特許第6246683号(P6246683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246683
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20171204BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20171204BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20171204BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20171204BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B01D39/20 DZAB
   B01D46/00 302
   F01N3/022 C
   B01D53/86 100
   B01D53/86 222
   B01D53/86 241
   B01D53/86 245
   B01D53/86 280
   B01J35/04 301E
   B01J35/04 301A
   B01J35/04 301K
   B01J35/04 301P
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-180013(P2014-180013)
(22)【出願日】2014年9月4日
(65)【公開番号】特開2016-52635(P2016-52635A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】宮入 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】平川 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏雄
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−053697(JP,A)
【文献】 特開昭58−150015(JP,A)
【文献】 特開2011−098335(JP,A)
【文献】 特開昭58−196820(JP,A)
【文献】 米国特許第04420316(US,A)
【文献】 特開2009−095827(JP,A)
【文献】 特開2011−194382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/36
B01D 39/00−41/04
B01D 46/00
C04B 38/00
F01N 3/02
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが流入する側の端面である流入端面から排ガスが流出する側の端面である流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁、を有するハニカム基材と、
複数の前記セルにおける流入端面側又は流出端面側のいずれか一方の端部に配設された目封止部と、を備え、
複数の前記セルのうちの一部のセルが、前記ハニカム基材の前記流入端面側において、端部が目封止部によって塞がれた入口目封止セルであり、複数の前記セルのうちの残りのセルが、前記ハニカム基材の前記流出端面側において、端部が目封止部によって塞がれた出口目封止セルであり、
複数の前記セルは、前記ハニカム基材の中心軸方向に垂直な断面において、1つの前記入口目封止セルの周囲を、8つの前記出口目封止セルが取り囲むように配置されており、
前記入口目封止セルは、前記断面における開口部の形状が、一辺の長さがL1である正方形であり、
前記出口目封止セルは、正方形出口目封止セルと長方形出口目封止セルとを含み、
前記正方形出口目封止セルは、前記断面における開口部の形状が、一辺の長さがL2である正方形であり、L2はL1より小であり、
前記長方形出口目封止セルは、前記断面における開口部の形状が、長辺の長さがL1であり、短辺の長さがL2である長方形であり、
前記断面における一辺の長さがL1である正方形の各対角線方向において、4つの前記正方形出口目封止セルが、前記入口目封止セルと隣接するように配置されており、
前記断面における一辺の長さがL1である正方形の各辺に垂直に交わる線方向において、4つの前記長方形出口目封止セルが、前記入口目封止セルと隣接し、且つ前記断面における長方形の長辺と、前記断面における一辺の長さがL1である正方形の一辺とが平行になるように配設されており、
前記隔壁の隔壁厚さをtとし、
前記断面における一辺の長さがL1である正方形の開口部の一辺を区画形成している前記隔壁の厚さの中間点から、前記一辺と対向する辺を区画形成している前記隔壁の厚さの中間点までの距離を隔壁中心間距離aとし、
前記断面における長方形の開口部の長辺を区画形成している前記隔壁の厚さの中間点から、前記長辺と対向する辺を区画形成している前記隔壁の厚さの中間点までの距離を隔壁中心間距離bとし、
前記隔壁中心間距離a、前記隔壁中心間距離b、及び前記隔壁厚さtが、下記式(1)
を満たし、且つ、
前記隔壁中心間距離aが、1.4mm以上、2.4mm以下であり、
前記隔壁中心間距離bが、0.22mm以上、1.08mm以下であり、
前記隔壁厚さtが、0.16mm以上、0.58mm以下である、ハニカムフィルタ。
0.95< b/at <1.90 ・・・(1)
【請求項2】
前記隔壁厚さtが、0.16mm以上、0.34mm以下である、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記ハニカム基材のセル密度が、100〜650セル/cmである、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記流入端面側における前記出口目封止セルの開口率が、13〜50%である、請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記隔壁の気孔率が、28〜70%である、請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。更に詳しくは、エンジン、特に自動車エンジンからの排ガスに含まれる粒子状物質や、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等の有毒ガス成分の浄化に好適に用いられるハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境への影響や、資源節約の観点から、自動車の燃費低減が近年求められている。このため、直接噴射式ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の熱効率の良い内燃機関が、自動車用の動力源として使用される傾向にある。
【0003】
一方、これらの内燃機関では、燃料の燃焼の際に生じる燃えかすの発生が問題となっている。大気環境の観点から、排ガスに含まれる有毒成分の除去と同時に、スート(煤)やアッシュ(灰)等の粒子状物質(以下、「PM」ということがある。)を大気に放出しないための対策が必要とされている。
【0004】
特にディーゼルエンジンから排出されるPMの除去に関する規制は世界的に強化される傾向にあり、PMを除去するための捕集フィルタ(以下、「DPF」ということがある。)として、ハニカムフィルタの使用が注目されている。そして、このようなハニカムフィルタを用いた種々の排ガス浄化システムが提案されている。上記DPFは、通常、多孔質の隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画形成されたものであり、セルを交互に目封止することで、セルを構成する多孔質の隔壁がフィルタの役目を果たす構造である。
【0005】
DPFは、第1の端面(流入側端面)から粒子状物質を含有する排ガス等を流入させ、隔壁で粒子状物質を濾過した後に、浄化されたガスを第2の端面(流出側端面)から排出するものである。このようなDPFは、排ガスの流入に伴い、排ガス中に含有される粒子状物質が隔壁上に堆積し、排ガスの流入側セルを閉塞させるという問題があった。これは、排ガス中に多量の粒子状物質が含有される場合や、寒冷地において発生し易い現象である。このようにセルが閉塞すると、DPFにおける圧力損失が急激に大きくなるという問題が生じる。そこで、このようなセルの閉塞を抑制するために、排ガスの流入側セルにおける濾過面積や開口率を高めるという工夫がなされている。
【0006】
上記DPFの構造として、具体的には、流入側セルの断面積と、流出側セルの断面積とを異ならせた構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。ここで、セルの断面積とは、セルをその中心軸方向に垂直な平面で切断したときの、その断面の面積をいう。流入側セルとは、流入側端面において開口し、流出側端面において、目封止部によりセルの開口が封止されているセルのことをいい、出口目封止セルとも称される。一方、流出側セルとは、流入側端面において、目封止部によりセルの開口が封止され、流出側端面において開口しているセルのことをいい、入口目封止セルと称されることもある。また、以下、流入側セルの断面積と、流出側セルの断面積とを異ならせた構造を、「HAC構造」ということがある。「HAC」とは、High Ash Capacityの略である。
【0007】
また、断面積の大きな流入側セルと断面積の小さな流出側セルとを有するHAC構造のハニカムフィルタであって、流入側セルの断面形状と、流出側セルの断面形状とが異なるハニカムフィルタが提案されている(例えば特許文献2参照)。ここで、セルの断面形状とは、セルをその中心軸方向に垂直な平面で切断したときの、その断面に現れる形状をいう。
【0008】
また、DPFの別の構造として、複数の流入側セル(出口目封止セル)からなる捕集セル群の周囲を複数の流出側セル(入口目封止セル)で包囲した構造も提案されている(例えば特許文献3)。
【0009】
ハニカムフィルタを長期間継続して使用するためには、定期的にハニカムフィルタに再生処理を施す必要がある。即ち、ハニカムフィルタの内部に経時的に堆積したスートにより増大した圧力損失を低減させてフィルタ性能を初期状態に戻すため、ハニカムフィルタの内部に堆積したスートを高温のガスで燃焼させて除去する必要がある。以下、ハニカムフィルタの内部に堆積したスートを燃焼させて除去することを、単に、ハニカムフィルタの「再生」ということがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2009/069378号
【特許文献2】特開2004−000896号公報
【特許文献3】特開2010−053697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、流入側セル(出口目封止セル)の開口率を高めることは、即ち相対的に流出側セル(入口目封止セル)の開口率の低下につながるため、それに伴って、初期の圧力損失(圧損)が高くなってしまうという問題があった。
【0012】
さらに、流出側セル(入口目封止セル)の開口率が低下することは、DPFの流入端面側に配設された目封止部により、流入端面側の熱容量が大きくなることにつながる。これに伴って、排ガスによる流入端面側の温度上昇が鈍化し、NOによる連続再生性が悪化するという問題があった。
【0013】
また、流入側セル(出口目封止セル)と流出側セル(入口目封止セル)とで、断面積や断面形状を異ならせるようにすると、セルを形成する隔壁の厚さが、隔壁同士が交差する部分(以下、「交点部」ということがある。)の一部で薄くなる場合があり、強度的に弱くなるという問題があった。そのため、DPFに堆積したPMをポストインジェクションによって燃焼除去する際に、薄くなった交点部の一部に熱応力が集中し、クラックが発生する等、破壊し易くなるという問題があった。ここで、隔壁同士が交差する部分(交点部)とは、DPF等のハニカムフィルタを、その中心軸方向に垂直な平面で切断したときの断面において、互いに交差する2つの隔壁の双方に属する部分をいう。例えば、上記断面において、直線状に延びる同じ厚さの隔壁同士が交差する場合には、交点部とは、交差する部分における、正方形の断面形状の範囲をいう。
【0014】
特許文献3に記載された構造は、複数の流入側セル(出口目封止セル)からなる捕集セル群の周囲を複数の流出側セル(入口目封止セル)で包囲しているため、ハニカムフィルタ内のPMが急速に燃焼するのを防ぐことができる。このため、ハニカムフィルタに堆積したPMを燃焼除去する際に、ハニカムフィルタの一部に熱応力が集中し、クラックの発生を抑制することができる。しかしながら、このような特許文献3に記載された構造においては、複数の流入側セル(出口目封止セル)同士が、不連続に配置されていると、PMを燃焼除去する際の熱が、隣接する流入側セル(出口目封止セル)に伝播しにくく、ハニカムフィルタを効率的に再生できないという問題があった。
【0015】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。本発明は、初期の圧力損失及びPM堆積時の圧力損失のいずれも低く抑えるとともに、PM燃焼時におけるハニカムフィルタの再生の効率を改善し、さらに熱応力によるクラック発生を低減した、ハニカムフィルタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、所定の形状の入口目封止セルと出口目封止セルとを所定の位置に配設することによって、上記初期及びPM堆積時の圧力損失における課題とクラック発生における課題とを解決しうることを見出した。具体的には、ハニカムフィルタの中心軸方向に垂直な断面における開口部の形状が正方形である入口目封止セルを、8つの出口目封止セルが取り囲む構造とすることである。また、クラックの発生を抑制しつつ、ハニカムフィルタの再生効率を向上させるためには、特許文献3に記載されたような、複数の出口目封止セル同士を不連続に配置するのではなく、逆に、連続的に配設することが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示す、ハニカムフィルタが提供される。
【0017】
[1] 排ガスが流入する側の端面である流入端面から排ガスが流出する側の端面である流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁、を有するハニカム基材と、複数の前記セルにおける流入端面側又は流出端面側のいずれか一方の端部に配設された目封止部と、を備え、複数の前記セルのうちの一部のセルが、前記ハニカム基材の前記流入端面側において、端部が目封止部によって塞がれた入口目封止セルであり、複数の前記セルのうちの残りのセルが、前記ハニカム基材の前記流出端面側において、端部が目封止部によって塞がれた出口目封止セルであり、複数の前記セルは、前記ハニカム基材の中心軸方向に垂直な断面において、1つの前記入口目封止セルの周囲を、8つの前記出口目封止セルが取り囲むように配置されており、前記入口目封止セルは、前記断面における開口部の形状が、一辺の長さがL1である正方形であり、前記出口目封止セルは、正方形出口目封止セルと長方形出口目封止セルとを含み、前記正方形出口目封止セルは、前記断面における開口部の形状が、一辺の長さがL2である正方形であり、L2はL1より小であり、前記長方形出口目封止セルは、前記断面における開口部の形状が、長辺の長さがL1であり、短辺の長さがL2である長方形であり、前記断面における一辺の長さがL1である正方形の各対角線方向において、4つの前記正方形出口目封止セルが、前記入口目封止セルと隣接するように配置されており、前記断面における一辺の長さがL1である正方形の各辺に垂直に交わる線方向において、4つの前記長方形出口目封止セルが、前記入口目封止セルと隣接し、且つ前記断面における長方形の長辺と、前記断面における一辺の長さがL1である正方形の一辺とが平行になるように配設されており、前記隔壁の隔壁厚さをtとし、前記断面における一辺の長さがL1である正方形の開口部の一辺を区画形成している前記隔壁の厚さの中間点から、前記一辺と対向する辺を区画形成している前記隔壁の厚さの中間点までの距離を隔壁中心間距離aとし、前記断面における長方形の開口部の長辺を区画形成している前記隔壁の厚さの中間点から、前記長辺と対向する辺を区画形成している前記隔壁の厚さの中間点までの距離を隔壁中心間距離bとし、前記隔壁中心間距離a、前記隔壁中心間距離b、及び前記隔壁厚さtが、下記式(1)を満たし、且つ、前記隔壁中心間距離aが、1.4mm以上、2.4mm以下であり、前記隔壁中心間距離bが、0.22mm以上、1.08mm以下であり、前記隔壁厚さtが、0.16mm以上、0.58mm以下である、ハニカムフィルタ。
0.95< b/at <1.90 ・・・(1)
【0020】
] 前記隔壁厚さtが、0.16mm以上、0.34mm以下である、[1]に記載のハニカムフィルタ。
【0021】
] 前記ハニカム基材のセル密度が、100〜650セル/cmである、[1]又は[2]に記載のハニカムフィルタ。
【0022】
] 前記流入端面側における前記出口目封止セルの開口率が、13〜50%である、[1]〜[]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0023】
] 前記隔壁の気孔率が、28〜70%である、[1]〜[]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【発明の効果】
【0024】
本発明のハニカムフィルタは、直噴ガソリンエンジンやディーゼルエンジンから排出される排ガスに含まれる粒子状物質を効率良く捕集、除去することができるとともに、初期及びPM堆積時のいずれにおいても圧損を少なくすることができる。また、本発明のハニカムフィルタは、PM燃焼時の熱応力集中によるクラック等の発生を効果的に防止することができる。また、PM燃焼時の熱が、複数の流入側セル(出口目封止セル)間で伝播しやすいため、ハニカムフィルタの再生を効率的に行うことができる。さらに、本発明のハニカムフィルタは、流入側の目封止部が少ないため、ハニカムフィルタの流入端面側の熱容量が小さくなり、PM燃焼時の着火性が向上し、NOによる連続再生性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のハニカムフィルタの一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すハニカムフィルタを流入端面側から見た部分拡大図である。
図3図1に示すハニカムフィルタを流出端面側から見た部分拡大図である。
図4図2に示すA−A’方向における断面を示す図である。
図5】従来のハニカムフィルタを流入端面側から見た模式的な部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0027】
本発明のハニカムフィルタの一の実施形態のハニカムフィルタは、図1図4に示すようなハニカムフィルタ100である。本実施形態のハニカムフィルタ100は、ハニカム基材7と、目封止部3と、を備えている。ハニカム基材7は、第1の端面(流入端面5a)から第2の端面(流出端面5b)まで貫通し排ガスの流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有する。目封止部3は、複数のセル2のうちの一部のセルの第1の端面(流入端面5a)と複数のセル2のうちの残りのセルの第2の端面(流出端面5b)とに配設されている。図1は、本発明のハニカムフィルタの一実施形態を示す模式的な斜視図である。図2は、図1に示すハニカムフィルタを流入端面側から見た部分拡大図である。図3は、図1に示すハニカムフィルタを流出端面側から見た部分拡大図である。図4は、図2に示すA−A’方向における断面(A−A’断面)を示す図である。なお、図2及び図3におけるA−A’断面は同一の断面である。
【0028】
図1図4に示す通り、複数のセル2は、長方形出口目封止セル2a、正方形出口目封止セル2b、及び入口目封止セル2cからなる。長方形出口目封止セル2a及び正方形出口目封止セル2bは、流体の流入端面5aにおいて開口するとともに流体の流出端面5bにおいて流出側目封止部3bが配設されたセル2である。入口目封止セル2cは、流入端面5aにおいて流入側目封止部3aが配設されるとともに流出側端面5bにおいて開口したセル2である。
【0029】
図1図4に示す通り、本実施形態のハニカムフィルタ100において、複数のセル2は、ハニカム基材7の中心軸方向に垂直な断面において、1つの入口目封止セル2cの周囲を、8つの出口目封止セルが取り囲むように配置されている。また、入口目封止セル2cは、断面における開口部の形状が、一辺の長さがL1(以下、「長さL1」ともいう)
である正方形である。出口目封止セルは、正方形出口目封止セル2bと長方形出口目封止セル2aとを含む。正方形出口目封止セル2bは、断面における開口部の形状が、一辺の長さがL2(以下、「長さL2」ともいう)である正方形であり、長さL2は、長さL1より小である。また、長方形出口目封止セル2aは、断面における開口部の形状が、長辺の長さがL1であり、短辺の長さがL2である長方形である。また、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、断面における一辺の長さがL1である正方形の各対角線方向において、4つの正方形出口目封止セル2bが、入口目封止セル2cと隣接するように配置されている。そして、断面における一辺の長さがL1である正方形の各辺に垂直に交わる線方向において、4つの長方形出口目封止セル2aが、入口目封止セル2cと隣接する。この際、上記断面における長方形出口目封止セル2aの長方形の長辺と、上記断面における入口目封止セル2cの一辺(一辺の長さがL1である正方形の一辺)とが平行になるように配設されている。ここで、多孔質の隔壁1の隔壁厚さをtとし、断面における一辺の長さがL1である正方形の開口部の一辺を区画形成している隔壁1の厚さの中間点から、一辺と対向する辺を区画形成している隔壁1の厚さの中間点までの距離を隔壁中心間距離aとする。また、断面における長方形の開口部の長辺を区画形成している隔壁1の厚さの中間点から、長辺と対向する辺を区画形成している隔壁1の厚さの中間点までの距離を隔壁中心間距離bとする。そして、本実施形態のハニカムフィルタ100は、隔壁中心間距離a、隔壁中心間距離b、及び隔壁厚さtが、下記式(1)を満たす。
0.95< b/at <1.90 ・・・(1)
【0030】
本実施形態のハニカムフィルタ100は、以上のように構成されることにより、排ガス中の粒子状物質の捕集効率が高く、使用初期及び粒子状物質堆積時の圧力損失が低く、耐熱強度に優れ、且つ効率的に再生できるという効果を奏する。
【0031】
本実施形態において、ハニカム基材7を構成する材料に特に制限はないが、強度、耐熱性、耐久性等の観点から、主成分は酸化物又は非酸化物の各種セラミックスや金属等であることが好ましい。セラミックスとしては、例えば、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素、窒化珪素、及びチタン酸アルミニウム等が考えられる。また、金属としては、Fe−Cr−Al系金属及び金属珪素等が考えられる。これらの材料の中から選ばれた1種又は2種以上を主成分とすることが好ましい。高強度、高耐熱性等の観点から、アルミナ、ムライト、チタン酸アルミニウム、コージェライト、炭化珪素、及び窒化珪素からなる群から選ばれた1種又は2種以上を主成分とすることが特に好ましい。また、高熱伝導率や高耐熱性等の観点からは、炭化珪素又は珪素−炭化珪素複合材料が特に適している。ここで、「主成分」とは、ハニカム基材の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上を構成することを意味する。
【0032】
また、ハニカム基材7の隔壁1の気孔率が、28〜70%であることが好ましく、30〜70%であることがさらに好ましく、35〜68%であることが特に好ましい。なお、隔壁の気孔率は、水銀圧入法により測定した値である。
【0033】
本実施形態においては、目封止部3の材料にも特に制限はないが、上述のハニカム基材7の好適な材料として挙げた各種セラミックス及び金属等の中から選択された1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0034】
また、目封止部3の気孔率は、28〜70%であることが好ましく、30〜70%であることがさらに好ましく、35〜68%であることが特に好ましい。PM燃焼時の熱膨張を考慮すると、ハニカム基材7の隔壁1と目封止部3の気孔率がいずれも35〜68%であることも好ましい。なお、目封止部の気孔率は、水銀圧入法により測定した値である。
【0035】
ハニカムフィルタ100のセル密度(ハニカムフィルタ100の中心軸に垂直な断面における、単位体積当たりのセル2の個数)は、100〜650セル/cmであることが好ましく、200〜650セル/cmであることが更に好ましく、300〜600セル/cmであることが特に好ましい。セル密度が100セル/cmより小さいと、捕集性能が低下することがある。セル密度が650セル/cmより大きいと、ハニカムフィルタ100の流入側端面5a付近にPMが堆積し、セル2がPMによって閉塞していくため、圧力損失が大きくなることがある。
【0036】
また、図示は省略するが、ハニカムフィルタを構成するハニカム基材は、セグメント構造のハニカム基材であってもよい。具体的には、セグメント構造のハニカム基材としては、複数個のハニカムセグメントが、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合されたハニカム基材を挙げることができる。ハニカムセグメントは、流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁及び隔壁を取り囲むように配設された外壁を有するものである。複数個のハニカムセグメントを接合した接合体の最外周に、外周壁が配置される。また、複数個のハニカムセグメントを接合した接合体の外周部を研削等によって加工し、セルの延びる方向に垂直な断面の形状を円形等にした後、最外周にセラミック材料を塗工することによって外周壁を配置してもよい。このような、所謂、セグメント構造のハニカム基材を、図1に示すような、所謂、一体型のハニカム基材に代えて使用することができる。また、ハニカムフィルタを構成するハニカム基材は、ハニカム基材の一部に、スリットが形成されたものであってもよい。セグメント構造のハニカム基材や、スリットが形成されたハニカム基材を用いたハニカムフィルタは、フィルタにかかる熱応力を分散させることができ、局所的な温度上昇によるクラックの発生を防止することができる。
【0037】
複数のハニカムセグメントを一体化させる場合の各セグメントの大きさや形状に制限はない。しかしながら、各セグメントが大きすぎると、セグメント化によるクラック防止効果が十分に発揮されず、小さすぎると各セグメントの製造や接合による一体化が煩雑となり好ましくない。このようなハニカムセグメントの形状は特に限定されるものではなく、例えば、断面形状が四角形状、即ちセグメントが四角柱状であるものを基本形状とし、一体化した後のハニカムフィルタにおいて、その外周形状を適宜選択、加工することができる。
【0038】
本実施形態のハニカムフィルタ全体の形状に特に制限はなく、図1に示すような断面が円形状のものの他にも、例えば楕円形状、レーストラック形状、長円形状等の略円形状の他、四角形状、六角形状などの多角形状とすることもできる。
【0039】
本実施形態のハニカムフィルタを、図面を参照しつつ、より詳細に説明する。図2及び図3に示す通り、本実施形態のハニカムフィルタ100において、入口目封止セル2cは、ハニカム基材7の中心軸方向に垂直な断面における開口部の形状が一辺の長さがL1の正方形である。また、図2及び図3に示す通り、本実施形態のハニカムフィルタ100において、正方形出口目封止セル2bは、ハニカム基材7の中心軸方向に垂直な断面における開口部の形状が一辺の長さがL2の正方形であり、L2はL1より小である。また、図2及び図3に示す通り、長方形出口目封止セル2aはハニカム基材7の中心軸に垂直な断面における開口部の形状が、長辺の長さがL1であり、短辺の長さがL2である長方形である。図5は、従来のハニカムフィルタを流入端面側から見た模式的な部分拡大図である。図5に示すハニカムフィルタ200においては、入口目封止セル202b,202cと出口目封止セル202aとが、千鳥状に配設されている。なお、図5において、符号201は隔壁を示す。図5において、符号202はセルを示す。図5において、符号203は目封止部を示す。図5において、符号205aは流入側端面を示す。一方、図1図4に示す通り、本実施形態のハニカムフィルタ100は、入口目封止セル2cを、4つの正方形出口目封止セル2bと、4つの長方形出口目封止セル2aが取り囲むように構成されている。このため、本実施形態のハニカムフィルタ100は、図5に示すような従来のハニカムフィルタ200と比較して、ハニカムフィルタ使用初期及びPM堆積による圧力損失を低減することができる。ここで「断面形状」とは、図1図4に示すようなハニカムフィルタ100のセル2をその中心軸方向に垂直な平面で切断したときの、その断面に現れる形状のことであり、セル2を形成する隔壁1に囲まれた部分の形状を指す。また、本明細書でいう正方形及び長方形とは、正方形及び長方形のそれぞれ4つの角部6は、頂点を形成していてもよいし、曲線状に形成されていてもよい。角部6が曲線状に形成されている場合、曲率半径が、0.4mm以下であることが好ましい。ここで、曲率半径0mmの角部6が、頂点であるとする。
【0040】
また、図2及び図3に示す通り、本実施形態のハニカムフィルタ100において、複数のセル2は、ハニカム基材7の中心軸方向に垂直な断面において、1つの入口目封止セル2cの周囲を8つの出口目封止セルが取り囲むように配置されている。ここで、上述した8つの出口目封止セルは、4つの正方形出口目封止セル2bと、4つの長方形出口目封止セル2aとによって構成される。そして、一辺の長さがL1の正方形の断面形状を有する入口目封止セル2cの4つの辺のそれぞれに対して、長辺の長さがL1であり、短辺の長さがL2である長方形の断面形状を有する長方形出口目封止セル2aの長辺が隣接しており、隣接する辺同士は平行となるように配設されている。また、一辺の長さがL1である正方形の断面形状を有する入口目封止セル2cの各対角線方向において、4つの、一辺の長さがL2である正方形の断面形状を有する正方形出口目封止セル2bが入口目封止セル2cに隣接するように配設されている。このような構造においては、入口目封止セル2c同士が隣接することはなく、入口目封止セル2cは、4つの正方形出口目封止セル2bと4つの長方形出口目封止セル2aによって、取り囲まれることになる。このような構造とすることによって、入口目封止セル2cの開口率を大きくすると共に、入口目封止セル2cの数を長方形出口目封止セル2a及び正方形出口目封止セル2bの合計数と比べて少なくできるため、初期の圧力損失を低減させることができる。
【0041】
また、図2及び図3に示す通り、4つのセル2のそれぞれの頂点が集まる部分、即ち、4つの頂点(角部6)が集まる部においては、2つの隔壁1が互いに直交する構造となっている。なお、「4つの頂点が集まる部分」とは、一の入口目封止セル2cの頂点のうちの1つと、一の入口目封止セル2cに隣接する正方形出口目封止セル2bの頂点のうちの1つと、一の入口目封止セル2cに隣接する2つの長方形出口目封止セル2aの頂点のうちのそれぞれ1つが隣接する部分のことである。このような構造とすることによって、隔壁1の熱容量を高く維持することができ、PMの堆積しやすい頂点部分におけるPM燃焼時の熱応力を緩和させることができる。
【0042】
入口目封止セル2cの第1の辺8を形成する隔壁1と、入口目封止セル2cの第1の辺8と対向する第2の辺9を形成する隔壁1との距離である隔壁中心間距離aは、1.4mm以上、2.4mm以下の範囲であ、1.4mm以上、2.2mm以下の範囲であることが好ましく、1.4mm以上、2.0mm以下の範囲であることが特に好ましい。ここで隔壁中心間距離aとは、入口目封止セル2cの第1の辺8を形成する隔壁1の厚さ方向の中心から、対向する入口目封止セル2cの第2の辺9を形成する隔壁1の厚さ方向の中心とを結ぶ最短距離を指す。また、長方形出口目封止セル2aの第1の長辺10を構成する隔壁1と、長方形出口目封止セル2aの第1の長辺10と対向する第2の長辺11を形成する隔壁1との距離である隔壁中心間距離bは、0.22mm以上、1.08mm以下の範囲であ、0.5mm以上、1.08mm以下の範囲であることが好ましく、0.8mm以上、1.08mm以下の範囲であることが特に好ましい。ここで隔壁中心間距離bとは、長方形出口目封止セル2aの第1の長辺10を形成する隔壁1の厚さ方向の中心から、対向する長方形出口目封止セル2aの第2の長辺11を形成する隔壁1の厚さ方向の中心とを結ぶ最短距離を指す。隔壁中心間距離a及び隔壁中心間距離bの関係を上記の範囲とすることによって、初期の圧力損失及びPM堆積時における圧力損失がバランス良く低減されるため好ましい。なお、隔壁中心間距離a及びbは、ハニカム基材7の中心軸方向に垂直な方向における断面を、光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。
【0043】
隔壁1の厚さtは、0.16mm〜0.58mmであ、0.16mm〜0.4mmであることが好ましい。隔壁1の厚さtが0.16mmより薄いと、ハニカム基材7の強度が低下することがある。隔壁1の厚さtが0.58mmより厚いと、捕集性能が低下し、圧力損失が増大することがある。なお、隔壁の厚さtは、ハニカム基材7の軸方向に垂直な方向における断面を、光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。
【0044】
隔壁中心間距離a及びbは、各々の隔壁中心間距離の定義により、それぞれ「L1+t」、及び「L2+t」である。正方形出口目封止セル2b及び長方形出口目封止セル2aの内表面積が大きくなるほど、PMが堆積する面積が大きくなり、PM堆積時のPMの堆積厚さが小さくなり、PM堆積時の圧力損失を低減することができる。一方で、正方形出口目封止セル2b及び長方形出口目封止セル2aの内表面積を大きくしすぎると、PM堆積時の圧力損失を低減することはできるが、初期の圧力損失が増大してしまう。また、隔壁厚さtが薄くなるほど初期及びPM堆積時の圧力損失は減少するが、隔壁厚さtが薄すぎるとハニカム基材の熱容量が過小となる。このため、PMを燃焼除去する際にハニカム基材の温度が過剰に高くなり、過大な熱応力によりフィルタの破損が生じる。
【0045】
初期及びPM堆積時の圧力損失の低減、並びにハニカムフィルタ再生時の破損防止の双方の要求を満たすために、隔壁中心間距離aと隔壁厚さtとの積を、隔壁中心間距離bで除した値であるb/atが、0.95より大きく、1.90より小さいことが重要である。上記した「b/at」が、1.20より大きく、1.90より小さいことが更に好ましく、1.40より大きく、1.90より小さいことが特に好ましい。
【0046】
本実施形態のハニカムフィルタ100の製造方法に特に制限はないが、例えば、以下のような方法により製造することができる。ハニカム基材7の原料粉末として、前述の好適な材料の中から選ばれた材料、例えば炭化珪素粉末を使用し、これにバインダを添加し、更に界面活性剤及び水を添加し、可塑性の坏土を作製する。バインダとしては、例えば、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース等を挙げることができる。この坏土を押出成形することにより、上述のような所定の断面形状の隔壁1及びセル2を有するハニカム基材7の成形体を得る。これを、例えばマイクロ波及び熱風で乾燥後、ハニカム基材7の製造に用いた材料と同様の材料で目封止することで目封止部3を配設する。そして、目封止部3を配設したハニカム基材7の成形体を、更に乾燥した後、例えば窒素雰囲気中で加熱脱脂し、その後アルゴン等の不活性雰囲気中で焼成することにより本実施形態のハニカムフィルタ100を得ることができる。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。
【0047】
本実施形態のハニカムフィルタ100を複数のハニカムセグメントが一体化された構成とするには、例えば以下のような方法がある。複数のハニカムセグメントを、例えばセラミックスセメントを用いて互いに接合し、乾燥硬化させた後、所望の形状となるよう外周を加工することによって、セグメント一体型のハニカムフィルタ100を得ることができる。
【0048】
本実施形態のハニカムフィルタ100では、出口目封止セル(正方形出口目封止セル2b及び長方形出口目封止セル2a)において、幾何学的表面積GSAが、10〜30cm/cmであることが好ましく、12〜18cm/cmであることが更に好ましい。ここで、上述した「幾何学的表面積GSA」とは、出口目封止セルの全内表面積(S)を、ハニカム基材7の全容積(V)で除した値(S/V)のことをいう。一般に、フィルタの濾過面積が大きいほど、隔壁へのPM堆積厚さを低減できるため圧力損失を低く抑えることができる。よって、出口目封止セルの幾何学的表面積GSAが10cm/cmより小さいと、PM堆積時の圧力損失の増加につながるため好ましくない。また、30cm/cmより大きいと、初期の圧力損失が増加するため好ましくない。
【0049】
本実施形態のハニカムフィルタ100では、出口目封止セル(正方形出口目封止セル2b及び長方形出口目封止セル2a)のセル断面開口率が13〜50%であることが好ましく、14〜42%であることが更に好ましい。出口目封止セルのセル断面開口率が13%未満であると、初期の圧力損失が増加するため好ましくない。また、50%を超えると、濾過流速が速くなるためPMの捕集効率が低下し、更に隔壁1の強度が不足するため好ましくない。ここで、「出口目封止セルのセル断面開口率」とは、ハニカム基材7の中心軸方向に垂直な断面における、「ハニカム基材7を形成する隔壁1全体の断面積」と「全てのセル2の断面積の総和」との合計に対する、「出口目封止セルの断面積の総和」の比率を意味する。なお、「出口目封止セル」は、正方形出口目封止セル2b及び長方形出口目封止セル2aの総称である。したがって、「出口目封止セルの断面積の総和」は、「正方形出口目封止セル2b及び長方形出口目封止セル2aの断面積の総和」のことである。
【0050】
初期の圧力損失、PM堆積時の圧力損失、及び捕集効率のトレードオフを鑑み、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、以下のように構成されていることが好ましい。すなわち、出口目封止セルの幾何学的表面積GSAが10〜30cm/cmであること、出口目封止セルのセル断面開口率が20〜70%であることを同時に満たすことが好ましい。また、出口目封止セルの幾何学的表面積GSAが12〜18cm/cmであること、出口目封止セルのセル断面開口率が25〜65%であることを同時に満たすことが更に好ましい。
【0051】
複数のセル2の、ハニカム基材7の中心軸方向に垂直な断面におけるセル2の角部6は、Rを有する湾曲形状であることが好ましい。ここで、「角部6」とは、以下の(1)〜(3)に示す角部のことである。(1)正方形出口目封止セル2bの一辺の長さがL2である正方形の断面形状における4つの角を形成する部分。(2)長方形出口目封止セル2aの長辺の長さがL1であり、短辺の長さがL2である長方形の断面形状における4つの角を形成する部分。(3)入口目封止セル2cの一辺の長さがL1である正方形の断面形状における4つの角を形成する部分。Rを有する湾曲形状の角部6は、曲率半径0.05〜0.4mmの湾曲形状であることが好ましく、応力集中防止の観点から、曲率半径0.2〜0.4mmの湾曲形状であることが更に好ましい。角部6の曲率半径が0.05mmよりも小さいと、角部6にPMが堆積しやすくなると同時に、隔壁1の熱応力及び強度が低下するため、熱応力緩和効果を十分に奏することができず好ましくない。また、角部6の曲率半径が0.4mmよりも大きいと、セルの濾過面積が減少するため好ましくない。
【0052】
本実施形態のハニカムフィルタ100においては、複数のセル2を形成する隔壁1に触媒(図示せず)が担持されていてもよい。隔壁1に触媒を担持するとは、隔壁1の表面及び隔壁1に形成された細孔の内壁に、触媒がコーティングされることをいう。触媒の種類としては、SCR触媒(ゼオライト、チタニア、バナジウム)や、Pt、Rh、Pdのうち少なくとも2種の貴金属と、アルミナ、セリア、ジルコニアの少なくとも1種を含む三元触媒等が挙げられる。このような触媒を担持することにより、直接噴射式ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等から排出される排ガスに含まれるNOx、CO、HC等を無毒化するとともに、隔壁1の表面に堆積したPMを触媒作用により燃焼除去させ易くすることが可能となる。
【0053】
ハニカムフィルタに上記のような触媒を担持させる方法は、特に限定されず、当業者が通常行う方法を採用することができる。具体的には、触媒スラリーをウォッシュコートして乾燥、焼成する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
セラミック原料として、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合したものを準備した。この混合原料に、バインダとしてヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加するとともに、水を添加して成形原料を作製した。得られた成形原料を、ニーダーを用いて混練し、坏土を得た。
【0056】
次に、得られた坏土を、真空押出成形機を用いて成形し、図2及び図3に示すような目封止配置を有する四角柱形状のハニカムセグメントを16個作製した。ハニカムセグメントの断面を36mm×36mmとし、長さを152mmとした。また、図2に示す隔壁中心間距離aを2.2mm、隔壁中心間距離bを0.76mmとし、隔壁厚さtを0.30mmとした。
【0057】
続いて、得られたハニカムセグメントを高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した。なお、乾燥時には、ハニカムセグメントの流出側端面が、鉛直下向きになるように配置して乾燥を行った。
【0058】
乾燥後のハニカムセグメントに、目封止部を形成した。まず、ハニカムセグメントの流入側端面にマスクを施し、マスクの施された端部(流出側端部)を目封止スラリーに浸漬して、マスクが施されていないセル(入口目封止セル)の開口部に目封止スラリーを充填し、目封止部(流入側目封止部)を形成した。そして、乾燥後のハニカムセグメントの流出端面についても同様にして、残余のセル(即ち、流入端面において目封止されていないセル(長方形出口目封止セル及び正方形出口目封止セル))にも目封止部(流出側目封止部)を形成した。
【0059】
そして、目封止部の形成されたハニカムセグメントを脱脂、焼成し、目封止ハニカムセグメントを得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とし、焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。なお、焼成時には、ハニカムセグメントの流出側端面5bが、鉛直下向きになるように配置して焼成を行った。
【0060】
16個の焼成済のハニカムセグメントを、接合材(セラミックスセメント)を用いて接合し一体化した。接合材は、無機粒子、無機接着剤を主成分とし、副成分として、有機バインダ、界面活性剤、発泡樹脂、水等を含むよう構成した。無機粒子としては、板状粒子、無機接着剤としては、コロイダルシリカ(シリカゾル)を使用した。板状粒子としては、マイカを使用した。16個のハニカムセグメントが一体化に接合されたハニカムセグメント接合体の外周を円筒状に研削加工し、その外周面にコート材を塗布して、完成体を得た。コート材は、セラミックス粉末、水、結合材を含むよう構成した。
【0061】
上記の工程によって、図2及び図3に示すような目封止配置の実施例1のハニカムフィルタを作製した。表1においては、図2及び図3に示すような1つの入口目封止セルを、8つの出口目封止セルが取り囲む目封止配置を、Xと表記した。
【0062】
(実施例2〜15、比較例1〜12)
隔壁中心間距離a、隔壁中心間距離b、及び隔壁厚さtを表1に示す通りとしたほかは、実施例1と同様にして、実施例2〜15及び比較例1〜12のハニカムフィルタを作製した。
【0063】
(比較例13、14)
目封止部を千鳥状に配設し、隔壁中心間距離a、隔壁中心間距離b、及び隔壁厚さtを表1に示す通りとしたほかは、実施例1と同様の工程によって、図5に示すような目封止配置を有する比較例13、14のハニカムフィルタを作製した。表1においては、図5に示すような入口目封止セルと出口目封止セルとを千鳥状に配設した目封止配置を、Yと表記した。
【0064】
実施例1〜15及び比較例1〜14のハニカムフィルタについて、初期の圧力損失、PM堆積時の圧力損失、強制再生時の再生効率、及びNEDCモード運転での連続再生スス量を測定し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0065】
(初期圧損測定方法)
ハニカムフィルタに200℃の空気を2.4Nm/minで流して、流入側と流出側とにおける圧力差から、初期の圧力損失(初期圧損(kPa))を測定した。熱容量は、セル断面開口率(OFA)の関数であり、(1−OFA)に比例する。したがって、OFAが大きいほど熱容量は小さくなるので、ハニカムフィルタ再生時にクラックが発生しやすくなる。初期圧損が低いこと及びハニカムフィルタ再生時にクラックが発生しにくいことの双方を満足する指標として、α=(初期圧損)×(OFA)を用いる。αが小さいほどハニカムフィルタとしての性能が良いと判断でき、αが0.60以上であるものを不合格、0.60未満であるものを合格とした。
【0066】
(PM堆積時圧損測定方法)
軽油を酸素欠如状態で燃焼させることでススを発生させ、スス発生量10g/hの燃焼ガスに希釈空気を追加して、温度200℃で流量2.4Nm/minになるように調整を行ったスス含有燃焼ガスをハニカムフィルタに流した。そして、ハニカムフィルタへのスス堆積量が4g/Lとなった際の流入側と流出側とにおける圧力差から、PM堆積時における圧力損失(PM堆積時圧損(kPa))を測定した。熱容量は、セル断面開口率(OFA)の関数であり、(1−OFA)に比例する。したがって、OFAが大きいほど熱容量は小さくなるので、ハニカムフィルタ再生時にクラックが発生しやすくなる。PM堆積時圧損が低いこと及びハニカムフィルタ再生時にクラックが発生しにくいことの双方を満足する指標として、β=(PM堆積時圧損)×(OFA)を用いる。βが小さいほどハニカムフィルタとしての性能が良いと判断でき、βが3.70以上であるものを不合格、3.70未満であるものを合格とした。
【0067】
(強制再生時の再生効率)
ハニカムフィルタの隔壁に対して、6g/Lのススを堆積させた状態で、ハニカムフィルタの流入端面より高温のガスを通気して、フィルタの強制再生を行った。強制再生の条件は、流入端面におけるガス温度を650℃とし、ガスの通気時間を15分間とした。また、強制再生の前に、ススを堆積させた状態のハニカムフィルタの質量を測定した。強制再生後に、ハニカムフィルタの質量を測定し、強制再生により消失したススの質量を求めた。堆積させたススの質量M1と、強制再生により消失したススの質量M2とから、強制再生時の再生効率(M2/M1×100)を求めた。表1においては強制再生時の再生効率を「再生効率(%)」と表記した。
【0068】
(NEDCモード運転での連続再生スス量)
ハニカムフィルタの隔壁に対して、6g/Lのススを堆積させた状態のハニカムフィルタについて、4気筒、2000cc、及びコモンレール噴射であるディーゼルエンジン車をシャーシベンチに設置し、NEDC(New Europian Driving cycle)モード運転下での連続再生スス量を測定した。NEDCモード運転は、欧州規制に準拠した車速パターンの条件下での運転である。また、NEDCモード運転の前に、ススを堆積させた状態のハニカムフィルタの質量を測定した。NEDCモード運転後に、ハニカムフィルタの質量を測定し、NEDCモード運転で焼失したススの質量を求めた。堆積させたススの質量M3と、NEDCモード運転により焼失したススの量M4とから、NEDCモード運転での連続再生スス量(M4−M3)を求めた。表1においては、NEDCモード運転での連続再生スス量を「連続再生スス量(g/L)」と表記した。
【0069】
(総合評価)
測定された、初期の圧力損失、PM堆積時の圧力損失、強制再生時の再生効率、及びNEDCモード運転での連続再生スス量から、以下の判定基準により、優良、良、不可の判定を行った。
評価「優良」:強制再生時の再生効率が70%以上であり、NEDCモード運転での連続再生スス量が1.0(g/L)以上であり、αの値が0.60未満であり、且つβの値が3.67未満である場合。
評価「良」:強制再生時の再生効率が70%以上であり、NEDCモード運転での連続再生スス量が1.0(g/L)以上であり、αの値が0.60未満であり、且つβの値が3.70未満である場合。
評価「不可」:強制再生時の再生効率が70%未満であるか、NEDCモード運転での連続再生スス量が1.0(g/L)未満であるか、αの値が0.60以上であるか、又はβの値が3.70以上である場合。
【0070】
【表1】
【0071】
(考察)
表1の結果から、目封止部が千鳥状に配設された従来のフィルタと比較して、図2及び図3に示すセル断面構造を有する実施例1〜15のハニカムフィルタは、初期圧損、PM堆積時の圧損、強制再生時の再生効率、及びNEDCモード運転での連続再生スス量のいずれにおいても良好な結果を示すことが分かった。また、隔壁中心間距離aと隔壁厚さt、との積を、隔壁中心間距離bで除した値であるb/atが0.95より大きく、1.90より小さい場合は、そうでない場合と比較して、初期圧損及びPM堆積時の圧損のいずれにおいても有意な効果を奏することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係るハニカムフィルタは、直噴ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等から排出される排ガスに含まれる微粒子および有害ガス成分の浄化に用いられるDPFとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1:隔壁、2:セル、2a:長方形出口目封止セル、2b:正方形出口目封止セル、2c:入口目封止セル、3:目封止部、3a:流入側目封止部、3b:流出側目封止部、4:辺、5a:流入側端面、5b:流出側端面、6:角部、7:ハニカム基材、8:入口目封止セルの第1の辺、9:入口目封止セルの第2の辺、10:長方形出口目封止セルの第1の長辺、11:長方形出口目封止セルの第2の長辺、100:ハニカムフィルタ、200:ハニカムフィルタ、201:隔壁、202:セル、202a:出口目封止セル、202b,202c:入口目封止セル、203:目封止部、205a:流入側端面、a:隔壁中心間距離、b:隔壁中心間距離、t:隔壁厚さ。
図1
図2
図3
図4
図5