特許第6246783号(P6246783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6246783-静電容量検出装置及び入力装置 図000002
  • 特許6246783-静電容量検出装置及び入力装置 図000003
  • 特許6246783-静電容量検出装置及び入力装置 図000004
  • 特許6246783-静電容量検出装置及び入力装置 図000005
  • 特許6246783-静電容量検出装置及び入力装置 図000006
  • 特許6246783-静電容量検出装置及び入力装置 図000007
  • 特許6246783-静電容量検出装置及び入力装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246783
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】静電容量検出装置及び入力装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/12 20060101AFI20171204BHJP
   H03M 1/08 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H03M1/12 C
   H03M1/08 A
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-257538(P2015-257538)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-121024(P2017-121024A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】澤田石 智之
【審査官】 石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−045475(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0035601(US,A1)
【文献】 特開2011−089937(JP,A)
【文献】 特表2008−542760(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0046299(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/01−1/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の静電容量に応じた大きさを持つ正電荷と負電荷とが交互に転送される静電容量検出装置であって、
第1電極及び第2電極を持つ第1キャパシタを含み、前記転送される負電荷を前記第1キャパシタの前記第1電極に蓄積し、前記転送される正電荷を前記第1キャパシタの前記第2電極に蓄積する電荷蓄積回路と、
前記正電荷の転送が終了した後から前記負電荷の転送が開始する前までの期間に属する第1タイミング、及び、前記負電荷の転送が終了した後から前記正電荷の転送が開始する前までの期間に属する第2タイミングのそれぞれにおいて、前記第1キャパシタの前記第1電極に対する前記第2電極の電圧をしきい電圧と比較し、当該比較結果に応じた信号を出力する比較回路と、
前記第1タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記負電荷が転送されるときに、前記第1キャパシタの電圧を前記しきい電圧より低下させる正電荷を当該転送される負電荷に合成して前記電荷蓄積回路に入力し、前記第2タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記正電荷が転送されるときに、前記第1キャパシタの電圧を前記しきい電圧より低下させる負電荷を当該転送される正電荷に合成して前記電荷蓄積回路に入力する帰還回路と
を有する静電容量検出装置。
【請求項2】
交互に転送される前記正電荷と前記負電荷とが入力される第1ノードと、
第2ノードとを有し、
前記電荷蓄積回路は、
前記第1ノードに前記負電荷が転送される電荷転送期間において、前記第1キャパシタの前記第1電極を前記第1ノードに接続するとともに前記第1キャパシタの第2電極を前記第2ノードに接続し、前記第1ノードに前記正電荷が転送される電荷転送期間において、前記第1キャパシタの前記第2電極を前記第1ノードに接続するとともに前記第1キャパシタの第1電極を前記第2ノードに接続する第1スイッチ回路と、
前記第1ノードの電圧と基準電圧とが等しくなるように前記第2ノードの電圧を制御する電圧制御回路とを含む、
請求項1に記載の静電容量検出装置。
【請求項3】
前記帰還回路は、
第2キャパシタと、
前記電荷転送期間において、前記第2キャパシタの一方の端子を前記第1ノードに接続し、前記電荷転送期間の合間の期間において、前記第2キャパシタの一方の端子を前記基準電圧に接続する第2スイッチ回路と、
出力電圧のレベルを2つのレベルの一方から他方へ切り換え可能な駆動回路と、
前記第1タイミング又は前記第2タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記電荷転送期間に前記駆動回路の出力電圧のレベルを切り換え、前記第1タイミング又は前記第2タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えていないことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記電荷転送期間が終了した後に前記駆動回路の出力電圧のレベルを切り換える帰還制御回路とを含む、
請求項2に記載の静電容量検出装置。
【請求項4】
前記第1ノードへ前記正電荷及び前記負電荷を転送する経路に設けられ、前記電荷転送期間においてオンし、前記電荷転送期間の合間においてオフする入力スイッチ回路を有し、
前記第2スイッチ回路は、前記入力スイッチ回路と同じタイミングで接続が切り換わる、
請求項3に記載の静電容量検出装置。
【請求項5】
前記帰還回路は、
第2キャパシタと、
前記第1タイミング又は前記第2タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記電荷転送期間において前記第2キャパシタの一方の端子を前記第1ノードに接続し、前記第1タイミング又は前記第2タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えていないことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記電荷転送期間において前記第2キャパシタの一方の端子を前記基準電圧に接続する第2スイッチ回路と、
出力電圧のレベルを2つのレベルの一方から他方へ切り換え可能な駆動回路と、
前記電荷転送期間に前記駆動回路の出力電圧のレベルを切り換える帰還制御回路とを含む、
請求項2に記載の静電容量検出装置。
【請求項6】
前記比較回路は、
前記第1タイミング及び前記第2タイミングのそれぞれにおいて第1入力端子と第2入力端子の電圧を比較し、当該比較結果に応じた信号を出力する比較器と、
前記第1タイミングにおいて、前記第1入力端子を前記第2ノードに接続するとともに前記第2入力端子を前記基準電圧に接続し、前記第2タイミングにおいて、前記第2入力端子を前記第2ノードに接続するとともに前記第1入力端子を前記基準電圧に接続する第3スイッチ回路とを含む、
請求項2乃至5の何れか一項に記載の静電容量検出装置。
【請求項7】
前記第3スイッチ回路は、前記第1スイッチ回路と同じタイミングで接続が切り換わる、
請求項6に記載の静電容量検出装置。
【請求項8】
物体の接近に応じた情報を入力する入力装置であって、
前記物体の接近に応じて静電容量が変化する容量性センサと、
周期的にレベルが変化する駆動電圧を前記容量性センサに印加し、当該駆動電圧の印加により、前記容量性センサの静電容量に応じた大きさを持つ正電荷と負電荷とが前記容量性センサから交互に転送される静電容量検出装置とを備え、
前記静電容量検出装置は、
前記駆動電圧を出力するセンサ駆動回路と、
第1電極及び第2電極を持つ第1キャパシタを含み、前記転送される負電荷を前記第1キャパシタの前記第1電極に蓄積し、前記転送される正電荷を前記第1キャパシタの前記第2電極に蓄積する電荷蓄積回路と、
前記正電荷の転送が終了した後から前記負電荷の転送が開始する前までの期間に属する第1タイミング、及び、前記負電荷の転送が終了した後から前記正電荷の転送が開始する前までの期間に属する第2タイミングのそれぞれにおいて、前記第1キャパシタの前記第1電極に対する前記第2電極の電圧をしきい電圧と比較し、当該比較結果に応じた信号を出力する比較回路と、
前記第1タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記負電荷が転送されるときに、前記第1キャパシタの電圧を前記しきい電圧より低下させる正電荷を当該転送される負電荷に合成して前記電荷蓄積回路に入力し、前記第2タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が比較回路から出力された場合、次の前記正電荷が転送されるときに、前記第1キャパシタの電圧を前記しきい電圧より低下させる負電荷を当該転送される正電荷に合成して前記電荷蓄積回路に入力する帰還回路とを有する、
入力装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量性センサなどの静電容量を静電容量検出装置とこれを備えたタッチパッド等の入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型PCやタブレット端末、スマートフォンなどの情報機器の入力インターフェースとして、物体(指、ペンなど)の接触位置を検出するセンサを備えたタッチパッドやタッチパネルなどの装置が広く普及している。物体の接触位置を検出するセンサには、抵抗膜方式や静電容量方式など種々のタイプが存在するが、近年では、複数の接触箇所を検出する「マルチタッチ」への対応が可能な静電容量方式のセンサの採用が増加している。
【0003】
静電容量方式のセンサは微小な静電容量の変化を電圧に変換して検出するため、外来ノイズの影響を受け易い。下記の特許文献1に記載される静電容量検出回路では、チャージアンプの帰還経路に挿入されるキャパシタの接続の向きをセンサの駆動信号の立ち上がりと期間と立下り期間とで切り換えることにより、センサからの電荷を連続的に積分する。これにより、外来ノイズが平均化されて減衰するため、外来ノイズの影響を受け難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−45475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6は、上記特許文献1の図13に記載される静電容量検出回路の構成の概要を示す図である。図6に示す従来の回路は、1ビット出力のコンパレータ102とデジタルフィルタ103を備えたデルタシグマ型のアナログ−デジタル変換器として動作する。
【0006】
図6において、キャパシタC1とスイッチ回路100と演算増幅器101は、入力端子Tinに転送される電荷Qinを蓄積するチャージアンプを構成する。このチャージアンプは、帰還経路に挿入されるキャパシタC1の接続方向を電荷Qinの極性に応じて切り換えることにより、正と負の電荷QinをキャパシタC1で連続的に蓄積(積分)する。そのため、演算増幅器101の出力電圧Vampの振幅は時間とともに増大する。図7のタイミングチャートにおいて示すように、チャージアンプで正の電荷Qinと負の電荷Qinがそれぞれ1回ずつ蓄積されると、信号Lbが有効状態となってコンパレータ103が動作し、演算増幅器101の出力電圧Vampと基準電圧との比較が行われる。従って、コンパレータ103の比較結果の信号CMPは、正負の電荷Qinの読み込みが1回ずつ行われるまで出力されない。信号CMPの出力の周期が長くなると、所定ビット長の静電容量の検出値を得るまでの時間が長くなってしまう。
【0007】
近年のタッチパッド等はセンサの入力面のサイズが大型化する傾向にある。そのため、入力面上の検出位置の数が多くなってきており、入力面の全体で得られる検出信号の数も多くなってきている。他方、タッチ操作における指の動きを正確に捉えるには、一定以上のセンシング速度が必要であるため、検出信号の数が多くなっても、入力面の全体から検出信号を取得する時間(走査周期)をあまり長くすることができない。従って、各検出位置におけるセンシング時間、すなわち静電容量の検出速度を速くすることが課題となっている。
【0008】
また、入力面から指が離れた状態や手袋等を装着した状態では、微小な静電容量の変化を高精度に検出する必要がある。検出速度が遅い場合、平均化による耐ノイズ性能が低くなるため、ノイズの影響を受け易くなるという問題がある。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、静電容量の検出速度を速くすることができる静電容量検出装置及び入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、検出対象の静電容量に応じた大きさを持つ正電荷と負電荷とが交互に転送される静電容量検出装置に関する。この第1の観点に係る静電容量検出装置は、第1電極及び第2電極を持つ第1キャパシタを含み、前記転送される負電荷を前記第1キャパシタの前記第1電極に蓄積し、前記転送される正電荷を前記第1キャパシタの前記第2電極に蓄積する電荷蓄積回路と、前記正電荷の転送が終了した後から前記負電荷の転送が開始する前までの期間に属する第1タイミング、及び、前記負電荷の転送が終了した後から前記正電荷の転送が開始する前までの期間に属する第2タイミングのそれぞれにおいて、前記第1キャパシタの前記第1電極に対する前記第2電極の電圧をしきい電圧と比較し、当該比較結果に応じた信号を出力する比較回路と、前記第1タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記負電荷が転送されるときに、前記第1キャパシタの電圧を前記しきい電圧より低下させる正電荷を当該転送される負電荷に合成して前記電荷蓄積回路に入力し、前記第2タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記正電荷が転送されるときに、前記第1キャパシタの電圧を前記しきい電圧より低下させる負電荷を当該転送される正電荷に合成して前記電荷蓄積回路に入力する帰還回路とを有する。
【0011】
上記の構成によれば、前記正電荷の転送が終了した後から前記負電荷の転送が開始する前までの期間に属する第1タイミング、及び、前記負電荷の転送が終了した後から前記正電荷の転送が開始する前までの期間に属する第2タイミングのそれぞれにおいて、前記第1キャパシタの前記第1電極に対する前記第2電極の電圧と前記しきい電圧とが比較され、当該比較結果に応じた信号が前記比較回路から出力される。
また、前記第1タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記負電荷が転送されるときに、前記帰還回路による正電荷が当該転送される負電荷に合成されて前記電荷蓄積回路に入力され、前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧より低下する。前記第2タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が比較回路から出力された場合も、次の前記正電荷が転送されるときに、前記帰還回路による負電荷が当該転送される正電荷に合成されて前記電荷蓄積回路に入力され、前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧より低下する。
従って、キャパシタへ2回の電荷の転送(正電荷,負電荷)を行わなければキャパシタの電圧としきい電圧との比較結果が得られない場合に比べて、検出速度が高速になる。
【0012】
好適に、上記静電容量検出装置は、交互に転送される前記正電荷と前記負電荷とが入力される第1ノードと、第2ノードとを有してよい。前記電荷蓄積回路は、前記第1ノードに前記負電荷が転送される電荷転送期間において、前記第1キャパシタの前記第1電極を前記第1ノードに接続するとともに前記第1キャパシタの第2電極を前記第2ノードに接続し、前記第1ノードに前記正電荷が転送される電荷転送期間において、前記第1キャパシタの前記第2電極を前記第1ノードに接続するとともに前記第1キャパシタの第1電極を前記第2ノードに接続する第1スイッチ回路と、前記第1ノードの電圧と基準電圧とが等しくなるように前記第2ノードの電圧を制御する電圧制御回路とを含んでよい。
【0013】
好適に、前記帰還回路は、第2キャパシタと、前記電荷転送期間において、前記第2キャパシタの一方の端子を前記第1ノードに接続し、前記電荷転送期間の合間の期間において、前記第2キャパシタの一方の端子を前記基準電圧に接続する第2スイッチ回路と、出力電圧のレベルを2つのレベルの一方から他方へ切り換え可能な駆動回路と、前記第1タイミング又は前記第2タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記電荷転送期間に前記駆動回路の出力電圧のレベルを切り換え、前記第1タイミング又は前記第2タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えていないことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記電荷転送期間が終了した後に前記駆動回路の出力電圧のレベルを切り換える帰還制御回路とを含んでよい。
【0014】
好適に、前記第1ノードへ前記正電荷及び前記負電荷を転送する経路に設けられ、前記電荷転送期間においてオンし、前記電荷転送期間の合間においてオフする入力スイッチ回路を有してよい。前記第2スイッチ回路は、前記入力スイッチ回路と同じタイミングで接続が切り換わってよい。
これにより、前記第2スイッチ回路と前記入力スイッチ回路の制御を共通化できるため、構成が簡易になる。
【0015】
好適に、前記帰還回路は、第2キャパシタと、前記第1タイミング又は前記第2タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記電荷転送期間において前記第2キャパシタの一方の端子を前記第1ノードに接続し、前記第1タイミング又は前記第2タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えていないことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次に前記比較回路の比較結果の信号が出力されるまでの少なくとも一部の期間において、前記第2キャパシタの一方の端子を前記基準電圧に接続する第2スイッチ回路と、出力電圧のレベルを2つのレベルの一方から他方へ切り換え可能な駆動回路と、前記電荷転送期間に前記駆動回路の出力電圧のレベルを切り換える帰還制御回路とを含んでもよい。
【0016】
好適に、前記比較回路は、前記第1タイミング及び前記第2タイミングのそれぞれにおいて第1入力端子と第2入力端子の電圧を比較し、当該比較結果に応じた信号を出力する比較器と、前記第1タイミングにおいて、前記第1入力端子を前記第2ノードに接続するとともに前記第2入力端子を前記基準電圧に接続し、前記第2タイミングにおいて、前記第2入力端子を前記第2ノードに接続するとともに前記第1入力端子を前記基準電圧に接続する第3スイッチ回路とを含んでよい。
【0017】
好適に、前記第3スイッチ回路は、前記第1スイッチ回路と同じタイミングで接続が切り換わってよい。
これにより、前記第3スイッチ回路と前記第1スイッチ回路の制御を共通化できるため、構成が簡易になる。
【0018】
本発明の第2の観点は、物体の接近に応じた情報を入力する入力装置に関する。この第2の観点に係る入力装置は、前記物体の接近に応じて静電容量が変化する容量性センサと、周期的にレベルが変化する駆動電圧を前記容量性センサに印加し、当該駆動電圧の印加により、前記容量性センサの静電容量に応じた大きさを持つ正電荷と負電荷とが前記容量性センサから交互に転送される静電容量検出装置とを備える。
前記静電容量検出装置は、前記駆動電圧を出力するセンサ駆動回路と、第1電極及び第2電極を持つ第1キャパシタを含み、前記転送される負電荷を前記第1キャパシタの前記第1電極に蓄積し、前記転送される正電荷を前記第1キャパシタの前記第2電極に蓄積する電荷蓄積回路と、前記正電荷の転送が終了した後から前記負電荷の転送が開始する前までの期間に属する第1タイミング、及び、前記負電荷の転送が終了した後から前記正電荷の転送が開始する前までの期間に属する第2タイミングのそれぞれにおいて、前記第1キャパシタの前記第1電極に対する前記第2電極の電圧をしきい電圧と比較し、当該比較結果に応じた信号を出力する比較回路と、前記第1タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が前記比較回路から出力された場合、次の前記負電荷が転送されるときに、前記第1キャパシタの電圧を前記しきい電圧より低下させる正電荷を当該転送される負電荷に合成して前記電荷蓄積回路に入力し、前記第2タイミングにおいて前記第1キャパシタの電圧が前記しきい電圧を超えたことを示す信号が比較回路から出力された場合、次の前記正電荷が転送されるときに、前記第1キャパシタの電圧を前記しきい電圧より低下させる負電荷を当該転送される正電荷に合成して前記電荷蓄積回路に入力する帰還回路とを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、静電容量の検出速度を速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る入力装置の構成の一例を示す図である。
図2】検出部の構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る静電容量検出装置の各部の動作タイミングを示すタイミングチャートの一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る静電容量検出装置と図6に示す従来の回路との比較例を説明するための図であり、図6に示す従来の回路の各部の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
図5】本実施形態に係る静電容量検出装置と図6に示す従来の回路との比較例を説明するための図であり、本実施形態に係る静電容量検出装置の各部の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
図6】従来の回路の構成を示す図である。
図7図6に示す従来回路の各部の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る入力装置の構成の一例を示す図である。図1に示す入力装置は、複数の容量性センサSEを持ったセンサマトリクス1と、その容量性センサSEの静電容量を検出する静電容量検出装置2とを有する。
本実施形態に係る入力装置は、センサマトリクス1の複数の容量性センサSEが設けられた入力面に近接する指やペンなどの物体による操作に応じた情報を入力する装置であり、例えば、タッチパッドやタッチパネルなどの装置である。本明細書における「近接」は、近くにあることを意味するが、接触の有無を何れか一方に限定しない。
【0022】
センサマトリクス1は、X方向に延在した複数(図1の例では5本)の検出電極Lsと、Y方向に延在した複数(図1の例では5本))の駆動電極Ldを備える。複数の検出電極LsはY方向へ平行に並び、複数の駆動電極LdはX方向へ平行に並ぶ。X方向とY方向は互いに直交する。複数の検出電極Lsと複数の駆動電極Ldが格子状に交差しており、その各交差点付近に容量性センサSEが形成される。なお、図1の例では電極(Ls、Ld)の形状が短冊状に描かれているが、他の任意の形状(ダイヤモンドパターンなど)でもよい。
【0023】
静電容量検出装置2は、静電容量を検出する検出部3と、センサマトリクス1の各駆動電極Ldに静電容量検出用の駆動電圧を供給するセンサ駆動回路4と、処理部7と、記憶部8と、インターフェース部9を有する。
【0024】
センサ駆動回路4は、センサマトリクス1の各容量性センサSEへ周期的にレベルが変化する駆動電圧を印加する。例えば、センサ駆動回路4は、処理部7の制御に従って、複数の駆動電極Ldから順番に1つの駆動電極Ldを選択し、当該1つの駆動電極Ldの電位を周期的に変化させる。駆動電極Ldの電位が変化することにより、この駆動電極Ldと検出電極Lsとの交差点付近に形成された容量性センサSEに印加される駆動電圧が変化し、容量性センサSEにおいて充電や放電が生じる。
【0025】
検出部3は、センサマトリクス1の各容量性センサSEの静電容量を検出する。センサ駆動回路4の駆動電圧Vdrvによって駆動電極Ldのレベルが周期的に変化すると、容量性センサSEにおいて駆動電圧Vdrvのレベルの変化に応じた電荷が充電又は放電され、その電荷が検出電極Lsを介して静電容量検出装置2に転送される。容量性センサSEから静電容量検出装置2へ転送される電荷は、容量性センサSEの静電容量に応じた大きさを持っており、駆動電圧Vdrvの周期的なレベル変化に合わせて極性が交互に反転する。検出部3は、駆動電圧Vdrvの周期的な変化と同期したタイミングで、容量性センサSEから転送される正電荷及び負電荷を連続的にサンプリング(蓄積)し、そのサンプリングした電荷に基づいて静電容量を検出する。
【0026】
図2は、検出部3の構成の一例を示す図である。図2に示す検出部3は、電荷蓄積回路30と、比較回路31と、帰還回路32と、入力スイッチ回路SW4と、信号処理部34を有する。なお、図2の例は、1つの検出電極Lsを介して転送される電荷に基づいて容量性センサSEの静電容量を検出する1つのブロックを示す。検出部3は、図2に示すブロックを複数の検出電極Lsの各々について備えていてもよいし、セレクタを介して図2に示すブロックを複数の検出電極Lsと選択的に接続してもよい。
【0027】
電荷蓄積回路30は、容量性センサSEから転送される電荷を蓄積する回路であり、電荷蓄積用の第1キャパシタC1を有する。第1キャパシタC1は、第1電極E1及び第2電極E2を持つ。電荷蓄積回路30は、容量性センサSEから転送される負電荷を第1キャパシタC1の第1電極E1に蓄積し、容量性センサSEから転送される正電荷を第1キャパシタC1の第2電極E2に蓄積する。電荷蓄積回路30がこの電荷蓄積動作を繰り返すと、第1キャパシタC1の第1電極E1に対する第2電極E2の電圧Vc1は上昇する。
【0028】
図2の例において、電荷蓄積回路30は、第1スイッチ回路SW1と、電圧制御回路301を更に有する。
【0029】
第1スイッチ回路SW1は、第1キャパシタC1の第1電極E1及び第2電極E2と第1ノードN1及び第2ノードN2との接続を切り換える。第1ノードN1は、後述する入力スイッチ回路SW4を介して入力端子Tinに接続される。入力端子inは検出電極Lsに接続されるため、第1ノードN1には容量性センサSEからの正電荷と負電荷が交互に転送される。
【0030】
第1スイッチ回路SW1は、第1ノードN1に負電荷が転送される電荷転送期間Xnにおいて、第1キャパシタC1の第1電極E1を第1ノードN1に接続するとともに第1キャパシタC1の第2電極E2を第2ノードN2に接続し、第1ノードN1に正電荷が転送される電荷転送期間Xpにおいて、第1キャパシタC1の第2電極E2を第1ノードN1に接続するとともに第1キャパシタC1の第1電極E1を第2ノードN2に接続する。
【0031】
具体的には、第1スイッチ回路SW1は、後述する比較回路31において電荷転送期間Xpの比較結果が確定した後(後述する第1タイミングTM1の後)、次の電荷転送期間Xnが始まる前に、第1キャパシタC1の第1電極E1を第1ノードN1に接続するとともに第1キャパシタC1の第2電極E2を第2ノードN2に接続し、比較回路31において電荷転送期間Xnの比較結果が確定するまで(後述する第2タイミングTM2まで)、その接続状態を維持する。また、第1スイッチ回路SW1は、比較回路31において電荷転送期間Xnの比較結果が確定した後(第2タイミングTM2の後)、次の電荷転送期間Xpが始まる前に、第1キャパシタC1の第2電極E2を第1ノードN1に接続するとともに第1キャパシタC1の第1電極E1を第2ノードN2に接続し、比較回路31において電荷転送期間Xpの比較結果が確定するまで(第1タイミングTM1まで)、その接続状態を維持する。
【0032】
図2の例において、第1スイッチ回路SW1は、スイッチSp1,Sp2及びスイッチSn1,Sn2を有する。スイッチSp1は第1電極E1と第1ノードN1の間に接続され、スイッチSp2は第2電極E2と第2ノードN2の間に接続され、スイッチSn1は第2電極E2と第1ノードN1の間に接続され、スイッチSn2は第1電極E1と第2ノードN2の間に接続される。スイッチSp1,Sp2は、電荷転送期間Xnにおいてオンし、他の期間においてオフする。スイッチSn1,Sn2は、電荷転送期間Xpにおいてオンし、他の期間においてオフする。
【0033】
電圧制御回路301は、第1ノードN1と基準電圧Vrefとが等しくなるように第2電極E2の電圧Vampを制御する回路であり、図1の例では演算増幅器によって構成される。演算増幅器は、反転入力端子に第1ノードN1が接続され、非反転入力端子に基準電圧Vrefが入力され、出力端子に第2ノードN2が接続される。
【0034】
比較回路31は、容量性センサSEからの正電荷の転送が終了した後から負電荷の転送が開始する前までの期間に属する第1タイミングTM1、及び、容量性センサSEからの負電荷の転送が終了した後から正電荷の転送が開始する前までの期間に属する第2タイミングTM2のそれぞれにおいて、第1キャパシタC1の電圧Vc1(第1電極E1に対する第2電極E2の電圧)をしきい電圧と比較し、当該比較結果に応じた信号CMPを出力する。
【0035】
図2の例において、比較回路31は、第1キャパシタC1の電圧Vc1を直接測定する代わりに、電圧制御回路301の出力電圧Vampと基準電圧Vrefとの差の電圧Vx(=Vamp−Vref)を参照する。電圧Vxは、ノードN2とノードN1との電圧差にほぼ等しいため、第1キャパシタC1の電圧Vc1の極性を周期的に反転させたものとほぼ等しくなる。比較回路31は、この周期的な極性反転を打ち消すように電圧Vxの極性を反転させることで、極性の反転を生じない第1キャパシタC1の電圧Vc1を再現し、これをしきい電圧と比較する。後述するようにしきい電圧をゼロとすると、電圧の比較は比較器(コンパレータ)によって簡単に行うことができる。
【0036】
比較回路31は、例えば比較器311と第3スイッチ回路SW3を有する。
比較器311は、第1タイミングTM1及び第2タイミングTM2においてそれぞれ第1入力端子(−)と第2入力端子(+)の電圧を比較し、この比較結果に応じた信号CMPを出力する。例えば比較器311は、信号Lbが「1」になると第1入力端子(−)と第2入力端子(+)の電圧の比較結果に応じた信号CMPを出力し、信号Lbが「1」から「0」へ変化すると信号CMPの値を保持(ラッチ)する。この場合、信号Lbが「1」から「0」へ変化するタイミングは、上述した第1タイミングTM1及び第2タイミングTM2に相当する。
【0037】
比較器311は、例えばヒステリシス付きコンパレータであり、第2入力端子(+)が第1入力端子(−)に比べて一定の電圧ΔV1だけ高くなったときに信号CMPを「0」から「1」へ反転し、第2入力端子(+)が第1入力端子(−)に比べて一定の電圧ΔV2だけ低くなったときに信号CMPを「1」から「0」へ反転する。電圧ΔV1,ΔV2は、第1入力端子(−)と第2入力端子(+)の電圧がほぼ等しくなる(電圧Vc1がほぼゼロになる)ときにノイズ等の影響で信号CMPが振動することを防止できる程度に小さい値に設定される。
【0038】
第3スイッチ回路SW3は、第1タイミングTM1において、第1入力端子(−)を第2ノードN2に接続するとともに第2入力端子(+)を基準電圧Vrefに接続し、第2タイミングTM2において、第2入力端子(+)を第2ノードN2に接続するとともに第1入力端子(−)を基準電圧Vrefに接続する。
【0039】
例えば第3スイッチ回路SW3は、第1スイッチ回路SW1と同じタイミングで接続を切り換える。
具体的には、第3スイッチ回路SW3は、容量性センサSEから負電荷が転送される電荷転送期間Xnの前後において、第1キャパシタC1の第1電極E1が第1ノードN1に接続されるとともに第1キャパシタC1の第2電極E2が第2ノードN2に接続されるときに、第2入力端子(+)を第2ノードN2に接続するとともに第1入力端子(−)を基準電圧Vrefに接続する。この場合、電圧Vxの極性は電圧Vc1と同じになり、第1キャパシタC1への電荷の蓄積に伴って電圧Vxは上昇する。電圧Vxがゼロよりも上昇し、比較器311のヒステリシスの電圧ΔV1よりも高くなると、比較器311は信号CMPを「0」から「1」に反転する。
【0040】
他方、第3スイッチ回路SW3は、容量性センサSEから正電荷が転送される電荷転送期間Xpの前後において、第1キャパシタC1の第2電極E2が第1ノードN1に接続されるとともに第1キャパシタC1の第1電極E1が第2ノードN2に接続されるときに、第1入力端子(−)を第2ノードN2に接続するとともに第2入力端子(+)を基準電圧Vrefに接続する。この場合、電圧Vxの極性は電圧Vc1と逆になり、第1キャパシタC1への電荷の蓄積に伴って電圧Vxは低下する。電圧Vxがゼロよりも低下し、比較器311のヒステリシスの電圧−ΔV2よりも低くなると、比較器311は信号CMPを「0」から「1」に反転する。
【0041】
帰還回路32は、正電荷の転送が終了した後の第1タイミングTM1において第1キャパシタC1の電圧Vc1がしきい電圧(ゼロ)を超えたことを示す「1」の信号CMPが比較回路31から出力された場合、次の負電荷が転送されるときに、当該転送される負電荷に正電荷を合成して電荷蓄積回路30に入力する。この正電荷は、容量性センサSEから転送される負電荷に比べて大きな電荷量を持っており、第1キャパシタC1の電圧Vc1をしきい電圧(ゼロ)より低下させる。
また、帰還回路32は、負電荷の転送が終了した後の第2タイミングTM2において第1キャパシタC1の電圧Vc1がしきい電圧(ゼロ)を超えたことを示す「1」の信号CMPが比較回路から出力された場合、次の正電荷が転送されるときに、当該転送される正電荷に負電荷を合成して電荷蓄積回路30に入力する。この負電荷は、容量性センサSEから転送される正電荷に比べて大きな電荷量を持っており、第1キャパシタC1の電圧Vc1をしきい電圧(ゼロ)より低下させる。
つまり帰還回路32は、第1キャパシタC1への電荷の蓄積によって上昇を続ける電圧Vc1がしきい電圧(ゼロ)を超えたとき、電圧Vc1がしきい電圧(ゼロ)より低くなるように、第1キャパシタC1へ一定の電荷を供給する。
【0042】
帰還回路32は、例えば第2キャパシタC2と、第2スイッチ回路SW2と、駆動回路321と、帰還制御回路322を有する。
【0043】
第2スイッチ回路SW2は、電荷転送期間Xp,Xnにおいて、第2キャパシタC2の一方の端子を第1ノードN1に接続し、電荷転送期間Xp,Xnの合間の期間において、第2キャパシタC2の一方の端子を基準電圧Vrefに接続する。
【0044】
帰還回路32は、出力電圧のレベルを基準電圧Vrefより高いレベルと基準電圧Vrefより低いレベルの一方から他方へ切り換えることが可能であり、例えば、電源電圧に近いハイレベル電圧と、グランドレベルに近いローレベル電圧を出力可能なバッファ回路等を含んで構成される。
【0045】
帰還制御回路322は、第1タイミングTM1又は第2タイミングTM2において第1キャパシタC1の電圧Vc1がしきい電圧を超えたことを示す「1」の信号CMPが比較回路31から出力された場合、次の電荷転送期間(Xp,Xn)に駆動回路321の出力電圧のレベルを切り換える信号DSを出力する。駆動回路321の出力電圧のレベルが切り換えられると、第2キャパシタC2において充電又は放電が生じ、これに伴う帰還電荷Qdsが第2スイッチ回路SW2を介して第1ノードN1に供給される。帰還電荷Qdsは、容量性センサSEからの電荷Qin(転送電荷Qinともいう)と第1ノードN1において合成され、電荷蓄積回路30に入力される。
【0046】
他方、帰還制御回路322は、第1タイミングTM1又は第2タイミングTM2において第1キャパシタC1の電圧がしきい電圧を超えていないことを示す「0」の信号CMPが比較回路31から出力された場合、次の電荷転送期間(Xp,Xn)が終了した後に駆動回路321の出力電圧のレベルを切り換える信号DSを出力する。この場合も、第2キャパシタC2において充電又は放電が生じ、これに伴う電荷が発生するが、この電荷は転送電荷Qinとは合成されず、第2スイッチ回路SW2を介して基準電圧Vrefの供給ラインに排出される。基準電圧Vrefは第1ノードN1の電圧とほぼ等しいため、このとき第2キャパシタC2に蓄積される電荷は、第1ノードN1に第2キャパシタC2が接続された場合とほぼ等しい。
【0047】
入力スイッチ回路SW4は、容量性センサSEから第1ノードN1へ正電荷及び負電荷を転送する経路に設けられ、電荷転送期間(Xp,Xn)においてオンし、電荷転送期間(Xp,Xn)の合間においてオフする。帰還回路32の第2スイッチ回路SW2は、この入力スイッチ回路SW4と同じタイミングで接続が切り換わる。
【0048】
信号処理部34は、比較回路31において出力される信号CMPにデジタルフィルタ処理(ローパスフィルタ処理、デシメーション処理等)を施し、静電容量の検出値を示す所定ビット長のデジタル値を生成する。
以上が、検出部3の説明である。
【0049】
図1に戻る。
処理部7は、入力装置の全体的な動作を制御する回路であり、例えば、後述する記憶部8に格納されるプログラムの命令コードに従って処理を行うコンピュータや、特定の機能を実現するロジック回路を含んで構成される。処理部7の処理は、その全てをコンピュータとプログラムにより実現してもよいし、その一部若しくは全部を専用のロジック回路で実現してもよい。
【0050】
処理部7は、入力面上に分布する複数の容量性センサSEにおいて物体(指、ペンなど)の近接による静電容量の変化を1サイクルごとに検出する周期的な検出動作を行うように検出部3及びセンサ駆動回路4を制御する。具体的には、処理部7は、センサ駆動回路4における駆動電極Ldの選択と駆動電圧の発生、並びに、検出部3における検出電極Lsからの電荷のサンプリングが周期的に適切なタイミングで行われるように、これらの回路を制御する。例えば処理部7は、上述した第1スイッチ回路SW1,第2スイッチ回路SW2,第3スイッチ回路SW3,入力スイッチ回路SW4の各制御信号や、比較器311の信号Lbなどを生成する。
【0051】
また、処理部7は、検出部3によって検出された各容量性センサSEの静電容量の検出値に基づいて、入力面に接触する物体の検出や、物体の接触位置の座標演算を行う。
【0052】
記憶部8は、処理部7において処理に使用される定数データや変数データを記憶する。処理部7がコンピュータを含む場合、記憶部8はそのコンピュータにおいて実行されるプログラムを記憶してもよい。記憶部8は、例えば、DRAMやSRAMなどの揮発性メモリ、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、ハードディスクなどを含んで構成される。
【0053】
インターフェース部9は、入力装置と他の装置(入力装置を搭載する情報機器のコントロール用ICなど)との間でデータをやり取りするための回路である。処理部7は、記憶部8に記憶される情報をインターフェース部9から図示しない制御装置等へ出力する。また、インターフェース部9は、処理部7のコンピュータにおいて実行されるプログラムを不図示のディスクドライブ装置(非一時的な有形の記録媒体に記録されたプログラムを読み取る装置)やサーバなどから取得して、記憶部8にロードしてもよい。
【0054】
ここで、上述した構成を有する本実施形態に係る入力装置において、容量性センサSEの電荷を検出する静電容量検出装置2の動作を説明する。
【0055】
図3は、本実施形態に係る静電容量検出装置2の各部の動作タイミングを示すタイミングチャートの一例を示す図である。
図3における「CLK」は静電容量検出装置2の動作の基準となるクロック信号を示す。また、第3スイッチ回路SW3のチャートにおける「cross」は、電圧Vxの極性を反転して比較器311に入力している期間、すなわち、第1入力端子(−)を第2ノードN2に接続するとともに第2入力端子(+)を基準電圧Vrefに接続する期間を示す。
【0056】
電荷転送期間(Xp,Xn)の開始時において、駆動電圧Vdrvのレベルが反転し、容量性センサSEにおいて充電又は放電が起こり、その電荷が検出電極Lsを介して静電容量検出装置2に転送される。電荷転送期間(Xp,Xn)において入力スイッチ回路SW4がオンするため、容量性センサSEの電荷は第1ノードN1に転送される。また、このとき、信号DSによって駆動回路321の出力電圧のレベルが切り換わると、第2キャパシタC2の充電又は放電により帰還電荷Qdsが発生し、この帰還電荷Qdsが第2スイッチ回路SW2を介して第1ノードN1に供給される。
【0057】
電荷転送期間(Xp,Xn)が終了すると、信号Lbが「0」から「1」へ立ち上がり、比較回路31において比較動作が行われる。信号Lbが「1」から「0」へ立ち下がると、そのときの比較結果を示す信号CMPが比較回路31において保持され、比較回路31の比較結果が確定する。比較結果が確定すると、次の電荷転送期間(Xp,Xn)が始まる前に第1スイッチ回路SW1の接続が切り換わる(Sp1,Sp2,Sn1,Sn2)。第1スイッチ回路SW1の接続の切り換えに合わせて、第3スイッチ回路SW3の接続も切り換わる。
【0058】
正電荷の電荷転送期間Xpが終わった後、信号Lbが「0」から「1」へ立ち上がる第1タイミングTM1において信号CMPが「1」であった場合、次の負電荷の電荷転送期間Xnが開始するときに信号DSの論理値が反転し、駆動回路321の出力電圧のレベルが切り換わる。これにより、第2キャパシタC2から第1ノードN1へ正の帰還電荷Qdsが供給され、第1キャパシタC1の電圧Vc1がゼロより低い電圧となる。同様に、負電荷の電荷転送期間Xnが終わった後、信号Lbが「0」から「1」へ立ち上がる第2タイミングTM2において信号CMPが「1」であった場合、次の正電荷の電荷転送期間Xpが開始するときに信号DSの論理値が反転し、駆動回路321の出力電圧のレベルが切り換わる。これにより、第2キャパシタC2から第1ノードN1へ負の帰還電荷Qdsが供給され、第1キャパシタC1の電圧Vc1がゼロより低い電圧となる。
【0059】
一方、第1タイミングTM1や第2タイミングTM2において信号CMPが「0」であった場合、次の電荷転送期間(Xp,Xn)において、帰還回路32による帰還電荷Qdsは第1ノードN1に供給されない。帰還回路32による電荷は、電荷転送期間(Xp,Xn)が終わった後、第2スイッチ回路SW2を介して基準電圧Vrefの供給ラインに排出される。
【0060】
なお、第1ノードN1の電圧と基準電圧Vrefはほぼ等しいため、第2キャパシタC2から第1ノードN1へ帰還電荷Qdsを供給した場合と、第2キャパシタC2から基準電圧Vrefの供給ラインへ電荷を排出した場合とで、次に駆動回路321の出力電圧が切り換わったときに生じる電荷量がほぼ変わらない。
【0061】
図4図5は、同一の条件で容量性センサSEから電荷が転送される場合における本実施形態に係る静電容量検出装置2と図7に示す従来の回路との比較例を説明するための図である。図4は、従来の回路のタイミングチャートを示し、図5は本実施形態に係る静電容量検出装置2のタイミングチャートを示す。
【0062】
図4及び図5における「Vamp」は、電圧制御回路301(演算増幅器101)の出力電圧Vampの変化を模式的に表したチャートである。図における数値は、出力電圧Vampの値を相対的に表す。図4及び図5の例では、第2キャパシタC2から第1ノードN1へ帰還電荷Qdsが供給された場合に、第1キャパシタC1の電圧Vc1は「5」だけ低下する。他方、容量性センサSEから転送される電荷を蓄積する度に、第1キャパシタC1の電圧は「2」ずつ上昇する。
【0063】
図4において示すように、従来の回路では、2回の電荷転送期間(Xp,Xn)において、信号CMPの出力が1回しか行われない。また、比較器102において「1」の信号CMPが1回出力されると、2回の電荷転送期間(Xp,Xn)において第1キャパシタC1の電圧Vc1がそれぞれ「5」ずつ低下し、合計で「10」も低下する。そのため、電圧Vc1が転送電荷Qinによってゼロ付近に戻るまでの時間が長くなる。
【0064】
一方、図5において示すように、本実施形態に係る静電容量検出装置2では、1回の電荷転送期間ごとに比較回路31で比較動作が行われ、比較結果の信号CMPが出力される。また、比較回路31において「1」の信号CMPが1回出力されると、帰還回路32による帰還電荷Qdsの供給は1回だけ行われるため、第1キャパシタC1の電圧Vc1の低下は「5」だけである。そのため、電圧Vc1が転送電荷Qinによってゼロ付近に戻るまでの時間は、図6に示す従来の回路に比べて短くなる。
本実施形態に係る静電容量検出装置2による静電容量の検出速度は、図6に示す従来の回路の約2倍になる。すなわち、本実施形態に係る静電容量検出装置2は、図6に示す従来の回路に比べて約半分の時間で同一ビットパターンの信号CMPを生成する。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、正電荷の転送が終了した後から負電荷の転送が開始する前までの期間に属する第1タイミングTM1、及び、負電荷の転送が終了した後から正電荷の転送が開始する前までの期間に属する第2タイミングTM2において、それぞれ第1キャパシタC1の電圧Vc1としきい電圧との比較が行われ、その比較結果に応じた信号CMPが生成される。また、第1タイミングTM1において第1キャパシタC1の電圧Vc1がしきい電圧を超えたことを示す「1」の信号CMPが比較回路31から出力された場合、次の負電荷が転送されるときに、帰還回路32による正電荷が当該転送される負電荷に合成されて電荷蓄積回路30に入力され、第1キャパシタC1の電圧Vc1がしきい電圧より低下する。第2タイミングTM2において第1キャパシタC1の電圧Vc1がしきい電圧を超えたことを示す「1」の信号CMPが比較回路31から出力された場合にも、次の正電荷が転送されるときに、帰還回路32による負電荷が当該転送される正電荷に合成されて電荷蓄積回路30に入力され、第1キャパシタC1の電圧Vc1がしきい電圧より低下する。
すなわち、正電荷が転送される場合及び負電荷が転送される場合のそれぞれにおいて、デルタシグマ変調器としての動作(積分値の量子化、出力信号の帰還)が実行される。従って、キャパシタへの2回の電荷転送(正電荷,負電荷)が行われなければキャパシタの電圧としきい電圧との比較結果が得られない従来の回路に比べて、検出速度を高速化することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、第2スイッチ回路SW2と入力スイッチ回路SW4の制御を共通化でき、第3スイッチ回路SW3と第1スイッチ回路SW1についても制御を共通化できるため、回路構成を簡易化できる。
【0067】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、更に種々のバリエーションを含んでいる。
【0068】
上述の実施形態では、第1タイミングTM1又は第2タイミングTM2において第1キャパシタC1の電圧がしきい電圧を超えていないことを示す「0」の信号CMPが比較回路31から出力された場合、次の電荷転送期間(Xp,Xn)が終了した後、第2スイッチ回路SW2の一方の端子が基準電圧Vrefに接続された状態において、駆動回路321の出力電圧のレベルが切り換わる(信号DSの値が反転する)。
しかしながら、第2キャパシタC2の一方の端子が基準電圧Vrefに接続された状態であれば、駆動回路321の出力電圧のレベルが切り換わっても、第2キャパシタC2から第1ノードN1へ帰還電荷Qdsが供給されることはない。そのため、信号CMPの値に応じて第2スイッチ回路SW2の接続を制御した場合、信号CMPが「0」のときに駆動回路321の出力電圧のレベルを切り換えるタイミングは、電荷転送期間(Xp,Xn)の終了後に限定されない。
【0069】
例えば、本発明の他の実施形態において、第2スイッチ回路SW2は、第1タイミングTM1又は第2タイミングTM2において第1キャパシタC1の電圧Vc1がしきい電圧を超えたことを示す「1」の信号CMPが比較回路31から出力された場合、次の電荷転送期間(Xp,Xn)において第2キャパシタC2の一方の端子を第1ノードN1に接続する。
他方、第2スイッチ回路SW2は、第1タイミングTM1又は第2タイミングTM2において第1キャパシタC1の電圧Vc1がしきい電圧を超えていないことを示す「0」の信号が比較回路31から出力された場合、次の電荷転送期間(Xp,Xn)において、第2キャパシタC2の一方の端子を基準電圧Vrefに接続する。
この場合、帰還制御回路322は、電荷転送期間(Xp,Xn)に駆動回路321の出力電圧のレベルを切り換えればよく、比較回路31の信号CMPに応じて切り換えのタイミングを変更しなくてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…センサマトリクス、2…静電容量検出装置、3…検出部、30…電荷蓄積回路、301…電圧制御回路、31…比較回路、311…比較器、32…帰還回路、321…駆動回路、322…帰還制御回路、34…信号処理部、4…センサ駆動回路、7…処理部、8…記憶部、9…インターフェース部、SE…容量性センサ、N1…第1ノード、N2…第2ノード、C1…第1キャパシタ、C2…第2キャパシタ、SW1…第1スイッチ回路、SW2…第2スイッチ回路、SW3…第3スイッチ回路、SW4…入力スイッチ回路、E1…第1電極、E2…第2電極、Qin…転送電荷、Qds…帰還電荷、TM1…第1タイミング、TM2…第2タイミング。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7