(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記柱部と、前記第1電極層および前記第2電極層の少なくともいずれか一方の層との各接合面に、紫外線照射処理、プラズマ処理、またはコロナ処理を行って一体的に接合して成る請求項1に記載のタッチセンサ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は本発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
<第1の実施の形態>
まず、本発明の第1の実施の形態に係るタッチセンサについて説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るタッチセンサの断面図(1A)、そのタッチセンサに含まれる変位層を構成する柱部を模式的に描いた斜視図(1B)およびその変位層に含まれるポリマー型シランカップリング剤の模式図(1C)をそれぞれ示す。
【0025】
第1の実施の形態に係るタッチセンサ1は、所定の操作面における押圧方向(図では、上下方向:以下、Z方向ともいう)への押圧状態を検出するタッチセンサであり、操作面側(図面上側)から第1電極層2、変位層3、および第2電極層4を積層して備える。第1電極層2および第2電極層4は、静電容量の変化を検出するためのものである。変位層3は、第1電極層2と第2電極層4との間にあり、操作面における押圧により第1電極層2と第2電極層4との間隔を変位可能な層である。変位層3は、後述のように、ゴム状弾性体10中にポリマー型シランカップリング剤11を分散させて構成され、かつ押圧方向に収縮可能な複数の柱部31を少なくとも有する層である。柱部31と、第1電極層2および第2電極層4とは、接着剤あるいは粘着剤などの接着層を介在せずに一体的に接合している。以下、タッチセンサ1の構造および製造方法について詳述する。
【0026】
(1)第1電極層
第1電極層2は、操作面側から順に、電極21、基材シート22を積層して備える。第1電極層2は、操作面に対する押圧時に変形する必要があるので、その厚さを、好ましくは0.01〜1mmとし、より好ましくは、0.01〜0.4mmとすることができる。電極21は、例えば、静電容量の変化を検出するために、図示しない電源から電圧が印加される駆動電極である。電極21は、銅、銀等の金属薄膜で構成しても良く、透明なPEDOT/PSS等の導電性高分子膜や、銅、銀、カーボン等のナノ状微小繊維からなる膜や、ITO(インジウム錫酸化物)膜で構成しても良い。電極21のZ方向の厚さは、例えば、0.01〜1μmである。電極21のZ方向の厚さを上記の範囲に設定するのは、電極21のZ方向の厚さを、0.01μm以上とすると、電気抵抗が低く、静電容量を正しく検出しやすくなり、また、1μm以下とすると、電極が厚すぎず硬くなりにくいため、タッチセンサを押圧したときに第1電極層2が変形し易く、さらに電極の形状によっては均一に変形しやすくなるからである。
【0027】
基材シート22は、例えば、絶縁性が高く、且つ可撓性に優れた樹脂フィルムからなり、好適にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、またはポリメタクリ酸メチル(PMMA)から構成される。特に、PETが好ましい。基材シート22としては、例えば、東レ株式会社製のS10(単に、「PET」と称する)あるいは東レ株式会社製のU48(「易接着PET」と称する)を用いることができる。ここで、易接着PETとは、その表面にコロナ処理、プラズマ処理、あるいはプライマー塗布等の処理を施したPETをいう。「PET」は、そのような表面処理を施していないPETをいう。
【0028】
(2)第2電極層
第2電極層4は、操作面から遠い側から順に、電極41、基材シート42を積層して備える。電極41は、電極21との間隔に応じた電流を生じさせ、静電容量を検出するための受信電極である。電極41は、電極21と同一の素材により構成しても良い。電極41のZ方向の厚さは、例えば、0.01〜1mmである。電極41は、押圧により変形する必要がないので、構成する素材や、Z方向の厚さは、上記範囲に限らない。電極41は、第1電極層2の電極21と同様の材料から構成することができる。
【0029】
基材シート42は、例えば、絶縁性が高く、且つ可撓性に優れた樹脂フィルムからなり、好適にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、またはポリメタクリ酸メチル(PMMA)から構成される。特に、PETが好ましい。基材シート42は、第1電極層2の基材シート22と同様、例えば、東レ株式会社製のS10(「PET」と称する)あるいは東レ株式会社製のU48(「易接着PET」と称する)を用いることができる。
【0030】
変位層3は、ゴム状弾性体で構成され、Z方向に伸縮可能な複数の柱部31から構成される。柱部31の形状は、例えば、ドット状(例えば、円柱状または円錐台状)である。ただし、柱部31の形状は、これに限られず、他の層と対向する面において、必要な接着強度を確保できる面積を確保できればどのような形状であっても良い。複数の柱部31は、第2電極層4の上面(操作面側の面)の面内の縦横方向に所定のピッチ毎に並んでいる。柱部31間のピッチは、押圧方向の変位の検出精度を向上するには、小さいことが好ましい。柱部31の高さは、例えば、0.01〜1mm、好ましくは0.01〜0.3mmである。また、柱部31が収縮することにより変位する側の電極層(この実施の形態では、第1電極層2)の変位量は、例えば、柱部31の高さの80%以内である。
【0031】
柱部31としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKE−1950−10A/B(ゴム硬度A 10)、KEG−2000−40A/B(ゴム硬度A 40)、KE−951−Uと加硫剤C−25A/B(ゴム硬度A 50)、KE−2090−60A/B(ゴム硬度A 60)、KE−981−Uと加硫剤C−25A/B(ゴム硬度A 80)などを原料としたシリコーンゴムを用いることができる。柱部31は、金型を用いて成形しても良く、印刷により形成しても良い。特に、形状安定性の点では、金型を用いて柱部31を成形する方が好ましい。柱部31を構成するゴム状弾性体は、シリコーンゴムに限られず任意の材料を選択することができる。柱部31を構成するゴム状弾性体の加硫タイプや硬さについては、任意のものを選択することができる。また、柱部31を構成するゴム状弾性体は、タッチセンサ1が光の透過を必要としなければ、着色されていても良い。柱部31と第1電極層2の基材シート22とは、後述するように一体的に接合されている。また、柱部31と第2電極層4の基材シート42とも、後述するように一体的に接合されている。変位層3を構成する柱部31のゴム硬度は、JISK6253の測定法に従うデュロメーター タイプA硬度で10以上80以下が好ましい。
【0032】
変位層3(ここでは、柱部31のみから成る)は、
図1の(1B)に示すように、ゴム状弾性体10中にポリマー型シランカップリング剤11を分散させて構成される。ここで、ポリマー型シランカップリング剤11は、有機ポリマーの主鎖に、アルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基など)に加え、エポキシ基、アクリル基などの有機官能基を有し、有機官能基による有機材料との結合点を付与したシランカップリング剤をいう。有機官能基としては、特に、エポキシ基が好ましい。
図1の(1C)は、有機ポリマーの主鎖に、トリエトキシシリル基の他、エポキシ基を結合させた構造のポリマー型シランカップリング剤11の例を示す。ポリマー型シランカップリング剤11は、変位層3のゴム状弾性体10の構成成分100質量部に対して、好ましくは0.2〜15質量部、より好ましくは0.3〜12質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部含まれる。ポリマー型シランカップリング剤11を上記0.2〜15質量部の範囲にすると、柱部31と基材シート22あるいは基材シート42との接着強度をより高めることができ、かつ柱部31の成形性をも高めることができる。アルコキシシリル基(Si(OR)
3)に対する有機官能基の比率(官能基当量、官能基比ともいう)は、1以上であるのが好ましい。
【0033】
ここで、タッチセンサ1は、押圧されることにより、一定の厚みを備えた柱部31が圧縮弾性変形することで、Z方向の検出機能を発揮するが、柱部31のゴム硬度が低すぎると充分な強度が無く容易に破壊される恐れがある。一方、柱部31のゴム硬度が高すぎると押圧力が必要となり操作性が悪化する。また、柱部31の密度を疎にすると第1電極層2が押圧部の周辺も撓み易くなるため悪影響を与える。変位層3において、柱部31の周囲は空隙であり、操作面が押圧された場合には、柱部31が比較的容易に収縮し、また、操作面への押圧が終わった場合には、柱部31は、迅速に伸張してもとの状態に復元する。このため、タッチセンサ1の押圧に対する応答性が向上し、操作性が向上する。
【0034】
次に、第1の実施の形態に係るタッチセンサの製造方法について説明する。
【0035】
図2は、
図1のタッチセンサの製造方法を説明するための一部組立図を示す。
【0036】
図2に示すように、基材シート22の一方の面に電極21を形成する。また、同様に、基材シート42の一方の面に電極41を形成する。基材シート22上への電極21の形成方法および基材シート42上への電極41の形成方法としては、蒸着、金属フィラーを分散させた溶液をコートする方法(刷毛塗り、浸漬、スピンコートなども含まれる)、インクジェット方式、スクリーン方式に代表される印刷、金属フィラーを分散させた溶液を塗布後にエッチング(レーザを用いたドライ方式および溶剤を用いて溶解させるウェット方式のいずれでも良い)してパターン形成する方法などを好適に例示列挙できるが、電極21,41の形成方法は特にこれらに限定されない。
【0037】
柱部31は、例えば、未硬化状態のゴム状弾性体用組成物(加硫剤も含み得る)に、ポリマー型シランカップリング剤11を混合し、その混合物を金型に流し込み、加硫化工程を経て製造される。ただし、金型を使用せずに、柱部31を印刷にて製造しても良い。
【0038】
次いで、第1電極層2における柱部31と対向する接合面22aと、変位層3を構成する複数の柱部31の第1電極層2と対向する接合面31aとに対して、所定の紫外線を照射する。同様に、第2電極層4における柱部31と対向する接合面42bと、複数の柱部31の第2電極層4と対向する接合面31bとに対して、所定の紫外線を照射する。ここで、照射する所定の紫外線としては、近紫外線(波長380nm〜200nm)以下の波長の光であり、好適には、遠紫外線および真空紫外線(波長200nm〜10nm)の光である。この実施の形態およびこれ以降の実施の形態では、例えば、キセノンを放電ガスとして172nmの波長を含む真空紫外線(VUV)を発光するエキシマランプを用いて光を照射している。なお、エキシマランプを用いずに、接合面22a、接合面42b、接合面31aおよび接合面31bに対して、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理、フレーム処理等の易接着処理を施しても良い。このような易接着処理を、ここでは、表面改質あるいは表面改質処理ともいう。
【0039】
プラズマ処理、またはコロナ処理によると、周囲のガスがイオン化し、印加されている電位差によってイオン化されたガスが加速されて、接合面22aおよび接合面31aと衝突し、接合面22aおよび接合面31aの分子内結合が破壊され、接合面22aおよび接合面31aの表面にラジカルが発生される。次いで、周囲の気体(例えば、大気)中に存在する酸素や水等が、直接または間接的に反応して接合面22aおよび接合面31aの表面に水酸基などの反応基を形成する。同様に、接合面42bおよび接合面31bの表面にも水酸基などの反応基を形成する。こうして、表面改質処理ステップが終了する。
【0040】
次いで、第1電極層2と第2電極層4とにより、変位層3の複数の柱部31を挟むように重ね合わせる。この結果、第1電極層2の接合面22aと柱部31の接合面31aとを、第2電極層4の接合面42bと柱部31の接合面31bとを、それぞれ一体的に接合する。ここで、紫外線を照射した後、第1電極層2と第2電極層4との間に、複数の柱部31を直ちに挟んで重ね合わせるのが好ましい。また、重ね合わせる際は、常温下であっても、加熱温度下であっても良い。加熱温度下で貼り合わせを行う場合には、例えば、50〜110℃、好ましくは80〜100℃の範囲の所定温度まで加熱して行うことができる。また、第1電極層2と第2電極層4との間に柱部31を挟んだ後、その挟んだ方向に圧力を加えることが好ましい。加圧下で貼り合わせを行う場合には、例えば、1.5〜6.5kgf/cm
2、好ましくは2〜3kgf/cm
2の範囲とすることができる。また、貼り合わせた後、しばらく放置するのがより好ましい。このように、柱部31と、第1電極層2および第2電極層4との各接合面31a,22a,31b,42bに、紫外線照射処理、プラズマ処理、またはコロナ処理を経て貼り合わせを行うことにより、互いに一体的に接合する。こうして、接合ステップが終了する。
【0041】
以上の工程を経て、
図1の(1A)に示すようなタッチセンサ1が完成する。上記のように、この実施の形態に係るタッチセンサ1の製造方法は、静電容量の変化を検出するための第1電極層2および第2電極層4と、第1電極層2と第2電極層4との間にあって、操作面に対する押圧により、第1電極層2と第2電極層4との間隔を変位可能な変位層3とを有し、変位層3には、ゴム状弾性体10中にポリマー型シランカップリング剤11を分散させて構成され、かつ押圧方向に伸縮可能な複数の柱部31を少なくとも有すると共に柱部31と第1電極層2および第2電極層4とを一体的に接合して成るタッチセンサ1を製造する方法であって、第1電極層2および第2電極層4と柱部31との両接合面22a,42b,31a,31bに表面改質処理を行う表面改質処理ステップと、第1電極層2および第2電極層4と柱部31とを重ね合わせた状態を加圧若しくは非加圧にて維持することにより、第1電極層2および第2電極層4と柱部31とを一体的に接合する接合ステップと、を有する。
【0042】
次に、タッチセンサ1を製造する場合における、柱部31と、基材シート22,42との接合のメカニズムについて説明する。
【0043】
エキシマランプにより、172nmの波長を含む紫外線を、柱部31および基材シート22,42の表面に照射すると、その紫外線は、周囲の酸素(O
2)に直接作用して、活性酸素(O(
1D))を生成する。また、この紫外線は、酸素(O
2)をオゾン(O
3)に変化させ、オゾン(O
3)を酸素(O
2)と活性酸素(O(
1D))とに変化させる。接合前の初期状態においては、基材シート22,42および柱部31の表面には、メチル(CH
3)基が存在する。このような表面に172nmの波長を含む紫外線を照射させると、紫外線と、周囲の酸素に紫外線が照射されることにより発生する活性酸素とによって、基材シート22,42の表面および柱部31の表面が酸化される。これによって、同表面にある一部もしくは全部のCH
3基が酸化されて、OH基等の酸素含有官能基となる。
【0044】
その後、基材シート22,42および柱部31の表面を重ね合わせて、重ね合わせた方向に圧力を加えて、室温下で所定の時間保持すると、基材シート22,42および柱部31の表面のOH基等同士が結合して水を発生し、基材シート22,42と柱部31とが酸素(O)を介して結合される。柱部31は、ポリマー型シランカップリング剤11を含んでいるので、柱部31の接合面31a,31bには、基材シート22,42と反応しやすい部位(反応点)が多数存在する。例えば、ポリマー型シランカップリング剤11としてポリマー型多官能エポキシシランカップリング剤(エポキシ系のポリマー型シランカップリング剤に相当)を用いると、エポキシ基の三員環が開環し、基材シート22,42と柱部31との接合に寄与しやすい。このように、接着層などの介在層を付与せずに結合させる状態を、ここでは、一体的に接合(あるいは一体的接合状態)という。
【0045】
基材シート22,42および柱部31がこのように一体的に接合すると、これらが容易に分離するのを適切に防止することができ、信頼性を向上することができる。このように、接着剤や粘着剤を用いることなく、基材シート22,42および柱部31を一体的に接合することができるので、押圧時に、第1電極層2、第2電極層4および柱部31が互いにズレたり、反ったり、隆起したりしてしまうことを防止でき、タッチセンサ1の信頼性を向上することができる。また、接着剤や粘着剤を用いていないので、柱部31の周囲の空隙に液ダレが発生することがなく、押圧感にばらつきを生じさせない。また、接着剤や粘着剤を用いないので、接着剤等の塗工ムラを生じさせることがなく、押圧感にばらつきを生じさせない。さらに、柱部31と第1電極層2との間、柱部31と第2電極層4との間に接着剤や粘着剤を用いないので、タッチセンサ1の押圧方向の幅を薄くすることができる。
【0046】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係るタッチセンサについて説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態と共通する構成部分については、同一の符号を付し、適宜、その説明を省略する。
【0047】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係るタッチセンサの断面図(3A)および(3A)のタッチセンサの製造方法を説明するための一部組立図(3B)をそれぞれ示す。
【0048】
第2の実施の形態に係るタッチセンサ1は、複数の柱部31と、それらの直下に配置される平板層32とを備える変位層3を備える点において、複数の柱部31のみから変位層3を構成する第1の実施の形態に係るタッチセンサ1と構造上の差異を有する。ここで、柱部31は、平板層32と一体成形されて成る。変位層3以外の構成に関しては、両実施の形態に係るタッチセンサ1は共通する。変位層3の柱部31は、第1電極層2側と接合し、変位層3の平板層32は、第2電極層4側と接合する。
【0049】
図3の(3B)に示すように、基材シート22の一方の面に電極21を形成する。また、同様に、基材シート42の一方の面に電極41を形成する。電極21,41の形成方法は、第1の実施の形態と共通するので、重複した説明を省略する。
【0050】
変位層3は、例えば、未硬化状態のゴム状弾性体用組成物(加硫剤も含み得る)に、ポリマー型シランカップリング剤11を混合し、その混合物を金型に流し込み、加硫化工程を経て製造される。ただし、変位層3を印刷(例えば、3Dプリンタを使用した印刷)にて製造しても良い。
【0051】
次いで、第1電極層2における柱部31と対向する接合面22aと、複数の柱部31の第1電極層2と対向する接合面31aとに対して、所定の紫外線を照射する。同様に、第2電極層4における平板層32と対向する接合面42bと、平板層32における第2電極層4と対向する接合面32bとに対して、所定の紫外線を照射する。ここで、照射する所定の紫外線としては、第1の実施の形態で使用するものを好適に使用できるので、重複した説明を省略する。
【0052】
次いで、第1電極層2と第2電極層4とにより、変位層3を挟むように重ね合わせる。この結果、第1電極層2の接合面22aと柱部31の接合面31aとを、第2電極層4の接合面42bと平板層32の接合面32bとを、それぞれ一体的に接合する。ここで、紫外線を照射した後、第1電極層2と第2電極層4との間に、変位層3を直ちに挟んで重ね合わせるのが好ましい。また、重ね合わせる際は、常温下であっても、加熱温度下であっても良い。また、第1電極層2と第2電極層4との間に変位層3を挟んだ後、その挟んだ方向に圧力を加えることが好ましい。また、その後、さらに、しばらく放置するのが好ましい。
【0053】
以上の工程を経て、
図3の(3A)に示すようなタッチセンサ1が完成する。上記のように、この実施の形態に係るタッチセンサ1の製造方法は、静電容量の変化を検出するための第1電極層2および第2電極層4と、第1電極層2と第2電極層4との間にあって、操作面に対する押圧により、第1電極層2と第2電極層4との間隔を変位可能な変位層3とを有し、変位層3には、ゴム状弾性体10中にポリマー型シランカップリング剤11を分散させて構成され、かつ押圧方向に伸縮可能な複数の柱部31と平板層32を有すると共に柱部31と第1電極層2、平板層32と第2電極層4とをそれぞれ一体的に接合して成るタッチセンサ1を製造する方法であって、第1電極層2と柱部31との両接合面22a,31a、および第2電極層4と平板層32との両接合面42b,32bに、それぞれ表面改質処理を行う表面改質処理ステップと、第1電極層2および第2電極層4と変位層3(柱部31と平板層32とから成る)とを重ね合わせた状態で維持することにより、第1電極層2および第2電極層4と、変位層3の上下両面とを一体的に接合する接合ステップと、を有する。
【0054】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態に係るタッチセンサについて説明する。本実施の形態では、先の各実施の形態と共通する構成部分については、同一の符号を付し、適宜、その説明を省略する。
【0055】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係るタッチセンサの断面図(4A)および(4A)のタッチセンサの製造方法を説明するための一部組立図(4B)をそれぞれ示す。
【0056】
第3の実施の形態に係るタッチセンサ1は、複数の柱部31と、それらの直下に配置される平板層32とを備える変位層3を備える点において、第2の実施の形態に係るタッチセンサ1と共通する。しかし、変位層3と基材シート44とを一体成形により製造し、表面改質処理を行わずに一体化している点、および基材シート44と基材シート42とを両面テープ43を介在させて接合している点において、第3の実施の形態に係るタッチセンサ1は、第2の実施の形態に係るタッチセンサ1と異なる。
【0057】
第2電極層4は、操作面側と反対側から順に、電極41、基材シート42、両面テープ43、基材シート44の順に積層して構成される。基材シート44は、変位層3の製造時に用いられ、その一方の接合面44bを平板層32の接合面32bと重ね合わせて、変位層3と一体化される。すなわち、平板層32は、柱部31と反対側に、基材シート44と一体成形される。基材シート44は、その材料に制約はないが、好ましくは、基材シート42と同様の樹脂から作製し得る。
【0058】
図4の(4B)に示すように、基材シート22の一方の面に電極21を形成する。また、同様に、基材シート42の一方の面に電極41を形成する。電極21,41の形成方法は、先の実施の形態と共通するので、重複した説明を省略する。
【0059】
次いで、変位層3と、基材シート44(第2電極層4の一部)とを一体化する。例えば、未硬化状態のゴム状弾性体用組成物(加硫剤も含み得る)に、ポリマー型シランカップリング剤11を混合し、その混合物を金型に流し込み、続いて、その上に基材シート44を配置し、金型内にて加圧する。このとき、基材シート44の接合面44bに何らの処理を行わなくても良いが、基材シート44の接合面44bにシランカップリング剤を塗工し、基材シート44と変位層3との接着強度を向上させるのが好ましい。次に、加圧および加熱を行い、変位層3の加硫化を行うと同時に、基材シート44の接合面44bと、平板層32の接合面32bとの接合を実現する。
【0060】
次いで、第1電極層2における柱部31と対向する接合面22aと、複数の柱部31の第1電極層2と対向する接合面31aとに対して、所定の紫外線を照射する。ここで、照射する所定の紫外線としては、先の実施の形態で使用するものを好適に使用できるので、重複した説明を省略する。
【0061】
次いで、第1電極層2と、変位層3および基材シート44の一体品とを重ね合わせる。この結果、第1電極層2の接合面22aと柱部31の接合面31aとを一体的に接合できる。ここで、紫外線を照射した後、第1電極層2と変位層3とを直ちに重ね合わせるのが好ましい。また、重ね合わせる際は、常温下であっても、加熱温度下であっても良い。また、第1電極層2と変位層3とを重ね合わせた後、その重ね合わせる方向に圧力を加えることが好ましい。また、その後、さらに、しばらく放置するのが好ましい。最後に、第2電極層4の一部である基材シート42および電極41の一体品の基材シート42側に両面テープ43を貼り、その上に、先に一体化した構成部の基材シート44を付ける。両面テープ43に代えて、粘着剤あるいは接着剤を介在させても良い。
【0062】
以上の工程を経て、
図4の(4A)に示すようなタッチセンサ1が完成する。上記のように、この実施の形態に係るタッチセンサ1の製造方法は、静電容量の変化を検出するための第1電極層2および第2電極層4と、第1電極層2と第2電極層4との間にあって、操作面に対する押圧により、第1電極層2と第2電極層4との間隔を変位可能な変位層3とを有し、変位層3には、ゴム状弾性体10中にポリマー型シランカップリング剤11を分散させて構成され、かつ押圧方向に伸縮可能な複数の柱部31と平板層32を有すると共に柱部31と第1電極層2、平板層32と第2電極層4とをそれぞれ一体的に接合して成るタッチセンサ1を製造する方法であって、第1電極層2と柱部31との両接合面22a,31aに表面改質処理を行う表面改質処理ステップと、第1電極層2および第2電極層4と変位層3(柱部31と平板層32とから成る)とを重ね合わせた状態で維持することにより、第1電極層2と変位層3の一部としての柱部31とを一体的に接合する接合ステップと、を有する。
【0063】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態に係るタッチセンサについて説明する。本実施の形態では、先の各実施の形態と共通する構成部分については、同一の符号を付し、適宜、その説明を省略する。
【0064】
図5は、本発明の第4の実施の形態に係るタッチセンサの断面図(5A)および(5A)のタッチセンサの製造方法を説明するための一部組立図(5B)をそれぞれ示す。
【0065】
第4の実施の形態に係るタッチセンサ1は、
図5の(5A)に示すように、第1の実施の形態に係るタッチセンサ1の変位層3において、1つの壁部34をさらに有する。より具体的には、変位層3は、その周縁部に、周囲から変位層3内への空気の流入を遮断するための1つの壁部34を有する。それ以外の構成は、第1の実施の形態に係るタッチセンサ1と共通する。壁部34は、例えば、枠形状を有し、柱部31と同様の材料で構成され、変位層3の周縁部に設けられている。壁部34は、柱部31と同じ高さを有しており、柱部31と同様に、第1電極層2の基材シート22および第2電極層4の基材シート42と一体的に接合されている。このような構成により、第1電極層2および第2電極層4と、変位層3との接着強度を向上することができる。さらに、壁部34の形成により、柱部31の周囲の空隙を外部から遮断することができ、柱部31の周囲の空隙に異物が侵入することを防止することができ、タッチセンサ1の信頼性を向上することができる。なお、壁部34に微細な通空孔を設け、異物浸入を防止しつつ、熱膨張や押圧による空気の移動を妨げないようにしても良い。
【0066】
図5の(5B)に示すように、基材シート22の一方の面に電極21を形成する。また、同様に、基材シート42の一方の面に電極41を形成する。電極21,41の形成方法は、先の実施の形態と共通するので、重複した説明を省略する。
【0067】
変位層3を構成する柱部31および壁部34は、例えば、未硬化状態のゴム状弾性体用組成物(加硫剤も含み得る)に、ポリマー型シランカップリング剤11を混合し、その混合物を金型に流し込み、加硫化工程を経て製造される。ただし、金型を使用せず、柱部31および壁部34を印刷にて製造しても良い。
【0068】
次いで、第1電極層2における柱部31および壁部34と対向する接合面22aと、複数の柱部31および壁部34のそれぞれ第1電極層2と対向する接合面31aおよび接合面34aとに対して、所定の紫外線を照射する。同様に、第2電極層4における柱部31および壁部34と対向する接合面42bと、複数の柱部31および壁部34のそれぞれ第2電極層4と対向する接合面31bおよび接合面34bとに対して、所定の紫外線を照射する。ここで、照射する所定の紫外線としては、先の実施の形態で使用するものを好適に使用できるので、重複した説明を省略する。
【0069】
次いで、第1電極層2と第2電極層4とにより、変位層3の複数の柱部31および1つの壁部34を挟むように重ね合わせる。この結果、第1電極層2の接合面22aと柱部31の接合面31aおよび壁部34の接合面34aとを、第2電極層4の接合面42bと柱部31の接合面31bおよび壁部34の接合面34bとを、それぞれ一体的に接合できる。ここで、紫外線を照射した後、第1電極層2と第2電極層4との間に、複数の柱部31および壁部34を直ちに挟んで重ね合わせるのが好ましい。また、重ね合わせる際は、常温下であっても、加熱温度下であっても良い。また、第1電極層2と第2電極層4との間に柱部31および壁部34を挟んだ後、その挟んだ方向に圧力を加えることが好ましい。また、その後、さらに、しばらく放置するのが好ましい。
【0070】
以上の工程を経て、
図5の(5A)に示すようなタッチセンサ1が完成する。上記のように、この実施の形態に係るタッチセンサ1の製造方法は、静電容量の変化を検出するための第1電極層2および第2電極層4と、第1電極層2と第2電極層4との間にあって、操作面に対する押圧により、第1電極層2と第2電極層4との間隔を変位可能な変位層3とを有し、変位層3には、ゴム状弾性体10中にポリマー型シランカップリング剤11を分散させて構成され、かつ押圧方向に伸縮可能な複数の柱部31および1つの壁部34を有すると共に柱部31および壁部34と第1電極層2および第2電極層4とを一体的に接合して成るタッチセンサ1を製造する方法であって、第1電極層2および第2電極層4と柱部31および壁部34との両接合面22a,42b,31a,31b,34a,34bに表面改質処理を行う表面改質処理ステップと、第1電極層2および第2電極層4と柱部31および壁部34とを重ね合わせた状態で維持することにより、第1電極層2および第2電極層4と、変位層3の柱部31および壁部34と、を一体的に接合する接合ステップと、を有する。
【0071】
<その他の実施の形態>
以上、本発明の各実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態に限られず、他の様々な態様をとり得る。
【0072】
例えば、上記各実施の形態では、柱部31の形状を、一例としてドット状(円柱状あるいは円錐台状)としているが、柱部31の形状は、これに限られず、例えば、ライン状であっても良い。また、上記各実施の形態では、第1電極層2と、変位層3の柱部31とを一体的に接合するようにしていたが、本発明はこれに限られず、第2電極層4と、変位層3の柱部31とを一体的に接合するようにしても良い。すなわち、第1電極層2または第2電極層4の少なくとも一方に対して柱部31を一体的に接合するようにすれば良い。
【0073】
電極21,41にレジスト層(保護層)を形成しても良い。レジスト層は、例えば、その厚さを、好ましくは3〜50μmの範囲、より好ましくは5〜30μmの範囲、さらに好ましくは10〜25μmの範囲とすることができる。レジスト層を形成する場合、電極21,41は、第1電極層2の基材シート22あるいは第2電極層4の基材シート42よりも変位層3に近い側にあっても良い。また、上記各実施の形態では、操作面側の第1電極層2の電極21を駆動電極とし、操作面から離れた側の第2電極層4の電極41を受信電極としていたが、これを逆にして、第1電極層2の電極21を受信電極とし、第2電極層4の電極41を駆動電極としても良い。また、上記各実施の形態では、Z方向の操作を検出するタッチセンサ1を例に挙げていたが、後述のように、操作面の平面における位置(XY方向の位置)を検出するためのXY方向受信電極を含む第3電極層をさらに備えるようにして、3軸方向の操作を検出するようにしても良い。この場合には、第3電極層は、Z方向において、第1電極層2よりも操作面に近い位置、第1電極層2と変位層3との間、変位層3と第2電極層4との間、または第2電極層4よりも操作面から遠い位置のいずれの位置に配置することもできる。
【0074】
また、XY方向受信電極を第1電極層2または第2電極層4に設けるようにしても良い。例えば、XY方向受信電極を、第1電極層2または2電極層4の基材シート22,42の電極21,41を設けた面の反対面側に配置したり、レジスト層を介して電極21,41上に配置したり、基材シート22,42上の電極21,41と同一面側に間隔を置いて配置したりしても良い。柱部31よりも上方の第1電極層2にXY方向受信電極を配置する場合においては、XY方向受信電極を含む第1電極層2は、操作面に対する押圧時に変形する必要があるので、第1電極層2の厚さは、0.01〜1mmが好ましく、0.01〜0.4mmがより好ましい。
【0075】
また、上記各実施の形態では、変位層3の柱部31と、第1電極層2の一方の面、または第2電極層4の一方の面の少なくともいずれか一方との間で一体的に接合していたが、本発明はこれに限られず、柱部31と、第1電極層2とは異なる面であって第1電極層2側の変位層3と対向する面、または、第2電極層4とは異なる面であって第2電極層4側の変位層3と対向する面の少なくともいずれか一方との間で、一体的に接合するようにしても良い。
【0076】
また、上述の各実施の形態における構成および製法上のステップは、組み合わせ不可の場合を除き、種々任意に組み合わせることができる。例えば、第4の実施の形態に係るタッチセンサ1の壁部34を、第2の実施の形態あるいは第3の実施の形態に係る各タッチセンサ1に組み込むことができる。また、壁部34は、1つに限らず、変位層3と同一面内に2以上備えても良い。
【実施例】
【0077】
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例の内容に限定されない。
【0078】
<1.接着強度試験>
ポリマー型シランカップリング剤を含むゴム状弾性体と基材シートとの接着強度を確認すべく、以下の条件でサンプルを多数作製し、それらの評価を行った。
【0079】
(1)サンプルの作製条件
(実験1)
東レ株式会社製のPET(品番: S10)を用意した。PETは、切断によって、縦15mm×横50mm×厚さ0.125mmの大きさに加工した。次に、PETの片面に、コロナ表面処理を施した。コロナ表面処理は、春日電機株式会社製のリニアテーブル式コロナ表面処理装置(品番: AGF−010S、電極: 直径1mm×長さ0.27mのワイヤー)を用い、放電電力0.5kW、搬送速度1.5m/min、電極−ワーク間距離5mmの条件下で行った。次に、PETの上記コロナ処理を施した面に、バーコーター「No.1.5」を用いて信越化学工業株式会社製のシリコーン系プライマー(品番: X33−156−20)を塗布し、室温(約25℃)にて30分間放置した。次に、信越化学工業株式会社製のシリコーンゴム組成物(品番: KE−1935A/B、A:B=質量比1:1)100質量部に対して、信越化学工業株式会社製のポリマー型シランカップリング剤(品番: X−12−981、官能基当量: 3、エポキシ基およびトリエトキシシリル基を有する)を有効成分(シランカップリング剤)の質量換算にて0.5〜10質量部になるような配合量にて混練し、シランカップリング剤の割合の異なる5種類の混練物を作製した。続いて、先に用意したPETのプライマー塗布面に各混練物をスクリーン印刷した。スクリーン印刷は、スクリーン版:#200、印刷厚み:約25μm、乾燥条件:120℃にて60分保持の諸条件にて行った。こうして、5種類のシリコーンゴム層付きのPETシートを作製した。
【0080】
図6は、接着強度試験に供するサンプルの断面図を示す。
【0081】
各シリコーンゴム層付きのPETシート60は、PET61の片面にシリコーンゴム層62を備えた二層構造を持つ。シリコーンゴム層62は、シリコーンゴム63中にポリマー型シランカップリング剤64を分散させた層である。次に、別のPET50を用意し、別のPET50の片面、および各シリコーンゴム層付きのPETシート60のシリコーンゴム層62の表面に対して、コロナ処理を行った。コロナ処理は、春日電機株式会社製のリニアテーブル式コロナ表面処理装置(品番: AGF−010S、電極: 直径1mm×長さ0.27mのワイヤー)を用い、放電電力0.5kW、搬送速度1.5m/min、電極−ワーク間距離5mmの条件下で行った。コロナ処理の後、5分以内に、PET50および各シリコーンゴム層付きのPETシート60の両コロナ処理面同士を重ねて貼り合わせた。貼り合わせは、貼り合わせ用の治具に、PET50および各シリコーンゴム層付きのPETシート60をそれぞれ吸着・固定し、コロナ処理面同士を精度よく貼り合わせ、最大6.5kgf/cm
2の圧力下、温度90℃にて30秒間保持して行った。こうして、タッチセンサを模した5種類のサンプルを完成した。
【0082】
(実験2)
PET50およびシリコーンゴム層付きのPETシート60の貼り合わせの温度および保持時間をそれぞれ室温(約25℃)および24時間に変更し、最大0.2kgf/cm
2の圧力下にて貼り合わせを行った以外、実験1と同一条件で、シランカップリング剤の質量比の異なる5種類のサンプルを完成した。
【0083】
(実験3)
PET50およびPET61を、ともに東レ株式会社製の易接着PET(品番: U48)に変更した以外、実験2と同一条件で、シランカップリング剤の質量比の異なる5種類のサンプルを完成した。
【0084】
(比較実験1)
コロナ処理を行わず、貼り合わせ条件を実験1と同一条件に変更して行う以外、実験3と同一条件で、シランカップリング剤の質量比の異なる5種類のサンプルを完成した。
【0085】
(比較実験2)
コロナ処理を行わない以外、実験2と同一条件で、シランカップリング剤の質量比の異なる5種類のサンプルを完成した。
【0086】
(比較実験3)
ポリマー型シランカップリング剤64に代えて、信越化学工業株式会社製のエポキシ系シランカップリング剤の1つである3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(品番: KBM−403)を用いて、かつPET50,61に代えて易接着PET(品番: U48)を用いた以外、実験1と同一条件で、シランカップリング剤の質量比の異なる5種類のサンプルを完成した。
【0087】
(比較実験4)
ポリマー型シランカップリング剤64に代えて、信越化学工業株式会社製のエポキシ系シランカップリング剤の1つである3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(品番: KBM−403)を用いた以外、実験2と同一条件で、シランカップリング剤の質量比の異なる5種類のサンプルを完成した。
【0088】
(比較実験5)
信越化学工業株式会社製のシリコーンゴム組成物(品番: KE−1935A/B)に、何らのシランカップリング剤をも添加せずにシリコーンゴム層62を形成して、PET50,61に代えて易接着PET(品番: U48)を用いた以外、実験1と同一条件で、シランカップリング剤の質量比の異なる5種類のサンプルを完成した。
【0089】
(比較実験6)
信越化学工業株式会社製のシリコーンゴム組成物(品番: KE−1935A/B)に、何らのシランカップリング剤をも添加せずにシリコーンゴム層62を形成した以外、実験2と同一条件で、シランカップリング剤の質量比の異なる5種類のサンプルを完成した。
【0090】
(2)サンプルの接着強度評価方法
剥離速度10mm/minにて、各サンプルの貼合面を剥離し、剥離強度と、剥離した状態を観察した。剥離には、一定速度で引張可能な引張試験機に計測器(日本電産シンポ製FGP−10)を取り付けた装置を用いた。剥離した状態は、電子顕微鏡にて観察し、シリコーンゴム層62が破壊した状態あるいは当該層62と基材シート(PET61あるいはそれに代用した易接着PET)との界面で剥離した状態(「基材破壊」という)か、基材破壊に加えて貼合面からの剥離も混在している状態(「混在破壊」という)か、あるいは貼合面からのみの剥離状態(「剥離」という)かを目視にて区別した。貼合面における接着強度は、基材破壊にて最も大きく、混在破壊、剥離の順に低くなる。
【0091】
表1に、実験1〜3および比較実験1〜6の製造条件および評価結果を示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1において、「A」は基材破壊を、「B」は混在破壊を、「C」は剥離を、それぞれ意味する。基材破壊の場合には、接着状態が最も良い状態と解釈できるので、最良の接着状態を意味する「A」と評価した。混在破壊の場合には、接着状態が良い状態と解釈できるので、良好の接着状態を意味する「B」と評価した。剥離の場合には、接着状態が好ましくない状態と解釈できるので、不良状態を意味する「C」と評価した。また、上記各評価の直下に表示される数字は、接着強度(単位: N/15mm)を意味する。また、表1中のバー(−)は、評価していないことを意味する。また、有効成分の配合量は、ポリマー型シランカップリング剤自体の量を意味し、ポリマー型シランカップリング剤の他に1または2以上の成分が存在する場合には、当該他の成分を除いた量である。
【0094】
表1の結果から明らかなように、シランカップリング剤としてポリマー型シランカップリング剤64を混練したシリコーンゴム層62を形成して、貼り合わせ両面にコロナ処理を行った後に貼り合わせを実行して作製したサンプルは、いずれも高い接着強度を有していた。一方、コロナ処理を行わなかった場合、あるいはコロナ処理を行ったもののポリマー型シランカップリング剤64を混合せずにシリコーンゴム層62を形成した場合には、極めて低い接着強度しか得られなかった。
【0095】
<2.タッチセンサの作製>
次に、各種タッチセンサの作製例について詳述する。
【0096】
(実施例1)
図7は、実施例1の製造工程のフローを示す。
【0097】
(1)変位層(柱部のみ)の製造
信越化学工業株式会社製のシリコーンゴムコンパウンド(品番: KE−951−Uのシリコーンゴムと、品番: C−25A/Bの加硫剤を含む)100質量部に、信越化学工業株式会社製のポリマー型シランカップリング剤製品(品番: X−12−981)1質量部(内、ポリマー型シランカップリング剤は0.5質量部)を混合して、変位層を形成するための未硬化状態のシリコーンゴム組成物を作製した。次に、柱部31の形状を規定する円柱形状の凹部を有する金型を用意し、上記未硬化状態のシリコーンゴム組成物を金型内に投入し、温度135℃、保持時間4分の条件にてプレス成形を行い、柱部31を作製した。続いて、柱部31を温度150℃にて30分間乾燥した。ここで、金型の凹部には、複数の柱部31のそれぞれの形状を規定する、底面が平坦な複数の柱部用凹部がマトリクス状に均等に形成されている。
【0098】
(2)表面改質処理
次に、柱部31の上下両面(接合面)31a,31bに、図中の矢印Cで示すように、コロナ表面処理を施した(ステップ101)。コロナ表面処理は、春日電機株式会社製のリニアテーブル式コロナ表面処理装置(品番: AGF−010S、電極: 直径1mm×長さ0.27mのワイヤー)を用い、放電電力0.5kW、搬送速度1.5m/min、電極−ワーク間距離5mmの条件下で行った。
【0099】
(3)第2電極層の製造
東レ株式会社製のPET(品番: S10)から成る基材シート42を所定の大きさにカットし、その片面に、電極41を形成した(ステップ201)。次に、基材シート42における電極41の形成面と反対側の面(接合面)42bに、図中の矢印Cで示すように、コロナ表面処理を施した(ステップ202)。コロナ表面処理の条件は、柱部31に対するコロナ表面処理のそれと同一とした。
【0100】
(4)第1電極層の製造
第2電極層と同様、PET(品番: S10)から成る基材シート22の片面に、電極21を形成した(ステップ301)。次に、基材シート22における電極21の形成面と反対側の面(接合面)22aに、図中の矢印Cで示すように、コロナ表面処理を施した(ステップ302)。コロナ表面処理の条件は、柱部31に対するコロナ表面処理のそれと同一とした。
【0101】
(5)最終貼り合わせ
次に、第2電極層4の基材シート42上に柱部31を配置し、その上から第1電極層2を載置し、柱部31の高さの40%相当量を押し込むように、温度90℃、保持時間30秒の条件下で、第1電極層2、柱部31および第2電極層4を貼り合わせた(ステップ303)。こうして、静電容量方式のタッチセンサ1を完成した。
【0102】
(実施例2)
図8は、実施例2の製造工程のフローを示す。
【0103】
(1)変位層(柱部+平板層)の製造
実施例1と同一条件にて、未硬化状態のシリコーンゴム組成物を作製した。次に、東レ株式会社製のPET(品番: S10)から成る基材シート44を所定の大きさにカットし、その片面に、信越化学工業株式会社製のシリコーン系プライマー(品番: X33−156−20)を塗布し、室温(約25℃)にて1時間放置した。次に、柱部31の形状を規定する円柱形状の凹部を有する金型を用意し、上記未硬化状態のシリコーンゴム組成物を金型内に投入し、その上から、シリコーン系プライマーを塗布した面を未硬化状態のシリコーンゴム組成物側にして、基材シート44を金型内にセットした。その状態で、温度135℃、保持時間4分の条件にてプレス成形を行った。その結果、柱部31と、平板層32と、基材シート44とを一体化した成形体が得られた(ステップ401)。その後、当該成形体を温度150℃にて30分間の条件で乾燥した。
【0104】
(2)第2電極層の製造
東レ株式会社製のPET(品番: S10)から成る基材シート42を所定の大きさにカットし、その片面に、電極41を形成した。さらに、電極41の上から、レジスト層45を被覆して、第2電極層を作製した(ステップ402)。
【0105】
(3)変位層と第2電極層との貼り合わせ
基材シート44と、第2電極層のレジスト層45との間に、3M社製の両面テープ(品番: 467)43を介在させ、変位層と第2電極層とを貼り合わせた(ステップ403)。なお、第2電極層の下部、すなわち、基材シート42に上記と同様の両面テープ(非接着性のシート付きが好ましい)43を貼り付けた。
【0106】
(4)表面改質処理
次に、変位層、特に柱部31の接合面31aを含む領域に、図中の矢印Cで示すように、コロナ表面処理を施した(ステップ404)。コロナ表面処理の条件は、実施例1におけるコロナ表面処理の条件と同一とした。
【0107】
(5)第1電極層の製造
第2電極層と同様に、東レ株式会社製のPET(品番: S10)から成る基材シート22を所定の大きさにカットし、その片面に、電極21を形成した。さらに、電極21の上から、レジスト層25を被覆して、第1電極層を作製した(ステップ501)。
【0108】
(6)第3電極層の製造
第1電極層と同様に、東レ株式会社製のPET(品番: S10)から成る基材シート72を所定の大きさにカットし、その片面に、受信電極としての電極71を形成した。さらに、電極71の上から、レジスト層75を被覆して、第3電極層を作製した(ステップ502)。
【0109】
(7)第1電極層と第3電極層との貼り合わせ
基材シート72と、第1電極層のレジスト層25との間に、3M社製の両面テープ(品番: 467)76を介在させ、第1電極層と第3電極層とを貼り合わせた(ステップ503)。
【0110】
(8)表面改質処理
次に、第1電極層の基材シート22の接合面22aに、図中の矢印Cで示すように、コロナ表面処理を施した(ステップ504)。コロナ表面処理の条件は、ステップ404におけるコロナ表面処理の条件と同一とした。
【0111】
(9)最終貼り合わせ
次に、柱部31の接合面31aと、基材シート22の接合面22aとを貼り合わせ、柱部31の高さの40%相当量を押し込むように、温度90℃、保持時間30秒の条件下で、ステップ404で得られた層と、ステップ504で得られた層とを貼り合わせた(ステップ505)。こうして、静電容量方式のタッチセンサ1を完成した。
【0112】
(実施例3)
図9は、実施例3の製造工程のフローを示す。
【0113】
(1)変位層(柱部+平板層)の製造
実施例2のステップ401と同一条件にて、変位層を製造した(ステップ601)。その後、得られた成形体は、温度150℃にて30分間の条件で乾燥した。
【0114】
(2)第2電極層の製造
実施例2のステップ402と同一条件にて、第2電極層を作製した(ステップ602)。
【0115】
(3)変位層と第2電極層との貼り合わせ
実施例2のステップ403と同一条件にて、変位層と第2電極層とを貼り合わせた(ステップ603)。
【0116】
(4)表面改質処理
実施例2のステップ404と同一条件にて、変位層、特に柱部31の接合面31aを含む領域に、図中の矢印Cで示すように、コロナ表面処理を施した(ステップ604)。
【0117】
(5)第1電極層の製造
実施例2のステップ501と同一条件にて、第1電極層を作製した(ステップ701)。
【0118】
(6)表面改質処理
次に、第1電極層の基材シート22の接合面22aに、図中の矢印Cで示すように、コロナ表面処理を施した(ステップ702)。コロナ表面処理の条件は、ステップ604におけるコロナ表面処理の条件と同一とした。
【0119】
(7)最終貼り合わせ
次に、実施例2のステップ505と同様に、柱部31の接合面31aと、基材シート22の接合面22aとを貼り合わせ、第1電極層と、ステップ604で得られた層とを貼り合わせた(ステップ703)。こうして、静電容量方式のタッチセンサ1を完成した。
【0120】
実施例1〜3により製造されたタッチセンサ1は、いずれも、品質、コスト、仕様の面で本発明の目的を達成するものであった。