特許第6246729号(P6246729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6246729-アイドリングストップする車両 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246729
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】アイドリングストップする車両
(51)【国際特許分類】
   F02N 11/08 20060101AFI20171204BHJP
   F02N 15/00 20060101ALI20171204BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   F02N11/08 L
   F02N15/00 E
   B60R16/03 K
   B60R16/03 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-544264(P2014-544264)
(86)(22)【出願日】2013年10月24日
(86)【国際出願番号】JP2013006299
(87)【国際公開番号】WO2014068920
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-238124(P2012-238124)
(32)【優先日】2012年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】坂田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】大隅 信幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 薫
(72)【発明者】
【氏名】常定 昭伸
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−254208(JP,A)
【文献】 特開2003−137044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 11/08
F02N 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動するエンジンと、前記エンジンを始動させるためのスターターモータと、前記スターターモータに電力を供給するスターターバッテリと、を備え、
アイドリング時に前記エンジンを停止させると共に、前記スターターモータによって前記エンジンを再始動可能に構成されるアイドリングストップする車両であって、
さらに、
前記スターターバッテリと並列に接続される予備蓄電システムと、
車両を減速させる際に回生発電して、前記スターターバッテリ及び前記予備蓄電システムを充電するオルタネータと、
前記エンジンが配置されるエンジンルームと、
前記予備蓄電システムが配置されるキャビンとを備え、
前記予備蓄電システムは、
前記スターターバッテリに、リレーを介して並列に接続される電装用蓄電部と、
前記オルタネータが発電する際に、前記リレーをオン状態に制御すると共に、アイドリングストップしているエンジンを再始動させる際に、前記リレーをオフ状態に制御するリレー制御回路と、を含み、
前記リレーがエンジンルームに配置されてなることを特徴とするアイドリングストップする車両。
【請求項2】
前記スターターバッテリが鉛バッテリである請求項1に記載されるアイドリングストップする車両。
【請求項3】
前記スターターバッテリが鉛バッテリで、電装用蓄電部がニッケル水素電池である請求項1又は2に記載されるアイドリングストップする車両。
【請求項4】
前記電装用蓄電部がリチウムイオン二次電池である請求項1又は2に記載されるアイドリングストップする車両。
【請求項5】
前記電装用蓄電部がニッケル水素電池で、該電装用蓄電部がDC/DCコンバータを介することなくアイドリングストップ状態の車両の電装機器に電力を供給してなる請求項3に記載されるアイドリングストップする車両。
【請求項6】
前記電装用蓄電部から電力が供給される電装機器が、電動パワーステアリング、アイドリングストップする車両のコントロールユニットを含む請求項1から5のいずれかに記載されるアイドリングストップする車両。
【請求項7】
前記スターターバッテリの定格容量が電装用蓄電部の定格容量よりも大きく、該スターターバッテリから前記予備蓄電システムに動作電力を供給してなる請求項1から6のいずれかに記載されるアイドリングストップする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号停止などでアイドリングストップする車両に関する。
【背景技術】
【0002】
アイドリングストップする車両は、信号待ちなどでは、エンジンのアイドリングをストップすることで燃費効率を相当に改善できる。また、回生発電する車両は、減速するときに車両の運動のエネルギーでオルタネータを駆動してバッテリを充電する。アイドリングストップする車両では、エンジンを再始動させる際、バッテリからスターターモータへ電力を供給する必要があるため、スターターモータへ電力を供給するバッテリが、オルタネータによって充電するように構成される。スターターモータへの電力供給を行うバッテリとしては、電池の特性上、定格電圧を12Vとする鉛バッテリが搭載されることが多い。しかしながら、鉛バッテリは、充電抵抗が比較的大きいため、回生発電電力を効率よく充電できない欠点がある。
【0003】
さらに、燃費効率を改善するために、アイドリングストップする車両は、車両のメインスイッチであるイグニッションスイッチをオンに保持する状態において、信号待ちなどで停止するとエンジンを停止し、信号が変わるとエンジンを再始動して走行する必要がある。この車両は、エンジンを再始動する毎に、鉛バッテリからスターターモータに電力を供給する。スターターモータは、消費電流が極めて大きく、エンジンの再始動時に鉛バッテリの電圧を一時的に著しく、たとえば約9V以下に低下させる、すなわち瞬低の状態とする。鉛バッテリの電圧が瞬低すると、鉛バッテリを電源として動作している車両のコントロールユニットやその他の電装機器が一時的に動作不良を起こす等して、正常な動作を保証できなくなる欠点がある。
【0004】
この欠点を解消するために、鉛バッテリと並列にサブバッテリを接続する電源装置が開発されている。(特許文献1及び2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−208599号公報
【特許文献2】特開2003−254208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これ等の公報の電源装置は、鉛バッテリと並列にリチウムイオン二次電池をサブバッテリとして接続している。鉛バッテリとリチウムイオン二次電池はオルタネータで充電される。さらに、これ等の電源装置は、鉛バッテリとリチウムイオン二次電池との間にリレーを接続しており、スターターモータに電力を供給するときに、リレーを切り換えて、鉛バッテリやリチウムイオン二次電池からスターターモータに電力を供給している。この電源装置は、キャビン内に配置して、サブバッテリであるリチウムイオン二次電池の熱による劣化を防止して寿命を長くできる。しかしながら、電源装置をキャビン内に配置すると、内蔵しているリレーが切り換えられるときに発生する騒音の遮音が難しく、スターターモータがエンジンを再始動する毎に騒音を発生する欠点がある。この欠点は、電源装置をエンジンルームに配置して解消できるが、サブバッテリの熱による劣化が甚だしく、寿命が短くなる欠点がある。
【0007】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、サブバッテリの熱による劣化を防止しながら、リレーの切り換え時に発生する騒音を小さくできるアイドリングストップの車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明のアイドリングストップする車両は、車両を駆動するエンジン21と、このエンジン21を始動させるためのスターターモータ22と、このスターターモータ22に電力を供給するスターターバッテリ1とを備え、アイドリング時にエンジン21を停止させると共に、スターターモータ22によってエンジン21を再始動可能に構成されている。さらに、アイドリングストップする車両は、スターターバッテリ1と並列に接続される予備蓄電システム10と、車両を減速させる際に回生発電して、スターターバッテリ1及び予備蓄電システム10を充電するオルタネータ23と、エンジン21が配置されるエンジンルーム5と、予備蓄電システム10が配置されるキャビン6とを備えている。予備蓄電システム10は、スターターバッテリ1に、リレー3を介して並列に接続される電装用蓄電部2と、オルタネータ23が発電する際に、リレー3をオン状態に制御すると共に、アイドリングストップしているエンジン21を再始動させる際に、リレー3をオフ状態に制御するリレー制御回路11とを含み、さらに、リレー3がエンジンルーム5に配置されている。
【0009】
以上の車両は、予備蓄電システムの熱による劣化を防止しながら、リレーの切り換え時に発生する騒音を小さくできる特徴がある。それは、以上の車両が、スターターバッテリに並列に接続される予備蓄電システムをキャビン内に配置し、リレーをエンジンルームに配置しているからである。電装用蓄電部の環境温度は、夏期において高くなって、バッテリ等を劣化させる原因となる。車両のエンジンルームは、エンジンや排気管の排熱、ラジエータの排熱、冷房用の凝縮器の排熱などで異常な高温となるが、キャビン内は冷房され、あるいは換気されてドライバーに快適な温度に保持される。したがって、キャビン内に配置させる電装用蓄電部は、異常な高温に加熱されることがなく、温度上昇による劣化を相当に少なくできる。また、リレーは、電装用蓄電部に接続されるので、電装用蓄電部の近傍に配置してリード線を短くできるが、本発明の車両は、電装用蓄電部に接続されるリレーをキャビン内でなくてエンジンルームに配置する。このため、リレーの遮音構造を簡単にしながら、オンオフに切り換えられるときに発生する騒音を低減できる特徴がある。
【0010】
本発明のアイドリングストップする車両は、スターターバッテリ1を鉛バッテリ1Aとすることができる。
この車両は、鉛バッテリからスターターモータに大電流を供給して、スターターモータでもってエンジンを確実に再始動できる特徴がある。それは、鉛バッテリの放電抵抗が極めて小さく、優れた放電特性を有するからである。また、電装用蓄電部からスターターモータに大電流を供給しないので、電装用蓄電部の大電流放電による劣化を防止できる特徴も実現する。
【0011】
本発明のアイドリングストップする車両は、スターターバッテリ1を鉛バッテリ1Aとして、電装用蓄電部2をニッケル水素電池2Aとすることができる。
ニッケル水素電池は定格電圧を1.2Vとするので、10個のニッケル水素電池を直列に接続して電装用蓄電部の定格電圧を12Vにできる。したがって、10個のニッケル水素電池を直列に接続して電装用蓄電部とすることで、電装用蓄電部とスターターバッテリの定格電圧をほぼ同じ電圧にできる。したがって、以上の車両は、DC/DCコンバータを介することなくスターターバッテリと電装用蓄電部を並列に接続して、オルタネータの回生発電電力でもって、スターターバッテリと電装用蓄電部の両方をバランスよく充電できる。また、エンジンの再始動状態においては、スターターバッテリに接続されない電装用蓄電部から電装機器に動作電力を供給し、再始動状態を除くタイミングにおいては、スターターバッテリと電装用蓄電部の両方から電装機器にバランスよく安定して動作電力を供給できる特徴がある。
【0012】
本発明のアイドリングストップする車両は、電装用蓄電部2をリチウムイオン二次電池とすることができる。
この車両は、電装用蓄電部を小型、軽量化しながら充放電容量を大きくできる特徴がある。
【0013】
本発明のアイドリングストップする車両は、電装用蓄電部2をニッケル水素電池2Aとして、この電装用蓄電部2からDC/DCコンバータを介することなくアイドリングストップする車両の電装機器20に電力を供給することができる。
この車両は、DC/DCコンバータを介することなく、エンジンの再始動状態においても、電装用蓄電部から安定して電装機器に動作電力を供給できる特徴がある。それは、ニッケル水素電池が、優れた定電圧特性を有するからである。
【0014】
本発明のアイドリングストップする車両は、電装用蓄電部2から電力が供給される電装機器20が、電動パワーステアリング、及びアイドリングストップする車両のコントロールユニットを含むことができる。
この車両は、再始動状態においても電動パワーステアリングを正常に動作し、また、アイドリングストップする車両のコントロールユニットの電源電圧の瞬低によるリセットなどの誤動作を防止できる。
【0015】
本発明のアイドリングストップする車両は、スターターバッテリ1の定格容量を電装用蓄電部2の定格容量よりも大きくし、スターターバッテリ1から予備蓄電システム10に動作電力を供給することができる。
この車両は、定格容量の大きいスターターバッテリから予備蓄電システムの回路に安定して動作電力を供給できる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態にかかるアイドリングストップする車両の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのアイドリングストップする車両を例示するものであって、本発明は車両を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。
【0018】
図1の車両は、エンジン21を始動するスターターモータ22に電力を供給するスターターバッテリ1と、このスターターバッテリ1にリレー3を介して並列に接続される電装用蓄電部2を備える予備蓄電システム10と、リレー3をオンオフに制御するリレー制御回路11と、車両の回生発電電力でスターターバッテリ1と電装用蓄電部2の両方を充電するオルタネータ23とを備える。
【0019】
回生制動する車両は、減速するときの運動のエネルギーでオルタネータ23を回転する。回生制動状態において、車輪24がエンジン21を回転し、エンジン21がオルタネータ23を回転する。オルタネータ23の回転トルクは、エンジン21を介して車両を制動して減速する。オルタネータ23が回生制動して発電する電力は、車両の運動のエネルギーに比例して大きくなる。車両の運動のエネルギーは、車両の重量と速度の自乗の積に比例して大きくなる。たとえば、60Km/時で走行する1トンの車両は、約40Whの運動のエネルギーを有する。運動のエネルギーの50%でバッテリを充電できると仮定すれば、60Km/時で走行している普通車が、1回の信号待ちで停止する毎に、20Whもの電力をバッテリに蓄電できる。
【0020】
回生制動は、車両が停止するまでの極めて短い時間において、バッテリを大きな電流で充電するので、いかに効率よくバッテリに充電できるかが大切である。図1の車両は、回生発電電力で効率よく充電するために、スターターバッテリ1と並列に電装用蓄電部2を接続している。スターターバッテリ1は鉛バッテリ1Aである。鉛バッテリ1Aは、放電抵抗が極めて小さく、大電流の放電特性に優れるので、スターターモータ22に大電流を供給してエンジン21をスムーズに再始動する。ただ、スターターバッテリは、鉛バッテリに特定せず、スターターモータに電力を供給してエンジンを再始動できる全てのバッテリを使用できる。
【0021】
電装用蓄電部2は、鉛バッテリ1Aよりも充電特性に優れた二次電池で、ニッケル水素電池2Aである。ただ、電装用蓄電部には、リチウムイオン二次電池やリチウムポリマー電池等の非水系電解液二次電池も使用できる。ニッケル水素電池2Aは、充電抵抗が極めて小さく、優れた大電流の充電特性を有し、リチウムイオン二次電池などの非水系電解液二次電池は、軽くて充放電容量を大きくできる。また、この実施の形態では、電装用蓄電部に二次電池を使用する例を説明しているが、本発明は電装用蓄電部として二次電池に代えて、あるいはこれに加えて、電気二重層キャパシタ(EDLC)等のキャパシタを利用することもできる。
【0022】
スターターバッテリ1は、定格電圧を12Vとする鉛バッテリ1Aである。ただ、スターターバッテリには、定格電圧を24V、36V、48Vとする鉛バッテリも使用できる。電装用蓄電部2は、DC/DCコンバータを介することなくスターターバッテリ1に接続されるので、直列に接続する個数を調整して、定格電圧を鉛バッテリ1Aに等しくし、あるいはほぼ等しくする。12Vの鉛バッテリ1Aであるスターターバッテリ1に並列に接続される、ニッケル水素電池2Aの電装用蓄電部2は、10個のニッケル水素電池2Aを直列に接続して定格電圧を12Vとする。
【0023】
回生制動において、オルタネータ23は、スターターバッテリ1と電装用蓄電部2の両方を充電する。したがって、リレー制御回路11は、オルタネータ23の回生発電状態においては、リレー3をオン状態として、回生発電電力でスターターバッテリ1と電装用蓄電部2の両方を充電する。
【0024】
車両は、信号待ちなどの走行しない状態でエンジン21を停止して、燃費効率を改善する。すなわち、アイドリングストップして燃費効率を改善する。この車両は、アイドリングストップする状態から車両を走行させるときに、エンジン21を再始動する必要がある。エンジン21を再始動する毎に、スターターモータ22のスタータースイッチ25はオン状態に切り換えられる。スターターモータ22は、回転トルクを大きくするために抵抗を極めて小さくしている。このため、スタータースイッチ25のオン状態で、スターターバッテリ1の電圧は12Vから約9V程度に低下する。とくに、スターターバッテリ1は、劣化して内部抵抗が大きくなると、スタータースイッチ25のオン状態で電圧が9V以下に低下することがある。すなわち、アイドリングストップする車両は、エンジン21を再始動する毎にスターターバッテリ1の電圧を一時的に低下させる。バッテリの電圧が一時的に低下する瞬低は、これから動作電力を供給している電装機器20の安定な動作を保証できず、誤動作の原因となる。とくに、エンジン21の再始動は、イグニッションスイッチ26をオンに切り換えて、最初にエンジン21を始動する状態とは異なって、全ての電装機器20は動作状態にある。最初にイグニッションスイッチ26をオンに切り換える状態は、エンジン21が始動した後、電装機器20を動作状態とすることで、安定な動作を保証できる。しかしながら、エンジン21の再始動は、電装機器20を動作状態としながら、バッテリ電圧を瞬低させるので、電装機器20を正常な動作を保証できない。
【0025】
図1の車両は、エンジン21の再始動状態で電装機器20への供給電圧が瞬低しないように、スターターバッテリ1からは電装機器20へ動作電力を供給せず、すなわち、電装用蓄電部2をスターターバッテリ1から切り離して、電装用蓄電部2から電装機器20に動作電力を供給する。したがって、リレー制御回路11は、スターターモータ22に電力を供給する状態、すなわちスタータースイッチ25のオン状態では、リレー3をオフ状態に切り換える。電装用蓄電部2から動作電力が供給される電装機器20は、スターターバッテリ1の瞬低によっても正常な動作を保証する必要がある電装機器、たとえば、電動パワーステアリングや、アイドリングストップする車両のコントロールユニットのマイクロコンピュータなどである。車両には種々の電装機器20が搭載されるが、必ずしも全ての電装機器に、エンジンの再始動状態において電装用蓄電部から動作電力を供給する必要はない。たとえば、霜取り用のヒーター、エアコン用のファンモータ、オーディオやナビ用の機器等のように、瞬低による弊害が問題とならない電装機器は、スターターモータから動作電力を供給することもできる。ただ、エンジンの再始動状態においては、全ての電装機器に電装用蓄電部から動作電力を供給することもできる。エンジンの再始動状態において、電装用蓄電部からどの電装機器に動作電力を供給するかは、電装用蓄電部の定格容量を考慮して設定される。
【0026】
図1の車両は、リレー制御回路11を予備蓄電システム10に設けて、予備蓄電システム10と車両側とを、たとえばCAN等の通信ライン9で接続している。リレー制御回路11は、車両側から伝送されるスタータースイッチ25のオン信号を検出して、リレー3をオフ状態に切り換える。すなわち、スタータースイッチ25がオン状態で、リレー3はオフ状態に保持される。スタータースイッチ25がオフ状態に切り換えられると、リレー3はオン状態に切り換えられて、電装用蓄電部2はスターターバッテリ1と並列に接続される。
【0027】
図1の予備蓄電システム10は、電装用蓄電部2と、この電装用蓄電部2と直列に接続しているヒューズ18と、電装用蓄電部2の電圧、電流、温度等の電池状態を検出する検出回路12で検出される電池状態を演算するCPUを内蔵する演算回路13と、この演算回路13に接続している通信回路14と、検出回路12に動作電力を供給する定電圧電源15と、この定電圧電源15にスターターバッテリ1から電力を供給するハイサイドスイッチ16と、車両側からイグニッションスイッチ26の信号が入力されるKey入力検出回路17と、再始動時にリレー3をオフに切り換えるリレー制御回路11とを備える。
【0028】
この予備蓄電システム10は、車両のイグニッションスイッチ26がオンに切り換えられると、この信号をKey入力検出回路17で検出する。Key入力検出回路17は、イグニッションスイッチ26のオン信号を検出して、ハイサイドスイッチ16をオンに切り換え、オン信号のハイサイドスイッチ16が定電圧電源15とリレー制御回路11に動作電力を供給する。動作電力は、定格容量の大きいスターターバッテリ1から供給される。スターターバッテリ1は瞬低で一時的に電圧が低下するが、定電圧電源15は安定化した電圧を演算回路13に供給する。この予備蓄電システム10は、イグニッションスイッチ26がオンに切り換えられると、演算回路13とリレー制御回路11を動作状態に切り換える。イグニッションスイッチ26のオフ状態において、演算回路13とリレー制御回路11は休止状態となって、消費電力を削減する。イグニッションスイッチ26のオン状態、すなわちドライバーが車両に乗って車両を走行させる状態で、アイドリングストップし、その後、エンジン21を再始動するときは、車両側から予備蓄電システム10に、スタータースイッチ25のオン信号を、通信回路14を介して演算回路13に伝送する。演算回路13は、スタータースイッチ25のオン信号を検出すると、リレー制御回路11を介してリレー3をオフ状態に切り換える。すなわち、スターターモータ22がエンジン21を再始動する状態で、リレー3をオフ状態として、スターターバッテリ1のみからスターターモータ22に電力を供給し、電装用蓄電部2はスターターモータ22から切り離されて電装機器20に動作電力を供給する。エンジン21が再始動されて、スタータースイッチ25がオフに切り換えられると、リレー制御回路11はリレー3をオン状態に切り換えて、電装用蓄電部2をスターターバッテリ1と並列に接続する。この予備蓄電システム10は、エンジン21の再始動タイミング以外のタイミングにおいて、スターターバッテリ1と電装用蓄電部2を並列に接続する。
【0029】
オルタネータ23は、スターターバッテリ1と電装用蓄電部2の過放電と過充電を防止するように充電する。互いに並列に接続しているスターターバッテリ1と電装用蓄電部2の電圧が最低電圧よりも低下すると、オルタネータ23が発電して、スターターバッテリ1と電装用蓄電部2を充電する。回生制動する車両は、車両が制動する状態でスターターバッテリ1と電装用蓄電部2の両方を充電する。回生発電電力で頻繁に充電されて、スターターバッテリ1と電装用蓄電部2の電圧が最低電圧よりも低下しないときは、エンジン21でオルタネータ23を駆動して充電しないが、回生発電電力で充電する状態においても、スターターバッテリ1と電装用蓄電部2の電圧が最低電圧よりも低下するときは、エンジン21でオルタネータ23を駆動して充電する。回生発電電力量が大きすぎてスターターバッテリ1と電装用蓄電部2を過充電する状態では、オルタネータ23の出力を小さく制限して、過充電を防止する。
【0030】
リレー3は、オン状態においては、電装用蓄電部2とスターターバッテリ1とを並列接続して、回生発電電力ではスターターバッテリ1と電装用蓄電部2の両方を充電し、オフ状態では電装用蓄電部2をスターターバッテリ1から切り離して、電装用蓄電部2のみから電装機器20に動作電力を供給する。回生発電は短時間に大電流でスターターバッテリ1と電装用蓄電部2とを急速充電する。とくに、電装用蓄電部2の充電抵抗をスターターバッテリ1の充電抵抗よりも小さくして、電装用蓄電部2をスターターバッテリ1よりも大電流で充電する車両は、回生発電時にリレー3に相当に大きな電流が流れる。たとえば、出力電流を200Aとするオルタネータ23は、回生制動時に、電装用蓄電部2を約200Aもの大電流で充電するので、リレー3には電流容量の大きい、すなわち電流容量の大きい接点のリレー3を使用する必要がある。電流容量の大きいリレー3は、可動部分が大きく、オンオフの切り換え時に大きな騒音と振動を発生する。大きな可動接点が固定接点に衝突し、あるいは固定接点から離れてストッパに衝突するからである。
【0031】
さらに、予備蓄電システム10は、電装用蓄電部2として、スターターバッテリ1よりも重量に対し、あるいは容積に対して充放電の容量が大きい、ニッケル水素電池2Aやリチウムイオン二次電池が使用されるが、これ等のバッテリは温度が高くなると劣化が甚だしくなる特性がある。このため、予備蓄電システム10がエンジンルーム5に配置されると、高温になって劣化が甚だしくなる。さらに、電装用蓄電部2は、回生発電でスターターバッテリ1よりも大電流で充電されるので、この状態における発熱量も大きく、それ自体の温度上昇も大きくなる。温度上昇による劣化を防止するために、予備蓄電システム10は、車両の客室内やトランクルーム等のキャビン6内に配置される。キャビン6内はエンジンルーム5に比較して温度が低く、とくに温度上昇がはなはだしい夏期においても、キャビン6内は冷房されて温度が低くなる。このため、温度上昇による電装用蓄電部2の劣化を理想的な状態で防止できる。
【0032】
本発明の車両は、予備蓄電システム10をキャビン6内に配置して電装用蓄電部2の劣化を防止するが、電装用蓄電部2をスターターバッテリ1に接続するリレー3はエンジンルーム5内に配置する。オンオフに切り換えられる騒音レベルを低減するためである。車両のキャビン6内は、エンジンルーム5と金属板7で区画されて、エンジンルーム5の騒音を遮断する構造としているので、リレー3をエンジンルーム5に配置して、リレー3の切り換え時の騒音を遮音できる。リレー3は、電装用蓄電部2をスターターバッテリ1に接続するので、スターターバッテリ1の近傍であって車両のシャーシに固定される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の車両は、アイドリングストップする車両であって、予備蓄電システムを、リレーを介してスターターバッテリに並列接続可能な車両に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0034】
1…スターターバッテリ 1A…鉛バッテリ
2…電装用蓄電部 2A…ニッケル水素電池
3…リレー
5…エンジンルーム
6…キャビン
7…金属板
9…通信ライン
10…予備蓄電システム
11…リレー制御回路
12…検出回路
13…演算回路
14…通信回路
15…定電圧電源
16…ハイサイドスイッチ
17…Key入力検出回路
18…ヒューズ
20…電装機器
21…エンジン
22…スターターモータ
23…オルタネータ
24…車輪
25…スタータースイッチ
26…イグニッションスイッチ
図1