【課題を解決するための手段】
【0015】
式(IV)の化合物を45℃より高温に加熱すると、それらが容易に不均化して、より大きい硫黄原子数とより小さい硫黄原子数とを有する複数の化合物を与えるという知見に基づいて、その混合物中での硫黄鎖長の分布が狭いために、驚くべきことには、本発明の目的を達成することが可能な、本発明のポリスルフィド混合物を与えるプロセスが今や開発された。
【0016】
ポリスルフィド混合物を製造するための本発明のプロセスにおいては、3−メルカプトプロピオン酸アルキル(VII)(その製造法は、広く各種の参考文献に記載がある)とS
2Cl
2との間での接触を実施する。
【化3】
(式中、2個の残基Rのそれぞれは、同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは同一であって、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、またはC
5−アルキル、C
6−アルキル、C
7−アルキル、もしくはC
8−アルキル、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、またはイソオクチル、特に好ましくはメチルであり、nは2〜6の数である)。
【0017】
原理的には、複数のメルカプトプロピオン酸アルキル(VII)を使用し、それによって、非対称なポリスルフィド、すなわち二つの異なった置換基Rを担持するポリスルフィドを含むポリスルフィド混合物を製造するということも可能である。本発明の目的においては、このタイプの混合物は、同一の置換基Rを有するポリスルフィドの混合物と等価であると考えられる。本発明の好ましい実施態様には、対称ポリスルフィドのポリスルフィド混合物が含まれる、すなわち、2個の同一の置換基を担持するポリスルフィド、特にそのポリスルフィドすべてにおいてRが同一であるような混合物が含まれる。
【0018】
原料の間の接触は、典型的には、不活性な媒体の中で実施するが、これは、その反応条件下では、それらの反応剤と、多くとも10%、好ましくは多くとも5%、特に好ましくは多くとも1%、極めて特に好ましくは0%の程度にしか反応しない媒体を意味している。好適な媒体は、反応条件下では液体である、下記のもののいずれかであるのが好ましい:脂肪族環状および/または非環状炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族および/または芳香族ハロ炭化水素、エーテル、およびエステル、ならびにそれらの混合物。特に好ましい媒体は、トルエンおよびシクロヘキサンである。無水の媒体を使用するのが好ましい。
【0019】
一つの好ましい実施態様においては、それらの原料を、式(I)のポリスルフィドの混合物、特に上述の本発明のポリスルフィド混合物の中で接触させると、不活性な媒体を除去する必要がなくなる可能性がある。
【0020】
初期の仕込みとして、3−メルカプトプロピオン酸アルキル(VII)と不活性な媒体との混合物を使用し、次いで、その反応混合物の中に、それを冷却しながら、S
2Cl
2を計量添加するのが好ましい。しかしながら、不活性な媒体の中に、原料を同時に導入することもまた可能である。そのプロセスは、バッチモード、連続モード、半連続モード、カスケードモードのいずれで実施することもできる。
【0021】
原料の間の接触は、典型的には0℃〜60℃、好ましくは10℃〜45℃、特に好ましくは15℃〜35℃の温度で実施する。温度が低すぎると、S
2Cl
2が必ずしも直ぐには反応で消費されず、そのために、その反応混合物中でのS
2Cl
2の濃度が相対的に高くなることから、副生物が生成する潜在的なリスクが生じる可能性がある。温度が高すぎることも、作業の安全性と製品品質の面から、同様に避けるべきである。
【0022】
その反応は、不活性ガスの下で実施するのが好ましい。この目的のためには、貴ガスまたは窒素を使用するのが好ましい。
【0023】
反応が終わるより前にその混合物から、特に反応混合物の中に不活性ガスを通気するか、および/または真空をかける、すなわち1013mbar未満の圧力にすることにより、生成するHClガスの全部または一部を除去するのが好ましい。
【0024】
本発明のポリスルフィド混合物を不活性な媒体として使用すると、不活性な媒体の除去を省略することができる。また別な場合として、すなわち、本発明のポリスルフィド混合物以外の不活性な媒体を使用するときには、前記不活性な媒体の除去は、45℃以下、好ましくは40℃以下、特に好ましくは35℃以下、極めて特に好ましくは30℃以下の温度で実施し、そして減圧下、すなわち1013mbar未満で実施するのが好ましい。
【0025】
したがって、一つの好ましい実施態様においては、3−メルカプトプロピオン酸アルキル(VII)とS
2Cl
2との接触および不活性な媒体(これが本発明のポリスルフィド混合物ではないとして)の除去の両方を、10℃〜45℃、特には15℃〜35℃、極めて特には20℃〜30℃の範囲で実施する。
【0026】
本発明は、本発明のポリスルフィド混合物を製造するためのプロセスのみならず、それで得られる式(I)のポリスルフィド混合物も提供するが、ここで、二つの残基Rは、同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは同一であって、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、またはC
5−アルキル、C
6−アルキル、C
7−アルキル、またはC
8−アルキル、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、またはイソオクチル、特に好ましくはメチルであり、そしてnは、2〜6の数である。
【0027】
本発明のポリスルフィド混合物には、式(I)のポリスルフィド化合物の全量を基準にして、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも90%、極めて特に好ましくは95〜99%の、n=4である式(I)の1種または複数のポリスルフィド化合物が含まれる。本出願の目的では、式(I)の化合物についての定量的データは、実施例3の最後近くに記載した、屈折率(RI)検出器を使用したHPLC測定からの面積パーセントのデータである。
【0028】
本発明のポリスルフィド混合物には、式(I)のポリスルフィド化合物の全量を基準にして、通常10%未満、好ましくは6%未満、特に好ましくは4%未満、極めて特に好ましくは2%未満の、n=3である式(I)のポリスルフィド化合物が含まれる。
【0029】
本発明のポリスルフィド混合物には、式(I)のポリスルフィド化合物の全量を基準にして、通常10%未満、好ましくは6%未満、特に好ましくは4%未満、極めて特に好ましくは3%未満の、n=5である式(I)のポリスルフィド化合物が含まれる。
【0030】
本発明のポリスルフィド混合物には、式(I)のポリスルフィド化合物の全量を基準にして、通常10%未満、好ましくは5%未満、特に好ましくは2%未満、極めて特に好ましくは1%未満の、n=2である式(I)のポリスルフィド化合物が含まれる。
【0031】
本発明のポリスルフィド混合物には、式(I)のポリスルフィド化合物の全量を基準にして、通常3%未満、好ましくは2%未満、極めて特に好ましくは1%以下の、n=6である式(I)のポリスルフィド化合物が含まれる。
【0032】
本発明のポリスルフィド混合物にはさらに、n=4である式(I)の1種または複数の化合物と共に、n=2、3、5、または6である式(I)の1種または複数の化合物が含まれる。n=2、3、5、および6である式(I)の化合物を合計した割合は、相当する混合物の中で、式(I)のポリスルフィド化合物の全量を基準にして、通常20%以下、好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下、極めて特に好ましくは1〜5%である。
【0033】
一つの好ましい実施態様においては、本発明のポリスルフィド混合物には、10%未満、特には3%未満、極めて特には1%未満、最も好ましくは0.2%未満の副生物または混入物、すなわち、式(I)に相当しない化合物が含まれる。
【0034】
本発明のポリスルフィド混合物には、典型的には2%未満、好ましくは1%未満、特に好ましくは0.3%未満、極めて特に好ましくは0.1%未満、最も好ましくは0%の、混入物としての元素状硫黄が含まれる。
【0035】
本発明のポリスルフィド混合物の引火点は、通常180℃より高く、好ましくは200℃よりも高い。
【0036】
本発明のポリスルフィド混合物の硫黄含量は、元素分析から、通常35〜50%、好ましくは40〜45%である。
【0037】
本発明のポリスルフィド混合物の全塩素含量は、典型的には1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、特に好ましくは10ppm未満である。
【0038】
本発明のポリスルフィド混合物の中の硫黄原子の数は平均して、式(I)の1分子あたり、通常で3.5〜4.5、好ましくは3.7〜4.3、特に好ましくは3.8〜4.2、極めて特に好ましくは3.9〜4.1である。したがって、本発明のポリスルフィド混合物の中の活性硫黄原子の数は平均して、式(I)の1分子あたり、典型的には1.5〜2.5、好ましくは1.7〜2.3、特に好ましくは1.8〜2.2、極めて特に好ましくは1.9〜2.1である。
【0039】
本発明の式(I)のポリスルフィド混合物を製造した後では、0〜35℃、特には0〜20℃の温度でそれらを貯蔵するのが好ましい。
【0040】
本発明のポリスルフィド混合物をゴム混合物の中で使用すると、予想もできなかった性質を示す。本発明のポリスルフィド混合物を含まない参照混合物と比較すると、その混合物の流動性およびスコーチ時間、ならびに加硫物の硬度および転がり抵抗性において改良があった。このことはいっそう驚くべきことであるが、その理由は、欧州特許第11164319号明細書で使用された、65%の化合物(IV)ならびに31%の化合物(III)および(V)を含む、すなわち、かなりの量の活性硫黄原子を含む混合物では、参照混合物と比較すると、転がり抵抗性および摩耗性が顕著に損なわれてしまったからである。
【0041】
したがって、本発明はさらに、少なくとも1種のゴムおよび1種の本発明のポリスルフィド混合物をそれぞれ含むゴム混合物も提供する。
【0042】
特には、本発明は、少なくとも1種のゴム、1種の硫黄含有アルコキシシラン、1種のシリカベースの充填剤、および1種の本発明のポリスルフィド混合物をそれぞれ含む、ゴム混合物を提供する。
【0043】
本発明のポリスルフィド混合物はさらに、部分的または全面的に、不活性な、有機もしくは無機のキャリヤーの上に吸収させてから使用することもまた可能である。好ましいキャリヤー物質は、シリカ、天然および合成のケイ酸塩、酸化アルミニウム、および/またはカーボンブラックである。
【0044】
本発明中のゴム混合物における本発明のポリスルフィド混合物の合計した含量は、好ましくは0.1〜15phr、特に好ましくは0.3〜7phr、極めて特に好ましくは0.5〜3phr、最も好ましくは0.7〜1.5phrである。phrという単位は、そのゴム混合物中で使用されているゴム100重量部を基準にした重量部を表している。
【0045】
本発明のゴム混合物を製造するために使用できるのは、天然ゴムおよび/または合成ゴムである。好ましい合成ゴムの例は以下のものである:
BR:ポリブタジエン
ABR:ブタジエン/アクリル酸C
1〜C
4−アルキル・コポリマー
CR:ポリクロロプレン
IR:ポリイソプレン
SBR:スチレン/ブタジエン・コポリマー(スチレン含量が、1〜60重量%、好ましくは20〜50重量%のもの)
IIR:イソブチレン/イソプレン・コポリマー
NBR:ブタジエン/アクリロニトリル・コポリマー(アクリロニトリル含量が、5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%のもの)
HNBR:部分水素化または完全水素化NBRゴム
EPDM:エチレン/プロピレン/ジエン・コポリマー
およびそれらのゴムの2種以上の混合物。
【0046】
本発明のゴム混合物には、少なくとも1種のSBRゴムと少なくとも1種のBRゴムを、特にSBR:BRの重量比が(60:40)〜(90:10)の比率で含んでいるのが好ましい。
【0047】
一つの有利な実施態様においては、本発明のゴム混合物がさらに少なくとも1種のNRゴムを含んでいる。それらが、少なくとも1種のSBRゴム、少なくとも1種のBRゴム、および少なくとも1種のNRゴムを含んでいるのが特に好ましく、ここでSBRゴム対BRゴム対NRゴムの重量比が、(60〜85):(10〜35):(5〜20)であれば、極めて特に好ましい。
【0048】
本発明のゴム混合物のために好適な硫黄含有アルコキシシランとしては、以下のものが挙げられる:ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(たとえば、Si 69、Evonik製)、およびビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン(たとえば、Si 75、Evonik製)、3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンチオール、ポリエーテル官能性メルカプトシラン(たとえば、Si 363、Evonik製)、およびチオエステル官能性アルコキシシラン(たとえば、NXTまたはNXT Z、Momentive(旧GE)製)。硫黄含有アルコキシシランの混合物を使用することもまた可能である。支持体の上に液状の硫黄含有アルコキシシランを適用して、計量および/または分散の容易性を増大させてもよい(乾燥液体)。活性成分の含量は、乾燥液体100重量部あたり、30〜70重量部、好ましくは40〜60重量部である。
【0049】
本発明のゴム混合物の中の硫黄含有アルコキシシランの割合は、それぞれの場合において100%活性成分として計算して、好ましくは2〜20phr、より好ましくは3〜11phr、最も好ましくは5〜8phrである。硫黄含有アルコキシシランの量が、本発明の式(I)のポリスルフィド混合物の量よりも多いか、または同じであるのが好ましい。硫黄含有アルコキシシランの、発明の式(I)のポリスルフィド混合物対する重量比は、特に好ましくは(1.5:1)〜(20:1)、極めて特に好ましくは(3:1)〜(15:1)、最も好ましくは(5:1)〜(10:1)である。
【0050】
本発明において好ましいゴム混合物にはさらに、1種または複数のシリカベースの充填剤が含まれる。ここで好適に使用される物質は、以下のものである:
・ シリカ、特に沈降シリカまたはヒュームドシリカ、たとえばケイ酸塩の溶液の沈降またはケイ素のハロゲン化物の加水分解によって製造され、5〜1000m
2/g、好ましくは20〜400m
2/gの比表面積(BET表面積)と、10〜400nmの一次粒径とを有するもの。それらのシリカは、場合によっては、他の金属の酸化物たとえばAl酸化物、Mg酸化物、Ca酸化物、Ba酸化物、Zn酸化物、Zr酸化物、またはTi酸化物との混合酸化物の形態をとることもできる。
・ 合成ケイ酸塩、たとえばケイ酸アルミニウム、アルカリ土類金属のケイ酸塩、たとえば、ケイ酸マグネシウムもしくはケイ酸カルシウムで、20〜400m
2/gのBET表面積と、10〜400nmの一次粒径とを有するもの。
・ 天然のケイ酸塩、たとえばカオリンおよびその他の天然産のシリカ。
・ ガラス繊維(マットおよびストランドの形態のものを含む)。
・ ガラスミクロスフェア。
【0051】
言うまでもないことであるが、追加の充填剤を使用することも可能である。ランプブラックプロセス、ファーネスブラックプロセス、またはガスブラックプロセスによって製造したカーボンブラックが、この目的には特に好適であるが、それらのもののBET表面積は20〜200m
2/gであり、たとえば、SAF、ISAF、IISAF、HAF、FEF、およびGPFカーボンブラックである。
【0052】
充填剤を合計した含量は、好ましくは10〜200phr、特に好ましくは50〜160phr、極めて特に好ましくは60〜120phrである。
【0053】
シリカ、カーボンブラック、および本発明のポリスルフィド混合物を組み合わせることにより、特に好ましい実施態様が得られる。ここでのシリカ対カーボンブラックの比率は、各種所望の範囲内で変化させることができるが、タイヤ用途の場合では、シリカ:カーボンブラックの重量比が(20:1)〜(1.5:1)であるのが好ましい。
【0054】
一つの好ましい実施態様においては、本発明のゴム混合物にはさらに、1種または複数の架橋剤が含まれる。この目的のためには、硫黄ベースの架橋剤またはペルオキシド系架橋剤が特に好適であるが、ここでは硫黄ベースの架橋剤が特に好ましい。
【0055】
好適に使用されるペルオキシド系架橋剤としては、以下のもの挙げられる:ビス(2,4−ジクロロベンジル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、4,4−ジ−tert−ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン。
【0056】
それらペルオキシド系架橋剤と並行して、幸便に使用することが可能なさらなる他の添加物は、架橋収率を向上させるために使用することが可能なものであり、この目的のために好適な化合物の例としては以下のものが挙げられる:トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、1,2−ポリブタジエン、およびN,N’−m−フェニレンジマレイミド。
【0057】
硫黄は、元素状の可溶性もしくは不溶性の形態、または硫黄供与体の形態で、架橋剤として使用することができる。使用可能な硫黄供与体としては、以下のものが挙げられる:ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2−モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、およびテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)。
【0058】
本発明のゴム混合物の架橋は、原理的には、硫黄または硫黄供与体単独、または加硫促進剤を併用して達成することができるが、それに適した化合物としては以下のものが挙げられる:ジチオカルバメート、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲネート、二環または多環のアミン、グアニジン誘導体、ジチオホスフェート、カプロラクタム、およびチオ尿素誘導体。好適なその他の化合物としてはさらに、亜鉛ジアミンジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、さらには環状ジスルファンがある。本発明のゴム混合物が硫黄ベースの架橋剤と加硫促進剤を含んでいるのが好ましい。
【0059】
特に好適に使用される架橋剤は、硫黄、酸化マグネシウム、および/または酸化亜鉛であり、公知の加硫促進剤、たとえばメルカプトベンゾチアゾール、チアゾールスルフェンアミド、チウラム、チオカルバメート、グアニジン、キサントゲネート、およびチオホスフェートがそれらに添加される。
【0060】
架橋剤および加硫促進剤の好適な使用量は、0.1〜10phr、特には0.1〜5phrである。
【0061】
本発明のゴム混合物には、たとえば以下のような、その他のゴム助剤を含んでいてもよい:反応促進剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、および特に、オゾン劣化防止剤、難燃剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、エキステンダー、有機酸、リターダー、金属酸化物、および活性化剤、特にトリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオール、および加硫戻り防止剤。
【0062】
それらのゴム助剤使用量は、慣用される量であるが、なかんずくその加硫物の使用目的に依存する。慣用される量は、0.1〜30phrである。
【0063】
好適な老化防止剤としては、以下のものが挙げられる:アルキル化フェノール、スチレン化フェノール、立体障害フェノールたとえば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、エステル基を含む立体障害フェノール、チオエーテルを含む立体障害フェノール、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BPH)、およびさらには立体障害チオビスフェノール。
【0064】
ゴムの変色がさほど重要でないのならば、たとえば以下のようなアミン系の老化防止剤を使用することも可能である:ジアリール−p−フェニレンジアミン(DTPD)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル−α−ナフチルアミン(PAN)、フェニル−β−ナフチルアミン(PBN)、好ましくはフェニレンジアミンをベースとするもの、たとえば、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)。
【0065】
その他の老化防止剤としては、以下のものが挙げられる:ホスファイトたとえば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、重合化2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)、亜鉛メチルメルカプトベンゾイミダゾール(ZMMBI)。これらのものは、ほとんどの場合、上述のフェノール性老化防止剤と組み合わせて使用される。TMQ、MBI、およびMMBIが、NBRには主として使用されるが、NBRはペルオキシド加硫される。
【0066】
オゾン抵抗性は、たとえば以下のような抗酸化剤を使用することにより改良することができる:N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)、エノールエーテル、または環状アセタール。
【0067】
加工助剤は、ゴム粒子の間で作用させ、混合、可塑化、および変形の際の摩擦力を打ち消すことを目的としている。本発明のゴム混合物の中に存在させてもよい加工助剤としては、プラスチックを加工するために慣用されるすべての潤滑剤、たとえば炭化水素、たとえばオイル、パラフィンおよびPEワックス、6〜20個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、ケトン、カルボン酸たとえば脂肪酸およびモンタン酸、酸化PEワックス、カルボン酸の金属塩、カルボキサミド、およびカルボン酸エステル、たとえばアルコールの、エタノール、脂肪族アルコール、グリセロール、エタンジオール、ペンタエリスリトールと、酸成分としての長鎖カルボン酸からのものなどが挙げられる。
【0068】
本発明のゴム混合物の組成にはさらに、燃焼性を抑制するため、および燃焼の際の発煙性を抑制するための難燃剤を含んでいてもよい。この目的のために使用される化合物の例としては、以下のものが挙げられる:三酸化アンチモン、リン酸エステル、クロロパラフィン、水酸化アルミニウム、ホウ素化合物、亜鉛化合物、三酸化モリブデン、フェロセン、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウム。
【0069】
架橋させる前のゴム加硫物に他のプラスチックを添加することもまた可能であり、それらは、たとえば、ポリマー性加工助剤として、または耐衝撃性改良剤として機能する。それらのプラスチックは、好ましくは、以下のものからなる群より選択される:エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルをベースとするか、または分岐状もしくは非分岐状のC
1〜C
10アルコールのアルコール成分を有するアクリレートもしくはメタクリレートをベースとするホモポリマーおよびコポリマー、特に好ましいのは、C
4〜C
8アルコール、特にブタノール、ヘキサノール、オクタノールおよび2−エチルヘキサノールの群からの同一または異なったアルコール残基を有するポリアクリレートならびにポリメチルメタクリレート、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル・コポリマー、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル・コポリマー、エチレン−酢酸ビニル・コポリマー、塩素化ポリエチレン、エチレン−プロピレン・コポリマー、およびエチレン−プロピレン−ジエン・コポリマー。
【0070】
一つの好ましい実施態様においては、本発明のゴム混合物には、0.1〜15phrの加硫戻り防止剤、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)が含まれていて、転がり抵抗性をさらに低下させている。
【0071】
本発明のゴム混合物の好ましい特徴は、170℃/t95の加熱条件下でそれから製造された加硫物の、60℃における損失係数tanδが0.12未満であり、しかもその23℃におけるショアーA硬度が68よりも高いことである。このことと組み合わせて、本発明のゴム混合物はさらに、2000秒未満の加硫時間、および特に好ましいことには、500〜1000秒のスコーチ時間を達成することができる。
【0072】
本発明はさらに、少なくとも1種のゴムを本発明のポリスルフィド混合物と混合することによる、ゴム混合物を製造するためのプロセスもまた提供する。少なくとも1種のシリカベースの充填剤、および少なくとも1種の硫黄含有アルコキシシランを混入させるのがさらに好ましい。この場合、以下の量で使用するのが好ましい:10〜150phr、特には30〜120phr、極めて特には50〜100phrの充填剤;0.1〜15phr、特には0.3〜7phr、極めて特には0.5〜3phr、最も好ましくは0.7〜1.5phrの本発明のポリスルフィド混合物;ならびに2〜20phr、特には3〜11phr、極めて特には5〜8phrの硫黄含有アルコキシシラン。その混合プロセスにおいてさらに、上述の追加の充填剤、架橋剤、加硫促進剤、およびゴム助剤を、好ましくは上述の量で添加することも可能である。
【0073】
多段混合プロセスにおいては、本発明のポリスルフィド混合物の添加は、その混合プロセスの第一の段階で実施し、1種または複数の架橋剤、特には硫黄、ならびに任意成分の加硫促進剤の添加は、後続の混合ステージで実施するのが好ましい。その場合のゴム組成物の温度は、好ましくは100〜200℃、特に好ましくは120℃〜170℃である。混合の際の混合物への剪断速度は、1〜1000sec
−1、好ましくは1〜100sec
−1である。一つの好ましい実施態様においては、その第一の混合ステージの後でゴム混合物を冷却し、後続の混合ステージで、架橋剤および任意成分の架橋促進剤および/または架橋収率を向上させるために使用される添加物を、140℃未満、好ましくは100℃未満で添加する。本発明のポリスルフィド混合物を、後続の混合ステージで、比較的に低い温度たとえば40〜100℃で、たとえば硫黄および架橋促進剤と共に添加することも同様に可能である。
【0074】
ゴムを充填剤および本発明のポリスルフィド混合物とブレンドするためには、慣用される混合装置、たとえばロール、インターナルミキサー、およびミキシングエクストルーダーなどを使用することができる。
【0075】
任意選択の成分の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンの添加は、多段の混合プロセスの第一のステージで実施するのが好ましい。
【0076】
本発明はさらに、本発明のゴム混合物を加硫するためのプロセスも提供するが、それは、100〜200℃、特には130〜180℃の組成物の温度で実施するのが好ましい。一つの好ましい実施態様においては、その加硫を、10〜200barの圧力で実施する。
【0077】
本発明にはさらに、本発明のゴム混合物を加硫することにより得ることができるゴム加硫物も含まれる。本発明にはさらに、前記加硫物を含むゴム製品、特にタイヤも含まれるが、その理由は、相当するタイヤが、良好な転がり抵抗性と組み合わせて、硬度が高いという利点を有しているからである。
【0078】
車両、特に自動車に、本発明の加硫物を含むタイヤを装着すると、このことによって、それらの車両の運転の際のエネルギー消費量を低下させ、それにより、内燃機関を用いた自動車の場合では燃料消費量が低下し、電力駆動の車両の場合では走行距離が伸び、筋力駆動の車両の場合では、労力が減るかおよび/または速度が上がる。したがって、本発明にはさらに、本発明の加硫物を含むゴム製品を含む車両もまた含まれる。
【0079】
本発明のゴム加硫物は、改良された性質を有する、たとえば以下のような成形物を製造するのに好適である:ケーブルシース、ヒューズ、駆動ベルト、コンベア用ベルト、ロール被覆、タイヤ、靴底、シールリング、および制震要素。
【0080】
本発明のゴム加硫物はさらに、フォームを製造するためにも使用することができる。そのためには、化学的発泡剤または物理的発泡剤をそれに添加する。この目的のために公知の各種の物質、たとえば以下のものを、化学的発泡剤として使用することができる:アゾジカルボンアミド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、5−フェニルテトラゾール、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、炭酸亜鉛、または炭酸水素ナトリウム、およびそれらの物質を含む混合物。好適な物理的発泡剤の例は、二酸化炭素およびハロゲン化炭化水素である。
【0081】
本発明はさらに、ゴム混合物およびそれらの加硫物を製造するため、特に、少なくともそれぞれ1種のゴム、1種の硫黄含有アルコキシシラン、および1種のシリカベースの充填剤を含むゴム混合物を製造するための、本発明のポリスルフィド混合物の使用も提供する。
【0082】
本発明はさらに、ゴムのための添加剤組成物を製造するための、本発明のポリスルフィド混合物の使用も提供する。
【0083】
驚くべきことには、少なくとも1種の硫黄含有アルコキシシラン、特にはビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン、3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンチオール、ポリエーテル官能性メルカプトシラン、またはチオエステル官能性アルコキシシランを含むゴムのための添加剤組成物と、本発明のポリスルフィド混合物とが、反応性基の存在にも関わらず、それら成分の十分な混和性を有していて、ゴム混合物の中に均質に組み込み、所望の比率で正確に計量混合することが可能となることが見いだされた。したがって、本発明にはさらに、ゴムのためのこのタイプの添加剤組成物、ならびに、このタイプの添加剤組成物を製造するための本発明のポリスルフィド混合物の使用も含まれる。それらの添加剤組成物における、アルコキシシラン、特にビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファンおよび/またはビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファンの、本発明のポリスルフィド混合物に対する重量比は、好ましくは(1.5:1)〜(20:1)、特に好ましくは(3:1)〜(15:1)、極めて特に好ましくは(5:1)〜(10:1)、である。
【0084】
本発明にはさらに、ゴムのための添加剤組成物を製造するためのプロセスも含まれるが、それが特徴としているのは、硫黄含有アルコキシシランを、本発明のポリスルフィド混合物と混合することである。
【0085】
本発明にはさらに、タイヤの転がり抵抗性を低減させるためのプロセスも含まれるが、そこでは、本発明のポリスルフィド混合物を、少なくともタイヤの一部のための出発物質として使用される非架橋または部分架橋したゴム混合物と混合し、次いでその混合物を加硫させる。
【0086】
ゴム混合物および加硫物の物性の測定:
ムーニー粘度の測定:
粘度は、ゴム(およびゴム混合物)が、その加工に抵抗する力から直接求めることができる。ムーニー剪断円板式粘度計の中で、襞付きのディスクが上下共に試験物質で取り囲まれていて、加熱可能なチャンバーの中で、約2回転/分の速度で回転される。そこで、必要となった力を、トルクの形式で測定し、それぞれの粘度に対応させる。そのサンプルは一般的には、1分間、100℃に予備加熱しておき、さらに4分間かけて測定を行うが、温度はそこで一定に保持しておく。粘度は、それぞれの試験条件と共に記述するが、一例は、ML(1+4)100℃(ムーニー粘度、大ロータ、予備加熱時間および試験時間(分)、試験温度)である。
【0087】
スコーチ性能(スコーチ時間t5):
同一の試験をさらに使用して、混合物のスコーチ性能を測定することができる。選択した温度は130℃であった。ロータを回転させて、トルク値が、最小値を過ぎ、その最小値(t5)より5ムーニー単位だけ高くなるまで続ける。その数値(単位:秒)が高いほど、スコーチが遅い。実務的な目的で有利となるスコーチ時間は、ほとんどの場合では300秒間より長いが、加工リスクおよび時間コストを最小限とすることを考えれば、これは1000秒未満とするべきである。
【0088】
レオメーター(バルカメーター)からの170℃/t95完全加硫時間:
MDR(ムービング・ダイ・レオメーター)加硫プロファイルおよびそれに伴う分析データは、ASTM D5289−95に従い、MDR 2000 Monsanto レオメーターで測定する。求めた完全加硫時間は、ゴムの95%が架橋したところの時間である。選択した温度は170℃であった。
【0089】
硬度の測定:
本発明のゴム混合物の硬度は、表1の配合によるゴム混合物から厚み6mmのミル加工したシートを作製することによって求めた。そのミル加工したシートから直径35mmの試験サンプルを切り出し、それらのショアーA硬度は、デジタルショアー硬度試験器(Zwick GmbH & Co.KG,Ulm)を使用して求めた。ゴム加硫物の硬度が、その剛性の第一の指標を与える。
【0090】
引張試験:
引張試験は、エラストマーの荷重限度を求めるのに直接役立ち、DIN 53504に従って実施する。破断した時の長さの増加を初期の長さで割り算すると、破断時伸びが得られる。特定の段階の伸び、大抵の場合は50、100、200、および300%にするのに必要な力も測定し、弾性率(所定の300%の伸びでの引張強度、すなわち300弾性率)として表す。
【0091】
動的制動:
動的試験方法を使用して、周期的に負荷を変化させる条件下でエラストマーの変形挙動の特性を求めた。外部から加えられた応力が、ポリマー鎖のコンホメーションを変化させる。この場合、損失係数tanδは、損失弾性率G’’対貯蔵弾性率G’の比率から間接的に求める。60℃における損失係数、tanδは、転がり抵抗性と関係があり、可能な限り低くするべきである。
【0092】
摩耗値:
摩耗値は、摩耗、従って製品寿命の指標を与える。摩耗値は、DIN 53516に従って測定した。経済的および環境的理由から、低い値が望ましい。
【0093】
実施例1
【化4】
装置:
温度計、均圧管つき滴下ロート、ガス出口付属品(バブルカウンター)付き還流冷却器、および配管、スターラー、ガス導入管を備えた、500mL四ツ口フラスコ
初期仕込み:
92g(0.75mol)の3−メルカプトプロピオン酸メチル(Acros、98%以上)
250mLのシクロヘキサン(p.A.、Merck、モレキュラーシーブ上で乾燥)
フィード:
51.2g(0.375mol)の二塩化二硫黄(99%以上、Merck製)
【0094】
窒素でパージした装置の中への最初の仕込みとして、乾燥シクロヘキサンおよび3−メルカプトプロピオン酸メチルを使用した。3−メルカプトプロピオン酸メチルが完全に溶解したら、二塩化二硫黄を、5〜10℃の温度で、滴下により約1時間以内で添加したが、その間その系には窒素を流しておいた。温度が10℃を超えないように、計量添加速度は調節した。反応が終了しても、その混合物の撹拌は室温で一夜続けたが、その間その系には窒素を流しておいた。次いでその反応溶液を、ロータリーエバポレーター上、50℃で濃縮し、それに続けて、真空乾燥オーブン中60℃で恒量になるまで乾燥させた。
【0095】
収量:
108.4g(95.6%)の次の理想式のポリスルフィド混合物。
【化5】
元素分析:
C:31.9%、H:5.3%、O:21.7%、S:42.0%
【0096】
RP−HPLCおよび飛行時間型質量分析法(TOF MS)により、その反応生成物を分析した。
【0097】
式(I)の化合物のパーセントデータは、RI検出器を使用したHPLCの面積パーセントから求めたものである。
1%未満の化合物(II)、16%の化合物(III)、65%の化合物(IV)、15%の化合物(V)、4%の化合物(VI)
【0098】
実施例2
【化6】
装置:
温度計、均圧管つき滴下ロート、ガス出口付属品(バブルカウンター)付き還流冷却器、および配管、スターラー、ガス導入管を備えた、500mL四ツ口フラスコ
初期仕込み:
92g(0.75mol)の3−メルカプトプロピオン酸メチル(Acros、98%以上)
250mLのシクロヘキサン(p.A.、Merck、モレキュラーシーブ上で乾燥)
フィード:
51.2g(0.375mol)の二塩化二硫黄(99%以上、Merck製)
【0099】
窒素でパージした装置の中への最初の仕込みとして、乾燥シクロヘキサンおよび3−メルカプトプロピオン酸メチルを使用した。3−メルカプトプロピオン酸メチルが完全に溶解したら、二塩化二硫黄を、20〜25℃の温度で、滴下により約30分間以内で添加したが、その間その系には窒素を流しておいた。温度が25℃を超えないように、計量添加速度は調節した。反応が終了しても、その混合物の撹拌は室温で一夜続けたが、その間その系には窒素を流しておいた。次いでその反応溶液を、ロータリーエバポレーター上、30℃で濃縮した。
【0100】
収量:
115g(101.4%)の次の理想式のポリスルフィド混合物。
【化7】
【0101】
出発物質の使用量は、製造業者によって保証されている最小含量(たとえば、98%以上)に基づいている。出発物質の実際の純度はそれよりも高く、数値を丸めたことによる誤差のために、収率の計算値が100%よりも少し高くなった。
【0102】
元素分析:
C:31.9%、H:4.5%、O:21.7%、S:42.1%、Cl:10ppm未満
【0103】
RP−HPLCおよび飛行時間型質量分析法(TOF MS)により、その反応生成物を分析した。式(I)の化合物のパーセントデータは、RI検出器を使用したHPLCの面積パーセントから求めたものである。
1%未満の化合物(II)、1%の化合物(III)、96%の化合物(IV)、2%の化合物(V)、1%未満の化合物(VI)
【0104】
実施例3
【化8】
装置:
温度計、均圧管つき滴下ロート、ガス出口付属品(バブルカウンター)付き還流冷却器、および配管、スターラー、ガス導入管を備えた、500mL四ツ口フラスコ
初期仕込み:
92g(0.75mol)の3−メルカプトプロピオン酸メチル(Acros、98%以上)
200gの、実施例2と同様にして作成したポリスルフィド混合物
フィード:
51.2g(0.375mol)の二塩化二硫黄(99%以上、Merck製)
【0105】
ポリスルフィド混合物(実施例2と同様にして作成)および3−メルカプトプロピオン酸メチルを、窒素パージした装置の中での初期仕込みとして使用した。3−メルカプトプロピオン酸メチルが完全に溶解したら、二塩化二硫黄を、20〜25℃の温度で、滴下により約30分間以内で添加したが、その間その系には窒素を流しておいた。温度が25℃を超えないように、計量添加速度は調節した。反応が終了しても、その混合物の撹拌は室温で一夜続けたが、その間その系には窒素を流しておいた。ロータリーエバポレーター上、約30℃で2時間かけて、反応溶液の処理を続けた。
【0106】
収量:
200g+115g(101.4%)の次の理想式のポリスルフィド混合物。
【化9】
元素分析:
C:32.0%、H:4.8%、O:21.8%、S:41.9%、Cl:10ppm未満
【0107】
反応生成物はRP−HPLCにより分析した。式(I)の化合物のパーセントデータは、RI検出器を使用したHPLCの面積パーセントから求めたものである。
1%未満の化合物(II)、1%の化合物(III)、96%の化合物(IV)、2%の化合物(V)、1%未満の化合物(VI)
【0108】
HPLC系:真空脱気装置、ポンプ、カラムオーブン、注入系、およびRI検出器付き
カラムのタイプ:Eclipse XDB−C8、5μm
カラム長さ:150mm
カラム内径:4.6mm
移動相:33%の水、67%のメタノール
カラム温度:35℃
流速:0.8mL/分
溶離時間:30分
注入量:2μL
RI検出器:Agilent 1100シリーズ、G1362A
25mLのビーデッド−リム・ボトル(beaded−rim bottle)の中の初期仕込みとして10mLのテトラヒドロフランを使用し、次いで約300μLのサンプルを加え、その混合物を均質化し、次いでその溶液を直接クロマトグラフィーにかけた。面積パーセントで評価する。
【0109】
ゴム混合物およびゴム加硫物の製造
表1に列挙したゴム配合物をそれぞれ、以下に記述する多段のプロセスに従って混合した。
【0110】
第一混合ステージ:
・ インターナルミキサーの中でBUNA(登録商標)CB 24およびBUNA(登録商標)VSL 5025−2を初期仕込みとして使用し、約30秒間混合した。
・ VULKASIL(登録商標)Sの2/3、SI(登録商標)69の2/3、および本発明のポリスルフィド混合物の全量の2/3を添加し、約60秒間混合。
・ VULKASIL(登録商標)Sの1/3、SI(登録商標)69の1/3、および本発明のポリスルフィド混合物の全量の1/3、およびTUDALEN 1849−1を添加し、約60秒間混合。
・ CORAX(登録商標)N 339、EDENOR(登録商標)C 18 98−100、VULKANOX(登録商標)4020/LG、VULKANOX(登録商標)HS/LG、ROTSIEGEL ZINC WHITE、さらにANTILUX(登録商標)654を添加し、約60秒間混合。混合温度は150℃であった。
【0111】
第二混合ステージ:
第一の混合ステージが完了したら、その混合物を下流のロールミルへ送り、シートに成形して、室温で24時間保存した。ここでの加工温度は、60℃未満であった。
【0112】
第三混合ステージ:
第三の混合ステージには、ニーダー中150℃での、さらなる混練が含まれていた。
【0113】
第四混合ステージ:
80℃未満の温度のロール上で、追加の物質である、CHANCEL 90/95 GROUND SULFUR、VULKACIT(登録商標)CZ/C、VULKACIT(登録商標)D/Cの添加。
【0114】
次いでそのゴム混合物を、170℃で完全に加硫させた。表2に、製造したゴム調製物およびそれらの加硫物の性質を示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】