特許第6246600号(P6246600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246600
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】リバースカム装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/08 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   B21D37/08
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-4714(P2014-4714)
(22)【出願日】2014年1月15日
(65)【公開番号】特開2015-131331(P2015-131331A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】店橋 純一
(72)【発明者】
【氏名】桐明 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】梅原 克樹
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−51003(JP,A)
【文献】 特開2008−302412(JP,A)
【文献】 実開昭60−30181(JP,U)
【文献】 実開平2−104119(JP,U)
【文献】 米国特許第4088005(US,A)
【文献】 特開2012−139715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/00−37/20
B30B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略箱形状をしたベースと、
上下方向に移動可能に前記ベースに支持されたカムドライバと、
上下方向に移動可能に前記ベースに支持され、前記カムドライバの下方向への移動に伴って、上方向へ移動するカムスライドと、
前記カムスライドを下方に付勢する弾性部材と、を備え、
重心が前記カムドライバよりも前記カムスライド側に位置するリバースカム装置であって、
前記リバースカム装置を吊り上げて移動させるときに、前記リバースカム装置を吊り上げるための工具が装着される工具装着手段が、前記カムドライバよりも前記カムスライド側に位置するリバースカム装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記カムスライド内に配置されている請求項1に記載のリバースカム装置。
【請求項3】
前記工具装着手段は、前記リバースカム装置の重心の上方に設けられている請求項1または請求項2に記載のリバースカム装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、コイルスプリングであり、
前記工具装着手段は、
前記カムスライドの上方に位置し、前記ベースまたは前記ベースに対し非可動に固定された非可動部材に固定されたスプリングプレートと、
前記コイルスプリングの伸縮をガイドするガイドピンと、を有し、
前記スプリングプレートおよび前記ガイドピンの少なくともいずれか一方は、前記リバースカム装置を吊り上げるための工具を装着する装着部を有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリバースカム装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、コイルスプリングであり、
前記工具装着手段は、
前記カムスライドの上方に位置し、前記ベースまたは前記ベースに対し非可動に固定された非可動部材に固定されたスプリングプレートと、
前記スプリングプレートから下方に延び、前記コイルスプリングの伸縮をガイドするガイドピンと、を有し、
前記スプリングプレートおよび前記ガイドピンの少なくともいずれか一方には、前記リバースカム装置を吊り上げるための工具を装着する装着孔が形成されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリバースカム装置。
【請求項6】
前記スプリングプレートには、貫通孔が形成され、
前記ガイドピンは、
前記貫通孔に挿入されて、前記スプリングプレートに嵌合される嵌合部と、
前記コイルスプリングの伸縮をガイドするガイド部と、を有し、
前記装着孔は、前記嵌合部に形成されている請求項5に記載のリバースカム装置。
【請求項7】
前記スプリングプレートの上面側には、前記装着孔が形成され、
前記スプリングプレートの下面側には、前記ガイドピンが設けられている請求項5に記載のリバースカム装置。
【請求項8】
前記弾性部材は、コイルスプリングであり、
前記工具装着手段は、
前記カムスライドの上方に位置し、前記ベースまたは前記ベースに対し非可動に固定された非可動部材に固定され、貫通孔が形成されたスプリングプレートと、
前記カムスライドに固定され、前記コイルスプリングの伸縮をガイドするガイドピンと、を有し、
前記ガイドピンには、前記リバースカム装置を吊り上げるための工具を装着する装着孔が形成され、前記リバースカム装置を吊り上げるための工具は、前記貫通孔を介して前記ガイドピンに装着される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリバースカム装置。
【請求項9】
前記装着孔は、前記スプリングプレートおよび前記ガイドピンの少なくともいずれか一方に複数形成されている請求項5から請求項8のいずれか一項に記載のリバースカム装置。
【請求項10】
前記カムドライバか下死点に位置する状態において、前記スプリングプレートの上面および前記ガイドピンの上面は、前記カムドライバの上面に対して、面一もしくは下側に位置する請求項5から請求項9のいずれか一項に記載のリバースカム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のパネルを下から上に突き上げることにより曲げ加工等をするリバースカム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のパネルの加工においては、被加工材に対して所定の方向に加工力を加えることにより曲げ加工が行われる。加工装置が加工動作を行える方向が限られており、入力方向に対する逆方向の加工力が必要な場合にリバースカム装置が用いられることがある。
【0003】
リバースカム装置では、プレス装置により下方向に押されるカムドライバと、カムドライバの下方向の移動により移動する第1カムスライドと、第1カムスライドの移動により上方向へ移動する第2カムスライドとが、それぞれベースに支持されている。
【0004】
そして、例えば、第2カムスライドを下方へ付勢するための弾性部材を第2のカムスライド内に有したリバースカム装置において、リバースカム装置を移動させる際には、カムドライバの上端部に吊りボルトを装着し、吊りボルトに吊り上げ装置のフックを引っ掛け、リバースカム装置を吊り上げるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のリバースカム装置では、上面視において、カムドライバの上端部は、リバースカム装置の重心から離れた場所に位置する。その結果、吊りボルトを装着してリバースカム装置を吊り上げた場合、リバースカム装置が傾いてしまうので、バランスが悪く、作業性も悪かった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、吊り上げて移動させる際のバランスが良く吊り上げるための手段を具備した、作業性の良いリバースカム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によるリバースカム装置は、略箱形状をしたベースと、上下方向に移動可能に前記ベースに支持されたカムドライバと、上下方向に移動可能に前記ベースに支持され、前記カムドライバの下方向への移動に伴って、上方向へ移動するカムスライドと、前記カムスライドを下方に付勢する弾性部材と、を備え、重心が前記カムドライバよりも前記カムスライド側に位置するリバースカム装置であって、前記リバースカム装置を吊り上げて移動させるときに、前記リバースカム装置を吊り上げるための工具が装着される工具装着手段が、前記カムドライバよりも前記カムスライド側に位置する。
【0008】
前記弾性部材は、前記カムスライド内に配置されても良い
【0009】
前記工具装着手段は、前記リバースカム装置の重心の上方に設けられても良い。
【0010】
前記弾性部材は、コイルスプリングであり、前記工具装着手段は、前記カムスライドの上方に位置し、前記ベースまたは前記ベースに対し非可動に固定された非可動部材に固定されたスプリングプレートと、前記コイルスプリングの伸縮をガイドするガイドピンと、を有し、前記スプリングプレートおよび前記ガイドピンの少なくともいずれか一方は、前記リバースカム装置を吊り上げるための工具を装着する装着部を有しても良い。
【0011】
前記弾性部材は、コイルスプリングであり、前記工具装着手段は、前記カムスライドの上方に位置し、前記ベースまたは前記ベースに対し非可動に固定された非可動部材に固定されたスプリングプレートと、前記スプリングプレートから下方に延び、前記コイルスプリングの伸縮をガイドするガイドピンとを有し、前記スプリングプレートおよび前記ガイドピンの少なくともいずれか一方には、前記リバースカム装置を吊り上げるための工具を装着する装着孔が形成されていても良い。
【0012】
前記スプリングプレートには、貫通孔が形成され、前記ガイドピンは、前記貫通孔に挿入されて、前記スプリングプレートに嵌合される嵌合部と、前記コイルスプリングの伸縮をガイドするガイド部と、を有し、前記装着孔は、前記嵌合部および前記ガイド部に形成されても良い。
【0013】
前記スプリングプレートの上面側には、前記装着孔が形成され、前記スプリングプレートの下面側には、前記ガイドピンが設けられても良い。
【0014】
前記弾性部材は、コイルスプリングであり、前記工具装着手段は、前記カムスライドの上方に位置し、前記ベースまたは前記ベースに対し非可動に固定された非可動部材に固定され、貫通孔が形成されたスプリングプレートと、前記カムスライドに固定され、前記コイルスプリングの伸縮をガイドするガイドピンと、を有し、前記ガイドピンには、前記リバースカム装置を吊り上げるための工具を装着する装着孔が形成され、前記リバースカム装置を吊り上げるための工具は、前記貫通孔を介して前記ガイドピンに装着されても良い。
【0015】
前記装着孔は、前記スプリングプレートおよび前記ガイドピンの少なくともいずれか一方に複数形成されても良い。
【0016】
前記カムドライバか下死点に位置する状態において、前記スプリングプレートの上面および前記ガイドピンの上面は、前記カムドライバの上面に対して、面一もしくは下側に位置しても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吊り上げて移動させる際のバランスが良く吊り上げるための手段を具備した、作業性の良いリバースカム装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るリバースカム装置の斜視図である。
図2】押込み後の状態のリバースカム装置の断面図である。
図3図2のIII−III線に沿ったスプリングプレートおよびガイドピンの断面図である。
図4】押込み前の状態のリバースカム装置の断面図である。
図5】リバースカム装置の上面図である
図6】第1の変形例におけるスプリングプレートおよびガイドピンの断面図である。
図7】第2の変形例におけるスプリングプレートおよびガイドピンの断面図である
図8】第3の変形例におけるスプリングプレートおよびガイドピンの断面図である。
図9】第4の変形例におけるスプリングプレートおよびガイドピンの断面図である。
図10】第5の変形例におけるスプリングプレート、ガイドピン、第2カムスライド、およびベースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態におけるリバースカム装置について図面を参照しながら説明する。図1は、リバースカム装置の斜視図である。図2は、押込み後の状態を示すリバースカム装置の断面図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、リバースカム装置1は、ベース10と、カムドライバ20と、第1カムスライド30と、第2カムスライド40とを主に備えている。以下、図1及び図2に示すように、紙面上側を上側、その反対側を下側、第2カムスライド40が位置する側を前側、その反対側を後側、リバースカム装置1を前側から見たときの右側を右側、その反対側を左側として説明する。また、本実施形態におけるリバースカム装置1の重心は、図2、4、5に示すように、カムドライバ20よりも第2カムスライド40側に位置する。
【0021】
ベース10は、略箱形状をなし、その底部に配置された底壁部11と、底壁部11の左右両端部側において互いに対向して設けられた一対の側壁部12と、底壁部11の後側端部に配された後壁部13とから構成されている。更に、ベース10は、左右一対の側壁部12の前面12Bにそれぞれ固定された一対のガイドプレート14を有している。
【0022】
図2に示すように、底壁部11上には、スライドプレート11Aが配置されている。
【0023】
一対の側壁部12は、底壁部11の左右両端部側から上側に向かって延びるように設けられ、それらの間に空間12aを形成している。各側壁部12は、前面12Bと、上端面12C(図1)とを有している。
【0024】
各ガイドプレート14は、上下方向に延びた板形状で、各側壁部12の前面12Bに対しボルトにより取り付けられている。
【0025】
各ガイドプレート14の前面14Aには、第2カムスライド40がスムーズに移動可能となるように、摺動層が形成されている。
【0026】
また、各ガイドプレート14は、側壁部12よりも左右方向において内部側に突出する突出部14Bを有している。
【0027】
一対の側壁部12の上端面12Cには、対面する一対の側壁部12間の空間を跨ぐようにスプリングプレート15が取り付けられている。
【0028】
図3は、図2のIII−III線に沿ったスプリングプレート15およびガイドピン16の断面図である。図3に示すように、スプリングプレート15は、左右方向の略中央に、第1上面15Aおよび第1下面15Bに開口するざぐり部15Cを有している。ざぐり部15Cは、貫通孔15dを有し、貫通孔15dは、第1上面15A側に位置する円柱状の小径孔15d1と、第1下面15B側に位置する円柱状の大径孔15d2とを有する。大径孔15d2の内径は、小径孔15d1の内径よりも大きく構成されている。
【0029】
また、スプリングプレート15の左右方向の両端には、ボルト挿入孔15eが形成されている。スプリングプレート15は、ボルト挿通孔15eにボルトを挿通させることにより、ベース10に対し固定される。
【0030】
ガイドピン16は、スプリングプレート15に対し嵌合されている。ガイドピン16は、嵌合部16Aと、ガイド部16Bとを有する。ガイドピン16には、嵌合部16Aの第2上面16Cに開口する装着孔16dが形成されている。装着孔16dには、図4に示すようにリバースカム装置1を吊り上げて移動させる時に、吊り上げるための工具である吊りボルト50が装着される。
【0031】
嵌合部16Aは、ざぐり部15Cに対応した形状をなしている。すなわち、嵌合部16Aは、小径孔15c1に挿入される小径部16Eと、大径孔15C2に挿入される大径部16Fとを有している。小径部16Eの外径は、小径孔15c1の内径よりもわずかに小さく構成され、大径部16Fの外径は、大径孔15c2の内径よりもわずかに小さく構成されている。このように、嵌合部16Aが貫通孔15dに挿入されることにより、嵌合部16Aは、ざぐり部15Cに嵌合される。
【0032】
また、大径部16Fが、ざぐり部15Cのざぐり面15Fに当接することにより、嵌合部16Aの上方への移動が規制される。
【0033】
また、嵌合部16Aの第2上面16Cとスプリングプレート15の第1上面15Aとは、略面一になるように構成され、嵌合部16Aの第2下面16Hとスプリングプレート15の第2上面15Bとは、略面一になるように構成されている。
【0034】
ガイド部16Bは、嵌合部16Aの第2下面16Gから下方に延び、略円柱状をなしている。装着孔16dは、嵌合部16Aおよびガイド部16Bに形成されている。
【0035】
嵌合部16Aの第2下面16Gの下側には、嵌合部16Aと第2カムスライド40との間に介在するコイルスプリング17が配置されている。コイルスプリング17により、ガイドピン16は常に上方に付勢され、ガイドピン16が落ちることなく、ガイドピン16とスプリングプレート15との嵌合状態が維持される。また、ガイドピン16のガイド部16Bは、コイルスプリング17の伸縮をガイドする。
【0036】
また、スプリングプレート15およびガイドピン16により工具装着手段が構成され、工具装着手段は、図4に示すように、カムドライバ20よりも第2カムスライド40側に位置している。さらに、工具装着手段は、リバースカム装置1の重心の上方に位置している。すなわち、リバースカム装置1の上面図である図5に示すように、上面視において(前後方向において)、工具装着手段および重心Gは、カムドライバ20の前端24に対し、第2カムスライド40が位置する側に位置し、上面視において工具装着手段と重心Gとは重なっている。また、工具装着手段は、第2カムスライド40とは別体に設けられている。
【0037】
図2に示すように、後壁部13には、上下方向に延びる円柱状の貫通孔13aが形成されている。後壁部13の下側内部には内部空間13bが形成される。後壁部13の下端部には、挿入孔13cが形成され、挿入孔13cにはストッパープレート13Dが取り付けられている。後壁部13の上端面13Eには、カムドライバ20の後壁部13に対する回転ならびに抜け出しを防止するための回転・抜け出し防止プレート13Fが取り付けられている。回転・抜け出し防止プレート13Fの前端部は、貫通孔13aの後側から貫通孔13a内に突出している。また、貫通孔13a内には、円筒形状であるガイド部材19が設けられ、その内面19Aには摺動層が形成されている。
【0038】
カムドライバ20は、上下方向に延びる略円柱形状をなし、後壁部13の貫通孔13a内に収容され、摺動層を有したガイド部材19により上下方向に移動可能に支持されている。カムドライバ20は、図2に示す上死点の位置と、図4に示す下死点の位置とを移動可能である。また、カムドライバ20は、その上下方向の移動により、内部空間13bに対し前進及び後退可能に構成されている。カムドライバ20は、その下端部に上下方向に対して傾斜する平坦状の第1傾斜面21を有している。また、カムドライバ20には、その後側の上端面23から軸心方向下側の中央にかけて切欠き部22が形成されている。切欠き部22に対し、回転・抜け出し防止プレート17がカムドライバ20の後側から当接することにより、カムドライバ20の貫通孔13a内における回転ならびに貫通穴20内からの抜け出しが防止される。
【0039】
また、図2に示すように、カムドライバ20が下死点に位置する状態において、スプリングプレート15の第1上面15Aおよび嵌合部16Aの第2上面16Cは、カムドライバ20の上端面23に対して、面一もしくは下側に位置する。
【0040】
第1カムスライド30は、底壁部11に取り付けられたスライドプレート11A上において前後方向(横方向)に移動可能に支持されている。第1カムスライド30は、前後方向(横方向)に沿って、内部空間13c内及び空間12a内を移動する。また、第1カムスライド30は、上下方向に対して傾斜する平坦状の第2傾斜面32と、上下方向に対して第2傾斜面32とは異なる方向に傾斜する平坦状の第3傾斜面33とを有している。本実施形態においては第2傾斜面32及び第3傾斜面33の内、第2傾斜面32のみに黒鉛等からなる固体潤滑剤が埋め込まれた形態からなる摺動層が形成されている。
【0041】
第1カムスライド30の第2傾斜面32は、カムドライバ20の第1傾斜面21と平行をなし、第1傾斜面21に対し相対的に摺動可能に当接している。
【0042】
第2カムスライド40は、第1カムスライド30の上側に設けられている。図1図2に示すように、後方部41と、前方部42と、下方部43とを有している。後方部41は、スプリングプレート15の下方に位置している。後方部41には、コイルスプリング17を収容するための円柱状のスプリング収容孔41aが形成されている。コイルスプリング17は、圧縮状態でスプリング収容孔41aに収容され、ガイドピン16を常に上方へ、第2カムスライド40を常に下方へ付勢する。すなわち、スプリングプレート15が、ベース10の一対の側壁部12に固定されているので、スプリングプレート15は、コイルスプリング17の付勢力をガイドピン16を介して受けて、コイルスプリング17が第2カムスライド40を下方に付勢することができる。
【0043】
前方部42は、後方部41の前側(後壁部13と反対側)に位置している。前方部42と後方部41との間には、上面視コの字状の溝部44が形成されている。溝部44には、ガイドプレート14の突出部14Bが挿入されており、主にガイドプレート14により第2カムスライド40の上下方向の摺動移動が支持される。また、前方部42は、図示せぬ被加工部材を加工するための図示せぬ加工部材が取り付けられる取付け部42Aを有する。
【0044】
下方部43は、後方部41及び前方部42の下側に位置している。下方部43は、その後側に上下方向に対して傾斜する平坦状の第4傾斜面43Aを有している。第4傾斜面43Aは、第1カムスライドの第3傾斜面33と平行をなし、第3傾斜面33に対し相対的に摺動可能に当接している。第4傾斜面43Aには、固体潤滑剤が埋め込まれた形態等からなる摺動層が形成されていてもよい。
【0045】
次に、リバースカム装置1の加工動作について図2、4を参照して説明する。なお、加工動作時において、第2カムスライド40の取付け部42Aには、図示せぬ加工部材が取り付けられる。
【0046】
まず、図4の加工動作前のリバースカム装置1において、図示せぬプレス装置によりカムドライバ20が下方へ押される。カムドライバ20が下方に移動すると、カムドライバ20の第1傾斜面21が第1カムスライド30の第2傾斜面32上を摺動し、これにより第1カムスライド30はスライドプレート11A上を前方向に移動する。第1カムスライド30が前方向へ移動すると、第2カムスライド40の第4傾斜面43Aが第1カムスライド30の第3傾斜面33上を移動し、これにより第2カムスライド40が主にガイドプレート14に支持されて上方向へ移動する。第2カムスライド40が上方向に移動することにより、図示せぬ加工部材によって図示せぬ被加工材が加工され、リバースカム装置1は図2に示す状態となる。
【0047】
図2に示すように、カムドライバ20が下死点に位置する状態において、スプリングプレート15の第1上面15Aおよび嵌合部16Aの第2上面16Cは、カムドライバ20の上端面23に対して、面一もしくは下側に位置する。
【0048】
図示せぬ被加工材の加工が終了すると、図示せぬプレス装置によるカムドライバ20への押圧が解除される。これにより、コイルスプリング17の付勢力によって、第2カムスライド40が下方向へ移動し、第1カムスライド30は後方向へ移動し、カムドライバ20は上方向へ移動し、リバースカム装置1は図4に示す状態に戻る。第1カムスライド30が後方向へ移動するときにストッパープレート13Dに衝突するが、ストッパープレート13Dにより衝突時に発生する衝撃及び音が吸収される。
【0049】
また、リバースカム装置1を移動させる時には、図4に示すように、ガイドピン16の装着孔16dに対し、吊りボルト50が装着される。例えば、雄ねじ部が形成された吊りボルト50が、雌ねじ部が形成された装着孔16dに対し、螺合されることにより、吊りボルト50がガイドピン16の装着孔16dに装着される。そして、吊りボルト50に対し、吊り上げ装置のフックが引っ掛けられ、リバースカム装置1が吊り上げられ、移動される。
【0050】
以上のように、本実施形態におけるリバースカム装置1では、図2、4に示したように、工具装着手段に相当するスプリングプレート15およびガイドピン16が、カムドライバ20よりも第2カムスライド40側に位置している。よって、リバースカム装置1を吊り上げる位置を、カムドライバ20の上部にした場合と比較して、上面視において重心に近づけることができるので、リバースカム装置1を吊り上げた際のバランスを良くすることができ、安全性および作業性を向上させることができる。
【0051】
また、工具装着手段に相当するスプリングプレート15およびとガイドピン16は、リバースカム装置1の重心Gの上方に設けられているので、リバースカム装置1を吊り上げた際にリバースカム装置1があまり傾くことがなく、安全性をさらに向上させることができる。
【0052】
また、装着孔16dは、ガイドピン16に形成されている。ガイドピン16は、従来からリバースカム装置1が備える部材であるので、吊りボルト50を装着するための装着孔16dをガイドピン16に形成したとしても、リバースカム装置1の部品点数が増加することはない。
【0053】
また、装着孔16dは、ガイドピン16の嵌合部16Aおよびガイド部16Bに形成されている。よって、スプリングプレート15を薄くすることができる。
【0054】
また、カムドライバ20が下死点に位置する状態において、スプリングプレート15の第1上面15Aおよび嵌合部16Aの第2上面16Cは、カムドライバ20の上端面23に対して、面一もしくは下側に位置する。よって、プレス装置によりカムドライバ20を下死点まで押したとしても、スプリングプレート15がプレス装置に干渉しない。従って、プレス装置の押込み形状に自由度を持たせることができる。
【0055】
また、上述した本発明の各実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0056】
(第1変形例)
例えば、スプリングプレート15およびガイドピン16は、図6に示すような、スプリングプレート115およびガイドピン116であっても良い。
【0057】
図6に示すように、スプリングプレート115の第1上面115A側には、装着孔115gが形成され、スプリングプレート115の第1下面115B側には、ピン取付け孔115hが形成されている。装着孔115gには、その内周に雌ねじが形成され、吊り上げボルト50(図4)が装着可能である。ピン取付け孔115hの内周には雌ねじが形成されている。
【0058】
ガイドピン116は、嵌合部116Aおよびガイド部116Bを有する。嵌合部116Aの外周には、雄ねじが形成され、嵌合部116Aが、スプリングプレート114のピン取付け孔115hに螺合されることにより、ガイドピン116がスプリングプレート115に対し取り付けられる。
【0059】
ガイド部116Bは、スプリングプレート115の第1下面115Bから下方に延びている。スプリングプレート115およびガイドピン116により、工具装着手段が構成される。
【0060】
かかる構成では、スプリングプレート115を薄くすることはできないが、他の効果においては、第1実施形態のスプリングプレート15およびガイドピン16と同様の効果を奏することができる。
【0061】
(第2変形例)
スプリングプレート15およびガイドピン16は、図7に示すような、スプリングプレート215およびガイドピン216であっても良い。
【0062】
図7に示すように、スプリングプレート215は、左右方向の略中央に、第1上面215Aおよび第1下面215Bに開口するざぐり部215Cを有している。ざぐり部215Cは、貫通孔215dを有し、貫通孔215dは、第1上面215A側に位置する円柱状の小径孔215d1と、第1下面215B側に位置する円柱状の大径孔215d2とを有する。大径孔215d2の内径は、小径孔215d1の内径よりも大きく構成されている。
【0063】
ガイドピン216は、スプリングプレート215に対し嵌合されている。ガイドピン216は、嵌合部216Aと、ガイド部216Bとを有する。ガイドピン216には、スプリングプレート215の小径孔215d2に連通する装着孔216dが形成されている。吊りボルト50(図4)は、小径孔215d1に挿通され、装着孔216dに装着される。
【0064】
嵌合部216Aは、ざぐり部215Cの大径孔215d2に対応した円盤形をなしている。嵌合部216Aの外径は、大径孔215c2の内径よりもわずかに小さく構成されている。このように、嵌合部216Aが貫通孔215dに挿入されることにより、嵌合部216Aは、ざぐり部215Cに嵌合される。
【0065】
また、嵌合部216Aが、ざぐり部215Cのざぐり面215Fに当接することにより、嵌合部216Aの上方への移動が規制される。
【0066】
ガイド部216Bは、嵌合部216Aの第2下面216Gから下方に延び、略円柱状をなしている。装着孔216dは、嵌合部216Aおよびガイド部216Bに形成されている。スプリングプレート215およびガイドピン216により、工具装着手段が構成される。
【0067】
かかる構成によっても、第1の実施形態のスプリングプレート15およびガイドピン16を備えるリバースカム装置1と同様の効果を奏することができる。
【0068】
(第3変形例)
スプリングプレート15およびガイドピン16は、図8に示すような、スプリングプレート315およびガイドピン316であっても良い。
【0069】
図8に示すように、スプリングプレート315には、その第1上面315Aおよび第1下面315Bに開口する貫通孔315dが形成されている。貫通孔315dの内周には、雌ねじが形成されている。
【0070】
ガイドピン316は、嵌合部316Aおよびガイド部316Bとを有する。ガイドピン316には、嵌合部316Aの第2上面316Cに開口する装着孔316dが形成されている。装着孔316dには、吊りボルト50(図4)が装着可能である。嵌合部316Aの外周には、雄ねじが形成されている。嵌合部316Aが、スプリングプレート314の貫通孔315dに螺合されることにより、スプリングプレート315に対しガイドピン316が取り付けられる。
【0071】
ガイド部316Bは、嵌合部316Aから下方に延び、略円柱状をなしている。装着孔316dは、嵌合部316Aおよびガイド部316Bに形成されている。嵌合部316Aの第2上面316Cとスプリングプレート315の第1上面315Aとは、略面一になるように構成されている。また、スプリングプレート315およびガイドピン316により、工具装着手段が構成される。
【0072】
かかる構成によっても、第1の実施形態のスプリングプレート15およびガイドピン16を備えるリバースカム装置1と同様の効果を奏することができる。
【0073】
(第4変形例)
スプリングプレート15およびガイドピン16は、図9に示すような、スプリングプレート415およびガイドピン416であっても良い。
【0074】
図9に示すように、スプリングプレート415には、その第1上面415Aおよび第1下面415Bに開口する複数(図9では2ヶ所)の装着孔415gおよび貫通孔415dが形成されている。各孔415g、415dの内周には、雌ねじが形成されている。各装着孔415gには、吊り上げボルト50(図4)が装着可能である。
【0075】
ガイドピン416は、嵌合部416Aおよびガイド部416Bを有する。嵌合部416Aの外周には、雄ねじが形成され、嵌合部416Aが、スプリングプレート415の貫通孔415dに螺合されることにより、スプリングプレート415に対しガイドピン416が取り付けられる。
【0076】
ガイド部416Bは、スプリングプレート415の第1下面415Bから下方に延びている。スプリングプレート415およびガイドピン416により、工具装着手段が構成される。
【0077】
かかる構成によっても、第1の実施形態のスプリングプレート15およびガイドピン16を備えるリバースカム装置1と同様の効果を奏することができる。さらに、装着孔415gが複数形成されているので、リバースカム装置1を大型化させたときに、複数の箇所でリバースカム装置1を吊り上げることができ、リバースカム装置1を大型化したとしても、安定して移動させることができる。なお、ガイドピン416に対し複数の装着孔を形成しても良い。
【0078】
(第5変形例)
スプリングプレート15およびガイドピン16は、図10に示すような、スプリングプレート515およびガイドピン516であっても良い。
【0079】
図10に示すように、スプリングプレート515には、その第1上面515Aおよび第1下面515Bに開口する貫通孔515dが形成されている。
【0080】
ガイドピン516は、略円柱形状をなしている。ガイドピン516には、その第2上面516Cに開口する装着孔516dが形成され、下端部516Iの外周には雄ねじが形成されている。そして、ガイドピン516の下端部516Iが、後方部41のスプリング収容孔41aの底面41Bに形成されたねじ孔41cに螺合されることにより、ガイドピン516は、第2カムスライド40に固定される。
【0081】
そして、スプリングプレート515の貫通孔515dを介して、吊りボルト50(図4)が、ガイドピン516の装着孔516dに装着される。スプリングプレート515およびガイドピン516により、工具装着手段が構成される。
【0082】
かかる構成によっても、第1の実施形態のスプリングプレート15およびガイドピン16を備えるリバースカム装置1と同様の効果を奏することができる。
【0083】
また、上記の実施形態では、カムドライバ20の下方向への移動を第2カムスライド40へ伝達する部材は、第1カムスライド30であったが、第1カムスライド30に代えて、円弧型移動伝達部材を用いても良い。すなわち、ベース10の底壁部11に断面円弧状の曲面を形成し、当該曲面上に円弧型移動伝達部材を載置して、円弧型移動伝達部材の一端にカムドライバ20を連結し、他端に第2カムスライド40を連結して、カムドライバ20の下方向への移動が、円弧型移動伝達部材を介して、第2カムスライド40へ伝達されても良い。
【0084】
また、上記の実施形態では、第2カムスライド40の移動方向は、垂直方向(上下方向)であったが、垂直方向に対し交差する方向であっても良い。
【0085】
また、図10に示した第5変形例では、ガイドピン516を第2カムスライド40に固定したが、吊りボルト50を第2カムスライド40に固定しても良い。この場合、吊りボルト50における下側部分の円柱部が、コイルスプリング17をガイドするガイドピンとして機能し、上側部分の環状部が、リバースカム装置1を吊り上げるための工具が装着される装着部として機能する。また、この場合、吊り上げるための工具は、吊りボルト50の環状部に引っ掛けるフック等となる。
【0086】
また、図8に示した第3変形例において、ガイドピン316に装着孔316dを形成せず、吊り上げるための工具であるフック等を引っ掛けることができる半環状の突起をスプリングプレート315に設けても良い。この場合、半環状の突起が、装着部として機能する。
【0087】
また、上記の実施形態において、スプリングプレート15は、ベース2に固定されていたが、ベース2に対し可動不能(非可動)に固定されたガイドプレート14に固定されても良い。
【0088】
また、ベース2の一部に、吊り上げるための工具であるフック等を引っ掛けることができる半環状の突起を設けても良い。この場合、半環状の突起が工具装着手段に相当する。
【符号の説明】
【0089】
1:リバースカム装置、 10:ベース、 15、115、215、315、415、515:スプリングプレート、 15d、215d、315d、415d、515d:貫通孔、 16、116、216、316、416、516:ガイドピン、 16A、116A、216A、316A、416A:嵌合部、 16B、116B、216B、316B、416B:ガイド部、 16d、115g、216d、316d、415g、516d:装着孔、 17:コイルスプリング、 20:カムドライバ、 40:第2カムスライド、 50:装着部、 G:重心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10