特許第6246654号(P6246654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246654
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】パワー半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20171204BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 23/34 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
   H01L23/34 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-96443(P2014-96443)
(22)【出願日】2014年5月8日
(65)【公開番号】特開2015-216148(P2015-216148A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】100113284
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 考幸
(72)【発明者】
【氏名】稲毛 彦文
【審査官】 井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−091787(JP,A)
【文献】 特開2007−243157(JP,A)
【文献】 特開2014−078564(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/179638(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/128787(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/34
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電極(6d,6e)間において、第1ダイオード(3a)と第2ダイオード(3b)、第3ダイオード(3c)と第4ダイオード(3d)、第5ダイオード(3e)と第6ダイオード(3f)がそれぞれ直列接続され、第1ダイオード(3a)及び第2ダイオード(3b)と、第3ダイオード(3c)及び第4ダイオード(3d)と、第5ダイオード(3e)及び第6ダイオード(3f)とが互いに並列に接続された3相ダイオードブリッジ回路を構成するパワー半導体モジュールであって、
前記2つの電極と、各相の直列方向のダイオード同士の接続点に当たる中間の電極とからなる5つの電極をそれぞれ外部接続可能に導出する5つの外部導出端子と、
金属製放熱板と、
前記金属製放熱板の上面に搭載される絶縁基板と、
前記絶縁基板の上面に形成された6つの導体パターンと、
前記導体パターンと前記ダイオードの上面電極とを接続する折り曲げられた板状の導体である7つの接続アングルと、
前記金属製放熱板の上面の外周部に接合され、前記5つの外部導出端子を保持した樹脂製で上下端開口の外囲ケースと、を備え、
各外部導出端子の前記外囲ケースの内側に延出した内端部が前記導体パターンに接続され、
所定方向に、一列目が第1ダイオード、第3ダイオード、第5ダイオードの順で、二列目が第2ダイオード、第4ダイオード、第6ダイオードの順で二列に配列され、
前記6つの導体パターンは、
第1ダイオードが接合された第1導体パターンと、
第3ダイオードが接合された第2導体パターンと、
第5ダイオードが接合された第3導体パターンと、
第2ダイオード、第4ダイオード及び第6ダイオードが共に接合された第4導体パターンと、
第1導体パターンと第2導体パターンとの間に配置された第5導体パターンと、
第2導体パターンと第3導体パターンとの間に配置された第6導体パターンと、で構成され、
前記7つの接続アングルは、
第1ダイオードの上面電極と第5導体パターンとを接続する第1接続アングルと、
第3ダイオードの上面電極と第5導体パターンとを接続する第2接続アングルと、
第3ダイオードの上面電極と第6導体パターンとを接続する第3接続アングルと、
第5ダイオードの上面電極と第6導体パターンとを接続する第4接続アングルと、
第2ダイオードの上面電極と第1導体パターンとを接続する第5接続アングルと、
第4ダイオードの上面電極と第2導体パターンとを接続する第6接続アングルと、
第6ダイオードの上面電極と第3導体パターンとを接続する第7接続アングルと、で構成され、
前記外囲ケースは、前記一列目に隣接した第1側壁部と、前記二列目に隣接した第2側壁部と、当該第1側壁部の両端と当該第2側壁部の両端とを繋ぎ相対する2つの側壁部とからなる矩形状で前記絶縁基板を囲む周壁部を構成し、
5つの外部導出端子は、
内端部が第1導体パターンに接合され、中間部が第1側壁部に保持され、外端部が第1側壁部の上端から延出した第1外部導出端子と、
内端部が第2導体パターンに接合され、中間部が第1側壁部に保持され、外端部が第1側壁部の上端から延出した第2外部導出端子と、
内端部が第3導体パターンに接合され、中間部が第1側壁部に保持され、外端部が第1側壁部の上端から延出した第3外部導出端子と、
内端部が第4導体パターンに接合され、中間部が第2側壁部に保持され、外端部が第2側壁部の上端から延出した第4外部導出端子と、
内端部が第5又は第6導体パターンに接合され、中間部が第2側壁部に保持され、外端部が第2側壁部の上端から延出した第5外部導出端子と、で構成され、
第1、第2、第3外部導出端子が前記中間の電極の端子に相当し、第4、第5外部導出端子が前記2つの電極の端子に相当し、
前記内端部は、前記所定方向に沿って第1外部導出端子、第4(又は第5)外部導出端子、第2外部導出端子、第5(又は第4)外部導出端子、第3外部導出端子の順で配列し、
第1、第2及び第3外部導出端子の内端部は、第1側壁部から前記所定方向に対する垂直な方向に延びて前記一列目の配列領域を越え前記一列目と前記二列目の間の領域で前記導体パターンに接続し、
第4及び第5外部導出端子の内端部は、第2側壁部から前記所定方向に対する垂直な方向に延びて前記二列目の配列領域を越え前記一列目と前記二列目の間の領域で前記導体パターンに接続したパワー半導体モジュール。
【請求項2】
第1、第2、第3、第4及び第5外部導出端子は、その内端部が互いに等しい長さで構成されている請求項1に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項3】
第1、第2、第3、第4及び第5外部導出端子は、その内端部の先端部同士が、前記所定方向に見て重なって配置されている請求項1又は請求項2に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項4】
前記接続アングルの前記導体パターンに接続する端部が分岐状に形成されている請求項1又は請求項2に記載のパワー半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相ダイオードブリッジ回路を構成するパワー半導体モジュールに係り、その放熱性を向上する装置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3相ダイオードブリッジ回路がAC−DCコンバータに用いられている。図7に、3相ダイオードブリッジ回路の回路図を示す。
図7に示すように3相ダイオードブリッジ回路は、直列接続された3組(3相分)のダイオード3aと3b、3cと3d、3eと3fを、電極6dと電極6eとの間に並列接続した構成をとり、この電極6d,6eのほか、各相の直列方向の中間の電極6a,6b,6cを含む5つの電極を外部接続可能にパッケージの外面に導出する構成をとる。
特許文献1には、金属製放熱板と、金属製放熱板の上面に搭載される絶縁基板と、絶縁基板の上面に形成された導体パターンに半田付けされたダイオード(3a,3b,3c,3d,3e,3f)と、絶縁基板上の導体パターンと当該ダイオードの上面電極とを接続する折り曲げられた板状の導体である6つの接続アングルと、金属製放熱板の上面の外周部に接合され、上記電極の端子に相当する5つの外部導出端子(6a,6b,6c,6d,6e:電極の符号と共用する)を保持した樹脂製で上下端開口の外囲ケースとを備え、各外部導出端子の外囲ケースの内側に延出した内端部が絶縁基板上の導体パターンに接続され、外端部が外囲ケースの周壁部上端から上方へ延出したパワー半導体モジュールが記載されている(同文献図1〜12)。
このようなパワー半導体モジュールにあっては、ダイオードで発生した熱は、絶縁基板を介して金属製放熱板に伝導する放熱径路と、外部導出端子に伝導する放熱径路とを主な放熱径路として放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−272351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の従来技術にあっては、以下のような課題がある。
特許文献1に記載のパワー半導体モジュールあっては、5つの外部導出端子のうち、4つの外部導出端子(6a,6b,6c,6d)は、外囲ケースの長辺を構成する側壁部のうち一方の側壁部に保持され、当該一方の側壁部から内端部及び外端部が延出する。残る1つの外部導出端子(6e)は、その対辺を構成する他方の側壁部に保持され、当該他方の側壁部から内端部及び外端部が延出する。
そのため、4つの外部導出端子が保持された前記一方の側壁部に放熱径路が集中してしまい、熱分布が不均一化する。
また、3つの外部導出端子(6a,6b,6c)と、他の2つの外部導出端子(6d,6e)とで長さが均等でない。このことによっても、熱分布が不均一化する。
ダイオードが接合されず、接続アングルと外部導出端子との接続を中継する導体パターン(同文献中符号2b5)がダイオード間に配置されていないため、一定の回路面積内においてダイオード間の距離をとることに貢献しておらず、6つのダイオードの密集度を高める。このことによっても、熱分布が不均一化する。
以上のような熱分布の不均一が、パワー半導体モジュールにおいて熱衝撃による特性劣化の原因となるという問題がある。
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、3相ダイオードブリッジ回路を構成するパワー半導体モジュールにおいて、放熱性を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、2つの電極(6d,6e)間において、第1ダイオード(3a)と第2ダイオード(3b)、第3ダイオード(3c)と第4ダイオード(3d)、第5ダイオード(3e)と第6ダイオード(3f)がそれぞれ直列接続され、第1ダイオード(3a)及び第2ダイオード(3b)と、第3ダイオード(3c)及び第4ダイオード(3d)と、第5ダイオード(3e)及び第6ダイオード(3f)とが互いに並列に接続された3相ダイオードブリッジ回路を構成するパワー半導体モジュールであって、
前記2つの電極と、各相の直列方向のダイオード同士の接続点に当たる中間の電極とからなる5つの電極をそれぞれ外部接続可能に導出する5つの外部導出端子と、
金属製放熱板と、
前記金属製放熱板の上面に搭載される絶縁基板と、
前記絶縁基板の上面に形成された6つの導体パターンと、
前記導体パターンと前記ダイオードの上面電極とを接続する折り曲げられた板状の導体である7つの接続アングルと、
前記金属製放熱板の上面の外周部に接合され、前記5つの外部導出端子を保持した樹脂製で上下端開口の外囲ケースと、を備え、
各外部導出端子の前記外囲ケースの内側に延出した内端部が前記導体パターンに接続され、
所定方向に、一列目が第1ダイオード、第3ダイオード、第5ダイオードの順で、二列目が第2ダイオード、第4ダイオード、第6ダイオードの順で二列に配列され、
前記6つの導体パターンは、
第1ダイオードが接合された第1導体パターンと、
第3ダイオードが接合された第2導体パターンと、
第5ダイオードが接合された第3導体パターンと、
第2ダイオード、第4ダイオード及び第6ダイオードが共に接合された第4導体パターンと、
第1導体パターンと第2導体パターンとの間に配置された第5導体パターンと、
第2導体パターンと第3導体パターンとの間に配置された第6導体パターンと、で構成され、
前記7つの接続アングルは、
第1ダイオードの上面電極と第5導体パターンとを接続する第1接続アングルと、
第3ダイオードの上面電極と第5導体パターンとを接続する第2接続アングルと、
第3ダイオードの上面電極と第6導体パターンとを接続する第3接続アングルと、
第5ダイオードの上面電極と第6導体パターンとを接続する第4接続アングルと、
第2ダイオードの上面電極と第1導体パターンとを接続する第5接続アングルと、
第4ダイオードの上面電極と第2導体パターンとを接続する第6接続アングルと、
第6ダイオードの上面電極と第3導体パターンとを接続する第7接続アングルと、で構成され、
前記外囲ケースは、前記一列目に隣接した第1側壁部と、前記二列目に隣接した第2側壁部と、当該第1側壁部の両端と当該第2側壁部の両端とを繋ぎ相対する2つの側壁部とからなる矩形状で前記絶縁基板を囲む周壁部を構成し、
5つの外部導出端子は、
内端部が第1導体パターンに接合され、中間部が第1側壁部に保持され、外端部が第1側壁部の上端から延出した第1外部導出端子と、
内端部が第2導体パターンに接合され、中間部が第1側壁部に保持され、外端部が第1側壁部の上端から延出した第2外部導出端子と、
内端部が第3導体パターンに接合され、中間部が第1側壁部に保持され、外端部が第1側壁部の上端から延出した第3外部導出端子と、
内端部が第4導体パターンに接合され、中間部が第2側壁部に保持され、外端部が第2側壁部の上端から延出した第4外部導出端子と、
内端部が第5又は第6導体パターンに接合され、中間部が第2側壁部に保持され、外端部が第2側壁部の上端から延出した第5外部導出端子と、で構成され、
第1、第2、第3外部導出端子が前記中間の電極の端子に相当し、第4、第5外部導出端子が前記2つの電極の端子に相当し、
前記内端部は、前記所定方向に沿って第1外部導出端子、第4(又は第5)外部導出端子、第2外部導出端子、第5(又は第4)外部導出端子、第3外部導出端子の順で配列し、
第1、第2及び第3外部導出端子の内端部は、第1側壁部から前記所定方向に対する垂直な方向に延びて前記一列目の配列領域を越え前記一列目と前記二列目の間の領域で前記導体パターンに接続し、
第4及び第5外部導出端子の内端部は、第2側壁部から前記所定方向に対する垂直な方向に延びて前記二列目の配列領域を越え前記一列目と前記二列目の間の領域で前記導体パターンに接続したパワー半導体モジュールである。
【0007】
請求項2記載の発明は、第1、第2、第3、第4及び第5外部導出端子は、その内端部が互いに等しい長さで構成されている請求項1に記載のパワー半導体モジュールである。
【0008】
請求項3記載の発明は、第1、第2、第3、第4及び第5外部導出端子は、その内端部の先端部同士が、前記所定方向に見て重なって配置されている請求項1又は請求項2に記載のパワー半導体モジュールである。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記接続アングルの前記導体パターンに接続する端部が分岐状に形成されている請求項1又は請求項2に記載のパワー半導体モジュールである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、3つの外部導出端子と、2つの外部導出端子とが外囲ケースの対辺に分散して配置され、それらの5つの内端部が前記所定方向に沿って対辺から延出するものが交互に順序付けられて分散して配列されているので、ダイオードの発熱時に熱分布の均一化が図られる。
また、これらの5つの内端部は、ダイオードの一列を越えて一列目と二列目の間の領域で導体パターンに接続するので、自ずとほぼ均等に長く形成され、また意図的に均等に長くすることが容易であり、ダイオードの発熱時に熱分布の均一化が図られる。
さらに、ダイオードが接合されない第5及び第6導体パターンが、ダイオードが接合される他の導体パターンの間に配置されているので、一定の回路面積内においてダイオード間の距離をとることに貢献し、6つのダイオードの密集度を低くすることで、ダイオードの発熱時に熱分布の均一化が図られる。
以上により、3相ダイオードブリッジ回路を構成するパワー半導体モジュールにおいて、放熱性を向上することができ、熱衝撃を緩和し特性向上が達成される。
さらに、第1、第2、第3、第4及び第5外部導出端子を、その内端部の先端部同士が、前記所定方向に見て重なって配置されるようにすることができ、そのようにすれば、各内端部をより長く形成することができる。
内端部をより長く形成することができれば、絶縁基板の上方の外囲ケース内の空間において端子の熱容量を向上でき、熱衝撃を緩和できる。また、内端部を長く形成すれば、内端部の弾性的な撓み易さを向上することができ、導体パターンとの半田接合において応力を緩和することができ、電気および熱伝導性の良好な接合が容易に得られる結果、放熱性を向上することができる。
接続アングルの導体パターンに接続する端部が分岐状に形成されている構造によっても、分岐した枝部分の弾性的な撓み易さを向上することができ、導体パターンとの半田接合において応力を緩和することができ、電気および熱伝導性の良好な接合が容易に得られる結果、放熱性を向上することができる。また、接続アングルが分岐していることによって、熱的集中を緩和することができ、分岐するが一体であるので接続アングルの接続作業は煩雑化せず、電気および熱伝導性の良好な接合が容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るパワー半導体モジュールの上面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る絶縁基板(ダイオード搭載済み)の上面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る外囲ケース(外部導出端子を含む)の上面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るパワー半導体モジュールの上面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る絶縁基板(ダイオード搭載済み)の上面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る外囲ケース(外部導出端子を含む)の上面図である。
図7】3相ダイオードブリッジ回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0013】
〔回路基本構成〕
以下に説明する第1及び第2実施形態のパワー半導体モジュールは、図7に示す3相ダイオードブリッジ回路20を構成するものである。
この3相ダイオードブリッジ回路は、図7に示すように2つの電極6d,6e間において、第1ダイオード3aと第2ダイオード3b、第3ダイオード3cと第4ダイオード3d、第5ダイオード3eと第6ダイオード3fがそれぞれ直列接続され、第1ダイオード3a及び第2ダイオード3bと、第3ダイオード3c及び第4ダイオード3dと、第5ダイオード3e及び第6ダイオード3fとが互いに並列に接続された回路構成を有し、その他図7に示す通りである。
以下の第1及び第2実施形態において、対応する部分に共通の符号を用いるが、それぞれの具体的な形状、配置などは各形態の図示したものによる。
【0014】
〔第1実施形態〕
まず、図1図3を参照して第1実施形態のパワー半導体モジュールにつき説明する。
図1から図3に示すように本実施形態のパワー半導体モジュールは、5つの外部導出端子6a,6b,6c,6d,6e(図7の対応する電極の符号と共用する)と、金属製放熱板1と、金属製放熱板1の上面に搭載される絶縁基板2と、絶縁基板2の上面に形成された6つの導体パターン2a,2b,2c,2d,2e,2fと、これらの導体パターンのいずれかといずれかのダイオード上面電極とを接続する折り曲げられた板状の導体である7つの接続アングル4a,4b,4c,4d,4e,4f,4gと、外囲ケース6と、を備える。
【0015】
外囲ケース6は、その下端が金属製放熱板1の上面の外周部に接合される。5つの外部導出端子6a,6b,6c,6d,6eを保持した樹脂製で上下端開口の構造である。5つの外部導出端子6a,6b,6c,6d,6eをインサートした成形金型に樹脂を充填することで構成される。
この5つの外部導出端子6a,6b,6c,6d,6eは、図7に示した2つの電極6d,6eと、各相の直列方向の中間の電極6a,6b,6cとからなる5つの電極をそれぞれ外部接続可能に導出するものである。外部導出端子及び接続アングルは、銅などの金属製の板部材を折り曲げ成形したもので実施できる。
外部導出端子6a,6b,6c,6d,6eの外囲ケース6に埋没保持される部分が中間部(符号なし)であり、内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1及び外端部6a2,6b2,6c2,6d2,6e2は外囲ケース6の樹脂素材から露出する部分である。
各外部導出端子6a,6b,6c,6d,6eの外囲ケース6の内側に延出した内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1がその先端部において導体パターンに接続される。
【0016】
特に図2を参照すればわかるように所定方向Aに、一列目が第1ダイオード3a、第3ダイオード3c、第5ダイオード3eの順で、二列目が第2ダイオード3b、第4ダイオード3d、第6ダイオード3fの順で二列に配列されている。本実施形態では、所定方向Aを、本モジュールの長辺方向に沿った方向で、図面上左から右への方向とする。特にこれに拘泥されるものではなく、モジュールの外形は正方形でも実施できる。しかし、本実施形態のように3つのダイオードが並ぶ所定方向Aをモジュールの長辺方向、特に絶縁基板2の長辺方向とすることが好ましい。絶縁基板2上の面積を無駄なく利用しつつ所定方向Aに並ぶ3つのダイオードの間隔と、これと垂直な方向Bに並ぶ2つのダイオードの間隔を同程度として6つのダイオードを分散配置することが容易だからである。
【0017】
6つの導体パターンは、第1ダイオード3aが接合された第1導体パターン2aと、第3ダイオード3cが接合された第2導体パターン2bと、第5ダイオード3eが接合された第3導体パターン2cと、第2ダイオード3b、第4ダイオード3d及び第6ダイオード3fが共に接合された第4導体パターン2dと、第1導体パターン2aと第2導体パターン2bとの間に配置された第5導体パターン2eと、第2導体パターン2bと第3導体パターン2cとの間に配置された第6導体パターン2fと、で構成される。
すなわち、これら6つの導体パターンは、絶縁基板2上で互いに繋がっていない独立したパターンであり、第2ダイオード3b、第4ダイオード3d及び第6ダイオード3fの下面電極に関しては、共通の第4導体パターン2dに接合されることで、互いに電気的に接続される。
【0018】
図1に示すように7つの接続アングルは、第1ダイオード3aの上面電極と第5導体パターン2eとを接続する第1接続アングル4aと、第3ダイオード3cの上面電極と第5導体パターン2eとを接続する第2接続アングル4bと、第3ダイオード3cの上面電極と第6導体パターン2fとを接続する第3接続アングル4cと、第5ダイオード3eの上面電極と第6導体パターン2fとを接続する第4接続アングル4dと、第2ダイオード3bの上面電極と第1導体パターン2aとを接続する第5接続アングル4eと、第4ダイオード3dの上面電極と第2導体パターン2bとを接続する第6接続アングル4fと、第6ダイオード3fの上面電極と第3導体パターン2cとを接続する第7接続アングル4gと、で構成される。
【0019】
外囲ケース6は、一列目のダイオード3a,3c,3eに隣接した第1側壁部5aと、二列目のダイオード3b,3d,3fに隣接した第2側壁部5bと、第1側壁部5aの両端と第2側壁部5bの両端とを繋ぎ相対する2つの側壁部5c,5dとからなる矩形状で絶縁基板2を囲む周壁部(5a,5b,5c,5d)を構成する。さらに側壁部5c,5dの外側に取付部5e,5fが設けられている。取付部5e,5f及びこれに重なる金属製放熱板1の両端部にはボルト挿通用の孔又は切り欠きが形成される。
【0020】
図1及び図3によって示すように、5つの外部導出端子は、内端部6a1が第1導体パターン2aに接合され、中間部が第1側壁部5aに保持され、外端部6a2が第1側壁部5aの上端から延出した第1外部導出端子6aと、内端部6b1が第2導体パターン2bに接合され、中間部が第1側壁部5aに保持され、外端部6b2が第1側壁部5aの上端から延出した第2外部導出端子6bと、内端部6c1が第3導体パターン2cに接合され、中間部が第1側壁部5aに保持され、外端部6c2が第1側壁部5aの上端から延出した第3外部導出端子6cと、内端部6d1が第4導体パターン2dに接合され、中間部が第2側壁部5bに保持され、外端部6d2が第2側壁部5bの上端から延出した第4外部導出端子6dと、内端部6e1が第6導体パターン2fに接合され、中間部が第2側壁部5bに保持され、外端部6e2が第2側壁部5bの上端から延出した第5外部導出端子6eと、で構成される。
【0021】
内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1は、所定方向Aに沿って第1外部導出端子の内端部6a1、第4外部導出端子の内端部6d1、第2外部導出端子の内端部6b1、第5外部導出端子の内端部6e1、第3外部導出端子の内端部6c1の順で配列している。
なお、第4外部導出端子6dと第5外部導出端子6eの配置を入れ替えて、第5外部導出端子6eの内端部6e1を第5導体パターン2eに接合した形態も実施できる。この場合、図1上において、第4導体パターン2dは左右反転したパターンに変更し、第5導体パターン2eを方向Bに長く、第6導体パターン2fを方向Bに短く変更することで実施できる。この場合、内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1は、所定方向Aに沿って第1外部導出端子の内端部6a1、第5外部導出端子の内端部6e1、第2外部導出端子の内端部6b1、第4外部導出端子の内端部6d1、第3外部導出端子の内端部6c1の順で配列することとなる。これは、実質的な相違に関する問題ではなく、左右対称性に関するもので、図1に示した通りの構造において、所定方向Aを右から左と決めてしまえば、第5外部導出端子6eの順番は、第1、第3外部導出端子の間となる。
いずれにしても第1側壁部5aから延出するものと、第2側壁部5bから延出するものとで交互に配置することで、6つの外部導出端子の分散した配置が可能となり、熱分布の均一化が図られる。
【0022】
また、第1、第2及び第3外部導出端子の内端部6a1,6b1,6c1は、第1側壁部5aから所定方向Aに対する垂直な方向Bに延びて一列目のダイオード3a,3c,3eの配列領域B1を越え一列目と二列目の間の領域Bmで導体パターン2a,2b,2cに接続する。第4及び第5外部導出端子の内端部6d1,6e1は、第2側壁部5bから所定方向Aに対する垂直な方向Bに延びて二列目のダイオード3b,3d,3fの配列領域b2を越え一列目と二列目の間の領域Bmで導体パターン2d,2fに接続する。
これにより、内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1は、自ずとほぼ均等に長く形成され、また意図的に均等に長くすることが容易であり、ダイオード3a,3b,3c,3d,3e,3fの発熱時に熱分布の均一化が図られる。本実施形態では、実際に、内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1が互いに等しい長さで構成されている。
5つの内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1のすべてが配列領域B1又はB2を越えて領域Bmに達し等しく長く形成されている。
内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1を長く形成することで、絶縁基板2の上方の外囲ケース6内の空間において端子の熱容量を向上でき、熱衝撃を緩和できる。
また、内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1を長く形成すれば、内端部の弾性的な撓み易さを向上することができる。これにより、導体パターンとの半田接合時及びその後の内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1の応力を緩和することができる。そのめ、半田接合部のボイド、クラックなどの不良の発生を抑えることができる。よって、内端部と導体パターンとの電気および熱伝導性の良好な接合が容易に得られる結果、放熱性を向上することができる。
本実施形態では、接続アングル4a−4gの導体パターンに接続する端部が分岐状に形成されている。これによっても、分岐した枝部分の弾性的な撓み易さを向上することができ、導体パターンとの半田接合において応力を緩和することができ、電気および熱伝導性の良好な接合が容易に得られる結果、放熱性を向上することができる。また、接続アングル4a−4gが分岐しているによって、熱的集中を緩和することができ、分岐するが一体であるので接続アングル4a−4gの接続作業は煩雑化せず、電気および熱伝導性の良好な接合が容易に得られる。
さらに、上述したようにダイオードが接合されない第5及び第6導体パターン2e,2fが、ダイオードが接合される他の導体パターン(2aと2b、2bと2c)の間に配置されているので、一定の回路面積内において所定方向Aにダイオード間の距離をとることに貢献し、6つのダイオード3a−3fの密集度を低くすることで、ダイオードの発熱時に熱分布の均一化が図られる。
以上により、本実施形態のパワー半導体モジュールによれば、3相ダイオードブリッジ回路を構成し、放熱性を向上することができ、熱衝撃を緩和し特性向上が達成される。
【0023】
〔第2実施形態〕
次に、図4図7を参照して第2実施形態のパワー半導体モジュールにつき説明する。
上記第1実施形態の要素と対応する要素はすべて共通の符号で示している。上記第1実施形態と同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。但し、接続アングル4a−4gの導体パターンに接続する端部が分岐状に形成されている構成については実施していない。
【0024】
本実施形態では、内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1の先端部同士が、所定方向Aに見て重なって配置されている。これにより、各内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1をより長く形成することができ、絶縁基板2の上方の外囲ケース6内の空間において端子の熱容量を向上でき、熱衝撃を緩和できる。
また、内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1を長く形成すれば、内端部の弾性的な撓み易さを向上することができる。これにより、導体パターンとの半田接合時及びその後の内端部6a1,6b1,6c1,6d1,6e1の応力を緩和することができる。そのめ、半田接合部のボイド、クラックなどの不良の発生を抑えることができる。よって、内端部と導体パターンとの電気および熱伝導性の良好な接合が容易に得られる結果、放熱性を向上することができる。
【0025】
第1実施形態は、第2実施形態に比較して、第5〜第7接続アングル4e,4f,4gがダイオード3b,3d,3fの上面から方向Bに沿って領域Bmに延出するとともに、所定方向Aに見て第5〜第7接続アングル4e,4f,4gのすべてが第1〜第3外部導出端子6a,6b,6cのいずれとも重ならず、方向Bに見て第5接続アングル4eが第1外部導出端子6aに、第6接続アングル4fが第2外部導出端子6bに、第7接続アングル4gが第3外部導出端子6cに重なるように配置されているので、限られた回路面積を有効に利用しつつ6つのダイオード3a−3fの均等な分散配置が良好に達成されている。
【0026】
以上の第1及び第2実施形態においては、3つの導体パターン2a,2b,2cに個別に接合するダイオードを図7におけるダイオード3a,3c,3eとし、1つの第4導体パターン2dに共通に接合するダイオードを図7におけるダイオード3b,3d,3fとしたが、逆に3つの導体パターン2a,2b,2cに個別に接合するダイオードを図7におけるダイオード3b,3d,3fとし、1つの第4導体パターン2dに共通に接合するダイオードを図7におけるダイオード3a,3c,3eとしてもよい。後者の場合、図7において括弧内に示すとおり6d,6eの符号は入れ替わる。ダイオードの上下面の極性は前者と後者で逆になる。
なお、特許文献1に記載の従来技術と同様に、外囲ケースの上端開口が樹脂製の蓋で閉じられ、該蓋に設けられた孔を通った外端部6a2,6b2,6c2,6d2,6e2が該蓋の上面に延在するように折り曲げられる。
【符号の説明】
【0027】
1 金属製放熱板
2 絶縁基板
2a,2b,2c,2d,2e,2f 導体パターン
3a,3b,3c,3d,3e,3f ダイオード
4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g 接続アングル
5a 第1側壁部
5b 第2側壁部
6 外囲ケース
6a,6b,6c,6d,6e 外部導出端子(電極)
6a1,6b1,6c1,6d1,6e1 内端部
6a2,6b2,6c2,6d2,6e2 外端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7