(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下に、本発明のいくつかの例示的態様の基本を理解できるように、本発明の簡略的要点を述べる。この要点は本発明の詳細な全体像ではない。さらに、この要点は本発明の重要な要素を特定しようとするものでも、本発明の範囲を限定するものでもない。この要点の唯一の目的は、本発明のいくつかの概念を、後述するより詳細な説明の前置きとして簡略化した形態で提示することである。
【0005】
本願の1つの態様によれば、ガラスリボンを下方に引き出す装置は成形ウェッジを含み、これはその成形ウェッジの両端間に延び、下流方向に沿って収束して基部を形成する1対の傾斜面部分を含む。引き出し面は基部を通って延びる。装置はまた、両端の各々に位置付けられた縁辺誘導手段も含む。各縁辺誘導手段は第一の対の面と第二の対の面を画成する外側部分を含む。第一の対の面の各々は、1対の傾斜面部分のうちの対応する一方から延びる。第二の対の面は第一の対の面から延び、引き出し面に向かって収束する。各縁辺誘導手段の第一と第二の対の面は、約30°〜約60°、例えば約30°〜約50°の範囲内の静的接触角のガラス濡れ性を含む。
【0006】
この態様の他の例において、各縁辺誘導手段の少なくとも外側部分は白金合金を含む。
【0007】
この態様のまた別の例において、白金合金はスズ、銅、銀からなる群から選択された金属を含む。
【0008】
この態様のさらに別の例において、白金合金はスズを含む。例えば、白金スズ合金は、スズを約5重量%未満、例えばスズを約0.05重量%〜約3.5重量%、例えばスズを約0.5重量%〜約2.5重量%含むことができる。
【0009】
本願の他の態様によれば、ガラスリボンを下方に引き出す装置は成形ウェッジを含み、これはその成形ウェッジの両端間に延び、下流方向に沿って収束して基部を形成する1対の傾斜面部分を含む。引き出し面は基部を通って延びる。装置は、両端の各々に位置付けられた縁辺誘導手段をさらに含む。各縁辺誘導手段は第一の対の面と第二の対の面を画成する外側部分を含む。第一の対の面の各々は、1対の傾斜面部分のうちの対応する一方から延びる。第二の対の面は第一の対の面から延び、引き出し面に向かって収束する。第一の対の面の各々は、1対の傾斜面部分のうちの対応する一方から延び、第二の対の面は第一の対の面から延び、引き出し面に向かって収束し、外側部分は、スズを約0.5重量%〜約5重量%含む白金合金を含む。
【0010】
この態様の1つの例によれば、白金合金はスズを約0.05重量%〜約3.5重量%、例えばスズを約0.5重量%〜約2.5重量%含む。
【0011】
この態様の他の例において、各縁辺誘導手段の第一と第二の対の面は、約30°〜約60°、例えば約30°〜約50°の範囲内の静的接触角のガラス濡れ性を含む。
【0012】
本開示のさらに別の態様によれば、ガラス成形方法は成形ウェッジを提供するステップを含み、これはその成形ウェッジの両端間に延び、下流方向に沿って収束して基部を形成する1対の傾斜面部分を含み、引き出し面が基部を通って延びる。この方法はまた、両端の各々に位置付けられた縁辺誘導手段を提供するステップも含む。各縁辺誘導手段は、第一の対の面と第二の対の面を画成する外側部分を含む。第一の対の面の各々は、1対の傾斜面部分のうちの対応する一方から延び、第二の対の面は第一の対の面から延びて、引き出し面に向かって収束する。各縁辺誘導手段の第一と第二の対の面は、約30°〜約60°、例えば約30°〜約50°の範囲内の静的接触角のガラス濡れ性を含む。この方法はまた、溶融ガラスシートを成形ウェッジの1対の傾斜面部分の各々の上に流すステップを含む。この方法は、溶融ガラスシートの第一の対の側方縁辺を第一の縁辺誘導手段の対応する第一の面の上に流し、溶融ガラスシートの第二の対の側方縁辺を第二の縁辺誘導手段の対応する第一の面の上に流すステップを含み、第一と第二の対の側方縁辺の各々の厚さは減少する。この方法はまた、第一の対の側方縁辺を第一の縁辺誘導手段の対応する第二の面の上に流し、溶融ガラスシートの第二の対の側方縁辺を第二の縁辺誘導手段の対応する第二の面の上に流すステップを含み、第一と第二の対の側方縁辺の各々は引き出し面に向かって収束して一体となる。この方法はまた、第一の対の側方縁辺を第一の縁辺誘導手段から引き出し、第二の対の側方縁辺を第二の縁辺誘導手段から引き出すステップを含み、第一の対の側方縁辺は融合して一体となってガラスリボンの第一の融合縁辺を形成し、第二の対の側方縁辺は融合して一体となってガラスリボンの第二の融合縁辺を形成する。
【0013】
この態様の他の例によれば、外側部分はスズを約0.05重量%〜約5重量%、例えばスズを約0.05重量%〜約3.5重量%含む白金合金を含む。
【0014】
本願のさらにまた別の態様によれば、ガラス成形方法は成形ウェッジを提供するステップを含み、これはその成形ウェッジの両端間に延び、下流方向に沿って収束して基部を形成する1対の傾斜面部分を含み、引き出し面が基部を通って延びる。この方法はまた、両端の各々に位置付けられた縁辺誘導手段を提供するステップも含む。各縁辺誘導手段は、第一の対の面と第二の対の面を画成する外側部分を含む。第一の対の面の各々は、1対の傾斜面部分のうちの対応する一方から延び、第二の対の面は第一の対の面から延びて、引き出し面に向かって収束する。外側部分は、スズを約0.05重量%〜約5重量%、例えばスズを約0.05重量%〜約3.5重量%、例えばスズを約0.5重量%〜約2.5重量%含む白金合金を含む。この方法はまた、溶融ガラスシートを成形ウェッジの1対の傾斜面部分の各々の上に流すステップを含む。この方法は、溶融ガラスシートの第一の対の側方縁辺を第一の縁辺誘導手段の対応する第一の面の上に流し、溶融ガラスシートの第二の対の側方縁辺を第二の縁辺誘導手段の対応する第一の面の上に流すステップをまたさらに含み、第一と第二の対の側方縁辺の各々の厚さは減少する。この方法はまた、第一の対の側方縁辺を第一の縁辺誘導手段の対応する第二の面の上に流し、溶融ガラスシートの第二の対の側方縁辺を第二の縁辺誘導手段の対応する第二の面の上に流すステップを含み、第一と第二の対の側方縁辺の各々は引き出し面に向かって収束して一体となる。この方法はまた、第一の対の側方縁辺を第一の縁辺誘導手段から引き出し、第二の対の側方縁辺を第二の縁辺誘導手段から引き出すステップを含み、第一の対の側方縁辺は融合して一体となってガラスリボンの第一の融合縁辺を形成し、第二の対の側方縁辺は融合して一体となってガラスリボンの第二の融合縁辺を形成する。
【0015】
本発明の上記およびその他の態様は、本発明が関係する技術の当業者にとって、添付の図面を参照しながら以下の説明を読めば明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の1つ以上の態様を取り入れた例示的実施形態を説明し、図に示す。示されているこれらの例は本発明を限定するものではない。例えば、本発明の1つ以上の態様を他の実施形態にも、また他の種類の装置においてさえも利用できる。さらに、特定の用語は本明細書においては便宜のためにのみ使用しており、本発明を限定するものと解釈するべきではない。またさらに、図中、同じ参照番号は同じ要素を指示するために使用されている。
【0018】
本発明の態様は、ガラスリボンを引き出すための各種の装置に使用できる。
図1と2は、ガラスリボン103を引き出すための1つの例の装置101の態様を示している。例示的装置101は成形ウェッジ105を含み、これは成形ウェッジ105の両端109a、109b間に延びる1対の傾斜面部分107a、107bを含む。
図2に示されるように、1対の傾斜面部分107a、107bは下流方向201に沿って収束して基部203を形成する。引き出し面205が基部203を通って延び、ガラスリボン103は、引き出し面205に沿って下流方向201に引き出してもよい。図のように、引き出し面205は基部203を二等分することができるが、引き出し面205は基部203に関してそれ以外の向きで延びていてもよい。
【0019】
図1に示されるように、縁辺誘導手段は成形ウェッジの両端の各々に位置付けることができる。実際、第一の縁辺誘導手段111を第一の端109aに位置付けることができ、同じ第二の縁辺誘導手段111を第二の端109bに位置付けることができる。同じ縁辺誘導手段を提供することは、均一なガラスシートを提供するために有益でありうるが、縁辺誘導手段は他の例においては異なる構成を有していてもよい。
【0020】
図2に示されるように、縁辺誘導手段111は1対の上側部分207a、207bを含むことができ、これらは下側部分209によって一体に結合されてもよい。上側部分を一体に結合することは、成形ウェッジ105に縁辺誘導手段111を組み付けやすくするために有益でありうる。他の例では、上側部分207a、207bを別々に提供してもよい。例えば、縁辺誘導手段111を相互から分離させて、成形ウェッジ105の1対の傾斜面部分107a、107bの各々に別々に組み付けることができる。特定の構成では、結合されていない上側部分を提供することによって縁辺誘導手段が製造しやすくなる可能性がある。
【0021】
縁辺誘導手段111は、第一の上側部分207aの内面部分208aを成形ウェッジ105の第一の傾斜面部分107aと係合させることによって成形ウェッジに取り付けることができる。同様に、第二の上側部分207bの内面部分208bは、成形ウェッジ105の第二の傾斜面部分107bと係合させることができる。
図1に示されるように、両端109a、109bの各々は、対応する縁辺誘導手段111を所定の位置に横方向から位置付けるのを支援するように設計された保持ブロック115を含むことができる。例えば、任意選択による保持ブロック115は、成形ウェッジ105にまたがる1対の平坦面117(
図1には一方のみ示されている)を含むことができる。平坦面117は、縁辺誘導手段111の1対の上側部分207a、207bの対応する平坦面119(
図1には一方のみ示されている)と接触するように設計される。位置付けたところで、縁辺誘導手段111を図の位置に固定できる。
【0022】
縁辺誘導手段111の1対の上側部分207a、207bは、対応する対の第一の面211a、211bを含むことができる。
図2に示されるように、第一の対の面211a、211bは各々、1対の傾斜面部分107a、107bのうちの対応する一方から延ばすことができる。例えば、第一の面211aは第一の傾斜面部分107aから延ばすことができ、第二の面211bは成形ウェッジ105の第二の傾斜面部分107bから延ばすことができる。図のように、第一の対の面211a、211bは実質的に平坦とすることができるが、他の例において、これらの面は実質的に凹型であってもよく、および/または他の面特性を含んでいてもよい。さらに、図のように、第一の対の面211a、211bは相互に同じであるが、他の例において、これらの面は異なる構成を有していてもよい。
【0023】
図1に示されるように、第一の対の面211a、211bの各々は横方向の幅「W」を含むことができ、これは下流方向201に減少する。例えば、図のように、第一の面は第一の横方向の幅「W1」と、第一の横方向の幅「W1」より大きい第二の下流側の横方向の幅「W2」を有することができる。図のように、横方向の幅「W」は実質的に一定の割合で増大して、成形ウェッジ105の対応する傾斜面部分の形状に追従するように構成された線形の縁辺113を画成することができる。図には示されていないが、本明細書の他の実施形態の横方向の幅は非線形に増大してもよい。
【0024】
再び
図2を参照すると、縁辺誘導手段111はさらに、第一の対の面211a、211bから延び、基部203の下流で引き出し面205に向かって収束する第二の対の面213a、213bを含むことができる。図のように、第二の対の面213a、213bは実質的に平坦とすることができるが、他の例において、これらの面は実質的に凹型であってもよく、および/または他の面特性を含んでいてもよい。さらに、図のように、第二の対の面213a、213bは相互に同じであるが、他の例において、これらの面は異なる構成を有していてもよい。
【0025】
縁辺誘導手段111はまた、任意選択による下流構造をさらに含むことができ、これは第二の対の面213a、213bに関して、また基部203の下流に延びる。
図1に示されるように、縁辺誘導手段111の下流構造は任意選択によるブレード121を含むことができ、これは第二の対の面213a、213bに関して延びる。ブレード121は、第二の対の面のうちの第一の面213aから延びる第一の面123と第二の対の面のうちの第二の面213bから延びる第二の面(図示せず)を含むことができる。
【0026】
図3は、縁辺誘導手段111の、第一の対の面211a、211bと第二の対の面213a、213bを画成する外側部分301の部分的断面図を示す。任意選択により、縁辺誘導手段111の外側部分301はまた、ブレード121が設けられている場合にはその第一の面123および/または第二の面を画成することができる。
図3に示されるように、外側部分301は縁辺誘導手段111の内側部分303と同じ組成とすることができる。例えば、縁辺誘導手段111の全体を単独の組成材料から形成でき、および/または単独の一体部品として提供してもよい。
【0027】
図4は、縁辺誘導手段111の、第一の対の面211a、211bと第二の対の面213a、213bを画成する他の外側部分401を示す部分的断面図である。任意選択により、縁辺誘導手段111の外側部分401はまた、ブレード121が設けられている場合にはその第一の面123および/または第二の面を画成することができる。
図4に示されるように、外側部分401は内側部分403とは異なる組成とすることができる。例えば、外側部分401は縁辺誘導手段111の内側部分403の上に設置される材料の層を含んでいてもよい。外側部分401は、内側部分403への蒸着またはその他の方法で提供してもよい。
【0028】
1つの例において、既存の縁辺誘導手段に外側部分401を組み込んで改良してもよい。例えば、白金合金を、既存の白金製の縁辺誘導手段を含む内側部分403の上に外側部分401として提供してもよい。このような例では、スズ、銀および/または銅のコーティングを標準的な純白金の縁辺誘導手段の上に製造後に成膜することができる。濡れは表面現象であるため、縁辺誘導手段の表面における組成だけが溶融ガラスによるガラス面の濡れに影響を与える。コーティングは各種の方法の1つを使って成膜できるが、電気メッキが金属コーティングの提供に特によく適しているかもしれない。コーティングは、純スズ、銀、銅および/またはこれらの金属の混合物、またはこれらの金属の1つ以上と白金との混合物でなるようにすることができる。例えば、本願の例においては、白金スズコーティングを純白金製の縁辺誘導手段に成膜してもよい。
【0029】
外側部分301、401によって画成される第一の対の面211a、211bと第二の対の面213a、213bは、従来の縁辺誘導手段の面と比べて、比較的高いガラス濡れ性を含むことができる。本願全体を通じて使用されるガラス濡れ性とは、以下の試験手順に従った場合に円筒状のEagle XG(登録商標)ガラスが水平面上でどれだけ広がりやすいか、と定義することができる。ガラス濡れ性は、本明細書で使用されるかぎり、直径9mm×高さ12mmのEagle XG(登録商標)ガラスの円筒状ガラスを試験対象のサンプルの表面上に設置する実験を行うことによって測定できる。Eagle XG(登録商標)ガラスはCorning,Inc.から入手可能であり、本願の出願日現在、Corning,Inc.から入手可能なEagle XG(登録商標)ガラスのガラス組成を有する。試験中、サンプルを円筒状ガラスと共に溶融シリカマッフルを備える加熱炉の中に設置する。加熱炉を、空気中の同じ試験場所で測定して、10℃/分の速度で1200℃まで加熱する。次に温度を1200℃に20時間保持する。20時間保温した後、ガラス滴の画像を取得し、次に、ガラス滴とサンプル表面との界面における静的接触角を測定することができる。接触角の正確な数値は、ガラス組成の違いに応じて変化しうる。いくつかの例において、本願の特徴をアリカリ土類ボロアルミノシリケートガラス(例えば、Eagle XG(登録商標)ガラス)またはその他のガラス組成物と共に使用できる。
【0030】
図5の左側は、従来の圧延のままの純白金製サンプルの従来の表面のガラス濡れ性を示す。図のように、ガラス濡れ性は、接触角(すなわち、約80°)が比較的大きいため、比較的低い。これに対して、
図5の右側は、左側の従来のサンプルの表面粗さと比較して同様の表面粗さで同様に圧延された白金合金を含む、本願の態様による表面のガラス濡れ性を示す。図のように、
図5の白金合金製サンプルは、1.65重量%のスズ(Sn)を含む白金合金を含み、サンプルの残りの重量は白金(Pt)を含む。図のように、本発明の表面は、静的接触角が比較的小さい(すなわち、
図5の右側で約31.5°)ため、比較的高い濡れ性を含むことができる。
【0031】
ガラス濡れ性は、サンプルの表面粗さによって影響を受ける可能性がある。しかしながら、圧延のままの純白金表面からの表面の静的接触角は表面粗さが約8〜10マイクロインチ(0.2〜0.25マイクロメートル)の320グリットにより粗さ加工された純白金表面と略同じであることが観察された。しかしながら、サンドブラストされた純白金製サンプルの静的接触角はかなり大きく、ガラス濡れ性が低下していることを示す。そのため、本願の態様は任意選択により、8〜10マイクロインチ(0.2〜0.25マイクロメートル)より小さい表面粗さで使用してもよい。
【0032】
上述のように、比較的高いガラス濡れ性を有する表面とは、上記の試験手順を実行した後に比較小さい接触角を有する表面と定義できる。同様に、比較的低いガラス濡れ性を有する表面とは、上述の試験手順を実行した後に比較的大きい接触角を有する表面と定義できる。本発明のいくつかの例において、第一と第二の対の面211a、211b、213a、213bは、静的接触角が約60°未満、例えば約30°〜約60°、例えば約30°〜約50°、例えば約30°〜約40°、例えば約30°〜約35°の比較的高いガラス濡れ性を含むことができる。
【0033】
比較的高いガラス濡れ性を提供することは、本願の態様によるガラス成形を向上させるために望まれる可能性がある。実際、比較的高いガラス濡れ性は、縁辺誘導手段での失透成長の減少を促進し、それによって縁辺誘導手段の寿命を延ばし、ガラスリボンの短期的および長期的な厚さおよび融合したエッジビード品質を改善すると考えられている。
【0034】
ガラス濡れ性の増大は、例えば縁辺誘導手段を純白金で製造するのではなく、縁辺誘導手段を白金合金から提供することによって実現できる。白金合金を提供することによって、縁辺誘導手段の強度が高められるのと同時に、ガラス濡れ性も増大する。1つの例において、望ましいガラス濡れ性は、白金合金がスズ、銅、銀からなる群から選択される金属を含む場合に実現される可能性がある。例えば、白金合金はスズを含むことができる。スズは、装置がガラス組成内にスズを含むガラスを下方に引き出すような用途において特に有利でありうる。そのため、スズはガラス内に残り、そうでなければスズがガラスから純白金の中に引き出される傾向が低下する。純白金が縁辺誘導手段に使用される場合、純白金の縁辺誘導手段の、溶融ガラス組成の中にスズを含む溶融ガラスと接触する外面は、縁辺誘導手段の接触面において白金スズ合金を形成するかもしれないが、0.01重量パーセント未満とスズの量が少なく、接触角が静的接触角60°またはそれ以下まで減少する地点までガラス濡れ性が増大することにならないような量である。
【0035】
白金スズ合金を提供することによって、Pt−Sn界面(約98%Pt/2%Sn)でのEagle XG(登録商標)の液体温度がPt界面(100%Pt)のそれと同等またはそれより低くなることが観察された点も明記する。
【0036】
図6は、異なる重量パーセントのスズ(Sn)と残りの重量の白金(Pt)を含む白金合金で観察されるガラス濡れ性を示すグラフである。縦軸は単位が度の静的接触角であり、横軸はスズ(Sn)の重量パーセントである。図のように、圧延のままの純白金(約100%Pt/0%Sn)では、静的接触角は約80°である。図のように、白金合金中のスズ(Sn)の量を少なくすると、静的接触角を大幅に減少させることができ、それによって表面のガラス触れ性を増大させることができる。例えば、図のように、スズ約0.3重量パーセントの白金スズ合金(約99.7%Pt/0.3%Sn)では接触角が49°まで減少することが観察された。さらに示されるように、スズ約0.8重量パーセントの白金スズ合金(約99.2%Pt/0.8%Sn)ではさらに接触角が37°まで減少することが観察された。またさらに示されているように、スズ約1.65重量パーセントの白金スズ合金(約98.35%Pt/1.65%Sn)では接触角がさらに31.5°まで減少することが観察された。しかしながら、スズ(Sn)のパーセンテージがそれより高い白金合金では、接触角の低減においてそれ以上の利点を提供しないことが観察されたものの、接触角は、圧延のままの純白金製サンプルと比較して、依然として小さかった。例えば、スズ約3.4重量パーセントの白金合金(約96.6%Pt/3.4%Sn)では、静的接触角が約46.3°まで増大することが観察された。したがって、スズの量を特定の点を超えて増大させるとガラス濡れ性が低下することが観察された。濡れ性の低下は、白金スズ合金内の不均質性によるかもしれない。
図6に示されるデータ近似曲線に基づくと、最大のガラス濡れ性は、スズ(Sn)約1.5重量パーセントの白金スズ合金(約98.5%Pt/1.5%Sn)の時に発生しうる。
【0037】
いくつかの例において、各縁辺誘導手段111の少なくとも外側部分301、401は、スズの含有量が約5重量%未満の白金スズ合金を含む。例えば、白金スズ合金は、スズを約0.05重量%〜約3.5重量%、例えばスズを約0.07重量%〜約3.5重量%、例えばスズを約0.1重量%〜約3.5重量%、例えばスズを約0.3重量%〜約3.5重量%含むことができる。他の例において、白金スズ合金は、スズを約0.5重量%〜約2.5重量%、例えばスズを約1重量%〜約2重量%、例えばスズを約1.25重量%〜約1.75重量%、スズを約1.5重量%含むことができる。
【0038】
別の例において、各縁辺誘導手段111の少なくとも外側部分301、401は白金合金(例えば、スズ、銅および/または銀を含む)を、静的接触角が約60°未満、例えば約30°〜約60°、例えば約30°〜約50°、例えば約30°〜約40°、例えば約30°〜約35°となるような量だけ含んでいてもよい。
【0039】
ここで、例示的な縁辺誘導手段111を含む装置101に関して、ガラス成形方法を説明する。同様または同一の方法ステップを、例えば本願全体を通して説明する他の例にも実行してよいことがわかるであろう。さらに、本発明の例示的方法では他のステップを省略および/または追加してもよい。特にことわりがないかぎり、ステップは特定の用途に応じて同時に、逐次的に、または異なる順序でも実行できる。
【0040】
図1と2に示されるように、概略的に示されている縁辺誘導手段111を含む例示的な装置101を用いたガラス成形方法。
図2は、成形ウェッジ105の第一の端109aに設置された第一の縁辺誘導手段111を用いて実行される例示的な方法を示している。
図2はまた、
図1における反対方向から見た断面も示す。それゆえ、
図2はまた、第二の端109bに配置された第二の縁辺誘導手段111を用いて実行される例示的な方法も示している。
【0041】
方法は、成形ウェッジ105を提供するステップを含むことができ、これは成形ウェッジ105の両端109a、109b間に延び、下流方向に201に沿って収束して基部203を形成する1対の傾斜面部分107a、107bを含む。
図2に示されるように、引き出し面205は基部203を通って延びる。
【0042】
方法は、両端109a、109bの各々に位置付けられた縁辺誘導手段111を提供するステップをさらに含む。
図3と4に関して前述したように、各縁辺誘導手段111は、第一の対の面211a、211bと第二の対の面213a、213bを画成する外側部分301、401を含む。第一の対の面211a、211bの各々は、成形ウェッジ105の1対の傾斜面部分107a、107bのうちの対応する一方から延びる。さらに、第二の対の面213a、213bは第一の対の面211a、211bから延び、引き出し面205に向かって収束する。
【0043】
1つの例において、各縁辺誘導手段111の第一と第二の対の面211a、211b、213a、213bは、静的接触角が約60°未満、例えば約30°〜約60°、例えば約30°〜約50°、例えば約30°〜約40°、例えば約30°〜約35°の範囲内のガラス濡れ性を含む。
【0044】
いくつかの例において、各縁辺誘導手段111の少なくとも外側部分301、401、例えば縁辺誘導手段全体が白金合金を含むことができる。1つの例において、白金合金はスズ、銅、銀からなる群から選択された金属を含み、これらはそれぞれが白金スズ合金、白金銅合金、または白金銀合金を形成する。例えば、白金合金は、スズ(Sn)を約5重量%未満の量で含む白金スズ合金を含むことができる。例えば、白金スズ合金はスズ(Sn)を約0.05重量%〜約3.5重量%含むことができる。他の例では、白金スズ合金はスズ(Sn)を約0.5重量%〜約2.5重量%、例えばスズ(Sn)を約1重量%〜約2重量%、例えばスズ(Sn)を約1.25重量%〜約1.75重量%、例えばスズ(Sn)を約1.5重量%含むことができる。
【0045】
方法は、溶融ガラスシートを成形ウェッジ105の1対の傾斜面部分107a、107bの各々の上に流すステップをさらに含むことができる。例えば、
図2に示されるように、第一の溶融ガラスシートの中央部分215aは成形ウェッジ105の第一の傾斜面部分107aの上を流れる。同様に、第二の溶融ガラスシートの中央部分215bは、成形ウェッジ105の第二の傾斜面部分107bの上を流れる。
【0046】
図2に示されるように、方法はまた、溶融ガラスシートの第一の対の側方縁辺217a、217bを第一の縁辺誘導手段111の対応する第一の面211a、211bの上に流し、溶融ガラスシートの第二の対の側方縁辺を第二の縁辺誘導手段の対応する第一の面211a、211bの上に流すステップも含むことができ、第一と第二の対の側方縁辺の厚さは減少する。溶融ガラスシートの第二の対の側方縁辺のうちの一方が
図1に125として示されており、その対の側方縁辺のうちのもう一方は隠れている。第一と第二の縁辺誘導手段は同じとすることができるため、
図2はまた、溶融ガラスシートの第二の対の側方縁辺(125参照)を第二の縁辺誘導手段111の対応する第一の面211a、211bの上に流し、第二の対の側方縁辺の各々の厚さを減少させるステップの図も提供していることがわかるであろう。第一の対の面211a、211bの各々が1つの対の傾斜面部分107a、107bのうちの対応する一方から延びるため、移動する表面積は下方に増大し、それによって対応するガラスシートの縁辺部分が引き延ばされ、1対の側方縁辺の各々の厚さが減少する。
【0047】
方法は、第一の対の側方縁辺217a、217bを第一の縁辺誘導手段111の対応する第二の面213a、213bの上に流し、溶融ガラスシートの第二の対の側方縁辺を第二の縁辺誘導手段の対応する第二の面の上に流すステップをさらに含み、第一と第二の対の側方縁辺は引き出し面205に向かって収束して一体となる。
【0048】
方法は、第一の対の側方縁辺217a、217bを第一の縁辺誘導手段111から引き出し、第二の対の側方縁辺を第二の縁辺誘導手段から引き出すステップをさらに含む。第一の対の側方縁辺217a、217bは一体に融合してガラスリボン103の第一の融合縁辺127aを形成し、第二の対の側方縁辺は一体に融合してガラスリボン103の第二の融合縁辺127bを形成する。
【0049】
本発明を上述の例示的実施形態に関して説明した。本明細書を読み、理解したところで、改良や変更を他人が着想するであろう。本発明の1つ以上を取り入れた例示的実施形態はそのような改良と変更のすべてを、これらが付属の特許請求の範囲から逸脱しないかぎり含むものとする。