特許第6246714号(P6246714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6246714-自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246714
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20171204BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20171204BHJP
   D21H 17/69 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C09D17/00
   C01F11/18 J
   D21H17/69
【請求項の数】27
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-527587(P2014-527587)
(86)(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公表番号】特表2014-527113(P2014-527113A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】EP2012066302
(87)【国際公開番号】WO2013030051
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2014年4月16日
【審判番号】不服2016-5202(P2016-5202/J1)
【審判請求日】2016年4月8日
(31)【優先権主張番号】11179604.1
(32)【優先日】2011年8月31日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/531,662
(32)【優先日】2011年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガンテンバイン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シェルコップ,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック・エイ・シー
【合議体】
【審判長】 國島 明弘
【審判官】 井上 能宏
【審判官】 日比野 隆治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−119692(JP,A)
【文献】 特表平9−506397(JP,A)
【文献】 特表平5−502484(JP,A)
【文献】 特開平6−9302(JP,A)
【文献】 特表2000−510050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法であって、
a)水性顔料材懸濁液を準備する工程、
b)少なくとも1種類の高分子バインダーを準備する工程であって、該バインダーは、ガラクトースおよび/またはマンノース単位を含む少なくとも1種類の多糖を含む工程、
c)工程b)のバインダーを工程a)の水性顔料材懸濁液と混合する工程、ならびに
d)工程c)の水性顔料材懸濁液を磨砕する工程であって、1μm未満の粒径を有する自己結合性顔料粒子分率が該顔料粒子の総重量に対して5重量%より大きくなるまで磨砕し、且つ分散剤は磨砕中には使用または添加を伴わない工程、
を含み、
工程c)において、該バインダーを該水性顔料材懸濁液に該顔料材懸濁液の総重量に対して0.1重量%から10重量%の量で添加する、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
工程a)の顔料材懸濁液が、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム含有鉱物、混合カーボネートをベースとするフィラー、またはそれらの混合物を含む群より選択される顔料材を含み、および該炭酸カルシウム含有鉱物が、ドロマイトを含み、および該混合カーボネートをベースとするフィラーが、マグネシウムと会合したカルシウム、クレイ、タルク、タルク−炭酸カルシウム混合物、炭酸カルシウム−カオリン混合物、または天然炭酸カルシウムと水酸化アルミニウム、雲母、または合成もしくは天然繊維との混合物、またはタルク−炭酸カルシウムもしくはタルク−二酸化チタンもしくは炭酸カルシウム−二酸化チタン共構造から選択される鉱物の共構造である、
方法。
【請求項3】
炭酸カルシウムが、磨砕天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、またはそれらの混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)のバインダーが、ガラクトース単位とマンノース単位を含む少なくとも1種類の多糖を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程b)のバインダーが、該少なくとも1種類の多糖のカチオン性誘導体を含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程b)のバインダーが、1,4結合型β−D−マンノピラノシル単位の線状鎖を含む少なくとも1種類の多糖を含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該1,4結合型β−D−マンノピラノシル単位の該線状鎖はα−D−ガラクトピラノシル単位が1,6結合したものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程b)のバインダーが、ガラクトース単位に対するマンノース単位の比が6:1から1:1である少なくとも1種類の多糖を含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ガラクトース単位に対するマンノース単位の比が5:1から1:1である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程b)のバインダーが、親水コロイド状溶液または乾燥物質の形態である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)のバインダーが、親水コロイド状溶液の形態である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程b)のバインダーが、親水コロイド状溶液の形態であり、該親水コロイド状溶液が、該溶液の総重量に対して0.05重量%から10重量%のバインダー濃度を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
該バインダー濃度が、該溶液の総重量に対して0.1重量%から5重量である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程c)において、バインダーを水性顔料材懸濁液に、該顔料材懸濁液の総重量に対して0.1重量%から2重量%の量で添加する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程c)における固形分が、該顔料材懸濁液の総重量に対して少なくとも1重量%になるように調整される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程c)における固形分が、該顔料材懸濁液の総重量に対して1重量%から80重量%になるように調整される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
磨砕工程d)を工程c)中および/または後に行う、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
磨砕工程d)を工程c)の後に行う、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
磨砕工程d)が、10℃から110℃の温度で行われる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
磨砕工程d)が、20℃から60℃の温度で行われる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
磨砕工程d)を、1μm未満の粒径を有する自己結合性顔料粒子分率が、該顔料粒子の総重量に対して20重量%より大きくなるまで行う、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
磨砕工程d)を、バッチ式または連続式で行う、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
磨砕工程d)を、連続式で行う、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
得られた顔料材懸濁液を、該懸濁液中の固形分が該顔料材懸濁液の総重量に対して少なくとも45重量%となるように濃縮する工程e)をさらに含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
得られた顔料材懸濁液を、該懸濁液中の固形分が該顔料材懸濁液の総重量に対して少なくとも45重量%から80重量%となるように濃縮する工程e)をさらに含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
濃縮工程e)を、工程d)の前または後に行う、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
己結合性顔料粒子懸濁液であって、
− 該自己結合性顔料粒子が、互いに結合している鉱物材料とバインダーで形成され、且つ該顔料粒子が、少なくとも部分的にポリマーバインダーで被覆されたものであり、該バインダーが、ガラクトースおよび/またはマンノース単位を含む少なくとも1種類の多糖を含み;
− 固形分が、該顔料材懸濁液の総重量に対して1重量%から80重量%であり、
該自己結合性顔料粒子懸濁液は、水性顔料材懸濁液とバインダーとの混合後、
1μm未満の粒径を有する自己結合性顔料粒子分率が該顔料粒子の総重量に対して5重量%より大きくなるまで粉砕されたものであり
− 顔料粒子が、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム含有鉱物、混合カーボネートをベースとするフィラー、またはそれらの混合物を含む群より選択される顔料材を含み、および該炭酸カルシウム含有鉱物が、ドロマイトを含み、および該混合カーボネートをベースとするフィラーが、マグネシウムと会合したカルシウム、クレイ、タルク、タルク−炭酸カルシウム混合物、炭酸カルシウム−カオリン混合物、または天然炭酸カルシウムと水酸化アルミニウム、雲母、または合成もしくは天然繊維との混合物、またはタルク−炭酸カルシウムもしくはタルク−二酸化チタンもしくは炭酸カルシウム−二酸化チタン共構造から選択される鉱物の共構造、から選択されるものであり、且つ
− 分散剤を含有しない
自己結合性顔料粒子懸濁液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法、自己結合性顔料粒子懸濁液ならびに該自己結合性顔料粒子を含む紙製品および充填材としての該自己結合性顔料粒子懸濁液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱物材およびバインダーは、数多くの製品、例えば、塗料、紙およびプラスチック材料の製造に使用される主要な構成成分の一つである。製品中、鉱物材、例えば炭酸カルシウムおよび他の粒状材は機械的および光学的特性に寄与し、一方、バインダー(一般的にはラテックス系で水性懸濁液または分散液の形態)は、作製される最終製品のそれぞれの構成成分に対する必要な付着と凝集をもたらす。
【0003】
鉱物材とバインダーを別々に取り扱うロジスティックスの問題点を回避するため、および、さらに、鉱物材とバインダーの同等混合物において起こる不要な物理的および化学的相互作用を回避するため、自己結合性顔料粒子が開発されており、当業界で知られている。これに関して、鉱物材の特性とバインダーの特性の両方に寄与する自己結合性顔料粒子は、さまざまな用途において直接実現され得る。自己結合性顔料粒子と命名されたこの特異な生成物は、互いに密に結合している鉱物材とバインダーで形成された固形の個別粒子をいう。この内部凝集力は、優れた機械的安定性を有する自己結合性顔料粒子を提供するようなものである。
【0004】
自己結合性顔料粒子は、バインダーの存在下で鉱物材を磨砕する工程を少なくとも1回実施する方法によって調製され、この場合、磨砕とは、粒径の低減がもたらされる操作をいい;自己結合性顔料粒子中の鉱物材は、作製に使用した最初の鉱物材よりも小さい直径を有する。かかる自己結合性顔料粒子は、幾つかの文献、例えばWO2006/008657、WO2006/128814およびWO2008/139292に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/008657号
【特許文献2】国際公開第2006/128814号
【特許文献3】国際公開第2008/139292号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、依然として当該技術分野において、以下の多面的技術的課題:
紙の塗工の調製において典型的に使用されるラテックスバインダー含有量よりも少ないバインダー含有量を有する紙の塗工がもたらされる自己結合性顔料粒子の懸濁液を調製すること;
紙製品が充分な比引張強さ、好ましくは少なくとも10Nm/gの比引張強さを有するような紙製品用充填材を得ることを可能にする自己結合性顔料粒子の懸濁液を調製すること;
得られる懸濁液中の化石資源系の成分の含有量が低減されるような自己結合性顔料粒子の懸濁液を調製すること(即ち、自己結合性顔料粒子懸濁液を、再生可能な資源から得られるバインダーを含むものにする。);
得られた懸濁液で、かかる懸濁液の調製において典型的に使用されるラテックス系バインダーを用いて調製される対応懸濁液よりも高い生分解性が得られるような自己結合性顔料粒子の懸濁液を調製すること;
得られた懸濁液およびかかる懸濁液から作製された最終製品の汚損が遅延されるような充分な微生物学的安定性を有する自己結合性顔料粒子の懸濁液を調製すること;
懸濁液の調製、保存および適用時に使用される機器類に観察されるデポジットが少なくなるように粘着物質の含有が少ない自己結合性顔料粒子の懸濁液(即ち、より良好な取り扱いがもたらされる懸濁液)を調製すること
のうちの1つ以上が解決され得る自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法の必要性が存在している。
【0007】
上記の技術的課題に対処し、特に、かかる懸濁液中の高分子ラテックス系バインダーの含有量の低減を可能にする自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法の改善の必要性が継続して存在している。
【0008】
従って、本発明の目的は、ラテックス系バインダーの含有量が低減された自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法を提供することである。さらなる目的は、かかる懸濁液から作製される紙製品が少なくとも10Nm/gの比引張強さを特長とするような自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法を提供することである。なおさらなる目的は、化石資源系の成分の含有量が低減された自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法を提供することである。またさらなる目的は、ラテックスバインダーを用いて調製される懸濁液と比べて生分解性が増大した自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法を提供することである。本発明の別の目的は、充分な微生物学的安定性が得られる自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法を提供することである。さらなる目的は、コスト効率のよい条件で、即ち、コストがかかる原料および/または徹底的な洗浄工程が回避されることにより行われ得る自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法を提供することである。さらなる目的は、以下の本発明の説明から収集され得よう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願人は、解決法として、a)水性鉱物顔料懸濁液を準備する工程、b)少なくとも1種類の高分子バインダーを準備する工程であって、該バインダーは、0.4から2.0の範囲のカルボキシル化度を有し、3から300ml/gの範囲の固有粘度を有する少なくとも1種類のカルボキシメチルセルロースを含む工程、c)工程b)のバインダーを工程a)の水性鉱物顔料材懸濁液と混合し、得られる懸濁液の固形分を、該懸濁液の総重量に対して45から80重量%になるように調整する工程、およびd)工程c)の水性鉱物材懸濁液を磨砕する工程を含む、自己結合性顔料粒子の調製方法が記載された未公開の欧州特許出願番号11160900.4、ならびにa)水性鉱物顔料懸濁液を準備する工程、b)少なくとも1種類の高分子バインダーを準備する工程であって、該バインダーは、0.4から2.0の範囲のカルボキシル化度を有し、3から300ml/gの範囲の固有粘度を有する少なくとも1種類の修飾多糖を含み、該バインダーの炭素が、バインダー中の炭素1グラムあたり1時間あたり900から920回の14Cから12Cへの変換の核変換速度を示す工程;c)工程b)のバインダーを工程a)の水性鉱物顔料材懸濁液と混合し、得られる懸濁液の固形分を、該懸濁液の総重量に対して45から80重量%になるように調整する工程、およびd)工程c)の水性鉱物材懸濁液を、1μm未満の粒径を有する自己結合性顔料粒子分率が該顔料粒子の総重量に対して5重量%より大きくなるまで磨砕する工程を含む、自己結合性顔料粒子の調製方法が記載された未公開の欧州特許出願番号11160926.9を承知しているが、前述および他の目的は、本明細書において規定する本発明の主題によって解決される。
【0010】
本発明の第1の態様により、
a)水性顔料材懸濁液を準備する工程、
b)少なくとも1種類の高分子バインダーを準備する工程であって、該バインダーは、ガラクトースおよび/またはマンノース単位を含む少なくとも1種類の多糖を含む工程、
c)工程b)の高分子バインダーを工程a)の水性顔料材懸濁液と混合する工程;ならびに
d)工程c)の水性顔料材懸濁液を磨砕する工程
を含む、自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法を提供する。
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明による前述の方法により、バインダーの含有量ならびに粘着物質の含有量および化石資源系の成分の含有量の低減、充分な生分解性および微生物に対する安定性がもたらされる自己結合性顔料粒子懸濁液が得られ、かかる懸濁液から作製される紙製品に少なくとも10Nm/gの比引張強さが付与されることを見出した。より厳密には、本発明者らは、自己結合性顔料粒子の懸濁液の特性が、ガラクトースおよび/またはマンノース単位を含む規定の多糖をバインダーとして添加することによって改善され得ることを見出した。
【0012】
本発明の解釈上、以下の用語は以下の意味を有すると理解されたい:
水性「顔料材」懸濁液という用語は、本発明の意味において、天然および/または合成の物質、例えば、炭酸カルシウム、タルク、白亜、ドロマイト、雲母、二酸化チタンなどを包含している。
【0013】
水性顔料材「懸濁液」という用語は、本発明の意味において、不溶性固形物と水および場合によりさらなる添加剤を含むもの、通常、大量の固形物を含有しており、従って、該懸濁液を構成する液体よりも粘性であり、一般的にはより高密度である。
【0014】
用語「バインダー」は、本明細書で用いる場合、混合物中の他の2種類以上の物質を一体に付着させるのに慣用的に使用される化合物である。
【0015】
しかしながら、本発明の方法では、バインダーは、凝集以外の効果、即ち、自己結合性顔料粒子懸濁液から作製される製品の比引張強さを改善する効果も有する。
【0016】
用語「ガラクトースおよび/またはマンノース単位を含む多糖」は、本発明の意味において、複数のガラクトースおよび/またはマンノース単位がグリコシド結合によって一体に連接されることによって形成された高分子糖質構造をいう。このような構造は、多くの場合、線状であるが、種々の分枝度を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】自己結合性顔料粒子懸濁液から作製した手すき紙での比引張強さに対するかかる懸濁液の効果を示す。
図2】自己結合性顔料粒子懸濁液から作製した手すき紙での内部結合(z方向の)に対するかかる懸濁液の効果を示す。
図3】タブレットに最初に亀裂が生じるのに必要とされる最大力Fmaxを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の別の態様は、該方法によって得られ得る自己結合性顔料粒子懸濁液に関する。
【0019】
本発明のさらなる態様は、自己結合性顔料粒子を含む紙製品であって、該顔料粒子が、ガラクトースおよび/またはマンノース単位を含む少なくとも1種類の多糖で少なくとも部分的に被覆されている紙製品に関する。該紙製品は、20重量%のフィラー負荷時に少なくとも10Nm/g、好ましくは少なくとも15Nm/g、より好ましくは少なくとも20Nm/g、最も好ましくは少なくとも22Nm/gの比引張強さを有することが好ましい。
【0020】
本発明のなおさらなる態様は、充填材としての該自己結合性顔料粒子懸濁液の使用に関する。該充填材は紙、プラスチック、塗料、コンクリートおよび/または農業用途に使用されることが好ましい。自己結合性顔料粒子懸濁液は、製紙機のウエットエンドプロセスにおいて、シガレットペーパーおよび/または塗工用途において、または輪転グラビアおよび/またはオフセットおよび/またはデジタル印刷のための支持体として使用されることがさらに好ましい。また、自己結合性顔料粒子懸濁液は植物の葉の太陽光およびUV曝露を低減するために使用することが好ましい。
【0021】
以下において、自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の好ましい実施形態または技術的詳細に言及している場合、このような好ましい実施形態および技術的詳細はまた、本発明の自己結合性顔料粒子懸濁液、顔料材を含む本発明の紙製品ならびに本明細書において規定する自己結合性顔料粒子懸濁液の使用にも言及していること(ならびにこの逆(適用可能な限り))は理解されよう。例えば、自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法に示された水性顔料材懸濁液が、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム含有鉱物、混合カーボネートをベースとするフィラー、またはこの混合物を含む群より選択される顔料材を含むものであると示している場合、同様に、本発明の自己結合性顔料粒子懸濁液、顔料材を含む本発明の紙製品ならびに該自己結合性顔料粒子懸濁液の使用においても、好ましくは炭酸カルシウム、炭酸カルシウム含有鉱物、混合カーボネートをベースとするフィラー、またはこの混合物を含む群より選択される顔料材が含まれている。
【0022】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、工程a)の顔料材懸濁液は、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム含有鉱物、混合カーボネートをベースとするフィラー、またはこの混合物を含む群より選択される顔料材を含み、該炭酸カルシウム含有鉱物は、好ましくはドロマイトを含み、該混合カーボネートをベースとするフィラーは、好ましくは、マグネシウムと会合したカルシウム(calcium associated with magnesium)、クレイ、タルク、タルク−炭酸カルシウム混合物、炭酸カルシウム−カオリン混合物、または天然炭酸カルシウムと水酸化アルミニウム、雲母との混合物または合成もしくは天然繊維との混合物または鉱物共構造(co−structure)であって、好ましくは、タルク−炭酸カルシウムまたはタルク−二酸化チタンまたは炭酸カルシウム−二酸化チタン共構造から選択される。
【0023】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、炭酸カルシウムは磨砕天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、またはこの混合物である。
【0024】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法のまた別の好ましい実施形態によれば、工程b)のバインダーは、ガラクトース単位とマンノース単位を含む少なくとも1種類の多糖を含む。
【0025】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、工程b)のバインダーは該少なくとも1種類の多糖のカチオン性誘導体を含む。
【0026】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、工程b)のバインダーは1,4結合型β−D−マンノピラノシル単位の線状鎖を含む少なくとも1種類の多糖を含み、好ましくは、1,4結合型β−D−マンノピラノシル単位の該線状鎖はα−D−ガラクトピラノシル単位が1,6結合したものである。
【0027】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法のまた別の好ましい実施形態によれば、工程b)のバインダーは、ガラクトース単位に対するマンノース単位の比が6:1から1:1、好ましくは5:1から1:1、より好ましくは4:1から1:1、最も好ましくは3:1から1:1である少なくとも1種類の多糖を含む。
【0028】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、工程b)のバインダーは、親水コロイド状溶液または乾燥物質の形態、好ましくは親水コロイド状溶液の形態である。
【0029】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、工程b)のバインダーは親水コロイド状溶液の形態であり、該親水コロイド状溶液が、該溶液の総重量に対して0.05重量%から10重量%、好ましくは0.1重量%から5重量%、より好ましくは0.1重量%から2重量%、最も好ましくは0.1重量%から1重量%のバインダー濃度を有する。
【0030】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法のまた別の好ましい実施形態によれば、工程c)におけるバインダーは水性顔料材懸濁液に、該顔料材懸濁液の総重量に対して0.1重量%から10重量%、より好ましくは0.1重量%から2重量%、最も好ましくは0.25重量%から1重量%の量で添加される。
【0031】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、工程c)における固形分は、該顔料材懸濁液の総重量に対して少なくとも1重量%、好ましくは1重量%から80重量%、より好ましくは5重量%から60重量%、さらにより好ましくは10重量%から50重量%、最も好ましくは15重量%から45重量%になるように調整される。
【0032】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、磨砕工程d)は工程c)中および/または該工程の後、好ましくは工程c)の後に行われる。
【0033】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法のまた別の好ましい実施形態によれば、磨砕工程d)は10℃から110℃、好ましくは20℃から60℃、最も好ましくは20℃から45℃の温度で行われる。
【0034】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、磨砕工程d)は、1μm未満の粒径を有する自己結合性顔料粒子分率が、該顔料粒子の総重量に対して5重量%より大きく、好ましくは20重量%より大きく、より好ましくは40重量%より大きく、より好ましくは50重量%より大きく、最も好ましくは60重量%より大きくなるまで行われる。
【0035】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、磨砕工程d)はバッチ式または連続式で、好ましくは連続式で行われる。
【0036】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法のまた別の好ましい実施形態によれば、該方法は、さらに、得られた顔料材懸濁液を、該懸濁液中の固形分が該顔料材懸濁液の総重量に対して少なくとも45重量%、好ましくは45重量%から80重量%、より好ましくは50重量%から80重量%、さらにより好ましくは60重量%から79重量%、最も好ましくは65重量%から78重量%となるとなるように濃縮する工程e)を含む。
【0037】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、濃縮工程e)は工程d)の前または後に行われる。
【0038】
自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、工程c)および/または工程d)の前または該工程中または該工程の後に分散剤が添加される。
【0039】
上記に示したように、自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法は、工程a)、b)、c)およびd)を含む。以下に、本発明のさらなる詳細、特に、自己結合性顔料粒子懸濁液の調製のための本発明の方法の前述の工程について記載する。
【0040】
工程a):水性顔料材懸濁液の準備
本発明の方法の工程a)により、水性顔料材懸濁液を準備する。
【0041】
水性顔料材懸濁液は、粒状顔料材を水と混合することにより得られる。本発明の方法により加工される顔料材は、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム含有鉱物、混合カーボネートをベースとするフィラー、またはこの混合物から選択され得る。
【0042】
本発明の好ましい一実施形態によれば、顔料材は炭酸カルシウムである。炭酸カルシウムは磨砕天然炭酸カルシウム(また、重質炭酸カルシウムという名称)、沈降炭酸カルシウム(また、軽質炭酸カルシウムという名称)、改質炭酸カルシウムまたはこの混合物であり得る。
【0043】
「磨砕天然炭酸カルシウム」(GNCC)は、本発明の意味において、天然供給源、例えば、石灰石、大理石、白亜およびこの混合物から得られ、湿式および/または乾式処理、例えば、磨砕、ふるい分けおよび/または分画により(例えば、サイクロンまたは分級機によって)加工された炭酸カルシウムである。
【0044】
「改質炭酸カルシウム」(MCC)は、本発明の意味において、内部構造の改質を有する天然の磨砕もしくは沈降炭酸カルシウムまたは表面反応生成物を特長とするものであり得る。本発明の好ましい一実施形態によれば、改質炭酸カルシウムは表面反応炭酸カルシウムである。
【0045】
「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、本発明の意味において、一般的に、水性環境中での二酸化炭素と石灰の反応後の沈降によって、または水中でのカルシウムおよびカーボネート源の沈降によって、または溶液からのカルシウムイオンと炭酸イオン(例えば、CaClとNaCO)の沈降によって得られる合成物質である。沈降炭酸カルシウムは、主に3種類の結晶性形態:カルサイト、アラゴナイトおよびバテライトで存在し、これらの結晶性形態の各々に多くの異なる多形体(晶癖)が存在する。カルサイトは、犬牙状(S−PCC)、菱面体(R−PCC)、六角柱状、卓面状、コロイド(C−PCC)、立方および柱状(P−PCC)などの典型的な晶癖を有する三方晶系構造を有する。アラゴナイトは、六角柱状の双晶、ならびに薄くて細長い柱状、湾曲刃状、尖ったピラミッド状、のみ形状の結晶、枝分かれした樹木状、およびサンゴまたは蠕虫様形態という多様な種類の典型的な晶癖を有する斜方晶系構造である。
【0046】
本発明の方法の好ましい一実施形態において、顔料材は、磨砕天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウムまたは改質炭酸カルシウムの混合物を含む。例えば、顔料材が、磨砕天然炭酸カルシウムの混合物を含む場合、該顔料材は、石灰石、大理石および白亜から選択される少なくとも2種類の顔料材の混合物を含む。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、炭酸カルシウム含有鉱物はドロマイトを含む。
【0048】
好ましい一実施形態によれば、混合カーボネートをベースとするフィラーは、マグネシウムと会合したカルシウムおよび類似体または誘導体、種々の物質、例えば、クレイもしくはタルクまたは類似体もしくは誘導体、ならびにこのようなフィラーの混合物、例えば、タルク−炭酸カルシウムもしくは炭酸カルシウム−カオリン混合物など、または天然炭酸カルシウムと水酸化アルミニウム、雲母、もしくは合成もしくは天然繊維との混合物、または例えば、タルク−炭酸カルシウムまたはタルク−二酸化チタンまたは炭酸カルシウム−二酸化チタン共構造のような鉱物の共構造から選択される。
【0049】
工程a)において準備する水性顔料材懸濁液の粒状顔料材は、作製対象の型の生成物に含まれる物質(1種類または複数種)に慣用的に使用される粒径分布を有し得る。一般に、該懸濁液中の顔料材粒子は、Sedigraph(商標)5120(Micromeritics Instrument Corporation)を用いて測定したとき0.05μmから100μm、好ましくは0.1μmから60μm、より好ましくは0.4μmから20μm、最も好ましくは0.6μmから10μm、例えば0.7μmから1.0の重量中位粒子径d50値を有することが好ましい。
【0050】
値dは、粒子のx重量%がd未満の直径を有するという該基準直径を表す。これは、d20値は、全粒子の20重量%がこの値より小さい粒径であり、d75値は、全粒子の75重量%がこの値より小さい粒径であることを意味する。従って、d50値は、全粒子の50重量%がこの粒径より大きい、または小さいという重量中位粒径である。この方法および機器は当業者に知られており、フィラーおよび顔料の粒子サイズを測定するために一般的に使用されている。測定は、0.1重量%のNa水溶液中で行われる。試料は高速撹拌機および超音波を用いて分散させる。
【0051】
好ましい一実施形態では、該懸濁液中の顔料材粒子は、0.1m/gから200m/g、より好ましくは3m/gから25m/g、最も好ましくは5m/gから15m/g、さらにより好ましくは6m/gから12m/g(窒素およびISO 9277によるBET法を用いて測定)のBET比表面積を示す。
【0052】
本発明の顔料材粒子は水に懸濁させ、従って、顔料材の水性の懸濁液またはスラリーを形成する。
【0053】
好ましくは、工程a)において準備する水性顔料材懸濁液は、該顔料材懸濁液の総重量に対して1重量%から80重量%、好ましくは5重量%から60重量%、より好ましくは10重量%から50重量%、最も好ましくは15重量%から45重量%の固形分を有する。
【0054】
工程b):少なくとも1種類の高分子バインダーの準備
本発明の方法の工程b)により、少なくとも1種類の高分子バインダーを準備する。前記高分子バインダーは、ガラクトースおよび/またはマンノース単位を含む少なくとも1種類の多糖を含む。
【0055】
該少なくとも1種類の多糖の単糖単位すべてが同じ型である場合、該多糖はホモ多糖またはホモグリカンとも称される。該少なくとも1種類の多糖が1種類より多くの型の単糖単位で構成されている場合、該多糖はヘテロ多糖またはヘテログリカンとも称される。
【0056】
本発明の好ましい一実施形態では、該少なくとも1種類の多糖はホモ多糖である。好ましくは、ホモ多糖はガラクトースの複数の反復単位で構成されている。より好ましくは、ガラクトースの反復単位はα−D−ガラクトピラノシル単位および/またはβ−D−ガラクトピラノシル単位である。好ましい一実施形態では、ホモ多糖はβ−D−ガラクトピラノースまたはα−D−ガラクトピラノースの反復単位で構成されている。特に好ましい一実施形態では、ホモ多糖は1,4結合型β−D−ガラクトピラノシル単位の線状鎖である。
【0057】
さらに、または、ホモ多糖はマンノースの複数の反復単位で構成されている。より好ましくは、マンノースの反復単位はα−D−マンノピラノシル単位および/またはβ−D−マンノピラノシル単位である。好ましい一実施形態では、ホモ多糖はβ−D−マンノピラノースまたはα−D−マンノピラノースの反復単位で構成されている。特に好ましい一実施形態では、ホモ多糖は1,4結合型β−D−マンノピラノシル単位の線状鎖である。
【0058】
本発明の別の好ましい実施形態では、該少なくとも1種類の多糖は、マンノース単位とガラクトース単位を含むヘテロ多糖である。好ましくは、ヘテロ多糖は、α−D−ガラクトピラノース、β−D−ガラクトピラノースおよびこの混合物から選択されるガラクトース単位と、α−D−マンノピラノース、β−D−マンノピラノースおよびこの混合物から選択されるマンノース単位とを含む。
【0059】
例えば、ヘテロ多糖は、β−D−マンノピラノシル単位とα−D−ガラクトピラノシル単位を含む。好ましい一実施形態では、ヘテロ多糖は、α−D−ガラクトピラノシル単位が1,6結合した1,4結合型β−D−マンノピラノシル単位の線状鎖を含む。好ましくは、ヘテロ多糖は、1種類のα−D−ガラクトピラノシル単位が1,6結合した1,4結合型β−D−マンノピラノシル単位の線状鎖を含む。
【0060】
該少なくとも1種類の多糖がマンノース単位とガラクトース単位を含むヘテロ多糖を含む場合、該少なくとも1種類の多糖は、6:1から1:1、好ましくは5:1から1:1、より好ましくは4:1から1:1、最も好ましくは3:1から1:1のガラクトース単位に対するマンノース単位の比、例えば、2:1のガラクトース単位に対するマンノース単位の比を有する。
【0061】
例えば、該少なくとも1種類の多糖は、α−D−ガラクトピラノシル単位が平均してマンノース単位2個毎に1,6結合した1,4結合型β−D−マンノピラノシル単位の線状鎖を含む。
【0062】
さらに、または、該少なくとも1種類の多糖の誘導体を本発明の方法に使用してもよい。かかる誘導体は、例えば、該多糖を酵素、酸、酸化媒体、温度、放射線などの使用によって修飾することにより得られ得る。かかる誘導体の調製方法は当業者に知られている。例えば、該修飾は、該多糖をプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドでエーテル化してヒドロキシプロピル誘導体またはヒドロキシエチル誘導体を得ることにより得られ得る。
【0063】
本発明の好ましい一実施形態では、バインダーは、該少なくとも1種類の多糖のアニオン性誘導体を含む。例えば、該少なくとも1種類の多糖のアニオン性誘導体は、該少なくとも1種類の多糖のカルボキシメチル誘導体および/またはカルボキシメチルヒドロキシプロピル誘導体および/またはカルボキシメチルヒドロキシエチル誘導体である。
【0064】
本発明の別の好ましい実施形態では、バインダーは、該少なくとも1種類の多糖のカチオン性誘導体を含む。例えば、該少なくとも1種類の多糖のカチオン性誘導体は、該多糖を第4級アンモニウム塩の誘導体と反応させることにより得られる。
【0065】
該少なくとも1種類の多糖のかかるアニオン性および/またはカチオン性誘導体の調製方法は当業者に知られている。
【0066】
該少なくとも1種類の多糖のカチオン性誘導体および/またはアニオン性誘導体は、好ましくは少なくとも0.01、より好ましくは少なくとも0.05、および1.0ほどの高値であってもよいヒドロキシル基の置換度を有する。ヒドロキシル基の好適な置換度は0.1から0.5であり得る。
【0067】
該少なくとも1種類の多糖の分子量は、好ましくは1000から1000000Daの範囲であり、一般的には約220000Daである。該少なくとも1種類の多糖の分子量は過酸化水素(H)での処理によって調整され得る。
【0068】
本発明の好ましい一実施形態では、該少なくとも1種類の多糖はグアーおよび/またはグアー誘導体である。グアーは、通常、1:2の比率のガラクトース単位とマンノース単位からなる天然ヘテロ多糖(グアラン)を含み、グアー種子の内胚乳成分である。一般に、グアーは、α−D−ガラクトピラノシル単位が1,6結合した1,4結合型β−D−マンノピラノシル単位の線状鎖を含む。約14から17重量%の皮、35から42重量%の内胚乳および43から47重量%の胚を含有するグアー種子は、通常、乾式ミリングされ、ふるい分けされ、商取引される工業用グアーである内胚乳が分離される。
【0069】
好ましい一実施形態では、グアーはこの天然形態で本発明の方法において使用される、即ち、ヘテロ多糖は未処理である。
【0070】
さらに、または、グアー誘導体を本発明の方法に使用してもよい。グアー誘導体は、例えば、ヘテロ多糖を酵素、酸、酸化媒体、温度、放射線などの使用によって修飾することにより得られる。かかるグアー誘導体の調製方法は当業者に知られている。例えば、該修飾は、α−D−ガラクトピラノシル単位を除去するのに有用な市販のα−D−ガラクトシダーゼ酵素の使用によって得られ得る。グアランをα−D−ガラクトシダーゼ酵素に曝露する時間の長さを制御することにより、α−D−ガラクトピラノシル単位がマンノース単位の線状鎖から除去される程度を制御することができる。さらに、または、グアーの修飾は、グアーをプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドでエーテル化してヒドロキシプロピルグアーまたはヒドロキシエチルグアーを得ることにより得られ得る。
【0071】
本発明の好ましい一実施形態では、グアー誘導体は、アニオン性グアー誘導体、例えば、カルボキシメチルグアー(CMG)および/またはカルボキシメチルヒドロキシプロピルグアー(CMHPG)および/またはカルボキシメチルヒドロキシエチルグアー(CMHEG)である。例えば、カルボキシメチルグアーは、グアーをモノクロロ酢酸と苛性ソーダの存在下で反応させることにより得られる。
【0072】
本発明の別の好ましい実施形態では、グアー誘導体は、グアーを第4級アンモニウム塩の誘導体と反応させることにより得られるカチオン性グアー誘導体である。
【0073】
カチオン性グアー誘導体および/またはアニオン性グアー誘導体は、少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.05、および2ほどの高値であってもよいヒドロキシル基の置換度を有する。ヒドロキシル基の好適な置換度は0.1から1であり得る。
【0074】
該グアーの分子量は1000から1000000Daの範囲であり、一般的に約220000Daである。該グアーの分子量は過酸化水素(H)での処理によって調整され得る。
【0075】
好適なカチオン性グアー誘導体は多種多様な市販の供給元から入手可能である。有用なカチオン性グアー誘導体としては、Polygal AG,Marstetten,SwitzerlandからPolygal CA−310 Dとして入手可能なグアー誘導体が挙げられる。
【0076】
好適な天然グアーは多種多様な市販の供給元から入手可能である。有用な天然グアーとしては、Sigma Aldrich,Buchs,SwitzerlandからG4129として入手可能なグアーが挙げられる。
【0077】
本発明の好ましい一実施形態では、該少なくとも1種類の多糖は水に可溶性である。
【0078】
用語「可溶性(の)」は、本発明の意味において、系内で離散型の固形粒子が溶媒中に観察されないこと、即ち、該少なくとも1種類の多糖が親水コロイド状溶液を形成しており、該少なくとも1種類の多糖の親水コロイド粒子が溶媒中に分散されていることをいう。
【0079】
バインダーは、親水コロイド状溶液の形態で準備しても乾燥物質の形態で準備してもよい。好ましい一実施形態では、バインダーは親水コロイド状溶液の形態で準備される。
【0080】
バインダーが親水コロイド状溶液の形態で準備される場合、該溶液は水性親水コロイド状溶液の形態であり得る、即ち、該高分子バインダーが水中において準備される。または、親水コロイド状溶液は有機懸濁液の形態であってもよい、即ち、該高分子バインダーがメタノール、エタノール、アセトンおよびこの混合物を含む群より選択される有機溶媒中において準備される。
【0081】
例えば、バインダーは水性親水コロイド状溶液の形態で準備される。
【0082】
本発明の好ましい一実施形態では、バインダーが親水コロイド状溶液の形態であり、該親水コロイド状溶液が、該溶液の総重量に対して0.05重量%から10重量%、好ましくは0.1重量%から5重量%、より好ましくは0.1重量%から2重量%、最も好ましくは0.1重量%から1重量%のバインダー濃度を有する。
【0083】
工程c):バインダーと水性顔料材懸濁液との混合
本発明の方法の工程c)により、工程b)の高分子バインダーを工程a)の水性顔料材懸濁液と混合する。
【0084】
本発明の好ましい一実施形態では、バインダーを水性顔料材懸濁液に、該顔料材懸濁液の総重量に対して0.1重量%から10重量%、より好ましくは0.1重量%から2重量%、最も好ましくは0.25重量%から1重量%の量で添加する。
【0085】
該懸濁液中のバインダーの量は、当業者に知られた方法によって調整され得る。該懸濁液中のバインダーの量を調整するため、該懸濁液を一部または完全に、濾過、遠心分離または熱分離過程によって脱水してもよい。例えば、該懸濁液は一部または完全に、濾過過程(ナノフィルトレーションなど)または熱分離過程(エバポレーション過程など)によって脱水され得る。または、水を該懸濁液に、所望のバインダー量が得られるまで添加してもよい。
【0086】
さらに、または、工程c)における固形分は、該顔料材懸濁液の総重量に対して少なくとも1重量%、好ましくは1重量%から80重量%、より好ましくは5重量%から60重量%、さらにより好ましくは10重量%から50重量%、最も好ましくは15重量%から45重量%になるように調整される。
【0087】
該懸濁液の固形分は、当業者に知られた方法によって調整され得る。水性顔料材を含む懸濁液の固形分を調整するため、該懸濁液を一部または完全に、濾過、遠心分離または熱分離過程によって脱水してもよい。例えば、該懸濁液は一部または完全に、濾過過程(ナノフィルトレーションなど)または熱分離過程(エバポレーション過程など)によって脱水され得る。または、水を水性顔料材懸濁液の粒状材(例えば、濾過によって得たもの)に、所望の固形分が得られるまで添加してもよい。さらに、または、適切に低い固形粒子含有量を有する自己結合性顔料粒子懸濁液を水性顔料材懸濁液の粒状材に、所望の固形分が得られるまで添加してもよい。
【0088】
本発明の方法において、バインダーは水性顔料材懸濁液と、当業者に知られた任意の慣用的な混合手段によって混合され得る。
【0089】
本発明の好ましい一実施形態では、工程c)で得られた水性顔料材懸濁液は、6から12、好ましくは6.5から10、より好ましくは7から9のpHを有する。
【0090】
該水性顔料材懸濁液は、任意の適切な形態(例えば、親水コロイド状溶液または乾燥物質の形態)のバインダーと混合され得る。好ましくは、バインダーは親水コロイド状溶液の形態である。好ましい一実施形態では、バインダーは、水性親水コロイド状溶液の形態であって、該溶液の総重量に対して0.05重量%から10重量%、好ましくは0.1重量%から5重量%、より好ましくは0.1重量%から2重量%、最も好ましくは0.1重量%から1重量%のバインダー濃度を有する水性親水コロイド状溶液の形態である。
【0091】
工程d):水性顔料材懸濁液の磨砕
本発明の方法の工程d)により、工程c)の水性顔料材懸濁液を磨砕する。
【0092】
該磨砕過程は、湿式磨砕の当業者によく知られたあらゆる手法および磨砕機によって行われ得る。該磨砕工程は、任意の慣用的な磨砕デバイスを用いて、例えば、微細化が主に副次的物体との衝突によってもたらされるような条件下で、即ち:ボールミル、ロッドミル、振動ミル、遠心衝撃式ミル、竪型ビーズミル、アトリションミル、または当業者に知られた他のかかる機器類のうちの1種類以上で行われ得る。該磨砕工程d)は、バッチ式で行っても連続式で行ってもよく、好ましくは連続式で行われ得る。
【0093】
本発明の好ましい一実施形態では、磨砕対象の水性懸濁液は、6から12、好ましくは6.5から10、より好ましくは7から9のpHを有する。
【0094】
さらに、または、磨砕後に得られる水性懸濁液は、6から12、好ましくは6.5から10、より好ましくは7から9のpHを有する。
【0095】
本発明の好ましい一実施形態では、磨砕工程d)は10℃から110℃、好ましくは20℃から60℃、最も好ましくは20℃から45℃の温度で行われる。
【0096】
本発明の好ましい一実施形態では、磨砕工程d)は工程c)中および/または該工程の後に行われる。
【0097】
例えば、磨砕工程d)は工程c)後に行われる。
【0098】
本発明の好ましい一実施形態では、磨砕工程d)は、1μm未満の粒径を有する自己結合性顔料粒子分率が、Sedigraph 5120で測定したとき該顔料粒子の総重量に対して5重量%より大きく、好ましくは20重量%より大きく、より好ましくは40重量%より大きく、より好ましくは50重量%より大きく、最も好ましくは60重量%より大きくなるまで行われる。
【0099】
さらに、または、本発明の方法の工程d)で得られる自己結合性顔料粒子は、沈降法に従って測定したとき、0.05μmから3μm、好ましくは0.1μmから2μm、最も好ましくは0.4μmから1μm、例えば0.6μmから0.8μmの範囲の重量中位粒子径d50を有し得る。さらに、または、工程d)で得られる自己結合性顔料粒子は、10μm未満、好ましくは5μm未満、より好ましくは3μm未満、最も好ましくは2μm未満のd98を有し得る。
【0100】
本発明の好ましい一実施形態では、工程d)で得られる自己結合性顔料粒子は、窒素およびISO 9277によるBET法を用いて測定したとき、1m/gから201m/g、より好ましくは3m/gから25m/g、最も好ましくは5m/gから15m/g、さらにより好ましくは6m/gから12m/gのBET比表面積を示す。
【0101】
本発明の好ましい一実施形態では、工程d)で得られる懸濁液の固形分は、該顔料材懸濁液の総重量に対して少なくとも1重量%、好ましくは1重量%から80重量%、より好ましくは5重量%から60重量%、さらにより好ましくは10重量%から50重量%、最も好ましくは15重量%から45重量%である。
【0102】
本発明の好ましい一実施形態では、本発明の方法により、直接、自己結合性顔料粒子の高固形分懸濁液が得られ得る、即ち、本発明の方法ではさらなる濃縮工程が必要とされない。
【0103】
自己結合性顔料粒子の高固形分懸濁液を得る場合、得られる懸濁液の固形分は、該顔料材懸濁液の総重量に対して少なくとも45重量%、好ましくは45重量%から80重量%である。例えば、得られる懸濁液の固形分は、該顔料材懸濁液の総重量に対して50重量%から80重量%、好ましくは60重量%から79重量%、より好ましくは65重量%から78重量%である。
【0104】
本発明の好ましい一実施形態では、該方法は、さらに、得られた顔料材懸濁液を濃縮する工程e)を含む。
【0105】
本発明の好ましい一実施形態では、濃縮工程e)は工程d)の前または後に行われる。
【0106】
例えば、濃縮工程e)は工程d)の前に行われる。または、濃縮工程e)は工程d)の後に行われる。
【0107】
工程e)を本発明の方法において実施する場合、得られる懸濁液の固形分が該顔料材懸濁液の総重量に対して少なくとも45重量%、好ましくは45重量%から80重量%、より好ましくは50重量%から80重量%、さらにより好ましくは60重量%から79重量%、最も好ましくは65重量%から78重量%となるように調整される。
【0108】
得られる懸濁液の固形分は、当業者に知られた濃縮方法によって調整され得る。対応する顔料材懸濁液の濃縮は、熱的過程によって(例えば、エバポレータで)、または機械的過程によって(例えば、フィルタープレス(ナノフィルトレーションなど)および/または遠心分離機で)行われ得る。
【0109】
本発明の好ましい一実施形態では、該方法は、得られた顔料材懸濁液を、得られる懸濁液の固形分が該顔料材懸濁液の総重量に対して少なくとも65重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%となるように濃縮する工程e)を含む。
【0110】
本発明の好ましい一実施形態では、該方法は、得られた顔料材懸濁液を、乾燥生成物が得られるように濃縮する工程e)を含む。
【0111】
用語「乾燥生成物」は、該顔料粒子の総重量に対して0.5重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の総表面水分量を有する顔料粒子を示すと理解されたい。
【0112】
本発明の方法が、さらに、得られた顔料材懸濁液を、乾燥生成物または該顔料材懸濁液の総重量に対して少なくとも65重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の固形分を有する懸濁液が得られるように濃縮する工程e)を含む場合、該乾燥生成物または該懸濁液を再希釈してもよい。該乾燥生成物または該懸濁液を再希釈する場合、得られる懸濁液の固形分が該顔料材懸濁液の総重量に対して少なくとも1重量%、好ましくは1重量%から80重量%、より好ましくは5重量%から60重量%、さらにより好ましくは10重量%から50重量%、最も好ましくは15重量%から45重量%になるように調整される。
【0114】
本発明の好ましい一実施形態では、本発明の方法は磨砕中に分散剤の使用または添加を伴わない。
【0115】
上記において規定した自己結合性顔料粒子懸濁液の調製方法の非常に良好な結果に鑑み、本発明のさらなる態様では、本発明による方法によって得られ得る自己結合性顔料粒子懸濁液に言及する。
【0116】
かかる懸濁液は、高固形分の自己結合性鉱物顔料粒子を含有しており、好ましくは安定化剤および/または分散剤を含有していない。本発明の自己結合性顔料粒子懸濁液は、好ましくは、該懸濁液の水相中に低い総有機分および/または低い遊離バインダー含量を有する。該水相中の総有機分および/または遊離バインダー含量は、120℃で乾燥後、570℃における強熱減量(LOI)値を測定することにより測定され得る。
【0117】
本発明の別の態様により、顔料粒子がガラクトースおよび/またはマンノース単位を含む少なくとも1種類の多糖で少なくとも部分的に被覆されていることを特徴とする、該自己結合性顔料粒子を含む紙製品を提供する。
【0118】
該自己結合性顔料粒子を含む紙製品は、20重量%のフィラー負荷時に少なくとも10Nm/g、好ましくは少なくとも15Nm/g、より好ましくは少なくとも20Nm/g、最も好ましくは少なくとも22Nm/gの比引張強さを有することが好ましい。
【0119】
本発明の自己結合性顔料粒子懸濁液から得られる該製品の比引張強さの改善は、バインダーの顔料粒子の表面への非常に良好な付着を示し、従って、本発明の自己結合性顔料粒子を幾つかの用途、例えば、紙、塗料およびプラスチック用途に使用することが可能である。別の用途は、樹木の葉および/または植物の葉をコーティングして葉の表面の太陽光およびUV曝露を低減させることである。また、良好な凝集特性(粒子間の結合効果)によりかかる用途においても有益な特性がもたらされる。
【0120】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の方法によって得られ得る自己結合性顔料粒子懸濁液は充填材として、例えば、紙、プラスチック、塗料、コンクリートおよび/または農業用途に使用される。本発明の例示的な実施形態によれば、本発明の方法によって得られ得る自己結合性顔料粒子懸濁液は、紙、例えば、製紙機のウエットエンドプロセスにおいて、好ましくはシガレットペーパーおよび/または塗工用途において、または好ましくは、輪転グラビアおよび/またはオフセットおよび/またはデジタル印刷のための支持体として使用される。
【0121】
自己結合性顔料粒子を作製するための本発明の方法に関する上記の好都合な実施形態はまた、本発明の懸濁液、紙製品およびこの使用における作製および規定にも使用され得ることは理解されよう。換言すると、上記の好ましい実施形態およびこのような実施形態の任意の組合せはまた、本発明の懸濁液、紙製品およびこの使用にも適用され得る。
【0122】
本発明の範囲および利益は、以下の実施例に基づいてより良好に理解されよう。実施例は、本発明の一部の特定の実施形態の実例を示すことを意図したものであり、限定的なものでない。
【実施例】
【0123】
材料および方法
以下に、本実施例における材料および実施した測定方法を記載する。
【0124】
物質のBET比表面積
BET比表面積は、窒素を使用するISO 9277によるBET法によって、250℃で30分間の加熱による試料のコンディショニング後に測定した。かかる測定前に、試料を濾過し、すすぎ洗浄し、110℃にて炉内で少なくとも12時間乾燥させた。
【0125】
粒状材の粒径分布(直径<Xである粒子の質量%)および重量中位径(d50
粒状材の重量中位粒子径および粒子径の質量分布は、沈降法、即ち、重力場における沈降挙動の解析によって測定した。測定はSedigraph(商標)5120で行った。
【0126】
該方法および機器は当業者に知られており、フィラーおよび顔料の粒子サイズを測定するのに一般的に使用されている。測定は、0.1重量%のNa水溶液中で行った。試料は高速撹拌機および超音波を用いて分散させた。
【0127】
水性懸濁液のpH
水性懸濁液のpHは、標準的なpH−メータを用いておよそ22℃で測定した。
【0128】
水性懸濁液の固形分
懸濁液の固形分(「乾燥重量」としても知られている。)は、Moisture Analyser HR73(Mettler−Toledo社(Switzerland)製)を使用し、以下の設定:120℃の温度、自動スイッチオフ3、標準的な乾燥、5から20gの懸濁液を用いて測定した。
【0129】
手すき紙試験
手すき紙試験およびその後の該紙の機械的強度特性の試験は、自己結合性顔料のセルロース系繊維などの他の表面に対する結合能の測定である。
【0130】
30°SRまでリファイニングしたユーカリパルプ(ジャリリプタス(Jarilyptus))をこの試験に使用した。60gの(乾燥)パルプブレンドを10dmの水道水中で希釈し、次いでフィラーを添加した。この懸濁液を30分間撹拌した。続いて、0.06%(乾燥重量ベース)のポリアクリルアミド(Polymin 1530,BASF(Ludwigshafen,Germany)から市販)を歩留剤として添加し、78g/mの用紙を、Rapid−Kothen手すき紙形成装置を用いて形成した。各用紙をRapid−Kothen乾燥機を用いて乾燥させた。手すき紙中のフィラー含有量を、乾燥手すき紙の4分の1をマッフルファーネス内(570℃まで加熱)で燃焼させることにより決定した。燃焼終了後、残渣をデシケータ内に移し、放冷した。室温に達したら、残渣の重量を測定し、この質量を、乾燥手すき紙の4分の1の最初の測定重量と関連付けた。本実施例におけるフィラー含有量は20から30%であった。
【0131】
手すき紙の機械的強度特性は、乾燥後の手すき紙の、それぞれISO 1924−2およびSCAN−P80:98/TAPPI T541による比引張強さおよび内部結合によって特性評価した。
【0132】
タブレット粉砕試験
この試験は顔料の自己接着力の測定である。これは、自己結合性顔料スラリーから形成したタブレットを粉砕するのに必要とされる力の測定である。
【0133】
かくして得られた該顔料性粒子自己接着の性質の好適性を示すため、膜濾過過程を用いてタブレットを製剤化した。これに関して、中空鋼管製の高圧フィルタープレス型の装置を使用した。前記の管は、上面が蓋で閉じられており、底面に濾過膜が収容されている。
【0134】
タブレットは、定圧(15バール)を80mlの水性顔料材懸濁液に(2から48時間測定)、微細な0.025μmフィルター膜に通す濾過によって水分が放出され、圧密タブレットが得られるように負荷することにより形成した。この方法により、直径が約4cmで厚さが1.5から2.0cmのタブレットが作製される。得られたタブレットは、炉内で60℃にて48時間乾燥させた。
【0135】
使用されるデバイスおよび方法は、「Modified calcium carbonate coatings with rapid absorption and extensive liquid uptake capacity」という標題の文献(Colloids and Surfaces A,236(1−3),2003,pp.91−102)に詳細に記載されている。
【0136】
続いて、タブレットを直径2.0から2.1cmで厚さが0.6から0.7cmの強度試験解析用ディスク形状の試験片に、ディスクミル(Jean Wirtz,Phoenix 4000)を用いて磨砕した。この手順は、「Fluid transport into porous coating structures:some novel findings」という標題の文献(Tappi Journal,83(5),2000,pp.77−78)に記載されている。このような小型タブレットディスクを圧力下で粉砕し、この強度特性を、貫通装置Zwick/Roell Alround Z020(Zwick GmbH & Co.KG社(Ulm,Germany)製を使用することにより試験した。ピストンを3mm/分の変形速度で下げて該試験片と接触させ、95%の変形または20kNのときに試験を終了する。測定中の最初の極大のときに試験片に亀裂が生じた。本明細書に示した値は、独立して作製したタブレットの3回の測定の平均であり、エラーバーはこれらの3回の測定の標準偏差である。
【0137】
高分子電解質滴定(PET)
水性懸濁液中の高分子電解質の含有量は、Phototrode DP 660(Mettler−Toledo(Switzerland)製)を備えたMemotitrator Mettler DL 55を用いて測定される。高分子電解質(poylelectrolyte)の含有量の測定は、炭酸カルシウム懸濁液の試料を滴定槽内に計り入れ、前記試料を脱イオン水でおよそ40mlの容量まで希釈することにより行った。続いて、10mlの0.01Mのカチオン性ポリ(N,N−ジメチル−3,5−ジメチレン−ピペリジニウムクロリド)(PDDPC;ACROS Organics(Belgium)から入手)を撹拌下で滴定槽内に5分以内でゆっくり添加し、次いで(than)槽の内容物をさらに20分間撹拌する。その後、懸濁液を0.2μmミックス−エステル製メンブレンフィルター(φ47mm)に通して濾過し、5mlの脱イオン水で洗浄する。かくして得られた濾液を5mlのリン酸バッファー(pH7)(Riedel−de Haen,Germany)で希釈し、次いで(than)0.01Mのポリビニル硫酸カリウム(KPVS;SERVA Feinbiochemica(Heidelberg)から入手)溶液を濾液にゆっくり添加し、過剰のカチオン性試薬を滴定する。滴定の終点は、Phototrode DP660(これは、かかる測定前に脱イオン水で1200から1400mVに調整する。)によって検出する。電荷の計算は、以下の計算に従って行う:
【0138】
【数1】
【0139】
【数2】
【0140】
【数3】
【0141】
【数4】
【0142】
略号
=試料の重量[g]
DM=分散剤の含有量[%]
DM=分散剤定数[μVal/0.1mg分散剤]
Fk=固形分[%]
PDDPC=PDDPCの容量[ml]
KPVS=KPVSの容量[ml]
PDDPC=PDDPCの滴定濃度
DM=分散剤の重量[mg]
Q=電荷[μVal/g]
atro=分散剤の含有量(atro)[%]
=最適化対象実験の試料重量[g]
KPVS,1=最適化対象実験の実験KPVS消費量[ml]
【0143】
強熱減量(LOI)法
強熱減量の測定のため、自己結合性顔料材懸濁液の試料をおよそ200Wのマイクロ波中で約75分間、試料が該粒状材の総重量に対して約0.5重量%の最大湿分を有するように乾燥させた。続いて、乾燥させた試料を、200μmスクリーンと24枚の歯を有するローターとを備えたRETSCH超遠心ミル(ZM型)の使用によって解凝集させ、得られた試料3から4gを磁器製るつぼ内に秤量し、マッフル炉内で約570℃にて、一定質量になるまで加熱した。デシケータ内で冷却した後、得られた残渣を有する磁器製るつぼの重量を測定した。本明細書に示した値は、独立して調製した試料の2回の測定の平均である。
【0144】
強熱減量は、単位:パーセントで示され、以下の式:
【0145】
【数5】
(式中、
:初期重量の質量[g]
:約570℃までマッフル炉内で加熱後の質量[g])
に従って算出される絶対測定値である。
【0146】
[実施例1](本発明の実施例)
スラリーの調製に使用した粒状材はノルウェー産の大理石とした。
【0147】
顔料スラリーは、該懸濁液の総重量に対して約20重量%の固形分を有するものとした。該粒状材は、0.8μmの重量中位粒子径d50値、2μm未満のd90および1μm未満のd60(すべて沈降法に従って測定)を有する。さらに、該スラリーの粒状材は、7m/gの比表面積(窒素およびBET法を用いて測定)を有した。
【0148】
該懸濁液の総重量に対して0.4重量%の量のグアー粉末(Sigma AldrichによってG4129で市販)をブレンドした後、該粒状材の懸濁液中に入れて磨砕し、溶解撹拌機で30分間撹拌した。
【0149】
約20重量%の低固形分懸濁液を、Dynomill Multilab(460cmのVerac磨砕ビーズ(0.6から1.0mm)を充填)中に90分間通した。磨砕チャンバは600cmの総容積を有した。ミル速度を2500rpmに設定し、フローは500cm/分に設定した。磨砕は室温で行った。
【0150】
有意な温度上昇は観察されなかった。
【0151】
得られた生成物の固形分、PET、pHおよびLOIをSedigraph(登録商標)によって解析した。表1に、最終生成物の測定された詳細をまとめる。
【0152】
【表1】
【0153】
これに加えて、実施例1で得た懸濁液から作製した手すき紙での比引張強さに対する自己結合性顔料粒子懸濁液の効果の概略を図1に示す。
【0154】
さらに、実施例1で得た懸濁液から作製した手すき紙での内部結合(z方向の)に対する自己結合性顔料粒子懸濁液の効果の概略を図2に示す。
【0155】
また、比較理由のため、市販品を含めた懸濁液から作製した手すき紙での比引張強さおよび内部結合(z方向の)に対する効果も測定した。これに使用した顔料粒子は、Hydrocarb(登録商標)HO−MEとしてOmya International AG(Oftringen,Switzerland)から市販されている。この製品は、天然CaCOの懸濁液の形態であり、該懸濁液の総重量に対して66重量%の固形分を有する。該懸濁液中の粒状材は、Sedigraph 5120で測定したとき、0.8μmの重量中位粒子径d50値、2μm未満のd90および1μm未満のd60を有する。さらに、Hydrocarb(登録商標)HO−ME粒状材は7m/g比表面積(窒素およびBET法を用いて測定)を有する。
【0156】
図1と2から、本発明の方法に従って作製した懸濁液から作製した手すき紙では、約22Nm/gの比引張強さおよび少なくとも475kPaの内部結合(z方向の)が得られると結論付けることができる。これとは対照的に、市販の顔料粒子を含めた懸濁液から作製した手すき紙で測定された比引張強さは20Nm/gであり、一方、内部結合(z方向の)は400kPa未満であった。従って、本発明の方法によって得られる自己結合性顔料粒子の懸濁液により前記懸濁液から作製される最終製品の機械的強度特性に対してプラスの効果が付与されると推定されるべきである。
【0157】
[比較例2](比較例)
スラリーの調製に使用した粒状材はノルウェー産の大理石とした。
【0158】
顔料スラリーは、該懸濁液の総重量に対して約20重量%の固形分を有するものとした。該粒状材は、0.8μmの重量中位粒子径d50値、2μm未満のd90および1μm未満のd60(すべて沈降法に従って測定)を有する。さらに、該スラリーの粒状材は、7m/gの比表面積(窒素およびBET法を用いて測定)を有した。
【0159】
約20重量%の低固形分懸濁液を、Dynomill Multilab(460cmのVerac磨砕ビーズ(0.6から1.0mm)を充填)中に90分間通した。磨砕チャンバは600cmの総容積を有した。ミル速度を2500rpmに設定し、フローは500cm/分に設定した。
【0160】
有意な温度上昇は観察されなかった。
【0161】
該懸濁液の総重量に対して2重量%の量のグアー粉末(Sigma AldrichによってG4129で市販)を該懸濁液中に入れて磨砕した後、ブレンドし、短時間撹拌した。グアーのPET測定により≦−150μEq/gのアニオン性電荷が示された。
【0162】
最終生成物の固形分、PET、pHおよびLOIをSedigraph(登録商標)によって解析した。表2に、グアーの添加前およびグアーの添加後に測定された詳細をまとめる。
【0163】
【表2】
【0164】
測定された詳細から、水性顔料材懸濁液の磨砕後にグアーを添加すると、該粒状材の重量中位粒子径d50値の増大がもたらされると結論付けることができる。さらに、該懸濁液中において1μm未満の重量中位粒子径を有する粒状材の量が低減されると結論付けることができる。従って、比較例では懸濁液中において望ましくない粒状材の凝集がもたらされていると推定されるべきである。
【0165】
[実施例3](本発明の実施例)
スラリーの調製に使用した粒状材はノルウェー産の大理石とした。
【0166】
顔料スラリーは、該懸濁液の総重量に対して約20重量%の固形分を有するものとした。該粒状材は、0.8μmの重量中位粒子径d50値、2μm未満のd90および1μm未満のd60(すべて沈降法に従って測定)を有する。さらに、該スラリーの粒状材は、7m/gの比表面積(窒素およびBET法を用いて測定)を有した。
【0167】
該懸濁液の総重量に対して0.4重量%の量のグアー粉末(Sigma AldrichによってG4129で市販)をブレンドした後、該粒状材の懸濁液中に入れて磨砕し、溶解撹拌機で60分間撹拌した。
【0168】
約20重量%の低固形分懸濁液を、Dynomill Multilab(460cmのVerac磨砕ビーズ(0.6から1.0mm)を充填)中に90分間通した。磨砕チャンバは600cmの総容積を有した。ミル速度を2500rpmに設定し、フローは500cm/分に設定した。磨砕は室温で行った。
【0169】
有意な温度上昇は観察されなかった。
【0170】
タブレットを作製し、タブレット粉砕試験において、タブレットに最初に亀裂が生じるのに必要とされる最大力Fmaxに関する測定を行った。特に、タブレットは、本実施例で得た懸濁液から作製し、市販品Covercarb(登録商標)75−ME(0.6μmの重量中位粒子径d50値を有する。)、Hydrocarb(登録商標)90−ME(0.7μmの重量中位粒子径d50値を有する。)またはOmyacarb(登録商標)1−AV(1.7μmの重量中位粒子径d50値を有する。)(すべて、Omya AG(Oftringen,Switzerland)から入手可能)を含めたがバインダーの使用なしの懸濁液からもタブレットを作製した。
【0171】
タブレットに最初に亀裂が生じるのに必要とされる最大力Fmax(タブレット粉砕試験で測定)に対する自己結合性顔料粒子懸濁液の効果の概略を図3に示す。
【0172】
図3から、本発明の方法に従って作製した懸濁液から作製したタブレットでは、最初の亀裂が生じるのに約1400Nの最大力が必要とされるのに対して、バインダーなしで作製したタブレットでは必要とされる最大力は350N未満であると結論付けることができる。従って、本発明の方法によって得られる自己結合性顔料粒子の懸濁液により前記懸濁液から作製される最終製品の機械的強度特性に対してプラスの効果が付与されると推定されるべきである。
図1
図2
図3