特許第6246674号(P6246674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246674
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】位置確認装置及びダイボンダ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20171204BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20171204BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01L21/52 F
   H05K13/04 B
   H05K13/08 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-150699(P2014-150699)
(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2016-25304(P2016-25304A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】田井 悠
【審査官】 柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−153769(JP,A)
【文献】 特開平05−180622(JP,A)
【文献】 特開2004−281646(JP,A)
【文献】 特開2013−168465(JP,A)
【文献】 特開2000−292076(JP,A)
【文献】 特開2005−183639(JP,A)
【文献】 特開平09−139399(JP,A)
【文献】 特開2009−253185(JP,A)
【文献】 特開2009−032811(JP,A)
【文献】 特開昭50−080081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H05K 13/04
H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気と屈折率差を有する雰囲気内であるワーク搬送路内の観察部位を観察する位置確認装置であって、
前記ワーク搬送路は、加熱手段及び搬送手段を構成するヒータレールの内部にて構成され、ワーク搬送路を構成するヒータレールには突起筒部が連通されるとともに、この突起筒部は、その開口部が密閉されて内部がワーク搬送路の高温雰囲気と同じ雰囲気となって外気と遮断されて陽炎が発生しない非陽炎発生路を構成し、かつ、前記ワーク搬送路を構成するヒータレールにおいて、観察部位の上方位置に作業用開口部が形成され、前記非陽炎発生路を構成する突起筒部を、作業用開口部を介しての作業を規制しない作業用開口部近傍位置に形成し、この非陽炎発生路を介して観察部位画像を撮影する撮影手段を備えたことを特徴とする位置確認装置。
【請求項2】
前記撮影手段はレンズ系とカメラ部とを備え、前記非陽炎発生路を構成する突起筒部は、作業用開口部の外周側において観察部位に対して斜め方向に延びているとともに、この突起筒部の開口部に前記撮影手段のレンズ系が付設されていることを特徴とする請求項1に記載の位置確認装置。
【請求項3】
前記撮影手段はレンズ系とカメラ部とを備え、前記非陽炎発生路を構成する突起筒部は、作業用開口部の外周側において観察部位に対して斜め方向に延びているとともに、この突起筒部の開口部にガラス板が付設されていることを特徴とする請求項1に記載の位置確認装置。
【請求項4】
前記撮影手段は、レンズ系とカメラ部と観察部位とがシャインプルーフ光学系となるように配置されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の位置確認装置。
【請求項5】
作業用開口部の外周側に複数配設されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の位置確認装置。
【請求項6】
前記作業用開口部に開閉自在な蓋部材を付設したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の位置確認装置。
【請求項7】
前記撮影手段にて撮影された画像を用いて位置決めと検査とを行うことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の位置確認装置。
【請求項8】
位置決め用の画像と検査用の画像とをそれぞれ1枚以上撮影することを特徴とする請求項7に記載の位置確認装置。
【請求項9】
加熱手段及び搬送手段を構成するヒータレールに搬送されるワークにチップをボンディングするダイボンダであって、ヒータレール内部が大気と屈折率差を有する雰囲気である高温雰囲気となり、前記請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の位置確認装置を備え、前記ヒータレール内部が、突起筒部が連通されたワーク搬送路を構成することを特徴とするダイボンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム等に半導体チップ等をマウントするダイボンダ、及びこのようなダイボンダに用いることができる位置確認装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する場合、被実装部材としてのリードフレームに半導体チップを実装するダイボンディングが行なわれる。このダイボンディングには、チップを吸着するコレットを備えたダイボンダが使用される。
【0003】
このようなダイボンダは、図5に示すように、供給部2の半導体チップ1を吸着するコレット3を有するボンディングアーム(図示省略)と、供給部2の半導体チップ1を観察する認識用カメラ(図示省略)と、ボンディング位置でリードフレーム4のアイランド部5を観察する認識用カメラ(図示省略)とを備える。
【0004】
供給部2は半導体ウエハを備え、半導体ウエハが多数の半導体チップ1に分割されている。また、コレット3を保持しているボンディングアームは搬送手段を介して、ピックアップ位置とボンディング位置との間の移動が可能となっている。
【0005】
また、このコレット3は、その下端面に開口した吸着孔を介してチップ1が真空吸引され、このコレット3の下端面にチップ1が吸着する。なお、この真空吸引(真空引き)が解除されれば、コレット3からチップ1が外れる。
【0006】
次に、このダイボンダを使用したダイボンディング方法を説明する。まず、供給部2の上方に配置される認識用カメラにてピックアップすべきチップ1を観察して、コレット3をこのピックアップすべきチップ1の上方に位置させた後、矢印Aのようにコレット3を下降させてこのチップ1をピックアップする。その後、矢印Bのようにコレット3を上昇させる。
【0007】
次に、ボンディング位置の上方に配置された認識用カメラにて、ボンディングすべきリードフレーム4のアイランド部5を観察して、コレット3を矢印C方向へ移動させて、このアイランド部5の上方に位置させた後、コレット3を矢印Dのように下降移動させて、このアイランド部5にチップ1を供給する。また、アイランド部5にチップを供給した後は、コレット3を矢印Eのように上昇させた後、矢印Fのように、ピップアップ位置の上方の待機位置に戻す。
【0008】
すなわち、コレット3を、順次、矢印A、B、C、D、E、Fのように移動させることによって、ピックアップ認識用カメラの観察に基づいて位置決めされたチップ1をコレット3でピックアップし、このチップ1をアイランド部5に実装することになる。
【0009】
ところで、このようなボンディング装置としては、図6に示すようにヒータレール10内を搬送されるリードフレーム11のアイランド部(マウント部)12にチップ1をボンディングする場合がある。
【0010】
ここで、ヒータレール10とは、加熱手段と搬送手段とを構成するものであって、内部には窒素等の不活性ガスが充填され、高温雰囲気(例えば、300℃から500℃程度)とされる。
【0011】
そして、このヒータレール10には、窓部(作業用開口部)13が設けられ、この窓部13を介して、チップ1がボンディングされる。この際、この窓部13の上方には、チップの位置決め等に使用される観察手段14が配置されている。観察手段14はレンズ系15とカメラ部16とを備える。
【0012】
しかしながら、ヒータレール10内が高温雰囲気であるので、この高温雰囲気と常温の大気との間に屈折率差が生じ、観察手段14とヒータレール10の窓部13との間の空間において陽炎が発生する。このように、陽炎が発生すれば、認識画像が陽炎による影響を受けて、チップとアイランド部との認識が不安定となり、精度のよいボンディング作業を行うことができない。
【0013】
そこで、陽炎対策が従来から種々施されている。例えば、高温ステージからの輻射熱の一時蓄積により認識時に陽炎の原因となる常温空間の温度差減少を図ることができるものがある(特許文献1)。
【0014】
すなわち、この特許文献1に記載の画像認識装置は、図7に示すように、光学系20の対物レンズ21と被加工物22との間に、透明カバーガラス23の付いた補助鏡筒24を設けたものである。この場合、補助鏡筒24の先端を被加工物22及び高温のステージ25に接近させるものである。これによって、高温ステージ25からの輻射熱の一時蓄積により認識時に陽炎の原因となる常温空間の温度差減少を図るものである。
【0015】
また、従来には、ダイボンダに用いるものではないが、輻射光やゆらぎ等の影響をうけにくい高温物体の観察装置も提案されている(特許文献2)。この観察装置は、観察対象に紫外線を照射する紫外線照明と、紫外線に対して感度を有するカメラとを備えたものである。
【0016】
この場合、観察対象は、加熱炉内に収納されており、この加熱炉には、紫外線を透過する照明用窓と、カメラが装着されるカメラ用窓が形成されている。すなわち、照明に紫外線を用いることで、観察対象以外の物体からの輻射光の影響を排除して観察対象を明確化しようとするものである。また、加熱炉の胴部から一対の筒部を突出させ、各筒部の先端に窓を設け、窓から観察対象に向って広がる空間を形成している。
【0017】
この場合、周囲と遮断するために末広がりの筒状の側壁(筒部)を設けることで加熱炉内の対流によるゆらぎ(陽炎)の影響を防止するものである。そして、加熱炉内には断熱材を配置するともに、胴部から窓に至る筒部を水冷ジャケットにて覆っている。
【0018】
さらには、従来には、熱風路内の点検装置として、水冷ジャケットを使用し、この水冷ジャケットに、カメラが内蔵されているペリスコープを挿入するものがある(特許文献3)。すなわち、この点検装置は、カメラレンズを空気の流通が行われない水冷ジャケットの内管とペリスコープの外周面との間の隙間に臨ませることによって、カメラレンズの前方の陽炎現象を生じさせないようにしている。
【0019】
また、前記特許文献1〜特許文献3以外にも、高温雰囲気と外気との温度差によって発生する陽炎のために観察画像が歪む問題点を解決する手段として、陽炎部分の雰囲気をブローにて外気に置き換えるもの、対象付近に基準標的を求め、標準標的の理想位置からのずれ量を基に、位置決め補正又は画像歪を補正するもの、高温雰囲気に撮影手段のレンズ系を密接させるもの、陽炎の歪を時間平均して真値を推定するもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2005−183639号公報
【特許文献2】特開2000−292076号公報
【特許文献3】特開平8−239707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前記特許文献1に記載のものでは、補助鏡筒等を必要として、部品点数が多くなって、装置として複雑化を招くことになる。しかも、補助鏡筒の先端と高温ステージとの間に隙間がある。ところで、陽炎は局所的に屈折率が異なる気体の境界に光が侵入したときに起こる現象であり、気体の屈折率差は気体の密度、性質による。このため、この隙間において、陽炎が発生するおそれがあり、安定した観察が可能とは言えない。
【0022】
特許文献2に記載のものでは、紫外線を照射する紫外線照明を必要とし、紫外線のみを撮影装置に入光させるためのフィルタ等を備える必要がある。また、この特許文献2では、筒部にて形成される円錐状空間に、加熱時の対流の影響が及ばないように仕切り板等を設けている。すなわち、特許文献2では、加熱炉内の対流によるゆらぎの影響を防止するものであり、そのために、筒部を覆う水冷ジャケットや仕切り板等を必要とし、装置全体の簡素化を図ることができない欠点がある。
【0023】
また、特許文献3においても、水冷ジャケットを使用し、この水冷ジャケットに、カメラが内蔵されているペリスコープを挿入する必要があり、装置全体の簡素化を図ることができない欠点がある。
【0024】
陽炎部分の雰囲気をブローにて外気に置き換えるものでは、別途ブロー手段を必要とするとともに、ブロー量、ブローのタイミング等の制御も必要であり、ゆらぎの解消が安定しない。また、位置決め補正又は画像歪を補正するものでは、複数回の画像の撮影や、複雑な画像処理工程を必要とし、作業時間が大となるおそれがある。
【0025】
陽炎の歪を時間平均して真値を推定するものでは、陽炎が一定でない場合がある。このような場合には、演算時間(推定時間)を多くとれば、真値の推定が可能かもしれないが、全体として作業時間が大となる。このため、時間制約があるダイボンダ等には採用しにくいものとなる。
【0026】
なお、高温雰囲気にレンズ系を密接させる場合、観察物対象の真上に、レンズ系を有する観察手段(撮影手段)を配置する必要がある。このように、撮影手段を観察物対象の真上に配置した場合、この観察物対象への作業(例えば、チップをボンディングする作業)時において、撮影手段がその作業(動作)の妨げになるおそれがある。
【0027】
本発明は、上記課題に鑑みて、陽炎に影響を受けることなく、歪のない観察画像を得ることができて、高精度な位置確認を行うことが可能な位置確認装置およびダイボンダを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の位置確認装置は、大気と屈折率差を有する雰囲気内であるワーク搬送路内の観察部位を観察する位置確認装置であって、前記ワーク搬送路は、加熱手段及び搬送手段を構成するヒータレールの内部にて構成され、ワーク搬送路を構成するヒータレールには突起筒部が連通されるとともに、この突起筒部は、その開口部が密閉されて内部がワーク搬送路の高温雰囲気と同じ雰囲気となって外気と遮断されて陽炎が発生しない非陽炎発生路を構成し、かつ、前記ワーク搬送路を構成するヒータレールにおいて、観察部位の上方位置に作業用開口部が形成され、前記非陽炎発生路を構成する突起筒部を、作業用開口部を介しての作業を規制しない作業用開口部近傍位置に形成し、この非陽炎発生路を介して観察部位画像を撮影する撮影手段を備えたものである。なお、大気と屈折率差を有する雰囲気とは、例えば、大気よりも高温となる高温雰囲気である。
【0029】
本発明の位置確認装置によれば、非陽炎発生路を介して観察部位画像を撮影する撮影手段を備えているので、この撮影手段にて撮影した画像は、陽炎が発生していない光路を介してのものであり、歪の生じることを回避できる。しかも、観察部位の上方位置に作業用開口部が形成され、この作業用開口部を介した作業(例えば、チップやワイヤ等のボンディングする作業)を行ことができる。そして、作業用開口部を介して作業を規制しない位置に非陽炎発生路が設けられ、この作業を安定して行うことができる。
【0030】
前記撮影手段はレンズ系とカメラ部とを備え、前記非陽炎発生路を構成する突起筒部は、作業用開口部の外周側において観察部位に対して斜め方向に延びているとともに、この突起筒部の開口部に前記撮影手段のレンズ系が付設されているものであってもよい。
【0031】
前記撮影手段はレンズ系とカメラ部とを備え、前記非陽炎発生路を構成する突起筒部は、作業用開口部の外周側において観察部位に対して斜め方向に延びているとともに、この突起筒部の開口部にガラス板が付設されているものであってもよい。
【0032】
前記撮影手段は、レンズ系とカメラ部と観察部位とがシャインプルーフ光学系となるように配置されるのが好ましい。シャインプルーフ光学系とは、被写体面とレンズ主面と像面とが一点で交わるものである。このため、斜め方向からの観察部位の観察であっても、平面視したように平面にフォーカスのあった観察が可能となる。
【0033】
前記撮影手段は、作業用開口部の外周側に複数配設されるものであってもよい。このように、複数配設したものでは、観察部位の水平方向や上下方向(垂直方向)の位置ずれを検出することが可能となる。
【0034】
前記作業用開口部に開閉自在な蓋部材を付設することも可能となる。このような蓋部材を設けることによって、作業用開口部を利用するとき、または他の所望のときのみ開状態とすることができる。
【0035】
前記撮影手段にて撮影された画像を用いて位置決めと検査とを行うことも可能である。この場合、位置決め用の画像と検査用の画像とをそれぞれ1枚以上撮影するのが好ましい。
【0036】
本発明のダイボンダは、加熱手段及び搬送手段を構成するヒータレールに搬送されるワークにチップをボンディングするダイボンダであって、ヒータレール内部が大気と屈折率差を有する雰囲気である高温雰囲気となり、前記位置確認装置を備え、前記ヒータレール内部が、突起筒部が連通されたワーク搬送路を構成するものである。
【0037】
本発明のダイボンダによれば、撮影手段にて撮影した画像は、陽炎が発生していない光路を介してのものであり、歪の生じることのないアイランド部画像及び/又はチップ画像を得ることができる。また、作業用開口部を介して、チップをボンディング部にボンディングすることができる。そして、非陽炎発生路はボンディング動作を規制しない。
【発明の効果】
【0038】
本発明の位置確認装置では、撮影手段にて撮影した画像は、歪の生じることを回避できて、高精度の画像認識が可能となる。しかも、作業用開口部を介した作業時には非陽炎発生路が作業の妨げにならず、安定した作業を行うことができる。すなわち、非陽炎発生路等を移動させるための移動機構を必要とせず、装置全体の簡素化を図ることが可能である。さらには、陽炎の影響を補正する必要がなく、処理性に優れ、短時間の処理時間で位置認識処理を行うことができ、作業性に優れる。
【0039】
非陽炎発生路は、突起筒部と撮影手段のレンズ系とで構成したり、突起筒部とガラス板とで構成したりでき、簡易な構造でもって、低コストにて非陽炎発生路を形成することができ、しかも、安定して陽炎が発生していない光路を形成することができる。
【0040】
蓋部材を備えたものであれば、作業用開口部を常時開状態とならず、この作業用開口部からの不活性ガスや熱気の不要な流出を防止することができ、省エネ化を図るとともに、加熱を必要としない部位への加熱を回避できる。
【0041】
位置決めと検査とを行うことに可能となって、装置として汎用性に優れたものとなる。
【0042】
本発明のダイボンダでは、歪の生じることのないアイランド部画像及び/又はチップ画像を得ることができ、チップに対して高精度の位置決めが可能となって、所定の位置に所定の姿勢でチップをボンディングすることができる。また、作業用開口部を介して、チップをボンディング部にボンディングすることができ、非陽炎発生路がこのボンディング動作を規制(邪魔)しないので、非陽炎発生路を移動させるための移動機構を必要とせず、ダイボンダの簡素化を図ることが可能である。さらには、陽炎の影響を補正する必要がなく、処理性に優れ、短時間の処理時間で位置認識処理を行うことができ、短時間での高精度のボンディングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の実施形態を示す位置確認装置を用いたダイボンダのヒータレールの簡略断面図である。
図2】ヒータレールの横断面図である。
図3】シャインプルーフ原理の説明図である。
図4】本発明の他の実施形態を示す位置確認装置を用いたダイボンダのヒータレールの簡略断面図である。
図5】ボンディング工程を示す簡略図である。
図6】ダイボンダのヒータレールの簡略図である。
図7】従来の位置確認装置の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下本発明の実施の形態を図1図4に基づいて説明する。
【0045】
図1に本発明にかかる位置確認装置を用いたダイボンダのヒータレール51を示している。このダイボンダは、ピックアップポジションでチップ53をピックアップし、ボンディングポジションで加熱されたワークWとしてのリードフレーム52にチップ53をボンディングするように、ピックアップポジションとボンディングポジション間を往復動作するコレット(図示省略)を備えものである。
【0046】
この場合、加熱手段及び搬送手段を構成するヒータレール51に搬送されるワークW(リードフレーム52)にチップ53をボンディングすることになる。ヒータレール51は、図2に示すように、下部レール55と上部レール56とが組み合わされてなる中空レールであって、内部にワーク搬送路57が形成される。この場合、下部レール55は底壁55aと、この底壁55aから立設される一対の側壁55b、55bとからなり、上部レール56が、下部レール55の上方開口を塞ぐ蓋形状となっている。
【0047】
ワーク搬送路57には、窒素ガス等の不活性ガス等の酸化防止ガスが充填される。例えば、図例のように、一対の側壁55b、55bにそれぞれガス供給路60を設け、このガス供給路60を介して前記酸化防止ガスがワーク搬送路57に供給される。また、下部レール55の下面には、ヒータ58が付設されている。このため、ワーク搬送路57内が、高温雰囲気(例えば、300℃から500℃程度)とされる。
【0048】
すなわち、このワーク搬送路57にはリードフレーム52が供給されて、高温雰囲気内のワーク搬送路57をリードフレーム52が走行することになる。この場合、例えば、送り爪等を備えた送り機構を介して間欠的に、上流側から下流側へ順次搬送されることになる。
【0049】
ところで、このヒータレール51には、作業用開口部61としての窓部が設けられている。すなわち、上部レール56にこの作業用開口部61が設けられ、この作業用開口部61を介して、半導体チップ(ダイ)53を吸着しているコレット(図示省略)がヒータレール51内に侵入し、このヒータレール51内を搬送されているリードフレーム52のアイランド部にボンディングすることになる。なお、ボンディング後においては、コレットは、作業用開口部61を介してヒータレール51から排出される。
【0050】
このように、ヒータレール51に作業用開口部61が設けられることによって、この作業用開口部61の上方には陽炎Hが発生すことになる。このため、本願発明では、このような陽炎Hに影響を受けることがない撮影手段70を備えている。
【0051】
撮影手段70は、レンズ系71と、このレンズ系71に連設されるカメラ部72とを備えたものである。カメラ部72としては、電荷結合素子(CCD)や相補性金属酸化膜半導体(CMOS)等の撮像素子を用いたカメラを使用できる。レンズ系71とカメラ部72と物体(観察部位)の配置がシャインプルーフ光学系となるように配置される。ここで、シャインプルーフ光学系は、図3に示すように、被写体面75の延長線とレンズ系71の結像レンズの主点を含むレンズ主平面76と像面77の延長線とが一点Oで交わるものである。このレンズ系71として、樹脂レンズ系であっても、ガラスレンズ系であってもよい。
【0052】
作業用開口部61の外周側には、一対の突起筒部80a、80bが設けられ、突起筒部80a、80bに前記レンズ系71とカメラ部72とを備えた撮影手段70が付設されている。突起筒部80a、80bは観察部位に対して斜め方向に延びるものである。すなわち、突起筒部80a、80bは、ヒータレール51のワーク搬送路57と連通され、その内部がワーク搬送路57の高温雰囲気と同じ雰囲気となる。この場合、突起筒部80a、80bは被観察部中心を通るZ軸に対して中心線L1,L2が2回対称になるように配設される。なお、必ずしも2回対称とする必要はなく、2回以上の対称になるように配設したものでもよい。さらには、対称にならなくても、視差があるだけでもよい。
【0053】
すなわち、レンズ系71は前記したように、シャインプルーフ光学系であるため、被観察部を被写体面75と、カメラ部72の撮像素子面を前記像面77とすることによって、斜め方向からの観察部位の観察であっても、平面視したような観察部位の観察が可能となる。
【0054】
撮影手段70のレンズ系71は、突起筒部80a、80bの開口部にそれぞれ付設され、このレンズ系71によって突起筒部80a、80bの開口部が密封された状態となる。ところで、陽炎は局所的に屈折率が異なる気体の境界に光が侵入したときに起こる現象であり、突起筒部80a(80b)内と外気とが遮断されているため、この突起筒部80a(80b)内において、陽炎が発生せず、突起筒部80a(80b)内において光の屈折を生じさせない、したがって、この突起筒部80a(80b)とレンズ系71とで、非陽炎発生路Mを構成することができる。また、非陽炎発生路Mが作業用開口部の上方位置には設けたられず、コレットを用いたボンディング動作(作用)を非陽炎発生路Mが規制(邪魔)しない。
【0055】
このため、この位置確認装置を用いれば、撮影手段70にて撮影した画像は、陽炎が発生していない光路を介してのものであり、歪の生じることを回避できる。従って、観察部位として、リードフレーム52のアイランド部54とし、チップ53をこのアイランド部54に供給するために、この位置確認装置を用いてアイランド部54の位置を歪を生じさせることなく確認することができる。また、アイランド部54とこのアイランド部54に供給されたチップ53とを観察部位とすれば、アイランド部54に供給されたチップ53の位置を確認するようにできる。
【0056】
このように、チップ53やアイランド部54に位置確認を行うことにより、位置ずれが生じていれば、コレット側及び/又はリードフレーム52側の位置修正を行うことによって、正規の位置の姿勢よくチップ53をそのボンディングすべき位置にボンディングすることができる。
【0057】
本発明の位置確認装置では、撮影手段70にて撮影した画像は、歪の生じることを回避できで、高精度の画像認識が可能となる。しかも、作業用開口部61を介した作業時には非陽炎発生路Mが作業の妨げにならず、安定した作業を行うことができる。すなわち非陽炎発生路Mを移動させるための移動機構を必要とせず、装置全体の簡素化を図ることが可能である。さらには、陽炎の影響を補正する必要がなく、処理性に優れ、短時間の処理時間で位置認識処理を行うことができ、作業性に優れる。
【0058】
また、図1に示すように、突起筒部80、80が、観察部位に対して斜め方向に延びるものである。この場合、被観察部中心をとおるZ軸に対して2回対称になるように配設されるものであれば、観察部位の水平方向や上下方向(垂直方向)の位置ずれを検出することが可能となる。2回対称以上とすることによって、さらに高精度の検出が可能となる。
【0059】
このため、本実施形態のように、本位置認識装置をダイボンダに用いれば、撮影手段70にて撮影した画像は、陽炎が発生していない光路を介してのものであり、歪の生じることのないアイランド部画像及びチップ画像を得ることができる。また、作業用開口部61を介して、チップ53をボンディング部(アイランド部54)にボンディングすることができる。そして、非陽炎発生路Mはボンディング動作を規制しない。
【0060】
次に、図4は他の実施形態を示し、この実施形態では、突起筒部80a(80b)の開口部に耐熱性のガラス板81,81が付設され窓部82を形成している。この場合、ガラス板81,81にて、突起筒部80a(80b)の開口部が密封されている。このため、突起筒部80a(80b)とガラス板81,81とで、陽炎の発生を防止する非陽炎発生路Mを構成することができる。なお、ガラス板81としては、耐熱性に優れた石英ガラス等で構成できる。
【0061】
従って、この図4に示すものであっても、撮影手段70にて撮影した画像は、歪の生じることを回避できで、高精度の画像認識が可能となる。しかも、作業用開口部61を介した作業時には非陽炎発生路Mが作業の妨げにならず、安定した作業を行うことができる。
【0062】
この図4に示す実施形態では、作業用開口部61を塞ぐ蓋部材85が付設されている。この蓋部材85としては、ヒンジ機構を介して、一つの辺を中心に揺動するものであっても、水平方向にスライドするものであっても、蛇腹式シャッター等であってもよい。
【0063】
この場合、蓋部材85の開閉は、コレットの動作と連動するようにするが好ましい。すなわち、コレットがこのヒータレール51に作業用開口部61を介して侵入してチップ53をボンディングして、この作業用開口部61から排出するまでの間が開状態となり、その他の状態では、閉状態となるように設定するのが好ましい。
【0064】
蓋部材85を備えたものであれば、作業用開口部61を常時開状態とならず、この作業用開口部61からの不活性ガスや熱気の不要な流出を防止することができ、省エネ化、加熱を必要としない部位へ加熱を回避できる。
【0065】
また、非陽炎発生路Mは、突起筒部80a(80b)と撮影手段70のレンズ系71とで構成したり、突起筒部80a(80b)とガラス板81とで構成したりでき、簡易な構造でもって、低コストにて非陽炎発生路Mを形成することができ、しかも、安定して陽炎が発生していない光路を形成することができる。
【0066】
また、この位置確認装置では、記撮影手段にて撮影された画像を用いて位置決めと検査とを行うも可能である。このように構成すれば、装置として汎用性に優れたものとなる。また、この場合、位置決め用の画像と検査用の画像とをそれぞれ1枚以上撮影するのが好ましい。これによって、位置決めと検査とが安定して行うことができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、撮影手段70としては、少なくとも1個あればよく、3個以上であってもよい。複数個設けることによって、位置確認の精度をより高めることができる。また、突起筒部の観察部位に対する傾斜角度としては、使用するシャインプルーフの被写体面75とレンズ主平面76と像面77との成す角度等によって種々変更できる。
【0068】
撮影手段70としては、斜め方向からの観察部位の観察であっても、平面視したように平面にフォーカスのあった観察が可能なものであれば、シャインプルーフ光学系に限るものではない。また、観察部位として、前記実施形態では、リードフレーム52のアイランド部54としていたが、他に、陽炎が生じる雰囲気中の位置を確認したい場所にも本位置確認装置を適用できる。すなわち、本位置確認装置として、ダイボンダに限るものではなく、ワイヤボンダ等の他の装置に用いてもよい。なお、空気(大気)と屈折率差を有する雰囲気であれば、陽炎を生じるものであるので、本発明では、高温雰囲気内の観察部位を観察する場合に限るものではない。
【0069】
また、図4に示すように、ガラス板81を用いる場合、図例では、このガラス板81に撮影手段70のレンズ系71を密接させていたが、ガラス板81とレンズ系71とを密接させることなく、隙間が形成されていてもよい。すなわち、この隙間においても陽炎が生じる温度差や密度差が生じなければよい。
【0070】
本位置確認装置を実施形態のダイボンダであっても、ダイボンダ以外の装置に用いた場合であっても、蓋部材85を備える場合、蓋部材85の開閉のタイミングを前記実施形態のものに限らず、使用者等の所望のタイミングで開閉できるように設定できる。もちろん、図1に示すヒータレール51においても蓋部材85を設けてもよい。
【0071】
ところで、作業用開口部61の近傍に、この作業用開口部61と相違する開口部を形成し、この開口部にガラス材を嵌め込んだ観察用窓部を設け、この観察用窓部を介して、撮影手段による画像撮影を行うようにできる。このため、この観察用窓部が陽炎を発生させない非陽炎発生路Mを構成でき、このような場合、前記実施形態のような突起筒部80a(80b)を形成しなくてもよい。
【符号の説明】
【0072】
51 ヒータレール
52 リードフレーム
53 チップ
61 作業用開口部
70 撮影手段
71 レンズ系
72 カメラ部
80a、80b 突起筒部
81 ガラス板
85 蓋部材
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7