(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態によるリフマグ付き作業機械について説明する。
【0014】
図1は、リフマグ付き作業機械の一例であるリフマグ付きショベルの側面図である。リフマグ付きショベルは、ショベルのアームの先端に取り付けるアタッチメントとして、バケットの代りにリフティングマグネット(以下、「リフマグ」と称する)を取り付けたものである。
【0015】
図1に示すリフマグ付きショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4、アーム5、及びリフティングマグネット(リフマグ)6、及び、これらを油圧駆動するためのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びリフマグシリンダ9が搭載される。上部旋回体3には、運転室を有するキャビン10及びエンジンや電動機を含む動力源が搭載される。
【0016】
図2はリフマグ付きショベルの駆動系の構成の一例を示すブロック図である。ショベルに搭載されたエンジン11の駆動軸11aに、ショベルにおける作業装置としての各シリンダ7〜9等を駆動するための油圧ポンプであるメインポンプ14と発電機用油圧ポンプ40とが共通に取付けられている。メインポンプ14が発生する油圧はコントロールバルブ17に供給され、各シリンダ7〜9等に分配される。
【0017】
メインポンプ14には、作動油の吐出流量を制御するためのレギュレータ14Aが設けられている。レギュレータ14Aは、例えば、メインポンプ14の吐出圧、制御部30からの制御信号に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調整することによって、メインポンプ14の吐出流量を制御する。
【0018】
発電機用油圧ポンプ40から吐出される作動油は、油圧モータ42に供給される。油圧モータ42はリフマグ用発電機44に機械的に連結されている。リフマグ用発電機44は、油圧モータ42の出力で駆動され、交流電力を発電する。リフマグ用発電機44の出力端子は、駆動制御部として機能するインバータ46を介してリフティングマグネット(リフマグ)6に接続されている。インバータ46は、リフマグ用発電機44が出力する交流電力をリフマグ励磁用の直流電力に変換する整流機能を有する。リフマグに印加される電圧はインバータ46により制御される。
【0019】
駆動制御部としてのインバータ46は、リフマグ用発電機44が出力する交流電力を直流電力に変換し、リフマグに印加される電圧を制御可能であれば、任意の電源回路として構成されてよい。ここで、インバータ46の構成例について説明をする。
【0020】
図3は、リフマグ用電源回路(インバータ46)の構成の一例を示す回路図である。インバータ46は、直流変換部300と、Hブリッジ回路部400と、消磁用エネルギー吸収部500とを備え、リフマグ6の励磁及び消磁を行う。
【0021】
直流変換部300は、リフマグ用発電機44から供給される三相交流電力(交流電圧VAC1〜VAC3)を直流電力(直流電圧VDC)に変換する整流器である。なお、本実施形態において、直流電圧VDCは、リフマグ用発電機44の出力電圧と同等である。直流変換部300は、正側出力端300a及び負側出力端300bを有し、生成した直流電圧VDCを正側出力端300aと負側出力端300bとの間に提供する。なお、リフマグ用発電機44が単相交流発電機である場合、直流変換部300は、単相交流電力を直流電力に変換する構成であってよい。また、リフマグ用発電機44が直流発電機である場合に、該直流変換部300は設けられてもよい。
【0022】
直流変換部300は、6個のダイオード310a〜310fを含むブリッジ回路(整流器)により構成され、三相全波整流を行う。具体的には、ダイオード310a及び310bが直列接続され、ダイオード310c及び310dが直列接続され、ダイオード310e及び310fが直列接続される。また、ダイオード310a及び310bからなる組と、ダイオード310c及び310dからなる組と、ダイオード310e及び310fからなる組とは、互いに並列接続される。そして、これらのダイオードの組のカソード側の一端は、正側出力端300aに電気的に接続され、アノード側の一端は、負側出力端300bに電気的に接続される。
【0023】
また、ダイオード310aとダイオード310bとの間には、リフマグ用発電機44における一相の端子から延びる交流電源ライン46aが電気的に接続される。また、ダイオード310cとダイオード310dとの間には、リフマグ用発電機44における他の一相の端子から延びる交流電源ライン46bが電気的に接続される。また、ダイオード310eとダイオード310fとの間には、リフマグ用発電機44における更に他の一相の端子から延びる交流電源ライン46cが電気的に接続される。
【0024】
なお、直流変換部300は、(三相)交流電力を直流電力に変換できるものであれば、任意に構成することが可能である。例えば、サイリスタを用いた純ブリッジ回路や、ダイオード及びサイリスタを用いた混合ブリッジ回路等によって構成されてもよい。直流変換部300が純ブリッジ回路や混合ブリッジ回路によって構成される場合、サイリスタは、位相制御回路(不図示)により所定の制御角で位相制御される。
【0025】
Hブリッジ回路部400は、リフマグ6の励磁及び消磁を制御する。Hブリッジ回路部400は、第1〜第4のスイッチング素子410a〜410dと、該第1〜第4のスイッチング素子410a〜410dそれぞれのドレイン−ソース間に電気的に接続された第1〜第4の転流用ダイオード420a〜420dとを含むHブリッジ回路により構成される。
【0026】
具体的には、第1のスイッチング素子410aの一端は直流変換部300の正側出力端300aに接続され、第1のスイッチング素子410aの他端は、第2のスイッチング素子410bの一端に接続される。第2のスイッチング素子410bの他端は、直流変換部300の負側出力端300bに接続される。一方、第3のスイッチング素子410cの一端は、直流変換部300の正側出力端300aに接続され、第3のスイッチング素子410cの他端は、第4のスイッチング素子410dの一端に接続される。第4のスイッチング素子410dの他端は、直流変換部300の負側出力端300bに接続される。第1のスイッチング素子410aと第2のスイッチング素子410bとの間には、リフマグ6の一端から延びる接続ラインが接続される。また、第3のスイッチング素子410cと第4のスイッチング素子410dとの間には、リフマグ6の他端から延びる接続ラインが接続される。
【0027】
また、第1、第2、第4の転流用ダイオード420a、420b、420dのアノードは、それぞれ第1、第2、第4のスイッチング素子410a、410b、410dの他端に接続される。また、第1、第2、第4の転流用ダイオード420a、420b、420dのカソードは、それぞれ第1、第2、第4のスイッチング素子410a、410b、410dの一端に接続される。
【0028】
また、第3の転流用ダイオード420cのアノードは、第3のスイッチング素子410cの他端に接続され、カソードは、抵抗素子460eを介して第3のスイッチング素子410cの一端(直流変換部300の正側出力端300a)に接続される。これにより、リフマグ6の消磁を行う際にリフマグ6に蓄積されたエネルギーの一部を抵抗素子460eで消費することが可能となるため、後述する容量素子510の容量を大きくする必要がなく、インバータ46を小型化できる。
【0029】
消磁用エネルギー吸収部500は、リフマグ6の消磁を行う際にリフマグ6に蓄積されたエネルギーを吸収するために設けられる。消磁用エネルギー吸収部500は、直流変換部300の正側出力端300aと負側出力端300bとの間に接続され、容量素子510を含む。なお、消磁用エネルギー吸収部500としては、リフマグ6の消磁を行う際にリフマグ6に蓄積されたエネルギーを吸収することが可能であれば、任意の回路構成が適用可能である。
【0030】
次に、リフマグ用電源回路(インバータ46)の動作について簡単に説明をする。
【0031】
リフマグ6を励磁させる場合、第1のスイッチング素子410a及び第4のスイッチング素子410dを導通させる。これにより、リフマグ6(の両端)には、直流変換部300から出力される直流電圧VDCが印加される。そして、直流変換部300の正側出力端300aから、第1のスイッチング素子410a、リフマグ6、及び第4のスイッチング素子410dを介して、直流変換部300の負側出力端300bに向かって励磁電流が流れる。本実施形態では、リフマグ6が起動している場合、第1のスイッチング素子410a及び第4のスイッチング素子410dを導通させた状態を維持する。このようにして、リフマグ6に電圧を印加して、電流を流すことにより、リフマグ6を励磁し、リフマグ6に鋼材等を吸着することができる。
【0032】
また、リフマグ6を消磁させる場合、第1のスイッチング素子410a及び第4のスイッチング素子410dを非導通とする。これにより、リフマグ6から、第3の転流用ダイオード420c、抵抗素子460e、容量素子510、第2の転流用ダイオード420bを介して、リフマグ6に戻る経路で消磁電流が流れる。これにより、リフマグ6に蓄積されたエネルギーは、抵抗素子460eで一部を熱エネルギーとして消費されつつ、容量素子510に移乗される。そのため、リフマグ6が消磁され、リフマグ6に吸着されていた鋼材等を解放することができる。
【0033】
ここで、リフマグ6はヒステリシス特性により残留磁気を有する。そこで、第2のスイッチング素子410b及び第3のスイッチング素子410cを導通させる。これにより、容量素子510から、第3のスイッチング素子410c、リフマグ6、第2のスイッチング素子410bを通じて電流が流れる。すなわち、容量素子510に蓄積された電荷によって、リフマグ6において消磁電流とは逆向きの電流(残留磁気の消磁電流)が流れる。これにより、リフマグ6の残留磁気が消磁され、吸着していた鋼材等を完全に解放することができる。
【0034】
次に、リフマグ6に供給する電力を発電する発電回路の動作について説明する。エンジン11に取付けられた回転センサ11cによりエンジン回転数が検出される。検出されたエンジン回転数を示すエンジン回転数信号が、設定された設定回転数信号とともに制御部30に入力される。制御部30は、これらの入力信号に基づいてエンジン回転数を設定された一定回転数に制御するための制御信号を演算する。
【0035】
制御部30において演算により生成された制御信号に基づき、燃料噴射ポンプにおける燃料噴射量の制御が行われる。これにより、エンジン回転数は、設定された一定回転数に維持される。したがって、発電機用油圧ポンプ40及び油圧モータ42を介してリフマグ用発電機44が設定された一定回転数で駆動され、リフマグ用発電機44から所定の大きさの交流電力が出力される。この交流電力がインバータ46によって直流電力に変換されて、所定の大きさで安定した直流電力がリフマグ6に供給される。
【0036】
そして、メインポンプ14から供給される油圧によってブームシリンダ7、アームシリンダ8及びリフマグシリンダ9等の作業装置の油圧アクチュエータを駆動しながら、リフマグ6によって対象物の吸着、運搬等の作業を行うことができる。
【0037】
上述のリフマグ6を駆動する駆動系において、リフマグ6に印加される電圧に応じてエンジン11の負荷が変化する。そこで、レギュレータ14Aによりメインポンプ14の吐出量を制御することで、リフマグ6の出力状況に応じて、メインポンプ14の馬力を制御する。具体的には、リフマグ吸着用スイッチ32がオン状態になるとリフマグ6へ320Vの高電圧が印加される。このとき、発電機用油圧ポンプ40の出力も増大するため、エンジン11に加わる負荷も増大する。このため、レギュレータ14Aでメインポンプ14の馬力を低減し、エンジン11の出力をリフマグ6へ多く配分できるようにする。すなわち、リフマグ6を励磁駆動させる励磁駆動系(発電機用油圧ポンプ40等)と油圧アクチュエータ(ブームシリンダ7、アームシリンダ8、リフマグシリンダ9)を駆動させる油圧駆動系(メインポンプ14等)とのいずれかを優先的に駆動させるかを選択することができる。その後、リフマグ6に印加する電圧が定格電圧まで低下すると、エンジン11への負荷も小さくなる。したがって、レギュレータ14Aを調整し、メインポンプ14の馬力を調整することができる。リフマグ6の出力が小さいときには、ブーム4、アーム5等の油圧駆動部の出力を増大することができ、操作性を向上させることができる。
【0038】
図4はメインポンプ14の圧力流量特性(P−Q線図)を示すグラフである。レギュレータ14Aにより斜板傾転角を調整することによって、メインポンプ14の出力(圧力P×流量Q)を制御することができる。リフマグ6の駆動を開始する際に定格電圧より高い電圧をリフマグ6に印加するときは、メインポンプ14の出力を、例えば実線Aで示す低い出力になるようにレギュレータ14Aにより斜板傾転角を調整する。リフマグ6の駆動を開始した後で定格電圧を印加するときには、メインポンプ14の出力を、例えば実線Bで示す中程度の出力になるようにレギュレータ14Aにより斜板傾転角を調整する。リフマグ6を駆動していないときには、メインポンプ14の出力を、例えば実線Cで示す高い出力になるようにレギュレータ14Aにより斜板傾転角を調整する。
【0039】
ところで、作業機械に搭載されるリフマグ6の大きさは、リフマグ6を取り付ける作業機械の大きさや吸着する対象物の大きさ等の関係により、通常、直径が約1.2〜1.6メートルのものが選択される。リフマグ6の中に配置されている電磁石のサイズも一定の範囲内のサイズが選択される。リフマグ6の中の電磁石のコイル抵抗は、ほぼ一定の範囲で固定された値となっている。このため、リフマグ6へ印加する電圧を変更することで、リフマグ6に流れる電流が変わり、磁束密度も変化する。その結果、リフマグ6が発生する吸着力を変えることができる。
【0040】
リフマグ6では、長時間、対象物を保持可能な電圧として定格電圧が200Vに設定されている。また、リフマグ6の強励磁時の電圧は、290Vに設定されている。なお、強励磁時の電圧である290Vは、リフマグ6の発熱による吸着力の低下を考慮して、継続的にリフマグ6に印加することが可能な最大電圧として設定されてよい。
【0041】
図5はIPMモータの回転数と出力電圧との関係を示すグラフである。
図5において、IPMモータの出力電圧特性が実線で示され、比較のために従来の誘導発電機からの出力電圧特性が点線で示されている。
【0042】
誘導発電機は、回転数が1700rpm付近から出力電圧が急激に上昇し、2000rpm付近で出力電圧は定格電圧の200Vとなる。誘導電動発電機の場合、回転数を2000rpm以上に増大させても、出力電圧は飽和状態であり、定格電圧の200Vのままである。
【0043】
本実施形態では、上述のリフマグ用発電機44として、IPMモータ(Interior Permanent Magnet Motor)が用いられる。IPMモータは、発電機として動作するときに、回転数に比例した電圧を出力することができる。IPMモータをリフマグ用発電機44として用いることにより、例えばリフマグ6の強励磁時の電圧以上の電圧を出力することができる。すなわち、リフマグ6の強励磁時の電圧である290Vを越える電圧をリフマグ用発電機44から出力してリフマグ6に印加することができる。ただし、リフマグ用発電機44として用いる発電機は、IPMモータに限られず、290Vを越えるような高電圧を発生することが可能な、例えば同期式発電機を用いてもよく、回転数に比例した電圧を出力可能な発電機であれば好適である。
【0044】
本実施形態で使用するIPMモータは、回転数がゼロから大きくなるにつれて、回転数に比例して出力電圧も大きくなる。回転数が2000rpmのときには、誘導電動発電機と同様に出力電圧は200Vとなるが、回転数が高くなると出力電圧も比例して大きくなる。回転数が2600rpm付近で、出力電圧は290Vを超えるようになり、3000rpm付近では、出力電圧は330V程度まで上昇する。
【0045】
以上のように、リフマグ用発電機44としてIPMモータのような同期型電動発電機を用い、回転数を2600rpm以上にすれば、出力電圧を290Vより高い電圧にすることができる。したがって、
図5からわかるように、例えば、リフマグ用発電機44を3000rpmで回転させることで、320Vというように290Vを超える高い電圧をリフマグ6に印加することができる。
【0046】
ここで、リフマグ用発電機44の出力電圧を高くすると、インバータ46に含まれるスイッチング素子の耐電圧性能が問題となる。すなわち、リフマグ用発電機44の出力電圧が高くなると、インバータ46に含まれるスイッチング素子のオフ時における両端電圧が高くなるため、該両端電圧が耐電圧を超えてしまうおそれがある。しなしながら、リフマグ6の起動時(励磁時)において、上述したインバータ46の構成例(
図3)のように、スイッチング素子(第1のスイッチング素子410a及び第4のスイッチング素子410d)を継続してオン状態となるように制御するとよい。これにより、スイッチング素子(第1のスイッチング素子410a及び第4のスイッチング素子410d)に電流が流れている状態を維持することができるので、スイッチング素子の耐電圧性能の問題を回避することができる。従って、後述するような短時間(例えば、2秒間)であれば、スイッチング素子の耐電圧性能から決定されるインバータ46の定格電圧よりも十分高い電圧をリフマグ6に印加することができる。
【0047】
リフマグ用発電機44の駆動は、駆動制御部としてのインバータ46により制御される。インバータ46は制御部30からの制御信号に基づいて、リフマグ6に印加する電圧を調整する。なお、リフマグ用発電機44の駆動は、制御部30により制御されてもよい。すなわち、制御部30が油圧モータ42、リフマグ用発電機44、インバータ46の制御を行い、リフマグ6に印加する電圧を制御してもよい。本実施形態では、リフマグ6を励磁するときに、最初の数秒間(例えば、2秒間)は定格電圧よりも十分高い第1の電圧(例えば、320V)を印加する。最初の印加電圧(第1の電圧)は、定格電圧の1.5倍以上の電圧とすることがより好ましい。そして、次の数秒間(例えば、2秒間)は、第1の電圧より下げた第2の電圧(例えば、290V)を印加し、その後はリフマグ6の定格電圧(例えば、200V)を印加する。これにより、リフマグ6に流れる励磁電流の立ち上がりが早くなり、電磁吸着力を迅速に大きくすることができる。
【0048】
図6は、上述のように定格電圧より高い電圧を段階的に印加するときの電圧の変化を示すグラフである。
図7は、
図6に示すような電圧がリフマグ6に印加された際に、リフマグ6に流れる励磁電流の変化を示すグラフである。
図6において、本実施形態による電圧調整を行なった際の電圧が実線で示され、最初から定格電圧200Vをリフマグ6に印加する場合の電圧が点線で示されている。同様に、
図7において、本実施形態による電圧調整を行なった際にリフマグ6に流れる励磁電流が実線で示され、最初から定格電圧200Vをリフマグ6に印加した場合の励磁電流が点線で示されている。
【0049】
図6に示すように、本実施形態では、リフマグ6を駆動するために運転者がリフマグ6の駆動スイッチ(リフマグ吸着用スイッチ32)を入れると、駆動制御部(インバータ46)は、最初の2秒間はリフマグ6の強励磁時の電圧よりも十分高い電圧として320Vをリフマグ6に印加するよう、320Vに対応した回転数でリフマグ用発電機44を回転させる。この間、リフマグ用発電機44から出力される電圧は制限されていない。そして、駆動制御部は、次の2秒間は、リフマグ6の強励磁時の電圧である290Vをリフマグ6に印加し、その後はリフマグ6の定格電圧である200Vをリフマグ6に印加する。290V,200Vを印加させている間、駆動制御部としてのインバータ46は、リフマグ6に印加する電圧を290V,200Vに制限している。このように定格電圧より高い電圧を段階的に印加することで、リフマグ6に流れる励磁電流は
図7の実線で示すように立ち上がりが急激となり、およそ3秒後に定格電流となり、そのまま電流は維持される。これにより、リフマグ用発電機44、インバータ46の損傷を防止しつつ、吸着力の立ち上がりが速いリフマグ6の制御を実現することができる。一方、従来のように、最初から定格電圧を印加した場合は、定格電流に到達するまでに、約5.5秒が経過する。すなわち、本実施形態によるリフマグ駆動時の電圧調整によれば、従来よりも短時間でリフマグ6に定格電流を流すことができ、リフマグ6の電磁吸着力を迅速に増大させることができる。
【0050】
ここで、上述のようにリフマグ6に印加する電圧は、リフマグ用発電機44からの出力電圧である。したがって、リフマグ6に印加する電圧を調整するには、リフマグ用発電機44の回転数を制御して、最初の2秒間は少なくとも320Vが出力でき、次の2秒間は少なくとも290Vが出力できるように回転数を上げておく必要がある。
【0051】
リフマグ用発電機44は油圧モータ42に直結されているので、リフマグ用発電機44の回転数は油圧モータ42の回転数に等しい。また、油圧モータ42は発電機用油圧ポンプ40から吐出される圧油で駆動されるため、油圧モータ42の回転数は発電機用油圧ポンプ40の回転数に比例して変化する。さらに、発電機用油圧ポンプ40はエンジン11に直結されているので、発電機用油圧ポンプ40の回転数はエンジン11の回転数に等しい。このように、リフマグ用発電機44の回転数はエンジン11の回転数に依存していると考えることができる。
【0052】
一方、エンジン11には、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、リフマグシリンダ9等の他の作業要素を油圧駆動するためのメインポンプ14も直結されている。したがって、エンジン11の回転数は、メインポンプ14を駆動するための回転数に維持される。このため、従来は、メインポンプ14と同様にエンジン11に直結されている発電機用油圧ポンプ40の回転数は、メインポンプ14の回転数に等しく、この回転数において発電機用油圧ポンプ40が回転するとリフマグ用発電機44の出力電圧(即ち、駆動制御部としてのインバータ46の出力電圧)がリフマグ6の定格電圧(例えば、200V)となるように構成されている。
【0053】
ここで、本実施形態のように、リフマグ用発電機44の回転数を上げて定格電圧より高い電圧を発生させるためには、エンジン11の回転数を上げる必要がある。しかしながら、エンジン11はメインポンプ14に機械的に連結しているため、リフマグ6への電力要求のみに基づいてエンジン11の回転数を変更することはできない。このために、リフマグ用発電機44の回転数を上げて定格電圧より高い電圧を発生させるために、本実施形態では、従来は1:1に設定されていた油圧モータ42の回転数と発電機用油圧ポンプ40の回転数との比率を、油圧モータ42の回転数のほうが大きくなるように設定する。具体的には、油圧モータ42の回転数が発電機用油圧ポンプ40の回転数の少なくとも1.1倍以上(比率としては、1.1:1)となるように設定する。すなわち、リフマグ用発電機44の回転数がエンジン11の回転数の少なくとも1.1倍以上となるように設定される。また、発電機用油圧ポンプ40の回転数は、リフマグ6のコイルの特性から規定される最高電圧に対応した回転数まで上昇させてもよい。なお、本実施形態では、エンジン11の回転数は一つの予め定められた一定回転数に維持されるように制御された例を示したが、予め定められた一定回転数を複数設けることもできる。例えば、動きを早くしたい場合の高い回転数と、燃費を重視した低い回転数の2つの一定回転数を設定できるようにしてもよい。この場合、燃費を考慮し、かつ動きを鈍くしたい場合には、エンジン11の駆動時の最低回転数に設定することで、リフマグ用発電機44から定格電圧を出力するようにしてもよい。
【0054】
ここで、上述したリフマグ付きショベルの駆動系の構成例(
図2)では、発電機用油圧ポンプ40と油圧モータ42を介して、エンジン11の駆動力がリフマグ用発電機44に伝達され、リフマグ用発電機44は発電する。しかし、リフマグ用発電機44は、エンジン11により直接駆動されて、発電してもよい。以下、エンジン11により直接駆動されるリフマグ用発電機44を含むリフマグ付きショベルの駆動系の構成について、説明をする。
【0055】
図8は、リフマグ付きショベルの駆動系の構成の他の例を示すブロック図である。
図8において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、及び電気駆動・制御系は細い実線でそれぞれ示されている。なお、上述した構成例(
図2)と同様の構成要素については、同一の符号を付して、異なる部分を中心に説明する。
【0056】
ショベルに搭載されたエンジン11の駆動軸11aは、変速機13の入力軸に接続される。変速機13は、一つの入力軸と、二つの出力軸を有している。リフマグ6に電力を供給するための発電部としてのリフマグ用発電機44の入力軸44aは、変速機13の出力軸の一つに機械的に連結される。変速機13のもう一つの出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が連結される。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続される。また、メインポンプ14は、
図2で示した構成例と同様に、レギュレータ(不図示)が設けられる。該レギュレータは、メインポンプ14の斜板(傾転角)を調整することによって、メインポンプ14の吐出流量を制御する。
【0057】
リフマグ用発電機44は、エンジン11の駆動力により交流電力を発電する。リフマグ用発電機44の電力出力端は、駆動制御部として機能するインバータ46を介してDCバス110に電気的に接続される。インバータ46は、リフマグ用発電機44が出力する交流電力をリフマグ励磁用の直流電力に変換する整流機能を有する。DCバス110には、リフマグ6が電気的に接続される。リフマグ6は、DCバス110から電力が供給されることで駆動され、電磁吸着力を発生する。
【0058】
また、インバータ46は、制御部30からの指令に基づき、リフマグ用発電機44の運転制御を行う。これにより、インバータ46がリフマグ用発電機44を発電運転させて得られた電力は、DCバス110を介してリフマグ6に供給される。
【0059】
DC−DCコンバータ46Bは、リフマグ6とDCバス110との間に設けられる。DC−DCコンバータ46Bは、制御部30からの指令に基づき、リフマグ6の起動時に、DCバス110の電圧を所定の電圧まで昇圧し、昇圧した電圧をリフマグ6に供給する。なお、所定の電圧とは、例えば、上述した定格電圧(200V)、強励磁時の電圧(290V)、及び励磁開始時の電圧(320V)等である。なお、本例では、DC−CDコンバータ46Bを設け、DCバス110の電圧を昇圧して、リフマグ6に電力供給を行うが、DCバス110の電圧を直接、リフマグ6に印加してもよい。即ち、この場合は、リフマグ用発電機44の出力電圧に応じて、DCバス110に所定の電圧(例えば、320V)を発生させることができればよい。
【0060】
ここで、本例によるリフマグ付きショベルにおいても、
図2に示したリフマグ付きショベルと同様の作用・効果を奏する。
【0061】
即ち、制御部30がインバータ46、DCバス110、DC−DCコンバータ46Bを制御することにより、リフマグ6の起動時(リフマグ吸着用スイッチ32がオン操作された時)にリフマグ6に印加される電圧を調整するとよい。具体的には、上述した
図6のように、リフマグ吸着用スイッチ32がオン操作されると、最初の2秒間は強励磁時の電圧より高い320Vをリフマグ6に印加する。また、次の2秒間は、強励磁時の電圧である290Vをリフマグ6に印加する。そして、その後は、リフマグ6の定格電圧である200Vをリフマグ6に印加するように制御するとよい。これにより、短時間でリフマグ6に定格電流を流すことができ、リフマグ6の電磁吸着力を迅速に増大させることができる。そのため、運転者に操作性の悪さを感じさせることがない。
【0062】
また、本例においてもインバータ46として、
図3に示すリフマグ用電源回路(整流器とHブリッジ回路の組み合わせ)を用いてよい。また、リフマグ6の起動時において、スイッチング素子(第1のスイッチング素子410a及び第4のスイッチング素子410d)を継続してオン状態となるように制御するとよい。これにより、上記スイッチング素子に電流が流れている状態を維持することができるので、リフマグ6に印加する電圧を強励磁時の電圧よりも高めるために、リフマグ用発電機44の出力電圧を高くしても、スイッチング素子の耐電圧性能の問題を回避することができる。
【0063】
また、メインポンプ14の出力は、リフマグ6の駆動状況に応じて制御されるとよい。具体的には、リフマグ駆動時においては、リフマグ用発電機44を優先的に駆動し、レギュレータ14Aによりメインポンプ14の斜板(傾転角)を制御して、吐出流量を抑制することによりメインポンプ14の出力を低減させるとよい。また、リフマグ6の駆動が停止した後は、メインポンプ14の斜板(傾転角)を制御して、吐出流量を増加させることにより、メインポンプ14の出力を増大させるとよい。これにより、大きなエンジンを搭載することなく、リフマグ6の起動時の操作性を向上させることができる。即ち、リフマグ用発電機44と同様にエンジン11により駆動されるメインポンプ14の出力をリフマグ6の駆動状況に応じて増減させることで、リフマグ6の駆動のためにエンジン11の出力を上げる必要がない。そのため、リフマグ6の起動時に定格電圧よりも十分に高い電圧を印加することによる操作性の向上を大きなエンジンを搭載することなく実現することができる。
【0064】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0065】
また、本願は、2012年12月27日に出願した日本国特許出願2012−286070号に基づく優先権を主張するものであり、その日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。