(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂層は、JIS K5600−5−4(ISO/DIS 15184:1996)に規定される鉛筆硬度がH以上であるハードコート層からなる請求項3に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2にも開示されるように、このような自動車窓貼り用の着色フィルムでは、フィルム単独での硬度が低いことから、通常、フィルムの最表面にハードコート層が設けられる。このハードコート層は、ハードコート層を形成するための硬化性組成物を、フィルムの一方の主面上に塗布して塗膜を形成し、形成された塗膜を硬化させることにより得られる場合がある。
【0006】
この塗膜の硬化手法として、熱的に硬化させる場合と、光(電磁波)、電子線などのエネルギー線を照射して硬化させる場合とが例示される。前述の特許文献2では、実施例において、後者の場合の具体例として高圧水銀灯により硬化させることが記載されている。
【0007】
従来は特許文献2に記載されるような高圧水銀灯により硬化性組成物を硬化させることによってハードコート層を形成することに何ら問題はなかったが、近年、自動車窓貼り用の着色フィルムにおいて可視光線透過率が低いものが求められるようになってきたことにより、次のような問題が生じるようになった。
【0008】
高圧水銀灯から照射される光には、紫外線のみならず、可視光線が含まれる。可視光線透過率が低いフィルムは、可視光線を吸収して発熱し、その熱によってフィルムが収縮してしまい、フィルムの表面に縞模様が目視で観察されるという外観不良が生じる場合があった。また、ハードコート層を形成する際にフィルムが収縮してしまうことから、三次元に湾曲した窓に貼付することができなくなる場合があった。一方、収縮を抑えるために紫外線の光量を小さくすると、ハードコート層の硬度が不十分になる場合があった。
【0009】
本発明は、かかる現状を鑑み、製造過程において外観不良を生じにくく、かつハードコートの硬度が十分な着色積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために提供される本発明は次のとおりである。
(1)着色基材と前記着色基材の一方の主面上に積層された樹脂層とを備えた着色積層体の製造方法であって、前記樹脂層は、最大値が380nm未満の範囲に位置する単一のピークから構成される光スペクトルを有する光である第一の光を照射したときに重合反応が進行可能なエネルギー線重合性化合物を含有する硬化性組成物から形成されたものであって、前記製造方法は、前記着色基材の一方の主面上に前記硬化性組成物を塗布することにより前記着色基材上に塗膜を形成する塗布工程、および光を照射することにより前記塗膜を硬化して前記樹脂層を得る硬化工程を備え、前記硬化工程により前記塗膜へと照射される光は、前記第一の光と、前記エネルギー線重合性化合物の重合反応を進行させることが可能な第二の光とを含み、前記第二の光の照射開始時期は前記第一の光の照射開始時期よりも後であることを特徴とする着色積層体の製造方法。
【0011】
(2)前記第一の光は発光ダイオードから照射された光である、上記(1)に記載の製造方法。
【0012】
(3)前記第二の光は高圧水銀ランプから照射された光である、上記(1)または(2)に記載の製造方法。
【0013】
(4)前記樹脂層は、JIS K5600−5−4(ISO/DIS 15184:1996)に規定される鉛筆硬度がH以上であるハードコート層からなる上記(3)に記載の製造方法。
【0014】
(5)前記着色基材は、380nm以上780nm以下の範囲の波長の分光透過率の算術平均が80%以下である、上記(1)から(4)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造過程において外観不良を生じにくく、かつハードコートの硬度が十分な着色積層体の製造方法が提供される。
したがって、自動車窓貼り用フィルムなどとして好適に使用されうる着色積層体をより低コストで提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
1.着色積層体
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る着色積層体10は、着色基材1と、着色基材1の一方の主面1A上に積層された樹脂層2とを備える。
【0018】
(1)着色基材
本実施形態に係る着色積層体10が備える着色基材1は、フィルム状の形状を有し、着色されている限り、具体的な特徴は特に限定されない。一実施形態に係る着色基材1は透明プラスチックフィルムからなる。この透明プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエチレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂などからなるフィルム又はこれらの積層フィルムが挙げられる。これらの中で、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。
【0019】
一実施形態に係る着色基材1は、380nm以上780nm以下の範囲の波長の分光透過率の算術平均(本明細書において、「可視光線透過率」ともいう。)が80%以下である。別の一実施形態に係る着色基材1は、可視光線透過率が70%以下である。さらに別の一実施形態に係る着色基材1は、可視光線透過率が60%以下である。さらにまた別の一実施形態に係る着色基材1は、可視光線透過率が50%以下である。着色基材1の可視光線透過率が低いほど、その着色基材1を備える着色積層体10が窓材に貼付されてなる開口部は、プライバシー保護の観点で優れる。着色基材1の可視光線透過率の下限は特に限定されない。可視光線透過率が過度に低い場合には、着色基材1を備える着色積層体10が窓材に貼付されてなる開口部が窓としての機能を失ってしまうため、通常、着色基材1の可視光線透過率は5%以上に設定される。
【0020】
本実施形態に係る着色積層体10が備える着色基材1の厚さとしては特に制限はなく、着色積層体10の使用目的に応じて適宜選定され、通常は10〜500μmである。自動車用窓貼りフィルムのように、使用時に、貼付対象である曲面ガラスの形状に合わせて着色積層体10が加熱成形される場合には、着色基材1の厚さは50μm以下であることが好ましい。着色基材1の厚さが100μmを超える場合には、後述する本実施形態に係る製造方法を用いなくとも、製造過程において着色積層体10が外観不良を生じる可能性が低くなるため、本実施形態に係る製造方法の効果をより効果的に享受する観点からは、着色基材1の厚さは100μmであることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、38μm以下であることがさらに好ましく、25μm以下であることが特に好ましい。着色基材1の厚さの下限は限定されない。取り扱い性を高めるなどの観点から、かかる厚さは10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。
【0021】
本実施形態に係る着色積層体10が備える着色基材1は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの耐候剤を含んでいてもよい。
本実施形態に係る着色積層体10が備える着色基材1は、所望により蒸着、スパッタリングなどの手法により形成された金属性皮膜を、一方の主面1Aと反対側の主面上に有していてもよい。
【0022】
本実施形態に係る着色積層体10が備える着色基材1は、その主面の少なくとも一方に、その(それらの)主面に積層される要素(樹脂層2、金属性皮膜、粘着剤層などが例示される。)に対する剥離強さを高める目的で、酸化法や凹凸化法などによる表面処理が施されていてもよい。上記の酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、上記の凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は着色基材1の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果および操作性などの面から、好ましく用いられる。また、シランカップリング剤などによるプライマー層が設けられていてもよい。
【0023】
(2)樹脂層
本実施形態に係る着色積層体10が備える樹脂層2は、後述するエネルギー線重合性化合物を含有する組成物に対して、エネルギー線を照射して、そのエネルギー線重合性化合物を重合させることにより形成されるものである。通常、エネルギー線重合性化合物を重合させると、上記の組成物は硬化することから、この重合前の組成物を、本明細書において、「硬化性組成物」ともいう。後に詳述するように、本実施形態に係る樹脂層2を形成するための組成物である硬化性組成物は、特定の光スペクトルを有する光が照射されたときに、含有するエネルギー線重合性化合物の重合反応が進行することが可能である。
【0024】
以下、一例として、樹脂層2がハードコート層である場合について詳しく説明する。
ハードコート層である樹脂層2を形成するための硬化性組成物は、最大値が380nm未満の範囲に位置する単一のピークから実質的に構成される光スペクトルを有する光(本明細書において、「第一の光」ともいう。)を照射したときに重合反応が進行可能なエネルギー線重合性化合物を含有する。
【0025】
かかるエネルギー線重合性化合物として、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系などの重合性官能基数の少ない活性エネルギー線重合性オリゴマーを主体とし、これに活性エネルギー線重合性モノマーを加えたものが例示される。
【0026】
あるいは、上記のエネルギー線重合性化合物として、5官能以上の多官能アクリレート系モノマーを主体とするものも例示される。5官能以上の多官能アクリレート系モノマーとしては、例えばジペンタエリスリトールペンタアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートなどを挙げることができる。これらの中で、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。これらの多官能アクリレート系モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記のエネルギー線重合性化合物は、上記の5官能以上の多官能アクリレート系モノマーと、エネルギー線重合性オリゴマーおよび/または4官能以下のエネルギー線重合性モノマーとを含有していてもよい。
【0028】
ここで、エネルギー線重合性オリゴマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系などを挙げることができる。これらのエネルギー線重合性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
一方、4官能以下のエネルギー線重合性モノマーとしては、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレート;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどの4官能以下の多官能アクリレートを挙げることができる。これらの4官能以下の活性エネルギー線重合性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方を意味する。他の類似語も同様である。
【0030】
本実施形態に係る硬化性組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。この光重合開始剤としては、第一の光に対する感受性を有している限り、従来公知の光重合開始剤の中から適宜選択して用いることができる。このような光重合開始剤としては、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドなどを挙げることができる。
【0031】
上記の光重合開始剤の使用量は特に限定されない。例示的に具体的な数値範囲を示せば、エネルギー線重合性化合物100質量部に対して、1〜15質量部の範囲が挙げられ、2〜10質量部の範囲が好ましい範囲として例示される。
【0032】
本実施形態に係る硬化性組成物は、上記の光重合開始剤とともに、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤を併用してもよい。これらの光増感剤は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0033】
本実施形態に係る硬化性組成物は、前述の、エネルギー線重合性化合物、および所望により用いられる前述の光重合開始剤や光増感剤、さらには各種添加剤、例えば赤外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤などをそれぞれ所定の割合で加えることにより、調製することができる。この際、必要に応じ、溶媒を加え、コーティングに適した濃度および粘度に調整するのがよい。
【0034】
この際用いる溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、イソホロン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒などが挙げられる。
【0035】
ハードコート層の厚さは特に限定されない。一例を挙げれば、0.1μm以上10μm以下であり、硬化性組成物の重合時の収縮が着色積層体10の形状に与える影響を低下させる観点などから、0.3μm以上5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上3μm以下であることがより好ましい。
【0036】
ハードコート層の硬度は特に限定されない。必要に応じ適宜設定されるべきものである。一例として、JIS K5600−5−4(ISO/DIS 15184:1996、塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法))に準拠して測定される鉛筆硬度として、H以上であることが挙げられる。鉛筆硬度がH以上であれば、十分に高い硬度を有するハードコート層であるといえる。ハードコート層の鉛筆硬度が過度に高い場合には、硬化組成物の硬化の際に硬化収縮に起因する不具合が生じる可能性が高まることもあるため、ハードコート層は5H以下とすることが好ましく、3H以下とすることがより好ましい。
【0037】
(3)その他の要素
本実施形態に係る着色積層体10は、着色基材1および樹脂層2以外の構成要素を備えていてもよい。そのような要素の具体例として、粘着剤層および剥離シートが例示される。
【0038】
(3−1)粘着剤層
本実施形態に係る着色積層体10は、着色基材1の一方の主面1Aと反対側の面上に、粘着剤層を備えていてもよい。かかる粘着剤層と着色基材1の一方の主面1Aとの間に金属性皮膜が存在していてもよい。本実施形態に係る着色積層体10が備える粘着剤層は、粘着性組成物から形成される層状体である。粘着剤層を構成する粘着性組成物の組成は特に限定されない。主成分である粘着剤としてゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系等の粘着剤が例示され、これらの一種類を使用してもよいし、二種類以上を使用してもよい。
【0039】
上記のうちアクリル系の粘着剤についてやや詳しく説明すれば、官能基含有モノマーと、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等の他のモノマーとを共重合して得られるアクリル系共重合体を主成分とする。粘着性組成物は必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等をさらに含んでいてもよい。
【0040】
官能基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタアクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーやアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有モノマーが挙げられる。官能基含有モノマーは、アクリル系共重合体を構成するモノマー全体を基準(100質量%)として、モノマー単位として0.3〜5.0質量%含むことが好ましい。アクリル系共重合体は、官能基を含有することにより、架橋剤との反応で凝集力を調整することができ、粘着力および耐熱性を向上させることができる。
【0041】
粘着性組成物に使用される架橋剤としては、特に制限はなく、アクリル系の材料を主成分とする粘着性組成物において慣用されているものの中から適宜選択して用いられ、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが用いられ、好ましくはポリイソシアネート化合物が用いられる。
【0042】
粘着剤層の厚さは特に限定されない。用途に応じて適宜設定されるべきものであり、通常、1μm以上500μm以下程度とされる。
【0043】
(3−2)剥離シート
本実施形態に係る着色積層体10が上記の粘着剤層を備える場合には、その着色基材1に対向する側と反対側の面を使用時まで保護する目的で、その面に、剥離シートの剥離面が貼付されていてもよい。この剥離シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムの一方の主面に、剥離剤を塗布することを含む剥離処理が施されたものなどが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系などを用いることができるが、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。剥離シートの厚さは特に限定されない。
【0044】
剥離シートの厚さは、通常、20〜250μm程度である。本実施形態に係る着色積層体10が自動車の窓貼りフィルムとして使用される場合のように、着色積層体10に対して加熱成形処理が施される場合には、剥離シートの厚さは20〜50μmであることが好ましい。
【0045】
(4)着色積層体の物性等
本実施形態に係る着色積層体10は、用途に合わせた物性を有することが好ましい。例えば、本実施形態に係る着色積層体10が自動車用窓貼りフィルムに用いられる場合には、被着体である窓ガラスの曲面形状に合わせて、フィルムの加熱成形処理が施されるため、この加熱成形処理が適切に行われるように、本実施形態に係る着色積層体10は次の熱収縮に関する特性を有することが好ましい。すなわち、着色積層体10を180℃で5分間熱処理したときに、着色基材1の原反の長尺方向に平行な方向(MD方向)における収縮率SMDが1.0%以上5.0%以下であること、および着色積層体10の主面内方向で上記のMD方向に直交する方向(TD方向)における収縮率STDが0.1%以上3.0%以下であることが好ましい。
【0046】
2.着色積層体の製造方法
本実施形態に係る着色積層体10は、次に説明する塗布工程および硬化工程を備え、さらに必要に応じ粘着剤層形成工程などを備える。
【0047】
(1)塗布工程
まず、本実施形態に係る着色積層体10が備える着色基材1の一方の主面1A上に、前述の硬化性組成物を塗布して、上記主面1A上に塗膜を形成する。硬化性組成物の塗布量は限定されない。塗布により形成された塗膜から形成される樹脂層2の厚さに応じて適宜設定される。塗布手法も特に限定されない。例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などが例示される。必要に応じ、着色基材1の一方の主面1A上に形成された塗膜を乾燥して、塗膜内に含有される揮発性成分、特に溶媒を除去してもよい。乾燥する場合におけるその条件は任意であり、例えば、80〜140℃で数分間〜数十分間乾燥させることが挙げられる。
【0048】
(2)硬化工程
塗布工程により着色基材1の一方の主面1A上に形成された塗膜に、第一の光、すなわち、最大値が380nm未満の範囲に位置する単一のピークから実質的に構成される光スペクトルを有する光と、エネルギー線重合性化合物の重合反応を進行させることが可能な第二の光とを含む光を照射して、塗膜内に含有されるエネルギー線重合性化合物の重合反応を進行させる。この重合反応が進行することにより、塗膜は樹脂層2となり、着色基材1と樹脂層2とからなる本実施形態に係る着色積層体10の基本的な構造が得られる。
【0049】
硬化工程において、第二の光の照射開始時期は第一の光の照射開始時期よりも後とされる。すなわち、硬化工程において、光の照射開始直後は、第一の光のみによる照射が行われる。硬化工程を上記の照射開始時期に関する条件を満たすように設定することにより、得られた着色積層体10について外観不良を生じにくくさせることができる。この外観不良の発生しにくさの程度を評価する方法の一つとして、得られた着色積層体から30cm×30cmの大きさの測定領域を任意に選んだときに、その測定領域において、たわみに基づく縞模様が目視で確認されないか否かということが挙げられる。本明細書において、この評価方法を「目視評価」ともいう。本実施形態に係る製造方法によれば、硬化工程が第一の光を照射することを含むことにより、この目視評価が良好と判定される、すなわち、上記の測定領域において縞模様が目視で確認されない着色積層体10を安定的に得ることができる。一方、硬化工程が第一の光を照射することを含まない場合には、この目視評価で不良と判定される着色積層体が得られる可能性が高まる。
【0050】
硬化工程において照射される光の照射量としては、塗膜に含有される硬化性組成物の種類や塗膜の厚さに応じて適宜選択すればよく、通常50〜500mJ/cm
2程度であり、100〜450mJ/cm
2が好ましく、100〜300mJ/cm
2がより好ましい。また、照射光の照度は、通常50〜500mW/cm
2程度であり、100〜450mW/cm
2が好ましく、100〜400mW/cm
2がより好ましい。
硬化工程において照射される光の照射光源の種類は限定されない。第一の光を安定的にかつ簡易的に照射できることから、紫外線域の発光ダイオード(UV−LED)が第一の光の照射光源として好ましい。第一の光と同一の種類の光源では、第一の光と第二の光とを区別できなくなる場合があるため、第二の光は、発光ダイオード以外の光源から照射された光であることが好ましい。硬化工程により得られるハードコート層の硬度をより安定的に高める観点から、第二の光の光源は高圧水銀ランプであることが好ましい。
【0051】
第二の光の照射開始時期までに照射される第一の光の照射量(本明細書において「第一照射量」ともいう。)は限定されない。製造工程における外観不良の発生を抑制することとハードコート層の硬度を十分に高めることとをより安定的に両立させる観点から、硬化工程において照射される光の全照射量に対する第一照射量の割合(本明細書において「第一照射割合」ともいう。)は、10%以上90%以下であることが好ましく、20%以上80%以下であることがより好ましく、30%以上70%以下であることが特に好ましい。
【0052】
硬化工程には、第一の光および第二の光の双方が照射されている期間が存在していてもよいし、第一の光の照射が完了してから第二の光の照射が開始されてもよい。後者の場合において、第一の光から第二の光への切り替わりのタイミングは限定されない。一例として、全照射量の50%程度が第一の光からなり、その後、所定の照射量に達するまで第二の光が照射されることが挙げられる。このような照射形態であっても、目視評価が良好な着色積層体10を得ることが可能である。硬化工程において照射される光は、第一の光および第二の光以外の光を含んでもよい。設備上の負荷が高くなったり、工程数が増えて生産性を高めることが困難となったりすることから、硬化工程において照射される光は、第一の光および第二の光からなることが好ましい。
【0053】
(3)粘着剤層形成工程
こうして着色積層体10を得たら、必要に応じ、着色基材1の主面1Aと反対側の主面に、粘着剤層を形成する。粘着剤層の形成方法は任意である。一例を挙げれば、粘着剤層を形成するための組成物である粘着剤組成物からなる、またはこの粘着剤組成物に必要に応じ溶媒を添加してなる粘着剤層形成用塗工液を、着色基材1の主面1Aと反対側の主面上に塗布し、これを乾燥させることにより粘着剤層を得ることができる。粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合には、必要に応じて、粘着剤層を加熱したり、養生したりして、架橋剤の反応を進行させてもよい。
【0054】
(4)剥離シート貼付工程
上記のように粘着剤層形成工程を行った場合には、得られた粘着剤層の露出する面、すなわち、粘着剤層における着色基材1に対向する側と反対側の面に、剥離シートの剥離面を貼付して、粘着剤層の上記の面を保護する。
【0055】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0057】
〔実施例1〕
(1)硬化性組成物の調製
次の組成を有する硬化性組成物を調製した。
i)エネルギー線重合性化合物として5官能アクリレートであるジペンタエリスリトールペンタアクリレートを100重量部、
ii)光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製「Darocure TPO」)を3重量部、および
iii)溶媒としてトルエンを100重量部。
【0058】
(2)着色積層体の作製
厚さ23μmのポリエチレンテレフタレート製着色基材フィルム(SKC社製「TT16K」、可視光線透過率:20%、180℃5分間熱処理したときのMD方向の収縮率が3.0%、TD方向の収縮率が0.5%)の一方の主面上に、上記の硬化性組成物を、マイヤーバーにて、樹脂層としての厚さが2μmとなる量塗布して、上記の主面上に塗膜を形成した。得られた着色基材と塗膜とからなる積層体に対して、塗膜側から、365nmに最大値が位置する単一のピークから実質的に構成される光スペクトルを有する光(第一の光)を出力可能な光源(アイグラフィックス社製「UV−LED」、照度:230mW/cm
2程度、以下「第一の光源」という。)を用いて、照射量が107mJ/cm
2となるように、第一の光を照射した。続いて、第二の光を照射可能な高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製、照度200mW/cm
2、以下「第二の光源」という。)を用いて、照射量が125mJ/cm
2となるように、第二の光を照射した。こうして、塗膜を硬化させて、ハードコート層からなる樹脂層を、着色基材上に形成して、着色積層体を得た。
【0059】
〔比較例1〕
照射光源として、第二の光源を用いて、照射量が125mJ/cm
2になるように、第二の光を照射した。こうして、着色積層体を得た。
【0060】
〔比較例2〕
照射光源として、第一の光源を用いて、照射量が214mJ/cm
2になるように、第一の光を照射した。こうして、着色積層体を得た。
【0061】
<外観評価>
実施例および比較例のそれぞれに係る着色積層体のそれぞれを、定盤上に置いて、目視で観察して、縞状の模様が認められるか否かを確認した。
【0062】
<鉛筆硬度>
JIS K5600−5−4(ISO/DIS 15184:1996、塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法))に基づいて、樹脂層の鉛筆硬度を求めた。
【0063】
【表1】
【0064】
表1から分かるように、本発明の条件を満たす実施例の着色積層体は、縞状の外観不良が生じにくく、かつハードコート層の硬度がHと十分に高かった。