特許第6246652号(P6246652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

特許6246652ブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246652
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤ
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/06 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   D07B1/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-94219(P2014-94219)
(22)【出願日】2014年4月30日
(65)【公開番号】特開2015-209622(P2015-209622A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100178685
【弁理士】
【氏名又は名称】田浦 弘達
(72)【発明者】
【氏名】武者 信一
(72)【発明者】
【氏名】金冨 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】山岸 淳一
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/030547(WO,A1)
【文献】 特開2009−91691(JP,A)
【文献】 特開2011−57075(JP,A)
【文献】 特開2004−68102(JP,A)
【文献】 鹿久保 隆志,ゴム接着処理後および老化後のブラス表面の角度分解光電子分光解析,第23回エラストマー討論会 講演要旨集,日本,社団法人 日本ゴム協会,2011年12月 2日,127-128
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
XPS(X線光電子分光)法による測定において、
最表面に、亜鉛が4.8原子%以下、リンが0.5原子%以上、酸素が50.0原子%以下の量で含まれ、
且つ、該最表面における、亜鉛に対する銅の原子数量比が1〜6であることを特徴とする、ブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤ。
【請求項2】
イオン化傾向が亜鉛より小さく銅よりも大きい金属が0.010〜2.0原子%の量でさらに含まれることを特徴とする、請求項1に記載のブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用タイヤ、コンベアベルト、ホース等、特に強度が要求されるゴム物品には、ゴムを補強して強度及び耐久性を向上させる目的で、スチールコード等の金属補強材を被覆ゴムで被覆したスチールコード−ゴム複合体が用いられている。ここで、かかるスチールコード−ゴム複合体が高い補強効果を発揮し、信頼性を得るためには、該被覆ゴムと金属補強材との間に安定かつ強力な接着が必要である。
【0003】
被覆ゴムと金属補強材との間にこうした高い接着性を発揮するスチールコード−ゴム複合体を得るため、亜鉛、真鍮等でめっきされたスチールコード等の金属補強材を硫黄が配合された被覆ゴムに埋設し、加熱加硫時にゴムの加硫と同時にこれらを接着させる、いわゆる直接加硫接着が広く用いられている。これまで、該直接加硫接着による前記被覆ゴムと金属補強材との間のさらなる接着性向上のため、該直接加硫接着に関する様々な検討が行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、スチールワイヤの周面にブラスめっきを施し、次いで伸線加工を施した後、該スチールワイヤの表面を、遷移金属を塩として含む水溶液にて洗浄することで、該ブラスめっきの表面における、亜鉛および銅を除く遷移金属の濃度を0.01mass%以上としたスチールワイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−91691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載されたスチールワイヤでは、被覆ゴムとの初期接着性、及び耐熱接着性の向上は認められるものの、さらなる初期接着性及び耐熱接着性の向上が求められており、またそれら性能の他、例えば初期接着速度の向上も望まれていた。また、初期接着性、耐熱接着性、及び初期接着速度は、スチールワイヤ表面の酸素の量にも影響されるが、特許文献1のスチールワイヤでは十分に検討されていなかった。
【0007】
そこで、本発明は、初期接着性、耐熱接着性、及び初期接着速度を向上させることが可能なブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤは、XPS(X線光電子分光)法による測定において、最表面に、亜鉛が4.8原子%以下、リンが0.5原子%以上、酸素が50.0原子%以下の量で含まれ、且つ、該最表面における、亜鉛に対する銅の原子数量比が1〜6であることを特徴とする。本発明のブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤによれば、初期接着性、耐熱接着性、及び初期接着速度を向上させることができる。
なお、本発明において、特定の原子についての「原子%」とは、XPS法で測定された全ての原子の数量に対する、特定の原子の数量の割合を意味し、また、「原子数量比」とは、原子の数量の比を意味する。
【0009】
本発明のブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤは、イオン化傾向が亜鉛より小さく銅よりも大きい金属が0.010〜2.0原子%の量でさらに含まれることが好ましい。この構成によれば、スチールワイヤを被覆する被覆ゴム中のコバルト塩の含有量を減らすことができるので、被覆ゴムの耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、初期接着性、耐熱接着性、及び初期接着速度を向上させることが可能なブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明についてその実施形態に基づき具体的に説明する。
本発明のブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤ(以下、スチールワイヤとも称す)は、XPS(X線光電子分光)法による測定において、最表面に、亜鉛が4.8原子%以下、リンが0.5原子%以上、酸素が50.0原子%以下の量で含まれ、且つ、該最表面における、亜鉛に対する銅の原子数量比が1〜6であることを特徴とする。
【0012】
ここで本明細書において、ブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤの最表面とは、かかるスチールワイヤ表面からその深さ方向の厚みがXPS(X線光電子分光)法により測定される領域を意味し、より具体的には、ブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤ表面にX線を照射した際に発生する光電子の放出深さに相当する数nm程度の厚みを意味する。
【0013】
本発明のブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤは、かかるスチールワイヤの最表面を上記XPS法により測定した際、その最表面に、亜鉛が4.8原子%以下、好ましくは、1.0〜4.8原子%は、より好ましくは2〜4.8原子%の量で含まれる。亜鉛を4.8原子%以下の量とすることで、スチールワイヤとゴムとの間の初期接着速度を向上させることができる。なお、亜鉛の含有量の下限値は限定されるものではないが、1原子%以上とした場合には、接着速度が速すぎず、接着層の肥大化を防ぐことができる。
【0014】
上記最表面に、リンが0.5原子%以上、好ましくは0.5〜5.0原子%、より好ましくは0.5〜3%の量で含まれる。リンを0.5原子%以上の量にすることにより、熱劣化中のめっき成分のゴム側への溶出を抑制する傾向があることから、スチールワイヤとゴムと間の耐熱接着性を向上させることができる。なお、リンの含有量の上限値は限定されるものではないが、5.0原子%以下とした場合には、初期接着速度を必要な速度に保つことができる。
【0015】
また、本発明のブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤは、上記最表面における、亜鉛に対する銅の原子数量比が1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3である。亜鉛が上記範囲内の量で含まれるブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤであれば、初期接着性、耐熱接着性、及び初期接着速度を向上させることができる。具体的には、スチールワイヤとその被覆ゴムとを加硫する際、銅と被覆ゴム中の硫黄とが反応して銅の硫化物からなる接着層が生成するところ、亜鉛に対する銅の原子数量比が1以上であることにより、銅が効果的に存在することとなり、接着層が効果的に生成する。また、亜鉛に対する銅の原子数量比が6以下であることにより、接着層の肥大化による初期接着性の低下を防止することができる。
【0016】
ところで、本発明のブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤでは、上記XPS法により測定した際、その最表面に、イオン化傾向が亜鉛より小さく銅よりも大きい金属が0.010〜2.0原子%の量でさらに含まれることが好ましく、より好ましくは0.020〜1.5原子%、さらに好ましくは0.050〜1.0原子%の量で含まれる。かかる金属を含むことにより、スチールワイヤを被覆する被覆ゴム中のコバルト塩の含有量を減らすことができるので、被覆ゴムの耐久性が向上する。また、2.0原子%を超えると被覆ゴムの耐久性のさらなる向上が確認されなくなるため、かかる金属の上限を2.0原子%とする。
なお、タイヤのゴム組成物に配合したコバルト塩を可能なかぎり低減することが好ましい。具体的には、ゴム組成物中のコバルト塩は、一般にタイヤ等に用いられている直接加硫接着における被覆ゴムと金属補強材との初期接着性を向上させるために、被覆ゴムに接着プロモーターとして配合されるところ、被覆ゴムの劣化及び亀裂成長性等に対する耐久性の向上の観点からは、コバルト塩を可能なかぎり低減することが好ましい。
【0017】
ここで、イオン化傾向が亜鉛より小さく銅よりも大きい金属としては、例えば、クロム(Cr)、鉄(Fe)、カドミウム(Cd)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、鉛(Pb)等が挙げられる。なかでも、コバルトが好ましい。コバルトは、さらなる接着性向上を図るべく、接着プロモーターとして通常多くの被覆ゴムに配合されるが、かかる被覆ゴム中に含有されるコバルトの量によっては、熱や湿気、酸化に対する被覆ゴム自体の耐久性が低下する要因となりかねない。しかしながら、かかるコバルトをブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤに存在させることで、被覆ゴム中のコバルト含有量を低減することができるとともに、ゴム物性の低下を効果的に抑制しつつコストを削減することも可能となる。
【0018】
上記ブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤは、例えば、以下の方法により製造することができる。スチールワイヤの周面にブラスめっきを施し、次いで伸線加工を施す。かかるめっき組成は、通常銅が70質量%以下、好ましくは60〜65質量%であり、亜鉛が30質量%以上、好ましくは35〜40質量%である。得られたスチールワイヤの表面を、イオン化傾向が亜鉛より小さく銅よりも大きい金属を金属塩として含む水溶液に浸漬した後、これらスチールワイヤを複数本撚り合せてもよく、またこれらスチールワイヤを複数本撚り合せてスチールコードとした後、該スチールコードの表面を、上記金属塩を含む水溶液に浸漬してもよい。
【0019】
かかる金属塩としては、水に対して高い溶解性を示す限り特に制限されないが、例えば、金属塩化物、炭酸金属塩、硝酸金属塩、硫酸金属塩、酢酸金属塩、クエン酸金属塩、グルコン酸金属塩、アセチルアセトン金属塩等が挙げられる。なかでも、この金属塩を含む水溶液が後述する好適なpH値を実現するには、酢酸金属塩であるのが好ましい。
【0020】
イオン化傾向が亜鉛より小さく銅よりも大きい金属の金属塩を含む水溶液は、当該金属塩の濃度が通常0.001〜1mol/L、好ましくは0.005〜0.5mol/L、より好ましくは0.01〜0.2mol/Lである。当該水溶液のpHは5〜8、好ましくは、5.5〜7.5、より好ましくは6〜7である。上記範囲内の濃度とpH値とを有する金属塩を含む水溶液であると、ブラスめっきに悪影響を及ぼすおそれがないとともに、スチールワイヤの最表面におけるリン、亜鉛及びイオン化傾向が亜鉛より小さく銅よりも大きい金属を所定の量で存在させることが可能となる。また、かかるpH値は、環境上や製造時における安全性に配慮する観点からも好適である。
【0021】
なお、上記金属塩を含む水溶液にスチールワイヤを浸漬する時間は、適宜設定すればよいが、通常0.05〜30秒、好ましくは0.1〜20秒である。
また、ブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤの、上記最表面における、亜鉛やリンの含有量、及び亜鉛に対する銅の原子数量比は、ブラスめっきの組成自体を調整すること以外、例えば、水溶液による処理(浸漬)時間及び/又は水溶液のpHの調整により調整することができ、例えば、水溶液による処理時間を長くするか、水溶液のpHを下げるかで、亜鉛原子数を減少させ、亜鉛に対する銅の原子数量比を増加させることができる。
【0022】
また、上記金属塩を含む水溶液にスチールワイヤを浸漬処理した後、スチールワイヤの表面が活性化するところ、当該浸漬処理後空気中の酸素に触れると、酸化反応により表面の酸素量が高くなり活性が低下する可能性がある。特に、ワイヤ表面を酸素存在下で加熱乾燥する場合上記の活性の減少が顕著となる。スチールワイヤ表面の酸素量が50原子%を超えると、接着反応を阻害してしまうため、本発明のブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤは、上記最表面における酸素の量は50原子%以下である。
したがって、上記金属塩を含む水溶液にスチールワイヤを浸漬処理した後、45℃以上加熱による乾燥は行わないこととする。
【0023】
上記金属塩を含む水溶液の浸漬処理を行った後のスチールワイヤの乾燥法は、例えば、スチールワイヤの表面を圧縮空気で噴射することにより行うことができる。さらに、その後の酸素量の増加を防止するため、スチールワイヤを45℃未満の環境下で保存することが好ましい。
【0024】
なお、上記ブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤの最表面に、イオン化傾向が亜鉛より小さく銅よりも大きい金属としてコバルトを含む場合、上記ブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤを被覆するゴム組成物にコバルトを配合する際にその量を低減することができ、例えば、ゴム成分100質量部に対し、コバルトを0.1質量部以下の量で含有させてもよく、必ずしもコバルトを配合しなくてもよい。この場合、被覆ゴムにおける物性の低下を効果的に抑制しつつコストを削減することも可能となる。かかる観点からすれば、コバルトを一切含有しないのが望ましい。
【0025】
また、タイヤに、カーカスプライやベルトプライ等の補強材として本発明のスチールワイヤと、当該スチールワイヤを被覆するゴム組成物との複合体(スチールワイヤ−ゴム複合体)を用いることが好ましい。かかるタイヤの構造自体は、特に制限されず、公知のタイヤ構造をそのまま採用することができる。なお、上記のスチールワイヤ−ゴム複合体は、初期接着性、耐熱接着性に優れるので、タイヤなどの屈曲頻度の多いものに、上記のスチールワイヤゴム複合体を用いると、特に効果的である。
【0026】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]
黄銅めっき(Cu:63質量%、Zn:37質量%)スチールワイヤを撚り合わせて、1×3構造のスチールコードを作製し、次いで、このスチールコードを、酢酸コバルトが0.1mol/Lが含まれる水溶液(酢酸でpH6.5に調整)中に10秒間浸漬させ、余分な付着液をエアーブローで除去した後、1.5時間常温保存した。該スチールコードを平行に並べ、上下両方向から表1に示す配合のゴム組成物でコーティングし、表1に記載の条件で加硫してサンプルを作製した。該サンプルについて、以下の方法で初期接着性、耐熱接着性、初期接着速度、劣化物性及び耐亀裂成長性を評価した。得られた評価結果、並びに上記浸漬後のスチールワイヤの最表面の組成をX線光電子分光(X−ray photoelectron Spectroscopy:XPS、Quantera SXM、アルバック・ファイ(株)製)にて、リン(P)、亜鉛(Zn)、酸素(O)及びコバルト(Co)の量(原子%)、並びに亜鉛に対する銅の原子数量比(Cu/Zn)を測定した結果を表1に示す。
【0028】
なお、X線光電子分光による測定条件は、以下のとおりである。
X線源:単色化Al−Kα線
測定領域:50μmΦ
測定ピーク:C1s、O1s、N1s、P2p、Cu2p2/3、Zn2p2/3
データ処理:Multipak(アルバック・ファイ(株)製)
定量:得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量
*Cu/Znは、Cu2p2/3、Zn2p2/3の定量値の比である。
【0029】
[実施例2〜5、比較例1〜4]
表1に示すように、各配合量を変化させた以外、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価した。得られた結果を表1に示す。なお、亜鉛濃度、及び亜鉛に対する銅の原子数量比は、例えば、水溶液による処理時間を長くするか、水溶液のpHを下げるかで、亜鉛原子数が減少し、Cu/Znが増加する。
[比較例5]
スチールコードの浸漬処理後の乾燥条件などを表1に示すように変化させた以外、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価した。得られた結果を表1に示す。
【0030】
《初期接着性の評価方法》
各サンプルを160℃で7分加硫した後に、ASTM−D−2229に準拠し、各サンプルからスチールコードを引き抜き、ゴムの被覆状態を目視で観察して、比較例1のサンプルのゴム被覆率を100として、各サンプルを指数評価した。数値が大きいほど、初期接着性が優れることを意味する。
【0031】
《耐熱接着性の評価方法》
各サンプルを160℃で20分加硫し、当該加硫後のサンプルを窒素雰囲気下110℃の条件で30日間放置した後に、ASTM−D−2229に準拠し、各サンプルからスチールコードを引き抜き、ゴムの被覆状態を目視で観察して、比較例1のサンプルのゴム被覆率を100として、各サンプルを指数評価した。数値が大きいほど、耐熱接着性が優れることを意味する。
【0032】
《ゴムの劣化物性の評価方法》
未加硫ゴムを160℃で20分加硫後、100℃で24時間(熱劣化条件)で劣化させた後に、JIS K6251に準拠して引張試験を行うことによってEb(切断時伸び(%))及びTb(引張強さ(MPa))を測定し、熱劣化後のTF(タフネス:Eb×Tb)を求め、比較例1を100として、各サンプルを指数評価した。数値が大きいほど、ゴムの劣化物性が優れること(熱劣化条件で劣化しにくいこと)を意味する。
【0033】
《ゴムの耐亀裂成長性の評価方法》
各サンプルについて上島製疲労試験機を用いて定応力疲労試験を行い、破断するまでの回数を測定し、比較例1を100として指数表示した。該数値が大きいほど耐亀裂成長性に優れることを示す。
【0034】
【表1】
【0035】
※1 大内新興化学工業(株)製、ノクラック6C、N−フェニル−N'−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン
※2 大内新興化学工業(株)製、ノクセラーDZ、N,N'−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
※3 OMG製、マノボンドC22.5、コバルト含有量22.5質量%
【0036】
表1の結果から明らかなように、XPS法による測定で最表面にP、Zn、Oが特定の量で含有され、且つ、最表面におけるCu/Znが特定の値であるスチールコードを採用した実施例1〜5は、比較例1〜5に比して、優れた初期接着性、耐熱接着性及び初期接着速度を発揮することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、初期接着性、耐熱接着性、及び初期接着速度を向上させることが可能なブラスめっき付きゴム物品補強用スチールワイヤを提供することができる。