【実施例1】
【0045】
2つの部品からなるシステム
以下に記載されるのは、特にはアノード/カソード電圧差試験を含む自己試験を含み得る2つの部品からなるシステムの一例である。たとえば、ある変形態様では、オフ電流自己試験を含むデバイスは、イオントフォレシスデバイスなど、2つの部品からなる電気輸送治療薬送達デバイスとして構成され、デバイスの2つの部品が分離して提供され、使用の際に、つまりは使用の前に、単一の電源オンされたデバイスを形成するために組み立てられる。この例では、デバイスの一方の部品は、本明細書において電気モジュールと呼ばれることもあり、デバイス用の回路構成要素のすべてならびにデバイス用の電源(たとえば電池)を本質的に保持する。他方の部品は、本明細書において貯蔵部モジュールと呼ばれることもあり、患者に治療薬を送達するために必要な電極およびヒドロゲルと共に送達されるべき治療薬を含有する。デバイスは、電気モジュールが貯蔵部モジュールと結合するまで電源が電気モジュール内の回路構成要素の残りの部分から電気的に分離された状態に保たれるように構成される。したがって、本明細書において提供される実施形態により、電気モジュールと貯蔵部モジュールの結合が可能になり、それによって、1回の行為で2つのモジュールが単一のユニットを形成し、電池が回路構成要素に導入され、それによって、使用者による1回の行為でデバイスの電源を投入する。
【0046】
本明細書で用いる場合、同時という用語およびその文法上の変形は、2つ以上の事象がほぼ同じときに発生すること、および/または2つ以上の事象が介在ステップなしで発生することを示す。たとえば、モジュールの接続が回路への電池の接続と同時に発生するとき、「同時に」という用語は、使用者による1回の行為で、モジュールが接続されると、ほぼ同じときに電池が回路に接続されること、および回路に電池を接続するために使用者の側で必要な追加のステップがないことを示す。「ほぼ同時に」という用語および文法上の変形は、2つの事象がほぼ同じときに発生し、2つの事象の間に重要な行為は使用者によって必要とされないことを示す。例示のためだけに、このような重要な行為は、(本明細書において説明する電源投入スイッチ以外の)別個のスイッチの作動、タブの取り外し、または2つのモジュールを互いに接続すると電気モジュール内の電池を電気モジュール内の回路構成要素に接続する他の行為とすることができる。
【0047】
本明細書において特に修正しない限り、「to break(破壊すること)」という用語およびその文法上の変形は、もはやその意図された目的のために動作可能でない物を適切に破壊または変形させることを指す。
【0048】
電気輸送デバイスは、皮膚などの表面を通したイオン化合物(たとえば、フェンタニルおよび類似体などのイオン性薬物、ポリペプチドなど)の電気輸送送達のために使用前に組み立てられ得る。電気輸送デバイスは、本明細書において電気モジュールと呼ばれる頂部または上部と、本明細書において貯蔵部モジュールと呼ばれる底部または下部とを備え得る。この電気モジュールは、回路構成要素(たとえばプリント回路基板)と、電源(たとえば電池)と、1つまたは複数の電源投入スイッチと、デバイスの操作に望ましいと考えられ得るこのような他の回路構成要素(作動スイッチ、コントローラ、液晶ダイオード(LCD)ディスプレイ、コネクタ、発光ダイオード(LED)、可聴インジケータ(たとえば音響変換器)、またはこれらの組み合わせなど)、ならびに電気モジュールを貯蔵部モジュールに電気的に接続するための電気出力接点を含み得る。使用者により入手されたとき、電気モジュールは、貯蔵部モジュールから分離されている。この状態では、電池は、電気回路の外部(であるが、電気モジュールの内部)に維持され、それによって、使用前に電池が回路を通して放電するのを防止する。電気モジュールと貯蔵部モジュールを結合する前は、電池は回路から電気的に分離されているので、回路構成要素は本質的には、2つのモジュールの結合の前には電荷を回路構成要素に印加させず、回路構成要素は、電池が回路内にある場合に比べて腐食をはるかに受けにくくなる。ある変形態様では、オフ電流モジュールは、デバイス/システムの2つの部品が接続されていないときであっても(たとえば、デバイスが電源オフの状態、および/または、薬物の送達を駆動する電池が接続されていない状態であっても)、作動するように構成されることがある。したがって、分離した電源/電池は、ある変形態様では、オフ電流モジュールに電力供給できる。他の変形態様では、オフ電流モジュールは、電源オンとされているが、デバイスがオフ状態にあるとき(たとえば、システム/デバイスの2つの半体同士が接続されるとき)、作動するように構成されてもよい。本明細書に記載される変形態様のいずれかでは、オフ電流モジュールは、デバイス/システムの薬物送達サブコンポーネントから電気的に隔離されてもよい。したがって、短絡がデバイスの薬物送達コンポーネントで発生したとしても、オフ電流モジュールは作動できる。
【0049】
貯蔵部モジュールは、治療薬を患者に送達するための電極と貯蔵部とを含み得る。少なくとも1つの貯蔵部は、送達されるべき治療薬を含有し得る。少なくとも1つのカウンタ貯蔵部(counter reservoir)が設けられ、このカウンタ貯蔵部は一般には治療薬を含有しないが、いくつかの実施形態では、カウンタ貯蔵部が治療薬を含有することが可能である。貯蔵部モジュールは、電気モジュールに接続される前は、電気モジュールから物理的および電気的に分離されたままである。たとえば、水、微粒子、蒸気などによる混入を防止するために、プラスチックパウチまたはホイルパウチなどのパウチ内でモジュールの一方または両方を密封することができる。非限定的な一例として、電気モジュールと貯蔵部モジュールの両方を同じパウチ内で密封することができる。さらなる非限定的な一例として、貯蔵部モジュールをパウチ内で密封し、この密封されたパウチの外部に電気モジュールを置くことができる。他の非限定的な例として、この2つのモジュールを別個のパウチ内で密封することができる。
【0050】
使用の前に(たとえば使用の直前に)、電気モジュールを貯蔵部モジュールと結合して、単一のユニットを形成し、この単一のユニットは、1回の行為で、電池を回路へと接続し、デバイスの電源を投入する。「使用の前に」および「使用の直前に」という用語について、以下により詳細に説明する。一般に、これらの用語は、デバイスの2つの部品が使用者により結合されたこと、および次にデバイスの2つの部品を結合した後の所定の時間ウィンドウたとえば0から8時間または0から72時間以内に治療薬を患者に送達するためにデバイスを使用することを示すことを意図する。この所定の時間ウィンドウは、治療薬、送達されるべき薬剤の量、種々の規制当局の要件などに応じて、変化させることができる。分かりやすいように、電気モジュールと貯蔵部モジュールの結合は、製造後、延期され、使用の時点で実行され、したがって、2つのモジュールが使用者により結合されるまで、出荷中および保管中は、電気モジュールに封入された電源が回路構成要素から電気的に分離されることを理解されたい。
【0051】
先に述べたように、電気モジュールと貯蔵部モジュールの結合により、電池が回路へと接続され、使用者の側で必要なさらなる行為なしで、電源が投入された状態を達成する。たとえば、電池を回路へと接続するために使用者が電源スイッチを作動させるまたはタブを取り外す必要はない。2つのモジュールをいったん適切に結合すると、電力が回路構成要素に供給される。回路構成要素は、その後、正常に動作することができる。正常な動作としては、種々の回路構成要素テスト、種々のインジケータ(前述のLCD、LED、および音響変換器など)の動作、種々の論理フラグの設定、エラー状態および/または論理フラグの検出などがあり得る。正常な動作としては、たとえば作動ボタンまたは作動スイッチを介しての作動信号の受け取り、および貯蔵部モジュール上の電気入力に接続された電気出力を介しての電極への電力の提供もある。
【0052】
使用前の腐食および電池の放電を減少させることに加えて、デバイスの別の利点は、電気モジュールからの電気出力および貯蔵部モジュールへの電気入力(すなわち2つのモジュール間の接点)は、電池を回路へと接続する電源投入スイッチから電気的および物理的に分離されることである。少なくとも、これによって、電池を回路へと接続する電源投入スイッチを電気モジュールの内部に完全に保つことができるので、これは有利である。これによって、電源投入スイッチを備える接点を混入物なしに保つことができる。電気モジュールは、少なくともいくつかの実施形態では、水(水蒸気を含む)および/または微粒子などの混入物に対して密封されるからである。本明細書において説明するように、電源投入スイッチは、エラストマーシールを通してアクチュエータによって閉じられ、これによって、スイッチを備える接点を電気モジュールの外部の環境に曝露することなく、電池を回路へと接続することが可能である。
【0053】
いくつかの実施形態では、2つ以上の電源投入スイッチが用いられる。いくつかの特定の実施形態では、電源投入スイッチは、互いから物理的に遠い、たとえば0.1cmから数cm程度のところにある。いくつかの実施形態では、スイッチは、互いから少なくとも0.5cmのところにある。
【0054】
2つのモジュールが一体的なデバイスを形成するので、この2つのモジュールは、有利には、2つのモジュールを1つにまとめる1つまたは複数の機械的連結器のペアを含む。このような連結器対としては、いくつかの実施形態では2つのモジュールを結合した後でこの2つのモジュールを強制的に離す場合に機能しなくなる(変形するおよび/または破壊する)ように設計された、スナップソケット-スナップソケットの対があり得る。したがって、本明細書において説明するデバイスは、デバイスが確実に1回のみ使用されるようにする機械的手段を実施するように適合することができるので、1回の使用によく適している。
【0055】
いくつかの実施形態では、デバイスは、あるいは、またはこれに加えて、デバイスが確実に1回のみ使用されるようにする電気的手段を用いることができる。たとえば、電気的手段は、デバイスの電源を投入したとき電源投入カウンタを増加する、電気モジュール内のコントローラを用いることができる。このような実施形態では、コントローラがカウンタを増加する前または後に、コントローラは、カウンタ上でカウントの数を検出し、電源投入のカウントが何らかの所定の値を超えたことが明らかになった場合、コントローラはデバイスの電源を遮断するルーチンを実行する。非限定的な一例として、カウンタは最初、製造時にゼロに設定することができる。デバイスは、次に、製造後テスト中に外部電源によって電源を投入し、この投入をコントローラは1回の電源投入事象と解釈し、したがってデバイスは電源投入カウンタを1カウント増加することができる。次いで、使用の前にデバイスが使用者によって組み立てられるとき、コントローラは、回路への電池の接続を電源投入事象と解釈し、電源投入カウンタを1だけ増加する。次に、コントローラがカウンタ上のカウントを検出する。カウントが2以下である場合、コントローラは、デバイスが正常に動作することを可能にする。しかし、カウントが3以上である場合、コントローラは電源遮断シーケンスを開始する。
【0056】
第2の非限定的な一例として、カウンタは最初、製造時にゼロに設定することができる。デバイスは、次に、製造後テスト中に外部電源によって電源を投入し、この投入をコントローラは1回の電源投入事象と解釈し、したがってデバイスは電源投入カウンタを1カウント増加することができる。次いで、使用の前にデバイスが使用者によって組み立てられるとき、コントローラがカウンタ上のカウントを検出する。カウントが1以下である場合、コントローラは、電源投入カウンタを増加し、デバイスが正常に動作することを可能にする。しかし、カウントが2以上である場合、コントローラは電源遮断シーケンスを開始する。
【0057】
本明細書では、電源投入シーケンスを係数することについて言及されているが、電源投入事象の代わりに、電源投入事象に加えて、または電源投入事象の代理として、他の事象を係数することができる。
【0058】
電源遮断シーケンスは、本明細書においてその全体が組み込まれる米国特許第6,216,003B1号に記載されているシーケンスなどのシーケンスとすることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、デバイスは、機械的手段(たとえば一方向スナップ)と電気的手段(たとえば電源投入カウンタ)の両方を結合して、確実にデバイスが複数回使用できないようにする。
【0060】
単回使用デバイス/システムとしては、たとえばデバイスの電源を投入した後の特定の時間ウィンドウ以内での、治療薬の複数回の投与があり得る。治療薬を投与できる持続時間および/またはデバイスによって投与可能な全回数は、あらかじめ決定され、コントローラにプログラミングすることができる。投与できる適用量の数および/または治療薬を投与できる期間を制御するための手段は、たとえば、本明細書においてその全体が組み込まれる米国特許第6,216,003B1号に記載されている。分かりやすいように、「単回使用」という用語は、デバイスを薬物の単回投与に限定することを意図するものではない。むしろ、「単回使用」という用語は、複数の患者におけるまたは複数の機会におけるデバイスの使用を除外することを意図する。「単回使用」という用語はまた、複数の貯蔵部モジュールを有する電気モジュールおよび/もしくは複数の電気モジュールを有する貯蔵部モジュールの使用ならびに/または電気モジュールからの貯蔵部モジュールの取り外しおよび再取り付けを除外することを意図する。したがって、単回使用の特徴は、いくつかの実施形態では、患者または別の者が薬物を節約して、その薬物を後で使用するのを防止するために用いられる。いくつかの実施形態では、このような特徴は、治療薬の乱用を防止するために用いることができる。
【0061】
本明細書において説明するデバイスの少なくともいくつかの実施形態では、デバイスは、デバイスの動作不良の可能性を低下させるために、使用前および使用中に回路構成要素が混入されることを防止するように構成される。たとえば、使用環境としては、緊急治療室、手術中医学的処置環境、手術後の医学的処置環境、または他の医学的処置環境があり得る。これらの環境では、潜在的な微粒子および液体が蔓延する。したがって、デバイスの少なくともいくつかの実施形態は、具体的には回路構成要素などのデバイスの作動部品に周囲の混入物が侵入するのを除外するために、1つまたは複数のシールが形成されるように構成される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のシールは、電気モジュール上の電気出力と貯蔵部モジュール上の電気入力との間の電気的接触の周囲に形成される。
【0062】
いくつかの実施形態では、電源投入接点は、微粒子および流体などの混入物の侵入から密封される。特定の実施形態では、電源投入接点は、モジュールを結合する前、結合の作用中、および2つのモジュールを結合した後で、密封される。少なくともいくつかのこのような場合では、電源投入接点は、その間に挟まれたエラストマーによって作用するアクチュエータによって作動する(閉位置に切り替える)ことができ、このエラストマーは、アクチュエータ(柱または他の細長い部材など)によってこれを同時に変形させながら電源投入接点を閉位置に押し込む不透過性シールを維持する。
【0063】
他のシールが可能であり、望ましいことがある。たとえば、2つの部品を結合したとき2つの部品(モジュール)の間にシールを形成することができる。
【0064】
本明細書において説明するデバイスは、添付の各図に描かれている非限定的な例を鑑みて当業者によって考慮することができる。
図2Aから始めると、例示的な電気輸送デバイス10が描かれている。このデバイスは、2つの部品、すなわち、本明細書において電気モジュール20と呼ばれる上方部品と、本明細書において貯蔵部モジュール30と呼ばれる下方部品とを備える。電気モジュール20は電気モジュール本体200を含み、電気モジュール本体200は、頂(近位)面220と、底(遠位)面(この図には描かれていない)とを有する。モジュール本体200は、丸い端部234と、四角い端部254とを有する。頂面220は、LCDディスプレイ208を見るための窓または開口204と、作動ボタン202と、LED窓またはLED開口232とを含む。この図には、位置合わせ機構206も視認可能である。
【0065】
貯蔵部モジュール30は貯蔵部モジュール本体300を含み、貯蔵部モジュール本体300は、電極、貯蔵部(本明細書における説明を参照されたい)、および入力接点316を支持する。この図では上面320を見ることができ、上面320の上では、入力接点シール322が入力接点316を囲む。シール322は、電気モジュール20上の対応する部材により混入物不浸透性のシールを形成する(本明細書における説明を参照されたい)。貯蔵部モジュール本体300の上面320は、丸い端部352と、四角い端部356とを有する。また、スナップ受け入れ具310および312が視認可能であり、スナップ受け入れ具310および312は、電気モジュール20の下面の上の対応するスナップと協働するように構成される。いくつかの実施形態では、スナップ310および312は異なる寸法であり、したがって、それぞれが適切な寸法のスナップのみを受け入れることができ、その結果、デバイス10は間違った方向で組み立てることはできない。2つのモジュール20、30の適切な位置合わせへの視覚的な助けとして、貯蔵部モジュール30は位置合わせ機構306も有し、使用者は、位置合わせ機構306を電気モジュール20上の位置合わせ機構206と位置合わせさせて、確実に2つのモジュール20、30が適切に位置合わせされるようにすることができる。
【0066】
また、この図では、凹部314が視認可能であり、凹部314は、いくつかの実施形態では、電気モジュール20の下面の上の相補的な突き出す部材を一方向でのみ納めるのに十分なほどの形状を持つ。それによって、凹部314および電気モジュール20上の出っ張りは主な機能を実行し、2つのモジュールを一方向でのみ組み付けることができること、および/または適切な方向に2つのモジュールを組み付けるように使用者を導くことをさらに確実にする。別の例示的かつ非限定的な主な(位置合わせ)特徴は、貯蔵部モジュール30に対する電気モジュール20の非対称性である。たとえば
図2Aに描かれているように、電気モジュール20の丸い端部234は貯蔵部モジュールの丸い端部352に対応する。電気モジュール20の四角い端部254は貯蔵部モジュールの四角い端部356に対応する。結果としてもたらされる非対称性は、使用者が電気モジュール20を貯蔵部モジュール30と位置合わせする助けとなり、使用者が2つのモジュールを一方向でのみ確実に組み付けることができるようにする。丸い端部は、この図では、見る人の遠位にあるように描かれているが、これは1つの可能な方向に過ぎないことが当業者には理解されよう。非限定的な一例として、丸い部分は、他方の端部またはデバイスの側面のうちの1つにあることができる。さらなる主な特徴について、本明細書においてより詳細に説明する。
【0067】
この図には、1つの電源投入用柱318も描かれており、電源投入用柱318は、貯蔵部モジュール30の上面320から突き出す。電源投入用柱318は、電気モジュール上の対応する特徴と接触して電源投入スイッチを作動させ、それによって、電気モジュール20内の電池を電気モジュール20内に含まれる回路構成要素へと電気的に接続するように構成される。これらの特徴について、以下でより詳細に説明する。しかし、この図では1つの電源投入用柱318のみが描かれているが、意図される電源投入用柱のうちの1つがデバイスの遠近法(perspective)によって遮られていることに留意されたい。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの柱および少なくとも2つの電源投入スイッチは、これが使用の前に電池を回路の残りの部分から電気的に分離するために必要な最も少ない数のスイッチと考えられるという点で、有利と考えられる。しかし、この数は単なる例示であり、本明細書において説明するデバイスでは、任意の数の柱および電源投入スイッチを用いることができる。
【0068】
同様に、2つの入力接点322が描かれており、少なくとも2つのこのような接点、すなわち1つの正の接点および1つの負の接点があることが必要と考えられるが、この数も例示に過ぎない。2以上の任意の数の接点、たとえば2つの正の接点および1つの負の接点、1つの正の接点および2つの負の接点、2つの正の接点および2つの負の接点を本発明によるデバイスにおいて用いることができる。
【0069】
2つのモジュール20、30を使用の前に結合し(組み付け)、
図2Bに描かれる一体的なデバイス10を形成する。このデバイス10では、
図2Bで視認可能な部品は、
図2Aで使用される数字と同じ数字を有する。
【0070】
デバイス10は、
図3を検討することによってさらに理解することができる。
図3では、電気モジュール20および貯蔵部モジュール30が分解斜視図に描かれている。
図3の左側では、上方電気モジュール本体228と下方電気モジュール本体238と内側電気モジュールアセンブリ248とを有する電気モジュール20が視認可能である。上方電気モジュール本体228上で視認可能であるのは、作動ボタン202、LED開口またはLED窓232、LCD開口またはLCD窓208である。いくつかの実施形態では、上方電気モジュール本体228上に位置合わせ特徴を有することも望ましいが、この図はこのような位置合わせ特徴を含まない。
【0071】
下方電気モジュール本体238上で視認可能であるのは、エラストマーの電源投入用ソケット218の上(近位)面ならびにばね224である。ばね224の機能について、以下でより詳細に説明する。ここで、ばね224が下方電気モジュール本体238の対向する側面上のコネクタに付勢を提供することに留意されたい。
【0072】
電気回路アセンブリ248は、LCDディスプレイ204の下にあるコントローラ244と、LED236と、作動スイッチ242とを備え、これらはすべてプリント回路基板(PCB)252上に設置される。また、PCB252の下側上の電池290が、この分解組立図でかろうじて視認可能である。電池290は、下方電気モジュール本体238上の電池区画292内に嵌合する。PCB252からLCDディスプレイ204への電気接続を提供するフレックス回路294も、この図に描かれている。LCDディスプレイ204は、準備の整ったインジケータ、投与される適用量の数(a number of doses administered)、残りの適用量の数(a number of doses remaining)、治療開始から経過した時間、デバイスの使用サイクルで残っている時間、電池レベル、エラーコードなどの種々のデータを使用者に通信するように構成することができる。同様に、LED236は、電源が投入されたこと、送達される適用量の数(the number of doses delivered)を示すデータなどの種々のデータを使用者に提供するために使用することができる。電気回路アセンブリ248は、可聴式の「電源投入」信号、可聴式の「適用量の投与開始」信号、可聴式のエラー警報などを提供するように構成することができる音響変換器246も含むことができる。
【0073】
図3の右側の分解斜視図に、貯蔵部モジュール30が示されている。貯蔵部モジュール30は、貯蔵部本体300と、電極筐体370と、接着材380と、剥離ライナ390とを備える。貯蔵部本体300の上面320は、凹部314と、電源投入用柱318と、入力コネクタ316と、シール322と、連結器ソケット310および312とを含む。電極筐体370は、貯蔵部区画388を含む。この貯蔵部区画388の中には、電極パッド374および貯蔵部376が挿入される。電極374は、開口378を通って入力接点316と接触する。デバイス10を患者に取り付けるための手段を提供する接着材380は開口382を有し、貯蔵部376は、接着材380が患者に取り付けられているとき、開口382を通って患者の皮膚と接触する。着脱可能な剥離ライナ390は、使用の前に貯蔵部376を覆い、デバイス10を患者に取り付けることを可能にするために取り外される。組み付けられると、電極パッド374は、開口378を通して入力コネクタ316の下側と接触し、入力コネクタ316と貯蔵部376の間の電気接続を提供する。貯蔵部376と患者の皮膚の間の接続は、剥離ライナ390を取り外した後に、開口382を通して行われる。また、この図で視認可能であるのはタブ372であり、タブ372は、貯蔵部374の処分のために電極筐体370を貯蔵部本体300から取り外すために使用することができ、貯蔵部374は、いくつかの実施形態では、デバイス10を使用した後に残存する治療薬を含有する。
【0074】
貯蔵部モジュール30の別の図が
図4に示されている。この図では、電極374は、貯蔵部区画388内の開口378を通して見える。
図4において注目すべきであるのは、電気モジュールの下側の相補的な特徴を納めるように適合された、へこみ354を有する凹部314である。これは、デバイスのために設けることができる多数の考えられ得る主な特徴のうちの1つである。いくつかの実施形態では、凹部314は、電気モジュール内の電池区画の下側を受け入れることができる。しかし、多数のこのような主な特徴が可能であることが当業者には理解されよう。1つのこのような主な特徴は、2つのモジュールの組み付けを1つの構成のみ可能にする、スナップソケット310、312および対応するスナップの寸法とすることができる。他の主な特徴としては、貯蔵部モジュール30上の電気入力316および電気モジュール上の対応する電気出力の大きさおよび/または位置、電源投入用柱318の大きさおよび/または位置、貯蔵部モジュール30および電気モジュール20の相補的な形状があり得る。
【0075】
図5は、貯蔵部モジュール30上の入力コネクタ316の断面斜視図である。この図で視認可能であるのは、貯蔵部本体300の上面320である。入力コネクタ316を囲むのは、シール322である。シール322は、電気モジュール上の対応するシールと接触して、デバイスの組み立て時の混入物の侵入を防止するように構成される。接点316は、いくつかの実施形態では、有利には、平面状の(平坦または実質的に平坦)金属接点である。この接点は、本質的には、銅、真鍮、ニッケル、ステンレス鋼、金、銀、またはこれらの組み合わせなどの任意の導電性金属とすることができる。いくつかの実施形態では、この接点は、金または金メッキである。
【0076】
また、貯蔵部モジュール30の上面320上に視認可能であるのは、面320から突き出す電源投入用柱318である。入力コネクタ316の下部は、電極筐体370内の貯蔵部区画388の中にある開口378を通して貯蔵部(図示せず)と接触するように構成される。
【0077】
さらに、電池ソケット314の部品は
図5で見ることができる。
【0078】
図6は、2つのモジュール20、30を並べた別の図である。
図6の左側にあるのは、電気モジュール本体200の底部側である。右側にあるのは、貯蔵部モジュール30の頂部側である。電気モジュール本体200の底面230は、そこから突き出すスナップ210、212を有し、スナップ210、212は、貯蔵部モジュール本体300の頂部上のスナップソケット310、312内に嵌合するような大きさおよび形状にされる。上記で説明したように、いくつかの実施形態では、スナップ210および212は異なる大きさであり、したがって、スナップ210はスナップソケット312内に嵌合せず、かつ/またはスナップ212はスナップソケット310内に嵌合しない。これは、デバイス10に組み込み可能であるいくつかの主な特徴のうちの1つである。例示的な一例として、スナップ212はソケット310より大きいので、スナップ212は310に嵌合することはできない。しかし、スナップ210はソケット312に嵌合することができる。その理由は、スナップの方が小さく、ソケットの方が大きいからである。他の実施形態では、1つの寸法(たとえば、水平方向)では1つのスナップ/ソケットペアの方が大きく、他の寸法(たとえば、長手方向)では他のスナップ/ソケットペアの方が大きいように、スナップとソケットの両方の大きさを設定することが可能である。別の主な特徴は、電池または他の構成要素を収容でき、凹部314内に1つの構成でのみ嵌合するような形状にされた、突起214である。
【0079】
スナップ210、212は、少なくともいくつかの実施形態では一方向スナップであり、これは、スナップ210、212が、容易に取り外せないような形でソケット310、312内に嵌合するように付勢されることを意味する。スナップ210、212は、少なくともいくつかの好ましい実施形態では、モジュール20、30を再度組み付けて単一の一体的なデバイスを形成することができないようにスナップ210、212を強制的に離す場合、破壊する(または、もはや機能しなくなる程度まで変形する)ように構成される。いくつかの実施形態では、このような特徴は、デバイスに対する乱用防止特性として設けられ、したがって、貯蔵部モジュール30を使用後に不要にし、異なる(または同じ)電気モジュール20と共に用いることはできない。
【0080】
電気モジュール本体200の下面230は、本明細書において出力「ハット」とも呼ばれる2つの電気出力216も有し、電気出力216は、特定の実施形態では、その面から突き出す1つまたは複数の隆起266を有する。これらのハット216は、ハットシール222によって囲まれる。ハット216は、貯蔵部本体300上の入力コネクタ316と接触するように構成される。さらに、ハットシール222は、入力シール322と接触し、入力シール322と共に不透過性シールを作り出すように構成される。有利には、ハットシール222は、ハット216の周囲に混入物不透過性シールを作り出し、入力コネクタシール322と嵌合すると、さらなる混入物不透過性シールを作り出すエラストマー材料から作製される。
【0081】
電源投入用ソケット218は、入力用柱318を受け入れるように構成される。いくつかの実施形態では、電源投入用ソケット218は、変形可能な(たとえばエラストマー)材料から作製される。いくつかのこのような実施形態では、電源投入用柱318は、電源投入用ソケット218が電源投入接点(以下でより詳細に説明する)と接触して電源投入接点を閉位置に移動させ、それによって電池を回路に接続するように、電源投入用ソケット218を変形する。2つのモジュール20、30をいったん一緒にスナップ嵌合すると、柱は、ソケット218を通して電源投入接点にかかる圧力を維持し、電池を回路内に保つ。
【0082】
ハット216および入力接点316は、
図6では、ほとんど同じ大きさであり、デバイス10の長手方向軸に沿って対称的に配置されるように描かれているが、ハット216および接点316の長手方向軸、電源投入用柱318およびソケット218などに対する相対的な大きさおよび/または位置を変更することによって、別の主な特徴をデバイスに導入することができる。
【0083】
電源投入スイッチ270の一実施形態の断面が
図7Aおよび
図7Bに描かれている。電源投入スイッチ270は、移動可能な接点272と、固定された接点274とを備える。移動可能な接点272および固定された接点274のそれぞれは、プリント回路基板(PCB)252上の回路構成要素の一部分に接続される。
図7Aに描かれている開位置では、移動可能な接点272は、固定された接点274から離れる方向に付勢されるが、
図7Bに描かれている閉位置では、2つの接点272および274は、貯蔵部モジュール30の上面320から突き出す電源投入用柱318によって一緒に押される。電源投入用柱318は、移動可能な接点272が固定された接点274と接触するまで移動可能な接点272を強制的に下げるように、可撓性(エラストマー)の電源投入用ソケット218を通って作用する。見えるようにするために、固定された接点274は、PCB252から上昇した状態で示されている。しかし、固定された接点274をPCB252から上昇させる必要はなく、一般にPCB252から上昇しないことが理解されよう。少なくともいくつかの実施形態では、固定された接点274は、PCB252の面上で露出された金属トレースであるが、他の構成も可能である。固定された接点272は、銅合金などの適切に弾力がある金属から製造され、電源投入用柱318による作用を受けない限り第1の開位置に留まるように付勢される。ソケット218は、対向する接点272、274の側から見たときドームに類似することができ、少なくともいくつかの実施形態では、シールを破裂させることなく電源投入用柱318が変形することを可能にする適切なエラストマー物質から形成される。いくつかの実施形態では、ソケット218は、平面状であってもよいし、反対方向にドーム形であってもよい。少なくともいくつかの実施形態では、ソケット218は、電気モジュール20の外部部品と内部部品の間に混入物を通さないシールを提供する。
【0084】
図8は、組み立てられた状態のデバイス10の部品の断面を示す。デバイス10は、上方本体200を備える上方電気モジュール20と、貯蔵部本体300を備える貯蔵部モジュール30とを備え、上方電気モジュール20と貯蔵部モジュール30は、この断面図では結合されているように示されている。この断面図で視認可能な電気モジュール20の部品としては電気モジュール本体200があり、電気モジュール本体200は、音響変換器246と、LCD204と、コントローラ242と、電池290とを含み、これらはすべてプリント回路基板(PCB)252上にある。フレックス回路294は、PCB252とLCD204の間の接続を提供する。同様に視認可能であるのは、隆起266を有する接点ハット216と、スナップ210である。分かるように、接点ハット216は、コイルばね224によって貯蔵部モジュール30の方へ付勢され、コイルばね224は、接点ハット216内に嵌合し、接点ハット216を貯蔵部モジュール30の入力コネクタ316に押し付けるように接点ハット216を介して力を及ぼす。ハット216は、その運動距離全体を通してハット216と接触するハットシール222によって囲まれる。少なくともいくつかの実施形態では、このハットシール222は、ハットシール222とハット216の間の混入物を通さない嵌合を提供し、それによって電気モジュール20が環境内の粒子および流体(たとえば湿気)などの混入物に対して密封される、エラストマーシールである。
【0085】
貯蔵部モジュール30は、電極筐体370内の貯蔵部区画388の中にある貯蔵部376と電極374とを含み、電極筐体タブ372も有する。組み立てられた状態では、スナップ210は、スナップソケット310のレッジ324を捕える。少なくともいくつかの実施形態では、スナップ210は弾性ポリマーから作製され、レッジ324との接触を維持するように付勢され、したがって、2つのモジュール20、30は容易に分離することはできない。いくつかの好ましい実施形態では、スナップ210は、2つのモジュール20、30が分離されている場合、スナップ210(および/またはレッジ324)は破壊(または、もはや機能しなくなる程度まで変形)し、その後、2つのモジュールを互いに連結することはできないように構成される。
【0086】
同様にこの図に描かれているのは入力コネクタシール322であり、この図では、入力コネクタ316を囲む畝(ridge)326(入力コネクタシール畝)を形成する。2つのモジュール20、30が組み付けられているとき、この入力コネクタシール畝326はエラストマーハットシール222と接触して、エラストマーハットシール222に押し込まれ、それによって、出力接点ハット216および入力接点316を含む空間への微粒子および液体などの混入物の侵入を防止する。
【0087】
ハット216は、貯蔵部区画388内の開口378を通って突出する。少なくとも、ハット216上の隆起266は、入力コネクタ316と接触して、電気モジュール20と貯蔵部モジュール30の間の電気的接触を提供する。ばね224は、隆起266に入力コネクタ316との接触を強制的に維持させるために、機械的付勢を提供する。ハット216はコイルばね224によって付勢されるように示されているが、本明細書において説明するデバイスの範囲内で他のばねおよびばねのようなデバイスを使用できることが当業者には理解されよう。たとえば、限定されるものではないが、コイルばね224は、ビームばねまたは類似のデバイスによって置き換えることができる。
【0088】
電気モジュール20内の電子機器回路50の高レベル概略図である
図9から分かるように、電子機器回路50は、電源投入スイッチS1およびS2(
図7A、
図7Bの電源投入スイッチ270に相当する)によって電池290に接続された回路構成要素40(コントローラ、種々のインジケータなどを含む)を含むように構想することができる。回路構成要素40は、貯蔵部モジュール上の対応する入力に接続する出力216a、216bを介した電圧Voutの送達を制御する。
図7Aおよび
図7Bに示される電源投入スイッチS1およびS2の構成は操作および製造の容易さなどの特定の利点を提供すると見なされるが、本明細書において説明するデバイスの範囲内でスイッチの他の構成を用いることができることを理解されたい。このようなスイッチは、開位置の方へ機械的に付勢されるスライドスイッチを含むことができ、これは、電源投入用柱または類似のアクチュエータによって閉位置に押すことができる。この図から分かるように、電池209と回路構成要素40の残りの部分とを備える回路50は、S1とS2の両方が閉じた状態で保持される場合にのみ完成される。たとえば電源投入用柱の機械的行為によって、S1およびS2を閉じる前は、回路が開いており、電流を回路に流すことができないので、電池290が回路構成要素40から分離されている。前述したように、これによって、回路構成要素に電源がなく、したがって回路構成要素に印加される外部電荷(extrinsic charge)がないので、使用前の電池の消耗が低減し、腐食が大きく減少する。また、使用前の取り扱い中にスイッチのうちの1つがたとえば短時間、偶然閉じた場合、デバイスの電源は投入されない。少なくともいくつかの実施形態では、使用前にスイッチがときどき誤って閉じることを説明するためにコントローラが両方のスイッチS1およびS2の一時的な(short-lived)擬似閉鎖を検出することは、有利であると考えられる。同様に、上記で説明したように、2つのスイッチS1およびS2が互いから物理的および/または電気的に遠いことは、いくつかの実施形態では有利であると考えられる。2つのスイッチの分離によって、スイッチのうちの1つを誤動作させる(たとえば、永久的であれ、可逆的であれ、または間欠的であれ、閉じる)ものが他のスイッチにも影響しない可能性
が低下する。さらに、またはあるいは、2つのスイッチは、電池の2つの異なる側面に位置してもよいし、電池の同じ側面に位置してもよい。したがって、
図9ではスイッチS1、S2は電池290の正(+)の側面に描かれているが、一方または両方は、電池の他の側面に位置することができる。したがって、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のスイッチが電池の一方の(正または負)側面に位置することができ、0、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のスイッチが電池の他方の(負または正)側に位置することができる。2つのスイッチの物理的な離隔距離は、0.1cmから数cm、いくつかの実施形態では少なくとも0.5cmとすることができる。
【0089】
同様に
図9に示されているのは、スイッチS1、S2が出力216a、216bから遠いことである。したがって、電気モジュールから貯蔵部モジュールへの出力は、スイッチS1、S2から分離される。いくつかの好ましい実施形態では、スイッチS1、S2の閉鎖は、出力216a、216bを貯蔵部モジュール上の対応する入力に接続する同じ行為の結果として発生するが、スイッチS1、S2は出力216a、216bから遠い。これによって、スイッチS1、S2は、電気モジュールの完全に内部にあり、いくつかの実施形態では、水(蒸気を含む)および/または微粒子などの混入物の侵入に対して密封することが可能になる。
【0090】
図10および
図11は、本明細書における説明によるデバイス10に2つの代替電源投入シーケンスを提供する。第1の代替形態は、第1のステップS502では、4つの事象、すなわち、スナップがそれぞれのソケットにスナップ嵌合される事象、出力接点と入力接点が嵌合され、貯蔵部モジュール内の貯蔵部と電気モジュール内の回路構成要素の間の電気的接触を提供する事象、電源投入用柱が電気モジュール内の電源投入スイッチを閉じる事象、および、それにより電池が回路に接続されて、電力を回路構成要素に供給し始める事象が、使用者による1回の行為で同時に発生することを示す。ステップS504では、コントローラは、次のステップに進む前に、最小期間(たとえば10〜500ms)待機する。いくつかの実施形態では、S504は電源投入シーケンスから除かれる。S504が電源投入シーケンスに含まれる実施形態では、コントローラが所定の最小期間、電力を維持するのに失敗する、すなわち、たとえば、この時間枠中に電力が失われる場合、タイマーはゼロにリセットされる。ステップS504の期間を通して電力が維持されると仮定すると、コントローラは、次に、ステップS506において電源投入カウンタを1だけ増加する。ステップS508では、コントローラは次に電源投入カウンタ上のカウントの数をチェックし、この数が特定の所定の数(この例では、工場内検査でカウンタが1に設定されていると仮定して2であるが、他の値も可能である)以下である場合、コントローラは、自己チェックを含むステップS512に進む。しかし、カウントが所定の数より大きい場合、コントローラは、電源遮断シーケンスを含むステップS510を開始し、この電源遮断シーケンスは、LCDディスプレイにエラーメッセージを送信すること、LEDインジケータを作動させること、および/または可聴警報を鳴らすことを含むことができる。カウントが所定の数以下である場合、コントローラはステップS512を開始する。S512の自己チェックが完了した後、コントローラは、回路構成要素が自己チェックに合格したかどうかを判断し、合格しなかった場合は、ステップS510を開始する。回路構成要素が自己テストチェックに合格した場合、コントローラは、次にS516を開始し、S516は、デバイスの準備が整ったことを(たとえば、LCD、LED、および/ま
たは音響変換器によって)使用者に知らせることを含むことができる。デバイスは、その場合、明細書においてその全体が参照により組み込まれる米国特許第6,216,033(B1)号に記載されているように、患者の身体に付着させて正常に動作する準備が整っている。
【0091】
図11の第2の代替形態は、第1のステップS602では、4つの事象、すなわち、スナップがそれぞれのソケットにスナップ嵌合される事象、出力接点と入力接点が嵌合され、貯蔵部モジュール内の貯蔵部と電気モジュール内の回路構成要素の間の電気的接触を提供する事象、電源投入用柱が電気モジュール内の電源投入スイッチを閉じる事象、および、それにより電池290が回路に接続されて、電位を回路構成要素に供給し始める事象が、使用者による1回の行為で同時に発生することを示す。ステップS604では、コントローラは、次のステップに進む前に、最小の時間(たとえば10〜500ms)待機する。コントローラがこの期間、電力を維持するのに失敗する、すなわち、この時間枠中に電力が失われる場合、タイマーはゼロにリセットされる。ステップS604の期間を通して電力が維持されると仮定すると、コントローラは、次に、S606において電源投入カウンタ上のカウントの数をチェックし、この数が特定の所定の数(この例では、工場内検査でカウンタが1に設定されていると仮定して1であるが、他の値も可能である)以下である場合、コントローラは、自己チェックを含むステップS608に進む。しかし、カウントが所定の数より大きい場合、コントローラは、電源遮断シーケンスを含むステップS610を開始し、この電源遮断シーケンスは、LCDディスプレイにエラーメッセージを送信すること、LEDインジケータを作動させること、および/または可聴警報を鳴らすことを含むことができる。カウントが所定の数以下である場合、コントローラはステップS608を開始する。S608の自己チェックが完了した後、コントローラは、回路構成要素が自己チェックに合格したかどうかを判断し、合格しなかった場合は、ステップS610を開始する。回路構成要素が自己テストチェックに合格した場合、コントローラは、次に、カウンタを1だけ増加することを含むS614を開始する。コントローラは、次にS616を開始し、S616は、デバイスの準備が整ったことを(たとえば、LCD、LED、および/または音響変換器によって)使用者に知らせることを含むことができる。デバイスは、その場合、明細書においてその全体が参照により組み込まれる米国特許第6,216,033(B1)号に記載されているように、患者の身体に付着させて正常に動作
する準備が整っている。
【0092】
簡単に説明すると、デバイスを患者の皮膚の表面に付着させる。この患者または医療従事者は、次に、ボタン202(
図2A、
図2B、および
図3を参照されたい)を押すことができる。いくつかの実施形態では、デバイスは、治療薬の誤ったまたは擬似投与を防止するために、患者または医療従事者がボタンを所定の時間枠内で2回押すように構成される。患者または医療従事者がボタン202を適切に押したならば、デバイス10は、次に、治療薬を患者に投与し始める。投薬同士の間において、デバイスは、デバイスが電源オンであってもその間は送達が「オフ」である「準備」モードに入ることができる。準備モードの間、デバイスは、前述のオフ電流自己試験を含む多くの自己試験を実施してもよい。使用者がボタンを押して投薬をもう一回受け入れる場合、デバイスは、投薬を送達する前(起動された状態に入り、アノードとカソードとの間の電流を通すことで用量を送達する前)、1つまたは複数の自己試験(オフ電流自己試験を含む)を先ず実施できる。所定の数の適用量が投与される、および/またはデバイスの電源が投入されてから所定の期間が経過すると、デバイスは電源遮断シーケンスを開始し、この電源遮断シーケンスは、LCDディスプレイ、LED、および/または音声変換器によって電源遮断信号を使用者に送信することを含むことができる。特に、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,216,033(B1)号の特許請求の範囲を参照されたい。
【0093】
他の代替電源投入シーケンスを用いることが可能なことが当業者には理解されよう。たとえば、コントローラは、
図10または
図11に概略を示したプロセスにおいて、カウンタチェックの直後にカウンタを増加することができる。
【0094】
電気輸送送達デバイスの貯蔵部は、一般にゲルマトリックスを含み、薬物溶液は、貯蔵部のうちの少なくとも1つの中に均一に分散する。膜に封入された貯蔵部などの他のタイプの貯蔵部が可能であり、企図される。本発明の適用分野は、使用する貯蔵部のタイプによって限定されない。ゲルの貯蔵部は、たとえば、本明細書においてその全体が参照により組み込まれる米国特許第6,039,977号および第6,181,963号に記載されている。ゲルマトリックスに適したポリマーは、本質的に、ゲルの作製に適した任意の合成ポリマー材料および/または天然に存在するポリマー材料を含むことができる。薬剤の溶解性を高めるように、活性剤が極性であり、かつ/またはイオン化が可能であるとき、極性の性状が好ましい。場合によっては、ゲルマトリックスは、水膨張性の非イオン材料とすることができる。
【0095】
適切な合成ポリマーの例としては、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシプロピルアクリレート)、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)、ポリ(n-メチロールアクリルアミド)、ポリ(ジアセトンアクリルアミド)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)およびポリ(アリルアルコール)があるが、これらに限定されない。ヒドロキシル官能縮合ポリマー(すなわち、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン)もまた、適切な極性の合成ポリマーの例である。ゲルマトリックスとしての使用に適した、極性の、天然に存在するポリマー(またはそれらの誘導体)の例としては、セルロースエーテル、メチルセルロースエーテル、セルロースとヒドロキシル化セルロース、メチルセルロースとヒドロキシル化メチルセルロース、グアー(guar)、いなごまめ、カラヤ、キサンタン、ゼラチンのようなガム、およびそれらの誘導体がある。利用可能な対イオンが活性剤に対して反対に帯電された薬物イオンまたは他のイオンのいずれかである場合は、イオン性ポリマーもまた、マトリックスに使用することができる。
【0096】
貯蔵部におけるゲルマトリックス中への薬物溶液の取り込みは、多数の方法で、すなわち、貯蔵部マトリックス中に溶液を吸収する(imbibe)ことによって、ヒドロゲル形成の前に薬物溶液をマトリックス材料と混合することなどによって実施することができる。さらなる実施態様では、薬物貯蔵部は、場合によっては、添加剤、透過促進剤、安定化剤、染料、希釈剤、可塑化剤、粘性付与剤(tackifying agent)、顔料、担体、不活性充填剤、抗酸化剤、賦形剤、ゲル化剤、抗刺激剤、血管収縮剤、および経皮的技術分野で一般に知られた他の物質などの、さらなる成分を含むことができる。このような材料は、当業者により含めることができる。
【0097】
薬物貯蔵部は、薬物貯蔵部を作製するのに適した、先行技術で知られたあらゆる材料で形成することができる。電気輸送によりカチオン薬剤を経皮的に送達するための貯蔵部調合物(formulation)は、好ましくは、HClなどの水溶性の塩、またはフェンタニルもしくはスフェンタニルなどのカチオン薬物のクエン酸塩の水溶液から構成される。より好ましくは、水溶液は、ヒドロゲルマトリックスなどの親水性ポリマーマトリックス中に含まれる。薬物の塩は、好ましくは、全身効果を達成するためには、最大約20分間の送達期間にわたって、電気輸送により有効量を送達するのに十分な量で存在する。薬物の塩は、一般的には、完全水和物として、約0.05から20重量%の供与貯蔵部調合物(ポリマーマトリックスの重量を含む)を含み、より好ましくは、完全水和物として約0.1から10重量%のドナー貯蔵部調合物を含む。一実施形態では、薬物貯蔵部調合物は、薬物の経皮送達期間中、少なくとも30重量%の水を含む。フェンタニルおよびスフェンタニルの送達は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,171,294号に記載されている。本発明の電子機器回路および貯蔵部は、米国特許第6,171,294号と実質的に同様に作製することができるので、米国特許第6,171,294号に記載されている濃度、速度、電流などのパラメータを本明細書でも同様に使用することができる。
【0098】
薬物貯蔵部含有ヒドロゲルは、任意の数の材料から適切に作製することができるが、好ましくは、親水性ポリマー材料、好ましくは薬物の安定性を高めるように、極性の性状のものから構成される。ヒドロゲルマトリックスに適した極性ポリマーとしては、種々の合成ポリマー材料および天然に存在するポリマー材料がある。好ましいヒドロゲル調合物(formulation)としては、適切な親水性ポリマー、緩衝液、湿潤化剤、増粘剤、水、および水溶性の薬物の塩(たとえば、カチオン薬物のHCl塩)がある。好ましい親水性ポリマーマトリックスは、洗浄され、完全に加水分解されたポリビニルアルコール(PVOH)、たとえばHoechst Aktiengesellschaftから市販されているMOWIOL 66-100などのポリビニルアルコールである。適当な緩衝液は、酸形と塩形の両方の、メタクリル酸とジビニルベンゼンとのコポリマーであるイオン交換樹脂である。このような緩衝液の一例は、POLACRILIN(Rohm & Haas、Philadelphia、Paから入手可能なメタクリル酸とジビニルベンゼンのコポリマー)およびそのカリウム塩の混合物である。POLACRILINの酸形とカリウム塩形の混合物は、ヒドロゲルのpHを約pH6に調整するためのポリマー緩衝液として働く。ヒドロゲル調合物に湿潤剤を用いることは、ヒドロゲルからの水分の損失を阻止するために有利である。適切な湿潤剤の一例はグアーガムである。増粘剤もヒドロゲル調合物に有利である。たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(たとえば、Dow Chemical、Midland、Mich.から入手可能なMETHOCEL K100MP)などのポリビニルアルコールの増粘剤は、それが成形型または空洞中に分散されるので、熱いポリマー溶液のレオロジーを変更する助けになる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは冷却時に粘度が増大するので、冷却されたポリマー溶液が型または空洞からあふれ出る傾向を有意に低下させる。
【0099】
ポリビニルアルコールのヒドロゲルは、たとえば、米国特許第6,039,977号に記載されているように調製することができる。特定の実施形態では、電気輸送送達デバイスの貯蔵部のゲルマトリックスを調製するために使用されるポリビニルアルコールの重量百分率は、約10%から約30%、好ましくは約15%から約25%、より好ましくは約19%とすることができる。処理および適用の容易性のためには、ゲルマトリックスは、好ましくは、約1,000から約200,000ポアズ、好ましくは約5,000から約50,000ポアズの粘度を有する。特定の好ましい実施形態では、薬物含有ヒドロゲル調合物は、約10から15重量%のポリビニルアルコールと、0.1から0.4重量%の樹脂バッファと、約1から30重量%、好ましくは1から2重量%の薬物を含む。残りは、水と、たとえば湿潤剤、増粘剤等のような成分である。ポリビニルアルコール(PVOH)基剤とするヒドロゲル調合物は、薬物を含むすべての材料を、少なくとも約0.5時間、約90℃から95℃の高い温度で、単一容器中で混合することにより調製される。次に、熱い混合物を発泡体の型に注入し、約-35℃の氷点下の温度で1晩保管して、PVOHを架橋させる。外気温に暖まると、イオン薬物の電気輸送に適した固いエラストマーのゲルが得られる。
【0100】
様々な薬物を電気輸送装置により送達することができる。特定の実施形態では、薬物は麻薬鎮痛剤であり、好ましくは、フェンタニルと、レミフェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、ロフェンタニル、カルフェンタニル、トレフェンタニルなどの関連分子、ならびにアルファ-メチルフェンタニル、3-メチルフェンタニルおよび4-メチルフェンタニルなどの単独のフェンタニル誘導体、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベータ-プロメドール、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルフィン、デキストロモラミド、デゾシン、ジアムプロミド、ジヒドロコデイン、ジヒドロコデイノンエノールアセテート、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメヘプタノール、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、エプタゾシン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メタジルアセテート、メトポン、モルフィン、ヘロイン、ミロフィン、ナルブフィン、ニコモルフィン、ノルレボルファノール、ノルモルフィン、ノルピパノン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、およびチリジンなどの麻薬鎮痛作用を表す他の化合物からなる群から選択される。
【0101】
いくつかのイオン性薬物は、ポリペプチド、タンパク質、ホルモン、またはこれらの誘導体、類似体、模倣物である。たとえば、インスリンまたは模倣物は、電気輸送において電力により駆動することができるイオン性薬物である。
【0102】
電気輸送によるさらに有効な送達のために、特定の鎮痛剤の塩が、好ましくは、薬物貯蔵部に含まれる。麻薬鎮痛剤などのカチオン薬物の適切な塩としては、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ペンタン酸塩(pentanoate)、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、レブリン酸塩、塩化物、臭化物、クエン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、3-ヒドロキシイソ酪酸塩、トリカルバリル酸塩(tricarballylicate)、マロン酸塩、アジピン酸塩、シトラコン酸塩(citraconate)、グルタル酸塩、イタコン酸塩、メサコン酸塩、シトラマル酸塩、ジメチロールプロピオン酸塩(dimethylolpropinate)、チグリン酸塩(tiglicate)、グリセリン酸塩、メタクリル酸塩、イソクロトン酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、クロトン酸塩、アンゲリカ酸塩(angelate)、ヒドロアクリル酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、2-ヒドロキシイソ酪酸、乳酸塩、リンゴ酸塩、ピルビン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ベンゼン、スルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩があるが、これらに限定されない。より好ましい塩は塩化物である。
【0103】
対イオンは、調合物のpHにおいて、カチオン薬物、たとえば麻薬鎮痛剤に存在する正の電荷を調和するために必要な量で薬物貯蔵部内に存在する。pHを制御し、適切な緩衝能を提供するために、過剰な対イオン(遊離酸として、または塩としての)を貯蔵部に添加することができる。本発明の1つの実施形態では、薬物貯蔵部は、薬物貯蔵部内のpHを調整するための少なくとも1種の緩衝液を含む。適切な緩衝液系は、当該技術分野で知られている。
【0104】
本明細書において説明するデバイスは、薬物がアニオン性薬物である場合にも適用可能である。この場合、薬物は陰イオンの貯蔵部(陰極)内に保持され、陽イオンの貯蔵部が対イオンを保持する。クロモリン(抗喘息剤)、インドメタシン(抗炎症剤)、ケトプロフェン(抗炎症剤)、およびケトロラクトロメタミン(NSAIDおよび鎮痛作用)、ならびに特定のタンパク質またはポリペプチドなどの特定の生物学的製剤のなどの多数の薬物がアニオン性である。
【0105】
オフ電流自己試験を含む薬物送達のためのデバイスおよびシステム(したがって、自己試験を実施するオフ電流モジュール)が、前述のような2つの部品からなる薬物送達デバイスである得るか、または、薬物送達デバイスを含み得るにも拘らず、オフ電流モジュールは、適切に動作されるまで、薬物が送達されない送達オフ(たとえば「準備」)モードであるが電源オンとされた実質的に任意の薬物送達システムの一部として含まれてもよい。このように1つの部品で、単一の薬物送達デバイスも検討される。
【0106】
例示されたような2つの部品からなるシステムを含む、本明細書に記載されたシステムおよびデバイスのいずれかは、オフ電流(アノード-カソード電圧差としても知られる)自己試験を含む、自己試験を制御するための論理を含んでもよい。図を伴って以下の実施例2に記載されるのは、オフ電流自己試験を含むシステムに実行されるシステムおよび制御論理の一変形態様である。この例示の論理は、オフ電流モジュールを含み、上記の実施例1に記載された2つの部分からなるシステムで実行されてもよい。
【実施例2】
【0107】
制御論理
一実施例では、オフ電流自己試験を含むように構成されたオフ電流制御モジュールを含むシステム/デバイスは、制御論理を実行するプロセッサまたは他の制御装置を含み得る。便宜上、この制御論理は、本明細書ではソフトウェアと称されるが、しかしながら、ソフトウェアに加えて、ハードウェア、ファームウェアなどを含み得ることは理解されるべきである。
【0108】
この実施例で用いられる以下の頭字語は、以下のように定義される。
【0109】
【表1】
【0110】
この実施例では、本明細書で記載されるソフトウェア(制御論理)は、CAST R80515 CPUコアを含むITSIC ASIC上で実行できる。コアに加えて、ITSICは、ボタン、LED、LCD、および圧力変換器を含む入力/出力デバイスと接続するための周辺装置を含んでいる。ITSICは、高電圧昇圧コンバータ、電流源、およびアナログデジタル変換器も備えている。
【0111】
例示のCAST R80515コアは、32kHzで作動し、各々の命令を実行するために1サイクルから6サイクルの間を取る。これは、命令当たり31.25から187.5μsまでの範囲の実行時間に等しい。ITSICは、32バイトがコアレジスタのために確保された256バイトのRAMと、64ビットページに配置されたEEPROMの形態の1024バイトの不揮発性記憶装置と、プログラムメモリ用の16KBのROMとを含んでいる。ITSICは、内部ROMのプログラムメモリまたは外部EEPROMからのコードを実行できる。内部ROMから外部EEPROMへの実行の移動は、JTAGを介して、または、ソフトウェアによって構成され得るハードウェアレジスタ設定によって制御される。
【0112】
IT101は、使用者の入力、定義された作動パラメータ、およびデバイス内部状況によって決定される、7つのモードのうちの1つで作動できる。
図12は、各々のモードの動作と、モード間の移行とを示している。
【0113】
図13は、ソフトウェアの機能ブロックへの上層での分解を示している。この実施例のソフトウェアアーキテクチャは、下層のドライバモジュールが電子機器へのインターフェースを含んで提供する一方、高層のアプリケーションモジュールがデバイスの機能性を使用者に提供するためにドライバを利用する状態で、モジュール式で階層化されている。下層のモジュールは、その上の層のモジュールから独立している。
【0114】
状態機械に入る前、ソフトウェアは初期化ルーチンを経る。このルーチンは、破損についてRAMおよびEEPROMを確認すること、ブートモードを確認すること、および、ドライバを初期化することを含んでいる。この初期化のさらなる詳細は、
図14で見ることができる。
【0115】
ITSICは、内部マスクROMまたは外部EEPROMのいずれかからの実行をサポートしている。デフォルトの構成はROMからの実行である。また、ソフトウェアは、システムを初期化し、そして、JTAGラインを介して外部制御を可能にするために無限ループへと入る保持モードを含んでいる。保持モードは、ウォッチドッグタイマーを有効にせず、そのため、外部制御がウォッチドッグの第1の終了の前にアサートされない場合、ウォッチドッグはシステムをリセットすることになる。システムのブートモードは、NVMにおけるブートフラグによって決定される。
【0116】
システム初期化の間、EEPROMが初期化され、第1のページがデータの整合性について確認される。ブートフラグ値が破損していない場合、値がEEPROMから読み込まれる。
【0117】
フラグが「通常」に設定される場合、ソフトウェアはROMから進行するために継続する。フラグが「外部」に設定される場合、CPUをリセットし、次に外部EEPROMからブートするEXTMEMレジスタが、ソフトウェアによって設定される。フラグが保持に設定されない場合、ドライバは、最初に初期化され、次にソフトウェアは保持モードに入る。
【0118】
システムのタスクの処理は、周期的であってもよく、また、8ミリ秒ごとに発生するシステムティックと同期されてもよい。システムティックの機能は、ティックを生成するために周期的なハードウェア割り込みを用いるタイマードライバによって提供される。メインループは、システムティックが生じるのを単に待つだけであり、そして、タイマードライバおよび状態機械についての適切な処理機能を呼び出す。
【0119】
タイマー処理機能は、投薬時間、システム有効期限のためのタイマーといった、任意の作動タイマーを更新する。状態機械処理機能は、処理を現在進行中の状態へと送り、そして、その周期的なタスクを実行する。周期的なタスクは、8msごとの頻度で、または、2.048秒までの8msの整数倍である任意の期間で、進行するようにスケジュールされ得る。期間の上限は、8ビットシステムティックカウンタのロールオーバによって固定される。タイマードライバは、様々な速度での周期的な実行を容易にするための機能を提供する。プロセッサコアでの要求を減らすために、タスクは、必要以上に速い速度で進行しないようにスケジュールされ得る。
【0120】
プリエンプティブでない、完了するまで進行する(run-to-completion)モデルでタスクを実行する単一スレッドの実行がある。アクティブタスクは、次のタスクが進行できる前に完了されなければならず、そのため、タスクは、イベントが発生する長い期間待つようには可能とされていない。特定のタスクの実行が、1つまたは複数の他のタスクについてスケジュールされた時間を過ぎて進行する場合、遅らされるタスクは、遅れているタスクが完了するとすぐに、順番で実行されることになる。すべての周期的な処理タスクの実行は、概して、単一のシステムティックの継続時間より長く掛かる。通常のスケジューリングは、次のシステムティックへと続くことになる。
【0121】
この実施例のソフトウェアは、有限状態機械として作動し、その動作は
図15に示すUML状態の図に定義されている。状態機械は、状態処理と、状態機械モジュールによって中心的に管理される移行とで実施される。各々の状態は、入口機能および出口機能と共に処理機能を有している。システムの現在の状態は、状態機械モジュール内での単一のプライベート変数に保存される。
【0122】
システムティックが生じるたび、メインループは状態機械処理機能を呼び出し、その状態機械処理機能は、現在の状態の処理機能をさらに呼び出す。現在の状態の処理が移行となる場合、処理機能は基準を新しい状態へと返す。そして、状態機械は、現在の状態についての出口機能を呼び出し、状態を変化可能に変え、それから新しい状態についての入口機能を呼び出す。これは、保証された状態の入口および出口の動作が正しい順序で実施される状態で、システムの状態がいつでも一貫性を保つことを確かなものにする。状態の処理機能が移行とならない場合、空値を返し、状態の変化は起こらない。
【0123】
各々の状態は、その処理機能によって適切な速度で実行される周期的なタスクのリストを含んでいる。タスクは、レートモノトニック方式、つまり、実行の最も速い周期的なタスクが最初に実行され、実行速度が低くなる順番でタスクが続けられる方式で、スケジュールされる。これは、特に、最も速い実行速度のタスクについて、期間のばらつきを最小にする。タスクのスケジューリングは、コンパイル時間において変化がなく固定され、そのため、優先度は決定論的である。
【0124】
状態
電源オン自己試験状態
電源オン自己試験(POST)状態では、ソフトウェアは、ユーザーインターフェース要素を実行し、一連の自己試験を実行する。電源オンで、ビープ音が250msの間2000Hzの音色で鳴る。音色の後、赤色LEDが500msに1回で点滅する。LED点滅の後、LCDが、POSTの残りの間、1秒に1回「88」と点滅する。
【0125】
ユーザーインターフェース要素が実施されている間、ソフトウェアは一連の自己試験を実行して、デバイスハードウェアが正しく作動していることを確認する。POSTをできるだけ素早く完了するために、試験は、実行のための周期的なタスクを利用するのではなく、完了するまで連続して進行する。POST状態では2つの周期的なタスクがある。250msのタスクが、ユーザーインターフェースのシーケンスを生成するために用いられる。1秒のタスクがウォッチドッグを有効にするために用いられる。
【0126】
準備状態
準備状態では、ソフトウェアは、ボタン入力を探索しており、緑色LEDを2秒ごとに2分の1秒間点滅させ、スケジュールに従って周期的に自己試験を進行させる。準備状態では、50ms、250ms、および1秒の期間で実行する3つの周期的なタスクがある。
【0127】
50msのタスクは、ボタンドライバによって提供される機能を用いて、ボタン押圧を検出するために用いられる。ソフトウェアは、少なくとも0.3秒間、多くても3秒間で分けられた2回のボタン押圧として定義される投薬の要求を探索している。時間が、1回目の押圧の時点から2回目の解除の時点まで測定される。各々の検出されたボタンの解除の際、ソフトウェアは、アナログスイッチ検証試験を実施する。投薬の要求が検出されるとき、ソフトウェアはデジタルスイッチ検証試験を実施する。すべての試験に合格すると、投薬状態への移行が開始される。
【0128】
250msのタスクは、緑色LEDの点滅シーケンスを生成するために用いられる。緑色LEDは、2秒ごとに2分の1秒間点灯される。
【0129】
1秒のタスクは、自己試験をスケジュールおよび実行するため、および、ウォッチドッグを有効にするために用いられる。
【0130】
投薬状態
投薬状態は、170μAの薬物送達電流を10分間の投薬にわたって送達する責任がある。参考のため、
図16は、アノードおよびカソードを制御する回路の一変形態様を示している。電流制御ブロックは、電圧昇圧コンバータ(VHV)の出力を、スイッチS1を通じてアノード電極(EL_A)に接続する電気回路を含んでいる。10ビットDACが、電流出力を、所望の投薬電流に比例する設定値に構成するために用いられる。DACは、M2のゲートを駆動することで、EL_AおよびEL_Cを通って流れる電流を制御するAMP1を駆動する。M2のドレインは、AMP1へと返される電圧降下を引き起こすRsenseを通る電流フローを決定する。EL_AとEL_Cとの間の皮膚抵抗が変化すると、Rsenseを流れる電流も変化し、これがAMP1の出力の変化を引き起こす。VLOW信号が、AMP1が2ボルトの飽和点に近づいていくとき、AMP1の出力を監視するために、モード0で用いられる。AMP1は、EL_AとEL_Cとの間の抵抗で、プログラムされた電流を送達するだけの十分な電圧がない場合、飽和されたことになる。ドライバ機能は、この回路の様々な箇所を制御および監視するように利用可能である。
【0131】
投薬状態は、3つのサブフロー、つまり、投薬開始シーケンス、投薬制御シーケンス、および投薬完了シーケンスへとグループ化される。準備状態から投薬状態への移行の際、投薬開始サブフローが開始される。投薬開始では、ソフトウェアは、電流制御ブロックの様々な箇所を構成し、それらの適切な作動を検証する。そして、投薬制御サブフローが開始される。このフローは、10分間の投薬にわたってデバイスを制御し、不具合状態を監視し、出力を節約するために昇圧電圧を制御する。最後に、投薬完了サブフローが開始される。このフローは、薬物の送達を行えなくし、電流制御ブロックにおける様々な箇所を測定することで、電流源の正しい作動を検証する。
【0132】
投薬中止シーケンスは、ソフトウェアに投薬状態を抜け出させる事象と独立して、投薬状態の出口で常に進行されている。投薬中止シーケンスは、S1を常に開き、電流源DACを0に設定し、昇圧電圧を0に設定し、昇圧回路を無効にする。さらに、投薬中止シーケンスは、緑色LEDおよびビープ音の両方を無効にする。ある場合には、投薬中止シーケンスは、サブフロー処理ですでに完了された動作を行う。投薬状態のフローのほとんどすべての不具合の場合は、結果的に投薬中止への移行を伴って、同様に取り扱われる。この例外は、皮膚との接触不良の検出の取り扱いである。
【0133】
投薬開始または投薬完了の間に不具合が発生した場合、ソフトウェアは、投薬状態を抜け出し、投薬中止シーケンスを完了し、耐用終了へと移行する。同様に、皮膚との接触不良以外の不具合が投薬制御の間に生じた場合、ソフトウェアは、投薬中止シーケンスを完了し、耐用終了へと移行する。皮膚との接触不良の不具合が投薬状態において生じたとき、ソフトウェアは、投薬完了シーケンスをすぐに開始するが、投薬カウントは更新されない。不具合が投薬完了シーケンスにおいて発生したとき、ソフトウェアは、投薬中止シーケンスをすぐに完了し、耐用終了へと移行する。
【0134】
投薬状態では、50ms、500ms、および1秒の期間で実行する3つの周期的なタスクがある。
【0135】
50msのタスクは、投薬状態の間に投薬の要求を検出するために用いられる。2回のボタン押圧の検出機構は、スイッチ検証試験が進行されないことを除いて、準備モードと同一である。ソフトウェアが投薬状態において2回のボタン押圧を検出する場合、投薬の要求のカウンタが増加される。このカウンタは、投薬完了の間であるが、皮膚との接触不良の不具合への対処のないときに、記録される。
【0136】
500msのタスクは、そのティックが発生する最初のときのみに用いられる。その最初の発生において、ビープ音が無効とされる。
【0137】
この実施例での1秒のタスクは、投薬制御サブフローをスケジュールするため、および、ウォッチドッグを有効にするために用いられる。また、1秒のタスクは、より遅い速度の投薬状態自己試験(つまり、ADCおよび基準電圧試験、発振器精度試験、電池電圧試験、およびソフトウェアタイマー完全性試験)をスケジュールもする。
【0138】
図17は、投薬モードサブフロー、投薬中止シーケンス、および他の状態への移行の各々の間の高層の流れを示す投薬モードのフロー図を示している。
【0139】
投薬開始シーケンス
投薬開始シーケンスは、緑色LEDを点灯するシーケンスの完了によって開始し、2000Hzでの圧力ビープ音を500ミリ秒間有効にする。そして、ソフトウェアは、投薬モード入口についての必要な自己試験を完了する。この時点で、ソフトウェアは、薬物送達のためにデバイスを構成することを開始する。
【0140】
第1に、ソフトウェアは、3.4375Vの初期昇圧設定を書き込み、書き込みを検証するためにレジスタを読み返す。次に、電圧昇圧が可能とされ、ソフトウェアは、昇圧回路が、ADCを用いる昇圧電圧を測定することで作動できることを確認する。そして、ソフトウェアは、EL_Aにおいて電圧を測定し、電圧が1.0V未満であることを確認することで、S1が開いていることを検証する。ソフトウェアは、アノード/カソード電圧差試験を完了することで、アノードとカソードとの間に大きな電位差がないことを検証する。次に、S1が閉じられ、EL_Aでの電圧が再び測定されて、S1が閉じられていることを確認する。ソフトウェアは、出口電流オフ自己試験を行うことで、出口電流がオフであることを検証する。この時点で、ソフトウェアは、電流フローを開始するために、電流源DACを較正された値に設定する。ソフトウェアは、レジスタを読み返して書き込みを検証する。次に、ソフトウェアは、電流源が範囲内にあることを検証するために、高出力電流自己試験を実施する。最後に、ソフトウェアは、アノードおよびカソードの両方を測定し、2つの確認を実施する。第1は、EL_AとEL_Cとの間に電圧差があることを検証し、第2は、電流が有効とされる電圧の供給を昇圧回路がなおも可能であることを検証する。測定された値が予測された通りでない場合、ソフトウェアは不具合を検出したとして、投薬中止シーケンスを完了し、耐用終了へと移行する。
図18は、投薬開始の流れ図である。
【0141】
投薬制御シーケンス
投薬開始シーケンスがうまく完了すると、ソフトウェアは投薬制御へと入る。ソフトウェアは、投薬カウントダウンタイマーを10分間の期間で始め、1秒間の期間で投薬制御ループを開始する。
【0142】
ループを通るたびに、ソフトウェアは、先ず、出力電流が187μA未満であることを、高出力電流自己試験を完了することによって検証する。次に、ソフトウェアは、EL_Aが電流VHV設定の許容範囲内であることを検証する。1分間が経過した後、皮膚保護剤の障害の試験がループを通るたびに実施され、4分間が経過した後、皮膚との接触不良の試験がループを通るたびに実施される。
【0143】
自己試験が完了された後、ソフトウェアは、ループのVHV制御部へと入る。ソフトウェアは、電力消費を最小にしつつ薬物電流を送るだけの電圧を提供するために、VHVを制御する。VHV制御ループは電圧を、3.4375Vで始まって、必要な高さまで上げるが、11.25Vを超えることはない。VHVを制御するために、ソフトウェアは、VLOW信号の状態を監視する。VLOW信号は、M2のゲート電圧を監視するように構成されている。信号は、AMP1の出力が2Vを超えるとき、アサートされる。VLOW信号は、十分なソース電圧がないため、AMP1が170μAの電流を送ることができないことを指し示す。VLOW信号がアサートされる場合、ソフトウェアは、最大で11.25Vまで、VHVを1カウント(0.3125V)ずつ増加する。制御ループを通る第1の複数の繰り返しは、皮膚の抵抗に応じて、VHVを必要な高さへと上げる。皮膚の抵抗が投薬の間に増加する場合、VLOW信号がアサートされ、VHVはそれに従って増加される。
【0144】
投薬の送達の間に、電力を節約し、低減する皮膚の抵抗に対処するために、ソフトウェアはVHVを周期的に減少させる。減少は、20秒間のタイムアウトによって引き起こされる。タイムアウトは、VHVが増加または減少のいずれかがされるたびに、0に設定される。タイムアウトは、VLOW信号がアサートされなかったことを制御ループが検出するごとに増加される。タイムアウトが20(つまり、20秒間)に達したとき、VHVは減少される。皮膚の抵抗が変化しなかった場合、VLOW信号はアサートされ、ソフトウェアは、次のループを通るとき、VHVを必要な高さへと増加して戻す。あるいは、VHVは、次のタイムアウトまたはVLOW信号がアサートされるまで、新しい電圧設定に留まる。
【0145】
最後に、投薬制御シーケンスは、1秒間を超える期間で発生する投薬モード自己試験をスケジュールする。これらの試験は、ADCおよび基準電圧試験、発振器精度試験、電池電圧試験、およびソフトウェアタイマー完全性試験である。これらの自己試験のいずれかが不合格の場合、ソフトウェアは、投薬中止シーケンスを完了し、EOLへと移行する。
【0146】
皮膚との接触不良以外の不具合が制御ループの間に生じた場合、ソフトウェアは、投薬中止シーケンスを完了し、耐用終了へと移行する。皮膚との接触不良が検出された場合、ソフトウェアは、投薬完了サブフローを開始するが、投薬カウントを増加させない。投薬制御ループは、10分間の投薬時間が経過すると、通常の条件のもとで抜け出される。
図19は、投薬制御のフローを示している。
【0147】
投薬完了シーケンス
投薬完了シーケンスは、投薬の送達の成功の際、または、皮膚との接触不良が検出されたとき、開始される。第1に、ソフトウェアはS1を開き、電流源DACを0カウントに設定する。レジスタ書き込みが読み返されて検証される。次に、ソフトウェアは、電流が漏れ閾値を超えていないことを検証するために、出力電流オフ自己試験を実施する。ソフトウェアは、VHVを0Vに設定し、それを読み返すことでレジスタ書き込みを検証する。ソフトウェアは、VHVを測定し、予測される値はVbatであるが、VHVが4.0V未満であることを検証することで、VHVがオフであることを検証する。次に、ソフトウェアは、ブースト回路を無効にし、レジスタ書き込みを検証する。アノード電圧が、電位が低いことを検証するために測定される。次に、アノード/カソード電圧差試験(オフ電流試験)が完了される。
【0148】
ソフトウェアは、皮膚との接触不良の検出を取り扱っている場合、投薬完了シーケンスを抜け出し、スタンバイへと移行する。あるいは、ソフトウェアは投薬カウント完全性試験を実施し、試験が合格の場合、投薬カウントは増加され、LCDが更新される。投薬カウントが80である場合、ソフトウェアは、使用終了へと移行するか、もしくは準備へと移行する。ソフトウェアが投薬完了シーケンスに不具合を検出する場合、投薬中止シーケンスが完了され、ソフトウェアは耐用終了へと移行する。
図20は、投薬完了についてのフロー図の一例を示している。
【0149】
スタンバイ状態
スタンバイ状態が、皮膚との接触不良が投薬状態の間に検出されたことを指し示すために用いられる。スタンバイ状態へと入る際、ソフトウェアは、タイムスタンプを伴うスタンバイ記録をNVMへと記録する。スタンバイ状態の間、出力電流が無効とされ、自己試験が中断され、ソフトウェアは、赤色LEDを1秒間に2回点滅させ、ビープ音での一連の長い/短い音色を鳴らす。15秒後、ソフトウェアは準備状態へと移行する。
【0150】
250msのタスクは、赤色LEDの点滅シーケンスおよびビープ音で鳴らされる音色を生成するために用いられる。このタスクは、15秒間が過ぎたことを検出し、次の状態への移行を開始するために用いられもする。
【0151】
1秒のタスクがウォッチドッグを有効にするために用いられる。
【0152】
使用終了状態
ソフトウェアは、デバイスがその80回の投薬限度に達するとき、または、その24時間の時間限度に達するとき、使用終了状態に入る。使用終了状態へと入る際、ソフトウェアは、終了コード、タイムスタンプ、および電池電圧をNVMへと記録する。使用終了状態の間、出力電流が無効とされ、最終的な投薬カウントがLCDに表示され、赤色LEDが点滅する。ソフトウェアは、押圧して保持する事象についてボタンを監視し、周期的に自己試験を実行する。
【0153】
50msのタスクは、ボタンドライバによって提供される機能を用いて、ボタン押圧を検出するために用いられる。ソフトウェアが6秒間のボタンを押圧しての保持を検出する場合、停止状態への移行が開始される。
【0154】
250msのタスクは、赤色LEDの点滅シーケンスを生成するために用いられる。
【0155】
1秒のタスクは、自己試験をスケジュールおよび実行するため、および、ウォッチドッグを有効にするために用いられる。このタスクは、電池電圧試験を10分間ごとに1回進行するためにも用いられる。電池が低電圧閾値未満の場合、ソフトウェアは、耐用終了状態への移行を開始する。
【0156】
耐用終了状態
耐用終了状態へと入る際、ソフトウェアは、移行の理由、タイムスタンプ、および電池電圧をNVMへと記録する。デバイスは、不具合(オフ電流試験などの自己試験の不合格を含む)によって強制されるとき、耐用終了(EOL)状態へと入ることができる。耐用終了状態の間、出力電流は無効とされ、赤色LEDは点滅し、ビープ音は一連の短い音色を鳴らす。ソフトウェアは、押圧して保持する事象についてボタンを監視し、10分間ごとに電池のレベルを周期的に確認する。
【0157】
50msのタスクは、ボタンドライバによって提供される機能を用いて、ボタン押圧を検出するために用いられる。ソフトウェアが6秒間のボタンを押圧しての保持を検出する場合、停止状態への移行が開始される。
【0158】
250msのタスクは、赤色LEDの点滅シーケンスを生成するために、および、ビープ音で短い音色を生成するために、用いられる。
【0159】
1秒のタスクは、自己試験をスケジュールおよび実行するため、および、ウォッチドッグを有効にするために用いられる。このタスクは、電池電圧試験を10分間ごとに1回進行するためにも用いられる。電池が使い切りの閾値未満の場合、ソフトウェアは、停止状態への移行を開始する。
【0160】
停止状態
停止状態は、デバイスの最終状態である。停止状態に入る際、ソフトウェアは、移行の理由、タイムスタンプ、および電池電圧をNVMへと記録し、LED、LCD、およびビープ音を無効にする。
【0161】
停止状態の間、出力電流は無効とされる。ソフトウェアは何もしないが、1秒のタスクを用いてウォッチドッグを有効にしている。ソフトウェアはこの状態から抜け出すことはない。
【0162】
自己試験
前述のように、システムまたはデバイスは、デバイスの作動するパラメータを監視して、デバイスのハードウェアもしくはソフトウェアの不具合、または、使用条件における障害を検出するために、一式の自己試験を含むことができる。オフ電流モジュールは、自己試験の一態様であり得る。自己試験は、要件、危険性、および信頼性の分析活動から導き出され得る。本明細書に含まれる導かれた試験限度について明記された許容範囲(オフ電流閾値などの閾値を含む)は、単なる例示である。これらの例の許容差は、ハードウェア構成部品の許容差に依存し得る。自己試験のソフトウェア、ハードウェア、およびファームウェア(論理/アルゴリズムを含む)は、変化しない特定の限度値に対して確認を行ってもよい。
【0163】
自己試験スケジューリングおよび順序付け
自己試験のサブセットが進行し、それらの試験のスケジューリングは、前述のように、デバイスの作動モードに依存して変化し得る。
図21はtable 1(表0)を示しており、その表は、各々のモードにおいて実行できる自己試験と、その自己試験が進行できる時とを示している。スタンバイモードは、自己試験が準備モードへと戻るまで延期されるため、示されていない。スタンバイは15秒間だけ続き、最も高い頻度の試験が投薬していないモードで1分間に1回だけ進行する状態で、スタンバイモードから、任意の試験が進行する前に抜け出すことになる。
【0164】
図21に指示された試験スケジューリングは、ある場合には、要件で述べられた検出時間によって提案されるよりも高い頻度である。これは、試験から試験への測定された結果の大きな変動性があり得る場合に障害が設定される前、いくつかの連続した不良を必要とする実施を可能にする。発振器精度試験の場合、これは、発振器が、ハードウェアリセットの点のすぐ上で、非常に低い限度で作動している場合であっても、要件に記載された必要とされる実際の時間内での障害の検出を可能にする。
【0165】
多くの場合で、特定の試験の正しい実行は、他の試験によって確認される他のハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアの要素の正しい作動に依存する。これは、有効な結果のために試験が進行する必要がある順番を決定する助けとなり得る。先行試験は、所与の試験の結果が有効と考慮できる前に合格していなければならないものである。たとえば、ADCおよび基準電圧試験は、ADCを用いる任意の試験が進行する前に合格する必要がある。
【0166】
1つの特別な事例はROM試験である。ROM試験のためのものを含むすべてのコードがROMに保存されているため、ROMを使う前にROM試験を合格させることはできない。
【0167】
RAM試験
RAM試験は、RAMの各々のアドレスが読み込みでき、そのアドレスに書き込みできることを検証する。試験は、RAMおよびスタック初期化またはC起動の前、アセンブリ言語の起動コードで実施される。値0x55および0xAAが、RAMの各々のバイトに書き込まれてから読み込まれて、すべてのビットが機能していることを検証する。試験は、先ず、0x55をRAMの各々のバイトに書き込む。そして、各々のバイトを読み込み、それを0x55と比較し、0xAAをバイトへと書き込む。最後に、RAMの各々のバイトを読み込み、値を0xAAと比較する。比較のうちのいずれかに失敗すれば、試験は不合格となる。そうでなければ、試験は合格である。
【0168】
ROM試験
ROM試験は、ROMの内容を検証する。試験は、ROMのすべての値の総和である、ROMの8ビットチェックサムを計算する。製造元では、ROMの最後のバイトは、チェックサムが0xFFと等しくなるように設定されることになる。試験が進行されるとき、ROMについてのチェックサムを計算し、それを0xFFと比較する。チェックサムが0xFFと等しくない場合、試験は不合格となる。そうでなければ、試験は合格である。
【0169】
較正データ完全性試験
較正データ完全性試験は、内部EEPROMに保存された較正データの内容を検証する。これらのデータは、ブートフラグと、発振器限界値と、較正電流源DAC設定と、引き上げ時のRsenseの読み取りと、ADCおよび発振器についてのトリミング値とを含む。これらの値は、エラー検出および補正コードで符号化される。最初に、較正データ完全性確認が進行し、EEPROMドライバを介してすべての較正値を復号化し、EEPROMドライバが値のいずれかに修復不可能なデータ破損を検出する場合に不合格になる。
【0170】
最初の完全性試験の成功によって検証された後、ADCドライバの性能を改善するために、ADC較正値はRAMに保存される。これらの値の続いての完全性確認では、試験は、RAMに保存された値をEEPROMに保存された値と比較する。これは、復号誤りコードのオーバーヘッドを回避することで、処理時間を短くする。RAMおよびEEPROMの値が合致する場合に試験は合格となり、そうでない場合は不合格となる。
【0171】
ADC較正以外のすべての較正データについて、続く完全性試験は、最初のものと同じに行う。誤りコードは、すべての値について復号化され、何らかの修復可能な破損は試験不合格となる。
【0172】
発振器精度試験
発振器精度試験は、ADCの周波数と電圧との変換チャンネルを用いる発振器周波数の精度を検証する。製造の間、発振器は、2.048MHz±1%に較正され、上限および下限における周波数と電圧との読取値が不揮発性メモリに保存される。保存された限度は、上限については+3%から+5%の間であり、下限については-3%から-5%の間である。周波数と電圧との変換器の許容範囲は、±5%である。これらの許容範囲の積み重ねが、公称値から10%を超えないがそれに近く、発振器精度試験の必須の±10%限度内にある検出閾値となる可能性がある。
【0173】
発振器精度試験が進行するとき、12ビットADCの周波数と電圧との読取値が、不揮発性メモリに保存されている2つの12ビットの限度値と比較される。ADC読取値が限度内にない場合、試験は不合格となる。そうでなければ、試験は合格である。
【0174】
発振器が低速で作動している場合に、必須のリアルタイム内で発振器の誤りを検出するために、試験は、発振器が公称周波数で作動している場合よりも高い頻度で実行されることになる。リセットは、0.8MHzで発生する。これは、2.048MHzの公称値を2.5で割ったものであり、同じ2.5が、試験のスケジューリング期間に適用されなければならない。たとえば、下限の発振器の検出を10分間内に確保するために、試験は、4分間ごとに進行しなければならない。
【0175】
ADCおよび基準電圧試験
ADCおよび基準電圧試験は、ADCの正しい作動、ADCマルチプレクサ、および、ADC基準電圧と主基準電圧との相対レベルを検証する。試験は、ADCを用いて主基準電圧を測定し、それを1ボルトと比較する。試験を合格するためには、ADC、ADCマルチプレクサ、主電圧基準およびADC電圧基準は、すべて正しく機能していなければならない。試験が不合格の場合、不合格の部品を判定できない。主基準電圧が1.1ボルト超または0.9ボルト未満の場合、試験は不合格となる。そうでなければ、試験は合格である。
【0176】
ソフトウェアタイマー完全性試験
ソフトウェアタイマー完全性試験は、二次ソフトウェアタイマーを用いる一次ソフトウェアタイマーの速度を検証する。二次ソフトウェアタイマーには、カウントダウン長さと、一次タイマーのうちの1つの電流値とが与えられる。準備モードの間、二次タイマーは、10分ごとに一次システム時間の確認を開始する。投薬モードの間、二次タイマーは、1分ごとに一次の実行中のタイマーの確認を開始する。特定の時間の長さでカウントダウンした後、二次タイマーは、現在の一次タイマー値を開始値と比較する。値が10%を超えて異なる場合、試験は不合格となる。そうでなければ、試験は合格である。
【0177】
投薬カウント完全性試験
投薬カウント完全性試験は、RAMの投薬カウント値が破壊されていないことを検証する。投薬カウントの冗長コピーが、内部EEPROMに保存され、ゼロに初期化される。試験は、投薬がうまく完了すると進行される。投薬カウントを増加する前、RAMに保管された電流値は、EEPROMのコピーに対して比較される。2つの値が合致する場合、それらは両方とも増加させられ、EEPROM値が完遂される。2つの値が合致しない場合、試験は不合格となる。
【0178】
Rsense精度試験
Rsense精度試験は、Rsense抵抗値の精度を検証する。Rsense抵抗は1%の許容範囲を有している。製造の間、Rsenseの引き上げが可能とされ、Rsenseにおける電圧がADCで測定される。12ビットADC値が、NVMにおけるRSENSEに書き込まれる。この試験は、製造の測定を繰り返す。Rsenseの引き上げが可能とされ、ADCは、Rsense電圧を測定するために用いられる。測定は、NVMに保存されたものと比較される。2つの値が5%を超えて異なる場合、試験は不合格となる。そうでなければ、試験は合格である。
【0179】
電池電圧試験
電池電圧試験は、いくつかの閾値に対して電池の状態を戻す。試験は、ADCを用いて電池電圧を測定し、それを電池閾値と比較する。試験は、電圧測定が2.7ボルト±5%より大きい場合、電池は良好であると報告する。試験は、電圧測定が2.7ボルト±5%より小さく、2.3ボルト±5%より大きい場合、電池は低下していると報告する。試験は、電圧測定が2.3ボルト±5%より小さい場合、電池は使い切っていると報告する。
【0180】
アナログスイッチ検証試験
アナログスイッチ検証試験は、誤ったスイッチの読み取りを引き起こす可能性のある電位の問題を検出するために、投薬ボタンスイッチの高い側と低い側との両方で電圧レベルを測定する。スイッチが開いたままの通常の状態のもとで、スイッチの高い側での電圧は、スイッチ回路に接続された電気部品によって引き起こされる小さな電圧降下がある後で、電池電圧より若干低くなる。通常の状態のもとで、スイッチの低い側の電圧は、アースに非常に近くなる。
【0181】
汚染または腐食などのある条件が、高い側の電圧を降下させるか、または、低い側の電圧を上昇させる可能性がある。高い側の電圧が(0.8x電池電圧)未満へと落ちる場合、または、低い側の電圧が(0.2x電池電圧)超へと上昇する場合、スイッチ入力は、デジタルスイッチ入力に関して不確定デジタル論理レベルの範囲にある。この範囲のスイッチ電圧は、誤ったスイッチの読み取りをもたらす可能性があり、使用者によって開始されていない偽のボタン移行として現れる可能性がある。アナログスイッチ検証試験は、誤った読み取りが起こり得る高さにスイッチ電圧レベルが達する前に、状況を検出する。
【0182】
アナログスイッチ検証試験は、高い側の電圧と低い側の電圧とが共に測定されるように、スイッチが通常の開いた状態にあるときに進行しなければならない。試験が進行している間のスイッチの状態の何らかの変化は、スイッチが閉じられている間の高い側の電圧の測定のため、試験を誤って不合格にさせてしまう可能性がある。使用者は、ボタンをいつでも押圧および解除できるが、押圧同士の間の最小時間には機械的限界および人間的限界がある。そのため、スイッチ状態が最も高い確実性で開いていると分かる点は、ボタンの検出された解除の直後である。
【0183】
アナログスイッチ検証試験は、各々の検出されたボタンの解除にすぐに続いて進行する。高い側の電圧、低い側の電圧、および電池電圧を続けて測定するために、ITSIC ADCを用いる。ADCは、各々の測定に関して、6.25msについてのサンプリングをするように構成されている。スイッチの高い側の電圧が(0.8x電池電圧)以下である場合、または、スイッチの低い側の電圧が(0.2x電池電圧)以上である場合、試験は不合格となる。
【0184】
デジタルスイッチ検証試験
デジタルスイッチ検証試験は、アナログスイッチ検証試験と目的は同様であるが、その測定においては、より簡単で、より速く、より大雑把である。
【0185】
試験は、スイッチが開いている(ボタンが押されていない)間のデジタル論理レベルを確かめるために、投薬ボタンスイッチの各々の側に接続された二次デジタル入力を用いる。二次デジタル入力は、一次デジタル入力と同じ種類のものであり、対応する値は合致すると考えられる。
【0186】
デジタルスイッチ検証試験は、投薬開始シーケンスについての基準に合致する2回押圧の2回目のボタン解除のアナログスイッチ検証試験の後に進行する。スイッチの高い側での二次デジタル入力が低い場合、または、スイッチの低い側での二次デジタル入力が高い場合、試験は不合格となる。
【0187】
出力電流オフ試験
ある変形態様では、オフ電流モジュールは、出力電流オフ試験を実施するように構成されてもよい。出力電流オフ試験は、電流源がオフであるときに漏れ電流(たとえば、3μA、9μAなど)がある閾値未満であることを検証してもよい。試験は、測定されたRsense電圧と、3.96kOhmsの下限Rsense抵抗とから漏れ電流を計算できる。
【0188】
【数1】
【0189】
試験は、電流源がオフの間、ADCを用いてRsense電圧を測定する。したがって、ある変形態様では、Rsense電圧測定がある閾値(たとえば、12mV、36mVなど)より大きい場合、試験は不合格となる。そうでなければ、試験は合格である。
【0190】
アノード/カソード電圧差試験
ある変形態様では、オフ電流モジュールは、アノード/カソード電圧差試験を実施するように構成されてもよい。アノード/カソード電圧差試験は、S1が開いていて電流源が無効とされているとき、アノードとカソードとの間に電圧差がほとんどないことを検証できる。この試験は、出力回路における何らかの障害から生じる、アノードからカソードへの電流フローの不良の場合について確認できる。試験は、ADCを用いてアノード電圧とカソード電圧とを測定し、2点の間の電圧差を計算する。電圧差がある閾値(たとえば、0.85V、2.5Vなど)より大きい場合、試験は不合格となる。そうでなければ、試験は合格である。
【0191】
高出力電流試験
高出力電流試験は、投薬電流が187μA未満であることを検証する。試験は、ADCを用いてRsenseでの電圧を測定し、その電圧を用いて電流を計算する。
【0192】
【数2】
【0193】
3.96kOhmsの下限におけるRsense抵抗は、187μAにおいて最も低い測定されたRsense電圧となる。測定されたRsense電圧が741mVより大きい場合、試験は不合格となる。そうでなければ、試験は合格である。
【0194】
皮膚との接触不良試験
皮膚との接触不良試験は、皮膚抵抗が432kOhms±5%未満であることを検証する。試験は、ADCを用いてRsenseでの電圧を測定し、その電圧を用いて皮膚抵抗を計算する。
【0195】
【数3】
【0196】
432kOhmsにおいて、この実施例は、アノードとカソードとの間の差が9.25Vであることを仮定している。Rsenseが1%の許容範囲を有しているため、3.96kOhmsはあり得る最も低い抵抗である。試験は、Rsenseでの電圧が84.7mV未満である場合、不合格となる。そうでなければ、試験は合格である。
【0197】
皮膚保護剤の障害の試験
皮膚保護剤の障害の試験は、皮膚抵抗が5000Ohms±5%より大きいことを検証する。試験は、ADCを用いて、カソード電圧とアノード電圧とを測定する。試験は、これら2つの測定値を用いて、皮膚の抵抗を計算する。
【0198】
【数4】
【0199】
試験は、アノード電圧とカソード電圧との差が0.85V未満である場合、不合格となる。そうでなければ、試験は合格である。
【0200】
ドライバ
下層のハードウェアドライバは、対応するシステムハードウェアを構成および使用するための機能を提供する。ドライバは、タイミング情報を維持しない。ドライバを使用するモジュールは、任意の必要なタイミングを管理しなければならない。ある場合には、ドライバは、インターフェースを提供するハードウェアに付随する状態情報を維持する。
【0201】
タイマー
タイマードライバは、次のもの、すなわち、(a)8msごとの周期的な割り込みによって駆動されるシステムティック、(b)システムティックから導き出され、50、100、250、500、または1000msごとに発生する周期的ティック、(c)電力がシステムに加えられるため、秒数をカウントするシステムタイマー、(d)秒で投薬の期間をカウントダウンする投薬タイマー、および、(e)投薬開始のためにボタンの2回押圧用の時間ウィンドウをカウントダウンするボタンタイマーを含む様々なタイミング機能を提供するために、CPUでハードウェアタイマーを使用する。
【0202】
タイマードライバは、8msシステムティックを提供するために、8ビットタイマーとしてのハードウェアのタイマー0をオートリロードモードで用いる。タイマー0は、繰り返すたびに割り込みを発生させる。割り込み処理時間を最小とするために、割り込みハンドラーは、8ビットカウンタを増加し、システムティックが発生したことを指し示すローカルフラグを設定し、ボタン入力をサンプリングするだけである(5.4.2節の投薬ボタンを参照)。ドライバは、ティックの発生の確認するために、メインループのための機能を提供する。8ビットカウンタは、2.048秒ごとに繰り返す。これは、その値までの期間を備えた周期的ティックの発生を可能にする。
【0203】
メインループは、システムティックが発生したことを確認したとき、ソフトウェアタイマーを適切に更新するタイマー処理機能を呼び出す。この機能は、ボタンタイマーが作動している場合に1秒ごとに投薬および/またはボタンタイマーを減少するために、ならびに、システム有効期限タイマーを1秒ごとに増加するために、システムティックカウンタを使用する。また、この機能は、処理がそのティックについて完了していることを指し示すシステムティックフラグを消去する。
【0204】
タイマードライバは、システムティックの倍数である期間での周期的ティックを計算するために、システムティックを用いる。通常、利用可能な周期は、50、100、250、500、または1000msである。しかしながら、これらの周期のすべてが8msの整数倍であるとは限らず、そのため、正確な期間が、切り捨て(truncation)のため、ある場合には短い。タイマードライバは、各々の周期的ティックの発生を確認するための機能と共に、すべての周期的ティックを電流システムティック値に同期させるための機能を提供する。
【0205】
投薬ボタン
投薬ボタンドライバは、ボタン入力における移行をサンプリング、ディバウンシング、および検出するための機能を含んでいる。
【0206】
ボタン入力は、タイマードライバの周期的な割り込みハンドラーにおいて、8msごとにサンプリングされる。これは、一定の十分に高い速度でボタンサンプリングを達成するために必要である。メインループの各々の繰り返しの実行は、いくつかの周期的割り込みに及び、実行経路で期間中に変化する。
【0207】
ボタンは、8つのサンプルを保持する循環バッファにサンプリングされる。6つの直近のサンプルが、ボタンの状態を決定するために、ディバウンスアルゴリズムによって用いられる。すべての6つのサンプルは、有効なボタン状態を特定するためには、同じでなければならない。バッファが低いサンプル値と高いサンプル値との混合を含んでいる場合、ボタンがバウンシング状態または移行状態にあるように決定される。ボタンドライバは、ディバウンスアルゴリズムが適用された以前の時間からのボタン状態の軌跡を維持しているため、移行を特定することができる。機能が、ボタンの解除を確認するために、提供される。受理可能な使用者の反応を入力に提供することは、ボタンを読み込むタスクによって、およそ50msごとに呼び出され得る。解除の移行は、ボタンが押し込まれた状態での少なくとも6つのサンプルと、それに続くボタンが解除された状態での少なくとも6つのサンプルとを必要とする。そのため、おおよそ100msのサンプリングが、ボタン押圧を特定するために必要とされる。
【0208】
LCD
LCDドライバは、LCD上に2桁の数字を表示するためのソフトウェアインターフェースを提供する。ドライバは、整数0〜99の表示をサポートする。入力値0〜9は、先行ゼロを表示しない。ドライバは、LCD制御機能、つまり、有効、無効、および空白も明らかにする。
【0209】
左の桁および右の桁は、それぞれ、桁1および桁2と指定されている。2つの桁の各々は、7つの断片を有している。断片は、最上部の断片で始まって時計回りに向かってA〜Fとラベルが付けられ、中央の断片はGとラベルが付けられている。ITSICは、80個のLCD断片まで増やすことができてもよい。利用可能な80個の断片の各々を制御するために多重化される20本の断片制御線と4本のバックプレーン線(共通線とも呼ばれる)とがある。このアプリケーションでは、14個のLCD断片のみが、すべての4つのバックプレーンで用いられる。
【0210】
LED
LEDドライバは、緑色LEDおよび赤色LEDを制御するためのソフトウェアインターフェースを提供する。固定された電流設定が、デバイスの電力バジェットに従ってLEDを駆動するために用いられる。緑色LEDは、LED1電流源に接続され、2.5mAで駆動される。赤色LEDは、LED2電流源に接続され、1.4mAで駆動される。ドライバは、各々のLEDを点灯、消灯、または切替をするために、LEDビープ音レジスタを用いる。
【0211】
ビープ音
ビープ音ドライバが、音声変換器を制御するためのソフトウェアインターフェースを提供する。作動周波数範囲は、125Hzごとに1000〜4875Hzである。
【0212】
音声変換器をつけるとき、ドライバは、変換器を電圧昇圧回路で駆動させるように構成する。これは、昇圧電圧の調節による音量の制御を可能にする。しかしながら、ドライバは電圧昇圧を設定しない。アプリケーションは、変換器を有効とする前に、適切な昇圧レベルを設定する責任がある。電圧昇圧は、昇圧制御装置ドライバを用いて構成され得る。
【0213】
ドライバが、LED_BEEPレジスタおよびBEEP_FCレジスタを通じて音声変換器を制御する。
【0214】
電圧昇圧制御装置
電圧昇圧制御装置ドライバは、電圧昇圧ブロックを制御するためのソフトウェアインターフェースを提供する。この回路は、投薬電流出力を維持するために、または、圧力音声変換器を十分な音量に駆動するために必要とされるより高い度合いへと電池電圧を昇圧する責任がある。
【0215】
ドライバは、完全な作動範囲にわたって、つまり、0.3125ボルトごとで0.0から19.6875ボルトまで、昇圧の度合いをサポートする。最小の昇圧電圧は電池電圧によって決定され、電池電圧未満の設定は、電池電圧と等しい出力となってしまう。昇圧回路充電時間は、ハードウェアで構成可能であるが、ドライバ初期化において1.5ミリ秒の固定値に設定される。さらに、ドライバは、電圧制御設定を読み返すための機能と、昇圧回路を有効/無効にするための機能とを提供する。
【0216】
ドライバは、昇圧過電圧信号をポーリングする機能を提供する。過電圧信号は、電圧出力が21.0ボルトを超える場合にアサートされる。ドライバは、BOOST_0レジスタ、BOOST_1レジスタ、EOVレジスタ、およびIT1レジスタを通じて昇圧回路を制御する。
【0217】
電流制御装置
電流制御装置ドライバは、電流源ブロックを制御するためのソフトウェアインターフェースを提供する。電流源出力レベルは、10ビットDACによって制御される。ドライバは、電流源の全作動範囲にわたって電流出力を可能にする。ドライバは、ISRC_0レジスタ、ISRC_1レジスタ、EVLレジスタ、およびIT0レジスタを通じて電流源を制御する。
【0218】
ドライバは、電流源を有効または無効にし、DAC値を設定し、DAC値を読み返し、Rsense引き上げレジスタを有効または無効にするための機能を提供する。
【0219】
ドライバは、インターフェースも電流制御ブロックの低電圧信号(VLOW)に提供する。初期化の間、この信号は、M2のゲート電圧を監視するように構成されている。信号の状態を監視する機能が提供される。
【0220】
トリミング
電流制御装置は、170μAで所望の精度を達成するために、トリミングを必要とする。較正されていない電流制御装置は、±5%の精度を有している一方で、較正された電流制御装置は、±0.5%の精度を有している。170μAの電流を生成する10ビットDAC値が、製造の間、決定され、NVMのISRC_170の位置に書き込まれる。この値は、NVMから読み込まれ、電流源が有効とされるとき、ISRCレジスタに書き込まれる。
【0221】
アナログからデジタルへの変換器(ADC)
ADCドライバは、ADCを構成および使用するためのソフトウェアインターフェースを提供する。ADCは、3つの可能な入力範囲、構成可能な変換時間、および選択可能な入力を備えた12ビットの解像度を有する。ADC入力は、全範囲、つまり、低(0.0から2.0ボルトまで)、中(0.0から3.6ボルトまで)、および高(0.0から24.0ボルトまで)によってグループ化される。
【0222】
ドライバは、入力選択の構成、変換時間の明確化、および変換の開始のための機能を提供する。変換時間範囲は0.78125から100msまでである。開始変換機能は非停止であり、変換は非同期性である。変換の完了は、ADCが行う割り込みによって信号が送られる。ドライバは、この割り込みを取り扱うこと、および、カウントを保存することに責任がある。ADC読み取りが進行しているかどうかを決定するために、アプリケーションに対して機能が提供される。
【0223】
ADCドライバは、適切な入力範囲のために、較正ゲインおよびオフセットを適用する責任がある。較正は、完了した変換の結果をアプリケーションが読み取るときに適用される。較正はドライバに局所的に保存され、機能は、基準をデータ構造へと戻すために提供される。この基準は、NVMからの較正値を追加するために、および、較正データ完全性試験を行うために用いられる。
【0224】
ドライバは、ADC_CTRLレジスタ、ADC_MSBレジスタ、ADC_LSBレジスタ、およびEADCレジスタを通じてADCを制御する。
【0225】
トリミング
ADCの出力は、所望の精度を達成するためにトリムされなければならない。ADCの出力は、±5%のゲイン誤差と±5%のオフセット誤差とを有している。トリミングの後、ADC出力は±0.5%の精度を有している。トリミング計算は、3つのADC範囲の各々について、NVMから2つの9ビットの符号付きの値を必要とする。各々のゲインおよびオフセットは、8ビットの符号なしの値としてNVMに保存され、すべての符号付きのビットを保持する6ビットの値がある。そのため、製造元によってNVMに書き込まれる7つの値、すなわち、ADC_GAIN_HIGH、ADC_OFFSET_HIGH、ADC_GAIN_MID、ADC_OFFSET_MID、ADC_GAIN_LOW、ADC_OFFSET_LOW、およびADC_SIGNSがある。
高範囲
【0226】
【数5】
【0227】
中範囲
【0228】
【数6】
【0229】
低範囲
【0230】
【数7】
【0231】
ウォッチドッグ
ウォッチドッグドライバは、ウォッチドッグを初期化および有効にするためのソフトウェアインターフェースを提供する。ウォッチドッグタイムアウトは、初期化機能によって6.144秒に構成される。ウォッチドッグがこの期間内に有効にされない場合、ウォッチドッグハードウェアがプロセッサをリセットする。ウォッチドッグタイマーがドライバ初期化に開始される。アプリケーションがウォッチドッグを有効化する責任がある。
【0232】
ITSICコア
ITSICコアドライバは、ITSICに関連する制御装置一般機能についてのソフトウェアインターフェースを提供する。これらの機能は、一般的なイネーブルビットを介してすべての割り込みを有効および無効にすること、および、発振器較正値を読み込みおよび書き込みすることを含む。ドライバは、EAレジスタおよびOSC_CALレジスタを使用する。ドライバを初期化すると、割り込みが無効とされた状態で発振器較正が0.0%に設定される。
【0233】
発振器較正
発振器は、2.048MHzシステムクロックで±1%の精度を達成するために、較正を必要とする。較正されていない発振器は、±30%の精度を有している。8ビット較正値が、製造の間、発振器の周波数を調整し、決定され、NVMのOSC_CAL_VALUEの位置に書き込まれる。OSC_CAL_VALUEは、NVMから読み込まれ、OSC_CALレジスタにじかに書き込まれる。レジスタへの書き込みの後、発振器は1msの設定時間を必要とする。
【0234】
内部EEPROM
ITSIC不揮発性メモリが、2つの目的、すなわち、永続的なデータ保存、および、限界の実行時間データの冗長な保存のためのファームウェアによって用いられる。永続的な保存は、デバイストリミングデータおよび使用ログを含む。冗長な保存は、リスク分析を通じて安全性に必要不可欠として特定された実行時間データを含む。ファームウェアは、不揮発性メモリから読み込みおよび書き込みするように設計される。
【0235】
ITSIC不揮発性メモリは、128x64ビット配列として構築された8kオンチップEEPROMである。EEPROMアクセスは、常に全体ページ(64ビット幅)である。EEPROMは、外部データアドレス指定を介してコードから対応付けおよび参照されるメモリである。外部データアドレスは、C51xデータのキーワードを用いるコードで宣言される。
【0236】
信頼性を向上し、延いては実効誤り率を低くするために、ファームウェアは、誤りの検出機構および補正機構をEEPROMに対して適用する。各々が異なる完全性特性を備えた3つの機構が用いられる。ハミングコードが、全体ページを符号化するために用いられる。ハミングコードは、全体ページの符号化が必要とされないとき、特定のデータフィールドを符号化するために用いられる。最後に、パリティビットが、作動の間にデバイスによって用いられないデータに対する完全性を確認するために用いられる。2つのハミングコードは、すべての1ビット誤りを補正することができ、また、すべての2ビット誤りを検出することができる。パリティビットは、何らかの奇数のビット誤りを検出できる。
【0237】
EEPROMへのソフトウェアインターフェースは、特にはデータ局所性といった、システムの設計に影響を与え得る。読み込みアクセスはファームウェアに透過的である。コアは、全体ページを64ビットのシャドウレジスタへと読み込む。要求されたページがすでに読み込まれている場合、EEPROMはまったく読み込まない。書き込みアクセスは、ページ完遂タイミングを制御するために、ファームウェアを要求する。書き込みアクセスは、最初に、対応するEEPROMページをシャドウレジスタへと読み込む。ファームウェアは、ページを完遂する準備ができたとき、1msでのページ消去と、1msでのページ書き込みとをアサートし、そして、ページ書き込みとビット消去との両方をリセットする。
【0238】
ドライバ構造
EEPROMドライバは、EEPROMからの読み込みおよびEEPROMへの書き込みをする機能を提供することで、EEPROMへのアクセスをカプセル化する。ドライバは、EEPROMからのデータを復号化して読み込むための機能を提供する。これらの機能は、デバイスの較正値、昇圧パラメータ、およびデバイスIDフィールドへのアクセスを提供する。
【0239】
ドライバは、デバイス初期化の後のこれらの値の完全性を検証するための機能も提供する。検証機能は、RAMのコピーが破損されていないことを確かめるために、RAMに保存された値をEEPROMに保存された値と比較する。
【0240】
最後に、ドライバは、EEPROMへの書き込みの機能を提供する。これらの機能は、使用ロギングと、デバイス電源オンコードをアップデートすることとを含む。必要に応じ、ドライバは、ハミング符号化作動およびハミング復号化作動と共に、書き込みのみのフィールドでパリティビットを計算することを取り扱いできる。
【0241】
本発明の特定の実施形態のこれまでの記載は、例示および説明の目的のために提示された。それらの記載は、包括的であるように、または、本発明を開示した明確な形態に限定するように意図されておらず、当然ながら、多くの改良および変形が、上記の教示に鑑みて可能である。実施形態は、本発明の本質およびその実際上の適用を最もよく説明することで、他の当業者が、本発明と、検討される具体的な使用に合わせられるように様々な改良を伴った様々な実施形態とを最適に利用できるようにするために、選択されて記載されている。本発明の範囲は、本文書に添付された特許請求の範囲およびその均等物によって定義されることが意図されている。