(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246781
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】精製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 41/44 20060101AFI20171204BHJP
C07C 41/42 20060101ALI20171204BHJP
C07C 43/13 20060101ALI20171204BHJP
C07C 67/08 20060101ALN20171204BHJP
C07C 69/78 20060101ALN20171204BHJP
C07C 69/76 20060101ALN20171204BHJP
C07C 69/24 20060101ALN20171204BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
C07C41/44
C07C41/42
C07C43/13 A
!C07C67/08
!C07C69/78
!C07C69/76 A
!C07C69/24
!C07B61/00 300
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-238409(P2015-238409)
(22)【出願日】2015年12月7日
(65)【公開番号】特開2016-135756(P2016-135756A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2016年1月18日
(31)【優先権主張番号】14/569,813
(32)【優先日】2014年12月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ディー・ギルモア
(72)【発明者】
【氏名】チ−ワン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・トレフォナス・サード
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ウィリアムズ・サード
(72)【発明者】
【氏名】キュージェン・ジー
【審査官】
斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−208035(JP,A)
【文献】
米国特許第02923733(US,A)
【文献】
特開2003−292471(JP,A)
【文献】
米国特許第06846961(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第二級アルコール化合物を第一級アルコール化合物から分離する方法であって、第二級アルコール化合物と第一級アルコール化合物の混合物を提供することと、前記混合物を、前記第一級アルコール化合物を酸触媒の存在下でアシル化するのに十分な量の式1のアシル化剤と反応させて、前記第二級アルコール化合物及びアシル化第一級アルコール化合物を含む部分アシル化混合物を形成することと、
【化1】
(式中、R
1が、分岐C
4−20アルキル、C
5−20シクロアルキル、置換C
5−20シクロアルキル、C
6−20アリール、及び置換C
6−20アリールからなる群から選択され、前記置換C
5−20シクロアルキル及び前記置換C
6−20アリールにおける置換基がC
1−10アルキル、C
1−10アルコキシ、CN、OH、及びハロゲンからなる群から選択される嵩高い基であり、Yが、ハロゲン、OH、及び−O−C(O)−R
1から選択される)、前記第二級アルコール化合物を前記アシル化第一級アルコール化合物から分離することと、を含み、前記アシル化ステップは、金属触媒及び酵素触媒を含まない、前記方法。
【請求項2】
前記混合物は、過半量の前記第二級アルコール化合物及び半量未満の前記第一級アルコール化合物を含む、請求項1に記載の前記方法。
【請求項3】
前記アシル化剤は、前記第一級アルコール化合物のモル量の2倍以上で存在する、請求項1に記載の前記方法。
【請求項4】
前記酸触媒は、前記アシル化剤の0.05〜10モル当量の量で存在する、請求項1に記載の前記方法。
【請求項5】
前記第二級アルコール化合物は、蒸留、カラムクロマトグラフィ、または結晶化のうちの1つ以上によって前記アシル化第一級アルコール化合物から分離される、請求項1に記載の前記方法。
【請求項6】
前記第二級アルコール化合物は、分別蒸留によって前記アシル化第一級アルコール化合物から分離される、請求項5に記載の前記方法。
【請求項7】
前記第二級アルコール及び第一級アルコール化合物は、C3−30ヒドロカルビルアルコールの異性体である、請求項1に記載の前記方法。
【請求項8】
C3−30ヒドロカルビルアルコールは、C1−10ヒドロカルビルエーテル部分をさらに含む、請求項7に記載の前記方法。
【請求項9】
前記第二級アルコール及び第一級アルコール化合物は異性体である、請求項1に記載の前記方法。
【請求項10】
前記部分アシル化混合物は、アシル化第二級アルコール化合物をさらに含む、請求項1に記載の前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、有機化合物の分離の分野に関し、より具体的には、アルコール化合物の分離に関する。
【0002】
蒸留は有機化合物を分離するのに用いられる一般的な方法であり、分離される化合物の沸点差に依存する。分離される化合物の沸点差が小さくなると、化合物のより良い分離をもたらすために充填蒸留カラム、ビグリューカラムなどの改良された蒸留方法が用いられる。非常に類似した沸点を有する化合物、例えばある異性体の別の異性体からの分離などの場合、かかる蒸留方法は望ましくない化合物の大半を除去するのに効果的であるものの、しばしば所望の化合物に相当量の望ましくない化合物が残る。
【0003】
プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)は、電子産業で用いられる一般的な溶媒である。PGMEAは、アルファとベータの2つの異性体の形態で存在する。ベータ異性体は催奇作用を有するように報告されており、特定の規定ではこの異性体が3000ppm(0.3重量%)以下で存在する必要がある。電子産業において、PGMEAのベータ異性体を可能な限り排除したいという欲求がある。PGMEAは、対応するアルコールであり、同様にアルファ異性体及びベータ異性体として存在するポリプレングリコールメチルエーテル(PGME)のアシル化によって調製される。PGMEのアルファ異性体及びベータ異性体の沸点差はおよそ10℃であり、改良された蒸留方法を用いたとしても、商用規模にて蒸留のみで望ましくないベータ異性体を実質的にすべて排除するには相当な難題を提示する。
【0004】
米国特許第5,723,024号は、とりわけ、エチルベンゼン及び酢酸アミルなどの抽出剤を用いた抽出蒸留によって、2−メチル−1−プロパノールをその異性体1−ブタノールから分離するためのプロセスを開示する。2−メチル−1−プロパノールと1−ブタノールとの間の沸点差は、10℃である。このプロセスは、2−メチル−1−プロパノールの揮発度を高め、2−メチル−1−プロパノールと1−ブタノールとの気相組成比が約2:1であり、液相組成物中では約1:1の比である。このプロセスが別の潜在的な不純物(抽出剤)を所望の材料に導入するだけではなく、望ましくない1−ブタノール異性体中の気相の組成は依然として非常に高い。本産業は、実質的に類似した沸点、つまり大気圧下で15℃以下の沸点差を有するアルコール化合物を分離する効果的な手順を未だ必要としている。
【0005】
本発明は、第二級アルコール化合物を第一級アルコール化合物から分離する方法であって、第二級アルコール化合物と第一級アルコール化合物の混合物を提供することと、混合物を、第一級アルコール化合物を酸触媒の存在下でアシル化するのに十分な量の式1のアシル化剤と反応させて、第二級アルコール化合物及びアシル化第一級アルコール化合物を含む部分アシル化混合物を形成することと、
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、R
1が、嵩高い基であり、Yが、ハロゲン、OH、及び−O−C(O)−R
1から選択される)、第二級アルコール化合物をアシル化第一級アルコール化合物から分離することと、を含み、アシル化ステップは、無機触媒及び酵素触媒を含まない、方法を提供する。
【0008】
本明細書全体を通して使用されるとき、以下の略語は、内容が別途明白に示さない限り、以下の意味を有するものとする:℃=摂氏温度、g=グラム、L=リットル、mL=ミリリットル、mm=ミリメートル、DI=脱イオン化。別途記載されない限り、すべての量は重量パーセント(「重量%」)であり、すべての比はモル比である。すべての数値範囲は、かかる数値範囲が合計100%になるように制約されることが明白である場合を除き、包括的であり、任意の順番で組み合わせ可能である。冠詞「a」、「an」、及び「the」は、単数及び複数を指す。「アルキル」は、別途記載されない限り、直鎖、分岐、及び環状アルキルを指す。「アリール」は、芳香族炭素環及び芳香族へテロ環を指す。
【0009】
本発明では、第二級アルコール化合物は、最初に、第一級アルコール化合物をアシル化することによって第一級アルコール化合物から、次に、第二級アルコール化合物をアシル化第一級アルコール化合物から分離することによって分離され、アシル化ステップは、無機触媒、酵素触媒、及びそれらの混合物を含まない。本プロセスでは、第二級アルコール化合物と第一級アルコール化合物の混合物が提供され、この混合物は、第一級アルコール化合物を酸触媒の存在下でアシル化するのに十分な量の式1のアシル化剤と反応して、第二級アルコール化合物及びアシル化第一級アルコール化合物を含む部分アシル化混合物を形成し、
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R
1が、嵩高い基であり、Yが、ハロゲン、OH、及び−O−C(O)−R
1から選択される)、第二級アルコール化合物は、アシル化第一級アルコール化合物から分離され、アシル化ステップは、無機触媒及び酵素触媒を含まない。
【0012】
本プロセスは、第一級アルコール化合物からいかなる第二級アルコール化合物をも分離するのに有用であり、任意の好適な第一級アルコール化合物と第二級アルコール化合物の混合物を用いてもよい。好ましくは、第一級アルコール化合物及び第二級アルコール化合物は、実質的に類似した沸点、つまり15℃以下の沸点差(大気圧にて)、より好ましくは12℃以下の沸点差、さらにより好ましくは10℃以下の差を有する。第一級アルコール化合物及び第二級アルコール化合物は、異性体であることが好ましい。好ましくは、第一級アルコール化合物と第二級アルコールの化合物の混合物は、
過半量の第二級アルコール化合物及び
半量未満の第一級アルコール化合物を含む。より好ましくは、混合物は、95重量%以上の第二級アルコール化合物、さらにより好ましくは98重量%以上の第二級アルコール化合物、なおより好ましくは99重量%以上の第二級アルコール化合物を含む。好ましくは、第二級アルコール及び第一級アルコール化合物は、C
3−30ヒドロカルビルアルコールの異性体であり、より好ましくは、C
3−30ヒドロカルビルアルコールは、C
1−10ヒドロカルビルエーテル部分を有する。最も好ましくは、アルコール化合物の混合物は、2−メトキシプロパン−1−オールと1−メトキシプロパン−2−オールの混合物である。
【0013】
本プロセスに有用な好適なアシル化剤は、カルボン酸、カルボン酸無水物、及びハロゲン化アシルである。かかるアシル化剤は、式(1)を有し、
【0014】
【化3】
【0015】
式中、R
1は、嵩高い基であり、Yは、ハロゲン、OH、及び−O−C(O)−R
1から選択される。好ましくは、Yは、OHまたは−O−C(O)−R
1であり、より好ましくは、Yは、−O−C(O)−R
1である。Yがハロゲンである場合、Yは塩素であることが好ましい。本明細書で使用されるとき、「嵩高い基」は、任意の分岐C
4−20アルキル、C
5−20シクロアルキル、置換C
5−20シクロアルキル、C
6−20アリール、及び置換C
6−20アリールを指す。「置換」とは、1個以上の水素が、C
1−10アルキル、C
1−10アルコキシ、CN、OH、及びハロゲンから選択される1個以上の置換基に置き換えられることを指す。好ましくは、R
1は、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、メチルアダマンチル、tert−ブチル、ネオペンチル、2−メチル−ブト−2−イル、2,4−ジメチルペント−3−イル、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、ニトロフェニル、ジフェニルメチル、ナフチル、及びピレニルから選択される。かかるアシル化剤は、一般的に市販されているか、または当技術分野で周知の手順によって調製されてもよい。かかるアシル化剤は、そのまま用いられるか、またはさらに精製されてもよい。アシル化剤は、第一級アルコール化合物をアシル化するのに十分な量、好ましくは第一級アルコール化合物の実質的にすべて(99%以上)をアシル化するのに十分な量で用いられる。アシル化剤は、第一級アルコール化合物のモル量の1.5倍の量で存在することが好ましく、より好ましくは第一級アルコール化合物のモル量の2.5、3、3.5、5、10倍以上など、第一級アルコール化合物の2倍以上で存在する。比較的少量(0.001〜5重量%など)の第一級アルコール化合物がアルコール化合物の混合物に存在する場合、アシル化剤は、第一級及び第二級アルコール化合物の合計モルに基づいて0.01〜20モル%、より好ましくは0.01〜10モル%で存在することが好ましい。
【0016】
本プロセスでは、第一級アルコールのアシル化に触媒作用を及ぼす任意の酸を用いてもよい。好ましくは、酸触媒は、鉱酸、アルカンスルホン酸、アリールスルホン酸、及びカルボン酸から選択される。酸の混合物を用いてもよい。好適なアルカンスルホン酸は、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、及びプロパンスルホン酸を含むが、これらに限られない。好適なアリールスルホン酸は、フェニルスルホン酸、トリルスルホン酸、及びフェノールスルホン酸を含むが、これらに限られない。例示的なカルボン酸は、トリフルオロ酢酸、トリメチル酢酸などを含むが、これらに限られない。鉱酸が好ましい。例示的な鉱酸は、硫酸、硝酸、塩酸、過ヨウ素酸、過塩素酸などのハロゲン化水素酸などを含むが、これらに限られない。好ましい鉱酸は、硫酸及び塩酸である。好ましくは、酸触媒は、アシル化剤の0.05〜10モル当量、より好ましくは0.1〜10モル当量、なおより好ましくは0.1〜5モル当量の量で存在する。
【0017】
第一級アルコール化合物と第二級アルコール化合物の混合物は、酸触媒の存在下でアシル化剤と反応して、部分アシル化混合物を形成する。第一級及び第二級アルコール化合物の混合物が液体である場合、アシル化剤及び酸触媒を単に好適な器に入れられたアルコール化合物混合物に添加し、その内容物を反応させてもよい。あるいは、あまり好ましくないが、有機溶媒を用いて第一級アルコール化合物のアシル化を促進してもよい。かかる任意の有機溶媒が用いられる場合、かかる溶媒は、アシル化剤と反応すべきではなく、第二級アルコール化合物の分離を妨げるべきではない。好ましくは、反応混合物が加熱されて、アシル化第一級アルコール化合物を形成する。反応混合物は、任意の好適な温度で還流されるまで加熱されてもよく、好ましくは還流加熱される。理論に束縛されるものではないが、第一級アルコール化合物は、第二級アルコール化合物よりも優先的にアシル化されると考えられる。よって、部分アシル化混合物は、アシル化第一級アルコール化合物を含み、さらにアシル化第二級アルコール化合物を含んでもよい。好ましくは、実質的にすべて(98%以上)の第一級アルコール化合物がアシル化され、より好ましくは99%以上の第一級アルコール化合物がアシル化される。本プロセスでは、第一級アルコール化合物がアシル化され、第二級アルコール化合物の一部がアシル化されてもよく、第二級アルコールの少なくとも一部がアシル化されない。本プロセスのアシル化ステップは、無機触媒、酵素触媒、またはそれらの任意の組み合わせを用いずに行われる。本明細書で使用されるとき、「無機触媒」は、金属酸化物、金属合金などの金属触媒を指し、鉱酸を含まない。
【0018】
第一級アルコール化合物のアシル化の後に、第二級アルコール化合物は、アシル化第一級アルコール化合物から分離される。第二級アルコール化合物も、任意のアシル化第二級アルコール化合物から分離される。蒸留、カラムクロマトグラフィ、または結晶化などのうちの1つ以上の任意の好適な分離方法を用いてもよい。かかる分離方法は当業者に周知である。アシル化第一級アルコール化合物は、第一級アルコール化合物よりも高い沸点を有し、よって沸点により大きな差を提供し、第二級アルコール化合物の分離をより容易にする。アシル化第一級アルコール化合物と非アシル化第二級アルコール化合物との間の特定の沸点差の要件はないが、但し、かかる差が第二級アルコール化合物をアシル化第一級アルコール化合物から分離するのに十分であることを条件としない。アシル化第一級アルコール化合物と非アシル化第二級アルコール化合物との間の好適な沸点差は、1℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、なおより好ましくは25℃以上、さらにより好ましくは50℃以上である。かかる沸点差に特定の上限はないが、例示的な上限は、250℃である。したがって、アシル化第一級アルコール化合物と非アシル化第二級アルコール化合物との間の沸点差は、好適には1〜250℃、好ましくは5〜250℃、より好ましくは10〜250℃、なおより好ましくは25〜250℃である。あるいは、アシル化第一級アルコールは、第一級アルコール化合物と比べてカラム充填材料に対する異なる親和性を有していてもよく、第二級アルコール化合物のアシル化第一級アルコール化合物からの分離を可能にする。好ましくは、第二級アルコール化合物は、分別蒸留によってアシル化第一級アルコール化合物から分離される。
【0019】
分離された第二級アルコール化合物は、第一級アルコール化合物を実質的に含まず、つまり、ガスクロマトグラフィ分析によって決定されるように、0.5重量%以下の第一級アルコール、好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらにより好ましくは100(重量)ppm以下、なおより好ましくは0〜10ppmなど10ppm以下の第一級アルコールを含有する。好適なガスクロマトグラフは、フレームイオン化検出器、及びAgilent122−1334またはAgilent HP−INNOWaxカラムを装備するAgilent6890ガスクロマトグラフ上である。より好ましくは、第二級アルコールは、アシル化第一級アルコールを実質的に含まず、さらにより好ましくはアシル化第一級アルコール及びアシル化第二級アルコールを実質的に含まない。0〜10ppmなど、10ppm以下の2−メトキシプロパン−1−オールを有する1−メトキシプロパン−2−オールは、本プロセスに従って、2−メトキシプロパン−1−オール及び1−メトキシプロパン−2−オールの混合物から得られる。PGMEは、PGMEAの合成における出発材料である。PGMEは、80〜150℃の温度で加熱することにより、1〜2モル当量の酢酸または無水酢酸でアシル化される。好ましくは、かかるアシル化ステップは、0.05〜1重量%の酸触媒を用いる。任意の好適な酸を酸触媒として用いてもよく、塩酸、リン酸、ポリリン酸、硫酸、硝酸、クロロスルホン酸などのハロゲン化水素酸などの鉱酸、及びシュウ酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、フェニルスルホン酸、フェノールスルホン酸などの有機酸を含む。したがって、PGMEAを調製するのに用いられるPGMEが非常に低いレベルの望ましくないベータ異性体(2−メトキシプロパン−1−オール)を有する場合、得られるPGMEAは等しく低いレベルのかかる異性体を有する。よって、0〜10ppmなど10ppm以下の望ましくないベータ異性体2−メトキシプロピルアセテートを有するPGMEAは、本プロセスに従って、分離された2−メトキシプロパン−1−オールから得られる。
【0020】
実施例1:2−メトキシプロパン−1−オール及び1−メトキシプロパン−2−オールの両方を含有する市販のPGMEをフラスコに添加し、続いて1モル%のトリメチル無水酢酸及び酸触媒を添加した。反応物を120℃に加熱し、穏やかな還流条件下で72時間撹拌したた後に、ガラスビーズを充填したビグリューカラムを通して試薬を分別蒸留した。119〜121℃の安定した読み取り前に蒸留ヘッドに収集されたすべての蒸留物を廃棄し、急激な温度変化が見られるまで次の留分を分析用に収集した。続いて、蒸留物を、フレームイオン化検出器、Agilent 122−1334 DB−624 60m×0.53mmカラムを装備し、搬送ガスとしてヘリウム(1.5mL/分)を有し、1.0μLの注入量、10:1の注入分割比、及び40℃の初期オーブン温度(2℃/分の温度勾配で80℃まで8分間の保留時間、その後、20℃/分の温度勾配で200℃まで5分の保留時間)のAgilent 6890ガスクロマトグラフを用いたガスクロマトグラフィによって、99%超の純2−メトキシプロパン−1−オールの標準物に対して分析した。結果を表1に報告する。対照試料は、市販のPGME自体であった。
【0021】
【表1】
【0022】
表1のデータから、本プロセス由来の蒸留物中の第一級アルコール(ベータ異性体)のレベルが著しく減少することが明らかである。
【0023】
実施例2:撹拌棒を収容する250mLの丸底フラスコに、100gのPGME(1.11モル、1.0当量)を、約99.88%の1−メトキシプロパン−2−オール(PM−2)と0.12%の2−メトキシプロパン−1−オール(ベータ異性体、PM−1)の混合物として添加する。安息香酸無水物(2.5g、11.1mmol、0.01当量)を次にフラスコに添加した後に、濃縮硫酸(10.9g、111.0mmol、0.1当量)を添加する。還流冷却器を反応物に装着して、115℃に設定された油浴内で36時間撹拌する。この時間間隔の最後に、還流冷却器を取り外し、直径1mmのガラスビーズを充填した真空被覆ビグリューカラムを装着する。その上に、ショートパス蒸留ヘッドを100mLの受けフラスコと共に配置する。油浴の温度を130°Cに上昇させ、最初の蒸留物留分を118〜120℃の温度範囲内で主生成物として収集する。この物質の分析は、それが出発材料異性体PM−2からなり、異性体PM−1を実質的に含まないことを示す。このプロセスは、以下の反応スキームによって図示される。
【0024】
【化4】
【0025】
実施例3:安息香酸無水物を2−ナフトエ酸(3.8g、22.2mmol、0.02当量)に置き換える以外は、実施例2の手順を繰り返す。蒸留物の分析は、それが異性体PM−2であり、異性体PM−1を実質的に含まないことを示す。このプロセスは、以下の反応スキームによって図示される。
【0026】
【化5】
【0027】
実施例4:安息香酸無水物を1−ピレンカルボン酸(5.4g、22.2mmol、0.02当量)に置き換え、スルホン酸触媒を12.1N塩酸水溶液(9.2mL、111.0mmol、0.1当量)に置き換える以外は、実施例2の手順を繰り返す。蒸留物の分析は、それが異性体PM−2であり、異性体PM−1を実質的に含まないことを示す。このプロセスは、以下の反応スキームによって図示される。
【0028】
【化6】
【0029】
実施例5:1−ピレンカルボン酸をトリメチル無水酢酸(2.1g、11.1mmol、0.01当量)に置き換える以外は、実施例4の手順を繰り返す。蒸留物の分析は、それが異性体PM−2であり、異性体PM−1を実質的に含まないことを示す。このプロセスは、以下の反応スキームによって図示される。
【0030】
【化7】
【0031】
実施例6:9ppmのベータ異性体(2−メトキシプロパン−1−オール)を含有する実施例1由来の精製されたPGME試料3を、塩酸などの酸触媒(0.05〜1重量%)の存在下にて80〜150℃の温度で、酢酸(1.2モル当量)でアシル化して、9ppm以下のベータ異性体(2−メトキシプロパン−1−アセテート)を有するPGMEAを提供する。
【0032】
実施例7:酢酸を無水酢酸(0.65モル当量)に置き換え、酸触媒がリン酸であること以外は、実施例6の手順を繰り返す。