特許第6246831号(P6246831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246831
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】便座開閉機構及び便座開閉方法
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/12 20060101AFI20171204BHJP
   A47K 13/10 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A47K13/12
   A47K13/10
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-547299(P2015-547299)
(86)(22)【出願日】2013年11月12日
(86)【国際出願番号】JP2013080525
(87)【国際公開番号】WO2015071950
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2016年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】507234243
【氏名又は名称】市来 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(74)【代理人】
【識別番号】100192809
【弁理士】
【氏名又は名称】桑原 宏光
(72)【発明者】
【氏名】市来 聖二
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−116318(JP,A)
【文献】 実開昭58−195597(JP,U)
【文献】 特開2008−6206(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0011492(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体の基端部側に設けられた便座回転軸を中心として、前記便器本体の上面に据えられる便座閉位置から便座開位置まで回転可能に設けられた便座と、
前記便座を覆う蓋閉位置から蓋開位置まで回転可能に前記便座に取り付けられた蓋と、
前記蓋開位置で前記蓋を支持する蓋支持機構と、
前記蓋支持機構により支持された前記蓋を下方又は上方に案内する蓋案内機構と、
前記蓋閉位置から前記蓋開位置まで前記蓋を回転可能にするとともに、前記蓋の下方又は上方への移動により前記便座を前記便座開位置まで回転可能にする回転機構と、
を備えた、便座開閉機構。
【請求項2】
前記回転機構は、
前記便座に設けられた第1の蓋回転軸と、
前記蓋に設けられた第2の蓋回転軸と、
前記第1の蓋回転軸と前記第2の蓋回転軸とを連結するリンク部材であって、前記第1の蓋回転軸を中心として前記便座に対して回転可能で前記第2の蓋回転軸を中心として前記蓋に対して回転可能なリンク部材と、
により構成される、請求項1に記載の便座開閉機構。
【請求項3】
前記蓋支持機構は、
前記便器本体に形成された係止面と、
前記蓋に形成されたヒンジ収容部と、
前記ヒンジ収容部に収容され前記蓋とともに回転可能な従動部と、前記蓋が前記蓋開位置にあるときに前記係止面に当接する当接面とを有するヒンジ部材と、
により構成される、請求項1又は2に記載の便座開閉機構。
【請求項4】
前記ヒンジ部材の従動部は、前記蓋の長手方向に沿って延び、
前記蓋のヒンジ収容部は、前記ヒンジ部材の従動部を摺動可能に収容し、
前記蓋案内機構は、前記ヒンジ部材の従動部と前記蓋のヒンジ収容部とにより構成される、
請求項3に記載の便座開閉機構。
【請求項5】
前記蓋支持機構は、前記蓋の表面に接触する係止面を有する支持台により構成される、請求項1又は2に記載の便座開閉機構。
【請求項6】
前記蓋案内機構は、前記支持台の係止面から連続して下方に延びるように形成された案内面により構成される、請求項5に記載の便座開閉機構。
【請求項7】
便座を覆う蓋閉位置から蓋開位置まで前記便座に取り付けられた蓋を回転させ、
前記蓋開位置で前記蓋を支持し、
前記支持された前記蓋を下方又は上方に移動させるとともに、前記蓋の下方又は上方への移動により、便器本体の基端部側に設けられた便座回転軸を中心として前記便器本体の上面に据えられる便座閉位置から便座開位置まで前記便座を回転させる、
便座開閉方法。
【請求項8】
前記蓋が前記蓋開位置にあり、前記便座が前記便座開位置にあるときに、前記蓋を上方又は下方に移動させるとともに、前記蓋の上方又は下方への移動により、前記便座回転軸を中心として前記便座開位置から前記便座閉位置まで前記便座を回転させる、請求項7に記載の便座開閉方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋式腰掛便器における便座を開閉するための便座開閉機構及び便座開閉方法に係り、特に、便座の蓋(便座蓋)を利用して手動にて便座を開閉させる便座開閉機構及び便座開閉方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、腰掛け可能とされる便器本体と、この便器本体の基端部(後部)側に回転(開閉)可能に固定された便座と、便器本体の基端側に回転可能に固定され、閉状態の便座に上方から当接可能に設けられた蓋(便座蓋)とを備えた洋式腰掛便器がある。
【0003】
ところで、このような洋式腰掛便器においては、例えば、便器を清掃するときや男性が使用する際には、便座の蓋(以下、「便座蓋」という)を開けるとともに、便座も開ける(持ち上げる)必要がある。
【0004】
しかしながら、他人が利用したと思われる便座を衛生上直接触りたくないという人も多い。すなわち、従来の洋式腰掛便器においては、便座の開閉時に、これらの不衛生な部材(便座)を手で握って上げ下げして開閉しなければならないので、衛生面において問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、従来から、例えば、便座及び便座蓋に側面側から連結され、把手を操作することにより便座や便座蓋を開閉する便座開閉装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の便座開閉装置においては、把手で便座を開閉するだけでなく、駆動モータを利用することも提案されている。
【0006】
また、便器の前に人が立ったことを検知する人検知センサと、便座及び便座蓋を開閉駆動する駆動手段と、便器の前に人が立ったことが人検知センサにより検知されると、駆動手段を作動させて、便座、あるいは便座及び便座蓋を自動的に開ける(持ち上げる)制御手段とを備えた便座/便座蓋自動開閉装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、従来の便座開閉装置においては、手動であるか自動であるかを問わず、複雑な構造を有するとともに、多くの部材を必要とするため、製造コストが増大するという問題があった。また、特許文献2に開示された便座/便座蓋自動開閉装置においては、複雑な制御をするために電気駆動の構造を有するため、手動の便座開閉装置と比べても製造コストが高くなるとともに、該開閉装置のランニングコストも必要となるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−255642号公報(図1図2
【特許文献2】特開平6−90876号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、洋式腰掛便器において、便座に全く手を触れることなく、簡単な機構で手動により便座の開閉を行うことができる便座開閉機構及び便座開閉方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、便座に全く手を触れることなく、簡単な機構で手動により便座の開閉を行うことができる便座開閉機構が提供される。この便座開閉機構は、便器本体の基端部側に設けられた便座回転軸を中心として、上記便器本体の上面に据えられる便座閉位置から便座開位置まで回転可能に設けられた便座と、上記便座を覆う蓋閉位置から蓋開位置まで回転可能に上記便座に取り付けられた蓋と、上記蓋開位置で上記蓋を支持する蓋支持機構と、上記蓋支持機構により支持された上記蓋を下方又は上方に案内する蓋案内機構と、上記蓋閉位置から上記蓋開位置まで上記蓋を回転可能にするとともに、上記蓋の下方又は上方への移動により上記便座を上記便座開位置まで回転可能にする回転機構とを備えている。
【0011】
これにより、複雑な機構や電動の装置を用いる必要なく、便座に全く手を触れることなく、簡単な機構で手動により便座の開閉を行うことができる。
【0012】
上記回転機構が、上記便座に設けられた第1の蓋回転軸と、上記蓋に設けられた第2の蓋回転軸と、上記第1の蓋回転軸と上記第2の蓋回転軸とを連結するリンク部材であって、上記第1の蓋回転軸を中心として上記便座に対して回転可能で上記第2の蓋回転軸を中心として上記蓋に対して回転可能なリンク部材とにより構成されていることが好ましい。
【0013】
上記蓋支持機構が、上記便器本体に形成された係止面と、上記蓋に形成されたヒンジ収容部と、上記ヒンジ収容部に収容され上記蓋とともに回転可能な従動部と、上記蓋が上記蓋開位置にあるときに上記係止面に当接する当接面とを有するヒンジ部材とにより構成されていてもよい。
【0014】
この場合において、上記ヒンジ部材の従動部が、上記蓋の長手方向に沿って延びていてもよく、上記蓋のヒンジ収容部が、上記ヒンジ部材の従動部を摺動可能に収容していてもよい。このようにすれば、上記ヒンジ部材の従動部と上記蓋のヒンジ収容部とにより上記蓋案内機構を構成することができる。
【0015】
上記蓋支持機構が、上記蓋の表面に接触する係止面を有する支持台により構成されていてもよい。さらに、上記蓋案内機構が、上記支持台の係止面から連続して下方に延びるように形成された案内面により構成されていてもよい。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、便座に全く手を触れることなく、簡単な機構で手動により便座の開閉を行うことができる便座開閉方法が提供される。この便座開閉方法では、便座を覆う蓋閉位置から蓋開位置まで上記便座に取り付けられた蓋を回転させ、上記蓋開位置で上記蓋を支持し、上記支持された上記蓋を下方又は上方に移動させるとともに、上記蓋の下方又は上方への移動により、便器本体の基端部側に設けられた便座回転軸を中心として上記便器本体の上面に据えられる便座閉位置から便座開位置まで上記便座を回転させる。これにより、便座に全く手を触れることなく、簡単に便座を開ける(持ち上げる)ことができる。
【0017】
また、上記蓋が上記蓋開位置にあり、上記便座が上記便座開位置にあるときに、上記蓋を上方又は下方に移動させるとともに、上記蓋の上方又は下方への移動により、上記便座回転軸を中心として上記便座開位置から上記便座閉位置まで上記便座を回転させることができる。これにより、便座に全く手を触れることなく、簡単に便座を閉じることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、洋式腰掛便器において、便座に全く手を触れることなく、簡単な機構で手動により便座の開閉を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態における便座開閉機構を有する洋式腰掛便器を示す斜視図である。
図2図2は、図1の便座開閉機構の主要部の拡大図である。
図3図3は、図2に示す便座開閉機構の台座を便座とともに示す右側面図である。
図4図4は、図1の便座開閉機構の便座蓋が蓋閉位置にあるときの台座及び便座蓋を示す断面図である。
図5図5は、図4に示す便座蓋が蓋開位置にあるときの台座及び便座蓋を示す断面図である。
図6図6は、図5に示す便座蓋を押し下げたときの台座及び便座蓋を示す断面図である。
図7図7は、図5に示す状態における便座及び便座蓋を示す模式図である。
図8図8は、図6に示す状態における便座及び便座蓋を示す模式図である。
図9図9は、本発明の他の実施形態における便座開閉機構を有する洋式腰掛便器を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る便座開閉機構及び便座開閉方法の実施形態について図1から図9を参照して詳細に説明する。なお、図1から図9において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態における便座開閉機構100を有する洋式腰掛便器(以下、単に「便器」と称する場合もある)1を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態の便座開閉機構100は、便器本体2の上に設置されるものであり、便座10と、便座蓋(以下、単に「蓋」ともいう)20と、便座10を便器本体2に取り付けるための台座30とを含んでいる。なお、図1は、便座開閉機構100の便座蓋20が蓋開位置に位置している状態を示している。
【0022】
図2は、図1の状態における便座開閉機構100の主要部の拡大図であり、一部は分解図となっている。図3は台座30を便座10とともに示す右側面図である。図2及び図3に示すように、台座30は、便器本体2の基端部側に固定して設けられ、略円柱を縦に半分割した構造を有する。図2及び図3に示すように、この台座30の両側面には、便座10を開閉(回転)させるための便座回転軸32が延出して形成されている。図2に示すように、台座30の便座回転軸32に対応して、便座10には便座回転軸32を収容する便座回転軸受部12が形成されている。この便座回転軸受部12内に便座回転軸32が回転自在に収容されており、便座回転軸受部12と便座回転軸32とによって、便座10が開閉(回転)可能となっている。すなわち、便座10は、便座回転軸受部12に収容された台座30の便座回転軸32を中心に、便器本体2に当接している状態である便座閉位置から、蓋開位置にある便座蓋20に略接する便座開位置までの略90°回転することができるようになっている。このように、便座10は、便座回転軸32を介して、便器本体2に対して略90°回転可能に台座30に固定されている。なお、図1に示す状態では、便座10は、便器本体2の上面に据えられる便座閉位置に位置している。
【0023】
また、図2に示すように、便座10の基端部の両側面には、便座蓋20を蓋閉位置から蓋開位置まで回転させる回転機構60が設けられている。この回転機構60は、便座10の基端部の両側面から側方に延出する第1の蓋回転軸62と、この第1の蓋回転軸62に回転自在に取り付けられたリンク部材64と、リンク部材64から側方に延出する第2の蓋回転軸66と、便座蓋20に形成された軸孔68とを含んでいる。便座蓋20に形成された軸孔68には、第2の蓋回転軸66が挿通される。
【0024】
リンク部材64は、第1の蓋回転軸62と第2の蓋回転軸66とを連結するものである。リンク部材64は、第1の蓋回転軸62を中心として便座10に対して回転可能となっており、また、第2の蓋回転軸66を中心として便座蓋20に対して回転可能となっている。なお、第1の蓋回転軸62の軸方向は便座回転軸32の軸方向からずれている。また、第2の蓋回転軸66の軸方向は、第1の蓋回転軸62の軸方向からずれており、便座回転軸32の軸方向からもずれている。
【0025】
このような回転機構60により、便座蓋20は、便座閉位置にある便座10に当接して、便座10を覆った状態となる蓋閉位置から、開状態で保持される蓋開位置までの略90°回転することができる。すなわち、便座蓋20は、便器本体2に対して略90°回転可能に便座10に固定されている。
【0026】
図4は、台座30と便座蓋20とを含む断面図であり、便座蓋20が蓋閉位置にある状態を示している。図4に示すように、台座30には水平に延びる平坦な係止面34が形成されており、係止面34の上方には縦断面形状が略L字状であるヒンジ部材41が配置されている。このヒンジ部材41は、軸43を中心として回転可能に台座30に固定されている。
【0027】
ヒンジ部材41は、便座蓋20の長手方向に沿って延びる従動部44を有している。これに対応して、便座蓋20の便器本体2に面する側には、ヒンジ部材41の従動部44を摺動可能に収容するヒンジ収容部42が形成されている。したがって、ヒンジ部材41の従動部44は、便座蓋20の回転に伴って便座蓋20とともに回転するようになっている。なお、このヒンジ収容部42は、図2に示すように、便座蓋20と一体的に形成されるものであってもよいし、便座蓋20とは別の部材により形成されるものであってもよい。
【0028】
また、ヒンジ部材41は、従動部44の端部から従動部44に対して略垂直に延びる脚部45を有している。脚部45の端部には上述した軸43が設けられている。図5は、便座蓋20が蓋開位置にある状態を示している。便座蓋20を図4に示す蓋閉状態から回転させていくと、最終的には、図5に示すようにヒンジ部材41の脚部45の当接面45Aが台座30の係止面34に当接する。これによりヒンジ部材41が台座30に支持される。このとき、ヒンジ部材41の従動部44は便座蓋20のヒンジ収容部42に係合しており(図5では、便宜上、ヒンジ部材41の従動部44がヒンジ収容部42に接触していないように示されているが、実際は接触するものである)、これにより便座蓋20が台座30に対して支持される。すなわち、本実施形態においては、台座30の係止面34とヒンジ部材41と便座蓋20のヒンジ収容部42とにより、便座蓋20を開けた状態(すなわち蓋開位置)において該便座蓋20を支持する蓋支持機構が構成されている。
【0029】
図5に示す状態において、ヒンジ部材41の従動部44の上方のヒンジ収容部42には隙間46が形成されている。この隙間46が形成されていることにより、図5に示す状態から便座蓋20を下方に押し下げることができる。すなわち、本実施形態のヒンジ収容部42は、ヒンジ部材41の従動部44を摺動可能に収容するものである。したがって、ヒンジ部材41の従動部44をヒンジ収容部42内で摺動させつつ、図6に示すように、便座蓋20を蓋開位置に維持した状態で便座蓋20を下方に押し下げることができる。ここで、ヒンジ部材41の従動部44の先端44Aは、便座蓋20を下方に押し下げたときにヒンジ収容部42の底部42Aと当接するようになっており、従動部44の先端44Aとヒンジ収容部42の底部42Aにより便座蓋20のさらなる下方への移動が規制されている。
【0030】
図7は、図5の状態における便座10と便座蓋20との関係を示す模式図であり、図8は、図6の状態における便座10と便座蓋20との関係を示す模式図である。図7に示す状態から便座蓋20を下方に押し下げると、便座蓋20は、第2の蓋回転軸66及びリンク部材64を介して第1の蓋回転軸62の位置を下方に移動させる。これにより、便座10は、図8に示すように、便座回転軸32を中心として回転し、便座閉位置から便座開位置まで回転する。すなわち、図7に示す状態から便座蓋20を下方に押し下げると、上述した回転機構60によって便座10が便座閉位置から便座開位置まで回転され、便座10が開けられる(持ち上げられる)。このように、本実施形態では、第1の蓋回転軸62とリンク部材64と第2の蓋回転軸66とによって構成される回転機構60は、蓋閉位置から蓋開位置まで便座蓋20を回転可能にする機能とともに、便座蓋20の下方への移動により便座10を便座開位置まで回転可能にする機能も有している。
【0031】
次に、上記のような構成を有する便座開閉機構100の動作、すなわち、本実施形態の便座開閉方法を説明する。ここでは図示を省略するが、便宜上、便座開閉機構100(及び便器1)の利用者が必要に応じて手動にて便座開閉機構100の便座蓋20を操作することとなる。
【0032】
本実施形態の便座開閉機構100において、便座10が便座閉位置にあり(図3)、便座蓋20が蓋閉位置にある(図4)状態において、便器1を利用する利用者や便器1の清掃を行う清掃者は、まず、便座蓋20を蓋閉位置から蓋開位置まで開ける(持ち上げる)。このとき、便座蓋20は、上述した第1の蓋回転軸62とリンク部材64と第2の蓋回転軸66とによって構成される回転機構60を介して蓋閉位置から蓋開位置まで回動する(図5及び図7)。この状態では、便座蓋20は蓋開位置に位置し、便座10は便座閉位置に位置するが、上述したように、便座蓋20は、ヒンジ部材41とヒンジ収容部42とによって構成される蓋支持機構により蓋開状態を保持することができる。
【0033】
図5及び図7に示す状態において、利用者が便座蓋20を下方に押し込むと、ヒンジ部材41の従動部44がヒンジ収容部42の内面を摺動して、便座蓋20が下方へと案内される。便座蓋20は、ヒンジ部材41の先端44Aがヒンジ収容部42の底部42Aと当接するまで下方に移動するが、このとき、上述したように、便座蓋20が第2の蓋回転軸66及びリンク部材64を介して第1の蓋回転軸62の位置を下方に移動させるため、便座10が便座回転軸32を中心として便座閉位置から便座開位置まで回転する。これにより、図8に示すように、便座10を開ける(持ち上げる)ことができる。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、便座蓋20を開けて(便座蓋20を蓋開位置まで持ち上げて)、便座蓋20を下方に押し込むことにより、便座10に全く手を触れることなく、簡単に便座10を開ける(持ち上げる)ことができる。
【0035】
また、便座10を便座開位置から便座閉位置に戻す際には、利用者は、便座蓋20を上方に持ち上げると、ヒンジ部材41の従動部44がヒンジ収容部42の内面を摺動して、便座蓋20が上方へと案内される。このとき、便座蓋20が第2の蓋回転軸66及びリンク部材64を介して第1の蓋回転軸62の位置を上方に移動させるので、便座10が便座回転軸32を中心として便座開位置から便座閉位置まで回転する。これにより、便座10を閉じることができる。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、便座10及び便座蓋20がそれぞれ開位置にあるとき、単に便座蓋20を上方に持ち上げるだけで、便座10を便座開位置から便座閉位置に回転させることができる。したがって、便座蓋20を上方に持ち上げることにより、便座10に全く手を触れることなく、簡単に便座10を閉じることができる。
【0037】
その後、利用者は、必要に応じて、便座蓋20を蓋開位置(図5)から蓋閉位置(図4)に戻す。
【0038】
以上説明したように、上述した実施形態では、便座開閉機構100は、便器本体2の基端部側に設けられた便座回転軸32を中心として、便器本体2の上面に据えられる便座閉位置から便座開位置まで回転可能に設けられた便座10と、便座10を覆う蓋閉位置から蓋開位置まで回転可能に便座10に取り付けられた便座蓋20と、蓋開位置で便座蓋20を支持する蓋支持機構と、蓋支持機構により支持された便座蓋20を下方に案内する蓋案内機構と、蓋閉位置から蓋開位置まで便座蓋20を回転可能にするとともに、便座蓋20の下方への移動により便座10を便座開位置まで回転可能にする回転機構60とを備えた構成としている。このような構成によれば、蓋開位置にある便座蓋20を下方に押し込むと、回転機構60により便座10が便座閉位置から便座開位置に回動する。したがって、本実施形態によれば、便座蓋20を押し下げる(押し込む)ことにより、便座10に全く手を触れることなく、簡単な機構で手動により便座10の開閉を行うことができる。また、これとは逆に、便座10及び便座蓋20がそれぞれ開位置にあるとき、単に便座蓋20を上方に持ち上げるだけで、便座10を便座開位置から便座閉位置に回転させることができる。
【0039】
なお、上述した実施形態では、便座回転軸32が台座30に設けられていたが、これに限られるものではない。便座回転軸32を便座10に設け、便座回転軸受部12を台座30に形成してもよい。また、第1の蓋回転軸62は、リンク部材64を便座10に対して回転可能にするものであればよく、便座10及びリンク部材64のどちらに設けられていてもよい。同様に、第2の蓋回転軸66は、リンク部材64を便座蓋20に対して回転可能するものであればよく、便座蓋20及びリンク部材64のどちらに設けられていてもよい。
【0040】
上述の実施形態においては、便座蓋20を蓋開位置に保持するために蓋支持機構が、台座30に形成された係止面34と便座蓋20に形成されたヒンジ収容部42とヒンジ部材41とから構成され、蓋案内機構が、ヒンジ部材41の従動部44と便座蓋20に形成されたヒンジ収容部42とから構成される例を説明したが、蓋支持機構及び蓋案内機構の構成はこれに限られるものではない。例えば、図9に示すように、便座蓋20の表面20Aに接触する係止面70Aを有する支持台70により蓋支持機構を構成し、便座蓋20が支持台70の係止面70Aに係止することにより便座蓋20を蓋開位置に保持してもよい。さらに、この場合において、支持台70の係止面70Aから連続して下方に延びる案内面70Bにより蓋案内機構を構成してもよい。すなわち、便座蓋20が蓋開位置に位置する状態、すなわち、便座蓋20の表面20Aが支持台70の係止面70Aに係止して保持されている状態において、便座蓋20を下方に押し込むと、便座蓋20の表面20Aが支持台70の係止面70Aに当接して、蓋開状態に支持された便座蓋20が案内面70Bを摺動して、便座蓋20が下方へと案内されるようにしてもよい。なお、図9では、便宜上、便座蓋20の表面20Aが支持台70の係止面70Aに接触していないように示されているが、実際は接触するものである。
【0041】
上述した実施形態では、便座蓋20を蓋開位置に保持した後、便器1の利用者がこの便座蓋20を略垂直方向下方に押し込むことにより、便座10を便座閉位置から便座開位置に回動させる例を説明した。しかしながら、便器1の利用者は、便座蓋20を押し込むために、便座蓋20の所定部位(通常、便座蓋20の基端部の反対側、すなわち、便座蓋20の先端部)に触れる必要がある。このような状況を回避するために、例えば、便座蓋20用の把手を便座蓋20の先端部又は表面に設けるように構成してもよい。これにより、便座蓋20そのものに全く触れずに把手を介して便座蓋20を開閉させることができるとともに、本発明に係る便座開閉機構により便座10をも開閉させることができる。特に、便座蓋20の先端部に把手を設ければ、便座10及び便座蓋20がともに開位置にある状態から簡単に便座蓋20を持ち上げる(引き上げる)ことができる。
【0042】
また、上述した実施形態では、便器1の利用者が便座蓋20を下方に押し込むと便座10が便座閉位置から便座開位置に回動し、上方に持ち上げると便座10が便座開位置から便座閉位置に回動した。しかしながら、便座回転軸32に対して、第1の蓋回転軸62、リンク部材64、及び第2の蓋回転軸66の位置関係を変更することによりこのような構成を変更してもよい。すなわち、便座蓋20を下方に押し込むと便座10が便座開位置から便座閉位置に回動し、便座蓋20を上方に持ち上げると便座10が便座閉位置から便座開位置に回動するように第1の蓋回転軸62、リンク部材64、及び第2の蓋回転軸66を便座回転軸32に対して配置してもよい。
【0043】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、洋式腰掛便器における便座を開閉するための便座開閉機構に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0045】
1 便器
2 便器本体
10 便座
12 便座回転軸受部
20 便座蓋
20A 表面
30 台座
32 便座回転軸
34 係止面
41 ヒンジ部材
42 ヒンジ収容部
42A 底部
43 軸
44 従動部
44A 先端
45 脚部
45A 当接面
46 隙間
60 回転機構
62 第1の蓋回転軸
64 リンク部材
66 第2の蓋回転軸
68 軸孔
70 支持台
70A 係止面
70B 案内面
100 便座開閉機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9