(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸水性樹脂粒子を含む吸水剤の製造方法であって、吸水性樹脂粒子と、吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物とを混合する混合工程を含み、上記化合物として、該化合物に含まれる上記反応性基の少なくとも一部が、吸水性樹脂粒子表面に共有結合し、当該疎水基は炭素数8以上の炭化水素基を含み、該炭化水素基の平均炭素数が14〜26であり、当該化合物は、1〜3級アミンの窒素原子数が0であり、上記反応性基として少なくとも2つの水酸基を有し、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルの中から選ばれる少なくとも1種であり、且つ、該化合物の分子量中に占めるオキシアルキレン基の割合が0以上25質量%以下である化合物を用いるとともに、上記吸水性樹脂粒子と前記化合物との混合は、表面架橋の前、及び/又は、表面架橋時に行われ、表面架橋反応時の温度は120℃以上240℃以下であり、上記化合物が溶液又は分散液で混合され、
吸水剤のSFCが10(10−7・cm3・s・g−1)以上、3000(10−7・cm3・s・g−1)以下であり、且つ、前記吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径が100μm以上であることを特徴とする吸水剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に限定されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨、効果を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。また、本発明では重量及び質量、重量%及び質量%は同様の意味であり、文中での使用は質量及び質量%に統一する。
【0053】
まず、以下で使用する略語について定義する。本明細書において、CRC(Centrifuge Retention Capacity)とは遠心分離機保持容量であり、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。また、SFC(Saline Flow Conductivity)とは生理食塩水流れ誘導性であり、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。また、AAP(Absorbency against Pressure)とは4.83kPaの圧力に対する加圧下吸収力であり、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。また、D50(Distribution)とは質量平均粒子径であり、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。また、σζは粒度分布の対数標準偏差であり、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。また、BR(Blocking Ratio)とはブロッキング率であり、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値をいう。また、本明細書において、生理食塩水とは塩化ナトリウム水溶液(0.9質量%)を意味する。
【0054】
本発明にかかる吸水剤は吸水性樹脂粒子を含んでおり、さらに吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物を含んでいるものである。
【0055】
本発明で吸水剤とは、吸水性樹脂粒子を主成分とし、さらに吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物(以下、本明細書において、当該「化合物」のことを「有機系表面添加剤」と称することがある。)を含み、必要により少量の添加剤及び/又は水を含有する、水性液体の吸収固化剤のことを指す。ここで「主成分」とは、吸水性樹脂粒子の含有量が吸水剤全体に対して50質量%以上であることをいう。吸水性樹脂粒子の含有量は吸水剤全体中、より好ましくは60質量%以上99.999質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上99.999質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以上99.999質量%以下であり、特に好ましくは95質量%以上99.999%質量以下であり、最も好ましくは98質量%以上99.999質量%以下である。
【0056】
また、吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物の吸水剤全体に対しての含有量は、好ましくは0.001質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以上5%質量以下、特に好ましくは0.1質量%以上2質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。
【0057】
本発明にかかる吸水剤中の吸水性樹脂粒子及び上記化合物(上記有機系表面添加剤)以外の成分としては、通常は水が主成分とされ、さらには必要に応じて少量の他の添加剤が使用される。
【0058】
なお、上記吸水剤は水性液体の吸収固化剤であるが、かかる水性液体としては、水に限らず、尿、血液、糞、廃液、湿気や蒸気、氷、水と有機溶媒及び/又は無機溶媒との混合物、雨水、地下水など、水を含めば特定に制限されないが、好ましくは、尿、特に人尿を挙げることができる。
【0059】
以下、(1)本発明の吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子、(2)吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物(有機系表面添加剤)、(3)吸水剤の製造方法、(4)吸水剤、(5)吸収体について順に説明する。
【0060】
(1)本発明の吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子
本発明にかかる吸水剤に用いられる吸水性樹脂粒子は水溶性不飽和単量体を重合して得ることができる水不溶性水膨潤性ヒドロゲル形成性重合体(以下、本明細書において、吸水性樹脂のことを水不溶性水膨潤性ヒドロゲル形成性重合体と称することがある。)の粒子である。
【0061】
水不溶性水膨潤性ヒドロゲル形成性重合体の具体例としては、例えば、部分中和架橋ポリアクリル酸重合体(米国特許第4625001号明細書、米国特許第4654039号明細書、米国特許第5250640号明細書、米国特許第5275773号明細書、欧州特許第456136号明細書等)、架橋されて部分的に中和された澱粉−アクリル酸グラフトポリマー(米国特許第4076663号明細書)、イソブチレン−マレイン酸共重合体(米国特許第4389513号明細書)、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体のケン化物(米国特許第4124748号明細書)、アクリルアミド(共)重合体の加水分解物(米国特許第3959569号明細書)、アクリロニトリル重合体の加水分解物(米国特許第3935099号明細書)等を挙げることができる。
【0062】
本発明の吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子は、中でも、上記水溶性不飽和単量体として、アクリル酸及び/又はその塩を含む単量体を重合して得られるポリアクリル酸(塩)系架橋重合体からなる吸水性樹脂の粒子であることがより好ましい。ここで、ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体とは、アクリル酸及び/又はその塩を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む単量体を重合して得られる架橋重合体をいう。
【0063】
また、ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体中の酸基は、その50モル%以上90モル%以下が中和されていることが好ましく、60モル%以上80モル%以下が中和されていることがより好ましい。また、ポリアクリル酸塩としてはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などを例示することができる。中でも、ポリアクリル酸塩はより好ましくはナトリウム塩である。塩を形成させるための中和は重合前に単量体の状態で行っても良いし、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行っても良いし、それらを併用してもよい。
【0064】
本発明にかかる吸水剤に用いられる吸水性樹脂粒子として好ましく用いることができるポリアクリル酸(塩)系架橋重合体は、主成分として用いられる単量体(アクリル酸及び/又はその塩)に併用して、必要により他の単量体を共重合させたものであってもよい。
【0065】
他の単量体の具体例としては、メタアクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸などのアニオン性不飽和単量体及びその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−ビニルアセトアミドなどのノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びそれらの四級塩などのカチオン性不飽和単量体などを挙げることができる。これらアクリル酸及び/又はその塩以外の単量体の使用量は、全単量体中0モル%以上30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは0モル%以上10モル%以下である。
【0066】
本発明で用いられる吸水性樹脂粒子は、内部架橋構造を有する架橋重合体である。上記吸水性樹脂粒子に内部架橋構造を導入する方法としては、架橋剤を使用しないで自己架橋によって導入する方法、1分子中に2個以上の重合性不飽和基及び/又は2個以上の反応性基を有する内部架橋剤を共重合又は反応させて導入する方法等を例示することができる。中でも内部架橋剤を共重合又は反応させて導入する方法を用いることがより好ましい。
【0067】
上記内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ−ト、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール類;エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0068】
これらの内部架橋剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。中でも、得られる吸水性樹脂粒子の吸水特性などから、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を内部架橋剤として必須に用いることがより好ましい。
【0069】
上記内部架橋剤の使用量は全単量体に対して0.005モル%以上3モル%以下であることがより好ましく、より好ましくは0.01モル%以上1.5モル%以下、最も好ましくは0.05モル%以上0.2モル%以下である。
【0070】
重合に際しては、澱粉−セルロース、澱粉−セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子や、次亜リン酸(塩)等の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0071】
また、上記したアクリル酸及び/又はその塩を主成分とする単量体を重合するに際しては、バルク重合、逆相懸濁重合、沈澱重合を行うことが可能であり、性能面や重合の制御の容易さから、単量体を水溶液にする水溶液重合を行うことがより好ましい。かかる重合方法は、例えば、米国特許第4625001号明細書、米国特許第4769427号明細書、米国特許第4873299号明細書、米国特許第4093776号明細書、米国特許第4367323号明細書、米国特許第4446261号明細書、米国特許第4683274号明細書、米国特許第4690996号明細書、米国特許第4721647号明細書、米国特許第4738867号明細書、米国特許第4748076号明細書、米国特許出願公開2002/40095号明細書などに記載されている。
【0072】
重合を行うにあたっては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤、紫外線や電子線などの活性エネルギー線等を用いることができる。また、ラジカル重合開始剤を用いる場合、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス重合としてもよい。これらの重合開始剤の使用量は、全単量体に対して、0.001モル%以上2モル%以下であることが好ましく、より好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下である。
【0073】
上記の重合により得られた吸水性樹脂粒子の形状は、一般には、不定形破砕状、球状、繊維状、棒状、略球状、偏平状等であるが、不定形破砕状であることがより好ましい。吸水性樹脂粒子が不定形破砕状であれば、後述する吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物(有機系表面添加剤)を、吸水性樹脂粒子の表面により効率的に存在させることができる。
【0074】
上記架橋重合体が水溶液重合で得られたものでゲル状である場合、すなわち含水ゲル状架橋重合体(以下、本明細書において含水ゲルと略称することがある)である場合、該含水ゲル状架橋重合体を、乾燥し、乾燥の前及び/又は後で通常粉砕して吸水性樹脂粒子とする。なお、本発明において、乾燥とは固形分の上昇操作をいい、通常、固形分が乾燥前と比較して上昇すればよいが、固形分が85質量%以上、好ましくは90質量%以上、上限は99質量%程度まで上昇することがより好ましい。乾燥は重合と同時に行ってもよく、重合時の乾燥と重合後の乾燥とを併用してもよいが、より好ましくは、重合後に乾燥装置を用いて乾燥する乾燥工程が設けられる。本発明では、乾燥後の吸水性樹脂の固形分は好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。固形分が低くなってしまうと、流動性が悪くなり製造に支障をきたすばかりか、吸水性樹脂が粉砕できなくなり、特定の粒度分布に制御できなくなってしまう場合がある。なお、ここで、吸水性樹脂の固形分とは、後述する測定方法により測定される値をいう。
【0075】
本発明では、乾燥は、乾燥工程の時間の50%以上、より好ましくは実質すべての乾燥工程をとおして100℃〜250℃の範囲で行われる。100℃未満の温度では、吸水性樹脂の内部のポリマー鎖に起こる変化が小さく、そのため十分な内部架橋の効果が得られないと考えられ、そのため諸物性の向上効果が得られない場合がある。さらに、100℃未満の温度では、乾燥に時間がかかる。未乾燥物が大量に発生し、粉砕などの工程に支障をきたす。また、乾燥の温度が250℃以上では、吸水性樹脂にダメージを与えてしまう結果、水可溶分量の上昇が起こり、諸物性の向上効果も見られない場合がある。なお、乾燥温度は熱媒温度で規定するが、マイクロ波など熱媒温度で規定できない場合は材料温度で規定する。乾燥方法としては、乾燥温度が上記100℃〜250℃の範囲内であれば特に限定されるものではなく、熱風乾燥、無風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥などを好適に用いることができる。中でも、熱風乾燥を用いることがより好ましい。熱風乾燥を用いる場合の乾燥風量は、好ましくは0.01〜10m/sec、より好ましくは0.1〜5m/secの範囲である。
【0076】
乾燥温度の範囲はより好ましくは130℃〜220℃、さらに好ましくは150℃〜200℃の温度範囲である。また、乾燥は、一定温度で乾燥してもよく、温度を変化させて乾燥してもよいが、実質、すべての乾燥工程は上記の温度範囲内でなされることが好ましい。
【0077】
乾燥時間は、重合体の表面積、含水率、及び乾燥機の種類に依存し、目的とする含水率になるよう適宜選択される。乾燥時間は、通常10〜120分、より好ましくは20〜90分、さらに好ましくは30〜60分である。乾燥時間が10分未満では、吸水性樹脂粒子の内部のポリマー鎖に起こる変化が小さく、そのため十分な内部架橋の効果が得られないと考えられ、そのため諸物性の向上効果が見られない場合がある。また、乾燥時間が10分未満では、未乾燥物が大量に発生し、粉砕に支障をきたす場合がある。また、乾燥時間が120分以上では、吸水性樹脂にダメージを与えてしまう結果、水可溶分量の上昇が起こり、諸物性の向上効果も見られない場合がある。
【0078】
上記、吸水性樹脂粒子の製造方法で得られた吸水性樹脂は粉砕機によって粉砕される。粉砕は乾燥前、中、後のいずれに行っても良いが、好ましくは乾燥後である。上記粉砕機は特に限定されるものではないが、例えばロールミルのようなロール式粉砕機、ハンマーミルのようなハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、カッターミル、ターボグラインダー、ボールミル、フラッシュミルなどが用いられる。この中でも、粒度分布を制御するためにはロールミルを用いることがより好ましい。粒度分布を制御するため連続して2回以上粉砕することがより好ましく、連続して3回以上粉砕することがさらに好ましい。また、2回以上粉砕する場合には、それぞれの粉砕機は同じであっても異なっていてもよい。異なる種類の粉砕機を組み合わせて使うことも可能である。
【0079】
上記のようにして粉砕された吸水性樹脂粒子を特定の粒度分布に制御するため、特定の目開きの篩で分級してもよい。篩で分級するために用いる分級機は特に限定されるものではないが、たとえば振動篩(アンバランスウェイト駆動式、共振式、振動モータ式、電磁式、円型振動式など)、面内運動篩(水平運動式、水平円−直線運動式、3次元円運動式など)、可動網式篩、強制攪拌式篩、網面振動式篩、風力篩、音波篩などが用いられ、より好ましくは振動篩、面内運動篩が用いられる。また、篩の目開きは好ましくは1000μm〜300μm、より好ましくは900μm〜400μm、さらに好ましくは710μm〜450μmの範囲である。これらの範囲から外れると目的の粒度分布が得られない可能性がある。
【0080】
上記のようにして分級された吸水性樹脂粒子をさらに特定の粒度分布に制御するため、さらに分級することで、特定の粒子径未満の粒子の一部又はすべてを除去してもよい。かかる工程において用いられる分級機も特に限定されるものではないが、たとえば上記で例示されたものが好ましく用いられ、他には微粉型分級装置(遠心力式、慣性力式など)などが用いられる。本工程において、好ましくは粒子径が200μm未満、より好ましくは150μm未満、最も好ましくは106μm未満の粒子径である粒子の、一部又はすべてが除去される。
【0081】
本発明で用いられる吸水性樹脂粒子は、その表面近傍が表面架橋剤である有機表面架橋剤及び/又は水溶性無機表面架橋剤によって表面架橋されていることがより好ましい。このように、吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子はその表面近傍が、表面架橋剤によって架橋されていることにより、膨潤した吸水剤に圧力をかけた際に生じる液の戻り量を減少させることができる。そのため、AAP、言い換えれば、圧力に対する吸収力を高めることができる。
【0082】
表面架橋剤による吸水性樹脂粒子の表面架橋はどの段階で行ってもよいが、より好ましくは吸水性樹脂粒子を特定の粒度分布に制御するための操作を行った後に行われる。また、後述する吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物(有機系表面添加剤)を上記表面架橋剤の溶液に含有させて添加する添加方法は、好ましい添加の一形態として挙げられる。
【0083】
表面架橋処理に用いることのできる表面架橋剤としては、吸水性樹脂粒子の有する官能基、例えば、カルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する有機表面架橋剤及び/又は水溶性無機表面架橋剤を挙げることができる。より好ましくは水溶性有機表面架橋剤を用いることができる。
【0084】
表面架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物や、それらの無機塩ないし有機塩(例えば、アゼチジニウム塩等);2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;尿素、チオ尿素、グアニジン、ジシアンジアミド、2−オキサゾリジノン等の炭酸誘導体;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物、及び、その多価アミン付加物(例えばハーキュレス製カイメン:登録商標);γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール、3−クロロメチル−3−メチルオキセタン、3−クロロメチル−3−エチルオキセタン、多価オキセタン化合物などのオキセタン化合物;等を挙げることができる。
【0085】
上記表面架橋剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも多価アルコールは、安全性が高く、吸水性樹脂粒子の表面の親水性を向上させることができる点で好ましい。
【0086】
上記表面架橋剤の使用量は、吸水性樹脂粒子の固形分100質量部に対して0.001質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0087】
表面架橋剤と吸水性樹脂粒子との混合の際には水を用いてもよい。水の使用量は、吸水性樹脂粒子の固形分100質量部に対して、0.5質量部を越え、10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下の範囲内がより好ましい。
【0088】
また、表面架橋剤又はその水溶液と吸水性樹脂粒子とを混合する際には、親水性有機溶媒や、第三物質を混合助剤として用いてもよい。親水性有機溶媒を用いる場合には、例えば国際公開第2004/069915号に記載された親水性溶媒を用いることができる。
【0089】
親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂粒子の種類や粒径、含水率等にもよるが、吸水性樹脂粒子の固形分100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、0質量部以上5質量部以下の範囲内であることがより好ましい。
【0090】
また、上記第三物質として欧州特許第0668080号明細書に示された無機酸、有機酸、ポリアミノ酸等を存在させてもよい。これらの混合助剤は表面架橋剤として作用するものであっても良いが、表面架橋後に吸水性樹脂粒子の吸水性能を低下させないものが好ましい。本発明で用いられる吸水性樹脂粒子は、沸点が100℃以下の親水性有機溶媒を含まない表面架橋剤と混合、加熱により架橋されたものであることが好ましい。吸水性樹脂粒子が沸点100℃以下の親水性有機溶媒を含む場合、当該親水性有機溶媒の気化により表面架橋剤の吸水性樹脂粒子表面での存在状態が変化し、SFCなどの物性が十分に満たされない場合がある。
【0091】
吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とをより均一に混合するため、水溶性無機塩(より好ましくは、過硫酸塩)を、吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを混合する際に共存させることがより好ましい。水溶性無機塩の使用量は、吸水性樹脂粒子の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂粒子の固形分100質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下の範囲内が好ましく、0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内がより好ましい。すなわち、上記吸水性樹脂粒子に対して0.01質量%以上1.0質量%以下の水溶性無機塩好ましくは過硫酸塩を含む有機表面架橋剤及び/又は水溶性無機表面架橋剤との混合、加熱によって架橋されたものであることが好ましい。
【0092】
吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを混合する混合方法は特に限定されるものではないが、例えば、吸水性樹脂粒子を親水性有機溶剤に浸漬し、必要に応じて水及び/又は親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を混合する方法、吸水性樹脂粒子に直接、水及び/又は親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を噴霧若しくは滴下して混合する方法等を例示することができる。
【0093】
吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを混合した後、通常、加熱処理を行い、架橋反応を遂行させることが好ましい。また、後述する吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物(有機系表面添加剤)を、表面架橋工程で添加する場合には、吸水性樹脂粒子と表面架橋剤と、さらに本願発明の特定の有機表面添加剤を混合した後、加熱処理を行い、架橋反応を遂行させることが好ましい。上記加熱処理温度は、用いる表面架橋剤にもよるが、40℃以上250℃以下であることが好ましく、100℃以上240℃以下であることがより好ましく、150℃以上230℃以下であることがさらに好ましい。加熱処理温度が40℃未満の場合には、AAPやSFC等の吸収特性が十分に改善されない場合がある。また、加熱処理温度が250℃を越える場合には、吸水性樹脂粒子の劣化を引き起こし、各種物性が低下する場合がある。加熱処理時間は、好ましくは1分以上2時間以下、より好ましくは5分以上1時間以下である。
【0094】
本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、質量平均粒子径が好ましくは100μm以上600μm以下であり、より好ましくは200μm以上500μm以下、最も好ましくは300μm以上400μm以下である。吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径を100μm以上600μm以下の範囲にすることで、液透過性・拡散性が著しく向上し、又は吸収速度が大幅に向上し得る。このような吸水性樹脂粒子を、例えば、オムツに用いた場合、液の漏れなどが低減される。
【0095】
また、本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、175μm以上710μm以下の吸水性樹脂粒子が、50%質量以上であることが好ましく、80質量%以上であることが好ましい。
【0096】
本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、目開き150μmの篩を通過できる大きさの粒子、すなわち150μm未満の粒子の割合が、吸水性樹脂粒子の全質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。目開き150μmの篩を通過できる大きさの粒子の割合が、吸水性樹脂粒子の全質量に対して、5質量%以下である吸水性樹脂粒子が吸水剤に用いられることで、得られる吸水剤の粉塵量を抑制することができる。そのため、吸水剤の製造の際に吸水性樹脂粒子に含まれる微粒子が飛散することに起因する安全衛生上の問題を防止することができ、得られる吸水剤の物性が低下することを抑制することができる。なお、上記割合が5質量%を超えた場合、吸水剤の製造の際に粉塵が発生し易くなるので、安全衛生上の問題が生じ得る。また、上記割合が5質量%を超えた場合、吸収体の物性低下を招くなどのおそれがある。
【0097】
さらに、上記吸水性樹脂粒子としては、質量平均粒子径が300μm以下である微紛状の吸水性樹脂粒子(以下適宜「微粉」と記す)を造粒、乾燥、粒度調整し、表面架橋したものを用いてもよい。また、粉砕して得られる一次粒子の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子に微紛の造粒物を一部混合した吸水性樹脂粒子を用いてもよい。微粉の造粒物を吸水性樹脂粒子に一部混合した場合には、吸水速度、後述するFHAなどのその他吸収特性が一層優れた吸水剤を得ることができる。吸水性樹脂粒子に含まれる微粉の造粒物の混合量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、最も好ましくは20質量%以上である。なお、微粉の粒子径は分級される篩目径で示される。
【0098】
微粉の造粒物の作成方法としては、微粉を再生する公知の技術が使用可能である。例えば、温水と微粉とを混合し乾燥する方法(米国特許第6228930号明細書)や、微粉と単量体水溶液とを混合し重合する方法(米国特許第5264495号明細書)、微粉に水を加え特定の面圧以上で造粒する方法(欧州特許第844270号明細書)、微粉を十分に湿潤させ非晶質のゲルを形成し乾燥・粉砕する方法(米国特許第4950692号明細書)、微粉と重合ゲルとを混合する方法(米国特許第5478879号明細書)などを用いることが可能である。
【0099】
中でも、微粉の造粒物の作成方法としては、上記の温水と微粉とを混合し、乾燥する方法を用いることがより好ましい。当該方法により造粒された吸水性樹脂粒子は、多孔質構造(特開2004−261797号公報に記載されている多孔質構造と同義の構造)を有しているため好ましい。本発明で用いられる吸水性樹脂粒子は、多孔質構造を有する粒子を好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上含んでいることが好ましい。吸水性樹脂粒子が、多孔質構造を有する微粉の造粒物を含むことによって、上記吸水性樹脂粒子及びそれを含む吸水剤は、米国特許出願公開2005/0003191A1号公報に記載されている固定された高さ吸収(FHA)に優れたものとなる。
【0100】
本発明で用いられる吸水性樹脂粒子のCRCは、好ましくは5(g/g)以上であり、より好ましくは15(g/g)以上であり、さらに好ましくは25(g/g)以上であり、特に好ましくは28(g/g)以上である。CRCの上限値は、特に限定されないが、好ましくは60(g/g)以下であり、より好ましくは50(g/g)以下であり、さらに好ましくは40(g/g)以下である。CRCが5(g/g)未満の場合、吸水性樹脂粒子を吸水剤に用いた場合、吸収量が少なすぎ、オムツ等の衛生材料の使用に適さない。また、CRCが50(g/g)よりも大きい場合、吸水性樹脂粒子が吸水剤に使用された場合、吸収体への液の取り込み速度に優れる吸水剤を得ることができなくなる場合がある。
【0101】
本発明で用いられる吸水性樹脂粒子のAAPは、8(g/g)以上、好ましくは16(g/g)以上であり、より好ましくは20(g/g)以上であり、さらに好ましくは22(g/g)以上であり、最も好ましくは24(g/g)以上である。AAPの上限値は、特に限定されないが、好ましくは30(g/g)以下である。AAPが8(g/g)未満の場合、吸水性樹脂粒子が吸水剤に使用された場合、上記吸水剤に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウェット:Re−Wetといわれる)が少ない吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0102】
本発明で用いられる吸水性樹脂粒子のSFCは、好ましくは10(10
−7・cm3・s・g
−1)以上であり、より好ましくは30(10
−7・cm
3・s・g
−1)以上であり、さらに好ましくは50(10
−7・cm
3・s・g
−1)以上、さらに好ましくは70(10
−7・cm
3・s・g
−1)以上であり、特に好ましくは100(10
−7・cm
3・s・g
−1)以上、最も好ましくは150(10
−7・cm
3・s・g
−1)以上である。SFCが10(10
−7・cm
3・s・g
−1)未満の場合、後述する吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物を含んでいたとしても液透過性が向上せず、吸水性樹脂粒子が吸水剤に使用された場合に、吸収体への液の取り込み速度に優れる吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。SFCの上限は特に指定されないが、好ましくは3000(10
−7・cm
3・s・g
−1)以下であり、より好ましくは2000(10
−7・cm
3・s・g
−1)以下である。SFCが3000(10
−7・cm
3・s・g
−1)よりも大きい場合、吸水性樹脂粒子が吸水剤に使用された場合に、吸収体での液漏れが発生する場合がある。
【0103】
本実施の形態にかかる吸水性樹脂粒子は、水可溶分量が好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。下限値は0質量%が最も好ましい。水可溶分量が35質量%を超える場合、ゲル強度が弱く、液透過性に劣ったものとなることがある。また吸水性樹脂粒子が吸収体に使用された場合、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウエット:Re−Wet)が少ない吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0104】
(2)吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物を有する化合物(有機系表面添加剤)
本発明にかかる吸水剤では、上記吸水性樹脂粒子の表面に吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物(有機系表面添加剤)が存在している。また、当該疎水基は炭素数8以上の炭化水素基を含み、当該化合物は以下の関係式
13≦(炭素数8以上の炭化水素基の平均炭素数+1〜3級アミンの窒素原子数)≦26
(式中、1〜3級アミンの窒素原子数≧0である)
を満足し、且つ、該化合物の分子量中に占めるオキシアルキレン基の割合が0以上25質量%以下であるとともに、
当該反応性基の少なくとも一部は、吸水性樹脂粒子表面の官能基と結合している、及び/又は、吸水時に結合を形成することが好ましい。なお、ここで、「平均炭素数」とは、質量平均で求められる炭素数をいう。また、ここで、平均とは、i)上記化合物の分子中に複数の疎水基が含まれる場合の、該複数の疎水基に含まれる炭素数8以上の炭化水素基の炭素数の平均をいう場合と、ii)上記化合物として炭素数にばらつきのある化合物の混合物を用いるときの、各化合物の疎水基に含まれる炭素数8以上の炭化水素基の炭素数の平均をいう場合を含める趣旨である。
【0105】
また、上記吸水性樹脂粒子の表面とは、上記吸水性樹脂粒子が外気にさらされている部分、及び/又は、上記吸水性樹脂粒子の表面から粒子径(長径)の10分の1内部までの部分を示すものとする。ここで、長径とは、粒子表面(外気にさらされている部分)上の任意の2点をとった場合、この2点間の距離が最大となる長さのことをいう。
【0106】
上記化合物(有機系表面添加剤)が上記吸水性樹脂粒子の表面に存在していること、すなわち、吸水性樹脂粒子間に存在していることによって、本発明の吸水剤のSFCを向上させることができる。言い換えれば、吸水剤の液透過性が向上することとなる。なお、液透過性向上のためには、上記吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物(有機系表面添加剤)は、吸水性樹脂粒子が外気にさらされている部分、及び/又は、吸水性樹脂粒子の表面から粒子径(長径)の10分の1内部までの部分に含まれていればよいが、上記吸水性樹脂粒子が外気にさらされている部分に含まれていることでより吸水剤の物性を向上させることができる。
【0107】
また、本発明では、上記吸水性樹脂粒子の表面に上記吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物が存在していることによって、吸水剤のブロッキング率を低下させることができる。そのため、吸水剤の吸湿時の流動性が向上することとなる。なお、上記吸湿時の流動性向上のため、吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物は、上記吸水性樹脂粒子が外気にさらされている部分、及び/又は、吸水性樹脂粒子の表面から粒子径(長径)の10分の1内部までの部分に含まれていればよいが、上記吸水性樹脂粒子が外気にさらされている部分に含まれていることがより吸水剤の物性を向上させることができる。
【0108】
上記吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物は、当該疎水基が炭素数8以上の炭化水素基を含むものであることが好ましいが、かかる上記化合物(有機系表面添加剤)は、1分子中に含まれる炭素数8以上の炭化水素基の炭素数及び1〜3級アミンの窒素原子数について以下の関係式
13≦(炭素数8以上の炭化水素基の平均炭素数+1〜3級アミンの窒素原子数)≦26
(式中、1〜3級アミンの窒素原子数≧0である)
を満足し、且つ、該化合物の分子量中に占めるオキシアルキレン基の割合が0以上25質量%以下であることが好ましい。上記化合物(有機系表面添加剤)は、1分子中に含まれる炭素数8以上の炭化水素基の炭素数及び1〜3級アミンの窒素原子数が上記関係を満たす場合に、当該化合物中の疎水基同士間の疎水性相互作用が有効に発現できる。
【0109】
ここで、(炭素数8以上の炭化水素基の平均炭素数+1〜3級アミンの窒素原子数)、すなわち、炭素数8以上の炭化水素基の平均炭素数と1〜3級アミンの窒素原子数との合計は、13以上26以下であることが好ましいが、より好ましくは14以上25以下、さらに好ましくは16以上24以下である。炭素数8以上の炭化水素基の平均炭素数と、1〜3級アミンの窒素原子数との合計を上記範囲内とすることにより、炭化水素基による疎水性相互作用を有効に作用させることができる。
【0110】
なお、上述した表面架橋剤と本発明で用いる有機系表面添加剤とについては、一部重複する化合物がある。本発明では、吸水性樹脂粒子の表面を架橋反応して、吸水剤の加圧下の吸収倍率を向上させることを主目的に添加する剤を表面架橋剤と呼ぶ。そして、上記吸水性樹脂粒子表面の官能基と一部反応(吸水性樹脂粒子表面の官能基と結合している、及び/又は、吸水時に結合を形成する)した状態で吸水性樹脂粒子間に存在させ、吸水剤の液透過性を向上させることを主目的に添加する剤を吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物を有する化合物(有機系表面添加剤)と呼び、添加する目的、作用で区別している。本明細書では上記表面架橋剤と有機系表面添加剤の混合物を表面処理剤とも呼ぶ。
【0111】
上記吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物(有機系表面添加剤)における、吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基としては、特に限定されるものではないが、アミノ基及び/又はその塩、分子中に2個以上存在する水酸基(ヒドロキシル基)、グリシジル基、環状カーボネート基、環状ウレタン基、環状尿素基、アミンオキサイド基から選ばれる少なくとも1種を含むものであることが好ましい。これらの反応性基を持つことで、上記有機系表面添加剤は、吸水性樹脂粒子表面の官能基と、結合を形成することができるか、及び/又は、吸水時に結合を形成することができる。
【0112】
また、上記疎水基は、炭素数8以上の炭化水素鎖を含む疎水基であることが好ましい。推定ではあるが、上記疎水基は、水中で疎水性相互作用しうる基であることが好ましく、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ポリオキシアルキレン、オルガノポリシロキサン、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル酸エステルを繰り返し単位に含む高分子から選ばれる少なくとも1種を含有し、且つ、炭素数8以上の炭化水素鎖を含む疎水基であることがより好ましい。中でも上記疎水基は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ポリオキシアルキレン、オルガノポリシロキサン、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル酸エステルを繰り返し単位に含む高分子から選ばれる少なくとも1種を含有し、且つ、炭素数がより好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上、特に好ましくは13以上、最も好ましくは14以上の炭化水素鎖を含む疎水基である。
【0113】
中でも上記疎水基は、炭素数8以上の炭化水素鎖を含む脂肪族炭化水素基、又は炭素数8以上の炭化水素鎖を含む芳香族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数13以上の炭化水素鎖を含む脂肪族炭化水素基、又は炭素数13以上の炭化水素鎖を含む芳香族炭化水素基であることがさらに好ましく、炭素数14以上の炭化水素鎖を含む脂肪族炭化水素基、又は炭素数14以上の炭化水素鎖を含む芳香族炭化水素基であることが特に好ましい。
【0114】
これにより、吸水性樹脂粒子間に存在する上記化合物(有機系表面添加剤)の疎水基同士が、吸水性樹脂間において、水中で水に溶けないで、疎水性相互作用により集合して安定化すると考えられる。それゆえ、吸水性樹脂間に隙間ができて液透過性が向上すると考えられる。
【0115】
本発明でいう疎水基の好ましい形態である炭化水素基は、より具体的には、炭素と水素とから構成され、炭素数が8以上であることが好ましく、13以上であることがより好ましく、14以上であることがさらに好ましい。またその構造は直鎖、分岐鎖、環状であるか、飽和、不飽和であるかを問わないがより好ましくは直鎖、飽和である。炭化水素基の長さは、塩水溶液に対する凝集性能から炭素数8〜100であることが好ましく、10〜50であることがより好ましく、12〜40であることがさらに好ましく、13〜30であることが特に好ましく、14〜26であることが最も好ましく、16〜24であることが最も特に好ましい。
【0116】
特に炭化水素基が長いほど導入すべき炭化水素基の量が少なくなり、使用できる吸水性樹脂粒子表面の官能基、例えば、酸基又はその塩の比率が増えることにより吸収性能を高くすることができるため好ましい。
【0117】
このような炭素数8以上の炭化水素基としては、具体的には、例えば、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、2−エチルヘキシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル等の、直鎖若しくは分岐鎖の飽和のアルキル基;シクロオクチル等の環状の飽和アルキル基;オクテニル、ノニレニル、デセニル、ウンデシレニル、ドデシレニル、2−エチルヘキセニル、トリデシレニル、テトラデシレニル、ペンタデシレニル、ヘキサデシレニル、ヘプタデシレニル、オクタデシレニル、ノナデシレニル、エイコシレニル、ヘンエイコシレニル、ドコシレニル等の、直鎖若しくは分岐鎖の不飽和のアルケニル基;シクロオクテニル、シクロドデセニル等の、環状の不飽和のアルケニル基を有する炭化水素基などが挙げられる。これらのうち、ドデシル、オクタデシル、ヘキサデシル、テトラデシルなどがより好ましい。また、特にウンデシレニル基等の不飽和の炭化水素ユニットを用いた場合には抗菌性が付与される等の効用がさらに付与できる。
【0118】
また、疎水基として上記炭素が全フッ素化されたもの、又は部分的にフッ素化されたものも使用することができる。
【0119】
なお、上記疎水基を含む化合物としては、単独の疎水基を含む化合物を単独で用いてもよいし、異なる疎水基を含む複数種類の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
また、上記化合物(有機系表面添加剤)の分子量中に占める、オキシアルキレン基の割合は0以上25質量%以下であることが好ましい。エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加されているもので、該化合物の分子量中に占めるオキシアルキレン基の割合は、0以上25質量%以下であることが好ましく、0以上20質量%以下であることがより好ましく、0以上10質量%以下であることがさらに好ましく、0であることが特に好ましい。上記化合物の分子量中に占めるオキシアルキレン基の割合が、25質量%以下であることにより、当該化合物中の疎水基同士間の疎水性相互作用が有効に発現できる。
【0121】
また、上記反応性基の少なくとも一部は、吸水性樹脂粒子表面の官能基と結合している、及び/又は、吸水時に結合を形成することが好ましい。ここで、かかる結合には、加熱を必要としない結合と、加熱することによって形成される結合とが含まれる。
【0122】
本発明において加熱を必要としない結合とはイオン結合であることが好ましい。また、加熱することによって形成される結合とは共有結合であることが好ましい。
【0123】
そして、上記反応性基の少なくとも一部は、吸水性樹脂粒子表面の官能基と、共有結合及び/又はイオン結合している、及び/又は、吸水時にイオン結合を形成することがより好ましい。
【0124】
本発明の吸水剤に水性液を吸収させた時の効果が発現する機構は定かではないが、上述した特定の反応性基と特定の疎水基とを有する有機系表面添加剤の一部が、吸水性樹脂粒子表面の官能性基と結合を形成することで、液透過性を向上させることが好ましい。そのためには、有機系表面添加剤の、吸水性樹脂粒子との反応率は100%である必要は無く、添加した有機系表面添加剤の量の10%以上100%未満が反応していれば好ましく、20%以上90%以下が反応することがより好ましい。
【0125】
上記反応率の指標としては、上記吸水性樹脂粒子と有機系表面添加剤を含む吸水剤にエタノール洗浄を施すことで、有機系表面添加剤が吸水剤に対して0.001質量%以上1質量%未満、0.01質量%以上1質量%未満の量が抽出されることが好ましい。抽出される有機系表面添加剤の量は、さらに好ましくは0.05質量%以上0.95質量%以下である。上記範囲の量が抽出されることで実使用時に吸水性樹脂粒子間に最適な状態で有機系表面添加剤が存在し、液透過性が大幅に向上する。
【0126】
(2−1)吸水性樹脂粒子表面と加熱を必要としない結合を形成する反応性基を有する化合物
上述したように上記反応性基と吸水性樹脂粒子表面との結合には、加熱を必要としない結合が含まれる。ここで、「加熱を必要としない」とは、上記化合物と吸水性樹脂粒子とを100℃未満で混合し、100℃未満で保持することをいう。かかる条件下で形成される結合は、好ましくはイオン結合である。上記反応性基は、その少なくとも一部が、吸水性樹脂粒子表面の官能基と、イオン結合している、及び/又は、吸水時にイオン結合を形成することが好ましい。
【0127】
ここでイオン結合とは、陽イオンと陰イオンとの間の静電引力により形成される化学結合をいう。イオン結合は、例えば、アミンとカルボキシル基とが近接している場合に形成されうる。
【0128】
上記吸水性樹脂粒子表面と加熱を必要としない結合を形成する反応性基を有する化合物としては、例えば、炭素数8〜100の脂肪族アミン、変性シリコーンオイル、アミン系アクリルポリマー、カチオンエマルジョン等を挙げることができる。
【0129】
上記脂肪族アミンとしては、炭素数8〜100の脂肪族アミンであればよいが、より好ましくは、炭素数8〜26の脂肪族モノアミン;炭素数8〜26の脂肪族ジアミン;炭素数8〜26の脂肪族1級アミン、炭素数8〜26の脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有する2級アミン、炭素数8〜26の脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ以上有する3級アミン等を挙げることができる。上記脂肪族アミンの炭化水素基は、直鎖、分岐鎖、環状であるか、飽和、不飽和であるかを問わないが、中でも、炭素数8〜26の直鎖型炭化水素モノアミン、炭素数8〜26の直鎖型炭化水素ジアミン;炭素数8〜26のアルキル1級アミン、炭素数8〜26のジアルキル2級アミン、炭素数8〜26のアルキル基を1つないし2つ有する2級アミン、炭素数8〜26のアルキル基を1つ以上有する3級アミン等をさらに好適に用いることができる。また、上記脂肪族アミンの炭素数は、8〜26であることが好ましいが、10〜26であることがより好ましく、12〜26であることがさらに好ましく、13〜26であることが特に好ましい。
【0130】
上記脂肪族アミンとしては、より具体的には、例えば、ラウリルアミン等のドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン等のヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、ステアリルアミン等のオクタデシルアミン、オレイルアミン等のオクタデセニルアミン、ココナッツアミン、牛脂酸アミン、ステアリルプロピレンジアミン及び/又はその塩を挙げることができる。また、上記塩としては、例えば、酢酸塩、リンゴ酸塩、プロピオン酸塩等の有機酸塩;塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩を挙げることができる。
【0131】
さらに、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、日本触媒製ポリメント(登録商標)のようなアミン系アクリルポリマー、カチオンエマルジョン(好ましくはポリメントSK−1000等)を用いてもよい。
【0132】
また、本発明にかかる吸水剤は、吸水性樹脂粒子として、ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体からなる吸水性樹脂粒子を含むものであることが好ましい。すなわち、上記吸水性樹脂粒子表面の官能基はカルボキシル基であることが好ましい。かかる場合、上記化合物は、上述した中でも、当該化合物中の疎水基の疎水性が大きく疎水基同士間の疎水性相互作用が効果的に働くという観点、及び、吸水性樹脂粒子上のカルボキシル基との相互作用が起こりやすいという観点から、脂肪族アミン、すなわち、1級アミン、2級アミン、及び、3級アミンから選ばれる少なくとも一つであることがより好ましい。かかる場合、脂肪族アミンは、吸水時に、吸水性樹脂粒子表面の官能基であるカルボキシル基と、イオン結合を形成する。
【0133】
以上のように、上記化合物における加熱を必要としない結合は、カルボキシル基を有する吸水性樹脂と1〜3級の脂肪族アミン(及び/又はその塩)とを混合すること、及び/又は、その混合物を吸水させることによって形成される結合であることが特に好ましい。
【0134】
(2−2)吸水性樹脂粒子表面と加熱することによって形成される結合を形成する反応性基を有する化合物
上述したように上記反応性基と吸水性樹脂粒子表面との結合には、加熱することによって形成される結合が含まれる。かかる結合とは、吸水性樹脂粒子と上記化合物(有機系表面添加剤)との混合物を加熱することで形成される結合をいう。ここで、「加熱」とは、120℃以上240℃以下に加熱することをいう。かかる条件下で形成される結合は、好ましくは共有結合である。上記反応性基は、その少なくとも一部が、吸水性樹脂粒子表面の官能基と、共有結合していることが好ましい。
【0135】
ここで、共有結合とは、電子対が2つの原子に共有されることによって形成される化学結合をいう。
【0136】
上記化合物としては、その反応性基の少なくとも一部が、吸水性樹脂粒子表面に共有結合し、その疎水基は、炭素数8以上の炭化水素基を含み、該炭化水素基の平均炭素数が14以上である化合物も好適に用いることができる。
【0137】
かかる上記化合物(有機系表面添加剤)の疎水基は、炭素数8以上の炭化水素基を含み、該炭化水素基の平均炭素数が14以上であることが好ましいが、該炭化水素基の平均炭素数は、より好ましくは14〜26であり、さらに好ましくは16〜24である。炭化水素基の平均炭素数を上記範囲内とすることで、炭化水素基による疎水性相互作用を有効に作用させることができる。
【0138】
また上記化合物としては、上記反応性基として、アミノ基及び/又はその塩、分子中に2個以上存在する水酸基(ヒドロキシル基)、グリシジル基、環状カーボネート基、環状ウレタン基、環状尿素基、アミンオキサイド基から選ばれる少なくとも1種を含む化合物を好適に用いることができる。
【0139】
上記反応性基と、吸水性樹脂粒子表面の官能基とが近接した状態で加熱された場合に、両者の間に共有結合が形成される。
【0140】
上記化合物(有機系表面添加剤)としては、より具体的には、上記反応性基として水酸基を有する場合は、少なくとも2つの水酸基を有することが好ましく、さらに非イオン性界面活性剤であることがより好ましい。中でも炭素数14〜100の、脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤等が特に好ましい。脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシ
エチレンソルビトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルの中から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。最も好ましくは分子量中に占めるオキシアルキレン基の割合が0質量%である、モノステアリン酸グリセロール、ソルビタンモノステアレート等を挙げることができる。
【0141】
上記反応性基として分子中に2個以上の水酸基を有する化合物を用いることによって、吸水性樹脂粒子表面の例えばカルボキシル基と当該水酸基とが、加熱により共有結合(エステル結合)を形成し、本発明の効果を得ることができる。しかし、これに対し、分子中に1個の水酸基を有する化合物では本発明の効果を得ることができない。これは、化合物中の大きい炭化水素基のために、吸水性樹脂粒子表面のカルボキシル基との反応が進まず、共有結合の形成が困難であるためであると考えられる。よって、上記化合物(有機系表面添加剤)が上記反応性基として水酸基を有する場合は、少なくとも2つの水酸基を有することが好ましい。
【0142】
上記化合物(有機系表面添加剤)がN(窒素)原子を有する場合は、上記有機系表面添加剤は少なくとも1つの上記反応性基を有することが好ましく、かかる反応性基としてはアミノ基及び/又はその塩が好ましい。
【0143】
またその少なくとも一部が、吸水性樹脂粒子表面の官能基と、共有結合を形成する反応性基、及び、疎水基を有する化合物であって、反応性基としてアミノ基及び/又はその塩を含む上記有機系表面添加剤は、疎水基として、N(窒素)原子と結合する炭素数14以上の炭化水素鎖を有することがより好ましい。かかる有機系表面添加剤としては、上述した化合物を含め、例えば、炭素数14〜100の脂肪族アミン、アミン系アクリルポリマー、その他、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができる。
【0144】
上記脂肪族アミンとしては、炭素数14〜100の脂肪族アミンであればよいが、より好ましくは、炭素数14〜26の脂肪族モノアミン;炭素数14〜26の脂肪族ジアミン;炭素数14〜26の脂肪族1級アミン、炭素数14〜26の脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有する2級アミン、炭素数14〜26の脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ以上有する3級アミン等を挙げることができる。上記脂肪族アミンの炭化水素基は、直鎖、分岐鎖、環状であるか、飽和、不飽和であるかを問わないが、中でも、炭素数14〜26の直鎖型炭化水素モノアミン、炭素数14〜26の直鎖型炭化水素ジアミン;炭素数14〜26のアルキル1級アミン、炭素数14〜26のジアルキル2級アミン、炭素数14〜26のアルキル基を1つないし2つ有する2級アミン、炭素数14〜26のアルキル基を1つ以上有する3級アミン等をさらに好適に用いることができる。また、上記脂肪族アミンの炭素数は、14〜26であることが好ましいが、14〜18であることがさらに好ましい。
【0145】
上記脂肪族アミンとしては、より具体的には、例えば、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン等のヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、ステアリルアミン等のオクタデシルアミン、オレイルアミン等のオクタデセニルアミン、ココナッツアミン、牛脂酸アミン、ステアリルプロピレンジアミン及び/又はそれらの塩を挙げることができる。また、上記塩としては、例えば、酢酸塩などの有機酸塩、塩酸塩、硫酸塩などの無機酸塩等を挙げることができる。
【0146】
上述したように、1〜3級のアミノ基は、(2−1)及び(2−2)のどちらの結合をも形成することができる。なお、効果の観点からは、1〜3級のアミノ基を上記反応性基として有する上記化合物を使用する場合には、かかる化合物により、加熱を必要としない結合を形成させることがより好ましい。
【0147】
また、吸水性樹脂粒子と有機系表面添加剤を含む吸水剤であって、該吸水性樹脂粒子の表面に、該吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する有機系表面添加剤が存在し、該有機系表面添加剤はN原子を有し反応性基の少なくとも一部が該吸水性樹脂粒子表面の官能基と共有結合し、該有機系表面添加剤の分子量中に占めるオキシアルキレン基の割合が0以上25質量%以下であり、且つN原子と結合する炭素数12以上の炭化水素鎖を含む疎水基を有することを特徴とする吸水剤にかかる発明においては、上記の脂肪族アミンは炭素数12〜100であることが好ましく、上記の具体的な脂肪族アミンの炭素数の下限値は12にしたものが好ましい。
【0148】
また、陽イオン性界面活性剤としては、上述した特定の反応性基及び疎水基の構造を有するものであれば限定されないが、好ましくは炭素数14〜100のアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数14〜100のジアルキルジメチルアンモニウム塩、炭素数14〜100のアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、炭素数14〜100のアルキルアミン酢酸塩が挙げられる。中でもココナッツアミンアセテートが好ましい。
【0149】
そして、両性界面活性剤として好ましくは、炭素数14〜100のアルキルアミンオキシド、炭素数14〜100のアルキルベタイン、炭素数14〜100のアルキルアミノ脂肪酸塩が挙げられる。中でもラウリルジメチルアミンオキサイドの構造を含むものが好ましい。
【0150】
(3)吸水剤の製造方法
本発明にかかる吸水剤の製造方法は、吸水性樹脂粒子を含む吸水剤の製造方法であって、吸水性樹脂粒子と、吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物とを混合する混合工程を含み、当該疎水基は炭素数8以上の炭化水素基を含み、当該化合物は以下の関係式
13≦(炭素数8以上の炭化水素基の平均炭素数+1〜3級アミンの窒素原子数)≦26
(式中、1〜3級アミンの窒素原子数≧0である)
を満足し、且つ、該化合物の分子量中に占めるオキシアルキレン基の割合が0以上25質量%以下であるものであればよい。上記吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物、上記疎水基、上記反応基については、上記(2)で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
【0151】
本発明にかかる吸水剤の製造方法において、上記混合工程における混合の時期や条件は、上記反応性基の種類や上記反応性基と吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応の種類に応じて適宜選択すればよく特に限定されるものではない。本発明にかかる吸水剤の製造方法の態様としては、例えば、上記混合工程を100℃未満で行い、混合工程後吸水剤を100℃未満で保持する方法、上記混合工程後加熱する方法等を挙げることができる。
【0152】
(3−1)混合工程を100℃未満で行う方法
以下、上記混合工程が100℃未満で行われ、混合工程後吸水剤が100℃未満で保持される方法について説明する。かかる製造方法では、上記混合工程は100℃未満で行われ、混合工程後には、100℃以上で加熱するいかなる工程も含まない。
【0153】
かかる製造方法は、特に限定させるものではないが、例えば、吸水性樹脂粒子の表面に、当該吸水性樹脂粒子表面の官能基とイオン結合している、及び/又は、吸水時にイオン結合を形成する反応性基、及び、疎水基を有する化合物が存在する吸水剤の製造方法に好適に用いることができる。
【0154】
これによって、遠心分離機保持容量と食塩水流れ誘導性のバランスに優れ、低いブロッキング率を有する吸水剤を製造することができる。ここで、上記混合工程を100℃未満の温度条件下で行い、その後も100度以上に温度を上昇させることなく吸水剤を得ることによって、上記効果が得られる理由としては、例えば脂肪族アミンの場合、100℃以上に加熱されることによって、吸水性樹脂粒子上のカルボキシル基と反応してしまうということが考えられる。その結果、アミド結合が形成されてしまうため、結合位置が固定されてしまい、上記混合工程が100℃未満で行われ混合後100℃未満で保持される場合と比較してSFC向上効果が小さくなると考えられる。
【0155】
また、上記混合工程は、100℃未満で行われ混合後100℃未満で保持されることが好ましいが、上記混合工程は80℃未満で行われ混合後80℃未満で保持されることがより好ましい。
【0156】
また、本製造方法では、表面架橋された吸水性樹脂を用いることが好ましいが、かかる場合、上記混合工程が、吸水性樹脂粒子の表面近傍を表面架橋剤によって架橋する表面架橋工程の後に行われることが好ましい。これにより、表面架橋工程の加熱により、上記混合工程で得られた吸水剤に100℃以上の熱が加えられることを回避することができる。なお、表面架橋工程における加熱温度が100℃未満である場合は、上記混合工程は、上記表面架橋剤によって架橋する際、架橋する前、架橋する後の群から選ばれる少なくともいずれかの時に混合すればよい。なお、かかる吸水剤の製造方法において、上記吸水性樹脂粒子の表面近傍を、表面架橋剤によって架橋する場合、表面架橋の方法としては、上述した表面架橋剤及び表面架橋の方法を用いればよい。
【0157】
本製造方法では、上記吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物は、そのまま混合してもよいが、溶液又は分散液で混合されることがより好ましい。これにより、均一に混合できるため、好ましい。
【0158】
ここで、疎水基を有する化合物が溶液で混合される場合用いられる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、エタノール、メタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール、炭化水素、ポリエチレングリコール等の有機溶媒を好適に用いることができる。また、かかる溶液中の上記化合物の濃度は10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0159】
また、疎水基を有する化合物が分散液で混合される場合用いられる分散媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、アルコール等の有機溶媒等を好適に用いることができる。また、かかる分散液中の上記化合物の濃度は10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上質量80%以下であることがより好ましい。また、分散剤として、さらに水溶性ポリマー、界面活性剤等を添加してもよい。
【0160】
さらに、上記吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物は、溶液又は分散液のほかにも、乳化剤とともに水中で乳濁状態として、吸水性樹脂粒子と混合してもよい。かかる乳化剤としては、特に限定されるものではないが、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等を用いればよい。
【0161】
上記吸水性樹脂粒子に対して上記吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物を混合するに際し、具体的な混合方法としては、公知の撹拌装置を用いて混合することができる。かかる攪拌装置としては、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、V型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機、レディゲミキサー、パドルブレンダー、リボンミキサー、ロータリーブレンダー、ジャータンブラー、プラウジャーミキサー、モルタルミキサーなどを用いて混合することができる。これらの攪拌装置は、上記吸水性樹脂粒子と吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物との混合物を加熱する加熱装置を備えていても良いし、加熱装置によって加熱した上記混合物を冷却する冷却装置を備えていても良い。
【0162】
上記吸水性樹脂粒子に対して上記吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物を混合するときの攪拌時間は特に限定されないが、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下である。
【0163】
また、本製造方法においては、上記吸水性樹脂粒子を不定形破砕状にするため、上記吸水性樹脂粒子に機械的ダメージを与えた後に、上記吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物と吸水性樹脂粒子とを混合することがより好ましい。吸水性樹脂粒子が不定形破砕状であることにより、吸水性樹脂粒子の表面に吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物を効率よく含ませることができ、得られる吸水剤の物性を向上させることができる。
【0164】
ここで機械的ダメージとは、ガラス・金属などを吸水性樹脂粒子に衝突させることにより、物理的衝撃を与えることをいう。吸水性樹脂粒子に機械的ダメージを与える方法としては、吸水性樹脂粒子に衝撃を与えることができるものであれば特に限定されるものではない。たとえば、ガラス製容器に吸水性樹脂粒子及びガラスビーズを入れた後、振盪することによって機械的ダメージを与える方法(後述するペイントシェーカーテスト)を挙げることができる。また、その他の吸水性樹脂粒子に機械的ダメージを与える方法としては、吸水性樹脂粒子を、円筒形の容器にボールなどと共に入れて回転させる方法(ボールミル)、攪拌翼を有する撹拌機内で撹拌する方法、パドルドライヤー(パドル翼を有する加熱機、冷却機)を通過させる方法、粉砕機で粉砕する方法、空気輸送により輸送する方法、吸水剤の粒子同士を衝突又は摩擦させる方法を挙げることができる。
【0165】
本発明はまた、不飽和カルボン酸を必須単量体とする吸水性樹脂粒子の表面架橋工程の好ましくは後の吸水性樹脂粒子に、吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物を添加することを特徴とする、吸水剤の通液性向上方法である。
【0166】
本発明はまた、不飽和カルボン酸を必須単量体とする吸水性樹脂粒子の表面架橋工程の好ましくは後の吸水性樹脂粒子に液透過性向上のために、吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物を添加することを特徴とする吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物の使用方法である。
【0167】
(3−2)混合工程後加熱する方法
上記混合工程後加熱する製造方法では、混合工程後に加熱を行うものであれば、当該混合工程は吸水性樹脂粒子と表面架橋剤の混合工程と同時か、表面架橋工程以降の造粒工程、その他の混合工程等で行えば良い。混合工程は、好ましくは表面架橋反応の前、及び/又は表面架橋反応時に行えば良いが、具体的には、上述した表面架橋工程の際、表面架橋剤に有機系表面添加剤を加えた混合液を吸水性樹脂粒子に添加混合後、加熱することで表面架橋反応と同時に有機系表面添加剤を反応させることが好ましい。同時に行うことで、工程を簡略化でき、且つ最適な表面状態となる。
【0168】
加熱温度は120℃以上240℃以下が好ましく、150℃以上200℃以下がさらに好ましい。
【0169】
かかる製造方法は、特に限定させるものではないが、例えば、吸水性樹脂粒子の表面に、当該吸水性樹脂粒子表面の官能基と共有結合を形成する反応性基、及び、疎水基を有する化合物が存在する吸水剤の製造方法に好適に用いることができる。
【0170】
これによって、遠心分離機保持容量と食塩水流れ誘導性のバランスに優れる吸水剤を製造することができる。
【0171】
また、上記混合工程は、100℃未満で行われ混合後120℃以上に加熱されることが好ましい。そして、上記混合工程は80℃未満で行われ混合後150℃以上に加熱されることがより好ましい。
【0172】
有機系表面添加剤の添加量は、吸水性樹脂粒子に対して、好ましくは0.001質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以上2質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以上1質量%以下である。
【0173】
上記表面架橋は従来公知の製法を採用でき、表面架橋剤としては従来公知の剤を採用できる。
【0174】
好ましくは、物性の観点から、例えば、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物、多価アミン化合物のハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、モノオキサゾリジノン化合物、ジオキサゾリジノン化合物、ポリオキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物等を挙げることができる。具体的には、米国特許6228930号明細書、同6071976号明細書、同6254990号明細書などに例示されている表面架橋剤を用いることができる。
【0175】
特に好ましくは上述した有機系表面添加剤とは別の多価アルコールで、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、グリセリン等が好ましい。
【0176】
本製造方法では、上記吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する特定の有機系表面添加剤は、そのまま混合してもよいが、溶液又は分散液で混合されることがより好ましい。これにより、均一性が向上するため好ましい。
【0177】
ここで、特定の有機系表面添加剤が溶液又は分散液で混合される場合、用いられる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、エタノール、メタノール等のアルコール、水を好適に用いることができる。中でも水を用いることが特に好ましい。また、かかる溶液又は分散液中の上記添加剤の濃度は0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0178】
上記吸水性樹脂粒子に対して上記有機系表面添加剤を混合するに際し、具体的な混合方法としては、公知の撹拌装置を用いて混合することができる。かかる攪拌装置としては、例えば、パドルブレンダー、リボンミキサー、ロータリーブレンダー、ジャータンブラー、プラウジャーミキサー、モルタルミキサーなどを用いて混合することができる。その他、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、V型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機、レディゲミキサーなどを挙げることができる。混合方法としては、バッチ式、連続式、その併用のいずれも採用できる。工業的生産の観点から連続混合がより好ましい。混合の際の回転数は特に制限はないが、吸水性樹脂がダメージを受けない程度の回転数が好ましい。具体的には1〜3000rpmの範囲が好ましく、より好ましくは2〜500rpm、さらに好ましくは5〜300rpmである。3000rpmを超えると吸水性樹脂の粉化が生じ、吸水特性が低下する点で好ましくない。また1rpmを下回ると混合性が十分でなく、目的とする通液性の向上効果が得られない。これらの攪拌装置は、上記吸水性樹脂粒子と有機系表面添加剤との混合物を加熱する加熱装置を備えていても良いし、加熱装置によって加熱した上記混合物を冷却する冷却装置を備えていても良い。
【0179】
上記吸水性樹脂粒子に対して上記有機系表面添加剤を混合するときの攪拌時間は特に限定されないが、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下である。
【0180】
また、本製造方法においては、上記吸水性樹脂粒子を不定形破砕状にするため、上記吸水性樹脂粒子に機械的ダメージを与えた後に、上記有機系表面添加剤と吸水性樹脂粒子とを混合することがより好ましい。吸水性樹脂粒子が不定形破砕状であることにより、吸水性樹脂粒子の表面に上記有機系表面添加剤を効率よく含ませることができ、得られる吸水剤の物性を向上させることができる。
【0181】
ここで機械的ダメージとは、ガラス・金属などを吸水性樹脂粒子に衝突させることにより、物理的衝撃を与えることをいう。吸水性樹脂粒子に機械的ダメージを与える方法としては、吸水性樹脂粒子に衝撃を与えることができるものであれば特に限定されるものではない。たとえば、ガラス製容器に吸水性樹脂粒子及びガラスビーズを入れた後、振盪することによって機械的ダメージを与える方法(後述するペイントシェーカーテスト)を挙げることができる。また、その他の吸水性樹脂粒子に機械的ダメージを与える方法としては、吸水性樹脂粒子を、円筒形の容器にボールなどと共に入れて回転させる方法(ボールミル)、攪拌翼を有する撹拌機内で撹拌する方法、パドルドライヤー(パドル翼を有する加熱機、冷却機)を通過させる方法、粉砕機で粉砕する方法、空気輸送により輸送する方法、吸水剤の粒子同士を衝突又は摩擦させる方法を挙げることができる。
【0182】
その他の混合工程としては、吸水性樹脂粒子の造粒工程が挙げられる。造粒工程は特に限定されず、従来公知の造粒方法を適用すればよい。
【0183】
造粒方法として例えば、温水と吸水性樹脂粒子の微粉を混合し乾燥する方法(米国特許第6228930号)や、吸水性樹脂粒子の微粉を単量体水溶液と混合し重合する方法(米国特許第5264495号)、吸水性樹脂粒子の微粉に水を加え特定の面圧以上で造粒する方法(欧州特許第844270号)、吸水性樹脂粒子の微粉を十分に湿潤させ非晶質のゲルを形成し乾燥・粉砕する方法(米国特許第4950692号)、吸水性樹脂粒子の微粉と重合ゲルを混合する方法(米国特許第5478879号)などを適用することが可能である。
【0184】
本発明では、水に有機系表面添加剤を加えて、吸水性樹脂粒子とを混合し、加熱することで効果を発現できる。
【0185】
また、従来公知の吸水性樹脂の製法における溶液と吸水性樹脂粒子の混合時に、本発明の有機系表面添加剤を混合し加熱しても効果を発現できる。
【0186】
(4)吸水剤
本発明にかかる吸水剤は、吸水性樹脂粒子を含む吸水剤であって、上記吸水性樹脂粒子の表面に、吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物が存在する吸水剤である。なお、吸水性樹脂粒子については上記(1)で、吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する有機系表面添加剤については上記(2)で、吸水剤の製造方法は上記(3)で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
【0187】
本発明にかかる好ましい吸水剤は、(好ましくは水溶性不飽和単量体を重合して得られ、内部架橋構造を有し、表面架橋された)吸水性樹脂粒子と吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物を含む吸水剤であって、吸水時に吸水性樹脂粒子間及び/又はその吸水性樹脂粒子表面に該化合物による次の2つの結合が存在することが好ましい。第一の結合は、同一及び/又は異なる上記化合物の疎水基同士の疎水性相互作用による分子間結合、第二の結合は上記吸水性樹脂粒子表面の官能基と上記反応性基とのイオン結合及び/又は共有結合である。この2つの結合が生成することで、従来なかった驚くべき液透過性向上効果を得ることができる。さらに低いブロッキング率を達成することができる。
【0188】
ここで、上記反応性基の少なくとも一部が、上記吸水性樹脂粒子表面の官能基と反応していることが好ましい。かかる反応はイオン結合及び/又は共有結合であればよいが、かかる反応がイオン結合である場合には、かかるイオン結合は1〜3級アミンとカルボキシル基によって形成されることが特に好ましい。
【0189】
また、上記反応性基の少なくとも一部と、上記吸水性樹脂粒子表面の官能基との間に共有結合が存在する場合、上記共有結合はエステル結合及び/又はアミド結合であるであることが好ましい。上記(2)で説明した、上記有機系表面添加剤の反応性基の少なくとも一部が吸水性樹脂粒子表面の官能基と共有結合し、有機系表面添加剤の吸水性樹脂粒子との反応率が10以上100%未満である吸水剤は、エタノール洗浄を施すことで有機系表面添加剤が吸水剤に対して0.001質量%以上1質量%未満、さらに好ましくは0.01以上1質量%未満の量が抽出されることにより確認することができる。
【0190】
また、本発明の好ましい一形態として、上記有機系表面添加剤が反応性基として水酸基を有する場合は、少なくとも2つの水酸基を有することが好ましく、上記有機系表面添加剤と吸水性樹脂粒子との反応率は、10〜90%であることが好ましく、エタノール洗浄を施した時の抽出量が0.001〜1.0質量%、0.01〜1.0質量%であることが好ましく、0.01〜0.9質量%であることがさらに好ましい。
【0191】
また、上記有機系表面添加剤がN原子を有する場合は、少なくとも1つの反応性基を有し、且つN原子と結合する炭素数14以上の炭化水素鎖を含む疎水基を有することが好ましく、上記有機系表面添加剤と吸水性樹脂粒子との反応率は、50〜100%であることが好ましく、エタノール洗浄を施した時の抽出量が0.001〜1.0質量%、0.001〜0.2質量%、さらには0.01〜0.2質量%であることが好ましい。
【0192】
上記反応率の範囲、上記抽出量の範囲となることで、本発明にかかる吸水剤は、吸水時に最適な表面状態となり、優れた液透過性向上効果を得ることができる。
【0193】
また、吸水性樹脂粒子と有機系表面添加剤を含む吸水剤であって、該吸水性樹脂粒子の表面に、該吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する有機系表面添加剤が存在し、該有機系表面添加剤はN原子を有し反応性基の少なくとも一部が該吸水性樹脂粒子表面の官能基と共有結合し、該有機系表面添加剤の分子量中に占めるオキシアルキレン基の割合が0以上25質量%以下であり、且つN原子と結合する炭素数12以上の炭化水素鎖を含む疎水基を有する吸水剤にかかる発明においては、吸水性樹脂粒子との反応率は、50〜100%であることが好ましく、エタノール洗浄を施した時の抽出量が0.001〜1.0質量%、0.001〜0.2質量%、さらには0.01〜0.2質量%であることが好ましい数値範囲である。
【0194】
上記の反応率の範囲、抽出量の範囲になることで、吸水時に最適な表面状態となり、優れた液透過性向上効果を得ることができる。
【0195】
また、上記吸水剤中の吸水性樹脂粒子は、質量平均粒子径が好ましくは100μm以上600μm以下であり、より好ましくは200μm以上500μm以下であり、さらに好ましくは300μm以上400μm以下である。上記の範囲を外れた場合、液透過性が低下し、吸水剤への液の取り込み速度が著しく悪化する場合がある。すなわち、吸収速度が大幅に低下し、例えばオムツに用いた場合、液の漏れなどを引き起こすおそれがある。
【0196】
また、本発明で用いる吸水剤中の吸水性樹脂粒子は、175μm以上710μm以下の吸水剤が、50%質量以上であることが好ましく、80質量%以上であることが好ましい。
【0197】
また、上記吸水剤中の吸水性樹脂粒子は、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが最も好ましい。目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が5質量%を超えた場合、吸水剤の製造の際に粒子の飛散による安全衛生上の問題が生じる。また、得られた吸収体の物性が低下する場合がある。
【0198】
上記吸水剤は、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20以上0.50以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.30以上0.40以下である。この範囲を外れると液透過性が低下し、吸収体への液の取り込み速度が著しく悪化する場合がある。
【0199】
また、本発明にかかる吸水剤は上記(1)、(2)、(3)で示す特定の剤を特定の製造方法で作ることで、吸水性能が著しく向上する。
【0200】
また、上記吸水剤は、CRCが、好ましくは5(g/g)以上であり、より好ましくは15(g/g)以上であり、さらに好ましくは25(g/g)以上であり、特に好ましくは28(g/g)以上である。上限値は、特に限定されないが、好ましくは60(g/g)以下であり、より好ましくは50(g/g)以下であり、さらに好ましくは40(g/g)以下である。CRCが5(g/g)未満の場合、吸収量が少なすぎ、オムツ等の衛生材料の使用に適さない。また、遠心分離機保持容量(CRC)が60(g/g)よりも大きい場合、吸収体に使用された時に、吸収体への液の取り込み速度に優れる吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0201】
本発明にかかる吸水剤は、SFCが、好ましくは10(10
−7・cm
3・s・g
−1)以上であり、より好ましくは30(10
−7・cm
3・s・g
−1)以上であり、さらに好ましくは50(10
−7・cm
3・s・g
−1)以上であり、さらに好ましくは70(10
−7・cm
3・s・g
−1)以上であり、特に好ましくは100(10
−7・cm
3・s・g
−1)以上であり、最も好ましくは150(10
−7・cm
3・s・g
−1)以上である。SFCが10(10
−7・cm
3・s・g
−1)未満の場合、吸収体に使用された時に、吸収体への液の取り込み速度に優れる吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。SFCの上限値は、特に限定されないが、好ましくは3000(10
−7・cm
3・s・g
−1)以下である。これを超えると、上記吸水性樹脂粒子の項で記載したような問題が生じる可能性がある。
【0202】
本発明にかかる吸水剤は、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が、好ましくは8(g/g)以上であり、より好ましくは16(g/g)以上であり、さらに好ましくは20(g/g)以上であり、特に好ましくは22(g/g)以上であり、最も好ましくは24(g/g)以上である。上限値は、特に限定されないが、好ましくは30(g/g)以下である。4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が8(g/g)未満の場合、吸収体に使用された時に、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウェット:Re−Wetといわれる)が少ない吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0203】
上記吸水剤は、水可溶分量が、35質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。下限値は好ましくは0質量%である。吸水剤の水可溶分量が35質量%を超える場合、ゲル強度が弱く、液透過性に劣ったものとなることがある。また、オムツ中で長時間使用した際に、CRC、AAPなどが経時的に低下することがある。
【0204】
上記吸水剤は、ブロッキング率(BR)が、好ましくは30%以下であり、より好ましくは20%以下であり、最も好ましくは10%以下である。
【0205】
また、本発明の吸水剤は親水性を付与されているものが好ましい。吸水剤を親水化するための技術としては、例えば、WO2005/044915に記載の4価以上のポリオールを少なくとも表面に含有する吸水性樹脂を用いる方法、特開2006−233008号に記載の吸水性樹脂に無機微粒子を添加しUV照射する方法、特願2007−504791号に記載の水不溶性無機微粒子を含有し特定の条件を満たす吸水剤組成物を用いる方法、米国特許出願公開第2005−0288182号に記載の水溶性多価金属塩と尿素誘導体を含む吸水性樹脂を用いる方法、特願2006−188668号に記載の親水性の無機微粒子を添加する方法等従来公知の方法を好適に使用することができる。
【0206】
本発明の吸水剤は、その表面張力が好ましくは30(mN/m)以上であり、より好ましくは50(mN/m)以上であり、さらに好ましくは70(mN/m)以上である。表面張力が30(mN/m)未満になると、吸水剤を使用した吸収体の液の戻り量が増加するばかりか、目的とする性能が得られない可能性がある。なお、ここで表面張力とは後述の測定法で測定される値をいう。
【0207】
(5)吸収体(吸水体)
本発明において吸収体(吸水体)は、上記吸水剤を含むものである。上記吸収体を適当な素材と組み合わせることにより、たとえば、衛生材料の吸収層として好適な吸収体とすることができる。以下、吸収体について説明する。
【0208】
吸収体とは、血液や体液、尿などを吸収する、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる、吸水剤とその他の素材からなる成形された組成物のことである。用いられる素材の例としては、セルロース繊維が挙げられる。セルロース繊維の具体例としては、木材からのメカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、溶解パルプ等の木材パルプ繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維等を例示できる。好ましいセルロース繊維は木材パルプ繊維である。これらセルロース繊維はナイロン、ポリエステル等の合成繊維を一部含有していてもよい。本発明にかかる吸水剤を吸収体の一部として使用する際には、吸収体中に含まれる上記吸水剤の質量が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上の範囲である。吸収体中に含まれる本発明の吸水剤の質量が、20質量%未満になると、十分な効果が得られなくなるおそれがある。
【0209】
本発明にかかる吸水剤とセルロース繊維とから吸収体を得るには、たとえば、セルロース繊維からなる紙、マット等に上記吸水剤を散布し、必要によりこれらの紙、マット等で挟持する方法、セルロース繊維と吸水剤とを均一にブレンドする方法、など吸収体を得るための公知の手段を適宜選択することができる。より好ましい方法としては、吸水剤とセルロース繊維とを乾式混含した後、圧縮する方法を挙げることができる。この方法により、セルロース繊維からの吸水剤の脱落を著しく抑えることが可能である。圧縮は加熱下に行うことが好ましく、その温度範囲は、たとえば50℃以上200℃以下である。
【0210】
本発明にかかる吸水剤は、吸収体に使用された場合、諸物性に優れるため、液の取り込みが早く、また、吸収体表層の液の残存量が少ない、非常に優れた吸収体が得られる。
【0211】
本発明にかかる吸水剤は、優れた吸水特性を有しているため、種々の用途の吸水保水剤として使用することができる。具体的には、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の吸収物品用吸水保水剤;水苔代替、土壌改質改良剤、保水剤、農薬効力持続剤等の農園芸用保水剤;内装壁材用結露防止剤、セメント添加剤等の建築用保水剤;リリースコントロール剤、保冷剤、使い捨てカイロ、汚泥凝固剤、食品用鮮度保持剤、イオン交換カラム材料、スラッジ又はオイルの脱水剤、乾燥剤、湿度調整材料等で使用できる。中でも、本発明にかかる吸水剤は、紙おむつ、生理用ナプキンなどの、糞、尿又は血液の吸収用衛生材料に特に好適に用いられる。
【0212】
吸収体は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる場合、(a)着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、(b)着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される、液体に対して不透過性のバックシート、及び(c)トップシートとバックシートの間に配置された吸収体、を含んでなる構成で使用されることが好ましい。吸収体は二層以上であっても良いし、パルプ層などとともに用いても良い。
【0213】
本発明に係る吸水剤は、吸水性樹脂粒子を含む吸水剤であって、当該吸水性樹脂粒子の表面に、当該吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物が存在し、当該疎水基は炭素数8以上の炭化水素基を含み、当該化合物は以下の関係式
13≦(炭素数8以上の炭化水素基の平均炭素数+1〜3級アミンの窒素原子数)≦26
(式中、1〜3級アミンの窒素原子数≧0である)
を満足し、且つ、該化合物の分子量中に占めるオキシアルキレン基の割合が0以上25質量%以下であるとともに、当該反応性基の少なくとも一部は、吸水性樹脂粒子表面の官能基と結合している、及び/又は、吸水時に結合を形成することを特徴としている。
【0214】
本発明に係る吸水剤では、上記化合物は以下の関係式
16≦(炭素数8以上の炭化水素基の平均炭素数+1〜3級アミンの窒素原子数)≦24
(式中、1〜3級アミンの窒素原子数≧0である)を満足することが好ましい。
【0215】
本発明に係る吸水剤では、上記反応性基の少なくとも一部は、吸水性樹脂粒子表面にイオン結合している、及び/又は、吸水時に吸水性樹脂粒子表面にイオン結合することが好ましい。
【0216】
本発明に係る吸水剤は、上記吸水性樹脂粒子と、上記化合物或いは上記化合物の溶液又は分散液とを、100℃未満で混合し、100℃未満で保持してなることが好ましい。
【0217】
本発明に係る吸水剤では、上記吸水性樹脂粒子表面の官能基がカルボキシル基であることが好ましい。
【0218】
本発明に係る吸水剤では、上記化合物は、1級アミン、2級アミン、及び、3級アミンから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0219】
本発明に係る吸水剤では、上記イオン結合が1級アミン、2級アミン、及び、3級アミンから選ばれる少なくとも一つの上記化合物と吸水性樹脂粒子表面のカルボキシル基とによって形成されることが好ましい。
【0220】
本発明に係る吸水剤では、上記化合物が炭素数8以上の炭化水素基を含み、該炭化水素基の平均炭素数が13〜26であることが好ましい。
【0221】
本発明に係る吸水剤では、上記化合物が脂肪族アミンであることが好ましく、アルキルアミンであることがより好ましい。
【0222】
本発明に係る吸水剤では、上記反応性基の少なくとも一部は、吸水性樹脂粒子表面に共有結合し、上記疎水基は、炭素数8以上の炭化水素基を含み、該炭化水素基の平均炭素数が14以上であることが好ましい。
【0223】
本発明に係る吸水剤では、上記化合物の前記吸水性樹脂粒子との反応率は10以上100%未満であることが好ましい。
【0224】
本発明に係る吸水剤では、上記吸水剤にエタノール洗浄を施すことで前記化合物は該吸水剤に対して0.001以上1質量%未満の量が抽出されることが好ましい。
【0225】
本発明に係る吸水剤では、前記化合物は反応性基として水酸基を有する場合は、少なくとも2つの水酸基を有することが好ましい。
【0226】
本発明に係る吸水剤では、前記化合物は窒素原子を有する場合は、少なくとも1つの反応性基を有し、且つ、該窒素原子と結合する平均炭素数14以上の炭化水素基を含む疎水基を有することが好ましい。
【0227】
本発明に係る吸水剤では、前記化合物は、脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0228】
本発明に係る吸水剤では、前記化合物は、脂肪族アミン、陽イオン性界面活性剤、及び、両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0229】
本発明に係る吸水剤は、質量平均粒子径が100以上600μm以下であり、150μm未満の粒子の割合が5質量%以下であることが好ましい。
【0230】
本発明に係る吸水剤では、前記吸水性樹脂粒子表面は表面架橋されていることが好ましい。
【0231】
本発明に係る吸水剤では、上記化合物の吸水剤全体に対する含有量は、0.001質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0232】
本発明に係る吸水剤の製造方法は、吸水性樹脂粒子を含む吸水剤の製造方法であって、吸水性樹脂粒子と、吸水性樹脂粒子表面の官能基との反応性基、及び、疎水基を有する化合物とを混合する混合工程を含み、当該疎水基は炭素数8以上の炭化水素基を含み、当該化合物は以下の関係式
13≦(炭素数8以上の炭化水素基の平均炭素数+1〜3級アミンの窒素原子数)≦26
(式中、1〜3級アミンの窒素原子数≧0である)
を満足し、且つ、該化合物の分子量中に占めるオキシアルキレン基の割合が0以上25質量%以下であることを特徴としている。
【0233】
本発明に係る吸水剤の製造方法では、上記化合物として、該化合物に含まれる上記反応性基の少なくとも一部が、吸水性樹脂粒子表面にイオン結合している、及び/又は、吸水時に吸水性樹脂粒子表面にイオン結合する化合物を用いるとともに、上記混合工程が100℃未満で行われ、混合工程後吸水剤が100℃未満で保持されることが好ましい。
【0234】
本発明に係る吸水剤の製造方法では、上記混合工程が、吸水性樹脂粒子の表面近傍を表面架橋剤によって架橋する表面架橋工程の後に行われることが好ましい。
【0235】
本発明に係る吸水剤の製造方法では、上記化合物が溶液又は分散液で混合されることが好ましい。
【0236】
本発明に係る吸水剤の製造方法では、上記化合物として、該化合物に含まれる上記反応性基の少なくとも一部が、吸水性樹脂粒子表面に共有結合する化合物を用いるとともに、上記吸水性樹脂粒子と前記化合物の混合は、表面架橋の前、及び/又は、表面架橋時に行われ、表面架橋反応時の温度は120℃以上240℃以下であることが好ましい。
【0237】
本発明に係る吸水剤の製造方法では、上記表面架橋反応時に、前記化合物とは別の多価アルコールが混合されていることが好ましい。
【0238】
本発明に係る吸収体は、上記吸水剤を含むことを特徴としている。
【実施例】
【0239】
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「質量%」を「wt%」と記すことがある。
【0240】
吸水性樹脂又は吸水剤の諸性能は、以下の方法で測定した。特に記載が無い限り下記の測定は室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で行われたものとする。
【0241】
なお、衛生材料などの最終製品として使用された吸水剤の場合は、吸水剤は吸湿しているので、適宜、吸水剤を最終製品から分離して減圧低温乾燥後(例えば、1mmHg以下、60℃で12時間)に測定すればよい。また、本実施例及び比較例において使用された吸水剤の固形分はすべて94質量%以上であった。また、以下の測定方法の記載は吸水剤の測定を例に挙げているが、同様の方法で吸水性樹脂粒子の物性も測定することができる。
【0242】
<遠心分離機保持容量(CRC)>
遠心分離機保持容量(CRC)は0.90質量%食塩水に対する無加圧下で30分の吸収倍率を示す。なお、CRCは、無加圧下吸収倍率と称されることもある。
【0243】
吸水剤0.200gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、室温で大過剰(通常500ml程度)の0.90質量%食塩水(塩化ナトリウム水溶液)中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W
1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水剤を用いずに行い、その時の質量W
0(g)を測定した。そして、これらW
1、W
0から、次式に従って遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)を算出した。
【0244】
遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)
=(W
1(g)−W
0(g))/(吸水剤の質量(g))−1
<4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)>
圧力に対する吸収力(AAP)は0.90質量%食塩水に対する4.83kPaで60分の吸収倍率を示す。なお、AAPは、4.83kPaでの加圧下吸収倍率と称されることもある。
図2は、AAPの測定装置10を示す断面図である。
【0245】
図2に示す測定装置10を用い、内径60mmのプラスチックの支持円筒100の底に、ステンレス製400メッシュの金網101(目の大きさ38μm)を融着させ、室温(20℃以上25℃以下)、湿度50RH%の条件下で、金網101上に吸水剤0.900gを均一に散布し、その上に、試験体102である吸水剤に対して4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒100との隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストン103と荷重104とをこの順に載置し、この測定装置10の全体の質量Wa(g)を測定した。
【0246】
直径150mmのペトリ皿105の内側に直径90mmのガラスフィルター106(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、0.90質量%食塩水108(20℃以上25℃以下)をガラスフィルター106の上面と同じ液面になるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙107(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を1枚載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0247】
上記測定装置10の一式を上記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。1時間後、測定装置10の一式を持ち上げ、その質量Wb(g)を測定した。そして、Wa、Wbから、下記の式に従って4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)(g/g)を算出した。
【0248】
4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)
=(Wb(g)−Wa(g))/(吸水剤の質量(0.900g))
<食塩水流れ誘導性(SFC)>
食塩水流れ誘導性(SFC)は吸水剤の膨潤時の液透過性を示す値である。SFCの値が大きいほど、吸水剤は、高い液透過性を有することとなる。本実施例においては、米国特許第5849405号明細書記載のSFC試験に準じて行った。
図3は、SFCの測定装置20を示す概略図である。
【0249】
図2に示す測定装置20において、タンク31にはガラス管32が挿入されており、ガラス管32の下端は、0.69質量%食塩水33をセル41中のゲル44の底部から、5cm上の高さに維持できるように配置されている。また、タンク31中の0.69質量%食塩水33は、コック付きL字管34を通じてセル41へ供給されるよう構成されている。セル41の下には、透過した液を補集する捕集容器48が配置されており、補集容器48は上皿天秤49の上に設置されている。セル41の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)42が設置されていた。ピストン46の下部には液が透過するのに十分な穴47があり、底部には吸水剤あるいはその膨潤ゲルが、穴47へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター45が取り付けてあった。セル41は、セル41を乗せるための台の上に置かれ、セル41と接する台の面は、液の透過を妨げないステンレス製の金網43の上に設置した。
【0250】
人工尿(1)は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、りん酸2水素アンモニウム0.85g、りん酸水素2アンモニウム0.15g、及び、純水994.25gを加えたものを用いた。
【0251】
図3に示す測定装置20を用い、容器40に均一に入れた吸水剤(0.900g)を人工尿(1)中で2.07kPa(0.3psi)の加圧下、60分間膨潤させゲル44とした。その後、ゲル44のゲル層の高さを記録し、次に2.07kPa(0.3psi)の加圧下、0.69質量%の食塩水33を、一定の静水圧でタンク31から膨潤したゲル層を通液させた。このSFC試験は室温(20℃以上25℃以下)で行った。試験ではコンピューターと天秤とを用い、時間の関数として、20秒間隔でゲル層を透過する液体量を10分間記録した。膨潤したゲル44(の主に粒子間)を透過する流速Fs(T)は増加質量(g)を増加時間(s)で割ることによりg/sの単位で決定した。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をTsとし、Tsと10分間の間に得たデータだけを流速計算に使用して、Tsと10分間の間に得た流速を使用してFs(T=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算した。Fs(T=0)はFs(T)対時間の最小2乗法の結果をT=0に外挿することにより計算した。
【0252】
食塩水流れ誘導性(SFC)
=(Fs(t=0)×L0)/(ρ×A×ΔP)
=(Fs(t=0)×L0)/139506
ここで、Fs(t=0):g/sで表した流速、L0:cmで表したゲル層の高さ、ρ:NaCl溶液の密度(1.003g/cm
3)、A:セル41中のゲル層上側の面積(28.27cm
2)、ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920dyne/cm
2)及びSFC値の単位は(10
−7・cm
3・s・g
−1)である。
【0253】
液の透過が早すぎて、静水圧が上記に満たない場合は、上記ΔPの値を食塩水の液面の高さから計算された値に変更してSFCを計算することができる。
【0254】
<質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)>
国際公開第2004/69915号パンフレット記載の質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)試験に準じて行った。
【0255】
<目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合>
上記、質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)の測定方法と同様の分級操作を行い、目開き150μmのふるいを通過した量から目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合(質量%)を求めた。
【0256】
<ブロッキング率(BR)>
本明細書においてブロッキング率とは、25℃、相対湿度90%、1時間経過時のブロッキング率(Blocking Ratio)のことをいう。
【0257】
吸水剤2.00gを底面の内径50mm、高さ10mmのポリプロピレン製カップの底に均一に散布し、あらかじめ25℃、相対湿度90%に調整した恒温恒湿器(タバイエスペック製PLATIOOUS LUCIFER PL−2G)にすばやく入れ、60分間放置した。その後、吸湿した吸水剤を直径7.5cm、目開き2000μmのJIS標準ふるいに移し、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により5分間ふるい、ふるい上に残存した吸水剤の質量W
4(g)及びふるいを通過した吸水剤の質量W
5(g)を測定した。
【0258】
ブロッキング率(BR)(%)=質量W
4(g)/(質量W
4(g)+質量W
5(g))×100
によりブロッキング率(%)を算出した。吸湿ブロッキング率が低いほど、吸湿時の流動性に優れている。
【0259】
<水可溶分(水可溶成分)量>
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に0.90質量%食塩水184.3gをはかり取り、その水溶液中に吸水剤1.00gを加え16時間、スターラーを回転させ攪拌することにより樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り測定溶液とした。
【0260】
はじめに0.90質量%食塩水だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。
【0261】
同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。
【0262】
例えば既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩が主成分の吸水剤の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水剤の水可溶分量を以下の計算式により算出することができる。未知量の場合は滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量を算出する。
【0263】
水可溶分(質量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0
中和率(mol%)=(1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl]))×100
<表面張力>
120mlのガラスビーカーに80mlの0.90質量%塩化ナトリウム水溶液を測りとり、その水溶液中に吸水剤1.00gを加え、5分間穏やかに攪拌した。1分間静置後、その溶液の表面張力をプレート法で測定した。吸水剤を入れていない0.90質量%生理食塩水の表面張力は72(mN/m)であった。
【0264】
<ペイントシェーカーテスト>
ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂又は吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている。
【0265】
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1、10分間としたものをペイントシェーカーテスト2とする。
【0266】
浸透後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂粒子又は吸水剤が得られる。
【0267】
<吸水剤のエタノール洗浄>
後述する実施例20と比較例24に示す通り、吸水剤8gを100gのエタノールで1時間攪拌(100mlの容量のキャップ付の円筒型のサンプル管に入れ、それを100rpmで回転させる)し、洗浄を行った。洗浄後のエタノールを吸水剤と分離(400メッシュのSUS金網でろ過)し、その洗浄後のエタノールを120℃で3時間加熱乾燥し、残った残渣の質量を測定することで、エタノール洗浄された表層に存在する未反応の表面処理剤を算出した。表層に存在する未反応の表面処理剤は比較例24(ブランク;有機系表面添加剤を用いずに行われた実験)で求められた0.0525質量%を引くことで、未反応の有機系表面添加剤の割合を求めた。
【0268】
<吸水剤の固形分>
吸水剤において、180℃で揮発しない成分が占める割合を表す。含水率との関係は以下の様になる。
固形分(質量%)=100−含水率(質量%)
固形分の測定方法は、以下のように行った。
【0269】
底面の直径が約5cmのアルミカップ(質量W
0)に、約1gの吸水剤を量り取り(質量W
1)、180℃の無風乾燥機中において3時間静置し、乾燥させる。乾燥後のアルミカップ+吸水剤の質量(W
2)を測定し、以下の式より固形分を求めた。
固形分(質量%)=((W
2−W
0)/W
1)×100
(参考例1)
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸505.6g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4430.8g、純水511.7g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)12.786gを溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気した。続いて、反応液に20質量%過硫酸ナトリウム水溶液14.67g及び0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液24.45gを攪拌しながら添加したところ、およそ25秒後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、25℃以上90℃以下で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。このとき、重合が開始してから最高温度に達するまでの時間は15分以内であった。得られた含水ゲル(含水ゲル状架橋重合体)は、その径が約5mm以下に細分化されていた。
【0270】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに分級操作によって、目開き710μmのJIS標準篩を通過した粒子を、さらに目開き175μmのJIS標準篩で分級し、通過した微粒子を除去することにより、質量平均粒子径(D50)343μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32の不定形破砕状の吸水性樹脂(A)を得た。吸水性樹脂(A)の遠心分離機保持容量(CRC)は33.4(g/g)、水可溶分は6.1質量%、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合は1.1質量%であった。
【0271】
得られた吸水性樹脂(A)100質量部に1,4−ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、純水2.7質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で35分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、解砕された粒子にペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(1)を得た。
【0272】
(参考例2)
表面架橋剤を均一に混合した後の加熱時間を35分間から25分間に変更した以外は参考例1と同様の操作を行い吸水性樹脂粒子(2)を得た。
【0273】
(参考例3)
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸436.4g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4617.9g、純水377.5g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)10.13gを溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気した。続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液33.91g及び0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液24.22gを攪拌しながら添加したところ、およそ25秒後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、25℃以上95℃以下で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。このとき、重合が開始してから最高温度に達するまでの時間は15分以内であった。得られた含水ゲル(含水ゲル状架橋重合体)は、その径が約5mm以下に細分化されていた。
【0274】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに分級操作によって目開き710μmのJIS標準篩を通過した粒子を、さらに目開き175μmのJIS標準篩で分級し、通過した微粒子を除去することにより、質量平均粒子径(D50)340μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.33の不定形破砕状の吸水性樹脂(B)を得た。吸水性樹脂(B)の遠心分離機保持容量(CRC)は34.7(g/g)、水可溶分は7.5質量%、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合は1.6質量%であった。
【0275】
得られた吸水性樹脂(B)100質量部に1,4−ブタンジオール0.38質量部、プロピレングリコール0.63質量部、純水3.39質量部、過硫酸ナトリウム0.1質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で50分間加熱処理した。その後、得られた粒子をそれぞれ目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、解砕された粒子にペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(3)を得た。
【0276】
(参考例4)
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸257.6g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)1.31g(0.07mol%)、及び、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.58gを混合した溶液(A)(溶液温度23℃)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液215.2g(溶液温度23℃)と33℃に調温したイオン交換水219.6gとを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら溶液(A)に溶液(B)を開放系ですばやく加えて混合した。中和熱及び溶解熱で液温が約102〜105℃まで上昇した単量体水溶液が得られた。
【0277】
得られた単量体水溶液が95℃になるまで待って、単量体水溶液に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.3gを加え、数秒攪拌した後に、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250mm×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250mm×250mm、上面640mm×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されていた。
【0278】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0279】
得られた含水重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水重合体を得た。このときゲル投入量は約340g/min、ゲル投入と並行して純水を48g/minで添加しながら解砕を行った。解砕後のゲルの不揮発分量は50〜55質量%であった。
【0280】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルにて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)340μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が0.9質量%の不定形破砕状の吸水性樹脂(C)を得た。吸水性樹脂(C)の遠心分離機保持容量(CRC)は39.3(g/g)、水可溶分は11.3質量%であった。
【0281】
得られた吸水性樹脂(C)100質量部に1,4−ブタンジオール0.31質量部、プロピレングリコール0.49質量部、純水2.4質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を195℃で25〜35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に上記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして表面が架橋された吸水性樹脂粒子を得た。25分間加熱されたものを吸水性樹脂粒子(4)、30分間加熱されたものを吸水性樹脂粒子(5)、35分間加熱されたものを吸水性樹脂粒子(6)とした。
【0282】
(実施例1)
吸水性樹脂粒子(1)100質量部に、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)(和光純薬工業株式会社製)の35.7質量%メタノール分散溶液を2.8質量部添加した。添加は吸水性樹脂粒子(1)を攪拌しながら、溶液が均一に添加されるように行った。この混合物を、60℃30分間、無風下で静置乾燥した。こうして得られたものを吸水剤(1)とした。
【0283】
(実施例2)
吸水性樹脂粒子(1)100質量部に、ドデシルアミン(ラウリルアミン)(和光純薬工業株式会社製、1級)の47.6質量%メタノール溶液を2.1質量部添加した。添加は吸水性樹脂粒子(1)を攪拌しながら、溶液が均一に添加されるように行った。この混合物を、60℃30分間、無風下で静置乾燥した。こうして得られたものを吸水剤(2)とした。
【0284】
(実施例3)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、ドデシルアミン(ラウリルアミン)(東京化成工業株式会社製)の50質量%のメタノール溶液を2.0質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを吸水剤(3)とした。
【0285】
(実施例4)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、1−アミノトリデカン(n−トリデシルアミン)(東京化成工業株式会社製)の50質量%メタノール溶液を2.0質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを吸水剤(4)とした。
【0286】
(実施例5)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、ヘキサデシルアミン(セチルアミン)(東京化成工業株式会社製)の50質量%メタノール溶液を2.0質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを吸水剤(5)とした。
【0287】
(実施例6)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)(東京化成工業株式会社製)の35.7質量%メタノール溶液を2.8質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを吸水剤(6)とした。
【0288】
(実施例7)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、オレイルアミン(cis−9−オクタデセニルアミン、室温で液体)(東京化成工業株式会社製)を1.0質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを吸水剤(7)とした。
【0289】
(実施例8)
90℃に加熱した吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、ジドデシルアミン(シグマアルドリッチ社製、融点51℃)を1.0質量部添加して、溶融させながら均一に混合した。この混合物を、60℃30分間、無風下で静置乾燥した。こうして得られたものを吸水剤(8)とした。
【0290】
(実施例9)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、アセタミン(登録商標)24(ココナッツアミンアセテート)(花王株式会社製)を1.0質量部添加した。操作は実施例(8)と同様に行われた。こうして得られたものを吸水剤(9)とした。
【0291】
(実施例10)
吸水性樹脂粒子(3)100質量部に、ファーミン(登録商標)DM8098(ジメチルステアリルアミン)(花王株式会社製)の30質量%のエタノール溶液を3.3質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを吸水剤(10)とした。
【0292】
(実施例11)
吸水性樹脂粒子(3)100質量部に、ジアミンR−86(硬化牛脂プロピレンジアミン)(花王株式会社製)の30質量%のエタノール溶液を3.3質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを吸水剤(11)とした。
【0293】
(実施例12)
吸水性樹脂粒子(3)100質量部に、アセタミン(登録商標)86(ステアリルアミンアセテート)(花王株式会社製)の30質量%のエタノール溶液を3.3質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを吸水剤(12)とした。
【0294】
(実施例13)
実施例1の吸水性樹脂粒子(1)を吸水性樹脂粒子(4)に変えて、同様の操作を行った。こうして得られたものを吸水剤(13)とした。
【0295】
(実施例14)
実施例1の吸水性樹脂粒子(1)を吸水性樹脂粒子(5)に変えて、同様の操作を行った。こうして得られたものを吸水剤(14)とした。
【0296】
(実施例15)
実施例1の吸水性樹脂粒子(1)を吸水性樹脂粒子(6)に変えて、同様の操作を行った。こうして得られたものを吸水剤(15)とした。
【0297】
(実施例16)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)(東京化成工業株式会社製)の35.7質量%メタノール溶液を0.28質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを吸水剤(16)とした。
【0298】
(比較例1)
吸水性樹脂粒子(1)を比較吸水剤(1)とした。
【0299】
(比較例2)
60℃に加温した吸水性樹脂粒子(1)100質量部に、80℃に加温して液状となったパラフィン(関東化学株式会社製、1級、融点58〜60℃)を1.0質量部添加した。添加は吸水性樹脂粒子(1)を攪拌しながら、溶液が均一に添加されるように行った。この混合物を、60℃30分間、無風下で静置乾燥した。こうして得られたものを比較吸水剤(2)とした。
【0300】
(比較例3)
吸水性樹脂粒子(1)100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.80質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.002質量部からなる混合液を添加した。添加は吸水性樹脂粒子(1)を攪拌しながら、溶液が均一に添加されるように行った。この混合物を、60℃30分間、無風下で静置乾燥した。こうして得られたものを比較吸水剤(3)とした。
【0301】
(比較例4)
吸水性樹脂粒子(1)100質量部に、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を0.3質量部添加した。添加は吸水性樹脂粒子(1)を攪拌しながら、粉末が均一に添加されるように行った。この混合物を、60℃30分間、無風下で静置乾燥した。こうして得られたものを比較吸水剤(4)とした。
【0302】
(比較例5)
吸水性樹脂粒子(2)を比較吸水剤(5)とした。
【0303】
(比較例6)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)2.0質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.334質量部、プロピレングリコール0.05質量部からなる混合液を添加した。添加は吸水性樹脂粒子(2)を攪拌しながら、溶液が均一に添加されるように行った。この混合物を、60℃30分間、無風下で静置乾燥した。こうして得られたものを比較吸水剤(6)とした。
【0304】
(比較例7)
吸水性樹脂粒子(3)を比較吸水剤(7)とした。
【0305】
(比較例8)
吸水性樹脂粒子(4)を比較吸水剤(8)とした。
【0306】
(比較例9)
吸水性樹脂粒子(5)を比較吸水剤(9)とした。
【0307】
(比較例10)
吸水性樹脂粒子(6)を比較吸水剤(10)とした。
【0308】
(比較例11)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、ナイミーンL−202(N,N−ジ(ヒドロキシエチル)ラウリルアミン、分子量中に占めるオキシアルキレン基(ヒドロキシエチル基はオキシアルキレン基に含まれるものとする)の割合が31質量%)(日本油脂株式会社製)を1.0質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを比較吸水剤(11)とした。
【0309】
(比較例12)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、ナイミーンS−204(ポリオキシエチレンステアリルアミン、分子量中に占めるオキシアルキレン基の割合が40質量%)(日本油脂株式会社製)を1.0質量部添加した。操作は実施例(8)と同様に行われた。こうして得られたものを比較吸水剤(12)とした。
【0310】
(比較例13)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、ナイミーンS−210(ポリオキシエチレンステアリルアミン、分子量中に占めるオキシアルキレン基の割合が64質量%)(日本油脂株式会社製)を1.0質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを比較吸水剤(13)とした。
【0311】
(比較例14)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、ヘキシルアミン(常温で液体、アルキル鎖の平均炭素数6のアルキルアミン)を1.0質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを比較吸水剤(14)とした。
【0312】
(比較例15)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、1−アミノウンデカン(常温で液体、アルキル鎖の平均炭素数11のアルキルアミン)を1.0質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを比較吸水剤(15)とした。
【0313】
(比較例16)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、4−フェニルブチルアミン(常温で液体)を1.0質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを比較吸水剤(16)とした。
【0314】
(比較例17)
吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、ジヘキシルアミン(常温で液体、アルキル鎖の平均炭素数6のジアルキルアミン)を1.0質量部添加した。操作は実施例(1)と同様に行われた。こうして得られたものを比較吸水剤(17)とした。
【0315】
吸水剤(1)〜(2)、比較吸水剤(1)〜(4)のCRC、SFC、BRを測定した結果を表1に示した。
【0316】
吸水剤(3)〜(16)、比較吸水剤(5)〜(17)のCRC、SFC、BRを測定した結果を表1に示した。
【0317】
吸水剤(1)〜(16)、比較吸水剤(1)〜(17)のCRCとSFCの関係を
図1に示した。なお、図中、X軸がCRC、Y軸がSFCを示す。
【0318】
【表1】
【0319】
表1及び
図1に示すように、本発明の実施例で得られた吸水剤は、同じ吸収倍率(遠心分離機保持容量(CRC))を有するものでも、非常に高い加圧下の液透過性(食塩水流れ誘導性(SFC))を示した。また、本発明の実施例で得られた吸水剤は、BRの値が小さく優れた吸湿時の流動性を有していた。
【0320】
(参考例5)
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸505.6g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4430.8g、純水511.7g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)12.786gを溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気した。続いて、反応液に20質量%過硫酸ナトリウム水溶液14.67gおよび0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液24.45gを攪拌しながら添加したところ、およそ25秒後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、25℃以上90℃以下で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。このとき、重合が開始してから最高温度に達するまでの時間は15分以内であった。得られた含水ゲル(含水ゲル状架橋重合体)は、その径が約5mm以下に細分化されていた。
【0321】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに分級操作によって、目開き710μmのJIS標準篩を通過した粒子を、さらに目開き175μmのJIS標準篩で分級し、通過した微粒子を除去することにより、質量平均粒子径(D50)343μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合は1.1質量%であった。の不定形破砕状の吸水性樹脂(A)を得た。吸水性樹脂(A)の遠心分離機保持容量(CRC)は33.4(g/g)、水可溶分は6.1質量%、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合は1.0質量%であった。
【0322】
(実施例17)
参考例5で得られた吸水性樹脂(A)(60℃に加温したもの)100質量部に、1,4−ブタンジオール0.34質量部、プロピレングリコール0.56質量部、純水3.0質量部、モノステアリン酸グリセロール1.0質量部の混合液(90℃に加温したもの、2層に分離した状態)からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で30分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして吸水剤(17−30)を得た。同様の操作を、加熱処理時間を40分に変更して行った。こうして吸水剤(17−40)を得た。
【0323】
(実施例18)
実施例17のモノステアリン酸グリセロール1.0質量部のかわりに、ココナッツアミンアセテート(花王株式会社製、アセタミン24)1.0質量部を用いて、同様の操作を行った。こうして吸水剤(18−30)、(18−40)を得た。
【0324】
(実施例19)
実施例17のモノステアリン酸グリセロール1.0質量部のかわりに、ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製、レオドールSP−S10)1.0質量部を用いて、同様の操作を行った。ただし、加熱時間を40分、および50分に変更して行った。こうして吸水剤(19−40)、(19−50)を得た。
【0325】
(実施例20)
実施例17のモノステアリン酸グリセロール1.0質量部のかわりに、ステアリルアミン(オクタドデシルアミン)1.0質量部を用いて、同様の操作を行った。ただし、加熱処理時間を40分に変更して行った。こうして吸水剤(20−40)を得た。
【0326】
(実施例21)
実施例17のモノステアリン酸グリセロール1.0質量部のかわりに、エトキシ化ステアリルアミン(日本油脂株式会社製、ナイミーンS202、HLB5.0)1.0質量部を用いて、同様の操作を行った。ただし、加熱処理時間を50分に変更して行った。こうして吸水剤(21−50)を得た。
【0327】
(実施例22)
実施例17のモノステアリン酸グリセロールの使用量を1.0質量部から、0.001質量部に変更して、同様の操作を行った。ただし、加熱処理時間は40分で行った。こうして吸水剤(22−40)を得た。
【0328】
(実施例23)
実施例17のモノステアリン酸グリセロールの使用量を1.0質量部から、0.005質量に変更して、同様の操作を行った。ただし、加熱処理時間は40分で行った。こうして吸水剤(23−40)を得た。
【0329】
(実施例24)
実施例17のモノステアリン酸グリセロールの使用量を1.0質量部から、0.01質量部に変更して、同様の操作を行った。ただし、加熱処理時間は45分で行った。こうして吸水剤(24−45)を得た。
【0330】
(比較例18)
実施例17のモノステアリン酸グリセロール1.0質量部を用いずに、同様の操作を行った。ただし、加熱処理時間を20分および30分に変更して行った。こうして比較吸水剤(18−30)、(18−40)を得た。
【0331】
(比較例19)
実施例17と同様の操作を行った。ただし、加熱温度を60℃、加熱処理時間を30分に変更して行った。こうして比較吸水剤(19−30)を得た。
【0332】
(比較例20)
比較例18で得られた比較吸水剤(18−30)にモノステアリン酸グリセロール1.0質量部(90℃に加温して液状になったもの)を均一に混合した。その後、得られた粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして比較吸水剤(20)を得た。
【0333】
(比較例21)
特表2004−512165号の実施例1を参考に以下の操作を行った。参考例5で得られた吸水性樹脂(A)100質量部に、炭酸エチレン0.5質量部、プロピレングリコール0.56質量部、純水2.0質量部、アセトン8.0質量部、エトキシ化ステアリルアミン(日本油脂株式会社製、ナイミーンS210、HLB12.8)0.1質量部からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を180℃で30分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして比較吸水剤(21−30)を得た。同様の操作を、加熱処理時間を40分に変更して行った。こうして比較吸水剤(21−40)を得た。
【0334】
(比較例22)
実施例17のモノステアリン酸グリセロール1.0質量部のかわりに、ラウリン酸ジエタノールアミド(東邦化学工業株式会社製、トーホールN−230X)1.0質量部を用いて、同様の操作を行った。こうして比較吸水剤(22−30)、(22−40)を得た。
【0335】
(比較例23)
実施例17のモノステアリン酸グリセロール1.0質量部のかわりに、ポリオキシエチレン(20EO)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製、レオドールTW−S120)1.0質量部を用いて、同様の操作を行った。こうして比較吸水剤(23−30)、(23−40)を得た。
【0336】
(比較例24)
実施例17のモノステアリン酸グリセロール1.0質量部のかわりに、ポリオキシエチレン(6EO)ソルビタンモノオレエート(花王株式会社製、レオドールTW−O106)1.0質量部を用いて、同様の操作を行った。こうして比較吸水剤(24−30)、(24−40)を得た。
【0337】
(比較例25)
実施例17のモノステアリン酸グリセロール1.0質量部のかわりに、ステアリルアルコール1.0質量部を用いて、同様の操作を行った。こうして比較吸水剤(25−30)、(25−40)を得た。
【0338】
(比較例26)
実施例17のモノステアリン酸グリセロール1.0質量部のかわりに、ステアリン酸1.0質量部を用いて、同様の操作を行った。こうして比較吸水剤(26−30)、(26−40)を得た。
【0339】
(比較例27)
実施例17のモノステアリン酸グリセロール1.0質量部のかわりに、ソルビタンモノココエート(花王株式会社製、レオドールスーパーSP−L10)1.0質量部を用いて、同様の操作を行った。こうして比較吸水剤(27−30)、(27−40)を得た。
(比較例28)
実施例17のモノステアリン酸グリセロール1.0質量部のかわりに、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)ラウリルアミン(日本油脂株式会社製、ナイミーンL202、HLB6.2)1.0質量部を用いて、同様の操作を行った。ただし、加熱処理時間を50分に変更して行った。こうして比較吸水剤(28−50)を得た。
【0340】
実施例17〜24で得られた吸水剤および、比較例18〜27で得られた比較吸水剤の物性その他を測定した結果をそれぞれ表2および表3に示した。
【0341】
【表2】
【0342】
【表3】
【0343】
実施例17〜24で得られた吸水剤は、比較例18〜28で得られた比較吸水剤に対して、高性能のCRCとSFCの関係を有している(
図4参照)。
【0344】
比較例18の結果より、添加剤を用いない場合、性能(CRCとSFCの関係)に劣る。
【0345】
比較例19の結果より、反応温度が低い(60℃)の場合、性能(CRCとSFCの関係)に劣る。
【0346】
比較例20の結果より、表面架橋処理された吸水性樹脂粒子に有機系表面添加剤(モノステアリン酸グリセロール)を添加しただけでは、性能向上効果は見られない。よって、加熱処理による反応が必要である。
【0347】
実施例21と比較例28の結果を比較及び、実施例19と比較例23、比較例24を比較すると、エトキシ化されたアルキルアミンまたは、エトキシ化されたソルビタン脂肪酸酸エステルは性能(CRCとSFCの関係)に劣ることがわかる。このことより、分子中に占めるオキシアルキレン基の割合が性能に重大な影響を及ぼすことがわかる。実施例21及び比較例28の結果より、分子中に占めるオキシアルキレン基の割合は、0以上25質量%以下であることが好ましいと考えられる。最も好ましいのは0%である。
【0348】
比較例22より、脂肪酸ジエタノールアミドを添加剤とした場合、性能(CRCとSFCの関係)に劣る。アミドの反応性が低いため、カルボキシル基との共有結合が形成されていないと考えられる。
【0349】
比較例25より、高級アルコールを添加剤とした場合、性能(CRCとSFCの関係)に劣る。高級アルコールの場合、ヒドロキシル基に対してアルキル鎖が大きいため、ヒドロキシル基の反応性が低く、カルボキシル基との共有結合が形成されなかったと考えられる。
【0350】
比較例26より、脂肪酸を添加剤とした場合、性能(CRCとSFCの関係)に劣る。
【0351】
実施例19と比較例27の比較より、平均炭素数12程度のソルビタン酸エステル(ソルビタンモノココエート)を添加剤とした場合、平均炭素数18のソルビタン酸エステル(ソルビタンモノステアレート)よりも性能(CRCとSFCの関係)に劣る。
【0352】
(実施例25)
実施例17で得られた吸水剤(17−30)8gを100mlのエタノールで1時間攪拌し、洗浄を行った。洗浄後の吸水剤(17−30)を120℃で5時間乾燥させた。こうして吸水剤(25)を得た。洗浄後のエタノールを120℃で3時間加熱乾燥し、残った残渣の質量を測定することで、エタノール洗浄された表層に存在する未反応の表面処理剤を算出した。表層に存在する未反応の表面処理剤は吸水剤に対して0.9292質量%であった。この値から、比較例29(添加剤を用いずに行われた実験)で求められた0.0525質量%を引くことで、未反応の添加剤の割合を求めた。表層に存在する未反応の添加剤(モノステアリン酸グリセロール)は0.8767質量%とであった。よって反応率は12%であった。
【0353】
(比較例29)
比較例18で得られた比較吸水剤(18−30)8gを100mlのエタノールで1時間攪拌し、洗浄を行った。洗浄後の比較吸水剤(18−30)を120℃で5時間乾燥させた。こうして比較吸水剤(29)を得た。洗浄後のエタノールを120℃で3時間加熱乾燥し、残った残渣の質量を測定することで、エタノール洗浄された表層に存在する未反応の表面架橋剤を算出した。表層に存在する未反応の表面架橋剤は吸水剤に対して0.0525質量%であった。
【0354】
実施例25で得られた吸水剤および、比較例29で得られた比較吸水剤の物性を測定した結果を表4に示した。
【0355】
【表4】
【0356】
実施例25の結果より、吸水剤(より詳しくは吸水剤中の吸水性樹脂粒子)の表面に未反応の有機系表面添加剤(ここではモノステアリン酸グリセロール)が存在していることで、物性(SFC)が優れていることがわかる。また、比較例29ではエタノール洗浄後のSFCに大きな変化がないことからも、未反応の添加剤(ここではモノステアリン酸グリセロール)の存在が性能向上に寄与していることがわかる。
【0357】
実施例25の結果と比較例18を比較すると、エタノール洗浄後であっても、表面に結合した添加剤(ここではモノステアリン酸グリセロール)が存在するため、吸水剤(25)は比較吸水剤(18−30)よりも優れたSFCを示した。また、比較例19や比較例20で示されたように加熱温度が低い場合は、吸水性樹脂粒子表面のカルボキシル基と添加剤のヒドロキシル基のエステル化反応が起こらないため、有機系表面添加剤が結合されない。この場合、表3に示したようにSFCの向上効果は得られなかった。このことから、本発明の効果であるSFCの向上効果を得るためには、有機系表面添加剤の少なくとも一部が吸水性樹脂粒子表面に結合していることが重要であることがわかる。また、さらに未反応の添加剤が吸水性樹脂粒子表面に存在していることが好ましい。この未反応物は、おそらくは疎水基間のパインダー的な作用をしていると考えられる。ただし、有機系表面添加剤が吸水性樹脂粒子表面に結合せずに、添加剤が吸水性樹脂粒子表面に存在しているだけでは効果はない。
【0358】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。