特許第6246616号(P6246616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6246616コンバータ及び当該コンバータを含む太陽光発電システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246616
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】コンバータ及び当該コンバータを含む太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20171204BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H02M3/155 H
   H02J1/00 306A
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-33631(P2014-33631)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-159675(P2015-159675A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103528
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 一男
(72)【発明者】
【氏名】小杉 明史
(72)【発明者】
【氏名】今井 庸二
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−521362(JP,A)
【文献】 特開2009−267031(JP,A)
【文献】 特表2012−510158(JP,A)
【文献】 特開2011−181853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型電源のためのコンバータであって、
前記分散型電源からの入力電圧を昇圧又は降圧する昇降圧回路と、
前記昇降圧回路を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記昇降圧回路の出力に対して少なくとも自コンバータの識別子を表す信号を重畳させ、前記昇降圧回路の出力に重畳されている信号から、識別子を抽出するための回路を有し、
抽出された前記識別子から、前記自コンバータと直列に接続されており且つ動作しているコンバータの数を特定し、特定された前記コンバータの数に応じて前記昇降圧回路の制御を切り替える
コンバータ。
【請求項2】
前記制御部は、コンバータの数に応じた基準電圧を予め格納するメモリを有し、
特定された前記コンバータの数に応じた基準電圧を前記メモリから読み出し、当該基準電圧と前記昇降圧回路の出力電圧との比較結果に応じて制御を切り替える
請求項1記載のコンバータ。
【請求項3】
前記制御部は、
特定された前記コンバータの数が予め定められた数未満の場合には、前記分散型電源からの入力電圧に応じた制御を行い、
特定された前記コンバータの数が前記予め定められた数であって且つ前記昇降圧回路の出力電圧が安定動作中を表す所定の条件を満たす場合に、前記昇降圧回路の出力電圧を所定電圧近傍に維持するように制御する
請求項1又は2記載のコンバータ。
【請求項4】
前記識別子が、乱数又は予め設定されている値である
請求項1記載のコンバータ。
【請求項5】
前記分散型電源が、太陽電池パネルであり、
請求項1乃至4のいずれか1項記載のコンバータと当該コンバータに接続された前記太陽電池パネルとの組み合わせが複数直列に接続された回路を含む太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルや燃料電池などの分散型電源のためのコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池(PV:PhotoVoltaic)や燃料電池といった分散型電源の普及に伴い、それら電源から最適な電力を取り出す種々の方法が開発されている。
【0003】
分散型電源としてPVを用いた場合、PVから電力を最大限取り出すため、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を行うDC/DCコンバータをPV毎に設置する方法がある。
【0004】
また、MPPT制御を行うDC/DCコンバータに通信機能を持たせ、電流及び電圧センサなどから取得した情報を中央分析ステーションに送信して、監視、制御及び分析を行うとする文献が存在している(例えば特表2010−521720号公報)。
【0005】
さらに、各PVが発電した電力を監視するため、複数のPVにそれぞれ設置された送信機が発電情報を電力線路を使って通信親機へ送信するとする文献(例えば特開2012−004626号公報)も存在している。
【0006】
このようにPV側に通信機を設けるという着想はあるが、複数のPVに対して別途ホスト装置を設けるような構成であり、ホスト装置の分だけシステム全体のコストが増加する。また、ホスト装置で制御を行うとしているがどのような制御を行うかは上記の文献では具体的ではない。
【0007】
一方、複数のPVを直列に接続したストリングを複数並列に接続した上で、PCS(Power Conditioning System)に接続して用いる場合がある。PCSはPV側からのDC(Direct Current)出力を家庭用AC(Alternating Current)出力に変換するが、並列に接続された各ストリングの出力電圧は同一になるように調整される。この際、各ストリングにおいて直列に接続されたPVの数が異なる場合には、各ストリングに含まれるPVの出力電圧を調整することになる。このような調整は、太陽光発電システムを設置する時だけではなく、PVパネルの一部が故障した場合などにも行われることになるが、自律的に行うものは存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2010−521720号公報
【特許文献2】特開2012−004626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、一側面によれば、分散型電源の接続状況に応じて自律的に出力電圧の調整を行うことができる分散型電源用のコンバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様にかかるコンバータは、分散型電源のためのコンバータであって、(A)分散型電源からの入力電圧を昇圧又は降圧する昇降圧回路と、(B)昇降圧回路を制御する制御部とを有する。そして、上で述べた制御部は、昇降圧回路の出力に対して少なくとも自コンバータの識別子を表す信号を重畳させ、昇降圧回路の出力に重畳されている信号から、識別子を抽出するための回路を有する。そして、制御部は、抽出された識別子から、自コンバータと直列に接続されており且つ動作しているコンバータの数を特定し、特定されたコンバータの数に応じて昇降圧回路の制御を切り替える。
【0011】
このようにすれば、簡易な構成で、直列接続されているコンバータの数を特定でき、自律的に出力電圧の調整が可能となる。
【0012】
さらに、上で述べた制御部は、コンバータの数に応じた基準電圧を予め格納するメモリを有するようにしても良い。この場合、この制御部は、特定されたコンバータの数に応じた基準電圧をメモリから読み出し、当該基準電圧と昇降圧回路の出力電圧との比較結果に応じて制御を切り替えるようにしても良い。特定されたコンバータの数に応じた制御が適切に行われるようになる。
【0013】
さらに、上で述べた制御部は、特定されたコンバータの数が予め定められた数未満の場合には、分散型電源からの入力電圧に応じた制御を行うようにしても良い。また、上で述べた制御部は、特定されたコンバータの数が予め定められた数であって且つ昇降圧回路の出力電圧が安定動作中を表す所定の条件を満たす場合に、昇降圧回路の出力電圧を所定電圧近傍に維持するように制御するようにしても良い。このようにすれば、可能な限り最大電力点電圧を維持して効率的な電圧出力が可能となる。
【0014】
また、上で述べた識別子が、乱数又は予め設定されている値である場合もある。システムの設置業者の手間を削減できる。
【0015】
また、本発明の第2の態様にかかる太陽光発電システムは、上で述べたコンバータと当該コンバータに接続された分散型電源(すなわち太陽電池パネル)との組み合わせが複数直列に接続された回路を含む。このようにすれば、太陽光発電システムの設置が容易になる。
【発明の効果】
【0016】
一側面によれば、分散型電源の接続状況に応じて自律的に出力電圧の調整を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1の実施の形態に係る太陽光発電システムの概要を示す図である。
図2図2は、マイクロコンバータの構成例を示す図である。
図3図3は、接続箱の回路例を示す図である。
図4図4は、第1の実施の形態に係る太陽光発電システムの動作概要を示す図である。
図5図5は、第1の実施の形態に係る太陽光発電システムの動作概要を示す図である。
図6A図6Aは、マイクロコントローラの処理内容を表す処理フローを示す図である。
図6B図6Bは、マイクロコントローラにより実行される制御処理の処理フローを示す図である。
図7図7は、AD変換処理の処理フローを示す図である。
図8図8は、初期モード決定処理の処理フローを示す図である。
図9図9は、低電圧時処理の処理フローを示す図である。
図10図10は、前回値更新処理の処理フローを示す図である。
図11図11は、動作モード選択処理の処理フローを示す図である。
図12図12は、接続数関連処理の処理フローを示す図である。
図13図13は、接続数に応じて設定されるクランプ電圧及びOVP電圧を示す図である。
図14図14は、ConvRatio調整処理の処理フローを示す図である。
図15図15は、調整処理の処理フローを示す図である。
図16図16は、接続数判定処理の処理フローを示す図である。
図17図17は、第2の実施の形態に係る太陽光発電システムの概要を示す図である。
図18図18は、第2の実施の形態に係る太陽光発電システムの動作概要を示す図である。
図19図19は、第2の実施の形態に係る太陽光発電システムの動作概要を示す図である。
図20図20は、第3の実施の形態に係る太陽光発電システムの概要を示す図である。
図21図21は、第3の実施の形態に係る接続箱の構成を示す図である。
図22図22は、第3の実施の形態に係る太陽光発電システムの動作概要を示す図である。
図23図23は、第3の実施の形態に係る太陽光発電システムの動作概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る分散型電源システムの一例として太陽光発電システムの概要を図1に示す。
【0019】
本実施の形態では、3つのPV3乃至5が直列に接続された基準ストリングと、2つのPV1及び2が直列に接続された第2ストリングとが並列に接続箱200に接続されている。この接続箱200は、PCS300に接続されている。
【0020】
第2ストリングに含まれる2つのPV1及び2の各々には、本実施の形態に係る主要な動作を実行するマイクロコンバータ100が接続されている。マイクロコンバータ100は、電力線通信機能を有しており、直列に接続された他のマイクロコンバータ100と通信を行う。また、マイクロコンバータ100は、以下で述べるようにPVの出力電圧を、PVの出力電圧及び出力電流と同一ストリング内において直列に接続されているPV又はマイクロコンバータ100の数とに応じて昇圧したり降圧したりする。
【0021】
本実施の形態に係るPCS300は、従来技術と変わらないので、これ以上述べない。
【0022】
図2に、マイクロコンバータ100の構成例を示す。
【0023】
本実施の形態に係るマイクロコンバータ100は、PVに接続された入力電圧検出回路と、入力電流検出回路と、Hブリッジ回路と、出力電流検出回路と、出力電圧検出回路と、Hブリッジ回路の駆動回路と、マイクロコントローラMCUと、フロントエンド回路120と、電力線通信結合回路110とを有する。
【0024】
入力電圧検出回路は、抵抗R2及びR3を含み、入力電圧に相当する信号は、マイクロコントローラMCUの3番ピンに入力される。
【0025】
入力電流検出回路は、抵抗R1と演算増幅器CA1とを含み、入力電流に相当する信号は、マイクロコントローラMCUの2番ピンに入力される。
【0026】
Hブリッジ回路は、4つのNチャネル型FET(Field Effect Transistor:スイッチング素子)(Q1乃至Q4)とエネルギー蓄積用のインダクタL1と2つのコンデンサCin及びCoutとを有する。
【0027】
出力電流検出回路は、抵抗R4と演算増幅器CA2とを含み、出力電流に相当する信号は、マイクロコントローラMCUの5番ピンに入力される。
【0028】
出力電圧検出回路は、抵抗R5及びR6を含み、出力電圧に相当する信号は、マイクロコントローラMCUの4番ピンに入力される。
【0029】
Hブリッジの駆動回路は、FET駆動用のFETドライバIC(Integrated Circuit,FET−Driver)と、2つのブートストラップ用のコンデンサCB1及びCB2と2つのブートストラップ用のダイオードDB1及びDB2とを有する。FET駆動用のFETドライバICは、例えば14ピンのICであり、PWM(Pulse Width Modulation)入力:4本、PWMハイサイド出力:2本、PWMローサイド出力:2本、ハイサイド中点電位(HS1及びHS2):2本などを有する。
【0030】
FET駆動用のFETドライバICの1番ピンはダイオードDB1のカソードとコンデンサCB1の一端に接続され、ダイオードDB1のアノードには電圧Vcc が印加されている。FET駆動用のFETドライバICの2番ピンには電圧Vcc が印加されている。FET駆動用ICの3乃至6番ピンはマイクロコントローラMCUに接続されている。FET駆動用のFETドライバICの7番ピンは接地されている。FET駆動用のFETドライバICの8番ピンはFET(Q3)のゲートに接続されている。FET駆動用のFETドライバの9番ピンはコンデンサCB2の一端とインダクタL1の他端に接続されている。FET駆動用のFETドライバICの10番ピンはFET(Q4)のゲートに接続されている。FET駆動用のFETドライバICの11番ピンはコンデンサCB2の他端とダイオードDB2のカソードに接続されている。FET駆動用のFETドライバICの12番ピンはFET(Q2)のゲートに接続されている。FET駆動用のFETドライバICの13番ピンはコンデンサCB1の他端とインダクタL1の一端に接続されている。FET駆動用のFETドライバICの14番ピンはFET(Q1)のゲートに接続されている。
【0031】
マイクロコントローラMCUは、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を有するCPU(Central Processing Unit)である。
【0032】
マイクロコントローラMCUの1番ピンには電圧Vcc が印加され、2番ピンは入力電流検出回路の出力に接続されている。マイクロコントローラMCUの3番ピンは入力電圧検出回路の出力に接続され、8番ピンは接地されている。また、マイクロコントローラMCUの4番ピンは出力電圧検出回路の出力に接続され、5番ピンは出力電流検出回路の出力に接続されている。さらに、マイクロコントローラMCUの9番ピンはFET駆動用のFETドライバICの6番ピンに接続され、当該6番ピンへFET(Q4)のオンオフ駆動用信号(PWM2L)を出力する。
【0033】
また、マイクロコントローラMCUの10番ピンはFET駆動用のFETドライバICの5番ピンに接続され、当該5番ピンへFET(Q3)のオンオフ駆動用信号(PWM2H)を出力する。マイクロコントローラMCUの11番ピンはFET駆動用のFETドライバICの4番ピンに接続され、当該4番ピンへFET(Q2)のオンオフ駆動用信号(PWM1L)を出力する。マイクロコントローラMCUの12番ピンはFET駆動用のFETドライバICの3番ピンに接続され、当該3番ピンへFET(Q1)のオンオフ駆動用信号(PWM1H)を出力する。
【0034】
電力線通信結合回路110は、カップリングコンデンサCcpと、カップリングトランスTcpとを有する。電力線通信結合回路110は、Hブリッジ回路の出力に対して、フロントエンド回路120からの電力線通信に係る信号を重畳させ、また逆に他のマイクロコンバータ100から出力され且つHブリッジ回路の出力に重畳された信号をフロントエンド回路120へ出力する。
【0035】
フロントエンド回路120は、電力線通信の出力回路と、電力線通信の入力回路とを有している。電力線通信の出力回路は、マイクロコントローラMCUの7番ピンに接続されており、SPI(Serial Peripheral Interface)回路と、D/A変換回路(DAC)と、フィルタ(Filter)と、PGA(Programmable Gain Amplifier)回路と、キャパシタC1とを有する。また、電力線通信の入力回路は、マイクロコントローラMCUの6番ピンに接続されており、キャパシタC2と、フィルタ(Filter)と、バッファ(Buffer)回路とを有する。
【0036】
電力線通信結合回路110及びフロントエンド回路120は、電力線通信を行う場合に通常用いられる回路であるから、これ以上説明しない。
【0037】
図3に、接続箱200と基準ストリング及び第2ストリングとの接続関係を示す。接続箱200は、PCS300に接続され且つ主開閉器である直流ブレーカ210と、ダイオードD1及びD2と、直流ブレーカ220とを有する。
【0038】
このように基準ストリングからの出力も、第2ストリングからの出力も、直流ブレーカ220とダイオードD1又はD2と直流ブレーカ210とを介してPCS300に接続される。
【0039】
次に、本実施の形態に係るマイクロコンバータ100の動作の概要を、図4及び図5を用いて説明する。
【0040】
本実施の形態では、図4に示すように、PCS300起動前には、PCS300へは電流が流れず、PVによる発電が開始しても、基準ストリングでは、開放電圧110Vが3つ直列で合計330V(400V未満)の出力になり、第2ストリングでは、出力電圧125Vが2つ直列で合計250V(PVが3直列の場合の最大電力点電圧240V(=80V×3)以上)で待機することになる。
【0041】
PCS300が起動すると、PCS300へ電流が流れるようになるが、最初に待機中の出力電圧が高い基準ストリングから電流が流れ、最大電力点電圧80Vの3直列で240Vに向かって電圧が下がる。また、250Vまで電圧が下がると、第2ストリングから電流が流れ始め、240Vまで電圧が下がるようになる。基準ストリングの出力電圧が240Vになっていれば、第2ストリングの2つのマイクロコンバータ100は合計240Vになるように各PVの出力電圧を変換する。
【0042】
ここで、第2ストリングにおける各マイクロコンバータ100は、電流が流れ始めると、互いに自マイクロコンバータ100の識別子を表す信号を電力線通信によって交換することで(図5における(1)及び(2))、第2ストリングにおいて直列に接続されているマイクロコンバータ100の数が「2」であることを自動的に認識して、マイクロコンバータ100はPVからの入力電圧変換の制御を切り替える。
【0043】
なお、基準ストリングを設けることで、PCS300に出力される電圧が一定値(上で述べた例では240V)になるため、第2ストリングの出力電圧もこの値になるように第2ストリングにおける各マイクロコンバータ100が動作するようになり、太陽光発電システム全体の動作が安定化する。より具体的には、第2ストリングにおいてPVは直列に接続されているので、各マイクロコンバータ100を流れる電流は一致するが、発電状況に応じてPVは出力電圧を変化させずに(例えば80V)出力電流を変化させる。このような場合に、基準ストリングで出力電圧が決まっていれば、第2ストリングにおいて最大電力を出力するような電流値及び電圧値の組み合わせは一意に決まるので、マイクロコンバータ100の動作が安定する。
【0044】
次に、図6A乃至図16を用いてマイクロコンバータ100の具体的な動作フローを説明する。なお、マイクロコンバータ100のマイクロコントローラMCUは、ROMに格納されたプログラムを実行し、処理途中のデータについてはRAMに格納する。
【0045】
まず、マイクロコントローラMCUは、初期化処理を実行する(図6A:ステップS1001)。例えば、モード選択用の現在の変換比ConvRatioを100に設定し、1つ前の時間における変換比ConvRatioMpを100に設定し、1つ前の最大電力値Pmppを0に設定する。その他のパラメータについても適宜初期化する。そして、マイクロコントローラMCUは、制御処理を実行する(ステップS1003)。この制御処理については、後に詳しく述べる。そして、マイクロコントローラMCUは、処理を終了するか判断する(ステップS1005)。例えば、電源供給が停止されれば処理を終了すると判断する。処理を終了しない場合、処理はステップS1003に戻る。一方、処理を終了する場合には、そのまま処理を終了する。
【0046】
次に、制御処理について図6B等を用いて説明する。まず、マイクロコントローラMCUは、AD変換処理を実行する(図6B:ステップS1)。このAD変換処理については、図7を用いて説明する。
【0047】
まず、マイクロコントローラMCUは、入力電圧Vin及び入力電流Iinを測定し(ステップS31)、出力電圧Vout及び出力電流Ioutを測定する(ステップS33)。なお、測定については何回か測定を行ってその平均値を採用するようにしても良い。そうすると、元のフローに戻る。
【0048】
図6Bの処理の説明に戻って、マイクロコントローラMCUは、初期モード決定処理を実行する(ステップS3)。この初期モード決定処理については、図8を用いて説明する。
【0049】
まず、マイクロコントローラMCUは、AD変換値が確定したか判断する(ステップS41)。すなわち入力電圧値及び入力電流値と出力電圧値及び出力電流値とが得られたか否かを判断する。得られていない場合には、元のフローに戻る。
【0050】
一方、入力電圧値及び入力電流値と出力電圧値及び出力電流値とが得られた場合には、マイクロコントローラMCUは、入力電圧値及び入力電流値によって入力電力Pinを算出し、出力電圧値及び出力電流値によって出力電力Poutを算出する(ステップS43)。
【0051】
その後、マイクロコントローラMCUは、現在のモードが休止モードであるか否かを判断する(ステップS45)。現在のモードが休止モードであれば、マイクロコントローラMCUは、開始モードへの遷移のための条件を満たすか否かを判断する(ステップS47)。具体的には、入力電圧がMPPT動作開始電圧(例えば60V)を超えているという条件、温度センサが示す温度が70度を下回っているという条件、入力電力及び出力電力が基準値(例えば40W)を超えているという条件、及び所定回数(例えば10回)以上AD変換が正常に行われたという条件を満たしているか否かを判断する。このような条件を満たさない場合には、開始モードへ遷移することなく、元のフローに戻る。
【0052】
一方、このような条件を満たすと判断された場合には、マイクロコントローラMCUは、動作モードを開始モードに設定する(ステップS49)。さらに、マイクロコントローラMCUは、MPPT動作開始電流の検出待ちタイマを起動する(ステップS51)。すなわち、PCS300が動作を開始するまでにかかると推定される所定時間の計測を開始する。例えば10分程度を計測する。
【0053】
さらに、マイクロコントローラMCUは、変換比ConvRatioを100に設定する(ステップS53)。そして元のフローに戻る。
【0054】
一方、動作モードが休止モードではない場合、マイクロコントローラMCUは、停止モードへの遷移のための条件を満たすか否かを判断する(ステップS55)。具体的には、入力電圧がMPPT停止開始電圧(例えば30V)未満であるという条件、温度センサが示す温度が90度を超えているという条件、入力電力及び出力電力が20Wを下回るという条件、又はAD変換が所定回数(例えば10回)以上エラーとなったという条件を満たすか否かを判断する。
【0055】
このような条件を満たす場合には、マイクロコントローラMCUは、動作モードを停止モードに設定する(ステップS57)。そして、マイクロコントローラMCUは、MPPT動作をオフに設定する(ステップS59)。そして元のフローに戻る。一方、停止モードへの遷移のための条件が満たされない場合にも、元のフローに戻る。
【0056】
このように、開始モードに遷移する場合、開始モードが継続する場合、停止モードに遷移する場合、停止モードが継続する場合、それ以外のモードの場合のいずれかになる。
【0057】
一般的には、初期モード決定処理において直ぐに停止モードに設定される。その後、開始モードに遷移する。その後は、以下に述べる処理においてモードが変更される。
【0058】
図6Bの説明に戻って、初回の開始モードであるか又は停止モードである場合(ステップS5:Yesルート)、今回の制御処理を終了して、元のフローに戻る。
【0059】
一方、初回の開始モードではない(継続して開始モードである)場合又は停止モード以外のモード(パススルーモード、昇圧モード又は降圧モード)である場合には(ステップS5:Noルート)、マイクロコントローラMCUは、入力電圧が、低電圧判定値(例えば50V)以上であるか否かを判断する(ステップS7)。
【0060】
この条件を満たさない場合には、マイクロコントローラMCUは、低電圧時処理を実行する(ステップS9)。例えば、PVの出力電圧が低下してきた際に行われる処理である。低電圧時処理については、図9を用いて説明する。
【0061】
まず、コントローラMCUは、前回値更新処理を実行する(図9:ステップS61)。前回値更新処理については、図10を用いて説明する。
【0062】
まず、マイクロコントローラMCUは、現在の変換比ConvRatioを、ConvRaioMpに設定する(図10:ステップS71)。また、マイクロコントローラMCUは、現在の入力電力Pinを、1つ前のPmppに設定する(ステップS73)。また、マイクロコントローラMCUは、出力電力Poutを1つ前の出力電力Pmppoに設定する。そして、元の処理に戻る。
【0063】
図9の説明に戻って、マイクロコントローラMCUは、MPPT動作をオンに設定する(ステップS63)。これは例えばステップS25などでMPPT動作がオフに設定されている場合に対処するものである。
【0064】
さらに、マイクロコントローラMCUは、ConvRatioに、入力低電圧時における所定の保護変換比(例えば20)を設定する(ステップS65)。さらに、マイクロコントローラMCUは、ステップS65において設定されたConvRatioに基づき動作モード選択処理を実行する(ステップS67)。なお、この処理を実行した後に、元のフローに戻る。動作モード選択処理については、図11を用いて説明する。
【0065】
まず、マイクロコントローラMCUは、ConvRatioが属する範囲を判定する(ステップS81)。具体的には、ConvRatio=100であるか判断し、該当する場合には、マイクロコントローラMCUは、動作モードをパススルーモードに設定する(ステップS87)。
【0066】
そして、マイクロコントローラMCUは、パススルーモードにおけるPWMパルス幅を設定する(ステップS89)。さらに、マイクロコントローラMCUは、設定されたPWMパルス幅に、現在のPWMパルス幅を変更する(ステップS95)。パススルーモードの場合には、PVからの入力電圧を維持するようにPWMパルス幅を設定する。Hブリッジ回路に対する具体的なPWMパルス幅の制御は一般的であるので、ここでは説明を省略する。
【0067】
また、ConvRatioが100を超えているか判断し、該当する場合には、マイクロコントローラMCUは、動作モードを昇圧モードに設定する(ステップS91)。
【0068】
そして、マイクロコントローラMCUは、昇圧モードにおけるPWMパルス幅を設定する(ステップS93)。さらに、マイクロコントローラMCUは、設定されたPWMパルス幅に、現在のPWMパルス幅を変更する(ステップS95)。昇圧モードの場合には、例えば、PVからの入力電圧×(ConvRatio−100)/ConvRatioといったような出力電圧となるように、PWMパルス幅を設定する。
【0069】
また、ConvRatioが100未満であるか判断し、該当する場合には、マイクロコントローラMCUは、動作モードを降圧モードに設定する(ステップS83)。
【0070】
そして、マイクロコントローラMCUは、降圧モードにおけるPWMパルス幅を設定する(ステップS85)。さらに、マイクロコントローラMCUは、設定されたPWMパルス幅に、現在のPWMパルス幅を変更する(ステップS95)。降圧モードの場合には、例えば、PVからの入力電圧×ConvRatio/100といったような出力電圧となるように、PWMパルス幅を設定する。
【0071】
このように、他の処理において、昇圧すべき状況であれば、ConvRatioが100を超えるように増加させ、降圧すべき状況であれば、ConvRatioが100を下回るように減少させる。
【0072】
図6Bの説明に戻って、ステップS7において、入力電圧が低電圧判定値以上であると判断されると、マイクロコントローラMCUは、動作モードが開始モードになっているか否かを判断する(ステップS11)。動作モードが開始モードであれば、マイクロコントローラMCUは、PWMの起動のためのソフトスタート動作を開始したか否かを判断する(ステップS12)。初めて開始モード中にこのステップに到達した場合には、開始していないと判断される。そうすると、マイクロコントローラMCUは、ソフトスタート動作を開始する(ステップS13)。すなわち、ソフトスタート動作に対応するPWMパルス幅を設定して出力する。そして今回の制御処理を終了して、元のフローに戻る。
【0073】
一方、既にソフトスタート動作を開始している場合には、マイクロコントローラMCUは、ソフトスタート動作が完了したか否かを判断する(ステップS14)。ソフトスタート動作が完了していなければ、今回の制御処理は終了して、元のフローに戻る。
【0074】
一方、ソフトスタート動作が完了した場合には、マイクロコントローラMCUは、動作モードをパススルーモードに設定する(ステップS15)。パススルーモードでは、Hブリッジ回路のFET(Q1乃至Q4)を、PVから入力電圧を昇圧又は降圧することなく出力するようにスイッチングさせる。そして今回の制御処理は終了して、元のフローに戻る。
【0075】
一方、動作モードが開始モードではない場合には、マイクロコントローラMCUは、接続数関連処理を実行する(ステップS11)。接続数関連処理については、図12を用いて説明する。
【0076】
まず、マイクロコントローラMCUは、MPPT動作がオフとなっているか否かを判断する(図12:ステップS101)。MPPT動作がオンとなっている場合には、元のフローに戻る。
【0077】
一方、MPPT動作がオフとなっていれば、マイクロコントローラMCUは、前回値更新処理を実行する(ステップS103)。この処理は、図10の処理と同じであるから、ここでは説明を省略する。
【0078】
そして、マイクロコントローラMCUは、出力電流が所定のMPPT動作開始電流(例えば250mA)を超えたか否かを判断する(ステップS105)。PCS300が動作すると、PCS300に向けて電流が流れることになる。一方、PCS300が動作していなければ、電流は流れない。すなわち、初期的には出力電流はMPPT動作開始電流を超えないことになる。
【0079】
出力電流がMPPT動作開始電流を超えていない場合には、マイクロコントローラMCUは、MPPT動作開始電流の検出待ちタイマがタイムアウトとなったか判断する(ステップS119)。この検出待ちタイマがタイムアウトしていない場合には、処理はステップS117に移行する。
【0080】
一方、この検出待ちタイマがタイムアウトとなった場合には、マイクロコントローラMCUは、出力電圧が待機時クランプ電圧(例えば125V)未満であるか判断する(ステップS121)。出力電圧が待機時クランプ電圧未満でない場合には、マイクロコントローラMCUは、ConvRatioを所定値だけ減少させる(ステップS125)。そして処理はステップS117に移行する。一方、出力電圧が待機時クランプ電圧未満である場合には、マイクロコントローラMCUは、ConvRatioを所定値だけ増加させる(S123)。そして処理はステップS117に移行する。すなわち、図4で述べたように、出力電圧を125Vで維持するように動作する。
【0081】
一方、出力電流がMPPT動作開始電流を超えた場合には、マイクロコントローラMCUは、初めて出力電流がMPPT動作開始電流を超えたか否かを判断する(ステップS107)。初めて出力電流がMPPT動作開始電流を超えた場合には、マイクロコントローラMCUは、接続数判定処理を開始させる(ステップS109)。ここで、第2ストリングにおいて直列に接続されているマイクロコンバータ100で通信を行って、自律的に直列接続されているマイクロコンバータの数(=PVの数)を特定する。この接続数判定処理については、後に説明する。そして処理はステップS111に移行する。
【0082】
既に出力電流がMPPT動作開始電流を超えていた場合には、マイクロコントローラMCUは、接続数判定が完了したか判断する(ステップS111)。接続数判定処理は、ある程度時間が掛かるので(例えば10秒程度)、接続数判定が完了しなければ、処理はステップS119に移行する。すなわち、接続数判定が完了するまで、待機状態となる。
【0083】
一方、接続数判定が完了すれば、マイクロコントローラMCUは、MPPT動作をオンに設定する(ステップS113)。そして、マイクロコントローラMCUは、接続数に応じてクランプ電圧及びOVP(Over Voltage Protection)電圧を選択して設定する(ステップS115)。例えば、本実施の形態では、接続数は「2」と「3」とを区別するので、図13に示すように、接続数(すなわち直列数)が「2」の場合のクランプ電圧及びOVP電圧と接続数が「3」の場合のクランプ電圧及びOVP電圧が予めROMに格納されており、いずれかの値を読み出して設定する。
【0084】
さらに、マイクロコントローラMCUは、動作モード選択処理を実行する(ステップS117)。この処理は、図11で説明した処理である。そして、処理は元のフローに戻る。
【0085】
このようにして、マイクロコンバータ100間の通信が開始して接続数が確定するまでは、待機時の処理を行い、接続数が確定すれば、接続数に応じた設定を行う。
【0086】
図6Bの説明に戻って、マイクロコントローラMCUは、MPPT動作がオンになったか否かを判断する(ステップS19)。MPPT動作がオフであれば、今回の処理は終了する。
【0087】
一方、MPPT動作がオンであれば、マイクロコントローラMCUは、ConvRatio調整処理を実行する(ステップS21)。ConvRatio調整処理については、図14を用いて説明する。
【0088】
まず、マイクロコントローラMCUは、出力電圧が、設定されているクランプ電圧未満であるか否かを判断する(ステップS131)。出力電圧がクランプ電圧以上である場合には、マイクロコントローラMCUは、前回値更新処理を実行する(ステップS133)。この処理は図10の処理である。そして、マイクロコントローラMCUは、ConvRatioを所定値だけ減少させる(ステップS135)。その後、マイクロコントローラMCUは、このConvRatioに基づき、動作モード選択処理を実行する(ステップS137)。動作モード選択処理は図11の処理である。そして処理は元のフローに戻る。
【0089】
一方、出力電圧がクランプ電圧未満であれば、マイクロコントローラMCUは、現在がMPPT制御タイミングであるか否かを判断する(ステップS139)。本実施の形態では、所定の間隔(すなわちMPPT制御期間毎)でPWMパルス幅を変更するようになっており、PWMパルス幅を変更するタイミングになったか否かを判断する。この変更タイミングではない場合には、処理は元のフローに戻る。
【0090】
一方、MPPT制御タイミングになれば、マイクロコントローラMCUは、MPPT制御期間の計測を開始する(ステップS141)。そして、マイクロコントローラMCUは、自ストリングにおける接続数からマイクロコンバータ100が3直列となっているか否かを判断する(ステップS143)。3直列でない場合、すなわち2直列以下であれば処理はステップS145に移行する。
【0091】
一方、自ストリングのマイクロコンバータ100が3直列であれば、マイクロコントローラMCUは、出力電力変化量が判定値未満であるか否かを判断する(ステップS147)。出力電力変化量は、現在の出力電力Poutと1つ前の出力電力Pmppoの差であり、例えば1W未満であるか否かを判断する。この条件を満たす場合には、安定動作していることになるので、処理はステップS149に移行する。一方、この条件を満たさない場合には、安定動作していないので、処理はステップS145に移行する。
【0092】
さらに、出力電力変化量が判定値未満であれば、マイクロコントローラMCUは、出力電圧が最大電力点電圧+α(例えば2V)以上であるか否かを判断する(ステップS149)。安定動作している場合には、この条件を満たすことになり、処理はステップS151に移行する。一方、この条件を満たさない場合には、処理はステップS145に移行する。
【0093】
ステップS143、ステップS147及びステップS149のいずれかで条件を満たさないと判断されると、マイクロコントローラMCUは、調整処理を実行する(ステップS145)。調整処理が終了すると、処理はステップS155に移行する。調整処理については、図15を用いて説明する。
【0094】
まず、マイクロコントローラMCUは、入力電圧及び入力電流を測定する(ステップS161)。そして、マイクロコントローラMCUは、入力電圧×入力電流で入力電力Pinを算出する(ステップS163)。
【0095】
そして、マイクロコントローラMCUが、入力電力Pin<1つ前の入力電力Pmppであるか否かを判断する(ステップS165)。この条件を満たす場合には、マイクロコントローラMCUは、ConvRatio<ConvRatioMpとなっているか否かを判断する(ステップS167)。この条件を満たす場合には、処理はステップS177に移行する。一方、この条件を満たさない場合には、処理はステップS169に移行する。
【0096】
Pin<Pmppという条件を満たさない場合には、マイクロコントローラMCUは、ConvRatio<ConvRatioMpとなっているか否かを判断する(ステップS175)。この条件を満たす場合には、処理はステップS169に移行する。一方、この条件を満たさない場合には、処理はステップS177に移行する。
【0097】
ステップS169では、マイクロコントローラMCUは、現在のConvRatioを1つ前のConvRatioMpに設定する。さらに、マイクロコントローラMCUは、現在のPinを1つ前のPmppに設定する(ステップS171)。また、現在のPoutも1つ前のPmppoに設定する。そして、マイクロコントローラMCUは、ConvRatioを所定値だけ減少させる(ステップS173)。そして、処理は元のフローに戻る。
【0098】
一方、ステップS177では、マイクロコントローラMCUは、現在のConvRatioを1つ前のConvRatioMpに設定する。さらに、マイクロコントローラMCUは、現在のPinを1つ前のPmppに設定する(ステップS179)。また、現在のPoutも1つ前のPmppoに設定する。そして、マイクロコントローラMCUは、ConvRatioを所定値だけ増加させる(ステップS181)。そして、処理は元のフローに戻る。
【0099】
このような処理を実行すれば、入力電力が減少しており且つConvRatioが減少した場合、又は入力電力が増加しており且つConvRatioが増加している場合には、ConvRatioを増加させる。一方、入力電力が減少しており且つConvRatioが増加した場合、又は入力電力が増加しており且つConvRatioが減少している場合には、ConvRatioを減少させる。
【0100】
図14の説明に戻って、ステップS143、ステップS147及びステップS149の条件を満たした場合には、安定動作中であるとして調整処理を実施せずに、マイクロコントローラMCUは、前回値更新処理を実行する(ステップS151)。この処理は図10の処理である。また、マイクロコントローラMCUは、ConvRatioを所定値だけ減少させる(ステップS153)。
【0101】
その後、マイクロコントローラMCUは、動作モード選択処理を実行する(ステップS155)。動作モード選択処理は、図11の処理である。そして処理は元のフローに戻る。
【0102】
図6Bの説明に戻って、ステップS21が実行されると、マイクロコントローラMCUは、入力電流がMPPT動作停止電流未満であるか否かを判断する(ステップS23)。この条件を満たさない場合には、今回の処理を終了する。一方、このような条件を満たす場合には、PVからの入力電流が減少しているので、マイクロコントローラMCUは、MPPT動作をオフに設定する(ステップS25)。そして、今回の処理を終了する。ステップS25を実行したとしても、接続数判定は完了したものとして、接続数の値を保持しておく。
【0103】
以上のような処理を実行することで、自ストリングに接続されているマイクロコンバータ100の接続数に応じて制御動作を切り替え、適切な出力電圧制御が行われるようにPWMパルス幅が設定されるようになる。
【0104】
次に、図16を用いて、接続数判定処理について説明する。
【0105】
まず、マイクロコントローラMCUは、自識別子を取得する(ステップS201)。例えば、ROMにユニークな識別子が既に記録されていれば、この識別子を読み出す。一方、ROMにユニークな識別子が記録されていなければ、例えば乱数にて識別子を生成し、RAMに書き込む。
【0106】
そして、マイクロコントローラMCUは、取得された自識別子を送出する(ステップS203)。その後、マイクロコントローラMCUは、マイクロコンバータ100の出力に重畳された信号を受信したか否かを判断する(ステップS205)。信号を受信していない場合には、処理はステップS211に移行する。一方、信号を受信した場合は、マイクロコントローラMCUは、受信信号から識別子を抽出し、RAMに格納する(ステップS207)。さらに、マイクロコントローラMCUは、受信した識別子に自識別子を連結して、送出する(ステップS209)。その後処理はステップS211に移行する。
【0107】
ステップS211では、マイクロコントローラMCUは、例えばステップS201から所定時間経過したか否かを判断する。所定時間経過していない場合には、ステップS205に戻る。起動タイミングが同一ストリングであってもずれる場合があるので、このように所定時間受信した識別子を蓄積しておく。
【0108】
そして、所定時間経過した場合には、マイクロコントローラMCUは、RAMに蓄積された識別子のうち、自識別子以外の識別子の種類数を計数する(ステップS213)。例えば、最初に「B」という識別子を受信し、自識別子が「A」であれば、「B」「BAB」「BABAB」といった信号を受信して格納する。従って、自識別子以外の識別子は「1」種類ということが分かる。なお、「B」「BACB」「BACBACB」といった信号を受信した場合には、2種類となる。
【0109】
そして、マイクロコントローラMCUは、種類数+1を自ストリングの直列接続数に設定する(ステップS215)。
【0110】
このようにして、自ストリングの直列接続数が特定される。なお、単純に自識別子を所定間隔で流し続けるようにしても良い。
【0111】
以上述べたように、本実施の形態では、マイクロコンバータ100に対して手動で直列接続数を設定することなく、自動的に通信を行って直列接続数を特定でき、その結果に基づき制御を自律的に切り替えることができる。
【0112】
なお、図6Bの処理は、PVから電力供給がある間は動作するので、おおよそ1日1回通信を行うことになる。もし、第2ストリングにおいていずれかのPVが故障した場合には、翌日から直列接続数が減少することになる。例えば、3直列であっても1つ故障で実質的に2直列になった場合には、翌日には2直列として自律的に認識して制御を切り替えるようになる。
【0113】
[実施の形態2]
本実施の形態では、図17に示すように、第2ストリングに3つのPVが直列接続される場合を示す。図17の例では、第2ストリングにはPV1、PV2及びPV6が直列接続されている。各PVに接続されているマイクロコンバータ100は第1の実施の形態に示したマイクロコンバータ100と同一である。また、ストリング数は第1の実施の形態と同様であるから、接続箱200の構成も同一である。
【0114】
次に、本実施の形態に係る太陽光発電システムの動作の概要を図18及び19を用いて説明する。
【0115】
本実施の形態では、図18に示すように、PCS300起動前には、PCS300へは電流が流れず、PVによる発電が開始しても、基準ストリングでは、開放電圧110Vが3つ直列で合計330V(400V未満)の出力になり、第2ストリングでは、出力電圧125Vが3つ直列で合計375V(PVが3直列の場合の最大電力点240V(=80V×3)以上)で待機することになる。
【0116】
PCS300が起動すると、PCS300へ電流が流れるようになるが、最初に待機中の出力電圧が高い第2ストリングから電流が流れ、最大電力点電圧80Vの3直列で240Vに向かって電圧が下がる。また、330Vまで第2ストリングの電圧が下がると、基準ストリングから電流が流れ始め、240VまでPCS300の入力電圧が下がるようになる。基準ストリングの出力電圧が240Vになっていれば、第2ストリングの3つのマイクロコンバータ100は合計240Vになるように各PVの出力電圧を変換する。
【0117】
ここで、第2ストリングにおける各マイクロコンバータ100は、電流が流れ始めると、互いに自マイクロコンバータ100の識別子を表す信号を電力線通信によって交換することで(図19における(1)乃至(3))、第2ストリングにおいて直列に接続されているマイクロコンバータ100の数が「3」であることを自動的に認識して、マイクロコンバータ100はPVからの入力電圧変換の制御を切り替える。
【0118】
基準ストリングの役割については、第1の実施の形態と同様である。
【0119】
[実施の形態3]
本実施の形態では、図20に示すように、第2ストリングに3つのPVが直列接続され、第3ストリングに2つのPVが直列接続されている場合を示す。図20の例では、第2ストリングにはPV6乃至PV8が直列接続されている。さらに、第3ストリングにはPV1及びPV2が直列接続されている。なお、各PVに接続されているマイクロコンバータ100は第1の実施の形態に示したマイクロコンバータ100と同一である。
【0120】
接続箱の構成は、図3に類似しているが、図21に示すように、基準ストリング及び第2ストリングに加えて第3ストリングのために開閉器220に端子が増加し、ダイオードD3も追加されている。
【0121】
次に、本実施の形態に係る太陽光発電システムの動作の概要を図22及び図23を用いて説明する。
【0122】
本実施の形態では、図22に示すように、PCS300起動前には、PCS300へは電流が流れず、PVによる発電が開始しても、基準ストリングでは、開放電圧110Vが3つ直列で合計330V(400V未満)の出力になり、第2ストリングでは、出力電圧125Vが3つ直列で合計375V(PVが3直列の場合の最大電力点240V(=80V×3)以上)で待機し、第3ストリングでは、出力電圧125Vが2つ直列で合計250Vで待機することになる。
【0123】
PCS300が起動すると、PCS300へ電流が流れるようになるが、最初に待機中の出力電圧が高い第2ストリングから電流が流れ、最大電力点電圧80Vの3直列で240Vに向かって電圧が下がる。また、330Vまで第2ストリングの出力電圧が下がると、基準ストリングから電流が流れ始め、240VまでPCS300への入力電圧が下がるようになる。同様に、250Vまで第3ストリングの出力電圧が下がると、第3ストリングから電流が流れ始め、240VまでPCS300の入力電圧がさがるようになる。
【0124】
基準ストリングの出力電圧が240Vになっていれば、第2ストリングの3つのマイクロコンバータ100は合計240Vになるように各PVの出力電圧を変換し、第3ストリングの2つのマイクロコンバータ100も合計240Vになるように各PVの出力電圧を変換する。
【0125】
ここで、第2ストリングにおける各マイクロコンバータ100は、電流が流れ始めると、互いに自マイクロコンバータ100の識別子を表す信号を電力線通信によって交換することで(図23における(1)乃至(3))、第2ストリングにおいて直列に接続されているマイクロコンバータ100の数が「3」であることを自動的に認識して、マイクロコンバータ100はPVからの入力電圧変換の制御を切り替える。同様に、第3ストリングにおける各マイクロコンバータ100は、電流が流れ始めると、互いに自マイクロコンバータ100の識別子を表す信号を電力線通信によって交換することで(図23における(4)及び(5))、第3ストリングにおいて直列に接続されているマイクロコンバータ100の数が「2」であることを自動的に認識して、マイクロコンバータ100はPVからの入力電圧変換の制御を切り替える。
【0126】
基準ストリングの役割については、第1の実施の形態と同様である。
【0127】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、処理フローについては、処理結果が変わらない限り、変更しても良い。また、マイクロコントローラMCUについては、上で述べたような機能を実現するのに十分な処理能力を有するどのようなマイクロコントローラであってもよい。
【0128】
その他、PWM制御を行うことを前提にしていたが、その他の制御法を採用した回路であっても良い。
【符号の説明】
【0129】
100 マイクロコンバータ
200 接続箱
300 PCS
110 電力線通信結合回路
120 フロントエンド回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23