされた。したがって、抗炎症剤は、重要な化粧用成分であるが、規制の制約は、薬剤としてのそれらの使用を制限する。しかしながら、本発明の生物活性植物性化粧用組成物、特に膜画分に由来するものは、抗炎症特性を示す。
【0035】
抗酸化剤の役割は、栄養および化粧品製品にとってますます重要になってきている。抗酸化剤は、酸化分解の有害作用を、遅らせ、それに対して保護し、それを修復するのを助ける。植物界で、自然は、多くの酸化因子から保護する天然の抗酸化剤を与えてきた。本発明の生物活性植物性化粧用組成物、特に細胞セラム画分に由来するものは、このような抗酸化活性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の生物活性植物性化粧用組成物を調製する方法の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、植物の膜画分または細胞セラム画分のいずれかに由来する生物活性植物性化粧用組成物に関する。本明細書で使用される場合、「膜由来化粧用組成物」という用語は、一般に植物の膜画分に由来する本発明の生物活性植物性化粧用組成物を指す。「セラム由来化粧用組成物」という用語は、一般に植物の細胞セラム画分に由来する本発明の生物活性植物性化粧用組成物を指す。
【0038】
本発明はまた、本発明の生物活性植物性化粧用組成物を製造する方法、およびこの組成物を使用する方法に関する。
【0039】
膜由来化粧用組成物
本発明の膜由来化粧用組成物は、(1)新鮮な植物バイオマスから抽出された細胞ジュースに由来する膜画分および(2)安定化剤を含む。膜画分は、抗タンパク質分解活性、細胞増殖阻害活性、および/または抗タンパク質分解活性と細胞増殖阻害活性の両方を有する。抗タンパク質分解活性は、少なくとも1種のプロテイナーゼの阻害により、細胞増殖阻害活性は、少なくとも1つの型の細胞の増殖の阻害による。本発明における使用に適した安定化剤の例には、乳化剤、保存剤、抗酸化剤、ポリマー、およびそれらの混合物が含まれる。
【0040】
本発明の一態様において、膜由来化粧用組成物は、セリンプロテイナーゼおよびマトリックスメタロプロテイナーゼなどのプロテイナーゼ群に対する抗タンパク質分解活性を有する。セリンプロテイナーゼの例には、好中球エラスターゼおよびトリプシン阻害剤が含まれる。マトリックスメタロプロテイナーゼの一例は、ゼラチナーゼBである。本発明の別の態様において、プロテイナーゼの阻害は可逆的である。セリンプロテイナーゼは、制御されたレベルで存在する場合にある種の正の生理学的役割を有するので、可逆的阻害剤の使用は、これらの正常な酵素機能に影響を与えない。可逆的阻害は、不可逆的阻害剤によって影響を与えられ得る機構を防御および修復にするため、望ましくない長期の変更を引き起こさない。
【0041】
本発明の膜由来化粧用組成物は、約0.1から約25.0μg乾燥物質/mlのIC50値の範囲の抗タンパク質分解効力を有する。本出願で使用される場合、「IC50値」という用語は、プロテイナーゼの50パーセント阻害を達成するのに必要な膜画分中に含有される乾燥物質の濃度を表す。
【0042】
本発明の膜由来化粧用組成物は、約25から500μg乾燥物質/mlのNRU50値の範囲の細胞増殖阻害活性効力を有する。本出願で使用される場合、「NRU50値」という用語は、細胞型の生存率を50パーセントに減少させるのに必要な膜画分中の乾燥物質の濃度を表す。膜由来化粧用組成物によって増殖することから阻害される細胞型の一例は、線維芽細胞である。
【0043】
本発明の膜由来化粧用組成物は、あらゆる種類の植物の膜画分に由来してもよい。本発明において新鮮な植物バイオマスの供給源として使用され得る適切な植物の例には、以下の科、すなわち、キク科(Asteraceae)、マメ科(Fabaceae)、シソ科(Lamiaceae)、およびイネ科(Poaceae)からの植物が含まれる。特に、試験して、新鮮な植物バイオマス供給源として適切とわかった具体的な植物の例には、限定するものではないが、ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)、ハス(Nelumbo nucifera)、マリゴールド(Calendula officinalis)、アルファルファ(Medicago sativa)、ラベンダー(Lavandula angustifolia)、セージ(Salvia officinalis)、およびオオムギ(Hordeum vulgare)が含まれる。膜由来化粧用組成物は、植物の花の組織(例えば、ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)、ハス(Nelumbo nucifera)、マリゴールド(Calendula officinalis))ならびに/または葉および茎の組織(例えば、ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)、ハス(Nelumbo nucifera)、セージ(Salvia officinalis))に由来してもよい。
【0044】
一実施形態において、植物細胞ジュースに由来する膜画分は、膜由来化粧用組成物の約0.5から約95重量パーセントを構成する。
【0045】
本発明の膜由来化粧用組成物は、以下の固有の物理化学的値、すなわち、(1)約0.1から30パーセントの不揮発性残留物値;(2)約0.5から2.0g/cmの比重値;(3)約300から50,000cpsの粘度値;および約2.5から9.5のpH値を有し得る。
【0046】
本発明はまた、化粧品として許容される担体および化粧品として有効な量の膜由来化粧用組成物を含む、ヒトを含む哺乳動物への局所適用に適した生物活性植物性化粧用調合物に関する。本発明で用いられる適切な化粧品として許容される担体の例には、親水性クリーム基剤、親水性ローション基剤、親水性界面活性剤基剤、疎水性クリーム基剤、疎水性ローション基剤、および疎水性界面活性剤基剤が含まれる。調合物の一実施形態において、膜由来化粧用組成物は、調合物の全重量の約0.001パーセントから約90パーセントの範囲の量で存在する。
【0047】
本発明はまた、哺乳動物の皮膚組織における抗炎症活性を阻害する方法であって、膜由来化粧用組成物を皮膚組織における抗タンパク質分解活性を増強するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む方法に関する。
【0048】
本発明はまた、哺乳動物の皮膚組織における細胞障害の正常化のための方法に関する。この方法は、膜由来化粧用組成物を皮膚細胞の不必要な過剰増殖を阻害するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む。
【0049】
セラム由来化粧用組成物
本発明のセラム由来化粧用組成物は、(1)新鮮な植物バイオマスから抽出された細胞ジュースに由来し、抗酸化活性、細胞増殖刺激活性、および/または抗酸化活性と細胞増殖刺激活性の両方を有する細胞セラム画分、ならびに(2)安定化剤を含む。細胞増殖刺激活性は、少なくとも1つの型の細胞の増殖の刺激による。本発明で使用に適した安定化剤の例には、保存剤および抗酸化剤が含まれる。本発明で使用される適切な保存剤には、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、メチルパラベンナトリウムおよびクエン酸が含まれる。本発明で使用される適切な抗酸化剤の例は、メタ重亜硫酸ナトリウムである。
【0050】
一実施形態において、セラム由来化粧用組成物の抗酸化活性には、スーパーオキシド捕捉活性および好中球呼吸バースト阻害活性が含まれる。セラム由来化粧用組成物は、約50から190μg乾燥物質/mlのICR50値の範囲のスーパーオキシド捕捉効力を有する。本出願で使用される場合、「ICR50値」という用語は、シトクロムc還元の50パーセントを阻害するのに必要な、細胞セラム画分中に含有される乾燥物質の濃度を表す。細胞セラム由来化粧用成分は、約1.0から125μg乾燥物質/mlの範囲の細胞増殖刺激活性および約110から190パーセントのNRU値を有し、ここで、「NRU値」は、細胞生存率を表す。セラム由来化粧用組成物は、乾燥物質約1.0から5.0μg/mlで呼吸バーストを阻害し、乾燥物質約120から180μg/mlで呼吸バーストを刺激する。セラム由来化粧用組成物は、酢酸ミリスチン酸ホルボール刺激好中球からの呼吸バーストの二相性調節を引き起こす能力を有する。
【0051】
セラム由来化粧用組成物によって増殖するように刺激される細胞型の一例は、線維芽細胞である。
【0052】
本発明のセラム由来化粧用組成物は、あらゆる種類の植物の細胞セラム画分に由来してもよい。本発明で新鮮な植物バイオマスの供給源として使用され得る適切な植物の例には、以下の科、すなわち、キク科(Asteraceae)、マメ科(Fabaceae)、シソ科(Lamiaceae)、およびイネ科(Poaceae)からの植物が含まれる。特に、試験され、新鮮な植物バイオマス供給源として適切とわかった具体的な植物の例には、限定するものではないが、ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)、ハス(Nelumbo nucifera)、マリゴールド(Calendula officinalis)、アルファルファ(Medicago sativa)、ラベンダー(Lavandula angustifolia)、セージ(Salvia officinalis)、およびオオムギ(Hordeum vulgare)が含まれる。セラム由来化粧用組成物は、植物の花の組織(例えば、ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)、ハス(Nelumbo nucifera)、マリゴールド(Calendula officinalis))ならびに/または葉および茎の組織(例えば、ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)、ハス(Nelumbo nucifera)、オオムギ(Hordeum vulgare)、ラベンダー(Lavandula angustifolia)、アルファルファ(Medicago sativa)、およびセージ(Salvia officinalis))に由来してもよい。
【0053】
一実施形態において、植物細胞ジュースに由来する細胞セラム画分は、セラム由来化粧用組成物の約1から約10重量パーセントを構成する。
【0054】
本発明はまた、化粧品として許容される担体および化粧品として有効な量のセラム由来化粧用組成物を含む、哺乳動物への局所適用に適した生物活性植物性化粧用調合物に関する。適切な化粧品として許容される担体の例には、限定するものではないが、親水性クリーム基剤、親水性ローション基剤、親水性界面活性剤基剤、疎水性クリーム基剤、疎水性ローション基剤および疎水性界面活性剤基剤が含まれる。一実施形態において、セラム由来化粧用組成物は、化粧用調合物の全重量の約0.001パーセントから約95パーセントの範囲の量で存在する。
【0055】
本発明はさらに、哺乳動物の皮膚組織における抗酸化活性を増強する方法であって、セラム由来化粧用組成物を皮膚組織における抗酸化活性を増加させるのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む方法に関する。
【0056】
本発明はまた、哺乳動物の皮膚組織における細胞増殖の刺激のための方法であって、セラム由来化粧品組成物を皮膚組織における細胞増殖を刺激するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む。
【0057】
生物活性植物性化粧用組成物を調製するための全プロセス
一例として、本発明の生物活性植物性化粧用組成物を調製するための全プロセスを、図1を参照して以下に説明する。図1で描かれるように、新鮮な植物が収穫され、収集され、洗浄されて2、新鮮な植物バイオマスをもたらす。この新鮮な植物バイオマスを粉砕、離解および圧搾にかけて4、植物細胞ジュース6およびプレスケーキ8をもたらす。次いで、植物細胞ジュース6は、ナイロンメッシュ10を通してろ過されて、ろ過された植物細胞ジュース12をもたらす。ろ過された植物細胞ジュース12はマイクロ波処理14に曝され、植物細胞ジュース12を凝固させる。凝固した植物細胞ジュースは、冷却され16、次いで遠心分離18にかけられ、膜画分20および植物細胞ジュース上清30をもたらす。以下に記載のとおりに、膜画分20を用いて、膜由来生物活性植物性化粧用組成物28(すなわち、膜由来化粧用組成物)を調製する。以下に記載のとおりに、植物細胞ジュース上清30を用いて、細胞セラム由来生物活性植物性化粧用組成物52(すなわち、セラム由来化粧用組成物)を調製する。
【0058】
生物活性植物性化粧用組成物28を生成させるために、膜画分20はポリマーマトリックス22中に取り込まれ、調製されたポリマー、保存剤および抗酸化剤24で安定化される。次いで、安定化した膜画分は中和されて26、膜由来生物活性植物性化粧用組成物28をもたらす。
【0059】
生物活性植物性化粧用組成物52を生成させるために、植物細胞ジュース上清30を、等電沈殿32にかけて、細胞質画分36および細胞セラム画分38を含有する混合物をもたらす。細胞セラム画分38を細胞質画分36から分離するために、混合物を遠心分離34にかける。次いで、細胞セラム画分38をマイクロ波処理にかけて、凝固を引き起こす42。植物供給原に依存して、マイクロ波処理前に、細胞セラム画分38は最初にpH調整される。凝固42後、混合物は冷却されて44、続いてろ過されて46、細胞セラムろ液48をもたらす。細胞セラムろ液48は、保存剤および抗酸化剤50で安定化されて、細胞セラム由来生物活性植物性化粧用組成物52を生成する。
【0060】
膜由来化粧用組成物を調製する方法
一実施形態において、膜由来化粧品組成物を調製する方法は、以下のとおりである。この方法は、新鮮な植物バイオマスから抽出された植物細胞ジュースを準備する工程を含む。次いで、植物細胞ジュースは、それを膜画分と細胞ジュース上清とに分離するのに有効な条件下で処理される。得られた膜画分は、抗タンパク質分解活性、細胞増殖阻害活性、または抗タンパク質分解活性と細胞増殖阻害活性の両方を有する。次いで、膜画分は、抗タンパク質分解活性、細胞増殖阻害活性、または抗タンパク質分解活性と細胞増殖阻害活性の両方を示す安定な生物活性植物性化粧用組成物をもたらすのに有効な条件下で変換され、ここで、抗タンパク質分解活性は、少なくとも1種のプロテイナーゼの阻害により、細胞増殖阻害活性は、少なくとも1つの型の細胞の細胞増殖の阻害による。
【0061】
植物細胞ジュースは、すべての種類の植物の膜画分から抽出されてもよい。本発明で新鮮な植物バイオマスの供給源として使用され得る適切な植物の例には、限定するものではないが、以下の科、すなわち、キク科(Asteraceae)、マメ科(Fabaceae)、シソ科(Lamiaceae)、およびイネ科(Poaceae)からの植物が含まれる。特に、試験されて、新鮮な植物バイオマス供給源として適切とわかった具体的な植物の例には、限定するものではないが、ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)、ハス(Nelumbo nucifera)、マリゴールド(Calendula officinalis)、アルファルファ(Medicago sativa)、ラベンダー(Lavandula angustifolia)、セージ(Salvia officinalis)、およびオオムギ(Hordeum vulgare)が含まれる。植物の様々な部分が用いられてもよい。例えば、茎および葉の組織が、多くの種類の植物について用いられてもよい。他の植物については、花が、本発明で使用される植物細胞ジュースの供給原として用いられてもよい。例えば、本発明の一実施形態では、植物細胞ジュースの抽出のためにムラサキツメクサ(Trifolium pratense)、ハス(Nelumbo nucifera)、またはマリゴールド(Calendula officinalis)の花組織が用いられる。別の実施形態では、ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)、ハス(Nelumbo nucifera)、またはセージ(Salvia officinalis)の葉および茎の組織が用いられる。
【0062】
植物細胞ジュースは、様々な抽出技術を用いて抽出され得る。しかしながら、抽出技術は、植物の生物活性成分を保存する植物細胞ジュースをもたらすべきである。
【0063】
植物細胞ジュースの抽出に使用される植物バイオマスを準備する例示的な方法は、新鮮な植物を収穫し、収集し、洗浄する工程を含む。新鮮な植物バイオマスを準備するために従うべき適切な工程は、例えば、以下、すなわち、(1)植物細胞の生来の含水量の維持;(2)地上の植物組織の収穫の間に用いられる切断部の高さの最適化;(3)収穫の間(例えば、地上の植物組織の切断の間)の植物完全性の維持;(4)植物バイオマスの生物学的劣化の環境的影響および時間因子の最小化;ならびに(5)加工前(例えば、粉砕および離解前)の植物バイオマスの洗浄を含む。これらの工程のそれぞれについて以下に論じる。
【0064】
生来の含水量の維持:切断は、水分損失による萎れを避けるように行われるべきである。最適条件は、自然の含水量が継続および維持されるものである。
【0065】
切断部の最適かつ好ましい高さ:植物は、収集されたバイオマス中の土壌および他の瓦礫の量を制限するために地上少なくとも数センチメートルで切断されるべきである。例えば、任意の所与の植物供給源(例えば、アルファルファ、オオムギ、ラベンダーまたはセージ)の使用可能な葉および茎のバイオマスのすべては、地上5センチメートル以上の高さで切断され得る。花組織が植物バイオマス供給源として用いられる場合、花は、植物細胞ジュースの抽出前に植物全体から分離される。
【0066】
収穫の間の植物完全性の維持:植物バイオマスの収穫は、植物の地上の茎および葉の組織を切断することによってもよい。切断は、植物の叩き切り(chopping)、すりつぶし(mashing)、押しつぶし(crushing)、または他の種類の損傷を避けまたは最小化する仕方で行われる。必要とされる装置の種類のために叩き切りを避けることが可能でないことがあり得る大規模産業的収穫の場合、収集された植物における微生物増殖、水分損失、酸化、重合、異性化および加水分解過程(すなわち、不必要な異化作用反応)の増大に導き得る損傷を最小化するために注意が払われる。例えば、本発明の一実施形態において、ラベンダーおよびセージは、植物全体として手で切断および収集される。別の実施形態において、アルファルファおよびオオムギの組織は、収穫装置を用いて切断される。その場合、それぞれの植物についての地上の最小叩き切り高さは、5センチメートル以上である。さらに、切断の間および後で損傷を最小化するために特別の注意が払われる。別の実施形態において、マリゴールドの植物全体は、手で収集され、次いで、花はさらなる加工のために分離される。
【0067】
劣化の環境的影響および時間の因子の最小化:切断植物材料の加工施設への配送時間ならびにバイオマスの日光、高温、および他の負の環境因子への曝露は、上記の不必要な劣化過程の影響を防止するために最小化されるべきである。例えば、本発明の一実施形態において、さらなる加工のためのアルファルファおよびオオムギの配送時間は、切断の時間から30分を超えない。別の実施形態において、長距離輸送される植物は、加工施設への夜間の配送の間に新鮮さおよび自然の含水量を維持するのを助けるために、凍結ゲルパックの袋が入っている発泡スチレンクーラー中に植物バイオマスを直ちに入れることを含む切断後の手順へと処理される。これらの手順は、ラベンダー、マリゴールドおよびセージからの植物バイオマスについて行われた。上に記載された結果を達成する他の切断後の手順が、同様に用いられてもよい。
【0068】
粉砕および離解前の洗浄工程:さらなる加工前に植物から土壌粒子および他の瓦礫を除去する洗浄工程は、いったん植物組織が収穫されると行われる。洗浄は、バイオマスからの細胞ジュースの放出の開始、損傷を引き起こすこと、または貴重な成分の除去を防止する条件下で、短期間に低圧すすぎ洗いを用いて達成される。例えば、本発明の一実施形態において、植物バイオマスの洗浄は、1kg/cm以下の水圧において5分間以下で行った。残存水洗浄液は、緑色または黄色の色素を含有しなかったが、これは、その後の損傷の欠如を示す。乾燥物質含有量を自然のレベルに近く保つために、過剰の水は、洗浄されたバイオマスから除去される。
【0069】
上記したとおりに、植物組織バイオマスが収穫された後、植物組織バイオマスのさらなる加工が行われて、植物細胞ジュースをもたらす。一実施形態において、収穫された植物組織バイオマスを、粉砕、離解および圧搾して、細胞内の内容物、すなわち細胞ジュースを抽出し、それを主として細胞壁を含有する繊維豊富なプレスケーキから分離する。
【0070】
適切な加工プロトコルの一例は、以下に記載される工程を含む。ハンマーミルを用いて、植物を粉砕し、短時間でかつバイオマス温度の著しい増加なしに小サイズの植物組織粒子をもたらしてもよい。一実施形態において、改良ハンマーミルを用いて、0.5センチメートル以下の最大サイズの離解した植物粒子を10秒間以下の処理の間に生じさせ、ここで、バイオマス温度の上昇は5℃以下である。
【0071】
粉砕および離解された植物バイオマスの曝露は、上記したとおりの、不必要な異化作用反応の影響を防止するために最小化される。植物細胞ジュースの抽出およびそのプレスケーキからの分離は、植物バイオマスの粉砕および離解後に可能な限り早く開始される。植物バイオマスは、短時間でかつ温度の著しい上昇なしに加工される。一実施形態において、粉砕および離解直後に、植物バイオマスは、水平連続式スクリュープレス(Compact Press「CP−6」、Vincent Corporation、FL)を用いて圧搾される。コーン上の圧力は、24kg/cmのレベルで維持され、スクリュー速度は12rpmであり、温度上昇は5℃以下である。
【0072】
初期細胞ジュースは、通常小さい繊維粒子を含有し、これは、貴重な細胞ジュース成分を吸収し、さらにはホースおよびポンプを詰まらせ得る。上記粒子は、ろ過または低速遠心分離で除去されるべきである。例えば、圧搾工程後に生じた初期細胞ジュースは、本発明の方法における植物細胞ジュースの使用前に4層のナイロン布を通してろ過される。
【0073】
いったん植物細胞ジュースが抽出されると、植物細胞ジュースは、(1)「膜画分凝固工程」を行って、凝固した細胞ジュース混合物をもたらす工程および(2)凝固した細胞ジュース混合物に「膜画分分離工程」を行って、膜画分および細胞ジュース上清をもたらす工程を含む方法で処理される。一実施形態において、膜画分凝固工程は、細胞ジュースを不安定化して、凝固した細胞ジュース混合物をもたらす工程を含む。不安定化は、例えば、温度処理、電気−膜処理および化学処理を含む様々な不安定化技術を用いて達成され得る。本発明で使用される適切な温度処理は、(1)膜画分の凝固を誘発するのに必要な処理温度に(例えば、約45から70℃の温度に)細胞ジュース抽出物を加熱する工程、および(2)前記膜画分の前記細胞ジュース上清からのさらなる定量的分離を可能にするのに有効な温度に(例えば、約30から45℃の温度に)細胞ジュースを冷却する工程を含み得る。不安定化が達成された後、膜画分分離工程が行われる。この工程は、例えば、ろ過および遠心分離を含む分離技術を用いて、凝固した細胞ジュース混合物を膜画分と細胞ジュース上清とに分離する工程を含む。
【0074】
当技術分野で「タンパク質−ビタミン濃縮物」と一般に称される新鮮に得られた膜画分は、植物原料供給源に特有である強烈な色および特有の臭いを有するペーストである。膜画分は、主に、植物の緑色部分に存在する葉緑体、または主に花に存在する有色体により代表される。膜画分の組成物は、大部分はリン脂質、膜タンパク質、葉緑素およびカロチノイドを含む。膜画分の乾燥は、化粧用成分としての膜画分の探索にとって必要な多くの有益な特性の不可逆的な損失をもたらす。乾燥しない場合、不安定な膜画分は、強く非特徴的な臭いを有する、暗色の非分散性で不溶性の集塊に急速に変化させられる。結果として、このような材料は、化粧用成分として使用することができない。以下に記載される手順により、新鮮に得られた膜画分を安定で活性な化粧用成分へと変化させることができる。
【0075】
いったん膜画分が細胞ジュース上清から分離されると、膜画分は、膜画分の凝集前に、以下の工程、すなわち、(1)「安定化工程」を行って、安定化された膜画分成分をもたらす工程;(2)安定化された膜画分成分に「ポリマーマトリックス取り込み工程」を行って、膜画分マトリックスをもたらす工程;および(3)膜画分マトリックスに「中和工程」を行って、本発明の膜由来化粧用組成物をもたらす工程を含む、調合化プロセスにかけられる。
【0076】
一実施形態において、安定化工程は、非イオン性乳化剤および少なくとも1種の抗酸化剤を、膜画分と混合して、安定化された膜画分成分をもたらす工程を含む。ポリマーマトリックス取り込み工程において、安定化された膜画分成分は、ポリマーマトリックス中に取り込まれて、膜画分マトリックスをもたらす。本発明で使用される適切なポリマーには、例えば、少なくとも1種のポリマー乳化剤および少なくとも1種の保存剤を含む。次いで、膜画分マトリックスは、膜画分マトリックスのpHを2.5から6.5の範囲に調製する工程を含む中和工程にかけられて、本出願で記載される膜由来化粧用組成物をもたらす。
【0077】
別の実施形態において、約100グラムの組成物をもたらすための膜由来化粧用組成物の安定化が、以下のとおりに行われる:
(a)膜画分の安定化は、これを非イオン性乳化剤ポリソルベート80(Tween80)および抗酸化剤(Tenox4)との混合することを含む。一例として、20グラムの新鮮な膜画分は、混合中の空気混入を避けながら、3.5グラムのTween80および0.1gのTenox4(ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンの油中溶液)と均一になるまで激しく混合する。
(b)ポリマー性乳化剤(アクリレート/C10〜C30アクリレートクロスポリマー)の分散液の調製:一例として、0.9グラムのPemulen TR−2を69.2グラムの温かい脱イオン水中に分散させ、空気混入を避けて、穏やかな撹拌を用いて均一になるまで混合した。並行して、5グラムのグリセリンおよび1グラムのPhenonip(フェノキシエタノール(および)メチルパラベン(および)ブチルパラベン(および)エチルパラベン(および)プロピルパラベンの混合物)を別個の容器中で合わせ、均一になるまで混合する。穏やかに撹拌しながら、Pemulenを含有する相とPhenonipと一緒のグリセリンを含有する相とを合わせ、均一になるまで混合する。
(c)膜画分のポリマーマトリックス中への取り込み:一例として、膜画分、Tween80およびTenox4を含有する相を、Pemulen、グリセリンおよびPhenonipを含有する相に添加し、空気混入を避けながら激しく撹拌して混合する。
(d)生成物の中和:一例として、膜画分および他の成分を含有するバッチを、水酸化ナトリウム(NaOH)の18%水溶液で中和し、激しく混合して、pH=5.0±0.4を有する均一な系を生成させる。
【0078】
得られた多相生成物は、化粧用成分に対するすべての要件を完全に満たす特性を示す不透明ゲルである。多相化粧用成分中の保存剤および抗酸化剤の最適組成は、植物供給源のすべてについて非常に類似しており、PemulenおよびさらにはCarbopolの異なる組合せが有効に用いられ得ることがわかった。安定性試験により、記載された方法によって膜画分から生成された化粧用成分は、物理化学的完全性および活性を維持しながら、8℃で少なくとも4〜6ヶ月間安定であることが示される。
【0079】
セラム由来化粧用組成物を調製する方法
本発明はまた、抗酸化活性、細胞増殖刺激活性、または抗酸化活性と細胞増殖刺激活性の両方を示すセラム由来化粧用組成物を調製する方法に関する。この方法は、膜由来化粧用組成物に関して既に上記したとおりに、新鮮な植物バイオマスから抽出された植物細胞ジュースを準備する工程を含む。次いで、植物細胞ジュースは、植物細胞ジュースを膜画分と細胞ジュース上清とに分離するのに有効な条件下で処理される。この工程も、膜由来化粧用組成物に関して上記したものと同じである。細胞ジュース上清は、細胞ジュース上清を細胞質画分と細胞セラム画分とに分離するのに有効な条件下で加工される。細胞セラム画分は、抗酸化活性、細胞増殖刺激活性、または抗酸化活性と細胞増殖刺激活性の両方を有する細胞セラム画分ろ液をもたらすのに有効な条件下で精製される。細胞セラム画分ろ液は、抗酸化活性、細胞増殖刺激活性、または抗酸化活性と細胞増殖刺激活性の両方を示す安定な生物活性植物性化粧用組成物をもたらすのに有効な条件下で安定化される。
【0080】
植物細胞ジュースは、すべての種類の植物から抽出されてもよい。本発明で新鮮な植物バイオマスの供給源として使用され得る適切な植物の例には、限定するものではないが、以下の科:すなわち、キク科(Asteraceae)、マメ科(Fabaceae)、シソ科(Lamiaceae)、およびイネ科(Poaceae)からの植物が含まれる。特に、試験されて、新鮮な植物バイオマス供給源として適切とわかった具体的な植物の例には、限定するものではないが、ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)、ハス(Nelumbo nucifera)、マリゴールド(Calendula officinalis)、アルファルファ(Medicago sativa)、ラベンダー(Lavandula angustifolia)、セージ(Salvia officinalis)、およびオオムギ(Hordeum vulgare)が含まれる。
【0081】
上記したとおり、いったん植物細胞ジュースが膜画分と細胞ジュース上清とに分離されると、細胞ジュース上清は、加工工程にかけられる。一実施形態において、加工工程は、(1)「細胞質画分沈殿工程」を行って、細胞質画分と細胞セラム画分とを含む細胞質/細胞セラム画分混合物をもたらす工程、および(2)「細胞セラム分離工程」を行って、細胞セラム画分から細胞質画分を分離する工程を含む。細胞質画分は、主に白色の可溶性タンパク質を含み;C3植物では、これらのタンパク質は、主に酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼからなる。細胞セラムは、低分子量可溶性成分を含有する。
【0082】
細胞質画分沈殿工程は、例えば、等電滴定および電気透析を含めて、適切な沈殿技術を用いて細胞ジュース上清内で細胞質画分の沈殿を誘発する工程を含み得る。一実施形態において、等電滴定は、細胞ジュース上清のpHを約2.5から6.5に調整することを含む。細胞質/細胞セラム混合物は、例えば、ろ過および遠心分離のような技術を含む適切な分離技術を用いて、細胞質画分と細胞セラム画分とに分離するように誘発される。一例として、沈殿は、5.0N塩酸(HCl)によりpH=4.0にすることを用いる滴定方法によって誘発された。
【0083】
細胞質画分の完全な分離を評価する定量的基準は、その後のろ液または上清中の検出可能なレベルの高分子量タンパク質の不在および/またはリブロース二リン酸カルボキシラーゼの不在である。一例として、沈殿した細胞ジュース上清は、3,000g以上で20分間以上凍結遠心分離において分離されてもよく、pH=4.0を有する細胞セラム中10,000以上の分子量を有するタンパク質の不存在が達成された。
【0084】
細胞セラムは、一般に「茶色ジュース(brown juice)」と称されるが、この透明な液体は、初期には、わずかな黄色およびわずかな特徴的な臭いを有する。不安定な細胞セラムは、数時間で、重い沈殿物および強い非特徴的臭いを含む暗褐色懸濁液に不可逆的に変化する。結果として、「茶色ジュース」は、化粧用成分として使用することができない。以下のとおりの記載された手順により、細胞セラム(茶色ジュース)の精製が安定で活性な化粧用成分をもたらすことを可能にする。これは、不必要な沈殿物の生成、退色および臭いをもたらす不可逆的変化の原因である主要な成分を、細胞セラムから除去することによって行われる。この手順は、pH調整、熱処理、冷却、真空ろ過および安定化を含む。具体的な多数の手順の一部は、植物供給源細胞セラムによって変わり得る。この手順は、細胞セラムの細胞質画分からの分離が完了した直後に用いられなければならないことが留意されるべきである。
【0085】
いったん細胞セラム画分が生成されると、それは、精製プロセスにかけられる。この精製プロセスは、(1)「温度処理工程」を行って、凝固した細胞セラム画分をもたらす工程、および(2)清澄化工程を行って、細胞セラム画分ろ液をもたらす工程を含む。本発明で使用される適切な温度処理工程は、(1)細胞セラム画分内で凝固を誘発するのに必要な加熱温度に細胞セラム画分を加熱する工程、および(2)前記細胞セラム画分ろ液のさらなる定量的分離を可能にするのに有効な温度に細胞セラム画分を直ちに冷却する工程を含む。一実施形態において、加熱温度は、約80から約95℃であり、加熱された細胞セラム画分の冷却は、少なくとも約15℃程度に低い温度までである。本発明で使用される適切な清澄化工程は、凝固した細胞セラム画分を清澄化して、細胞セラム画分ろ液をもたらす工程を含み、ここで、清澄化工程は、ろ過および遠心分離などの清澄化技術を含む。一実施形態において、ろ過は、凝固した細胞セラム画分を真空ろ過して、細胞セラム画分ろ液をもたらす工程を含み得る。別の実施形態において、温度処理工程前に、細胞セラム画分は、必要に応じて、約3.0から4.0のpHに調整される。
【0086】
細胞セラムろ液は、生成された後、上で述べた安定化工程にかけられて、セラム由来化粧用組成物をもたらす。一実施形態において、安定化工程は、少なくとも1種の保存剤と少なくとも1種の抗酸化剤との混合物中で細胞セラム画分ろ液をインキュベートして、安定化した細胞セラム画分ろ液をもたらす工程を含む。本明細書で使用される適切な保存剤には、例えば、ソルビン酸カリウム、安息香酸カリウム、メチルパラベンナトリウムおよびクエン酸が含まれる。本明細書で使用される適切な抗酸化剤の例は、メタ重亜硫酸ナトリウムである。
【0087】
一実施形態において、細胞セラムの安定化は、以下のとおりに行われ得る:
(a)一例として、pH調整は、5.0N塩酸(HCl)によりpH=3.0にすることを用いる滴定方法によって誘発される、セージおよびマリゴールドの花から得られた細胞セラムについて行われる。このような調整は、アルファルファ、オオムギおよびラベンダーから得られる細胞セラムについては必要でない。
(b)熱処理は、利用可能な植物供給源のすべてから得られた細胞セラムについて行われる。一例として、細胞セラムは、温度プローブ制御下でマイクロ波処理に曝される。この処理は、温度が90℃に達するまで継続される。温度プローブは、不必要な成分の完全な凝固を誘発するのに必要な点を示す。いったん凝固が誘発されると、処理された細胞ジュースは10℃に直ちに冷却される。
(c)凝固した細胞セラムは、ろ過または遠心分離によって清澄化され得る。一例として、凝固した細胞セラムは、ワットマンNo.2ろ紙の二重層を通して真空ろ過されてもよい。沈殿物は廃棄され、ろ液はさらなる加工に用いられる。
(d)ろ液の安定化は、特定の保存剤および抗酸化剤の添加、ならびにそれらの完全な可溶化が達成されるまで(通常は、30分間以上の強い混合が必要とされる)の混合物のインキュベーションを含んだ。
【0088】
安定化した細胞セラムろ液は、化粧用成分の要件のすべてを完全に満たす特性を示す。安定性試験により、これらの方法によって細胞セラムから生成された化粧用成分は、室温で少なくとも10〜12ヶ月安定である(すなわち、それらは、物理化学的完全性および活性を維持する)ことが示される。
【実施例1】
【0089】
アルファルファ(Medicago sativa)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分101の調製
バイオマス準備:十分な量の新鮮なアルファルファ(Medicago sativa)植物バイオマス(すなわち茎および葉の組織)を収穫して、約100kgの乾燥物質を得た。新鮮なアルファルファ植物バイオマス中の乾燥物質のレベルは、15.75パーセントであると計算され、100kgの乾燥物質を得るために約635kgの新鮮なアルファルファ植物バイオマスの収穫を必要とした。植物バイオマスの生来の含水量を維持し、水分損失による萎れを避けるために注意を払った。植物を地上少なくとも5センチメートルで切断して、収集される植物バイオマス中の土壌および他の瓦礫の量を制限した。切断は、植物の叩き切り、すりつぶし、押しつぶしを避けるか、または最小化するような方法で行った。収穫した植物を、切断して遅くとも60分後に加工に供給した。これは、植物バイオマスの日光、高温、および他の負の環境因子への曝露を最小化するために行った。洗浄工程を行って、さらなる加工前に植物から土壌粒子および他の瓦礫を除去した。この洗浄は、収穫した植物を1kg/cm以下の水圧で5分間以下の間洗浄することによって行った。残存水洗浄液は、緑色の色素を含有せず、水圧および洗浄期間が適切であることを示した。過剰な水を洗浄した植物バイオマスから除去した。
【0090】
植物バイオマスの粉砕、離解、および圧搾。植物バイオマスを収穫、収集、洗浄した後、植物を粉砕、離解、および圧搾して、細胞内の内容物(すなわち、植物細胞ジュース)を抽出し、それを繊維豊富なプレスケーキから分離した。ハンマーミルを用いて、アルファルファバイオマスを粉砕して、短い量の時間でかつバイオマス温度の著しい上昇なしに適切な小さいサイズの植物組織粒子を得た。ハンマーミルは、10秒間以下の処理の間に0.5センチメートル以下の離解植物粒子の最大サイズをもたらすように設定した。これは、5℃以下のバイオマス温度の上昇しかもたらさなかった。水平連続式スクリュープレス(Compact Press「CP−6」、Vincent Corporation、フロリダ州)を用いて、植物バイオマスから植物細胞ジュースを抽出した。スクリュープレスのコーン上の圧力は、24kg/cmのレベルに維持し、12rpmのスクリュー速度、およびわずかに5℃以下の温度上昇であった。この処理は、プレスケーキおよび植物細胞ジュースをもたらした。初期の植物細胞ジュースは小さい繊維粒子を含有したが、これを、4層のナイロン布を通したろ過によって、または低速遠心分離を用いることによって除去した。
【0091】
細胞ジュースからの膜画分の分離。ろ過した植物細胞ジュースを、温度プローブ制御を用いるマイクロ波処理に曝した。この処理は、細胞ジュースの温度が60℃に達するまで継続した。いったん凝固が誘発されると、処理した細胞ジュースを40℃に直ちに冷却した。凝固した細胞ジュースからの膜画分の分離は、3,000g以上で20分間以上の遠心分離を用いて達成した。これは、膜画分(沈殿物)および細胞ジュース上清(これは、細胞質画分および細胞セラム画分(すなわち低分子量可溶性成分)を含有した)をもたらした。細胞ジュース上清を、さらなる加工に用いて、化粧用植物性成分101を得た。膜画分を、対応物の膜由来化粧用組成物の調製で使用するために保存した。
【0092】
細胞ジュース上清からの細胞質画分の分離。細胞質画分を析出させるために、細胞ジュース上清を等電沈殿にかけた。細胞ジュース上清のpHを4.0にするために5.0N塩酸(HCl)用いる滴定法を使用して、細胞質画分の沈殿を誘発した。細胞セラムからの沈殿細胞質画分の分離は、3,000g以上で20分間以上の遠心分離によって達成した。これは、細胞セラム(上清)をもたらし、これを、さらに精製して、植物性化粧用成分101を得ることができた。
【0093】
化粧用植物性成分101を生成するための細胞セラムの処理。細胞セラムの精製は、以下の工程、すなわち、熱処理、冷却、ろ過および安定化を含んだ。精製は、細胞質画分からの細胞セラムの分離直後に行った。細胞セラムを、温度プローブ制御を用いるマイクロ波処理に曝した。この処理は、細胞セラムの温度が90℃に達するまで継続した。いったん凝固が誘発されると、処理した細胞セラムを10℃に直ちに冷却した。凝固した細胞セラムを二重層のワットマンNo.2ろ紙を通して真空ろ過した。沈殿物を捨て、得られた細胞セラムろ液をさらなる加工(すなわち、安定化)のために用いた。細胞セラムろ液の安定化は、保存剤および抗酸化剤を添加し、この混合物を完全な可溶化が得られるまでインキュベートすることによって達成した。用いた保存剤および抗酸化剤は、以下、すなわち、0.1%ソルビン酸カリウム、0.1%安息香酸ナトリウム、0.1%メチルパラベンナトリウム、および0.2%メタ重亜硫酸ナトリウムを含んだ。この調製は、18.1kgの乾燥物質収量(または約340リットル)の化粧用植物性成分101の生成をもたらし、これを、その物理化学的および生物活性の品質の特徴付けのために用いた。化粧用植物性成分101用の推奨保管条件は、15から25℃の温度で光から保護された密閉容器中での保管を含む。
【実施例2】
【0094】
アルファルファ(Medicago sativa)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分101の生成物仕様
化粧用植物性成分101を、実施例1で上記した方法によって調製した。化粧用植物性成分101の分析を行って、以下に記載されるとおりの、その様々な物理化学的、微生物的、細胞毒性のおよび生物活性の特性を決定した。化粧用植物性成分101は、透明な液体であり、これは、淡黄色および薄い特徴的な臭いを有する。溶媒(すなわち、グリコール、油または水)は、担体媒体にまったく加えなかった。
【0095】
表1は、化粧用植物性成分101の物理的および化学的データをまとめたものである。
【表1】
【0096】
表2に、化粧用植物性成分101に関するUVスペクトルデータを記載する。
【表2】
【0097】
表3は、化粧用植物性成分101についての微生物的分析データをまとめたものである。このデータは、化粧用植物性成分101が、コロニー形成単位および病原菌の不存在に関して化粧品業界の要件を満足することを示す。
【表3】
【0098】
化粧用植物性成分101は、光から保護された密閉容器中15から25℃の温度で保管されるときに、少なくとも12〜18ヶ月間安定である(すなわち、物理的および化学的完全性を維持する)と判定された。毒性作用はまったく検出しなかった。管理された臨床評価において、化粧用植物性成分101は、乾燥物質の濃度範囲0〜2,500μg/mlにおいて3T3線維芽細胞によるニュートラルレッド取込の50%阻害(NRU50)を示さなかった。正の対照(表皮増殖因子)のNRU50は、2,500μg/ml超である。化粧用植物性成分101は、スーパーオキシド捕捉能を実証した。管理された臨床評価において、化粧用植物性成分101は、乾燥物質の濃度149μg/mlでシトクロムc還元の50%阻害(ICR50)を示した。正の対照(ロズマリン酸)のICR50=26.5μg/mlであった。化粧用植物性成分101は、生分解性生成物である。
【実施例3】
【0099】
オオムギ(Hordeum vulgare)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分201の調製
化粧用植物性成分201を調製する方法は、以下に記す変更点を伴うが、化粧用植物性成分101に関して実施例1で記載した方法と同じであった。オオムギ(Hordeum vulgare)の新鮮な茎および葉の組織を、植物バイオマス出発材料として用いた。新鮮なオオムギ植物バイオマス中の乾燥物質のレベルは、13.67パーセントであると計算され、100kgの乾燥物質を得るために約732kgの新鮮なオオムギ植物バイオマスの収穫を必要とした。この調製は、15.1kgの乾燥物質収量(または約433リットル)の化粧用植物性成分201の生成をもたらした。
【実施例4】
【0100】
オオムギ(Hordeum vulgare)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分201の生成物仕様
化粧用植物性成分201を、実施例3において上記した方法によって調製した。化粧用植物性成分201の分析を行って、以下に記載するような、その様々な物理化学的、微生物的、細胞毒性のおよび生物活性の特性を決定した。化粧用植物性成分201は、透明な液体であるが、これは、淡黄色および薄い特徴的な臭いを有する。溶媒(すなわち、グリコール、油または水)は、担体媒体にまったく加えなかった。
【0101】
表4は、化粧用植物性成分201の物理的および化学的データをまとめたものである。
【表4】
【0102】
表5は、化粧用植物性成分201についてのUVスペクトルデータをまとめたものである。
【表5】
【0103】
微生物的分析は、化粧用植物性成分201が、CFUおよび病原菌の不存在に関して化粧用成分についての化粧品業界の要件を満たすことを示した(方法については、上の表3参照)。
【0104】
化粧用植物性成分201は、光から保護された密閉容器中15から25℃の温度で保管されるときに、少なくとも12〜18ヶ月間安定である(すなわち、物理的および化学的完全性を維持する)と判定された。毒性作用はまったく検出しなかった。管理された臨床評価において、化粧用植物性成分201は、乾燥物質の濃度範囲0〜2,500μg/mlにおいて3T3線維芽細胞によるニュートラルレッド取込の50%阻害(NRU50)を示さなかった。正の対照(表皮増殖因子)のNRU50は、2,500μg/ml超である。化粧用植物性成分201は、スーパーオキシド捕捉能を実証した。管理された臨床評価において、化粧用植物性成分201は、乾燥物質の濃度160μg/mlでシトクロムc還元の50%阻害(ICR50)を示した。正の対照(ロズマリン酸)のICR50=2.65μg/mlである。化粧用植物性成分201は、生分解性生成物である。
【実施例5】
【0105】
ラベンダー(Lavandula angustifolia)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分301の調製
化粧用植物性成分301を調製する方法は、以下に記す変更点を伴うが、化粧用植物性成分101に関して実施例1で記載した方法と同じであった。ラベンダー(Lavandula angustifolia)の新鮮な茎および葉の組織を、植物バイオマス出発材料として用いた。新鮮なラベンダー植物バイオマス中の乾燥物質のレベルは、13.24パーセントであると計算され、100kgの乾燥物質を得るために約755kgの新鮮なラベンダー植物バイオマスの収穫を必要とした。また、保存剤と抗酸化剤との混合物は、以下、すなわち、0.1%ソルビン酸カリウム、0.1%安息香酸ナトリウム、0.1%メチルパラベンナトリウム、0.1%クエン酸、および0.2%メタ重亜硫酸ナトリウムを含有した。この調製は、18.5kgの乾燥物質収量(または約444リットル)の化粧用植物性成分301の生成をもたらした。
【実施例6】
【0106】
ラベンダー(Lavandula angustifolia)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分301の生成物仕様
化粧用植物性成分301を、実施例5で上記した方法によって調製した。化粧用植物性成分301の分析を行って、以下に記載されるとおりの、その様々な物理化学的、微生物的、細胞毒性のおよび生物活性の特性を決定した。化粧用植物性成分301は、透明な液体であり、これは、黄褐色および特徴的な臭いを有する。溶媒(すなわち、グリコール、油または水)は、担体媒体にまったく加えなかった。
【0107】
表6は、化粧用植物性成分301の物理的および化学的データをまとめたものである。
【表6】
【0108】
表7に、化粧用植物性成分301に関してUVスペクトルデータを記載する。
【表7】
【0109】
微生物的分析は、化粧用植物性成分301が、CFUおよび病原菌の不存在に関して化粧用成分についての化粧品業界の要件を満たすことを示した(方法については、上の表3参照)。
【0110】
化粧用植物性成分301は、光から保護された密閉容器中15から25℃の温度で保管されたとき、少なくとも12〜18ヶ月間安定である(すなわち、物理的および化学的完全性を維持する)と判定された。毒性作用はまったく検出されなかった。管理された臨床評価において、化粧用植物性成分301は、乾燥物質の濃度範囲0〜400μg/mlにおいて3T3線維芽細胞によるニュートラルレッド取込の50%阻害(NRU50)を示さなかった。正の対照(表皮増殖因子)のNRU50は、2,500μg/ml超である。化粧用植物性成分301は、エラスターゼ阻害活性、ゼラチナーゼB阻害活性、およびスーパーオキシド捕捉活性を示した。
【0111】
以下の表8には、化粧用植物性成分301に関する生物活性結果を記載する。
【表8】
【0112】
管理された臨床評価において、化粧用植物性成分301は、乾燥物質の濃度158μg/mlでシトクロムc還元の50%阻害(ICR50)を示した。正の対照(ロズマリン酸)のICR50=26.5μg/mlである。化粧用植物性成分301は、生分解性生成物である。
【実施例7】
【0113】
マリゴールド花(Calendula officinalis)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分401の調製
化粧用植物性成分401を調製する方法は、以下に示す変更点を伴うが、化粧用植物性成分101に関して実施例1で記載した方法と同一であった。マリゴールド(Calendula officinalis)の新鮮な花組織を、植物バイオマス出発材料として用いた。新鮮なマリゴールド花植物バイオマス中の乾燥物質のレベルは、7.80パーセントであると計算され、100kgの乾燥物質をもたらすために約1,282kgの新鮮なマリゴールド花植物バイオマスの収穫を必要とした。植物を切断後および洗浄前に、花を植物全体から分離した。花の加工(すなわち、洗浄工程で始まって、かつ粉砕の前)は、植物の切断後遅くとも3から4時間後に開始した。また、細胞セラム画分のマイクロ波処理前に、細胞セラムのpHを0.5N塩酸(HCl)を用いる滴定法使用して、最初にpH3.0に調整した。この調製は、27.1kgの乾燥物質収量(または約704リットル)の化粧用植物性成分401の生成をもたらした。
【実施例8】
【0114】
マリゴールド花(Calendula officinalis)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分401の生成物仕様
化粧用植物性成分401は、実施例7で上記した方法によって調製した。化粧用植物性成分401の分析を行って、以下に記載されるとおりの、その様々な物理化学的、微生物的、細胞毒性および生物活性の特性を決定した。化粧用植物性成分401は、透明な液体であり、これは、淡黄色および薄い特徴的な臭いを有する。溶媒(すなわち、グリコール、油または水)は、担体媒体にまったく加えなかった。
【0115】
表9に、化粧用植物性成分401の物理的および化学的データを記載する。
【表9】
【0116】
表10は、化粧用植物性成分401のUVスペクトルデータをまとめたものである。
【表10】
【0117】
微生物的分析は、化粧用植物性成分401が、CFUおよび病原菌の不在に関して化粧用成分についての化粧品業界の要件を満たすことを示した(方法については、上の表3参照)。
【0118】
化粧用植物性成分401は、光から保護された密閉容器中15から25℃の温度で保管されるとき、少なくとも12〜18ヶ月間安定である(すなわち、物理的および化学的完全性を維持する)と判定された。毒性作用はまったく検出されなかった。管理された臨床評価において、化粧用植物性成分401は、乾燥物質の濃度範囲0〜2,500μg/mlにおいて3T3線維芽細胞によるニュートラルレッド取込の50%阻害(NRU50)を示さなかった。正の対照(表皮増殖因子)のNRU50は、2,500μg/ml超である。化粧用植物性成分401は、細胞増殖に対する刺激効果およびスーパーオキシド捕捉能を示した。管理された臨床評価において、化粧用植物性成分401は、3T3線維芽細胞増殖を刺激した。この10〜15%刺激は、5から100μgの乾燥物質/mlの範囲にわたって認められた。正の対照(表皮増殖因子)による刺激=20〜30%であった。管理された臨床評価において、化粧用植物性成分401は、乾燥物質の濃度153μg/mlでシトクロムc還元の50%阻害(ICR50)をもたらすスーパーオキシド補足活性を示した。正の対照(ロズマリン酸)のICR50=26.5μg/mlである。化粧用植物性成分401は、生分解性生成物である。
【実施例9】
【0119】
セージ(Salvia officinalis)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分501の調製
化粧用植物性成分501を調製する方法は、以下に記す変更点を伴うが、化粧用植物性成分101に関して実施例1で記載した方法と同一であった。セージ(Salvia officinalis)の新鮮な茎および葉の組織を、植物バイオマス出発材料として用いた。新鮮なセージ植物バイオマス中の乾燥物質のレベルは、10.64パーセントであると計算され、100kgの乾燥物質をもたらすために約940kgの新鮮なセージ植物バイオマスの収穫を必要とした。細胞セラム画分のマイクロ波処理前に、細胞セラムのpHを、0.5N塩酸(HCl)による滴定法を用いて、最初にpH3.0に調整した。また、保存剤と抗酸化剤の混合物は、以下、すなわち、0.1%ソルビン酸カリウム、0.1%安息香酸ナトリウム、0.1%メチルパラベンナトリウム、0.1%クエン酸、および0.2%メタ重亜硫酸ナトリウムを含んだ。この調製は、14.9kgの乾燥物質収量(または約370リットル)の化粧用植物性成分501生成をもたらした。
【実施例10】
【0120】
セージ(Salvia officinalis)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分501の生成物仕様
化粧用植物性成分501は、実施例9で上記した方法によって調製した。化粧用植物性成分501の分析を行って、以下に記載されるとおりの、その様々な物理化学的、微生物的、細胞毒性および生物活性の特性を決定した。化粧用植物性成分501は、透明な液体であり、これは、黄褐色および特徴的な臭いを有する。溶媒(すなわち、グリコール、油または水)は、担体媒体にまったく加えなかった。
【0121】
表11に、化粧用植物性成分501の物理的および化学的データを記載する。
【表11】
【0122】
表12は、化粧用植物性成分501のUVスペクトルデータをまとめたものである。
【表12】
【0123】
微生物的分析は、化粧用植物性成分501が、CFUおよび病原菌の不存在に関して化粧用成分についての化粧品業界の要件を満たすことを示した(方法については、上の表3参照)。
【0124】
化粧用植物性成分501は、光から保護された密閉容器中15から25℃の温度で保管されるとき、少なくとも12〜18ヶ月間安定である(すなわち、物理的および化学的完全性を維持する)と判定された。毒性作用はまったく検出されなかった。管理された臨床評価において、化粧用植物性成分501は、乾燥物質の濃度範囲0〜2,430μg/mlにおいて3T3線維芽細胞によるニュートラルレッド取込の50%阻害(NRU50)を示さなかった。正の対照(表皮増殖因子)のNRU50は、2,500μg/ml超である。化粧用植物性成分501は、エラスターゼ阻害活性、ゼラチナーゼB阻害活性、およびスーパーオキシド捕捉能を示した。(以下の表13参照)。
【表13】
【0125】
管理された臨床評価において、化粧用植物性成分501は、スーパーオキシド捕捉能を示し、乾燥物質の濃度160μg/ml超でシトクロムc還元の50%阻害(ICR50)をもたらした。正の対照(ロズマリン酸)のICR50=26.5μg/mlである。化粧用植物性成分501は、生分解性生成物である。
【実施例11】
【0126】
マリゴールド花(Calendula officinalis)膜画分に由来する化粧用植物性成分402の調製
化粧用植物性成分402を調製する方法は、以下に記す変更点を伴うが、化粧用植物性成分401に関して実施例7で記載した方法と同一であった。いったん膜画分(沈殿物)が、ろ過された細胞ジュースから分離されると、実施例7で記載した方法に、もはや従わなかった。代わりに、以下に記載するとおりに、膜画分を処理して、化粧用植物性成分402を得た。
【0127】
化粧用植物性成分402を生成させるための膜画分の処理。膜画分を安定化し、ポリマーマトリックス中に取り込んだ。これは、膜画分の細胞ジュースからの分離直後に行った。約100グラムの化粧用植物性成分402を調製するために、細胞膜画分を、それを非イオン性乳化剤ポリソルベート80(Tween80)および抗酸化剤(Tenox4)と混合することによって安定化した。具体的には、20グラムの新鮮な膜画分を3.5グラムのTween80および0.1gのTenox4(ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンの油中溶液)と、混合の間に空気混入を避けながら、均一になるまで激しく混合した。
【0128】
いったん安定化されると、膜画分を、ポリマーマトリックス(すなわち、ポリマー性乳化剤(アクリレート/C10〜C30アクリレートクロスポリマー)の分散液)中に取り込んだ。ポリマーマトリックスは、0.9グラムのPemulen TR−2を69.2グラムの温かい脱イオン水中に分散させ、空気混入を避けながら、穏やかな撹拌を用いて均一になるまで混合することによって調製した。並行して、5グラムのグリセリンおよび1.0グラムのPhenonip(フェノキシエタノール(および)メチルパラベン(および)ブチルパラベン(および)エチルパラベン(および)プロピルパラベンの混合物)を別個の容器中で合わせて、均一になるまで混合した。穏やかに撹拌しながら、Pemulen、およびPhenonipと一緒のグリセリンを含有する相を合わせて、均一になるまで混合した。膜画分をポリマーマトリックス中に取り込むために、膜画分、Tween80、およびTenox4を含有する相を、Pemulen、グリセリン、およびPhenonipを含有する相に加え、次いで、空気混入を避けながら、激しく撹拌して混合した。膜画分混合物の安定化は、それを水酸化ナトリウム(NaOH)の18%水溶液で中和し、激しく混合して、pH5.0±0.4を有する均一系を生成させることによって達成した。この調製は、100kgの新鮮なマリゴールド花植物バイオマス(7.80パーセントの乾燥物質を有する約1,282kgの新鮮なマリゴールド花バイオマス)から出発し、9.5kgの乾燥物質収量(または約205リットル)の化粧用植物性成分402をもたらし、これを、その物理化学的および生物活性の品質の特徴付けのために用いた。化粧用植物性成分402のための推奨保管条件としては、光から保護された密閉容器中2から8℃の温度での保管が挙げられる。
【実施例12】
【0129】
マリゴールド花(Calendula officinalis)膜画分に由来する化粧用植物性成分402の生成物仕様
化粧用植物性成分402は、実施例11で上記した方法によって調製した。化粧用植物性成分402の分析を行って、以下に記載するとおりの、その様々な物理化学的、微生物的、細胞毒性の、および生物活性の特性を決定した。化粧用植物性成分402は、不透明なゲルであり、これは、橙色および薄い特徴的な臭いを有する。化粧用植物性成分402を、最高レベルの純度均一性、相溶性、安定性、安全性および有効性を保証するために、ポリマーでゲル化させた天然の細胞ジュース成分を用いて調合した。
【0130】
表14に、化粧用植物性成分402の物理的および化学的データを記載する。
【表14】
【0131】
表15は、化粧用植物性成分402に関してL値データをまとめたものである。
【表15】
【0132】
微生物的分析は、化粧用植物性成分402が、CFUおよび病原菌の不存在に関して化粧用成分についての化粧品業界の要件を満たすことを示した(方法については、上の表3参照)。
【0133】
化粧用植物性成分402は、光から保護された密閉容器中2から8℃の温度で保管されるとき、少なくとも12〜18ヶ月間安定である(すなわち、物理的および化学的完全性を維持する)と判定された。化粧用植物性成分402は、生分解性生成物である。毒性作用はまったく検出しなかった。管理された臨床評価において、化粧用植物性成分402は、乾燥物質の濃度範囲0〜354μg/mlにおいて3T3線維芽細胞によるニュートラルレッド取込の50%阻害(NRU50)を示さなかった。正の対照(表皮増殖因子)のNRU50は、2,500μg/ml超である。化粧用植物性成分402は、エラスターゼ阻害活性およびトリプシン阻害活性を示した。表16は、化粧用植物性成分402についての特定の生物活性結果をまとめたものである。
【表16】
【実施例13】
【0134】
セージ(Salvia officinalis)膜画分に由来する化粧用植物性成分502の調製
化粧用植物性成分502を調製する方法は、以下に記す変更点を伴うが、化粧用植物性成分402に関して実施例11で記載した方法と同一であった。セージ(Salvia officinalis)の新鮮な茎および葉の組織を植物バイオマス出発材料として用いた。新鮮なセージ植物バイオマス中乾燥物質のレベルは、10.64パーセントであると計算され、100kgの乾燥物質をもたらすために約940kgの新鮮なセージ植物バイオマスの収穫を必要とした。この調製は、6.7kgの乾燥物質収量(または約124リットル)の化粧用植物性成分502の生成をもたらした。
【実施例14】
【0135】
セージ(Salvia officinalis)膜画分に由来する化粧用植物性成分502の生成物仕様
化粧用植物性成分502は、実施例13で上記した方法によって調製した。化粧用植物性成分502の分析を行って、以下に記載するとおりの、その様々な物理化学的、微生物的、細胞毒性および生物活性の特性を決定した。化粧用植物性成分502は、不透明なゲルであり、これは、緑色および特徴的な臭いを有する。化粧用植物性成分502を、最高レベルの純度均一性、適合性、安定性、安全性および有効性を保証するために、ポリマーでゲル化させた天然の細胞ジュース成分を用いて調合した。
【0136】
表17に、化粧用植物性成分502の物理的および化学的データを記載する。
【表17】
【0137】
表18に、化粧用植物性成分502に関してL値データを記載する。
【表18】
【0138】
微生物的分析は、化粧用植物性成分502が、CFUおよび病原菌の不存在に関して化粧用成分についての化粧品業界の要件を満たすことを示した(方法については、上の表3参照)。
【0139】
化粧用植物性成分502は、光から保護された密閉容器中2から8℃の温度で保管されるとき、少なくとも12〜18ヶ月間安定である(すなわち、物理的および化学的完全性を維持する)と判定された。化粧用植物性成分502は、生分解性生成物である。毒性作用はまったく検出しなかった。化粧用植物性成分502は、エラスターゼ阻害活性およびゼラチナーゼB阻害活性を示した。(以下の表19を参照)。
【表19】
【実施例15】
【0140】
アルファルファ、オオムギ、ラベンダー、マリゴールド花およびセージからの化粧用植物性成分の調製に関して乾燥物質の分布
化粧用植物性成分101、201、301、401、402、501および502の生成の間に収集した様々な画分を、乾燥物質分布について分析および比較した。
【0141】
表20に、様々な方法の細胞ジュースとプレスケーキとの間での100kgの乾燥物質の分布を示す。本発明の方法は、初期のバイオマス乾燥物質の約20から40パーセントの範囲で植物細胞ジュースへの抽出収率の変換を可能にすると判定された。
【表20】
【0142】
表21は、膜画分の乾燥物質の収率が、初期バイオマス乾燥物質の6%から13%、および細胞ジュース乾燥物質の25%から45%の範囲であったことを示している。高い乾燥物質の収率に基づいて、膜画分を、多相の化粧用成分の調製のための見込みのある供給源として選択した。
【表21】
【0143】
本発明の方法は、細胞質画分と細胞セラムとの間での以下の乾燥物質の分布を可能にした(表22参照)。
【表22】
【0144】
表22は、細胞質画分乾燥物質の収率は、初期のバイオマス乾燥物質の2.5%を超えず、その後細胞ジュース上清乾燥物質の11%を超えなかったことを示している。細胞ジュース上清のほとんどは、細胞セラム中で濃縮された:88.8%(アルファルファ)、97.4%(オオムギ)、95.9%(ラベンダー)、96.8%(マリゴールド)、および98.7%(セージ)。高い乾燥物質の収率に基づいて、細胞セラムを、可溶性化粧用成分の調製のための見込みのある供給源として選択した。
【実施例16】
【0145】
アルファルファ、オオムギ、ラベンダー、マリゴールド花およびセージからの化粧用植物性成分のための、保存剤および抗酸化剤の最適組成
保存剤および抗酸化剤の最適組成は、植物供給源のすべて(すなわち、アルファルファ、オオムギ、ラベンダー、マリゴールド花およびセージ)について非常に類似していると決定した(表23参照)。
【表23】
【実施例17】
【0146】
アルファルファ、オオムギ、ラベンダー、マリゴールド花およびセージからの化粧用植物性成分の様々な特徴の比較
化粧用植物性成分に関連した物理化学的、スペクトル、微生物的、毒物学的、性能および有効性のデータを、表24および表25に示す。
【表24】
【表25】
【0147】
表24および表25に示したデータは、5種類の植物供給源原料を用いた(しかも異なる植物の科に属する)が、種々の細胞セラムから生成された化粧用植物性成分の特性は、非常に類似していたことを示す。この類似性は、上記した化粧用植物性成分に基づいた非常に標準化された天然の生成物の製造に、非常に価値があり得る。
【0148】
表26に示したデータは、試験した化粧用植物性成分のすべてが、CFUレベル(コロニー形成単位)に対する化粧品業界の要件を満足することを示す。病原菌の不存在についても、化粧用成分の安全性に対する産業上の要件を満足させた。
【表26】
【0149】
さらに、化粧用植物性成分は、広い濃度範囲において細胞毒性の不存在を示した。一例として、一般的に細胞毒性の決定に使用されている、3T3線維芽細胞によるニュートラルレッド取込(NRU)に関わる試験を用いて、化粧用植物性成分の細胞毒性を評価した。NRU値は、このインビボ試験個体群における生存細胞の数に比例する。3T3線維芽細胞によるニュートラルレッド取込(NRU50)の50%阻害は、試験化粧用成分の非常に高い濃度においてさえも、達成されなかったことがわかった。安全性プロファイルに関しての比較として、記載方法により生成された化粧用植物性成分のほとんどは、正の対照として用いた表皮増殖因子(EGF)に近かった(表27参照)。
【表27】
【0150】
細胞セラムから生成された化粧用植物性成分は、乾燥原料の同じバッチから従来の方法によって単離された水抽出物、または同じ植物供給源から得られた市販の抽出物と比較する場合、顕著により高い安全性プロファイルを有する。一例として、マリゴールド花に関連したデータを以下の表に示す(表28参照)。
【表28】
【0151】
細胞セラムから生成された化粧用植物性成分のすべては、抗酸化特性、すなわちより具体的にはスーパーオキシド補足能を示した。一例として、シトクロムc還元の50%阻害(ICR50)に必要な濃度を測定し、ロズマリン酸(RA)を正の対照として用いた(表29参照)。
【表29】
【実施例18】
【0152】
膜画分から生成された化粧用成分の特徴付け
膜画分から生成された選択した化粧用成分に関連する物理化学的、光学的、微生物的、毒物学的、性能および有効性のデータを、表30および表31に示す。
【表30】
【表31】
【0153】
表30および表31に示したデータは、葉および茎のバイオマス(セージ)および花(マリゴールド)から得た膜画分から生成された化粧用成分の特性間の有意な差を示した。概して、上記は、セージ膜画分中に大部分濃縮されている葉緑体と、マリゴールド花中に大部分濃縮されている有色体との間の差を反映する。
【0154】
微生物的分析は、化粧用植物性成分402および502が、CFUおよび病原菌の不存在に関して化粧用成分に対する化粧品業界の要件を満たすことを示した(方法については、上の表3参照)。
【実施例19】
【0155】
化粧用植物性成分の抗炎症および抗酸化分析生:選択実験モデルについての目的および理論的根拠
化粧用植物性成分101、102、201、301、302、401、402、501および502ならびにその他のものを、それらの抗炎症および抗酸化の性質について分析した。これらの分析の結果を、以下のこの実施例19にまとめる。手順および結果は、以下の実施例20〜実施例24で説明する。
【0156】
記載した手順は、濃縮されたセラム由来および膜由来の化粧用植物性成分の分布に関係する。これらの成分は、炎症を伴う結合組織損傷の低減のための2つの重要な活性(抗タンパク質分解活性および抗酸化活性)を示した。抗タンパク質分解活性についての分布のパターンは、膜画分において、その次に多相の植物性化粧用成分において選択的である一方で、抗酸化活性についての分布パターンは、セラム画分において、その次に可溶性化粧用成分において選択的である。膜由来化粧用成分は、2つの主要なクラスの破壊的プロテイナーゼ、すなわち、好中球エラスターゼにより例示されるセリンプロテイナーゼおよびゼラチナーゼBにより例示されるマトリックスメタロプロテイナーゼの両方を阻害する成分を含有する。膜由来化粧用成分が炎症細胞の相乗的タンパク質分解活性の阻害を達成する能力は、抗炎症調合物の局所適用における使用について検討するに値する。これらの化粧用成分の阻害の様式は、それらの作用が可逆的であり、かつ、それらが防御または修復機構に対する望ましくない長期の変更を引き起こさないことを示唆する。
【0157】
セラム由来化粧用成分中の抗酸化活性の選択的分布は、炎症細胞により生じた反応性酸素種によって引き起こされる損傷を低減させる重要な生物学的活性を組み込むためのさらなる方向を示す。複数の植物供給源から得たセラム由来化粧用成分は、単に酸化剤を中和するよりはむしろ反応性酸素種を生じさせる炎症細胞の能力を減退させる効力のある調節活性を有する。セラム由来化粧用成分の生成に用いられる記載の方法は、捕捉活性と共に、調節活性の維持をもたらす。水性抽出物を得るための従来の方法は、捕捉活性のみの一部の分布を達成するだけである。
【0158】
膜由来化粧用成分への1つのタイプの生物学的活性、および同じ植物供給源から得たセラム由来化粧用成分への別の活性の選択的分布は、2つの相が安定な組成物中で維持される新規な局所調合物を用いる機会を示す。
【0159】
化粧用植物性成分101、201、301、401、402、501、および502(本明細書で「化粧用植物性成分」と総称的に称される)を、それらの抗炎症および抗酸化活性について評価した。炎症過程の結果として生じ得る結合組織への損傷について複数の機構がある。炎症性組織損傷をもたらす一つの最終的な共通の経路は、白血球細胞由来タンパク質分解酵素による支質の成分の破壊を伴う。したがって、アッセイは、これらの炎症性プロテイナーゼを阻害する種々の化粧用植物性成分の能力を評価するために用いた。評価において、2種類のプロテイナーゼ、すなわち、好中球エラスターゼおよび好中球ゼラチナーゼを用いた。これらの2種類の酵素は、ヒト結合組織の細胞外マトリックスの成分を相乗的な様式で分解する。さらに、好中球エラスターゼは、好中球ゼラチナーゼに対する身体のそれ自体の阻害防御を失活させ得るが、反対にゼラチナーゼは、身体のそれ自体の抗エラスターゼ防御を失活させ得る。したがって、これらの2種の酵素を阻害し得る化粧用植物性成分は、炎症性損傷に対して相当な防護を与える。これらの化粧用植物性成分の阻害活性の定量を可能にし、阻害の様式のいくつかの基本的特徴に関する情報を提供するアッセイが選択される。
【0160】
分解性プロテイナーゼに加えて、炎症過程は、しばしば活性化細胞からの反応性酸素種の放出を伴う。これらの反応性種には、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、および次亜塩素酸が含まれる。これらの酸化剤の生物学的作用は、ヒト組織における重要な内在性抗タンパク質分解防御の失活をもたらし得る。活性化炎症細胞により放出される反応性酸素種のレベルを下げる化粧用植物性成分の能力を測定するアッセイを用いた。さらに、内在性および外来性起源の反応性酸素種を中和する化粧用植物性成分の能力を定量するためのアッセイを用いた。
【実施例20】
【0161】
抗エラスターゼ活性の評価
炎症過程の間に、エラスターゼ活性は、複数の酵素の作用に直接関係するが、好中球エラスターゼは、最高濃度で提示され、エラスチンを含む多種多様な結合組織成分に対する最も活性なプロテイナーゼである。評価アッセイにおいて、この酵素の阻害は、好中球エラスターゼに特異的である合成可溶性ペプチド基質(メトキシスクシニル−Ala−Ala−Pro−Val−p−ニトロアニリド)を用いた。好中球エラスターゼの供給源は、嚢胞性線維症の患者の気道分泌に由来する精製酵素調製物であった。阻害の濃度依存性の分析は、阻害活性の効力の定量をもたらした。この活性は、50%阻害(IC50)を達成するのに必要なそれぞれの化粧用植物性成分内の乾燥物質の濃度として表される。さらに、阻害定数Kの値を決定した。阻害データのグラフ分析も、阻害の様式(可逆的または不可逆的)に関連した情報をもたらす。好中球エラスターゼは、制御されたレベルで存在する場合に、正の生理学的役割を有するので、不可逆的阻害剤の無差別の使用は、これらの酵素の正常な機能を損ない得る。
【0162】
表32は、セラム由来および膜由来の化粧用成分のインビトロエラスターゼ阻害試験の結果を記載する。
【表32】
【0163】
エラスターゼ阻害活性は、主に、膜画分から得た化粧用成分中で確認された。アルファルファ、オオムギおよびマリゴールド花のセラム画分から生成された化粧用成分は、エラスターゼ阻害をまったく示さなかった。ラベンダーおよびセージセラム画分から得られた化粧用成分は、膜画分から得られた対応する化粧用成分と比較して非常により低い阻害活性をまさに示した。膜由来とセラム由来の化粧用植物性成分の間のエラスターゼ阻害活性の分布の上記パターンは、試験した原料供給源のすべてについて見られた。
【0164】
膜画分から得られた選択した化粧用成分は、正の対照として用いた特異的エラスターゼ阻害剤の活性の大きさに匹敵するエラスターゼ阻害活性を示す。
【0165】
膜画分から得られた化粧用成分は、「古典的な」単純な競合的および可逆的エラスターゼ阻害剤と一致する特性を示す一方で、正の対照は、複雑な阻害挙動(一部の不可逆的阻害活性を含む)を有する。
【0166】
最も破壊的な炎症プロテイナーゼ(好中球エラスターゼ)に対する膜画分から生成された化粧用成分の阻害特性は、これらの成分を、抗炎症剤としての使用のための外用剤の有益な成分として適格なものにする。
【実施例21】
【0167】
マリゴールド生成物のエラスターゼ阻害評価
マリゴールド生成物のインビトロエラスターゼ阻害評価について、以下に記載し、表33にまとめる。
【表33】
【0168】
マリゴールド花膜画分から得られた化粧用成分402は、最高のエラスターゼ阻害活性を示したが、セラム画分(これは、同じ原料に由来し、細胞ジュース分画過程の間に膜画分から分離された)から得られた化粧用成分401は、検出可能な阻害活性を有しない。
【0169】
従来の抽出方法で生成された水抽出物は、同じ原料のバッチから得、エラスターゼ阻害活性を示さなかった。
【0170】
同じ原料に由来した市販の抽出物は、最小の抗エラスターゼ活性のみを示した。
【0171】
同じ原料に由来する化粧用成分402は、市販の抽出物のものを約2桁だけ上回る抗エラスターゼ活性を示した。
【実施例22】
【0172】
化粧用植物性成分の抗ゼラチナーゼ活性の評価
好中球は、マトリックスメタロプロテイナーゼのクラスからの主たる2種の酵素を含有し、これらは、集合的に広範な結合組織破壊に関与する:好中球コラゲナーゼ(MMP−8)およびゼラチナーゼB(MMP−9)。エラスターゼは、生来のコラーゲンに対して活性不足であり、かつ好中球コラゲナーゼ単独では、それ自体で結合組織タンパク質を可溶化することができないので、ゼラチナーゼBが、細胞外マトリックスに対する炎症性損傷の主たる一因と考えられる。炎症細胞由来のマトリックスメタロプロテイナーゼによって仲介された細胞外マトリックスの分解を阻害する化粧用植物性成分の潜在性を評価するため、この酵素に対する特異的アッセイを用いた。ゼラチナーゼB活性は、低分子量合成基質(APMA)の加水分解により検出した。ゼラチナーゼBの阻害剤は、用量依存性様式で酵素反応生成物の形成の加速率を減少させる。このような酵素阻害は、試験した化粧用成分を反応混合物に加えた場合に見られた。
【0173】
化粧用植物性成分に関する抗ゼラチナーゼBのデータを、以下に記載し、表34にまとめる。
【表34】
【0174】
セラム由来化粧用植物性成分のすべては、適度のゼラチナーゼB阻害活性を示した。
【0175】
セージ膜画分から得られた化粧用植物性成分502は、顕著なゼラチナーゼB阻害活性を示し、これは、セラム由来化粧用成分の対応する活性の少なくとも3倍だけ上回った。膜由来とセラム由来の化粧用成分との間のゼラチナーゼB阻害活性の分布のパターンは、抗エラスターゼ活性について見られた分布パターンと類似していた。
【0176】
セージ膜画分から得られた化粧用植物性成分は、IC50=30μg/mlを有する正の対照(ロズマリン酸)のものと同等の強力なゼラチナーゼB阻害活性(IC50=24.9μg/ml)を示した。
【0177】
ゼラチナーゼBに対する膜由来化粧用植物性成分の阻害特性は、この成分が、抗炎症外用製品の活性成分として価値を有することを示す。
【実施例23】
【0178】
化粧用植物性成分のスーパーオキシド捕捉活性のインビトロ評価
活性化炎症細胞により発生した反応性酸素種(内在性または外来性)は、スーパーオキシド捕捉活性の測定を与えるために用いられる特有のオキシダントを生成する。スーパーオキシド捕捉活性の評価に用いたアッセイは、酸化に伴う損傷を中和する際に有益である、抗酸化活性の一形態と関係する。高収率でかつ制御された方式でスーパーオキシドアニオンを発生させるために、酵素系(キサンチンオキシダーゼ)を用いた。この酵素によるキサンチンのヒポキサンチンへの転換は、かなりの量のスーパーオキシドアニオンを発生させ、これは、供給される基質の量と化学両論的である。用いたアッセイは、スーパーオキシドレベルの高感度の尺度として、シトクロムcのその第二鉄から第一鉄形態への還元に基づいた。キサンチンに対するキサンチンオキシダーゼの作用によって発生したスーパーオキシドアニオンを検出するためにシトクロムc還元を用いる利点は、「呼吸バースト」を受ける活性化炎症細胞によるスーパーオキシドアニオンの放出を検出するために、同じ尺度を用いることができることである。呼吸バーストの大きさを低減させるが、酵素的に発生したスーパーオキシドアニオンを捕捉しない化粧用植物性成分は、細胞により発生した反応性酸素種の捕捉剤として作用しているというよりはむしろ細胞機能の一部の態様を恐らくは阻害している。
【0179】
スーパーオキシド捕捉データを、以下にならびに表35および表36に記載する。
【表35】
【0180】
スーパーオキシド捕捉能は、セラム由来化粧用植物性成分中に完全に濃縮される。膜由来化粧用植物性成分は、スーパーオキシド捕捉能をまったく示さなかった。スーパーオキシド捕捉能の上記分布パターンは、試験した原料供給源のすべてについて見られた。
【0181】
セラム由来化粧用植物性成分は、正の対照(ロズマリン酸)のスーパーオキシド捕捉能の約20%を示した。
【0182】
セラム画分のスーパーオキシド捕捉能は、これらの化粧用植物性成分が、局所抗酸化剤およびUV保護剤生成物として作用する見込みのある成分として価値を有することを示唆する。
【表36】
【0183】
マリゴールド花セラム由来化粧用植物性成分は、かなりのスーパーオキシド捕捉能を示したが、膜由来化粧用植物性成分(同じ原料に由来する)は、検出可能な阻害能をまったく有しない。
【0184】
同じ原料に由来した市販の抽出物は、セラム由来化粧用植物性成分のものと同等であるスーパーオキシド捕捉活性を示した。
【0185】
同じ原料のバッチから従来法によって単離された水抽出物は、セラム由来化粧用植物性成分または市販の抽出物よりもより高いスーパーオキシド捕捉能を示した。
【実施例24】
【0186】
好中球呼吸バーストに対する化粧用植物性成分の効果の評価
前の実施例23に記載した種々の化粧用植物性成分のスーパーオキシド捕捉能は、インビトロで酵素的に発生させたスーパーオキシドアニオンの供給源、および活性化炎症細胞(すなわち、好中球)により発生したインビボ反応性酸素種を用いて測定した。好中球は、それらが、局所炎症の部位に最大数で関与するので、およびそれらがスーパーオキシドアニオンおよび過酸化水素などの種の一部を次亜塩素酸などの抗酸化剤に変換するので、反応性酸素種の特に重要な供給源である。好中球によって細胞外環境に放出されるスーパーオキシドの検出は、「呼吸バースト」と総称的に称される複数の反応性酸素種を発生させるこれらの細胞の活性の全体レベルの高感度の尺度である。酵素的に形成されたスーパーオキシド、すなわち、フェリシトクロムcを検出するために用いたように、好中球に由来する細胞外スーパーオキシドを検出するために同じ反応剤を用いた。この分子は、タンパク質であり、好中球に入ることができないので、それは、細胞内反応性酸素種を検出しない。
【0187】
酢酸ミリスチル酸ホルボール(PMA)は好中球活性化のための少なくとも2つの独立した経路についてのシグナルによく似ることが知られており、これをインビボでの呼吸バーストの刺激剤として用いた。PMA活性化好中球によるシトクロムc還元の速度は、これらの細胞における呼吸バーストの大きさに比例する。用量依存性阻害の結果は、PMAの添加に続く遅滞期150秒後に認められるシトクロムc還元の最大速度で表した。
【0188】
好中球呼吸バーストの阻害試験に関するデータの精査を表37に示す。
【表37】
【0189】
試験した化粧用植物性成分の401と501の両方は、PMA刺激好中球からの呼吸バーストの二相性調節を示した。低濃度で、セラム由来化粧用植物性成分は、強い阻害活性を示したが、高濃度では、この阻害活性は、PMA単独で刺激された好中球のものを超えて呼吸バーストの正味の穏やかな刺激で置き換えられた。したがって、セラム由来化粧用植物性成分は、好中球に対する刺激効果を有する成分を含有するが、これらの成分は、刺激が高濃度でのみ認められるので、穏やかな効力のみを有する。さらに、セラム由来化粧用植物性成分は、非常に低濃度で好中球呼吸バーストを阻害する他の成分を含有する。これらの低濃度(約2.5μg乾燥物質/ml)での好中球呼吸バーストの阻害は、検出されるために乾燥物質の非常により高い濃度(約150μg/ml)を必要とした、スーパーオキシド捕捉活性のみによるものではない可能性がある。
【0190】
マリゴールド花に由来した市販の抽出物は、刺激効果をまったく示さず、呼吸バースト活性の阻害のみを示した。
【0191】
セラム由来化粧用植物性成分として同じマリゴールド花のバッチから従来法で単離された水抽出物は、刺激活性を示さなかった。従来の抽出物は、セラム由来化粧用植物性成分の非常に低い(2.5μg/ml)濃度で見られる好中球呼吸バーストに対する極度に強力な阻害活性を全く保持しなかった。
【実施例25】
【0192】
化粧用植物性成分101、201、301、401、402、501および502の特定の特性を決定するために用いたプロトコル
以下は、化粧用植物性成分101、201、301、401、402、501および502の特定の特性を決定するために用いた様々な方法である。これらの方法は、上記実施例を通して参照される。「試験生成物」または「試験試料」への以下の言及は、化粧用植物性成分101、201、301、401、402、501および502を指す。
【0193】
方法1:固形分の決定方法:固形分の決定のための手順は、水が完全に蒸発するまでの、試験生成物の100℃の水浴中での蒸発、その試料の105℃で3時間のオーブン保管、室温への冷却、および固体物質を有する容器の重量の即時決定を含んだ。
【0194】
方法2:不揮発性残留物の決定方法:不揮発性残留物の決定のための手順は、試験生成物の105℃で5時間のオーブン保管、冷却、および固体物質を有する容器の重量の即時決定を含んだ。
【0195】
方法3:L値の決定方法:L値の決定のための手順は、測定ジオメトリ0°/45°を有するハンターラボスキャン固定ジオメトリ熱量計を用いた。上方に向いた観察窓を有する標準光源D65を用いた。試験生成物を有する容器を、観察窓の上に置き、底部を通して測定した。以下のCIELAB式を用いた:
=(a*2+b*21/2
DE=[(DL)+(Da+(Db1/2
DH=[(DE−(DL−(DC1/2
【0196】
方法4:カロチノイド総含有量およびルテイン含有量の決定方法。試験試料をアセトンで抽出した。均質化および真空ろ過後、抽出物をすべて、メタノール中30%水酸化カリウムで鹸化した。カロチノイドは、連続して石油エーテルで抽出した。追加の処理およびエタノール中再可溶化後、試料のすべてを446nmで測定した。
【0197】
ルテイン含有量を決定するために、それぞれの試料抽出物からの追加の乾燥試料をHPLC分析用に用いた。乾燥試料は、MTBEおよびメタノール中に再可溶化した。(250×4.60mmI.D.)5μmC18カラム(“Vydac”)を有する逆相HPLCシステムを用いた。ルテインの同一性は、基準標準の共クロマトグラフィーにより確認した。エタノール中のルテインのモル吸光係数は、144,800cm−1mol−1である。
【0198】
方法5:エラスターゼ阻害活性の決定方法。試験画分のエラスターゼ阻害活性は、好中球エラスターゼ(“Elastin Products”により製造された精製酵素調合物)および“Sigma”により製造された合成ペプチド可溶性基質メトキシスクシニル−Ala−Ala−Pro−Val−p−ニトロアニリドを用いるアッセイを使用して決定した。基質の酵素による切断は、時間とともに黄色の増加(405nm)の生成をもたらし;色生成の速度は、阻害活性を含有する試験画分の濃度の増加によって減少する。阻害の濃度依存性の分析は、50%阻害(IC50)を達成するのに必要な各試験画分内の乾燥物質の濃度として表した阻害活性の効力の定量を可能とするが、阻害の様式に関連する情報も与える。
【0199】
IC50の決定について、エラスターゼの濃度は、2.5μg/mlであり、基質の濃度は、150μMであった。Kiの決定について、基質の濃度は、100μMおよび200μMであった。
【0200】
方法6:ゼラチナーゼB阻害活性の決定方法:他のプロテイナーゼを洗い流した後、免疫認識によりマルチウェルマイクロプレート上にゼラチナーゼBを特異的に捕捉する、商業的に流布したアッセイ(「Amersham Pharmacia」により製造されたMMP−9活性ELISA)を用いた。酵素活性は、ゼラチナーゼBについての低分子量合成基質、すなわち、APMAの加水分解により405nmで検出した。阻害の濃度依存性の分析を用いて、試験生成物乾燥物質の効力を決定した。
【0201】
方法7:スーパーオキシド捕捉活性の決定方法。キサンチンオキシダーゼ(「Sigma」により製造された精製酵素調合物)を用いる酵素システムを用いて、スーパーオキシドアニオンを高収率および制御された方式で発生させた。この酵素によるヒドロキサンチンへのキサンチンの転換は、かなりの量のスーパーオキシドアニオンを発生させ、フェリシトクロムcのフェロシトクロムcへの還元を、スーパーオキシドレベルの高感度の尺度として用いた。試験画分を反応系に加えたときに、フェロシトクロムcレベル(550nm)の測定は、それらのスーパーオキシド捕捉活性の決定を可能にする。ウェル当たりの最終濃度は、シトクロムcについて75μM、キサンチン425μm/L、およびキサンチンオキシダーゼ10mU/mlであった。
【0202】
方法8:好中球呼吸バーストの阻害の決定方法。酢酸ミリスチン酸ホルボール(Alexis Corporation、SanDiego、カルフォルニア州により製造されたPMA)を、好中球により示される呼吸バースト活性の誘因として用いた。好中球によって細胞外環境に放出されるスーパーオキシドアニオンの検出は、フェロシトクロムcレベルの測定によって達成した。PMA活性化好中球によるシトクロムc還元の速度は、これらの細胞における呼吸バーストの大きさに比例する。用量依存性阻害の結果は、PMAの添加に続く遅延期150秒後に550nmで実測したシトクロムc還元の最大速度で表した。
【実施例26】
【0203】
化粧用植物性成分601および701を含めて、本発明の様々な化粧用植物性成分の特定の特性を決定するために用いたプロトコル
以下は、限定することなく化粧品用植物性601および701を含めて、本発明の様々な化粧用植物性成分の特定の特徴を決定するために用いた様々な方法である。これらの方法は、実施例を通して参照される。特定の場合、「試験生成物」または「試験試料」への以下の言及は、化粧用植物性成分601および/または701を指す。
【0204】
重量オスモル濃度(Osmolality)
重量オスモル濃度は、溶液1kg当たりの溶質のオスモル数として定義される、溶質濃度の尺度である。重量オスモル濃度は、溶液の単位質量当たりの溶質粒子のオスモル数を測定する。重量オスモル濃度は、それが溶質のモルというよりはむしろ溶質粒子のモルを測定するので、容積モル濃度(molarity)と区別される。一部の化合物は溶液中で解離できるが、一方で他のものはできないので、この区別が生じる。塩などのイオン性化合物は、それらの構成イオンに溶液中で解離でき、したがって、溶液の容積モル濃度と重量オスモル濃度との間に一対一の関係はない。例えば、塩化ナトリウム(NaCl)は、Na+とCl−イオンとに解離する。したがって、溶液中1モルのNaClごとに、2オスモルの溶質粒子が存在する(すなわち、1M NaCl溶液は、2オスモルのNaCl溶液である)。ナトリウムイオンと塩素イオンの両方が、溶液の浸透圧に影響する。非イオン性化合物は、解離せず、溶質1モル当たり溶質1オスモルだけを形成する。例えば、グルコースの1M溶液は、1オスモルである(Widmaier, Eric P.;Hershel Raff, Kevin T. Strang (2008年)、Vander's Human Physiology、第11版、McGraw-Hill、108〜112頁)。浸透圧計モデル3250(Advanced Instruments,Inc)を用いて、成分の重量オスモル濃度を決定した。この装置は、測定原理として凝固点降下を用いる。凝固点は、溶解した粒子の存在およびそれらの数(しかし、それらの同一性ではない)に依存する束一的性質である。凝固点降下は、溶質が、種々の塩などの電解質、および炭水化物などの非電解質である場合の両方の場合に起こる。
【0205】
乾燥物質
乾燥物質は、成分中の不揮発性成分の濃度を反映する。乾燥物質レベルは、液体試料の重量と、液体成分が蒸発した後の残留乾燥物質の重量と比較することによって決定した。使い捨てアルミニウム計量皿(VWR25433−016)、Ohaus Explorer E00640バランス(Ohaus Corporation)および105℃に設定したShel Labモデル1400Eオーブン(VWR)を用いた。乾燥物質パーセントは、(「風袋+乾燥物質」−「風袋」)/(「風袋+湿った物質」−「風袋」)100として計算する。
【0206】
色(ガードナースケール)
ASTM D1544で規定されたとおりのガードナー色スケールは、淡黄色から茶褐色の範囲の色特性を用いて光伝達試料を等級分けするための単数の色スケールである。スケールは、最も明るいものについて1から最も暗いものについて18まで番号付けしたガラス標準品の色度によって定義される。試料のガードナー色は、Lovibond Gardner Comparator3000(The Tintometer Limted of Salisbury、英国)(着色ガラス標準品と直接比較することによって試料のガードナー色を視覚的に決定するための3視野装置)で決定した。
【0207】
屈折率(nD)
屈折率は、Cole−Parmer(Vernon Hills、イリノイ州)のPolystatモデル12108−10温度調節器で与えられる温度調節を有するReichert Analytical Instruments(Depew、ニューヨーク州)製のArias500屈折計で測定することによって決定した。手順は、Arias500屈折計用の取り扱い説明書の6.0、4.1および4.4〜4.5の項に基づく。
【0208】
pH決定
pHは、溶液中の水素イオン活性の常用対数の負数として定義し、溶液の酸性または塩基性の尺度であるpHを決定するために用いた。
【0209】
pHレベルは、pH/ATC電極番号300729.1(Denver Instrument Company)を有する、Denver Instrument Company(Bohemia、ニューヨーク州)製のpH計モデル250pH/ISE/導電率計で決定した。手順は、Denver Instrument Company 301127.1改訂Dマニュアル、ii頁および9〜12頁に基づく。
【0210】
極大吸収波長(ラムダmax)、nm
極大吸収波長はnm、水加熱セルホルダー(Amersham部品番号80−2106−08)を有する、Amersham Biosciencesとして以前に知られた、以前にGE Healthcareの下の、Biochrom Ltd(Cambridge、英国)製のUltrospec4300pro UV/可視分光光度計で決定した。手順は、SWIFT IIアプリケーションソフトウェアUV/可視分光光度計と表題されたAmershamマニュアル番号80−2108−25のセクション2および4、およびUltrospec4300pro UV/可視分光光度計ユーザーマニュアルと表題されたAmershamマニュアル番号80−2111−79の7および15頁に基づく。装置制御は、SWIFT IIソフトウェア一式(Biochrom Ltd)によって、および温度制御は、Torrey Pines Scientific(Carlsbad、カナダ国)製CB20Miniサーキュレータによって提供した。
【0211】
タンパク質の決定
ケルダール法を用いて、タンパク質窒素含有量を測定した。
【0212】
微生物学的限度
微生物含有量および限度:総平板菌数、CFU/g;かびおよび酵母、CFU/g;大腸菌(E. coli);サルモネラ属の種(Salmonella sp.);黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus);シュードモナス属の種(Pseudomonas sp.)を、米国薬局方(US Pharmacopoeia)XXX、NF25、<61>、微生物学的限度試験に従って決定した。
【0213】
トリプシン阻害
トリプシンは、インビボ表皮増殖および炎症に関与するタンパク質分解酵素である。トリプシン阻害活性は、96ウェルマイクロタイタープレート(マイクロプレート)およびコンピュータ制御マイクロプレートリーダーによる使用のために設計された動的比色アッセイによって決定した。基質の切断における酵素活性は、405nm波長における吸光度の増加として測定した黄色の発色によって示した。負の対照ウェルについての吸光度増加の最高率の平均を、酵素活性の100%とみなし、IC50は、酵素活性を50%に減少させるのに必要なウェル中の試料の濃度として計算した。IC50値が低ければ低いほど、より高いトリプシン阻害活性を示す。L−BAPA(Nα−ベンゾイル−L−アルギニン4−ニトロアニリド塩酸塩)基質、トリプシン、および溶媒の試薬は、Sigma−Aldrichから入手した。pH8.2Tris−CaCl緩衝剤を、トリプシンおよびL−BAPA基質の作業溶液を調製するために用いた。緩衝剤試薬用の溶媒として(負の対照として)、および試料の系列希釈液を調製するために希釈剤として脱イオン水を用いた。各ウェルにおける反応体積は200μlであり、トリプシンの濃度は60nMに等しく、基質は、0.5mMに等しかった。
【0214】
チロシナーゼ阻害
チロシナーゼは、対応するカテコールへのモノフェノールのo−ヒドロキシル化(モノフェノラーゼまたはクレゾラーゼ活性)、および対応するo−キノンへのモノフェノールの酸化(ジフェノラーゼまたはカテコラーゼ活性)を触媒する銅含有モノオキシゲナーゼである。これらのチロシナーゼの機能は、メラニン形成の間のメラニン色素の形成に重要な役割を果たす。メラニン産生は、皮膚の色の主として原因であり、日光誘発皮膚損傷の予防に重要な役割を果たす。しかしながら、皮膚におけるメラニン産物の異常な蓄積は、肝斑(melasma)、肝斑(chloasma)、そばかす、および老人性色素斑を含む過剰色素沈着の原因であり、これは、望ましくない美的外観をもたらし得る(Jeonら、(2005年)Bull Korean Chem. Soc、第26巻:1135〜1137頁)。
【0215】
チロシナーゼは、メラニンの生合成において重要な酵素である。チロシナーゼ阻害アッセイを用いて、L−チロシンをL−ジヒドロキシフェニルアラニン(L−DOPA)に変換するマッシュルームチロシナーゼ酵素の能力を妨害し得る成分を探索した。
【0216】
チロシナーゼ阻害活性は、96ウェルマイクロタイタープレート(マイクロプレート)およびコンピュータ制御マイクロプレートリーダーによる使用のために設計された動的比色アッセイによって決定した。L−トリプシン基質をL−DOPA(L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン)に変換する際の酵素活性は、475nm波長における吸光度の増加として測定した茶色の発色によって示した。負の対照ウェルについての吸光度増加の最高率の平均を、酵素活性の100%とみなし、IC50は、酵素活性を50%に減少させるのに必要なウェル中の試料の濃度として計算した。IC50値が低ければ低いほど、より高いチロシナーゼ阻害活性を示す。L−チロシナーゼ基質およびマッシュルームチロシナーゼは、Sigmaから入手した。1×pH7.4のPBS(リン酸緩衝生理食塩水)緩衝剤溶液は、Gibcoから入手した。マッシュルームチロシナーゼおよびL−チロシン基質の作業溶液を調製するために、PBSを用いた。負の対照としておよび試料の系列希釈液を調製するための希釈剤として、脱イオン水を用いた。各ウェルにおける反応体積は200mLであり、マッシュルームチロシナーゼの濃度は13単位/mLに等しく、L−チロシン基質は、0.5mMに等しかった。
【0217】
LDH(乳酸脱水素酵素)放出細胞毒性法
LDH(乳酸脱水素酵素)放出細胞毒性決定法は、ある種の細胞成分基質は、典型的には細胞内に隔離され、細胞外媒体中に不足しているという事実に基づく。細胞生存率の損失は、細胞膜完全性の損失およびこのような基質の放出をもたらす。細胞外LDH濃度は、LDHによって着色形態に変換される色素を用いて比色分析的に測定することができる。したがって、被験物質の細胞毒性は、被験物質を細胞培養液の増殖培地に加え、適当なインキュベーション時間後に培地中のLDH濃度を測定し、その結果を正常な未処理細胞の負の対照の細胞培養液の増殖培地から得たもの、および公知の細胞毒性剤で処理された正の対照の細胞培養液からのものと比較することによって決定され得る。
【0218】
MatTek MelanoDermアッセイ
MatTek Melanodermアッセイは、メラニン関連皮膚色素沈着に対する被験物質の効果を決定する(美白/明色化適用など)。このアッセイは、肉眼的および顕微鏡的観察、ならびに正常ヒト角化細胞と、ヒト表皮およびその着色をモデルとするメラニン形成細胞との共培養液中の終点メラニン含有量決定に基づく。Melanoderm細胞培養液は、試験の継続時間の間維持および観察され、未処理の負の対照を、増殖培地に加えた被験物質を有する培養液のみならず、増殖培地に加えた公知のメラニン形成性影響物質を有する正の対照と比較する。試験の最後に、細胞培養液を回収し、加工して、比色アッセイを用いてメラニン含有量を測定する。
【0219】
抗酸化活性
抗酸化剤は、酸化により引き起こされる損傷を低減する薬剤である。抗酸化活性は、BioTek Instruments Inc(Winooski、バーモント州)製のSynergy2マイクロプレートリーダーとともに用いられる、(www.biotek.com/resources/docs/ORAC_Assay_Application_Note.pdf)で入手できるBioTekからのApplication Note「Perfoming Oxygen Radical Absorbance Capacity (ORAC) Assays with Synergy HT Multi-Detection Microplate Reader」に記載された方法の修正を用いてORAC試験によって決定した。このアッセイでは、AAPH(2,2’−アゾビス2−アミノ−プロパン)が、蛍光プローブ(ナトリウムフルオレセイン)を損傷させる反応性酸素種を発生する。(R)−Troloxメチルエーテルなどの抗酸化剤は、この損傷を予防または遅延化し、それらの効果は、蛍光測定によって定量化され得る。蛍光読み取りは、485nmに設定した励起波長および528nmに設定した発光波長によって行い、反応体積は200μl、AAPH濃度は55mM、ナトリウムフルオレセイン濃度は1.33μM、および(R)−Troloxメチルエーテル濃度範囲は80μMから2μMであった。ナトリウムフロオレセイン(Fluka46960)、AAPH(Sigma440914)および(R)−Troloxメチルエーテル(Fluka93509)は、Sigma−Aldrich(St.Louis、ミズーリ州)から入手した。AUC(曲線下面積)値は、比率(ウェルについて最初の蛍光読み取り値によって除した、ウェルについての現下の蛍光読み取り値)の合計として計算した。脱イオン水を有するウェルのAUC値の平均を、(R)−Troloxメチルエーテルを有するウェルおよび被験物質を有するウェルのAUCから減じて、抗酸化剤による蛍光の保存に対応するAUCを得た。検量線は、(R)−Troloxメチルエーテル重量−相当するORAC活性を示すウェルの抗酸化関連AUCの関数として生成した。次いで、被験物質についてのORAC活性を、1単位重量の(R)−Troloxメチルエーテルによって生じたものと等しい抗酸化活性を達成するのに必要な被験物質の単位重量として計算し、数字が低ければ低いほど、高いORAC活性を示す。
【0220】
DPPH(2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル)フリーラジカル捕捉活性
フリーラジカル捕捉剤は、生物系においてフリーラジカルと反応し、フリーラジカルによって誘発される損傷を低減し、フリーラジカルの作用から保護する成分である。フリーラジカル捕捉活性、すなわち、DPPH(2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル)フリーラジカル捕捉活性は、SUN−SRi(Rockwood、テネシー州)製ガラス被覆ポリプロピレン製96−ウェルマイクロタイタープレート(カタログ番号400062)およびBioTek Instruments Inc(Winooski、バーモント州)製Synergy2マイクロプレートリーダーを伴う使用に適合させた動的比色アッセイによって決定した。吸光度は、515nmの波長で測定した。各マイクロプレートウェル中の反応体積は200μlであり、DPPHの初期濃度は114μMに等しかった。L−アルコルビン酸を正の対照として用いた。DPPH(Sigma D9132)およびUSP L−アルコルビン酸(Sigma A−2218)は、Sigma−Aldrich(St.Louis、ミズーリ州)から入手した。反応の化学量論を計算して、1単位重量のDPPHをクエンチするのに必要な被験物質の単位重量として表し、これはより低い数値がより高い活性を示す。この方法は、(LWT- Food Sicenc and Technology、第28巻、Issue 1、1995年、25〜30頁に公表されたW.Brand-Williamsらによる「Use of a free radical method to evaluate antioxidant activity」)に記載された手順から改変した。
【0221】
スーパーオキシド捕捉アッセイ
スーパーオキシド捕捉アッセイプロトコルは、Journal of Neuroscience Methods 97(2000年)139〜144頁中「Rapid Microplate Assay for Superoxide Scavenging Efficiency」から改変した。
【実施例27】
【0222】
ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分601の調製
化粧用植物性成分601を調製する方法は、化粧用植物性成分101に関して実施例1で記載した方法と同一であり、その変化は以下に記す。ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)の新鮮な茎、花および葉の組織を、植物バイオマス出発材料として用いた。新鮮なムラサキツメクサ植物バイオマス中の乾燥物質のレベルは、15.16パーセントであると計算され、100kgの乾燥物質をもたらすために約560kgの新鮮なムラサキツメクサ植物バイオマスの収穫を必要とした。この調製は、15.36kgの乾燥物質収量(または約300リットル)の化粧用植物性成分601の生成をもたらした。
【実施例28】
【0223】
ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分601の生成物仕様
化粧用植物性成分601は、実施例27で上記した方法によって調製した。
【0224】
化粧用植物性成分601の分析を行って、以下に記載されるとおりの、その様々な物理化学的、微生物的および生物活性の特徴を決定した。化粧用植物性成分601は、透明な液体であり、黄赤色および特徴的臭いを有する。溶媒(すなわち、グリコール、油または水)は、担体媒体にまったく加えなかった。
【0225】
表38は、化粧用植物性成分601の物理的、化学的および感覚的特性をまとめたものである。
【表38】
【0226】
化粧用植物性成分601は、ケルダール法によって決定された0.101〜0.104%の窒素を含有したが、これは、実質的にタンパク質を含まないことを示す。
【0227】
植物中のものを含む、タンパク質は、敏感な個人でタンパク質接触皮膚炎を引き起こし得る。原因となるタンパク性物質と接触の直後に、このような個人は、掻痒、灼熱、および/または刺痛をしばしば伴って、皮膚上に急性じんま疹または水疱疹などの症状を経験し得る。(V. Janssensら、「Protein contact dermatitis: myth or reality?」、British Journal of Dermatology 1995年;132:1〜6頁)。
【0228】
したがって、皮膚ケア物質は、可能な限り少ないタンパク質を含有することが非常に望ましい。本明細書で使用される場合、「タンパク質を実質的に含まない」は、ケルダール法を用いて1%未満(0%から1%まで)の合計タンパク質含有量を意味する。
【0229】
微生物的分析は、化粧用植物性成分601が、CFUおよび病原菌の不存在に関して化粧成分に対する化粧品業界の要件を満たすことを示した。化粧用植物性成分601は、光から保護された密閉容器中15から25℃の温度で保管するとき、少なくとも12〜18ヶ月間安定である(すなわち、物理的および化学的完全性を維持する)と判定された。化粧用植物性成分601は、生分解性成分である。
【実施例29】
【0230】
化粧用植物性成分601のムラサキツメクサ(Trifolium pratense)細胞セラム画分に関する活性およびアッセイデータのまとめ
マッシュルームチロシナーゼ阻害効力試験によれば、ムラサキツメクサセラム画分は、チロシナーゼを阻害し、約0.02%w/vのIC50値を達成し得る。
【0231】
スーパーオキシド捕捉アッセイ(Journal of Neuroscience Methods 97(2000年)139〜144頁中「Rapid Microplate Assay for Superoxide Scavenging Efficiency」から改変したプロトコル)によれば、ムラサキツメクサセラム画分は、スーパーオキシドを捕捉し、約0.03%w/vのIC50を達成することができる。
【0232】
DPPHフリーラジカル捕捉アッセイ(LWT-Food Science and Technology、第28巻、Issue 1、1995年、25〜30頁中「Use of a free radical method to evaluate antioxidant activity」に基づくプロトコル)によれば、ムラサキツメクサは、DPPHをクエンチすることができ、1単位重量のDPPHを完全にクエンチするために、約9.5単位の乾燥重量の物質が必要とされる。
【0233】
酸素ラジカル吸光度能アッセイ(BioTek InsrumentsからのApplicaton Note「Performing Oxygen Radical Absorbance Capacity (ORAC) Assays with Synergy HT Multi-Detection Microplate Reader」に基づくプロトコル)によれば、ムラサキツメクサセラム画分は、抗酸化剤として機能することができ、約4.4単位の乾燥重量の物質が、1単位重量の(R)−Troloxメチルエーテルに等しいORAC効果を与えるために必要とされた。
【実施例30】
【0234】
ハス(Nelumbo nucifera)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分701の調製
化粧用植物性成分701を調製する方法は、以下の変更点を伴うが、化粧用植物性成分101に関して実施例1で記載した方法と同一であった。ハス(Nelumbo nucifera)の新鮮な茎、花および葉の組織を、植物バイオマス出発材料として用いた。新鮮なハス(Nelumbo nucifera)植物バイオマス中の乾燥物質のレベルは、20.7パーセントであると計算され、100kgの乾燥物質をもたらすために約483kgのハス(Nelumbo nucifera)植物バイオマスの収穫を必要とした。この調製は、約13kgの乾燥物質収量(または約262リットル)の化粧用植物性成分701の生成をもたらした。
【実施例31】
【0235】
ハス(Nelumbo nucifera)細胞セラム画分に由来する化粧用植物性成分701の生成物仕様
化粧用植物性成分701は、実施例30で上記した方法によって調製した。
【0236】
化粧用植物性成分701の分析を行って、以下に記載されるとおりの、その様々な物理化学的、微生物学的、および生物活性の特性を決定した。化粧用植物性成分701は、透明な液体であり、黄色および特徴的な臭いを有する。溶媒(すなわち、グリコール、油または水)は、担体媒体にまったく加えなかった。
【0237】
表39は、化粧用植物性成分701の物理的、化学的および感覚的特性を要約する。
【表39】
【0238】
化粧用植物性成分701は、ケルダール法によって決定された0.166〜0.167%の窒素を含有したが、これは、実質的にタンパク質を含まないことを示す。
【0239】
植物中のものを含む、タンパク質は、敏感な個人でタンパク質接触皮膚炎を引き起こし得る。原因となるタンパク性物質と接触の直後に、このような個人は、掻痒、灼熱、および/または刺痛をしばしば伴って、皮膚上に急性じんま疹または水疱疹などの症状を経験し得る。(V. Janssensら、「Protein contact dermatitis: myth or reality?」、British Journal of Dermatology 1995年;132:1〜6頁)。
【0240】
したがって、皮膚ケア物質は、可能な限り少ないタンパク質を含有することが非常に望ましい。本明細書で使用される場合、「タンパク質を実質的に含まない」は、ケルダール法を用いて1%未満(0%から1%まで)の合計タンパク質含有量を意味する。
【0241】
微生物的分析は、化粧用植物性成分701が、CFUおよび病原菌の不存在に関して化粧成分に対する化粧品業界の要件を満たすことを示した。化粧用植物性成分701は、光から保護された密閉容器中15から25℃の温度で保管するとき、少なくとも12〜18ヶ月間安定である(すなわち、物理的および化学的完全性を維持する)と判定された。
【0242】
化粧用植物性成分701は、生分解性成分である。
【実施例32】
【0243】
ハス(Nelumbo nucifera)細胞セラム画分に関する活性およびアッセイデータのまとめ
MB Researchにより完成されたLDH放出細胞毒性法(MB Researchプロトコル701-01)試験によれば、ハスセラム画分は、細胞培養培地中容積で最大10%までの濃度範囲の被験物質で細胞毒性をやはり示さない。
【0244】
MatTek MelanoDermアッセイ(MB Researchプロトコル750-01)によれば、細胞培養培地中5%v/vまたは0.19%w/vの濃度でハスセラム画分は、負の対照よりメラニンレベルで約30%の低下および肉眼で目立つ組織の確かな明色化によって決定して、角化細胞/メラニン形成細胞培養物モデルにおいて明色化/美白効果をもたらし得る。
【0245】
行われたトリプシン効力試験によれば、ハスセラム画分は、トリプシンを阻害することができ、IC50は、約0.04%w/vと計算された。
【0246】
スーパーオキシド捕捉アッセイ(Journal of Neuroscience Methods 97(2000年)139〜144頁中「Rapid Microplate Assay for Superoxide Scavenging Efficiency」から修正したプロトコル)によれば、ハスセラム画分は、スーパーオキシドを捕捉し、約0.016%w/vのIC50を達成することができる。
【0247】
DPPHフリーラジカル捕捉アッセイ(LWT-Food Science and Technology、第28巻、Issue 1、1995年、25〜30頁中「Use of a free radical method to evaluate antioxidant activity」に基づくプロトコル)によれば、ハスセラム画分は、DPPHをクエンチすることができ、1単位重量のDPPHを完全にクエンチするために、約2.5単位の乾燥重量の物質が必要とされる。
【0248】
酸素ラジカル吸光度能アッセイ(BioTek InsrumentsからのApplicaton Note「Performing Oxygen Radical Absorbance Capacity (ORAC) Assays with Synergy HT Multi-Detection Microplate Reader」に基づくプロトコル)によれば、ハスセラム画分は、抗酸化剤として機能することができ、約1.7単位の乾燥重量の物質が、1単位重量の(R)−Troloxメチルエーテルに等しいORAC効果を与えるために必要とされる。
【0249】
好ましい実施形態を本明細書で詳細に示しかつ説明してきたが、様々な変更、付加、置
換などが、本発明の精神から逸脱することなしになされ得ることは当業者に明らかであり
、したがって、これらは、以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内にあるとみ
なされる。
上記の開示によって提供される本願発明の具体例として、以下の発明が挙げられる。
[1] 新鮮な植物バイオマスから抽出された細胞ジュースに由来し、抗酸化活性、細胞増殖刺激活性および/または抗酸化活性と細胞増殖刺激活性との両方を有する細胞セラム画分ろ液であって、前記新鮮な植物バイオマスがハス(Nelumbo nucifera)およびムラサキツメクサ(Trifolium pratense)からなる群から選択される植物供給源由来である細胞セラム画分ろ液;ならびに
安定化剤
を含む生物活性植物性化粧用組成物であって、
ここで、前記細胞増殖刺激活性が少なくとも1つの型の細胞の増殖刺激によるものであり、
前記細胞セラム画分ろ液が、以下の工程:
新鮮な植物バイオマスから抽出された植物細胞ジュースを準備する工程;
前記植物細胞ジュースを、膜画分と細胞ジュース上清とに分離するのに有効な条件下でを処理する工程;
前記細胞ジュース上清を、細胞質画分と細胞セラム画分とに分離するのに有効な条件下で加工する工程;ならびに
前記細胞セラム画分ろ液をもたらすのに有効な条件下で前記細胞セラム画分を精製する工程であって、前記精製工程が、前記細胞セラム画分を温度処理工程にかけて凝固した細胞セラム画分をもたらす工程、および前記凝固した細胞セラム画分を清澄化して細胞セラム画分ろ液をもたらす工程、を含む工程
によって細胞ジュースから誘導される、生物活性植物性化粧用組成物。
[2] 前記安定化剤が、保存剤および抗酸化剤からなる群から選択される、[1]に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
[3] 前記保存剤が、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、メチルパラベンナトリウムおよびクエン酸からなる群から選択される、[2]に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
[4] 前記抗酸化剤が、メタ重亜硫酸ナトリウムである、[2]に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
[5] 前記抗酸化活性が、スーパーオキシド捕捉活性および好中球呼吸バースト阻害活性からなる群から選択される、[2]に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
[6] 前記細胞セラム画分ろ液が、前記生物活性植物性化粧用組成物の約1〜約10重量パーセントを構成する、[1]に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
[7] 約50〜約190μg乾燥物質/mlのICR50値のスーパーオキシド捕捉効力範囲を有し、前記ICR50値が、シトクロムc還元の50パーセントを阻害するのに必要な、細胞セラム画分ろ液中に含有される乾燥物質の濃度を表す、[6]に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
[8] 前記細胞セラム画分ろ液が約1.0〜125μg乾燥物質/mlの範囲の細胞増殖刺激効力を有する、[1]に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
[9] 前記細胞セラム画分ろ液が約110〜190パーセントのNRU値を有し、前記NRU値が細胞生存率を表す、[8]に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
[10] 酢酸ミリスチン酸ホルボール刺激好中球から呼吸バーストの二相性調節を引き起こす能力を有し、前記呼吸バーストを約1.0〜5.0μg乾燥物質/mlで阻害し、前記呼吸バーストを約20〜180μg乾燥物質/mlで刺激する、[1]に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
[11] 表38または表39に示されるものと実質的に同じ特性を備える、[1]に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
[12] 哺乳動物への局所適用に適し、化粧品として許容される担体および化粧品として有効な量の[1]に記載の生物活性植物性化粧用組成物を含む、生物活性植物性化粧用調合物。
[13] 前記化粧品として許容される担体が、親水性クリーム基剤、親水性ローション基剤、親水性界面活性剤基剤、疎水性クリーム基剤、疎水性ローション基剤および疎水性界面活性剤基剤からなる群から選択される、[12]に記載の化粧用調合物。
[14] 前記生物活性植物性化粧用組成物が、化粧用調合物の総重量の約0.001パーセント〜約95パーセントの範囲の量で存在する、[12]に記載の化粧用調合物。
[15] 前記植物供給源がハス(Nelumbo nucifera)である、[1]に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
[16] 前記植物供給源がムラサキツメクサ(Trifolium pratense)である、[1]に記載の生物活性植物性化粧用組成物。
[17] 前記植物供給源がハス(Nelumbo nucifera)である、[12]に記載の化粧用調合物。
[18] 前記植物供給源がムラサキツメクサ(Trifolium pratense)である、[12]に記載の化粧用調合物。
[19] 新鮮な植物バイオマスから抽出された植物細胞ジュースを準備する工程であって、前記新鮮な植物バイオマスがハス(Nelumbo nucifera)およびムラサキツメクサ(Trifolium pratense)からなる群から選択される植物供給源由来である工程;
前記植物細胞ジュースを、膜画分と細胞ジュース上清とに分離するのに有効な条件下で処理する工程;
前記細胞ジュース上清を、細胞質画分と細胞セラム画分とに分離するのに有効な条件下で加工する工程;
抗酸化活性、細胞増殖刺激活性、および/または抗酸化活性と細胞増殖刺激活性との両方を有する細胞セラム画分ろ液をもたらすのに有効な条件下で、前記細胞セラム画分を精製する工程であって、前記精製工程が、前記細胞セラム画分を温度処理工程にかけて、凝固した細胞セラム画分をもたらす工程、および前記凝固した細胞セラム画分を清澄化して細胞セラム画分ろ液をもたらす工程、を含む工程;ならびに
前記抗酸化活性、細胞増殖刺激活性、または抗酸化活性と細胞増殖刺激活性との両方を示す安定な生物活性植物性化粧用組成物をもたらすのに有効な条件下で、前記細胞セラム画分ろ液を安定化させる工程
を含む、生物活性植物性化粧用組成物を調製する方法。
[20] 前記処理する工程が、
前記植物ジュースを凝固させて、凝固した細胞ジュース混合物をもたらす工程、および
前記凝固した細胞ジュースを膜画分と細胞ジュース上清とに分離する工程
を含む、[19]に記載の方法。
[21] 前記凝固させる工程が、植物細胞ジュースを不安定化させて、凝固した細胞ジュース混合物をもたらす工程であって、前記不安定化が、熱処理、電気−膜処理、化学処理、および/またはそれらの組合せによって達成される、[20]に記載の方法。
[22] 前記熱処理が、
植物細胞ジュースを加熱して、膜画分の凝固を誘発するのに必要な加熱温度に加熱する工程、および
加熱された前記細胞ジュースを、前記細胞ジュース上清から前記膜画分の定量的分離を可能にするのに有効な温度に冷却する工程
を含む、[21に記載の方法。
[23] 前記加熱する工程が45〜70℃で行われる、[22]に記載の方法。
[24] 前記冷却する工程が30〜45℃で行われる、[22]に記載の方法。
[25] 前記分離する工程がろ過または遠心分離により行われる、[20]に記載の方法。
[26] 前記加工する工程が、
前記細胞ジュース上清を細胞質画分沈殿工程にかけて、細胞質画分および細胞セラム画分を含む細胞質/細胞セラム混合物をもたらす工程、ならびに
前記細胞セラム画分から細胞質画分を分離する工程
を含む、[19]に記載の方法。
[27] 前記細胞質画分沈殿工程が、等電滴定、電気透析、および/またはそれらの組合せによって行われる、[26]に記載の方法。
[28] 前記等電滴定が、前記細胞ジュース上清のpHを約2.5〜6.5に調整する工程を含む、[27]に記載の方法。
[29] 前記分離する工程がろ過または遠心分離によって行われる、[26]に記載の方法。
[30] 前記温度処理工程が、
前記細胞セラム画分を、前記細胞セラム画分内で凝固を誘発するのに必要な加熱温度に加熱する工程、および
細胞セラム画分を、前記細胞セラム画ろ液のさらなる定量的分離を可能にするのに有効な温度に冷却する工程
を含む、[19]に記載の方法。
[31] 前記加熱温度が80〜95℃である、[30]に記載の方法。
[32] 前記冷却する工程が少なくとも約15℃低い温度までである、[30]に記載の方法。
[33] 前記清澄化する工程がろ過または遠心分離によって行われる、[19]に記載の方法。
[34] 前記ろ過が、前記凝固した細胞セラム画分を真空ろ過して、前記細胞セラム画分ろ液をもたらす工程を含む、[33]に記載の方法。
[35] 前記細胞セラム画分のpHを、前記精製する工程の直前に約3.0〜4.0に調整する工程をさらに含む、[19]に記載の方法。
[36] 前記安定化させる工程が、前記細胞セラム画分ろ液を、少なくとも1種の保存剤と少なくとも1種の抗酸化剤との混合物中でインキュベートして、前記安定な生物活性植物性化粧用組成物をもたらす工程を含む、[19]に記載の方法。
[37] 前記保存剤が、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、メチルパラベンナトリウム、およびクエン酸からなる群から選択される、[36]に記載の方法。
[38] 前記抗酸化剤が、重亜硫酸ナトリウムである、[36]に記載の方法。
[39] 前記植物供給源がハス(Nelumbo nucifera)である、[19]に記載の方法。
[40] 前記植物供給源がムラサキツメクサ(Trifolium pratense)である、[19]に記載の方法。
[41] [19]に記載の方法によって製造された安定な生物活性植物性化粧用組成物。
図1