(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246742
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】単一アクション二重偏向機構を有する心房粗動の治療のためのカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/092 20060101AFI20171204BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61M25/00 622
A61M25/00 540
A61M25/00 532
A61M25/092 510
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-560078(P2014-560078)
(86)(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公表番号】特表2015-511855(P2015-511855A)
(43)【公表日】2015年4月23日
(86)【国際出願番号】US2013028562
(87)【国際公開番号】WO2013130940
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】61/605,886
(32)【優先日】2012年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/781,521
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ソリス・マリオ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ダッタ・ケシャバ
【審査官】
増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−255855(JP,A)
【文献】
特表2008−501489(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/081187(WO,A1)
【文献】
特表2009−537280(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0299344(US,A1)
【文献】
特表2003−509087(JP,A)
【文献】
特開平02−109536(JP,A)
【文献】
特開2004−275765(JP,A)
【文献】
特開2011−229918(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0251519(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0139999(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏向可能なカテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
背及び少なくとも1つのスロットを備えるヒンジ式チューブを有する遠位先端部であって、該背から離れる第1方向での遠位偏向に適し、より少ない剛性を有する、遠位先端部と、
前記カテーテル本体と前記遠位先端部との間の中間偏向可能部分であって、前記第1方向又は第2方向での近位偏向に適し、より大きな剛性を有する、中間偏向可能部分と、
先端電極と、
前記カテーテル本体に近位の制御ハンドルと、
前記カテーテル本体、前記中間偏向可能部分、及び前記ヒンジ式チューブを通って延在する第1及び第2の引っ張りワイヤであって、前記先端電極又はその近くに定着される遠位端をそれぞれ有する、第1及び第2の引っ張りワイヤと、を含み、
前記遠位先端部及び前記中間偏向可能部分が、前記第1及び第2の引っ張りワイヤのどちらかの長手方向の動きによって偏向され、
前記第1の引っ張りワイヤが、前記カテーテルが延在する方向に移動した際に、前記遠位偏向が前記第1方向になり、前記近位偏向が、前記カテーテルが延在する方向に対する垂直方向において、前記第1方向と反対の方向になって、前記第2の引っ張りワイヤが、前記カテーテルが延在する方向に移動した際に、前記遠位偏向および前記近位偏向の双方が前記第1方向になる、偏向可能なカテーテル。
【請求項2】
前記ヒンジ式チューブが、ニチノールで構成される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第1の引っ張りワイヤおよび前記第2の引っ張りワイヤは、前記制御ハンドルの操作により、互いに独立して作動される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記中間偏向可能部分が偏向される前に、前記遠位先端部が偏向される、請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記第1の引っ張りワイヤの近位端が、第1位置で前記制御ハンドルに定着され、前記第2の引っ張りワイヤの近位端が、前記カテーテルが延在する方向に対する垂直方向において、前記第1位置と反対側である第2位置で前記制御ハンドルに定着され、前記第1の引っ張りワイヤおよび前記第2の引っ張りワイヤは、前記第1の引っ張りワイヤおよび前記第2の引っ張りワイヤの長手方向における中間位置で交差しており、前記第1の引っ張りワイヤの遠位端が、前記カテーテルが延在する方向に対する垂直方向において、前記第1位置と反対側である第3位置で前記先端電極に、又はその近くに定着され、前記第2の引っ張りワイヤの遠位端が、前記カテーテルが延在する方向に対する垂直方向において、前記第2位置と反対側である第4位置で前記先端電極に、又はその近くに定着される、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記各引っ張りワイヤが、前記ヒンジ式チューブを通って延在する間に、前記ヒンジ式チューブの一方の側から前記ヒンジ式チューブの他方の側まで180度のクロスオーバーを有する、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記遠位先端部が、前記ヒンジ式チューブを覆うチューブ材を更に含む、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記チューブ材が、熱可塑性材料で構成される、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記ヒンジ式チューブが、前記熱可塑性材料を加熱したときに前記熱可塑性材料が溶融して形成され、前記チューブ材を前記ヒンジ式チューブに固定するノードを受容するのに適した貫通孔を有する、請求項8に記載のカテーテル。
【請求項10】
偏向可能なカテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
背及び少なくとも1つのスロットを備えるヒンジ式チューブを有する遠位先端部であって、該背から離れる第1方向での遠位偏向に適し、より少ない剛性を有する、遠位先端部と、
前記カテーテル本体と前記遠位先端部との間の中間偏向可能部分であって、前記第1方向又は第2方向での近位偏向に適し、より大きな剛性を有する、中間偏向可能部分と、
先端電極と、
前記カテーテル本体に近位の制御ハンドルと、
前記カテーテル本体、前記中間偏向可能部分、及び前記ヒンジ式チューブを通って延在する第1及び第2の引っ張りワイヤであって、前記第1及び第2の引っ張りワイヤが、前記先端電極又はその近くに定着される遠位端、及び前記制御ハンドルに定着される近位端をそれぞれ有する、第1及び第2の引っ張りワイヤと、を含み、
前記第1の引っ張りワイヤの近位端が、第1位置で前記制御ハンドルに定着され、前記第2の引っ張りワイヤの近位端が、前記カテーテルが延在する方向に対する垂直方向において、前記第1位置と反対側である第2位置で前記制御ハンドルに定着され、前記第1の引っ張りワイヤおよび前記第2の引っ張りワイヤは、前記第1の引っ張りワイヤおよび前記第2の引っ張りワイヤの長手方向における中間位置で交差しており、前記第1の引っ張りワイヤの遠位端が、前記カテーテルが延在する方向に対する垂直方向において、前記第1位置と反対側である第3位置で前記先端電極に、又はその近くに定着され、前記第2の引っ張りワイヤの遠位端が、前記カテーテルが延在する方向に対する垂直方向において、前記第2位置と反対側である第4位置で前記先端電極に、又はその近くに定着され、
前記第1の引っ張りワイヤが、前記カテーテルが延在する方向に移動した際に、前記遠位偏向が前記第1方向になり、前記近位偏向が、前記カテーテルが延在する方向に対する垂直方向において、前記第1方向と反対の方向になって、前記第2の引っ張りワイヤが、前記カテーテルが延在する方向に移動した際に、前記遠位偏向および前記近位偏向の双方が前記第1方向になる、偏向可能なカテーテル。
【請求項11】
前記ヒンジ式チューブが、ニチノールで構成される、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記カテーテルが、前記制御ハンドルから前記先端電極内へと延在する潅注チューブ材を更に含む、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記少なくとも1つのスロットが深さによって異なる幅を有する、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記少なくとも1つのスロットが、深さと共に増大する幅を有する、請求項13に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記ヒンジ式チューブが少なくとも4つのスロットを有する、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記遠位先端部が、前記中間偏向可能部分より前に偏向される、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記中間偏向可能部分が、複数管腔を有するチューブ材を含む、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記複数管腔を有するチューブ材が、一対の前記カテーテルが延在する方向に対する垂直方向に向かい合った管腔を有し、各引っ張りワイヤが前記一対の前記カテーテルが延在する方向に対する垂直方向に向かい合った管腔のうちの対応の1つを通って延在する、請求項17に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記ヒンジ式チューブが、0〜90度の偏向に適合している、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記遠位先端部が、前記ヒンジ式チューブを覆う熱可塑性チューブ材を含む、請求項10に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2012年3月2日に出願された米国仮出願第61/605,886号の優先権及び利益を主張するものであり、その全体の内容は参照として組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、心不整脈、特に心房粗動の治療のためのカテーテル及びアブレーションの使用方法に関する。特に、このカテーテル及び方法は、単一アクション二重偏向機構を使用して電気生理学者に心不整脈、特に心房粗動の治療に有用なカテーテルを提供する。
【背景技術】
【0003】
特に心房粗動及び心房細動などの心不整脈は、特に高齢者集団では、一般的かつ危険な病状として存続する。正常の洞律動を有する患者では、心房、心室及び興奮伝導組織を含む心臓は、電気的に興奮して、同期的な、パターン化した形で拍動する。心不整脈の患者では、心臓組織の異常な領域は、正常の洞律動を有する患者のように通常の導電組織に結びついた同期的な拍動周期に従わない。これに対して、心組織の異常領域では隣接組織への伝導が異常であり、これにより心周期が乱れて非同期的な心律動となる。こうした異常伝導は、例えば、房室(AV)結節及びヒス束の伝導経路に沿った洞房(SA)結節の領域、又は心室及び心房室の壁を形成する心筋組織など、心臓の様々な領域で生じることがこれまでに知られている。
【0004】
心房性不整脈を含む心不整脈は、心房室の回りで散乱し、かつしばしば自己増殖する電気インパルスの複数の非同期的ループを特徴とする、マルチウェーブレットリエントラント型となる可能性がある。マルチウェーブレットリエントラント型に代わって又はそれに加えて、心不整脈はまた、心房の組織の孤立領域が、急速で反復的な様式で自律的に興奮する場合など、局所的な起源を有することもある。心室性頻脈症(V-tach又はVT)は、心室のうちの1つにおいて起こる頻脈症又は高速な心律動である。これは、心室細動及び突然死につながり得るため、場合によっては重篤な不整脈となる。
【0005】
別の型の不整脈は、心房粗動(AFL)である。心房粗動は、心臓の心房で発生する異常な心律動である。最初に発生するとき、心房粗動は通常頻脈を伴い、上室性頻脈(SVT)に分類される。この律動は、心臓血管疾患又は糖尿病の人に最も多く発生するものの、他の正常な心臓の人に自然に発生する場合がある。それは通常安定した律動ではなく、しばしば心房細動(AF)へと悪化する。したがって、AFLの治療が望ましい。心房粗動のリエントラント性のため、心房粗動を引き起こす回路を焼灼することがしばしば可能である。これは、電気生理学研究室で心房粗動を引き起こす回路の経路を横切る瘢痕組織の隆起部を発生させることによって行われる。上記の峡部のアブレーションは、典型的な心房粗動の一般的な治療である。現今医師は、粗動の症状の間に組織に垂直に先端電極を利用してから、この先端を組織上で引いて直線的に焼灼しており、本発明により医師は先端電極を単一の引き出し動作で組織と平行に位置付けることができるようになる。
【0006】
心房細動は、洞房結節によって生成される通常の電気インパルスが、心房及び肺静脈内で生じる無秩序な電気インパルスによって圧倒され、不規則なインパルスが心室に伝導する場合に発生する。不規則な心拍が結果的にもたらされ、これは、数分から数週間、又は更に数年間、持続する場合がある。心房細動(AF)は、しばしば脳卒中が原因となる死亡のリスクの、僅かな増大につながる、慢性的な症状である場合が多い。リスクは年齢と共に増大する。80歳を超える人口の約8%が、ある程度のAFを有している。心房細動は、無症候性である場合が多く、それ自体は概ね致死性ではないが、動悸、脱力感、失神、胸痛、及び鬱血性心不全をもたらす恐れがある。脳卒中のリスクは、AFの間に増大するが、これは、収縮が不十分な心房及び左心耳内に、血液が溜まって血栓を形成するためである。AFに関する第一選択の治療法は、心拍数を減らすか、又は心律動を通常に戻す、投薬治療である。更には、AFを有する患者は、脳卒中のリスクから守るために、抗凝血剤を与えられる場合が多い。そのような抗凝血剤の使用は、それ自体のリスクである内出血を伴う。一部の患者では、投薬治療は十分ではなく、その患者のAFは、薬剤不応、すなわち、標準的な薬理学的介入では治療不可能であると判断される。同期電気的除細動もまた、AFを通常の心律動に変換するために使用することができる。あるいは、AFの患者は、カテーテルアブレーションによって治療される。しかしながら、そのようなアブレーションは、全ての患者で成功するわけではない。それゆえ、そのような患者に関する、代替的な治療法を有する必要性が存在する。外科的アブレーションは、1つの選択肢であるが、従来外科手術に関連する、付加的なリスクも有する。
【0007】
心不整脈の診断及び治療には、心臓組織、特に心内膜及び心臓容積の電気的特性をマッピングすること、並びにエネルギーの適用によって心臓組織を選択的にアブレーションすることが含まれる。そのようなアブレーションにより、望ましくない電気信号が心臓のある部分から別の部分へと伝播するのを止めるかあるいは修正することができる。このアブレーション処理は、非導電性の損傷部位を形成することによって望ましくない電気経路を破壊するものである。損傷部位を形成するための様々なエネルギー供給の様式がこれまでに開示されており、心組織壁に沿って伝導遮断部分を形成するためのマイクロ波、レーザー、及びより一般的には高周波エネルギーの使用が挙げられる。マッピングに続いてアブレーションを行う2段階の手術においては、通常、1以上の電気センサー(又は電極)を収容したカテーテルを心臓の内部に前進させ、多数の点におけるデータを取得することによって心臓内の各点における電気活動が感知及び測定される。次いでこれらのデータが利用されて、アブレーションが実施される心内膜の標的領域が選択される。
【0008】
電極カテーテルは、長年にわたり医療行為で一般的に用いられている。電極カテーテルは心臓内の電気的活動を刺激及びマッピングし、異常な電気的活動が見られる部位を除去するために用いられる。使用時には、電極カテーテルは大腿動脈などの主要な静脈又は動脈に挿入された後、対象とされる心室内に導かれる。典型的なアブレーション処置は、その遠位端に先端電極を有するカテーテルを、心腔内に挿入することを伴う。参照電極が、一般的には患者の皮膚にテープで貼り付けられるか、あるいは心臓内又は心臓付近に配置されている第2のカテーテルによって、提供される。RF(高周波)電流をアブレーションカテーテルの先端電極に通電すると、先端電極の周囲の媒質(すなわち、血液及び組織)に参照電極に向かって電流が流れる。電流の分布は、組織よりも導電性が高い血液に対して組織と接触した電極表面の量によって決まる。組織の電気抵抗によって組織が加熱する。組織が充分に加熱されると心組織の細胞が破壊され、心組織内に非導電性の損傷部位が形成される。この過程では、加熱された組織から電極自体への伝導によって電極も加熱する。電極の温度が、十分に高くなり、恐らく60℃を上回る場合には、脱水された血液タンパク質の薄く透明な皮膜が、電極の表面上に形成され得る。温度が上昇し続けると、この脱水層が徐々に厚くなり、電極表面に血液が凝固する。脱水された生体物質は心臓内の組織よりも高い電気抵抗を有するため、組織内部への電気エネルギーの流れに対するインピーダンスも高くなる。インピーダンスが十分に高くなると、インピーダンス上昇が起こり、カテーテルを身体から除去して先端電極をきれいにしなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、患者の治療、特に、心房粗動及び心房細動などの心不整脈のアブレーションカテーテルを使用した治療のためのカテーテル及び方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に示されるこの発明は、単一のワイヤ引出しアクションによって可能となる単一アクション二重偏向機構に関連する。この引き出しアクションの間に、1回の近位偏向及び1回の遠位偏向が達成される。カテーテルは、圧縮力下で所望の向きに圧潰するように作製された遠位のニチノールチューブを備えて設計され、近位偏向でカテーテルを偏向する同じ引っ張りワイヤを使用するカテーテルの遠位先端部の遠位偏向を可能にする。作動した単一の引っ張りワイヤによって、近位偏向は選択的に遠位偏向と同じ方向又は反対の方向のどちらかになる。柔軟先端部構造体の内部で、引っ張りワイヤはドーム電極に接続され、次にニチノールチューブを通って近位に延在し、このチューブの反対側の端部から出る。1つの好ましい実施形態では、各引っ張りワイヤは向きが交差して、引っ張り定着部(近位湾曲が形成される柔軟先端部の面)と180度反対側の柔軟先端部管腔に入る。引っ張りワイヤは、次にハンドルピストンなどの固定された定着点までカテーテルの長さを移動する。それに伴って、各引っ張りワイヤの遠位端及び近位端が互いに直径方向に反対の位置に固定される。カテーテルは、より大きな剛性で近位部を、また、より少ない剛性で遠位部を提供するように構成される。そのため、ワイヤが引かれたときにニチノールチューブを圧潰するのに必要な圧縮力は、遠位湾曲が偏向させる最初の湾曲であることが望ましい柔軟先端部を偏向させるのに必要な圧縮力より少なくてよい。より高い引っ張り力で形成されて、近位湾曲は、アブレーションプロセス中に医師がドーム電極の位置付け及び移動の制御を可能にしながら、医師によって右心房の壁部へアクセスするのに使用される。本方法で使用されるアブレーションカテーテルは、アブレーションカテーテルの先端部の位置に関する情報を検証することが可能な、磁気位置センサーなどの、位置センサーを含み得る。
【0011】
単一の機構を使用して二重偏向を生じさせる。本発明は、同じ結果を得るための構成要素の量を最小にする。カテーテルは、迅速な二重偏向のための構成体に固有の単純さを有する。別の特徴はアブレーション処置中のカテーテルの汎用性である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明のこれらの及び他の特徴及び利点は、添付図面と合わせて考慮するとき、以下の詳細な説明を参照することにより、より十分に理解されるであろう。
【
図1】本発明の実施形態によるカテーテルの頂面図である。
【
図2】引っ張りワイヤ及びヒンジ式チューブを示す、
図1のカテーテルの遠位先端部の透視図である。
【
図3A】近位偏向における中間部分及び同じ方向の遠位偏向における遠位先端部を有する二重アクション偏向を描く、
図1のカテーテルの頂面図である。
【
図3B】近位偏向における中間部分及び反対の方向の遠位偏向における遠位先端部を有する二重アクション偏向を描く、
図1のカテーテルの側面図である。
【
図4A】第1直径に沿って取った、カテーテル本体と中間区分との間の連結部を含む、
図1のカテーテルの側断面図である。
【
図4B】第1直径に対してほぼ垂直な第2直径に沿って取った、カテーテル本体と中間区分との間の連結部を含む、
図1のカテーテルの側断面図である。
【
図5A】第1直径に沿って取った、中間部分と遠位先端部との間の接合部を含む、
図1のカテーテルの側断面図である。
【
図5B】第1直径に対してほぼ垂直な第2直径に沿って取った、中間区分と遠位先端部との間の連結部を含む、
図1のカテーテルの側断面図である。
【
図6A】線A−Aに沿って取った、
図5A及び5Bのカテーテルの末端部断面図である。
【
図6B】線B−Bに沿って取った、
図5A及び5Bのカテーテルの末端部断面図である。
【
図6C】線C−Cに沿って取った、
図5A及び5Bのカテーテルの末端部断面図である。
【
図6D】線D−Dに沿って取った、
図5A及び5Bのカテーテルの末端部断面図である。
【
図7A】本発明の実施形態による、ヒンジ式チューブの斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態による、カテーテルに基づいた医学システムの概略描写図である。
【
図9】右心房で使用中の
図8のカテーテルの断面図である。
【
図10A】遠位偏向を有する、本発明の実施形態によるカテーテルの平面図である。
【
図10B】(全偏向で)一方向の遠位偏向及び(部分偏向で)二方向の近位偏向を有する、本発明の実施形態によるカテーテルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び2を参照すると、本明細書に示され、記載される本発明は、細長いカテーテル本体12と、二方向の偏向を有する中間部分14と、一方向の偏向を有する柔軟遠位先端部15と、一対の引っ張りワイヤ36A及び36Bと、を有するカテーテル10に関連し、カテーテル10は、単一のワイヤ引出しアクションによって可能となる単一アクション二重偏向機構を提供する。このアクションの間に、中間部分14及び遠位先端部15の両方の偏向は、偏向つまみ13を介した単一のワイヤ引出しアクションによって得られ、中間部分14の偏向(又は近位偏向PD)の方向及び遠位部分15の偏向(又は遠位偏向DD)の方向は、どの単一ワイヤがユーザーによって作用されるかによって、同じ方向(
図3A)又は反対の方向(
図3B)であってよい。カテーテルの柔軟遠位先端部15は、圧縮力下で所望の向きに圧潰するように適用されたヒンジ式チューブ50を備えて設計され、所定の一方向の遠位偏向DD及び選択的な二方向の近位偏向BDの形態を可能にする。
【0014】
図4A及び4Bを参照すると、カテーテル本体12は、1個の軸方向又は中央管腔18を有する細長い管状構造を含む。カテーテル本体は、可撓性、即ち折曲可能であるが、その長さに沿っては実質的に非圧縮性である。カテーテル本体は、任意の適切な構造とすることができ、任意の適切な材料で作製することができる。現在好ましい構成体は、ポリウレタン又はPEBAXで作製された外壁20を含む。外壁はまた、ステンレス鋼等の埋め込まれた編組メッシュを含んでよく、カテーテル本体のねじり剛性を上昇させ、その結果、制御ハンドル16が回転するとき、カテーテルの中間部分14は対応する方向に回転する。
【0015】
カテーテル本体の外径はそれほど重要ではないが、好ましくは約8フレンチ以下、より好ましくは7フレンチである。同様に外壁の厚さもそれほど重要ではないが、外壁は、中央管腔が引っ張りワイヤ、リード線、及び他の任意の所望のワイヤ、ケーブル、又は潅注チューブ材などのチューブ材を収容できるように充分に薄い。必要に応じて、外壁20の内面は、捻り安定性を向上させるために補強管22で裏打ちされる。
【0016】
制御ハンドル16と偏向可能部分14との間に延在する要素は、カテーテル本体12の中央管腔18に通過させられる。これらの要素としては、先端ドーム電極17(及び任意のリング電極21)用で遠位部分15上の先端ドーム電極に近接のリード線40と、遠位部分に流体を送達するための潅注チューブ材38と、近位及び遠位の偏向を引き起こすための引っ張りワイヤ36A及び36Bと、遠位先端部15で温度を検知する一対の熱電対ワイヤ44及び45と、が挙げられる。
【0017】
図4A及び
図4Bでは、チューブ材19の短い区域を備える中間部分14の一実施形態を図示する。このチューブ材もやはり編組されたメッシュの構造を有しているが、管腔26、27、28及び29のような軸線から外れた複数の管腔を有している。第1の管腔26は、先端電極17及びリング電極21用のリード線40を収容している。第2の管腔27は、潅注チューブ材38を収容している。それぞれ直径方向に向かい合った第3及び第4の管腔28及び29は、引っ張りワイヤ36A及び36Bを収容している。中間部分14のチューブ材19は、カテーテル本体12よりも高い可撓性を有する適当な毒性の無い材料で形成されている。チューブ材19に適した材料は、編組ステンレス鋼などのメッシュが包埋された編組ポリウレタンである。それぞれの管腔の大きさは重要ではないが、それを通して延在するそれぞれの構成要素を格納するのに十分である。
【0018】
カテーテル本体12を中間部分14に取り付ける手段が、
図4A及び4Bに示されている。中間部分14の近位端は、カテーテル本体12の外壁20の内側表面を受容する外周ノッチ25を備えている。中間部分14及びカテーテル本体12は、糊等により取り付けられる。必要に応じて、スペーサ(図示せず)を、カテーテル本体内の、補強管の遠位端(提供される場合)と中間部分の近位端との間に配置できる。スペーサは、カテーテル本体と中間部分との間の接合部で可撓性の変化をもたらし、これにより接合部が折り畳まれる又はよじれることなく滑らかに曲がることが可能になる。このようなスペーサを有するカテーテルは、米国特許第5,964,757号に開示され、この開示は参考として本明細書に組み込まれる。
【0019】
各引っ張りワイヤ36A及び36Bは、Teflon(登録商標)でコーティングされることが好ましい。これらは、例えばステンレス鋼又はNitinolなどの任意の好適な金属で形成され、Teflonコーティングによって引っ張りワイヤに潤滑性を付与することができる。各引っ張りワイヤは、約0.15mm〜約0.25mm(約0.006〜約0.010インチ)の範囲の直径を有することが好ましい。
【0020】
図4Bに例示するように、カテーテル本体12の各引っ張りワイヤの部分は、それらに包囲関係をなす対応の圧縮コイル35A及び35Bを通過する。各圧縮コイル35は、カテーテル本体12の近位端から、中間部分14の近位端又はその付近へと延びる。圧縮コイルは、任意の好適な金属、好ましくはステンレス鋼で作製され、それ自体にきつく巻かれることによって、可撓性、すなわち屈曲性をもたらす一方で圧縮には抗するようになっている。圧縮コイルの内径は好ましくは、引っ張りワイヤの直径よりもわずかに大きなものである。カテーテル本体12内で、各圧縮コイルの外側表面はまた、例えばポリイミドのチューブ材でできた、可撓性の非電導性シース39A及び39Bで被覆されている。圧縮コイルの遠位にある各引っ張りワイヤの部分は、引っ張りワイヤが偏向中に中間部分14のチューブ材19に切り込むのを防止するために、例えばTEFLON(登録商標)の保護プラスチックシース(図示せず)を通って延在してもよい。各引っ張りワイヤの近位端は、制御ハンドル16に固定される。遠位端は、更に後述するように先端ドーム電極17に固定される。
図5A及び5Bを参照すると、遠位先端部15は、中間偏向可能部分14のチューブ材19の遠位端から延在する。遠位先端部15は、
図7A〜7Fに示すように、管腔56、遠位端51D、近位端51P、長さL及び直径Dを備える中空円筒体51を有するヒンジ式チューブ50を含む。本発明の形体に従って、本体は、本体の長さに沿って延在する背54にほぼ垂直である、複数N個(Nplurality)の横スロット52を有し、その間に複数(N−1)個のヒンジ53を画定する。各スロット52(又はヒンジ53)は、同じ深さd及び幅wを有する。
図7Cの例示の実施形態では、各スロットに対し、幅wは深さdの増大に伴い増大する(又はつまり、各ヒンジに対し、その幅wは深さdの増大に伴い減少する)。スロット52は、放電加工(EDM)又はレーザー加工によってカット又は形成される。チューブの構成体に好適な材料は、金属及び金属合金、例えばニチノール、である。
【0021】
例示の実施形態では、チューブ50は、約5.08〜25.4mm(約0.2インチ及び1.0インチ)の範囲の長さを有し、4つのスロット(つまり3つのヒンジ)を備える。有利なことに、スロット52及びヒンジ53の構成又は「ピッチ」は(複数の、角形成、幅、及び深さを含む)、チューブ50が圧縮力を受けたときに、他の偏向方向にかかわらずカテーテルに沿って背54から離れる方向へ、所定の方法で偏向できるようにする。圧縮されると、ヒンジ式チューブ50は、遠位端51Dの、近位端51Pに対して0〜90度背から離れる方向への偏向を可能にする(
図3A及び3B)。
【0022】
図5A及び5Bを参照すると、チューブ50は、チューブ材19の遠位端と先端ドーム電極17の近位端との間に延在する非導電性チューブ材55で覆われている。チューブ材55は、加熱及び溶融されてチューブ50に固着することができる熱可塑性材料で構成され得る。その点については、貫通孔57が、チューブ材55をチューブ50に固定するノード59を形成するために、チューブの遠位及び近位端51D及び51Dで提供される。あるいは、糊又は他の粘着剤をチューブ材55とチューブ50との間に適用し、チューブ材55をチューブ50に固定するノードを形成することができる。
【0023】
中間偏向可能部分の管腔から、チューブ50の中空体51の管腔56を通って延在するものは、先端電極17用のリード線40、熱電対ワイヤ44及び45、潅注チューブ材38、並びに引っ張りワイヤ36A及び36Bである。これらの構成要素は先端ドーム電極17へと更に延在する。
【0024】
先端ドーム電極17の近位端は、チューブ50の遠位端内でぴったり合うように穿孔される。チューブ材55の遠位端は、先端ドーム電極17の穿孔された近位端にぴったり合って、
図5A及び5Bに示すような滑らかな輪郭を提供する。先端ドーム電極17の近位面は、潅注チューブ材38の遠位端を受容する中央導管58を有する。導管58は、先端ドーム電極17を通り軸方向に延在し、先端ドーム電極17の外側へ通じる潅注ポート62と連通する横枝管60と連通する。潅注チューブ材38を通って輸送される流体は、導管58、横枝管60、及びポート62を経由して、先端ドーム電極17及びその外側に送達される。
【0025】
カテーテルはまた、本方法で使用するための先端アブレーション電極を通る改善された潅注流を有する。このカテーテルは、参照により本明細書に組み込まれる、2010年4月29日出願の米国特許出願第12/770,582号に、更に詳細に記載されている。先端電極は、先端電極内への流体の流れを促進し、先端電極の外面上の全ての位置での、より均一な流体の通達範囲及び流れを提供する際の、先端電極内での流体の分散を促進するように構成される。したがってこのカテーテルは、従来の電極の冷却よりも、より低い流体負荷をより低い流速で患者に用いて、先端電極を効果的に冷却することができる。更に、先端電極における流体の流出速度が大きいことにより、先端電極の周囲に流体の境界層を形成するうえで有効な「噴射」作用が与えられ、これによりアブレーションの際の焦げ及び/又は血栓の発生率が低減される。先端電極からアブレーション部位に、例えば生理食塩水又はヘパリン加生理食塩水などの流体が輸送されることによって組織を冷却し、血液の凝固を低減し、かつ/又はより深い損傷部位の形成を促すことができる。神経阻害剤及び神経興奮剤などのあらゆる診断用及び治療用の流体を含む他の流体を同様に供給することも可能である点は理解されるであろう。
【0026】
先端ドーム電極17の近位面はまた、先端電極リード線40の遠位端を受容するための止まり穴64、並びに熱電対ワイヤ44及び45の遠位端用の止まり穴66を含む、複数の止まり穴を有する。引っ張りワイヤ36A及び36Bの遠位端(thedistal ends)が中に定着される止まり穴68及び70もまた存在する。
【0027】
そのように定着されるので、各引っ張りワイヤ36A及び36Bは、ユーザーによって制御ハンドル16上の偏向つまみ13(
図1)の操作を介して別々に作動され、遠位偏向DDについては遠位先端部15をより小さい作動力の下で背54から離れる方向に、続いて近位偏向PDについては中間部分14をより大きな作動力の下で同じ方向(
図3A)又は反対の方向(
図3B)のどちらかに、最初に偏向させる引っ張りワイヤの軸の力を生じさせることができる。とりわけ引っ張りワイヤが近位方向に引き出される際、中間部分14が偏向する前に遠位先端部15を偏向させるため、遠位部15は(チューブ50と共に)より少ない剛性を有し、中間部分14はより大きな剛性を有し、したがって、ニチノールチューブ50の圧潰に必要な圧縮力は、中間部分14の偏向に必要な力より小さい。近位偏向PDは、カテーテルオペレーターにとって心臓の右心房へのアクセスを容易にし、またオペレーターにアブレーションプロセス中の先端ドーム電極の動きに対する改善された制御を提供する。
【0028】
先端ドーム電極17の引っ張りワイヤの遠位端を定着するための止まり穴68及び70は、直径方向に向かい合っており、一般に中間部分14の直径方向に向かい合った第3及び第4の管腔28及び29によって画定される同じ平面に位置し、この管腔を通って引っ張りワイヤ36A及び36Bが延在する、引っ張りワイヤ36A及び36Bは、それらがチューブ50を通過して先端ドーム電極内へ通るときに、チューブ材19内の対応する管腔と軸方向に整列されるように、カテーテルの対応する面に残っていてよいが、本発明の機能は、引っ張りワイヤにおいて、各引っ張りワイヤの遠位端が引っ張りワイヤの近位端の直径方向の反対側に定着されるように、チューブ50の一方の側からチューブ50の他方の側まで180度のクロスオーバーを提供する。このクロスオーバーは、遠位先端部が偏向中に捻れる傾向を低減することによって、「平面上」にあるように遠位先端部15の偏向を有利に維持する。
【0029】
このニチノールチューブ及び関連機構は、先端部を偏向させる単一のアクションによって、先端部分を組織に平行に配向することができるようになる。
【0030】
カテーテル10の遠位先端部15は、単一の機構内で達成される2つの偏向の結果、遠位端での偏向に必要な単一アクションの非常に低い力を使用して、近位偏向及び遠位偏向を含む制御された角度をなす偏向を含む、多くの利益及び利点を提供する。
【0031】
他の実施形態は、チューブ50がこの概念内で位置付けられている同じ位置での部分的に平坦なブレードの使用を含む。
【0032】
この概念は、潅注された、又は潅注されない先端ドーム電極で使用することができる。
【0033】
この概念はまた、遮蔽を避けるためにニチノールチューブの下に設置されるナビゲーションセンサー(磁器センサー)と共に使用することができる。
【0034】
図8は、当該技術分野において既知のような心臓カテーテル法のための従来のシステム120の概略描写図である。システム120は、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)製造のCARTO(商標)システムに基づいてもよい。このシステムは、カテーテル128の形態の侵襲性プローブ及び制御コンソール134を含む。以降で説明する実施形態では、カテーテル128は、当該技術分野において既知であるように、心内膜組織をアブレーションする際に使用される。もう1つの方法として、このカテーテルは、変更すべきところを変更して、心臓又は体内の他の臓器の治療的及び/又は診断的目的で使用することができる。
図7に示されるように、カテーテル28は、細長いカテーテル本体11と、偏向可能な中間部分12と、その遠位先端30に少なくとも先端電極15を担持する遠位部13と、制御ハンドル16とを備える。
【0035】
インターベンショナル心臓内科医又は電気生理学者などのオペレーター126は、
図9に示すようにカテーテルの遠位端が患者の心室に入るように患者の血管系を介して、本発明のカテーテル128を挿入する。オペレーターは、カテーテルの遠位先端が、右心房130を含む、所望の場所で心内膜組織と係合するように、カテーテルを前進させる。カテーテルは、典型的には、その近位端で、好適なコネクタによってコンソールに接続される。コンソール134は、高周波(RF)発生器を備え、それは、遠位先端部15によって係合される位置において、カテーテルを介して心臓内の組織を焼灼するための高周波電気エネルギーを供給する。あるいは、このカテーテル及びシステムは、冷凍アブレーション、超音波アブレーション、又はマイクロ波エネルギーの使用を通じたアブレーションなどの、当該技術分野において既知である他の技術によって、アブレーションを実行するように構成することができる。
【0036】
コンソール134は、磁気位置検出を使用して患者の心臓内の遠位端の位置座標を決定してもよい。この目的のために、コンソール134内の駆動回路138が、磁場発生器F1、F2、及びF3を駆動し、患者の身体内部に磁場を生成する。典型的には、この磁場発生器は、患者胴体の下方の、患者の外部の既知の位置に設置されるコイルを含む。これらのコイルは、心臓を包含する既定の作業ボリューム内に磁場を発生させる。カテーテルの遠位端内部の磁場センサーが、これらの磁場に反応して電気信号を生成する。信号プロセッサは、典型的に、ロケーション及び姿勢座標の両方を含む遠位端部15の位置座標を決定するために、これら信号を処理する。この位置検知法は、上記のCARTOシステムにおいて実行されており、その詳細が、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455 A1号、同第2003/0120150 A1号及び同第2004/0068178 A1号に開示されており、その開示事項は参照により本願に組み込まれる。
【0037】
システムのプロセッサは、典型的に、カテーテルから信号を受信し、コンソールの他のコンポーネントを制御するための好適なフロントエンド回路及びインターフェース回路を備える汎用コンピュータ136を含む。このプロセッサは、本明細書で説明される機能を実行するように、ソフトウェアでプログラムすることができる。このソフトウェアは、例えばネットワークを通じて電子的形態でコンソールにダウンロードされることができる。若しくは、ソフトウェアは、光学的、磁気的、又は電子的記録媒体などの実体のある媒体により提供されることができる。それに代わって、プロセッサ136の機能の一部又は全てが、専用の又はプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。カテーテル、及びシステムの他の構成要素から受け取った信号に基づいて、プロセッサは、ディスプレイを駆動して、患者身体内での遠位端の位置に関する視覚的フィードバック、並びに進行中の処置に関する状況情報及びガイダンスを、オペレーターに与える。
【0038】
図8に示すように、先端ドーム電極17は、オペレーター126が遠位偏向DDを有する遠位先端部15を、ニチノールチューブ50の背54(
図10A)から離れる方向に最初に偏向させる初期の力で、選択した引っ張りワイヤを引き出すための制御ハンドル16の偏向つまみ13(
図1)を介したカテーテルの操作によって右心房130内の組織に接して配置される。選択した引っ張りワイヤをより大きな力で更に引き出すと、中間部分14は、どの単一引っ張りワイヤをオペレーターが引き出すかに応じて遠位偏向と同じ方向か、又は反対の方向のどちらかである近位偏向で追従する(
図10B)。例えば、引っ張りワイヤ36B(背54と同じ面の先端電極17に定着された引っ張りワイヤ)の引き出しは、遠位偏向DD及び同じ方向の近位偏向PD1をもたらし、引っ張りワイヤ36A(背54と反対に先端電極に定着された引っ張りワイヤ)の引き出しは、遠位偏向DD及び反対方向の近位偏向PD2をもたらす。
【0039】
電極17及び21は、生体適合性合金を含む、生体適合性金属製である。適当な生体適合性合金としては、ステンレス鋼合金、貴金属合金、及び/又はこれらの組み合わせから選択される合金が挙げられる。別の実施形態では、先端電極は、約80重量%のパラジウム及び約20重量%のプラチナからなる合金で形成されるシェルである。別の実施形態では、シェルは、約90重量%の白金及び約10重量%のイリジウムからなる合金で形成される。シェルは、取り扱い、患者の身体を通る輸送、並びにマッピング及びアブレーション処置中の組織接触のために好適である、十分に薄いが頑丈なシェル壁を製造する、深絞り製造プロセスによって形成することができる。開示される実施形態では、シェル壁は、通常、約0.076mm〜0.254mm(約0.003インチ〜0.010インチ)、好ましくは約0.076mm〜0.102のmm(約0.003インチ〜0.004インチ)、更に好ましくは、約0.089mm(0.0035インチ)の範囲の均一な厚さを有する。深絞り法は充分に薄い壁を有するシェルを製造するのに非常に適しているが、ドリル穿孔及び/又はキャスティング/型成形などの他の方法を用いることもできる点は理解されるであろう。
【0040】
1つの潅注された先端電極では、6つの外周の列に配置構成される、56個のポートが存在し、5つの列R1〜R5は、それぞれ10個のポートを有し、遠位の列R6は、6個のポートを有する。列R1〜R5のポートは互いにほぼ等間隔であるが、隣り合う列のポートは互いにオフセットしているために、各ポートは4個又は6個の隣接するポートから等間隔となっている。最も遠位側の10個のポートからなる列R5は、丸みを帯びたシェルの遠位側部分に配置されている。列(又は円)R6は、シェルの平坦又はほぼ平坦な遠位端53に配置されている。列R6の6個のポートは、円上で等角度に配置されている。
【0041】
連結チューブ材上に載置されるリング電極は、白金又は金、好ましくは白金とイリジウムとの組み合わせなどの、任意の好適な固体導電性材料で作製することができる。リング電極は糊等で連結チューブ材の上に取り付けることができる。あるいは、リング電極は、プラチナ、金及び/又はイリジウムのような導電性材料でチューブ材をコーティングすることにより形成できる。コーティングは、スパッタリング、イオンビーム蒸着又は等価技術を用いて適用できる。チューブ材上のリング電極の数は、必要に応じて変えることができる。各リングは、単極であっても二極であってもよい。図の実施形態では、遠位側の単極リング電極及び近位側の1対の二極リング電極を有している。各リング電極は、対応するリード線に接続される。先端電極は、リード線によって、アブレーションエネルギーの供給源に電気的に接続される。リング電極は、対応するリード線によって、適切なマッピング又は監視システムに電気的に接続される。
【0042】
心不整脈の特異的治療法に関して、プロセスは、患者の大腿動脈又は上腕動脈内にアブレーションカテーテルを挿入し、心室内へとアブレーションカテーテルを操作して、心臓組織のアブレーションを実行することである。心房細動又は心房粗動の症例では、1つ以上の肺静脈の隔離を達成するために、アブレーションを実行する。アブレーションカテーテルを、例えば、Y.Schwartzによる、表題「Standardization of Catheter Based Treatments for Atrial Fibrillation」の米国特許出願公開第2007/003826号の教示に従って、患者の大腿動脈内の切開、導入カテーテル内に導入し、心房内へと操作する。腎神経の除神経と肺静脈の隔離との組み合わせは、患者の心房細動の再発の、改善された低減を提供し、繰り返し処置の低減をもたらす。
【0043】
上記の説明文は、現時点における本発明の好ましい実施形態に基づいて示したものである。当業者であれば、本発明の原理、趣旨及び範囲を大きく逸脱することなく、本願に述べた構造の改変及び変更を実施することが可能であることは認識されるところであろう。この点において、図面は必ずしも縮尺通りではない。
【0044】
したがって、上記の説明文は、本願に述べられ、以下の添付図面に示される厳密な構造のみに関係したものとして読み取るべきではなく、むしろ、以下の最も完全で公正な範囲を有するとされる「特許請求の範囲」と符合し、かつそれらを補助するものとして読み取るべきである。
【0045】
〔実施の態様〕
(1) 偏向可能なカテーテルであって、
外壁と、近位端及び遠位端と、細長いカテーテル本体を通して延在する少なくとも1つの管腔と、を有する、細長いカテーテル本体と、
近位端及び遠位端と、可撓性チューブ材を通して延在する複数の管腔と、を有する可撓性チューブ材を含む遠位先端部であって、該先端部の該近位端が前記カテーテル本体の該遠位端に固定的に取り付けられている、遠位先端部と、を含み、
前記先端部が、中に形成されるスロットを有するニチノールチューブを更に含み、前記ニチノールチューブが、前記遠位先端部に近位のある点で前記偏向可能なカテーテルを偏向させるのに使用される同じ引っ張りワイヤを使用して前記遠位先端部を偏向させる、偏向可能なカテーテル。
(2) 偏向可能なカテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
背(spine)及び少なくとも1つのスロットを備えるヒンジ式チューブを有する遠位先端部であって、該背から離れる第1方向での遠位偏向に適し、より少ない剛性を有する、遠位先端部と、
前記カテーテル本体と前記遠位先端部との間の中間偏向可能部分であって、前記第1方向又は第2方向での近位偏向に適し、より大きな剛性を有する、中間偏向可能部分と、
先端電極と、
前記カテーテル本体に近位の制御ハンドルと、
前記カテーテル本体、前記中間偏向可能部分、及び前記ヒンジ式チューブを通って延在する第1及び第2の引っ張りワイヤであって、前記先端電極又はその近くに定着される遠位端をそれぞれ有する、第1及び第2の引っ張りワイヤと、を含み、
前記遠位先端部及び前記中間部分が、前記第1及び第2の引っ張りワイヤのどちらかの長手方向の動きによって偏向される、偏向可能なカテーテル。
(3) 前記近位及び遠位偏向が、前記第1の引っ張りワイヤの長手方向の動きによりそれぞれ反対の方向になって、前記近位及び遠位方向の両方が、前記第2の引っ張りワイヤの長手方向の動きによって前記第1方向になる、実施態様2に記載のカテーテル。
(4) 前記中間部分が偏向される前に、前記遠位先端部が偏向される、実施態様3に記載のカテーテル。
(5) 各引っ張りワイヤが、第1直径位置で前記制御ハンドルに定着された近位端を有し、前記各引っ張りワイヤの遠位端が、一般に前記第1直径位置と反対の第2直径位置で前記遠位先端電極に、又はその近くに定着される、実施態様2に記載のカテーテル。
【0046】
(6) 前記各引っ張りワイヤが、前記チューブを通って延在する間に、前記チューブの一方の側から前記チューブの他方の側まで約180度のクロスオーバーを有する、実施態様2に記載のカテーテル。
(7) 前記遠位先端部が、前記チューブを覆うチューブ材を更に含む、実施態様2に記載のカテーテル。
(8) 前記チューブ材が、熱可塑性材料で構成される、実施態様7に記載のカテーテル。
(9) 前記チューブが、前記熱可塑性材料を加熱したときに形成される結節を受容するのに適した貫通孔を有する、実施態様8に記載のカテーテル。
(10) 偏向可能なカテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
背及び少なくとも1つのスロットを備えるヒンジ式チューブを有する遠位先端部であって、該背から離れる第1方向での遠位偏向に適し、より少ない剛性を有する、遠位先端部と、
前記カテーテル本体と前記遠位先端部との間の中間偏向可能部分であって、前記第1方向又は第2方向での近位偏向に適し、より大きな剛性を有する、中間偏向可能部分と、
先端電極と、
前記カテーテル本体に近位の制御ハンドルと、
前記カテーテル本体、前記中間偏向可能部分、及び前記ヒンジ式チューブを通って延在する第1及び第2の引っ張りワイヤであって、前記第1及び第2の引っ張りワイヤが、前記先端電極又はその近くに定着される遠位端、及び前記制御ハンドルに定着される近位端をそれぞれ有し、各引っ張りワイヤの対応する遠位端及び近位端が直径方向に反対の位置に定着されている、第1及び第2の引っ張りワイヤと、を含み、
前記遠位先端部及び前記中間部分が、前記第1の引っ張りワイヤの長手方向の動きによってそれぞれ反対の方向に偏向され、前記遠位先端部及び前記中間部分の両方が、前記第2の引っ張りワイヤの長手方向の動きによって前記第1方向に偏向される、偏向可能なカテーテル。
【0047】
(11) 前記ヒンジ式チューブが、ニチノールで構成される、実施態様10に記載のカテーテル。
(12) 前記カテーテルが、前記制御ハンドルから前記先端電極内へと延在する潅注チューブ材を更に含む、実施態様10に記載のカテーテル。
(13) 前記少なくとも1つのスロットが深さによって異なる幅を有する、実施態様10に記載のカテーテル。
(14) 前記少なくとも1つのスロットが、深さと共に増大する幅を有する、実施態様13に記載のカテーテル。
(15) 前記チューブが少なくとも4つのスロットを有する、実施態様10に記載のカテーテル。
【0048】
(16) 前記遠位先端部が、前記中間偏向可能部分より前に偏向される、実施態様10に記載のカテーテル。
(17) 前記中間偏向可能部分が、複数管腔を有するチューブ材を含む、実施態様10に記載のカテーテル。
(18) 前記複数管腔を有するチューブ材が、一対の直径方向に向かい合った管腔を有し、各引っ張りワイヤが前記一対の直径方向に向かい合った管腔のうちの対応の1つを通って延在する、実施態様17に記載のカテーテル。
(19) 前記チューブが、約0〜90度の偏向に適合している、実施態様10に記載のカテーテル。
(20) 前記遠位先端部が、前記チューブを覆う熱可塑性チューブ材を含む、実施態様10に記載のカテーテル。