特許第6246734号(P6246734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246734
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】シアノアクリレート組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/04 20060101AFI20171204BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C09J4/04
   C09J11/06
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-554736(P2014-554736)
(86)(22)【出願日】2013年1月15日
(65)【公表番号】特表2015-510003(P2015-510003A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(86)【国際出願番号】US2013021511
(87)【国際公開番号】WO2013112315
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2016年1月14日
(31)【優先権主張番号】61/590,566
(32)【優先日】2012年1月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】リ、 リン
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−500517(JP,A)
【文献】 特表昭57−501529(JP,A)
【文献】 特開昭57−207664(JP,A)
【文献】 特開昭59−147067(JP,A)
【文献】 特開2011−012124(JP,A)
【文献】 特開2011−101977(JP,A)
【文献】 特表2005−521764(JP,A)
【文献】 特表2005−519150(JP,A)
【文献】 特表2005−532678(JP,A)
【文献】 特開平10−017825(JP,A)
【文献】 特開平06−200214(JP,A)
【文献】 特公昭52−012737(JP,B1)
【文献】 特表2008−518073(JP,A)
【文献】 特開平08−209074(JP,A)
【文献】 特表2006−527782(JP,A)
【文献】 特表平05−505835(JP,A)
【文献】 米国特許第06833196(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 4/04
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シアノアクリレート成分、
(b)脂肪族カルボン酸無水物、及び
(c)マレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物
を含む、シアノアクリレート接着剤組成物。
【請求項2】
脂肪族カルボン酸無水物がジメチル無水マレイン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
脂肪族カルボン酸無水物が0.01〜1.0重量%の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
マレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物が0.01重量%〜5重量%の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
安定化する量の酸安定剤及びフリーラジカル阻害剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
シアノアクリレート成分が、HC=C(CN)−COORの構造(式中、Rは、C1〜15アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール、アリル及びハロアルキル基より選択される)の範囲内の物質から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
シアノアクリレート成分が、β−メトキシエチル−2−シアノアクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
カリックスアレーン、オキサカリックスアレーン、シラクラウン、シクロデキストリン、クラウンエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ヒドロキシル化合物、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される促進剤成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
カリックスアレーンが、テトラブチルテトラ[2−エトキシ−2−オキソエトキシ]カリックス−4−アレーンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
クラウンエーテルが、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ベンゾ−15−クラウン−5−ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、トリベンゾ−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6、ジベンゾ−14−クラウン−4、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、シクロヘキシル−12−クラウン−4、1,2−デカリル−15−クラウン−5、1,2−ナフト−15−クラウン−5、3,4,5−ナフチル−16−クラウン−5、1,2−メチル−ベンゾ−18−クラウン−6、1,2−メチルベンゾ−5、6−メチルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−t−ブチル−18−クラウン−6、1,2−ビニルベンゾ−15−クラウン−5、1,2−ビニルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−t−ブチル−シクロヘキシル−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6、及び1,2−ベンゾ−1,4−ベンゾ−5−オキシゲン−20−クラウン−7並びにそれらの組み合わせからなる群内の構成物質より選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートが、次の構造の範囲内である、請求項8に記載の組成物。
【化1】
(式中、nは3よりも大きい。)
【請求項12】
耐衝撃性添加剤、チクソトロピー性付与剤、増粘剤、着色剤、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される添加剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物の反応生成物。
【請求項14】
基材の少なくとも一つに、請求項1に記載のシアノアクリレート含有組成物を塗布するステップと、
接着剤を固着させるのに十分な時間、基材を一体にするステップと、
を含む、二つの基材を接合する方法。
【請求項15】
シアノアクリレート成分を用意するステップと、
脂肪族カルボン酸無水物と、マレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物とを混合して、シアノアクリレート成分と組み合わせるステップと、
を含む、請求項1に記載のシアノアクリレート含有組成物の調製方法。
【請求項16】
シアノアクリレート組成物を用意するステップと、
脂肪族カルボン酸無水物と、マレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物とを混合してシアノアクリレート組成物に供給するステップと、
を含む、シアノアクリレート組成物の硬化生成物に、向上した耐湿性及び/又は耐熱性を付与する方法。
【請求項17】
シアノアクリレート成分を含むシアノアクリレート組成物において、その改良がシアノアクリレート成分に脂肪族カルボン酸無水物及びマレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物を添加して、その硬化された反応生成物の耐湿性及び/又は耐熱性を改良することを含む、シアノアクリレート成分を含むシアノアクリレート組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアノアクリレート成分に加えて、無水物及びマレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物を含むシアノアクリレート含有組成物に関する。本発明のシアノアクリレート組成物の硬化生成物は、向上した耐湿性及び/又は耐熱性を示す。
【背景技術】
【0002】
シアノアクリレート接着剤組成物は周知であり、多種多様な用途をもつ、短時間で硬化する瞬間接着剤として広範に使用される。H.V. Coover,D.W. Dreifus,J.T. O’Connor,「Cyanoacrylate Adhesives」,Handbook of Adhesives,27巻,463〜77頁,I. Skeist編,Van Nostrand Reinhold,New York,第3版(1990)を参照のこと。G.H. Millet,「Cyanoacrylate Adhesives」,Structural Adhesives: Chemistry and Technology,S.R. Hartshorn編,Plenun Press,New York,249〜307頁(1986)も参照のこと。
【0003】
米国特許第5,288,794号(Attarwala)は、改良されたシアノアクリレートモノマー接着剤配合物を対象とし、そこでは、重合した接着剤の耐熱性を高めるために有効な量の、単環、多環又は複素環芳香族化合物であって、その一つの芳香環上に少なくとも三つの置換基が存在し、該置換基の二つ以上が電子吸引性基であることによって特徴付けられる前記芳香族化合物が提供されている。前記芳香族化合物の例を挙げると、2,4−ジニトロフルオロベンゼン、2,4−ジニトロクロロベンゼン、2,4−ジフルオロニトロベンゼン、3,5−ジニトロマレイミド含有化合物、3,5−ジニトロイタコンイミド含有化合物、又は3,5−ジニトロナジイミド含有化合物、2−クロロ−3,5−ジニトロマレイミド含有化合物、2−クロロ−3,5−ジニトロイタコンイミド含有化合物、又は2−クロロ−3,5−ジニトロナジイミド含有化合物、4,4’−ジフルオロ−3,3’−ジニトロフェニルスルホン、ペンタフルオロニトロベンゼン、ペンタフルオロマレイミド含有化合物、ペンタフルオロイタコンイミド含有化合物、又はペンタフルオロナジイミド含有化合物、α,α,α−2−テトラフルオロ−p−トルニトリル及びテトラクロロテレフタロニトリルなどがある。
【0004】
’794号特許における発見に先立ち、シアノアクリレート接着剤の熱安定性を改良するための多数の試みがなされてきた。
【0005】
例えば、米国特許第3,832,334号は、無水マレイン酸の添加を対象とし、これにより、迅速な硬化速度を維持しつつ、向上した耐熱性(硬化時)を有するシアノアクリレート接着剤が製造されることが報告されている。
【0006】
米国特許第4,196,271号は、トリカルボン酸、テトラカルボン酸及びそれ以上のカルボン酸又はそれらの無水物を対象とし、これらは、硬化したシアノアクリレート接着剤の耐熱性の向上に有用であることが報告されている。
【0007】
米国特許第4,450,265号は、シアノアクリレート接着剤の耐熱性を向上させるための無水フタル酸の使用を対象とする。より具体的には、’265号特許は、大部分が少なくとも1種の2−シアノアクリル酸エステルを含む重合性の構成成分を含む組成物であって、その組成物が、湿気又は高い温度への暴露下において、当該組成物から形成される接着剤の強度及び/又は耐性に有利な影響を与えることに有効な、ある比率の無水フタル酸をさらに含むことを特徴とする接着剤組成物を対象とし、それを権利主張している。その有効な量とは、組成物の重量に対して0.1%〜5.0%、例えば0.3%〜0.7%と報告されている。’265号特許は、添加剤不使用の組成物に対する、及び無水マレイン酸を使用した組成物に対する無水フタル酸の優位性を報告している(ステンレス鋼でのラップせん断試験の場合は、アルミニウムでの同試験の場合に比較してより明確ではないが)。
【0008】
米国特許第4,532,293号は、ベンゼフェノンテトラカルボン酸又はその無水物の使用を対象とし、シアノアクリレート接着剤に対して優れた耐熱性を与えると述べられている。
【0009】
米国特許第4,490,515号は、熱強度特性を改良する所定のマレイミド又はナジイミド化合物を含むシアノアクリレート組成物を対象とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,288,794号明細書
【特許文献2】米国特許第3,832,334号明細書
【特許文献3】米国特許第4,196,217号明細書
【特許文献4】米国特許第4,450,265号明細書
【特許文献5】米国特許第4,532,293号明細書
【特許文献6】米国特許第4,490,515号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】H.V. Coover,D.W. Dreifus,J.T. O’Connor,「Cyanoacrylate Adhesives」,Handbook of Adhesives,27巻,463〜77頁,I. Skeist編,Van Nostrand Reinhold,New York,第3版(1990)
【非特許文献2】G.H. Millet,「Cyanoacrylate Adhesives」,Structural Adhesives: Chemistry and Technology,S.R. Hartshorn編,Plenun Press,New York,249〜307頁(1986)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
シアノアクリレート組成物の耐熱性を向上させるための、今日までの技術水準及び努力にも拘わらず、特にシアノアクリレート組成物自体の、硬化時間、安定性又は色調といった他の物性を損なうことなく、そのようなシアノアクリレート組成物の硬化反応生成物に対して、そのような耐湿性及び/又は耐熱性を提供するという、長年求められ、未だ対処されていないニーズが、現在まで残されたままである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かくして、シアノアクリレート成分に加えて、無水物及びマレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物を含むシアノアクリレート組成物が提供される。
【0014】
無水物及びマレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物の含有により、実施例に示されるように、(1)無水物若しくは(2)マレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物のいずれも含まない相当するシアノアクリレート組成物、一方を含むが他方を含まない相当するシアノアクリレート組成物、及び無水物そのものを含む相当するシアノアクリレート組成物と比較すると、硬化速度、安定性及び/又は色調を損なうことなく、耐湿性及び/又は耐熱性などの物性の向上が提供される。
【0015】
本発明はまた、基材の少なくとも一つに上記の組成物を塗布するステップと、その後基材を一体にするステップとを含む、二つの基材を接合する方法も対象とする。
【0016】
加えて、本発明は、本発明の組成物の反応生成物を対象とする。
【0017】
また、本発明は、本発明の組成物の調製方法、及び、硬化時間、安定性又は色調の少なくとも一つを損なうことなく、シアノアクリレート組成物の硬化反応生成物に対して向上した耐湿性及び/又は耐熱性を付与する方法も対象とする。
【0018】
本発明は、以下の、「発明を実施するための形態」と題される項を読むことによって、より完全に理解されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】2種の異なる無水物及びマレイミド含有化合物を有し、前記無水物の内の1種が二つの異なる濃度で存在するシアノアクリレート組成物に関する、グリットブラスト処理軟鋼基材上、100時間及び1,000時間の期間の湿度エイジング後の残存するラップせん断強度を、対照であるLOCTITE 460と比較した棒グラフを示す図である。
図2】二つの異なる濃度での無水物とマレイミド含有化合物を有するシアノアクリレート組成物に関する、グリットブラスト処理軟鋼基材上、168時間及び1,000時間の期間の熱エイジング後の残存するラップせん断強度を、対照であるLOCTITE 460と比較した棒グラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述のように、本発明は、シアノアクリレート成分に加えて、無水物及びマレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物を含むシアノアクリレート組成物を対象とする。
【0021】
シアノアクリレート成分としては、HC=C(CN)−COOR(式中、RはC1〜15アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール、アリル及びハロアルキル基より選択される。)によって表されるシアノアクリレートモノマーなどの、多数の置換基によって選択され得るシアノアクリレートモノマーが挙げられる。望ましくは、シアノアクリレートモノマーは、メチルシアノアクリレート、エチル−2−シアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート(n−ブチル−2−シアノアクリレートなど)、オクチルシアノアクリレート、アリルシアノアクリレート、β−メトキシエチルシアノアクリレート及びそれらの組み合わせより選択される。特に望ましいものは、β−メトキシエチルシアノアクリレートである。
【0022】
シアノアクリレート成分は、全組成物の約50重量%〜約99.98重量%の範囲内の量にて組成物中に含まれるべきであり、約90重量%〜約99重量%の範囲であることが望ましく、約95重量%が特に望ましい。
【0023】
無水物は、通常、無水フタル酸などの芳香族無水物、又は3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸などのその水素化物であるべきである。その異性体及びフタル酸無水物の部分的な水素化物もまた、用いることができる。更に、ジメチル無水マレイン酸などの脂肪族無水物もまた、用いることができる。
【0024】
マレイミド含有化合物、ナジイミド含有化合物、又はイタコンイミド含有化合物は、
【0025】
【化1】
【0026】
【化2】
【0027】
【化3】
及びそれらの2種以上の組み合わせから選択されるべきである。式中、mは1〜15の範囲であることができ、pは0〜15の範囲であることができ、各Rは独立に水素又は低級アルキルより選択され、Jは有機基又はオルガノシロキサン基を含む1価又は多価の部分である。
【0028】
より詳細なマレイミド、ナジイミド及びイタコンイミドの表示としては、構造IX、X、又はXIに相当し、式中、mが1〜6の範囲であり、pが0であり、Rが独立に水素又は低級アルキルより選択され、Jが、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、ポリシロキサン、ポリシロキサン−ポリウレタンブロックコポリマー、及びそれらの2種以上の組み合わせより選択され、任意選択で、−O−、−S−、−NR−、−O−C(O)−、−O−C(O)−O−、−O−C(O)−NR−、−NR−C(O)−、−NR−C(O)−O−、−NR−C(O)−NR−、−S−C(O)−、−S−C(O)−O−、−S−C(O)−NR−、−S(O)−、−S(O)−、−O−S(O)−、−O−S(O)−O−、−O−S(O)−NR−、−O−S(O)−、−O−S(O)−O−、−O−S(O)−NR−、−O−NR−C(O)−、−O−NR−C(O)−O−、−O−NR−C(O)−NR−、−NR−O−C(O)−、−NR−O−C(O)−O−、−NR−O−C(O)−NR−、−O−NR−C(S)−、−O−NR−C(S)−O−、−O−NR−C(S)−NR−、−NR−O−C(S)−、−NR−O−C(S)−O−、−NR−O−C(S)−NR−、−O−C(S)−、−O−C(S)−O−、−O−C(S)−NR−、−NR−C(S)−、−NR−C(S)−O−、−NR−C(S)−NR−、−S−S(O)−、−S−S(O)−O−、−S−S(O)−NR−、−NR−O−S(O)−、−NR−O−S(O)−O−、−NR−O−S(O)−NR−、−NR−O−S(O)−、−NR−O−S(O)−O−、−NR−O−S(O)−NR−、−O−NR−S(O)−、−O−NR−S(O)−O−、−O−NR−S(O)−NR−、−O−NR−S(O)−O−、−O−NR−S(O)−NR−、−O−NR−S(O)−、−O−P(O)RO−、−S−P(O)R−、−NR−P(O)R−及び任意のそれらの2種以上の組み合わせの共有結合(式中、各Rは独立に水素、アルキル又は置換アルキルである。)より選択される1種又は2種以上の連結部を含む、1価又は多価の基であるものが挙げられる。
【0029】
1種又は2種以上の上記1価又は多価の基が、1種又は2種以上の上記連結部を含み、マレイミド基、ナジイミド基、又はイタコンイミド基の「J」付属部を形成する場合、当業者によって容易に認識されるように、例えば、オキシアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、オキシアルケニル、チオアルケニル、アミノアルケニル、カルボキシアルケニル、オキシアルキニル、チオアルキニル、アミノアルキニル、カルボキシアルキニル、オキシシクロアルキル、チオシクロアルキル、アミノシクロアルキル、カルボキシシクロアルキル、オキシクロアルケニル、チオシクロアルケニル、アミノシクロアルケニル、カルボキシシクロアルケニル、ヘテロ環式、オキシヘテロ環式、チオヘテロ環式、アミノヘテロ環式、カルボキシヘテロ環式、オキシアリール、チオアリール、アミノアリール、カルボキシアリール、ヘテロアリール、オキシヘテロアリール、チオヘテロアリール、アミノヘテロアリール、カルボキシヘテロアリール、オキシアルキルアリール、チオアルキルアリール、アミノアルキルアリール、カルボキシアルキルアリール、オキシアリールアルキル、チオアリールアルキル、アミノアリールアルキル、カルボキシアリールアルキル、オキシアリールアルケニル、チオアリールアルケニル、アミノアリールアルケニル、カルボキシアリールアルケニル、オキシアルケニルアリール、チオアルケニルアリール、アミノアルケニルアリール、カルボキシアルケニルアリール、オキシアリールアルキニル、チオアリールアルキニル、アミノアリールアルキニル、カルボキシアリールアルキニル、オキシアルキニルアリール、チオアルキニルアリール、アミノアルキニルアリール又はカルボキシアルキニルアリール、オキシアルキレン、チオアルキレン、アミノアルキレン、カルボキシアルキレン、オキシアルケニレン、チオアルケニレン、アミノアルケニレン、カルボキシアルケニレン、オキシアルキニレン、チオアルキニレン、アミノアルキニレン、カルボキシアルキニレン、オキシシクロアルキレン、チオシクロアルキレン、アミノシクロアルキレン、カルボキシシクロアルキレン、オキシシクロアルケニレン、チオシクロアルケニレン、アミノシクロアルケニレン、カルボキシシクロアルケニレン、オキシアリーレン、チオアリーレン、アミノアリーレン、カルボキシアリーレン、オキシアルキルアリーレン、チオアルキルアリーレン、アミノアルキルアリーレン、カルボキシアルキルアリーレン、オキシアリールアルキレン、チオアリールアルキレン、アミノアリールアルキレン、カルボキシアリールアルキレン、オキシアリールアルケニレン、チオアリールアルケニレン、アミノアリールアルケニレン、カルボキシアリールアルケニレン、オキシアルケニルアリーレン、チオアルケニルアリーレン、アミノアルケニルアリーレン、カルボキシアルケニルアリーレン、オキシアリールアルキニレン、チオアリールアルキニレン、アミノアリールアルキニレン、カルボキシアリールアルキニレン、オキシアルキニルアリーレン、チオアルキニルアリーレン、アミノアルキニルアリーレン、カルボキシアルキニルアリーレン、ヘテロアリーレン、オキシヘテロアリーレン、チオヘテロアリーレン、アミノヘテロアリーレン、カルボキシヘテロアリーレン、二価又は多価ヘテロ原子含有環式部分、二価又は多価オキシヘテロ原子含有環式部分、二価又は多価チオヘテロ原子含有環式部分、二価又は多価アミノヘテロ原子含有環式部分、二価又は多価カルボキシヘテロ原子含有環式部分、ジスルフィド、スルホンアミドなどの幅広い種類の連結部がつくり出され得る。
【0030】
マレイミド、ナジイミド、及びイタコンイミドは、また、1〜6のmの範囲、0及び6の間のpの範囲を有してもよく、Jは以下の群から選択してよい。
アルキル鎖上の置換基又はアルキル鎖骨格の一部として、任意選択で置換されたアリール部分を任意選択で含有し、アルキル鎖が約20までの炭素原子を有する、飽和の直鎖アルキル又は分岐鎖アルキル、
以下の構造を有するシロキサン
−(C(R−[Si(R−O]−Si(R−(C(R−、−(C(RC(R)−C(O)O−(C(R−[Si(R−O]−Si(R−(C(R−O(O)C−(C(R−、又は−(C(R−C(R)−O(O)C−(C(R−[Si(R−O]−Si(R−(C(R−C(O)O−(C(R
(式中、各Rは独立に水素、アルキル又は置換アルキルであり、各Rは独立に水素、低級アルキル又はアリールであり、dは1〜10の範囲であり、eは1及び10の間の範囲であり、fは1〜50の範囲である。)、
以下の構造を有するポリアルキレンオキシド
[(CR−O−]−(CR
(XII)
(式中、各Rは独立に水素、アルキル又は置換アルキルであり、rは1及び10の間であり、sは1及び10の間であり、fは1〜50の範囲である。)、
以下の構造を有する芳香族基
【0031】
【化4】
(式中、各Arは3〜10の範囲の炭素原子を有する一置換、二置換、若しくは三置換の芳香族又は複素芳香族環であり、Zは、アルキレン鎖上の置換基として又はアルキレン鎖骨格の一部として、任意選択で飽和の環状部分を有する、飽和の直鎖アルキレン又は分岐鎖アルキレンである。)、
以下の構造を有するポリアルキレンオキシド
−[(CR−O−]−(CR
(XIV)
(式中、各Rは独立に水素、アルキル又は置換アルキルであり、rは1及び10の間であり、sは1及び10の間であり、qは1〜50の範囲に入る。)、
以下の構造を有する二置換又は三置換芳香族部分
【0032】
【化5】
(式中、各Rは独立に水素、アルキル又は置換アルキルであり、tは2〜10の範囲に入り、uは2〜10の範囲に入り、Arは3〜10の範囲の炭素原子を有する一置換、二置換、若しくは三置換の芳香族又は複素芳香族環である。)、
以下の構造を有する芳香族基
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
(式中、各Rは独立に水素、アルキル又は置換アルキルであり、tは2〜10であり、kは1、2又は3であり、gは1〜約50の範囲であり、各Arは上記に定義された通りであり、Eは−O−又は−NR−(Rは水素又は低級アルキル)であり、Wは直鎖又は分岐鎖のアルキル、アルキレン、オキシアルキレン、エステル、又はポリエステル、以下の構造を有するシロキサンである。)
−(C(R−[Si(R−O]−Si(R−(C(R−、−(C(RC(R)−C(O)O−(C(R−[Si(R−O]−Si(R−(C(R−O(O)C−(C(R−、又は−(C(R−C(R)−O(O)C−(C(R−[Si(R−O]−Si(R−(C(R−C(O)O−(C(R
(式中、各Rは独立に水素、アルキル又は置換アルキルであり、各Rは独立に水素、低級アルキル又は置換アリールであり、d及びeはそれぞれ1〜10であり、fは1〜50である。)、
任意選択で、水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、ニトリル基、シクロアルキル基、又はシクロアルケニル基から選択される置換基を含む、以下の構造を有するポリアルキレンオキシド
−[(CR−O−]−(CR
(XXII)
(式中、各Rは独立に水素、アルキル又は置換アルキルであり、r及びsはそれぞれ1〜10の範囲であり、fは1〜50である。)、
以下の構造を有するウレタン基
U−C(O)−NR−R−NR−C(O)−(O−R−O−C(O)NR−R−NR−C(O))−U−R
(XXIII)
[式中、各Rは独立に水素又は低級アルキルであり、各Rは独立に1〜18の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、又はアリールアルキル基であり、各Rは、任意選択でArにより置換される、鎖中に約100までの原子を有するアルキル鎖又はアルキルオキシ鎖であり、vは0〜50の範囲であり、Uは−O−、−S−、−N(R)−、又は−P(L)1,2である。(式中Rは上記に定義される通りであり、各Lは独立に=O、=S、−OR、又は−Rである。)]、
多環状アルケニル、又はそれらの任意の2種以上の混合体。
【0039】
特に望ましいマレイミド含有化合物としては、二つのマレイミド基を有し、それらの間にフェニル、ビフェニル、ビスフェニル又はナフチル連結部などの芳香族基をもつマレイミド含有化合物が挙げられる。
【0040】
無水物は、例えば約0.01〜約0.5%の範囲内などの、約1.0重量%までの量にて使用されるべきであり、望ましくは約0.05〜約0.2重量%の範囲内で使用される。
【0041】
マレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物は、例えば約0.01重量%〜約3重量%、約0.1重量%〜約2重量%などの約5重量%までの量にて存在すべきであり、約1重量%で用いることが特に望ましい。
【0042】
望ましくは、無水物は、約0.01重量%〜約0.5重量%までの量にて使用されるべきであり、マレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物は、約0.1重量%〜約2重量%の量にて使用されるべきである。
【0043】
本発明のシアノアクリレート組成物中には、カリックスアレーン及びオキサカリックスアレーン、シラクラウン、クラウンエーテル、シクロデキストリン、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ヒドロキシル化合物(ethoxylated hydric compounds)及びそれらの組み合わせより選択されるいずれかの1種又は2種以上などの促進剤もまた、含まれる場合がある。
【0044】
カリックスアレーン及びオキサカリックスアレーンについては、その多くが公知であり、特許文献に報告されている。例えば、それらのそれぞれの開示がこれにより明示的に本明細書に援用される、米国特許第4,556,700号、第4,622,414号、第4,636,539号、第4,695,615号、第4,718,966号、及び第4,855,461号を参照のこと。
【0045】
例えば、カリックスアレーンに関しては、以下の構造の範囲内のものが、本発明において有用である。
【0046】
【化12】
式中、Rはアルキル、アルコキシ、置換されたアルキル又は置換されたアルコキシであり、RはH又はアルキルであり、nは4、6又は8である。
【0047】
特に望ましい一つのカリックスアレーンは、テトラブチルテトラ[2−エトキシ−2−オキソエトキシ]カリックス−4−アレーンである。
【0048】
多数のクラウンエーテルが公知である。例えば、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ベンゾ−15−クラウン−5−ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、トリベンゾ−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6、ジベンゾ−14−クラウン−4、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、シクロヘキシル−12−クラウン−4、1,2−デカリル−15−クラウン−5、1,2−ナフト−15−クラウン−5、3,4,5−ナフチル−16−クラウン−5、1,2−メチル−ベンゾ−18−クラウン−6、1,2−メチルベンゾ−5、6−メチルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−t−ブチル−18−クラウン−6、1,2−ビニルベンゾ−15−クラウン−5、1,2−ビニルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−t−ブチル−シクロヘキシル−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6及び1,2−ベンゾ−1,4−ベンゾ−5−オキシゲン−20−クラウン−7のいずれかの1種又は2種以上が用いられ得る。その開示がこれにより明示的に本明細書に援用される、米国特許第4,837,260号(Sato)を参照のこと。シラクラウンついても、その多くが公知であり、文献に報告されている。
【0049】
本発明の組成物において有用なシラクラウン化合物の具体的な例としては、
【0050】
【化13】
ジメチルシラ−11−クラウン−4、
【0051】
【化14】
ジメチルシラ−14−クラウン−5、
【0052】
【化15】
及びジメチルシラ−17−クラウン−6が挙げられる。
例えば、その開示がこれにより明示的に本明細書に援用される、米国特許第4,906,317号(Liu)を参照のこと。
【0053】
本発明に関して、多くのシクロデキストリンを使用することができる。例えば、その開示がこれにより明示的に本明細書に援用される、米国特許第5,312,864号(Wenz)に、少なくとも一部がシアノアクリレート中に溶解する、α、β又はγ−シクロデキストリンの水酸基誘導体として記載され権利主張されるシクロデキストリンが、本発明における使用に対して、第1の促進剤成分として適当な選択ということになる。
【0054】
例えば、本発明における使用に好適なポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートとしては、次の構造
【0055】
【化16】
の範囲内のものが挙げられる。式中、nは、例えば3〜12の範囲内などであって3よりも大きく、nが9であることが特に望ましい。より具体的な例としては、PEG 200 DMA(nは約4)、PEG 400 DMA(nは約9)、PEG 600 DMA(nは約14)、及びPEG 800 DMA(nは約19)が挙げられる。但し、数値(例えば400)は、グラム/モル(すなわち、400g/mol)として表記される、当該分子の二つのメタクリレート基を除外したグリコール部分の平均分子量を表す。特に望ましいPEG DMAはPEG 400 DMAである。
【0056】
そして、エトキシル化ヒドロキシル化合物(すなわち、用い得るエトキシ化脂肪族アルコール)について、その適当なものは、次の構造の範囲内のものから選択され得る。
【0057】
【化17】
(式中、Cは直鎖状又は分岐状のアルキル又はアルケニル鎖であることができ、mは例えば5〜20などの1〜30の間の整数、nは例えば5〜15などの2〜30の間の整数であり、RはH又はC1〜6アルキルなどのアルキルであってよい。)
【0058】
使用する場合は、上記構造に包含される促進剤は、組成物中に、全組成物の約0.01重量%〜約10重量%の範囲内の量にて含まれるべきであり、約0.1重量%〜約0.5重量%の範囲であることが望ましく、約0.4重量%が特に望ましい。
【0059】
安定剤パッケージもまた、通常にシアノアクリレート組成物中に見出される。安定剤パッケージは、1種又は2種以上のフリーラジカル安定剤及びアニオン性安定剤を含んでいることがあり、それらのそれぞれの内容及び量は、当業者に周知である。例えば、それらのそれぞれの開示がこれにより本明細書に援用される、米国特許第5,530,037号及び第6,607,632号を参照のこと。
【0060】
所定の酸性物質(クエン酸など)、チクソトロピー剤又はゲル化剤、増粘剤(ポリメチルメタクリレートなど)、着色剤及びそれらの組み合わせなどのその他の添加剤が、本発明のシアノアクリレート組成物中に含まれてもよい。
【0061】
本発明の別の態様において、二つの基材を接合する方法であって、基材の少なくとも一つに上記の組成物を塗布するステップと、その後接着剤を固着させるのに十分な時間、基材を一体にするステップと、を含む方法が提供される。
【0062】
本発明の更に別の態様において、上述の組成物の反応生成物が提供される。
【0063】
本発明の更に別の態様において、上述の組成物の調製方法が提供される。この方法は、シアノアクリレート成分を用意するステップと、シアノアクリレート成分と、無水物及びマレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物とを混合により組み合わせるステップと、を含む。
【0064】
本発明を、以下の実施例により更に説明する。
【実施例】
【0065】
全ての試料は、記載した成分を、約30分間、共に混合することによって調製した。
【0066】
【表1】
【0067】
上記表1に関しては、β−メトキシエチルシアノアクリレートを主成分として7種の試料を調製した。試料番号1は無水物もマレイミドも添加しない対照として用い、試料番号2及び3は異なる濃度で添加したマレイミドを含む対照として用い、試料番号3及び4は異なる濃度で添加した無水物を含む対照として用いた。試料番号6及び7は、無水物の濃度を一定に維持して、無水物及びマレイミドの組み合わせを含んでいた。
【0068】
下記の表2は、これらの7種の試料の湿度及び熱エイジングの結果を示す。より詳細には、7種の試料のそれぞれをグリットブラスト処理軟鋼ラップせん断基材に塗布し、その上に別なグリットブラスト処理軟鋼ラップせん断基材を、ラップせん断接合体において重ね合わされた結合ラインが形成され得るように、ずらした形で接合した。各試料について5個の同一の接合体を作製した。一組の接合体を湿度条件下に、記載した時間置き、その後、接合体の両端に力を加えて、横方向に引き離すことによりラップせん断強度を測定した。他の組の接合体を熱エイジング条件下に、記載した時間置き、同様の方法でラップせん断強度を測定した。
【0069】
【表2】
【0070】
表2から判り得るように、試料番号6及び7についての初期の測定と168時間の湿度エイジング後の測定との間で、両方の強度は維持され、試料番号6及び7についての168時間の熱エイジング後に観測した強度は、試料番号1〜3及び5のいずれとの比較においても、顕著な増加を示す。
【0071】
下記の表3に関しては、上記の表1と同様に、β−メトキシエチルシアノアクリレートを主成分として8種の試料を調製した。試料番号8及び9は無水物もマレイミドも添加しない対照として用い、試料番号11はマレイミドを添加した対照として用い、試料番号10は無水物を添加した対照として用いた。試料番号12〜15は、異なる無水物、一定に維持されたマレイミド濃度で、無水物及びマレイミドの組み合わせを含んでいた。
【0072】
【表3】
【0073】
下記の表4は、これら7種の試料の湿度及び熱エイジングの結果を示す。より詳細には、そして表2に記載される試料と同様に、10種の試料(表3からの8種及び市販のLOCTITE 460及び408)のそれぞれをグリットブラスト処理軟鋼ラップせん断基材に塗布し、その上に、別なグリットブラスト処理軟鋼ラップせん断基材を、ラップせん断接合体において重ね合わされた結合ラインが形成され得るように、ずらした形で接合した。各試料について5個の同一の接合体を作製した。一組の接合体を湿度条件下に、記載した時間置き、その後、接合体の両端に力を加えて、横方向に引き離すことによりラップせん断強度を測定した。他の組の接合体を熱エイジング条件下に、記載した時間置き、同様の方法でラップせん断強度を測定した。
【0074】
【表4】
【0075】
表4から判り得るように、試料番号12〜15についての初期の測定と100時間及び1000時間の湿度エイジング後の測定との間で、全ての強度は維持され、試料番号12及び14〜15についての168時間及び1000時間の熱エイジング後に観測した強度は、試料番号8〜11及び16〜17のいずれとの比較においても、顕著な増加を示す。これらの試料から選択した、湿度及び熱エイジングのデータを示す棒グラフとして、図1及び2もそれぞれ参照のこと。
【0076】
従来のエチルシアノアクリレート組成物は、約80℃の、動作温度の上限を有する。すなわち、そのような温度を超えると、硬化したシアノアクリレート組成物は多くの場合に劣化の開始を示し、従って、結合強度の消失の開始を示す。添加化学物質(無水フタル酸など)は、この限界を上昇せしめたが、そのような添加剤を有するシアノアクリレート組成物は、硬化時間が増加することが問題であり、これは望ましくない知見である。
【0077】
無水物と組み合わせたマレイミド含有化合物、イタコンイミド含有化合物、又はナジイミド含有化合物の使用は、硬化時に向上した耐湿度及び/又は耐熱エイジング性を示すシアノアクリレート組成物の形成を可能とする。
図1
図2