【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の従来技術にあっては、以下のような課題がある。
特許文献1に記載のパワー半導体モジュールあっては、5つの外部導出端子のうち、4つの外部導出端子(6a,6b,6c,6d)は、外囲ケースの長辺を構成する側壁部のうち一方の側壁部に保持され、当該一方の側壁部から内端部及び外端部が延出する。残る1つの外部導出端子(6e)は、その対辺を構成する他方の側壁部に保持され、当該他方の側壁部から内端部及び外端部が延出する。
そのため、4つの外部導出端子が保持された前記一方の側壁部に放熱径路が集中してしまい、熱分布が不均一化する。
また、3つの外部導出端子(6a,6b,6c)と、他の2つの外部導出端子(6d,6e)とで長さが均等でない。このことによっても、熱分布が不均一化する。
ダイオードが接合されず、接続アングルと外部導出端子との接続を中継する導体パターン(同文献中符号2b5)がダイオード間に配置されていないため、一定の回路面積内においてダイオード間の距離をとることに貢献しておらず、6つのダイオードの密集度を高める。このことによっても、熱分布が不均一化する。
以上のような熱分布の不均一が、パワー半導体モジュールにおいて熱衝撃による特性劣化の原因となるという問題がある。
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、3相ダイオードブリッジ回路を構成するパワー半導体モジュールにおいて、放熱性を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、2つの電極(6d,6e)間において、第1ダイオード(3a)と第2ダイオード(3b)、第3ダイオード(3c)と第4ダイオード(3d)、第5ダイオード(3e)と第6ダイオード(3f)がそれぞれ直列接続され、第1ダイオード(3a)及び第2ダイオード(3b)と、第3ダイオード(3c)及び第4ダイオード(3d)と、第5ダイオード(3e)及び第6ダイオード(3f)とが互いに並列に接続された3相ダイオードブリッジ回路を構成するパワー半導体モジュールであって、
前記2つの電極と、各相の直列方向のダイオード同士の接続点に当たる中間の電極とからなる5つの電極をそれぞれ外部接続可能に導出する5つの外部導出端子と、
金属製放熱板と、
前記金属製放熱板の上面に搭載される絶縁基板と、
前記絶縁基板の上面に形成された6つの導体パターンと、
前記導体パターンと前記ダイオードの上面電極とを接続する折り曲げられた板状の導体である7つの接続アングルと、
前記金属製放熱板の上面の外周部に接合され、前記5つの外部導出端子を保持した樹脂製で上下端開口の外囲ケースと、を備え、
各外部導出端子の前記外囲ケースの内側に延出した内端部が前記導体パターンに接続され、
所定方向に、一列目が第1ダイオード、第3ダイオード、第5ダイオードの順で、二列目が第2ダイオード、第4ダイオード、第6ダイオードの順で二列に配列され、
前記6つの導体パターンは、
第1ダイオードが接合された第1導体パターンと、
第3ダイオードが接合された第2導体パターンと、
第5ダイオードが接合された第3導体パターンと、
第2ダイオード、第4ダイオード及び第6ダイオードが共に接合された第4導体パターンと、
第1導体パターンと第2導体パターンとの間に配置された第5導体パターンと、
第2導体パターンと第3導体パターンとの間に配置された第6導体パターンと、で構成され、
前記7つの接続アングルは、
第1ダイオードの上面電極と第5導体パターンとを接続する第1接続アングルと、
第3ダイオードの上面電極と第5導体パターンとを接続する第2接続アングルと、
第3ダイオードの上面電極と第6導体パターンとを接続する第3接続アングルと、
第5ダイオードの上面電極と第6導体パターンとを接続する第4接続アングルと、
第2ダイオードの上面電極と第1導体パターンとを接続する第5接続アングルと、
第4ダイオードの上面電極と第2導体パターンとを接続する第6接続アングルと、
第6ダイオードの上面電極と第3導体パターンとを接続する第7接続アングルと、で構成され、
前記外囲ケースは、前記一列目に隣接した第1側壁部と、前記二列目に隣接した第2側壁部と、当該第1側壁部の両端と当該第2側壁部の両端とを繋ぎ相対する2つの側壁部とからなる矩形状で前記絶縁基板を囲む周壁部を構成し、
5つの外部導出端子は、
内端部が第1導体パターンに接合され、中間部が第1側壁部に保持され、外端部が第1側壁部の上端から延出した第1外部導出端子と、
内端部が第2導体パターンに接合され、中間部が第1側壁部に保持され、外端部が第1側壁部の上端から延出した第2外部導出端子と、
内端部が第3導体パターンに接合され、中間部が第1側壁部に保持され、外端部が第1側壁部の上端から延出した第3外部導出端子と、
内端部が第4導体パターンに接合され、中間部が第2側壁部に保持され、外端部が第2側壁部の上端から延出した第4外部導出端子と、
内端部が第5又は第6導体パターンに接合され、中間部が第2側壁部に保持され、外端部が第2側壁部の上端から延出した第5外部導出端子と、で構成され、
第1、第2、第3外部導出端子が前記中間の電極の端子に相当し、第4、第5外部導出端子が前記2つの電極の端子に相当し、
前記内端部は、前記所定方向に沿って第1外部導出端子、第4(又は第5)外部導出端子、第2外部導出端子、第5(又は第4)外部導出端子、第3外部導出端子の順で配列し、
第1、第2及び第3外部導出端子の内端部は、第1側壁部から前記所定方向に対する垂直な方向に延びて前記一列目の配列領域を越え前記一列目と前記二列目の間の領域で前記導体パターンに接続し、
第4及び第5外部導出端子の内端部は、第2側壁部から前記所定方向に対する垂直な方向に延びて前記二列目の配列領域を越え前記一列目と前記二列目の間の領域で前記導体パターンに接続したパワー半導体モジュールである。
【0007】
請求項2記載の発明は、第1、第2、第3、第4及び第5外部導出端子は、その内端部が互いに等しい長さで構成されている請求項1に記載のパワー半導体モジュールである。
【0008】
請求項3記載の発明は、第1、第2、第3、第4及び第5外部導出端子は、その内端部の先端部同士が、前記所定方向に見て重なって配置されている請求項1又は請求項2に記載のパワー半導体モジュールである。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記接続アングルの前記導体パターンに接続する端部が分岐状に形成されている請求項1又は請求項2に記載のパワー半導体モジュールである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、3つの外部導出端子と、2つの外部導出端子とが外囲ケースの対辺に分散して配置され、それらの5つの内端部が前記所定方向に沿って対辺から延出するものが交互に順序付けられて分散して配列されているので、ダイオードの発熱時に熱分布の均一化が図られる。
また、これらの5つの内端部は、ダイオードの一列を越えて一列目と二列目の間の領域で導体パターンに接続するので、自ずとほぼ均等に長く形成され、また意図的に均等に長くすることが容易であり、ダイオードの発熱時に熱分布の均一化が図られる。
さらに、ダイオードが接合されない第5及び第6導体パターンが、ダイオードが接合される他の導体パターンの間に配置されているので、一定の回路面積内においてダイオード間の距離をとることに貢献し、6つのダイオードの密集度を低くすることで、ダイオードの発熱時に熱分布の均一化が図られる。
以上により、3相ダイオードブリッジ回路を構成するパワー半導体モジュールにおいて、放熱性を向上することができ、熱衝撃を緩和し特性向上が達成される。
さらに、第1、第2、第3、第4及び第5外部導出端子を、その内端部の先端部同士が、前記所定方向に見て重なって配置されるようにすることができ、そのようにすれば、各内端部をより長く形成することができる。
内端部をより長く形成することができれば、絶縁基板の上方の外囲ケース内の空間において端子の熱容量を向上でき、熱衝撃を緩和できる。また、内端部を長く形成すれば、内端部の弾性的な撓み易さを向上することができ、導体パターンとの半田接合において応力を緩和することができ、電気および熱伝導性の良好な接合が容易に得られる結果、放熱性を向上することができる。
接続アングルの導体パターンに接続する端部が分岐状に形成されている構造によっても、分岐した枝部分の弾性的な撓み易さを向上することができ、導体パターンとの半田接合において応力を緩和することができ、電気および熱伝導性の良好な接合が容易に得られる結果、放熱性を向上することができる。また、接続アングルが分岐していることによって、熱的集中を緩和することができ、分岐するが一体であるので接続アングルの接続作業は煩雑化せず、電気および熱伝導性の良好な接合が容易に得られる。