(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246610
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】散気装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/20 20060101AFI20171204BHJP
B01F 3/04 20060101ALI20171204BHJP
B01F 5/06 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
C02F3/20 D
B01F3/04 A
B01F5/06
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-24634(P2014-24634)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-150475(P2015-150475A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 淳
(72)【発明者】
【氏名】清宮 正章
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−071288(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3175355(JP,U)
【文献】
特開2007−014899(JP,A)
【文献】
特開2007−000777(JP,A)
【文献】
特開2010−274233(JP,A)
【文献】
米国特許第04842779(US,A)
【文献】
特開2013−240798(JP,A)
【文献】
実開平03−043400(JP,U)
【文献】
特開2010−104900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−3/34
B01F 3/04
B01F 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のベースプレートに対面配置されるシート状の散気膜の四辺縁部が、前記ベースプレートに固定枠により前記ベースプレート共々挟持されて定着されてなる散気装置において、
前記散気膜が、多数の小孔が形成された有孔膜体部と、前記有孔膜体部に形成された小孔数より少ない小孔が形成された少数孔膜体部とから構成され、前記固定枠との接触部近傍に配置される部分の散気膜が少数孔膜体部でなることを特徴とする散気装置。
【請求項2】
前記散気膜の少数孔膜体部に設けられた孔数が、有孔膜体部に設けられた小孔の数の単位面積当たりの1/3以下であることを特徴と請求項1に記載の散気装置。
【請求項3】
前記散気膜の少数孔膜体部が、前記固定枠の接触部から1〜5mmの幅を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の散気装置。
【請求項4】
前記散気膜の少数孔膜体部が、散気膜の長手方向にのみ設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の散気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理施設等の生物反応タンク内などで液体内に空気や酸素など気体を供給する散気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水、し尿、産業排水などの有機性汚水を好気性微生物により生物学的に処理して浄化する好気性生物処理においては、曝気槽内の被処理液中に気泡状の空気または酸素を吹き込んで曝気するための散気装置が設置されている。
この曝気槽に設置される散気装置としては、近年、多数の微細気孔(微細気泡噴出孔)を有する散気膜(メンブレン)を備えたパネル型の散気装置が知られている。
このパネル型の散気装置には、例えば
図9の斜視図、及び
図9の装置を長手方向の中心軸に直行した断面で切った部位を示す断面図である
図10に示すものがある。但し、
図10(a)、
図10(b)は、メンブレンの曝気槽中の気孔(小孔)の挙動を解説するために、小孔が断面に1個とした説明用の図面であり、実際は小孔が多数ある。
この散気装置は、
図10(a)に示すように、ベースプレート32の上面に散気膜33が載置され、散気膜33の一部を貫通するように
図9に示すような給気口34が設けられており、前記ベースプレート32と前記散気膜33との間と図示しない給気管とを給気口34を介して連通する構造となっている。
前記ペースプレート32は、金属製や合成樹脂製からなり、また散気膜33は、例えば、合成樹脂膜製や合成ゴム膜製で、多数の小孔35が穿設されてなる。
そして、前記散気膜33は、その周囲を固定手段36によってベースプレート32に固定された構造をなしている。
曝気槽内に沈められた前記散気装置31は、
図10(a)に示すように、稼働停止時には、散気膜33は、曝気槽内の被処理液の水圧を受けてベースプレート32の上面に当接しており、散気膜33は萎んだ状態となって散気膜33に穿設された小孔35は閉じた状態となる。
一方、稼働時にはベースプレート32と散気膜33の間に給気口34から圧縮空気が供給され、
図10(b)に示すように、圧縮空気の圧力を受けて散気膜33が膨らみ、ベースプレート32の上面から離間し、図示のように散気膜33の長手方向に直行する短手方向の膜長さが引き伸ばされ多数の小孔35が縁を引っ張られて開くので、圧力を受けて開いた小孔35を通して水中への空気の散気が行われる。
しかし、前記散気装置31は、散気膜を、例えば金属枠状をしたクランプなどである固定手段36で嵌め込んでベースプレート32に固定しているので、稼働時に前記固定手段36の縁付近の散気膜に応力がかかりやすく、この部分の散気膜には過度の摩耗が生じ、膜厚が薄くなり強度が低下するという問題がある。
図10(c)は、散気装置の長期間使用による引張り応力により、固定手段の近傍の散気膜が削れた状態を表す図であり、37は削れにより生じた溝である。
【0003】
このような、固定手段の近傍において応力集中が生じて散気膜が損傷するのを防止するために、シート状部材を接合してなる袋状体を備え、金属枠状をしたクランプ形状の固定手段を排除して、袋状体の少なくとも上面部を形成するシート状部材に散気領域を設けた散気装置が開示されている(特許文献1)。
上記特許文献1に記載された発明は、本体が帯状に長く延びる袋状体からなり、袋状体の一側の外縁に設けた給気口にノズルが装着してあり、ノズルを介して空気供給源(図示省略)に接続する構造となっている。
そして袋状体は、下面部が不通気性のシート状部材からなり、上面部が散気領域を形成する通気性のシート状部材を溶着により相互に接合してなり、さらに袋状体は、下面部の不通気性のシート状部材と、上面部の外周領域の不通気性のシート状部材とを気密に溶着してなる接合部を袋状体外縁に全周的に形成し、上面部の通気性のシート状部材と外周領域の不通気性のシート状部材とを気密に溶着してなる接合部を散気領域の全周に沿って形成してある。
さらに、袋状体は、幅方向の両側において散気領域の外周領域に袋状体の長手方向に延びる挿入孔を設けており、支持部材を挿入孔に挿入し、支持部材の両端に形成したねじ部を連結固定部に形成したL字形の切り込み口に挿入し、一対のナットの間に連結固定部を挟み込んで固定している。
しかし、上記特許文献1の散気装置は、散気膜が、下面部が不通気性のシート状部材と、上面部が散気領域を形成する通気性のシート状部材を溶着により相互に接合した袋状体からなり、固定部に固定するために幅方向の両側において散気領域の外周領域に袋状体の長手方向に延びる挿入孔を設けているため、上面部のシート全面に孔を設けることができず作動時に発生する発泡も少なく散気膜の表面積に対する散気効率が悪い。
そして、クランプ状の固定手段を排除するために、袋状体の散気膜とする必要があり、送気時にベースプレートに張り付いている側の散気膜は何ら散気に寄与せず、高価なメンブレン材料が無駄に使用される。
また、散気膜を取り替える場合には、袋状体の散気膜を取り替える必要があり手間と費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−104900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を考慮して、固定部材と散気膜の摩耗による劣化を防止し散気膜の寿命をより長くすることができる散気装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を下記の手段により解決した。
(1)平板状のベースプレートに対面配置されるシート状の散気膜の四辺縁部が、前記ベースプレートに固定枠により前記ベースプレート共々挟持されて定着されてなる散気装置において、
前記散気膜が、多数の小孔が形成された有孔膜体部と、前記有孔膜体部に形成された小孔数より少ない小孔が形成された少数孔膜体部とから構成され、前記固定枠との接触部近傍に配置される部分の散気膜が少数孔膜体部でなることを特徴とする散気装置。
(2)前記散気膜の少数孔膜体部に設けられた孔数が、有孔膜体部に設けられた小孔の数の単位面積当たりの1/3以下であることを特徴とする前記
(1)に記載の散気装置。
(3)前記散気膜の少数孔膜体部が、前記固定枠の接触部から1〜5mmの幅を有することを特徴とする前記
(1)又は(2)に記載の散気装置。
(4)前記散気膜の少数孔膜体部が、散気膜の長手方向にのみ設けられていることを特徴とする前記
(1)〜(3)のいずれか1に記載の散気装置。
【発明の効果】
【0007】
前記(1)〜
(4)記載の本発明の散気装置によれば、散気装置を長時間使用しても固定枠との接触部近傍の散気膜の摩耗による溝の削れ量が少なくなるため散気膜の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】本発明の散気装置における散気膜と小孔の関係を示す図
【
図4】本発明の散気装置における散気膜の引張り試験の結果を示す図
【
図5】本発明の散気装置の長期間の使用により散気膜に生じた摩耗長さと摩耗深さを示す図
【
図6】本発明の散気装置の使用年数と散気膜に生じた摩耗長さとの関係を示す図
【
図7】本発明の散気装置の使用年数と散気膜に生じた摩耗深さとの関係を示す図
【
図8】本発明の散気装置の使用状態(通気状態)における散気膜に作用する引張応力を示す図
【
図10】従来の散気装置の長手方向の中心軸に直行した断面で切った部位を示す断面図で送気による固定手段近傍の削れ作用を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の散気装置を実施するための形態を実施例の図に基づいて説明する。
図1は、散気装置の斜視図、
図2は、散気装置の斜視図のI−I断面図である。
本実施の形態においては、散気装置1は、
図1、
図2に示すように、平板状をなす金属製又は合成樹脂製のベースプレート2の上面に、ポリウレタン、シリコン、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などの適度の弾性を有する合成樹脂又は合成ゴムからなるシート状の散気膜3を張るようにして対面配置し、固定枠4により前記ベースプレート2共々散気膜3は挟持されて定着される。
前記散気膜3は、多数の小孔3aが形成された有孔膜体部3bと小孔3aが形成されていない無孔膜体部3cから構成される。なお、4は断面コ字状の固定枠、5は樹脂からなる断面コ字状の押さえ部材である。押さえ部材5はあることが望ましいが、あってもなくても固定枠4により散気膜3が定着されていればよい。
本実施の形態においては、前記無孔膜体部3cの幅は、前記固定枠4から1〜5mmに構成されている。
これは、前記固定枠4から1〜5mm迄の位置において、送気される際に散気膜3が膨れてこの位置の膜が固定枠4から立ち上がり、曝気槽中の砂や汚泥成分が固定枠4の縁と膜の立ち上がり部に溜り、多数の小孔35からの気泡噴出による膜の振動によってその砂や汚泥成分が膜表面を移動して剥離や堆積を繰り返し、砥粒で削るような作用を起こして、散気膜の摩耗が生じるためである。さらに、固定枠4の縁近傍の応力集中が起きがちな前記固定枠から1〜5mmの範囲は、応力が大きいので散気膜3が伸ばされる量も多く、そこを砥粒で削るように砂や汚泥成分が働くので散気膜の摩耗量が多くなる。
この前記無孔膜体部3cの幅が1mm以下では、その短くなった分の有孔膜体部3bの部分で散気膜が同様に削れてしまい、長期使用により散気膜の表面に生じる摩耗深さにより散気膜の寿命を長くすることができない場合が考えられる。また、前記無孔膜体部3cの幅が5mmを超えてしまうと散気膜に形成する小孔の数が少なくなり散気効率が低下してしまうためであるが、全体の大きさや、使用状況等を考慮して、適宜無孔膜体部3cの幅を調整することができる。
本実施の形態においては、前記ベースプレート2の上面に散気膜3を対面配置し、散気膜の4辺をベースプレート2の裏面まで折り込み、この状態のベースプレート2及び散気膜3を押さえ部材5の溝に嵌め込み固定し、さらにこの押さえ部材5を固定枠4の溝に嵌め込み前記ベースプレート2の上面に散気膜3を定着している。
なお、前記断面コ字状の押さえ部材5は、硬い樹脂でコ字状の上下部分に少しテーパーがあり、バネ状になっており、散気膜3とベースプレート2の定着を強固にしている。
6は空気供給口で、ベースプレート2と散気膜3との間と図示しない給気管とに自身を介して連通して配設されている。
【0010】
本散気装置1を、下水処理に使用する場合を例に挙げ使用方法を説明する。
本散気装置1は、下水処理の処理槽(図示せず)に設置され、空気供給源(図示せず)から空気給気口6を通して所定圧力の空気がベースプレート2と散気膜3との間に供給される。
散気膜3は、前記供給された空気により枕状に膨らみ、前記散気膜3の小孔3aから空気が噴出され、その噴出した空気が処理槽の内部の処理対象水中に散気する。
そして、運転停止時に空気の供給が停止されると、散気膜3は周囲の処理対象水の水圧を受けてベースプレート2に圧接され、散気膜3に設けられた小孔3aは閉じられる。
【0011】
図3は、散気装置1における散気膜3と小孔3aとの関係を示す図である。
図3(a)は、散気膜3の全面が有孔膜体部3bで形成された散気装置を示す図である。
図3(b)は、散気膜3が、固定枠4との接触部近傍に配置される部分を長手方向全体に無孔膜体部3cで形成された散気装置を示す図である。
図3(c)は、他の実施例で、散気膜3が、固定枠4との接触部近傍に配置される部分を長手方向全体に、有孔膜体部3bに設けられた単位面積当たりの小孔数より少ない小孔が形成された少数孔膜体部3dで形成された散気装置を示す図であり、具体的には、少数孔膜体部3dは、有孔膜体部3bに設けられた単位面積当たりの小孔数の1/3の数の小孔を設けている。
このように散気膜3が、固定枠4との接触部近傍を少数孔膜体部3dで形成された場合、散気装置の運転停止時に空気の供給が停止され、散気膜3が周囲の水圧を受けてベースプレート2に圧接された際、少数孔膜体部3dに設けられた小孔3aを通して固定枠の際(端の部分)の水を容易に抜くことができる。
それにも拘らず、固定枠4の縁近傍の応力集中が起きがちな前記固定枠から1〜5mmの範囲は、少数孔膜体部3dの応力による伸び量は
図3(a)の場合より小さくなり、削るように働く砂や汚泥成分の散気膜の摩耗量は小さくできる。
【0012】
図4は、JISK6251試験法(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方)に則り引張り試験を行った結果を表す図で、散気装置における散気膜3と該散気膜3に設けた小孔3aの割合による散気膜の引張強さの関係を示す図である。
同図に示す孔数1/1は、散気膜3全体を有孔膜体部3bで構成し、全面に小孔3aを設けた場合である。同様に孔数1/3、1/4.7、1/6.2は、それぞれ散気膜3に設けられた孔数が、1/1の有孔膜体部3bに設けられた単位面積当たりの小孔数に対する割合を表す。
従って、孔無しは、散気膜3の全体を無孔膜体部3cで構成した場合である。
表1は、
図4のJISK6251試験法に則り行った引張り試験の結果を表す。
d=0.6mmとは、引っ張り試験する前の試験に供した膜厚さである。
図4及び表1に示すように、孔数が減るほど引張強さが増し、孔数 1/1の散気膜と孔無しの散気膜を比較すると、約3.3倍の差が見られた。
【0014】
図5は、散気装置の使用年数における固定枠近傍に配置される散気膜3に生じた摩耗長さt
1(削れ量)と摩耗深さt
2(削れ量)を表す図である。
この摩耗長ができる原因として、前述のように、送気される際に散気膜3が膨れてこの位置の膜が固定枠4から立ち上がり、曝気槽中の砂や汚泥成分が固定枠4の縁と膜の立ち上がり部に溜り、多数の小孔35からの気泡噴出による膜の振動によってその砂や汚泥成分が膜表面を移動して剥離や堆積を繰り返し、砥粒で削るような作用を起こすことが膜厚の減少に関係すると考えられる。さらに、固定枠4の縁近傍の応力集中が起きがちな前記固定枠から1〜5mmの範囲は、応力が大きいので散気膜3が伸ばされる量も多く、そこを砥粒で削るように砂や汚泥成分が働くので、さらに膜厚の減少に関係することが考えられる。
図6は、散気装置の使用年数における固定枠との接触部近傍に配置される散気膜3と、該散気膜3に設ける小孔3aの割合における散気膜に生じた摩耗長さt
1(削れ量)の関係を示す図であり、同図に示す孔数は、前記
図4と同じである。
ここで使用年数は、散気装置を1日24時間の運転(空気供給源から空気給気口6を通して所定圧力の空気をベースプレート2と散気膜3との間に24時間供給し、その後運転を数分間停止する)を365日繰り返して1年とする。
図6から明らかなように、10年経過時の孔数1/1の散気膜と孔無しの散気膜の摩耗長さを比較すると、孔数1/1の散気膜の摩耗長さは、孔無しの散気膜のおよそ1.3倍の摩耗長さとなる。
このことから、散気膜に設けられた小孔が少ない程長期使用時における散気膜に生じる摩耗長t
1(削れ量)が少なく、散気膜の寿命を長くすることができることが分かる。
【0015】
図7は、散気装置の使用年数と、散気装置の固定枠との接触部近傍における散気膜3に生じた摩耗深さt
2(削れ量)の関係を示す図である。同図に示す線形(系列1)は、実際に使った散気膜の摩耗深さt
2(削れ量)と使用年数の関係をプロットし求めた回帰直線である。
ここで、yは摩耗深さt
2(削れ量)、xは使用年数、Rは近似曲線の決定係数を表す。
同図から明らかなように、使用年数が経過するにつれて摩擦深さt
2(削れ量)が増加することが分かる。
なお、同図に使用した散気膜のなかで使用10年後に最も大きかった散気膜の摩耗深さt
2(削れ量)は、0.3mmであった。
従って、線形から20年後の散気膜の摩耗深さt
2(削れ量)は、0.6mmとなる。
【0016】
図8は、本散気装置の運転時における散気時の散気膜の曲率の状態を仮定した図である。このような仮定に基づくと、引張応力(σ)を下記式1で表すことができる。
σ=p×r/t ・・・・(1)
〔式中、pは散気膜の内外の圧力差、rは散気膜の曲率半径、tは散気膜の膜厚を示す。〕
例えば、1/1孔数の膜が破断する時の厚みは、引張強さ16.4MPa(
図4、表1より)、散気膜の内外の圧力差pを20kPaの応力が掛かると仮定し、運転時の膜の曲率半径rを80mmとすると、0.0976mmとなる。ここで、膜厚は0.6であることから、摩耗してもよい分の厚みは0.5024mmとなる。同様に、孔無膜の場合は引張強さ54MPaであることから、破断時の厚みが0.5704mmとなる。従って、図より、年間で摩耗長が伸びることが明らかなように、無孔膜を用いることで、1/1孔数膜より約2年間長く継続して利用することができる。
【0018】
以上のように本発明の実施の態様によれば、平板状のベースプレートに対面配置される多数の小孔が形成されたシート状の散気膜の四辺縁部が、前記ベースプレートに固定枠を介して定着されてなる散気装置において、前記固定枠との接触部近傍の散気膜の削れ量を少なくすることができ、散気膜の寿命をより長くすることができる。
本実施の態様は、下水、し尿、産業排水などの有機性汚水を好気性微生物により生物学的に処理して浄化する種々の水浄化槽に適用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1:散気装置
2:ベースプレート
3:散気膜
3a:小孔
3b:有孔の膜体
3c:無孔の膜体
3d:半無孔の膜体
4:固定枠
5:押さえ部材
6:給気口
31:散気装置
32:ベースプレート
33:散気膜
34:給気口
35:小孔
36:固定部
37:溝