特許第6246601号(P6246601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246601
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20171204BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B60C11/03 C
   B60C11/03 200A
   B60C11/13 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-5385(P2014-5385)
(22)【出願日】2014年1月15日
(65)【公開番号】特開2015-131620(P2015-131620A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】武居 吾空
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−319023(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0199943(US,A1)
【文献】 特開2010−215075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドセンター部に位置する内端部からタイヤ回転方向と反対側へタイヤ幅方向に対して斜めに延びる第1溝部と、前記第1溝部からタイヤ幅方向外側へ該第1溝部よりもタイヤ幅方向に対する角度が小さくなるようにトレッド端まで延びる第2溝部と、を備え、トレッドにタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられた第1主溝と、
前記トレッドに設けられ、前記第1溝部からタイヤ回転方向と反対側へ該第1溝部の法線方向に延びて前記トレッドセンター部で終端する第1副溝と、
前記トレッドに設けられ、前記第2溝部からタイヤ回転方向と反対側へトレッド端側に向かって延びてタイヤ回転方向と反対側に隣接する前記第1主溝に到達せずに終端し、タイヤ幅方向に対する角度が前記第2溝部よりも大きい第2副溝と、
前記トレッドのタイヤ周方向に隣接する前記第1主溝間に設けられ、トレッドセンター部に位置する内端部からタイヤ回転方向と反対側へタイヤ幅方向に対して傾斜しながら前記トレッド端まで延びる第2主溝と、
前記トレッドに設けられ、前記第2主溝の内端部からタイヤ回転方向と反対側へ延びてタイヤ回転方向と反対側に隣接する前記第1主溝の第1溝部と交差する第3副溝と、
を有し、
前記第2主溝は、タイヤ回転方向側に隣接する前記第1主溝から延びる前記第2副溝と交差している、回転方向が指定された空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第3副溝は、タイヤ回転方向と反対側に隣接する前記第1主溝の第1溝部の法線方向に延びている、請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1溝部のタイヤ幅方向に対する角度は、60〜90度の範囲内であり、
前記第2溝部のタイヤ幅方向に対する角度は、0〜20度の範囲内である、請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
回転方向が指定されたタイヤの中には、タイヤ赤道側の端部からタイヤ回転方向と反対側で且つタイヤ幅方向外側へ向かって延びる複数本の傾斜溝と、タイヤ赤道側の端部からタイヤ回転方向と反対側で且つタイヤ幅方向外側へ向かって延びて傾斜溝と交差する横断溝と、をトレッドに形成したタイヤがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4656239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記タイヤでは、傾斜溝と傾斜副溝によってウエット性能と雪上性能を確保できるが、雪上性能については未だ改良の余地がある。
【0005】
本発明は、雪上性能を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の空気入りタイヤは、回転方向が指定された空気入りタイヤであって、トレッドセンター部に位置する内端部からタイヤ回転方向と反対側へタイヤ幅方向に対して斜めに延びる第1溝部と、前記第1溝部からタイヤ幅方向外側へ該第1溝部よりもタイヤ幅方向に対する角度が小さくなるようにトレッド端まで延びる第2溝部と、を備え、トレッドにタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられた第1主溝と、前記トレッドに設けられ、前記第1溝部からタイヤ回転方向と反対側へ該第1溝部の法線方向に延びて前記トレッドセンター部で終端する第1副溝と、前記トレッドに設けられ、前記第2溝部からタイヤ回転方向と反対側へトレッド端側に向かって延びてタイヤ回転方向と反対側に隣接する前記第1主溝に到達せずに終端し、タイヤ幅方向に対する角度が前記第2溝部よりも大きい第2副溝と、前記トレッドのタイヤ周方向に隣接する前記第1主溝間に設けられ、トレッドセンター部に位置する内端部からタイヤ回転方向と反対側へタイヤ幅方向に対して傾斜しながら前記トレッド端まで延びる第2主溝と、前記トレッドに設けられ、前記第2主溝の内端部からタイヤ回転方向と反対側へ延びてタイヤ回転方向と反対側に隣接する前記第1主溝の第1溝部と交差する第3副溝と、を有し、前記第2主溝は、タイヤ回転方向側に隣接する前記第1主溝から延びる前記第2副溝と交差している
【0007】
請求項1に記載の空気入りタイヤでは、第1主溝をトレッドセンター部に位置する内端部からタイヤ回転方向と反対側へトレッド端まで延ばしていることから、雪上路面走行時に第1主溝によって長い雪柱を形成することができる。これにより、雪柱のせん断力(以下、適宜「雪柱せん断力」と記載する。)が向上し、雪柱せん断力を利用するタイヤの雪上性能(雪上加速性能及び雪上制動性能)が向上する。
【0008】
また、上記空気入りタイヤでは、第1副溝を第1溝部からタイヤ回転方向と反対側へ該第1溝部の法線方向に延ばしてトレッドセンター部で終端させることから、雪上路面走行時に第1副溝内に雪を留めることができるため、第1副溝によって形成される雪柱のせん断力によって雪上加速性能が向上する。また、雪上制動時には、第1溝部と第1副溝との合流部分で第1溝部内の雪と第1副溝内の雪が押し付け合って強固な雪柱が形成されるため、雪上制動性能が向上する。
【0009】
また、第1副溝を第1溝部の法線方向に延ばしていることから、第1溝部と第1副溝との間に形成される陸部角部の剛性を確保できる。これにより、第1溝部と第1副溝とで形成される陸部の接地性が向上し、雪上操縦安定性が向上する。
なお、ここでいう「第1溝部の法線方向」とは、第1溝部の溝中心線の法線に沿った方向及び該法線に対して±10度の範囲内で傾斜する方向を含む。
【0010】
以上のことから、請求項1に記載の空気入りタイヤによれば、雪上性能(雪上加速性能、雪上制動性能及び雪上操縦安定性)を向上させることができる。
【0012】
また、請求項に記載の空気入りタイヤでは、第2副溝を第2溝部からタイヤ回転方向と反対側へトレッド端側に向かって延ばすことから、雪上路面走行時には、第2副溝に雪が留まるため雪上加速性能が向上し、雪上制動時には、第2溝部と第2副溝との合流部分で第2溝部内の雪と第2副溝内の雪が押し付け合って強固な雪柱が形成されるため雪上制動性能が向上する。また、第2副溝は、タイヤ幅方向に対する角度が第2溝部よりも大きいため、第2溝部と比べて、タイヤ幅方向の入力に対してエッジ効果を発揮できる。これにより、雪上操縦安定性が向上する。
【0014】
さらに、請求項に記載の空気入りタイヤでは、トレッドのタイヤ周方向に隣接する第1主溝間に第2主溝を設けることから、雪上路面走行時に第2主溝で形成した雪柱のせん断力により、雪上性能が向上する。
また、第3副溝を第2主溝の内端部からタイヤ回転方向と反対側へ延ばしてタイヤ回転方向と反対側に隣接する第1主溝の第1溝部と交差させることから、雪上路面走行時に第1溝部と第3副溝とに跨る雪柱を形成することができる。この雪柱のせん断力により、雪上加速性能及び雪上制動性能が向上する。
またさらに、請求項1に記載の空気入りタイヤでは、第2主溝をタイヤ回転方向側に隣接する第1主溝から延びる第2副溝と交差させていることから、雪上路面走行時に第2主溝とこの第2主溝と交差する第2副溝とに跨る雪柱を形成することができる。この雪柱のせん断力により、雪上加速性能及び雪上制動性能が向上する。
【0015】
本発明の請求項に記載の空気入りタイヤは、請求項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記第3副溝は、タイヤ回転方向と反対側に隣接する前記第1主溝の第1溝部の法線方向に延びている。
【0016】
請求項に記載の空気入りタイヤでは、第3副溝をタイヤ回転方向と反対側に隣接する第1主溝の第1溝部の法線方向に延ばしていることから、第3副溝とこの第3副溝と交差する第1溝部との間に形成される陸部角部の剛性を確保できる。これにより、第3副溝とこの第3副溝と交差する第1溝部との間で形成される陸部の接地性が向上し、雪上操縦安定性が向上する。
【0019】
本発明の請求項に記載の空気入りタイヤは、請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記第1溝部のタイヤ幅方向に対する角度は、60〜90度の範囲内であり、前記第2溝部のタイヤ幅方向に対する角度は、0〜20度の範囲内である。
【0020】
請求項に記載の空気入りタイヤでは、第1溝部のタイヤ幅方向に対する角度を60〜90度の範囲内とすることで、第1溝部のエッジ(開口縁部)がタイヤ幅方向に対して高いエッジ効果を発揮できるため、雪上操縦安定性が向上する。また、第2溝部のタイヤ幅方向に対する角度を0〜20度の範囲内とすることで、第2溝部のエッジ(開口縁部)がタイヤ周方向に対して高いエッジ効果を発揮できるため、雪上加速性能及び雪上制動性能が向上する。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の空気入りタイヤは、雪上性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤのトレッド展開図である。
図2図1の矢印2で指し示す部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」と記載する。)10について説明する。本実施形態のタイヤ10は、回転方向が指定されたタイヤであり、主に乗用車用に用いられるタイヤである。なお、本発明はこの構成に限定されるものではなく、その他の用途の空気入りタイヤに用いてもよい。例えば、ライトトラック用、航空機用、及び、建築車両用などの空気入りタイヤとして用いてもよい。
【0024】
図1には、タイヤ10のトレッド12の展開図が示されている。なお、図1中の矢印Xはタイヤ10の軸(回転軸)と平行な方向であるタイヤ幅方向を示し、矢印Yはタイヤ10の周方向(以下、適宜「タイヤ周方向」と記載する。)を示している。また、符号CLはタイヤ赤道を示し、符号Rはタイヤ10の回転方向を示している。本実施形態では、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道CL側を「タイヤ幅方向内側」、タイヤ赤道CLと反対側を「タイヤ幅方向外側」と記載する。
【0025】
また、図1中の符号12Eは、トレッド12のトレッド幅TWの端部(タイヤ幅方向の端部)であるトレッド端を示している。
【0026】
本実施形態のタイヤ10は、内部構造として従来公知の空気入りタイヤの内部構造と同様のものを用いることができる。このため、タイヤ10の内部構造に関しては、説明を省略する。
【0027】
図1に示すように、タイヤ10の路面との接触部位を構成するトレッド12には、タイヤ周方向に間隔(本実施形態では一定間隔)をあけて複数の第1主溝14が設けられている。この第1主溝14は、トレッドセンター部12Cに位置する内端部14Aからタイヤ回転方向と反対側へタイヤ幅方向に対して斜めに延びる第1溝部16と、第1溝部16からタイヤ幅方向外側へ第1溝部16よりもタイヤ幅方向に対する角度が小さくなるようにトレッド端12Eまで延びる第2溝部18と、を含んで構成されている。
【0028】
なお、本実施形態では、タイヤ赤道CLを中心にタイヤ幅方向両側に1/2×TWの範囲をトレッドセンター部12Cとしている。そして、トレッドセンター部12Cのタイヤ幅方向両側をトレッドショルダー部12Sとしている。
【0029】
図2に示されるように、第1溝部16は、タイヤ幅方向に対して角度θ1で傾斜している。この角度θ1は、第1主溝14の溝幅の中心を通る線(以下、適宜「溝中心線」と記載する。)14CLの第1溝部16に対応する部分(以下、適宜「溝部中心線」)16CLでのタイヤ幅方向に対する鋭角側の角度であり、60〜90度の範囲内で設定されている。
【0030】
また、第2溝部18は、タイヤ幅方向に対して角度θ1よりも小さい角度θ2で傾斜している。この角度θ2は、第1主溝14の溝中心線14CLの第2溝部18に対応する部分(以下、適宜「溝部中心線」)18CLでのタイヤ幅方向に対する鋭角側の角度であり、0〜20度の範囲内で設定されている。
【0031】
また、第1主溝14は、溝幅が内端部14A側よりもトレッド端12E側で広くなっている。
【0032】
図1及び図2に示されるように、トレッド12には、第1溝部16からタイヤ回転方向と反対側へ第1溝部16の法線方向に延びてトレッドセンター部12Cで終端する第1副溝20が形成されている。具体的には、第1副溝20は、後述するタイヤ赤道CL上に形成されるリブ状陸部30内で終端している。また、第1副溝20は、第1溝部16の延在方向(溝部中心線16CLに沿った方向)に間隔をあけて複数(本実施形態では、2つ)設けられている。
【0033】
なお、ここでいう「第1溝部16の法線方向」は、溝部中心線16CLの法線16NLに沿った方向及び該法線16NLに対して±10度の範囲内で傾斜する方向を含む(図2参照)。
【0034】
本実施形態では、図2に示されるように、第1副溝20の溝中心線20CLが第1溝部16の法線16NLに対して角度θ3で傾斜している。なお、第1副溝20の溝中心線20CLは、第1副溝20の溝幅の中心を通る線である。また、角度θ3は、法線16NLに対して−10度〜10度の範囲内で設定されている。
【0035】
図1及び図2に示されるように、トレッド12には、第2溝部18からタイヤ回転方向と反対側へトレッド端12E側に向かって延びてタイヤ回転方向と反対側に隣接する第1主溝14に到達せずに終端する第2副溝22が形成されている。具体的には、第2副溝22は、リブ状陸部30よりもタイヤ幅方向外側に形成される後述するリブ状陸部32内で終端している。また、第2副溝22は、タイヤ幅方向に対する角度θ4が第2溝部18の角度θ2よりも大きくされている。この角度θ4は、第2副溝22の溝幅の中心を通る線(以下、適宜「溝中心線」と記載する。)22CLのタイヤ幅方向に対する角度であり、70〜110度の範囲内で設定されている。
【0036】
また、トレッド12には、タイヤ周方向に隣接する第1主溝14間にトレッドセンター部12Cに位置する内端部24Aからタイヤ回転方向と反対側へタイヤ幅方向に対して傾斜しながらトレッド端12Eまで延びる第2主溝24が形成されている。本実施形態では、第2主溝24は、第1主溝14の第2溝部18と略平行に延びている。
また、第2主溝24は、タイヤ回転方向側に隣接する第1主溝14から延びる第2副溝22と交差している。
【0037】
さらに、トレッド12には、第2主溝24の内端部24Aからタイヤ回転方向と反対側へ延びてタイヤ回転方向と反対側に隣接する第1主溝14の第1溝部16と交差する第3副溝26が形成されている。この第3副溝26は、タイヤ回転方向と反対側に隣接する第1主溝14の第1溝部16に対して該第1溝部16から延びる第1副溝20よりも内端部14A側で交差している。また、第3副溝26は、後述するタイヤ赤道CL上に形成されるリブ状陸部30内で終端している。なお、本実施形態では、第3副溝26がタイヤ赤道CLを横切っているが、本発明はこの構成に限定されず、第3副溝26はタイヤ赤道CLを横切る手前で終端する構成であってもよい。
【0038】
また、第3副溝26は、タイヤ回転方向と反対側に隣接する第1主溝14の第1溝部16の法線方向に延びている。本実施形態では、図2に示されるように、第3副溝26の溝中心線26CLが第1溝部16の法線16NLに対して角度θ5で傾斜している。なお、第3副溝26の溝中心線26CLは、第3副溝26の溝幅の中心を通る線である。また、角度θ5は、角度θ3と同様に、法線16NLに対して−10度〜10度の範囲内で設定されている。
【0039】
図1に示されるように、第1主溝14、第1副溝20、第2副溝22、第2主溝24及び第3副溝26は、タイヤ赤道CLを挟んでタイヤ幅方向両側にそれぞれ設けられている。また、本実施形態では、タイヤ赤道CLを挟んで一方側の第1主溝14と、他方側の第1主溝14とがタイヤ周方向に半ピッチずれて配置されている。なお、ここでいう半ピッチとは、タイヤ周方向に隣接する第1主溝14間の距離を1ピッチとしたときの半ピッチである。
【0040】
また、本実施形態のトレッド12には、接地時に閉じない溝(溝壁面同士が接触しない溝)として、第1主溝14、第1副溝20、第2副溝22、第2主溝24及び第3副溝26のみが形成されている。なお、本発明は上記構成に限定されず、トレッド12に第1主溝14、第1副溝20、第2副溝22、第2主溝24及び第3副溝26以外に別の溝を形成してもよい。
【0041】
トレッド12には、タイヤ赤道CL上に、タイヤ周方向に連続するリブ状陸部30が形成されている。なお、ここでいう「タイヤ周方向に連続するリブ状陸部30」には、接地面内においてリブ状陸部30がタイヤ周方向に連続する状態を含む。また、リブ状陸部30は、タイヤ幅方向両側の第1主溝14、タイヤ幅方向両側の第2副溝22、タイヤ幅方向両側の第2主溝24及びタイヤ幅方向両側の第3副溝26によってトレッド12に区画された陸部である。
【0042】
また、トレッド12には、リブ状陸部30よりもタイヤ幅方向外側に、タイヤ幅方向に連続するリブ状陸部32とリブ状陸部34が形成されている。このリブ状陸部32は、第2主溝24、この第2主溝24に対してタイヤ回転方向と反対側に隣接する第1主溝14及び第3副溝26によってトレッド12に区画された陸部である。一方、リブ状陸部34は、第2主溝24、この第2主溝24に対してタイヤ回転方向側に隣接する第1主溝14及び第2副溝22によってトレッド12に区画された陸部である。なお、リブ状陸部32とリブ状陸部34は、タイヤ周方向に隣接している。
【0043】
図1に示されるように、リブ状陸部30には、タイヤ周方向に対して交差する方向(本実施形態では、タイヤ幅方向に対して斜め方向)に延びるサイプ40がタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。
なお、ここでいう「サイプ」は、接地時に溝壁面同士が接触して閉じる程度の溝幅に設定された細溝を指している。
【0044】
リブ状陸部32には、タイヤ周方向に対して交差する方向(本実施形態では、タイヤ幅方向)に延びるサイプ42がタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。
また、リブ状陸部34には、タイヤ周方向に対して交差する方向(本実施形態では、タイヤ幅方向)に延びるサイプ44がタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0045】
また、リブ状陸部30は、タイヤ10の第1主溝14の1ピッチの範囲内において、踏面の面積が最も大きくされている。すなわち、タイヤ10の第1主溝14の1ピッチの範囲内においては、リブ状陸部30は、リブ状陸部32及びリブ状陸部34よりも踏面の面積が大きくされている。
【0046】
次に、タイヤ10の作用効果について説明する。
タイヤ10では、第1主溝14をトレッドセンター部12Cに位置する内端部14Aからタイヤ回転方向と反対側へトレッド端12Eまで延ばしていることから、雪上路面走行時に第1主溝14によって長い雪柱を形成することができる。これにより、雪柱のせん断力(以下、適宜「雪柱せん断力」と記載する。)が向上し、雪柱せん断力を利用するタイヤ10の雪上性能(雪上加速性能及び雪上制動性能)が向上する。また、ウエット路面走行時には、第1主溝14内を、内端部14A側からトレッド端12E側へ向かって排水がスムーズに流れるため、タイヤ10の排水性が向上する。さらに、第1主溝14の溝幅を内端部14A側よりもタイヤ幅方向に対する角度が小さいトレッド端12E側で広くしていることから、トレッド端12E側で形成される雪柱が太くなり、雪上加速性能及び雪上制動性能が向上する。
【0047】
また、第1主溝14は、内端部14Aからタイヤ回転方向と反対側へタイヤ幅方向に対して角度θ1で傾斜しながら延びる第1溝部16と、第1溝部16からタイヤ幅方向外側へ第1溝部16よりもタイヤ幅方向に対する角度が小さくなるようにトレッド端12Eまで延びる第2溝部18と、を含んで構成されることから、第1主溝14のエッジ14B(図1参照)及びエッジ14C(図1参照)がタイヤ周方向及びタイヤ幅方向の広い範囲でエッジ効果を発揮するため、エッジ効果による雪上性能が向上する。さらに、ウエット路面走行時に、第1主溝14内の溝の流れがスムーズになるため、排水性能が向上する。なお、第1主溝14のエッジ14Bは、第1主溝14のタイヤ回転方向側の開口縁部であり、第1主溝14のエッジ14Cは、第1主溝14のタイヤ回転方向側と反対側の開口縁部である。
【0048】
また、タイヤ10では、第1副溝20を第1溝部16からタイヤ回転方向側へ該第1溝部16の法線方向に延ばしてリブ状陸部30内で終端させることから、雪上路面走行時に第1副溝20内に雪を留めるため、第1副溝20によって形成される雪柱のせん断力によって雪上加速性能が向上する。また、雪上制動時には、第1溝部16と第1副溝20との合流部分で第1溝部16内の雪と第1副溝20内の雪が押し付け合って強固な雪柱が形成されるため、雪上制動性能が向上する。
また、第1副溝20を第1溝部16の法線方向に延ばしていることから、第1溝部16と第1副溝20との間に形成される陸部角部(リブ状陸部30の角部)の剛性を確保できる。これにより、リブ状陸部30の接地性が向上し、雪上操縦安定性が向上する。
【0049】
タイヤ10では、第2溝部18からタイヤ回転方向と反対側へトレッド端12E側に向かって第2副溝22を延ばすことから、雪上路面走行時には、第2副溝22に雪が留まるため雪上加速性能が向上し、雪上制動時には、第2溝部18と第2副溝22との合流部分で第2溝部18内の雪と第2副溝22内の雪が押し付け合って強固な雪柱が形成されるため雪上制動性能が向上する。また、第2副溝22は、タイヤ幅方向に対する角度が第2溝部18よりも大きいため、第2溝部18と比べて、タイヤ幅方向の入力に対してエッジ効果を発揮できる。これにより、雪上操縦安定性が向上する。
【0050】
また、タイヤ10では、第1溝部16のタイヤ幅方向に対する角度θ1を60〜90度の範囲内とすることで、第1溝部16のエッジ(開口縁部)がタイヤ幅方向に対して高いエッジ効果を発揮できるため、雪上操縦安定性が向上する。また、第2溝部18のタイヤ幅方向に対する角度θ2を0〜20度の範囲内とすることで、第2溝部18のエッジ(開口縁部)がタイヤ周方向に対して高いエッジ効果を発揮できるため、雪上加速性能及び雪上制動性能が向上する。
【0051】
タイヤ10では、トレッド12のタイヤ周方向に隣接する第1主溝14間に第2主溝24を設けることから、雪上路面走行時に第2主溝24で形成した雪柱のせん断力により、雪上性能が向上する。また、第3副溝26を第2主溝24の内端部24Aからタイヤ回転方向と反対側へ延ばしてタイヤ回転方向と反対側に隣接する第1主溝14の第1溝部16と交差させることから、雪上路面走行時に第1溝部16と第3副溝26とに跨る雪柱を形成することができる。この雪柱のせん断力により、雪上加速性能及び雪上制動性能が向上する。
【0052】
また、タイヤ10では、第3副溝26をタイヤ回転方向と反対側に隣接する第1主溝14の第1溝部16の法線方向に延ばしていることから、第3副溝26とこの第3副溝26と交差する第1溝部16との間に形成される陸部角部(リブ状陸部30の角部)の剛性を確保できる。これにより、第3副溝26とこの第3副溝26と交差する第1溝部16との間で形成されるリブ状陸部30の接地性が向上し、雪上操縦安定性が向上する。
【0053】
タイヤ10では、第2主溝24をタイヤ回転方向側に隣接する第1主溝14から延びる第2副溝22と交差させていることから、雪上路面走行時に第2主溝24とこの第2主溝24と交差する第2副溝22とに跨る雪柱を形成することができる。この雪柱のせん断力により、雪上加速性能及び雪上制動性能が向上する。
【0054】
タイヤ10では、リブ状陸部30にサイプ40を設け、リブ状陸部32にサイプ42、リブ状陸部34にサイプ44を設けていることから、サイプのエッジ効果により氷雪上路面での制動性及び加速性が向上する。
【0055】
タイヤ10では、トレッドセンター部12C、特にタイヤ赤道CL上にタイヤ周方向に連続するリブ状陸部30を形成することから、トレッド12の中で最も接地長が長くなるトレッドセンター部12Cの接地面積が増え、雪上操縦安定性が向上する。また、リブ状陸部30にサイプ40を設けることで、高いエッジ効果が得られる。
【0056】
さらに、タイヤ10では、タイヤ幅方向の一方側の第1主溝14と他方側の第1主溝14をタイヤ周方向に半ピッチずらして配置していることから、タイヤ赤道CLを挟んで両側の第1主溝14によるエッジ効果をバランスよく発生させることができる。
【0057】
以上のことから、タイヤ10によれば、雪上性能(雪上加速性能、雪上制動性能及び雪上操縦安定性)を向上させることができる。
【0058】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
10 タイヤ(空気入りタイヤ)
12 トレッド
12C トレッドセンター部
12E トレッド端
14 第1主溝
14A 内端部
16 第1溝部
18 第2溝部
20 第1副溝
22 第2副溝
24 第2主溝
24A 内端部
26 第3副溝
CL タイヤ赤道
X タイヤ幅方向
Y タイヤ周方向
R タイヤ回転方向
図1
図2