特許第6246834号(P6246834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6246834カチオン性薬理学的活性物質の徐放性脂質初期製剤およびこれを含む薬剤学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246834
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】カチオン性薬理学的活性物質の徐放性脂質初期製剤およびこれを含む薬剤学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/26 20060101AFI20171204BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 38/08 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 31/18 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A61K47/26
   A61K47/24
   A61K47/22
   A61K47/28
   A61K47/14
   A61K47/08
   A61K47/12
   A61K47/20
   A61K9/10
   A61K38/08
   A61K31/522
   A61K31/18
   A61K31/58
   A61K38/26
【請求項の数】22
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-550321(P2015-550321)
(86)(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公表番号】特表2016-508140(P2016-508140A)
(43)【公表日】2016年3月17日
(86)【国際出願番号】KR2013012259
(87)【国際公開番号】WO2014104784
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年8月25日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0157562
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514052597
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ハ ナ
(72)【発明者】
【氏名】ベク、ヒェ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ウォン キュ
(72)【発明者】
【氏名】コ、ジン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、スン ブム
(72)【発明者】
【氏名】アン、スン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キ、ミン ヒョ
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−512346(JP,A)
【文献】 特表2014−527545(JP,A)
【文献】 特表2007−533712(JP,A)
【文献】 特表平08−506584(JP,A)
【文献】 特表2007−510705(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0102128(US,A1)
【文献】 特表2012−509337(JP,A)
【文献】 International Journal of Pharmaceutics,2008年,Vo.349,p.130-143,doi:10.1016/j.ijpharm.2007.07.047
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61K 38/00−38/58
A61P 1/00−43/00
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
B01J 13/00
C09K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)極性頭基に−OH(ヒドロキシル, hydroxyl)基が2つ以上存在する、ソルビタン不飽和脂肪酸エステル(sorbitan unsaturated fatty acid ester)と、
b)中性リン脂質(neutral phospholipid)と、
c)液晶硬化剤(liquid crystal hardener)と、
d)アニオン性定着剤(anionic anchoring agent)と、
を含み、水性流体の不在下で脂質液相として存在し且つ水性流体上で液晶(liquid crystal)を形成する徐放性脂質初期製剤(pre-concentrate)と、
e)カチオン性薬理学的活性物質と、
を含み、
前記アニオン性定着剤が前記カチオン性薬理学的活性物質とイオン結合することにより、カチオン性薬理学的活性物質の徐放性が強化される、薬剤学的組成物
【請求項2】
前記ソルビタン不飽和脂肪酸エステル(sorbitan unsaturated fatty acid ester)は、モノオレイン酸ソルビタン(sorbitan monooleate)、モノリノール酸ソルビタン(sorbitan monolinoleate)、モノパルミトレイン酸ソルビタン(sorbitan monopalmitoleate)、モノミリストレイン酸ソルビタン(sorbitan monomyristoleate)、セスキオレイン酸ソルビタン(sorbitan sesquioleate)、セスキリノール酸ソルビタン(sorbitan sesquilinoleate)、セスキパルミトレイン酸ソルビタン(sorbitan sesquipalmitoleate)、セスキミリストレイン酸ソルビタン(sorbitan sesquimyristoleate)、ジオレイン酸ソルビタン(sorbitan dioleate)、ジリノール酸ソルビタン(sorbitan dilinoleate)、ジパルミトレイン酸ソルビタン(sorbitan dipalmitoleate)、ジミリストレイン酸ソルビタン(sorbitan dimyristoleate)およびこれらの混合物よりなる群から選択されるものである請求項1に記載の薬剤学的組成物
【請求項3】
前記ソルビタン不飽和脂肪酸エステル(sorbitan unsaturated fatty acid ester)は、モノオレイン酸ソルビタン(sorbitan monooleate)、モノリノール酸ソルビタン(sorbitan monolinoleate)、モノパルミトレイン酸ソルビタン(sorbitan monopalmitoleate)、モノミリストレイン酸ソルビタン(sorbitan monomyristoleate)、セスキオレイン酸ソルビタン(sorbitan sesquioleate)およびこれらの混合物よりなる群から選択されるものである請求項1に記載の薬剤学的組成物
【請求項4】
前記中性リン脂質(neutral phospholipid)は、飽和または不飽和された炭素数4〜30のアルキルエステル基を有するホスファチジルコリン(phosphatidylcholine)、ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolamine)、ホスファチジルイノシトール(phosphatidylinositol)、スフィンゴミエリン(sphingomyelin)およびこれらの混合物よりなる群から選択されるものである請求項1に記載の薬剤学的組成物
【請求項5】
前記液晶硬化剤は、イオン化基を有せず、疎水性部分は、炭素数15〜40のトリアシル基または炭素環構造を有するものである請求項1に記載の薬剤学的組成物
【請求項6】
前記液晶硬化剤は、トリグリセリド(triglyceride)、パルミチン酸レチニル(retinyl palmitate)、酢酸トコフェロール(tocopherol acetate)、コレステロール(cholesterol)、安息香酸ベンジル(benzyl benzoate)、ユビキノン(ubiquinone)およびこれらの混合物よりなる群から選択されるものである請求項1に記載の薬剤学的組成物
【請求項7】
前記液晶硬化剤は、酢酸トコフェロール(tocopherol acetate)、コレステロール(cholesterol)およびこれらの混合物よりなる群から選択されるものである請求項1に記載の薬剤学的組成物
【請求項8】
前記アニオン性定着剤は、極性頭基(polar head group)にカルボン酸(carboxylate)、リン酸(phosphate)、硫酸(sulfate)またはスルホン酸(sulfonate)を有し、疎水性部分は、炭素数4〜40の化合物よりなる群から選択されるものである請求項1に記載の薬剤学的組成物
【請求項9】
前記アニオン性定着剤のうちカルボン酸(carboxylate)構造を有するアニオン性定着剤は、パルミチン酸(palmitic acid)、パルミトレイン酸(palmitoleic acid)、ラウリン酸(lauric acid)、酪酸(butyric acid)、吉草酸(valeric acid)、カプロン酸(caproic acid)、エナント酸(enanthic acid)、カプリル酸(caprylic acid)、ペラルゴン酸(pelargonic acid)、カプリン酸(capric acid)、ミリスチン酸(myristic acid)、ミリストレイン酸(myristoleic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、アラキジン酸(arachidic acid)、ベヘン酸(behenic acid)、リグノセリン酸(lignoceric acid)、セロチン酸(cerotic acid)、リノレン酸(linolenic acid)、アルファリノレン酸(alpha-linolenic acid、 ALA)、エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid、 EPA)、ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid、 DHA)、リノール酸(linoleic acid、 LA)、ガンマリノール酸(gamma-linoleic acid、 GLA)、ジホモガンマ−リノール酸(dihomo gamma-linoleic acid、 DGLA)、アラキドン酸(arachidonic acid、 AA)、オレイン酸(oleic acid)、バクセン酸(vaccenic acid)、エライジン酸(elaidic acid)、エイコサン酸(eicosanoic aicd)、エルカ酸(erucic acid)、ネルボン酸(nervonic aicd)、安息香酸(benzoic acid)、ソルビン酸(sorbic acid)、パモ酸(pamoic acid)、リポ酸(lipoic acid)およびこれらの混合物よりなる群から選択されるものである請求項8に記載の薬剤学的組成物
【請求項10】
前記アニオン性定着剤のうちカルボン酸(carboxylate)構造を有するアニオン性定着剤は、カプリル酸(caprylic acid)、カプリン酸(capric acid) 、ステアリン酸(stearic aicd)、オレイン酸(oleic acid)、リノレン酸(linolenic acid)、安息香酸(benzoic acid)、ソルビン酸(sorbic acid)、リポ酸(lipoic acid)およびこれらの混合物よりなる群から選択されるものである請求項8に記載の薬剤学的組成物
【請求項11】
前記アニオン性定着剤のうちリン酸(phosphate)構造を有するアニオン性定着剤は、ホスファチジルセリン(phosphatidylserine)、ホスファチジルグリセリン(phosphatidylglycerine)、ホスファチジン酸(phosphatidic acid)およびこれらの混合物よりなる群から選択されるものである請求項8に記載の薬剤学的組成物
【請求項12】
前記アニオン性定着剤のうち硫酸(sulfate)構造を有するアニオン性定着剤は、ラウリル 硫酸(lauryl sulfate)、ドデシル硫酸(dodecyl sulfate)、コレステリル硫酸(cholesteryl sulfate)およびこれらの混合物よりなる群から選択されるものである請求項8に記載の薬剤学的組成物
【請求項13】
前記アニオン性定着剤のうちスルホン酸(sulfonate)構造を有するアニオン性定着剤は、ベンゼンスルホン酸(benzene sulfonate)、ドデシルベンゼンスルホン酸(dodecyl benzene sulfonate)およびこれらの混合物よりなる群から選択されるものである請求項8に記載の薬剤学的組成物
【請求項14】
a)およびb)の重量比が10:1〜1:10である請求項1に記載の薬剤学的組成物
【請求項15】
a)+b)およびc)の重量比が1000:1〜1:1である請求項1に記載の薬剤学的組成物
【請求項16】
a)+b)+c)およびd)の重量比が5000:1〜5:1である請求項1に記載の薬剤学的組成物
【請求項17】
前記カチオン性薬理学的活性物質は、少なくとも1つ以上の1次アミン(primary amine)、2次アミン(secondary amine)、3次アミン(tertiary amine)、芳香族アミン(aromatic amine)、スルホニウム(sulfonium)、ヨードニウム(iodonium)、アンモニウム(ammonium)、ホスホニウム(phosphonium)、ピリジニウム(pyridinium)、チアゾリウム(thiazolinium)、イミダゾリニウム(imidazolinium)、スルホキソニウム(sulfoxonium)、イソチウロニウム(isothiouronium)、アゼチジニウム(azetidinium)またはジアゾニウム(diazonium)構造を含む薬理学的活性物質、これらの薬剤学的に許容可能な塩およびこれらの混合物よりなる群から選択されるものである請求項1〜16のうちのいずれか一項に記載の薬剤学的組成物。
【請求項18】
前記カチオン性薬理学的活性物質は、ロイプロリド(leuprolide)、トリプトレリン(triptorelin)、ゴセレリン(goserelin)、ナファレリン(nafarelin)、ブセレリン(buserelin)、ヒストレリン(histrelin)、デスロレリン(deslorelin)、メテレリン(meterelin)、ゴナドレリン(gonadrelin)、エンテカビル(entecavir)、アナストロゾール(anastrozole)、リバスチグミン(rivastigmine)、アカポデン(acapodene)、アビラテロン(abiraterone)、チボロン(tibolone)、フェンタニール(fentanyl)、タクロリムス(tacrolimus)、メトトレキサート(methotrexate)、タムスロシン(tamsulosin)、デュタステライド(dutasteride)、フィナステリド(finasteride)、ソリフェナシン(solifenacin)、タダラフィル(tadalafil)、ドネペジル(donepezil)、オランザピン(olanzapine)、リスペリドン(risperidone)、アリピプラゾール(aripiprazole)、ナルトレキソン(naltrexone)、バレニクリン(varenicline)、ロピニロール(ropinirole)、ラタノプロスト(latanoprost)、オロパタジン(olopatadine)、プロゲステロン(progesterone)、ケトチフェン(ketotifen)、モンテルカスト(montelukast)、ヒト成長ホルモン(human growth hormone)、トラマドール(tramadol)、ジアゼパム(diazepam)、ジクロフェナク(diclofenac)、ピロカルピン(pilocarpine)、レボカバスチン(levocabastine)、チモロール(timolol)、ベタキソロール(betaxolol)、カルテオロール(carteolol)、レボブノロール(levobunolol)、エピネフリン(epinephrine)、ジピベフリン(dipivefrine)、クロニジン(clonidine)、アプラクロニジン(apraclonidine)、インドメタシン(indomethacin)、アシクロビル(acyclovir)、テストステロン(testosterone)、スタチン(statin)、ニフェジピン(nifedipine)、ボリコナゾール(voriconazole)、クロトリマゾール(clotrimazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)、フルベストラント(fulvestrant)、フィブラート(fibrate)、オクトレオチド(octreotide)、エストラジオール(estradiol)、コルチゾン(cortisone)、プロゲステロン(progesterone)、アンホテリシンB(amphotericin B)、クロルヘキシジン(chlorhexidine)、コルチコステロイド(corticosteroid)、シクロスポリンA(cyclosporine A)、デスモプレシン(desmopressin)、ソマトスタチン(somatostatin)、カルシトニン(calcitonin)、オキシトシン(oxytocin)、バソプレッシン(vasopressin)、フォリトロピン−アルファおよびベータ(follitropin-alpha or beta)、チロトロピンアルファ(thyrotropin alpha)、セクレチン(secretin)、ブラジキニン(bradykinin)、低血圧性組織ホルモン(hypotensive tissue hormone)、インシュリンおよび誘導体(insulin or insulin derivatives)、インターフェロン(interferon)、タフトシン(tuftsin)、マガイニン(magainin)、インドリシジン(indolicidin)、プロテグリン(protegrin)、ポリミキシン(polymyxin)、グラミシジン(gramicidin)、バプレオチド(vapreotide)、エクセナチド(exenatide)、リラグルチド(liraglutide)、CJC−1131、AVE010、LY548806およびTH−0318、BIM51077、デガレリクス(degarelix)、グルカゴン(glucagon)、デフェンシン(defensin)、ヒスタチン(histatin)、これらの薬剤学的に許容可能な塩およびこれらの混合物よりなる群から選択されるものである請求項1〜16のうちのいずれか一項に記載の薬剤学的組成物。
【請求項19】
前記カチオン性薬理学的活性物質は、ロイプロリド(leuprolide)、トリプトレリン(triptorelin)、ゴセレリン(goserelin)、ナファレリン(nafarelin)、ブセレリン(buserelin)、ヒストレリン(histrelin)、デスロレリン(deslorelin)、メテレリン(meterelin)、ゴナドレリン(gonadrelin)、これらの薬剤学的に許容可能な塩およびこれらの混合物よりなる群から選択されるものである請求項1〜16のうちのいずれか一項に記載の薬剤学的組成物。
【請求項20】
a)+b)+c)+d)およびe)の重量比が10000:1〜2:1である請求項1〜16のうちのいずれか一項に記載の薬剤学的組成物。
【請求項21】
前記薬剤学的組成物が、注射剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、カプセル剤、錠剤、液剤、懸濁剤、噴霧剤、吸入剤、点眼剤、粘着剤および貼付剤の中から選択される剤形である請求項1〜16のうちのいずれか一項に記載の薬剤学的組成物。
【請求項22】
前記剤形は、注射剤である請求項21に記載の薬剤学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン性定着剤を含む徐放性脂質初期製剤初期製剤(pre−concentrate)およびこれを含む薬剤学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
徐放性製剤(sustained−release formulation)は、単回の投与で薬理学的活性物質を持続的に放出することにより、反復投与により引き起こされる副作用を防止し、一定の時間または一定の期間以上薬理学的活性物質の有効濃度範囲を維持する製剤である。
【0003】
生分解性を有し、且つ、現在使用されている代表的な徐放性素材は、食品医薬品局(FDA)の承認を得たPLGA[poly(lactic−co−glycolic acid)]である。米国登録特許第5,480,656号には、PLGA生体分解性高分子が生体内で一定時間を経つと、乳酸とグリコール酸に分解されて薬理学的活性物質を持続的に放出させると記載されている。ところが、PLGAの分解産物である酸性物質は炎症反応、細胞増殖率の減少などを起こし、(K. Athanasiou、G. G. Niederauer、and C. M. Agrawal、Biomaterials、17、93(1996))、徐放のためには10〜100μm程度のPLGA固体粒子に薬理学的活性物質を封入して注射しなければならないが、この場合、注射時の疼痛または炎症を伴うという問題がある。
【0004】
このような問題点に対する一つの代案として、国際公開特許第WO2005/117830号は、少なくとも一つの中性ジアシル脂質および/またはトコフェロール、少なくとも一つのリン脂質、および少なくとも一つの生体適合性、酸素含有、低粘度の有機溶媒を含む初期製剤を開示しており、国際公開特許第WO2006/075124号は、少なくとも一つのジアシルグリセリド、少なくとも一つのホスファチジルコリン、少なくとも一つの酸素含有有機溶媒、および少なくとも一つのソマトスタチン類似体を含む初期製剤を開示している。これらの製剤はいずれも、高分子システムの乳酸またはグリコール酸分解産物を生成しないため注射部位の疼痛や炎症を伴わず、薬理学的活性物質を生体内(in vivo)で2週以上持続的に放出した。しかしながら、一部の薬理学的活性物質の活性低下を引き起こす有機溶媒を必須的に使用しなければならないという問題があり(H. Ljusberg−Wahre、F. S. Nielse、298、328−332(2005); H. Sah、Y. bahl、Journal of Controlled Release 106、51−61(2005))、液晶相が提供する徐放性に加えて徐放性をもより一層強化させる組成物については言及されていない。
【0005】
そこで、本発明者らは、a)液晶形成剤と、b)中性リン脂質(neutral phospholipid)と、c)液晶硬化剤と、d)アニオン性定着剤(anioic anchoring agent)と、を含み、水性流体の不在下で脂質液相として存在し且つ水性流体上で液晶を形成する徐放性脂質初期製剤(pre-concentrate)およびe)総電荷が(+)であるカチオン性薬理学的活性物質を含み、前記徐放性初期製剤のアニオン性定着剤が前記カチオン性薬理学的活性物質とイオン結合することにより、カチオン性薬理学的活性物質の徐放性が強化される薬剤学的組成物に関する発明を完成した。
【0006】
以下、本発明に関連する先行技術を検討する。
【0007】
国際公開特許WO2009/024795号は、少なくとも一つの非ポリマー性遅延放出型マトリックス、少なくとも一つの生体適合性有機溶媒、少なくとも一つのペプチド薬理学的活性物質および少なくとも一つの脂溶性酸の低粘度混合物を含む組成物を開示している。しかしながら、一部の薬理学的活性物質の活性低下を引き起こす有機溶媒を必須的に使用しなければならず、脂溶性酸の用途が典型的な酸として働かず、脂溶性酸の使用目的がペプチド薬理学的活性物質の溶解安定化剤として使用したことに過ぎないため薬理学的活性物質の徐放性強化とは関係ないという点で本発明とは異なる。
【0008】
国際公開特許WO2008/152401号は、少なくとも一つの陽に帯電されたペプチドイオンおよび少なくとも一つの陰に帯電された反対イオンを含む薬理学的活性物質の塩、遅延放出型運搬ビヒクルを含むペプチド薬理学的活性物質の遅延運搬のための組成物を開示している。しかしながら、前記特許の遅延放出型ビヒクルは、PLGAなどの生体耐性ポリマーを含み、薬理学的活性物質は、ペプチド系の薬理学的活性物質にのみ限定されている。また、反対イオンを含む薬理学的活性物質の塩は、遅延放出型マトリックスに適用される薬理学的活性物質の一種であり、遅延放出型マトリックスとイオンの間で発生する相互作用がないという点で本発明とは異なる。
【0009】
日本公開特許第62−1239226号は、溶液中に溶解または分散されたカチオン性基を含有する薬理学的活性物質は、ヒアルロン酸内のカルボン酸基のイオン交換が発生し、これにより、薬理学的活性物質の遅い拡散を誘導することができると記載されている。しかしながら、前記特許のヒアルロン酸徐放性製剤は、ヒアルロン酸とヒアルロン酸の粘度に結合したカチオン性薬理学的活性物質との間のイオン交換作用を考慮しても、分解時に徐放が十分に行われるとは認められない。また、ヒアルロン酸の粘度に基づいて徐放性を与える機序であることを考慮するとき、水溶解度が高い薬理学的活性物質であるほど満足のいく徐放性を達成し難いという点で本発明とは異なる。
【0010】
国際公開特許WO1999/33491号は、イオン性薬理学的活性物質に対して反対電荷を有し、イオン性薬理学的活性物質の疎水性を向上させるイオン性化合物を含むイオン性薬理学的活性物質の徐放性医薬組成物を開示している。前記特許は、反対電荷を有する物質を有し、薬理学的活性物質の徐放性を増進させるという点と、投与経路が皮下注射であってもよいが、薬理学的活性物質の徐放化の原理が薬理学的活性物質と反対イオン化合物との間の直接的なイオン作用による薬理学的活性物質の徐放ではなく、薬理学的活性物質の疎水性度を増進させて徐放性を与えたという点と、ラットの背部に皮下投与して確認した徐放効果は数時間内の経時的な徐放性を示したという点で本発明とは異なる。
【0011】
米国登録特許第7,731,947号は、インターフェロン、スクロース、メチオニンおよびクエン酸緩衝液からなる固体粒子が安息香酸ベンジルなどの有機溶媒に分散した組成物を開示している。また、一部の実施形態では、ホスファチジルコリンをビタミンE(トコフェロール)と共に有機溶媒に溶解させて固体粒子の分散液として使用することができることを説明している。ところが、この特許の組成物は、液晶(liquid crystal)が形成されないうえ、これらを固体粒子分散用途に使用するという点で、本発明とは異なる。
【0012】
米国登録特許第7,871,642号は、リン脂質、ポリオキシエチレンを有する界面活性剤、トリグリセリドおよびエタノールの混合物を水に分散させ、薬理学的活性物質を伝達する分散体を製造する方法を開示しており、ここで、ポリオキシエチレンを有する界面活性剤の一つとしてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート, polysorbate)とポリオキシエチレンビタミンE誘導体が使用できることを説明している。ところが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとポリオキシエチレンビタミンE誘導体は、ソルビタン脂肪酸エステルとビタミンEのそれぞれに親水性ポリマーとしてのポリオキシエチレンが結合した物質であって、元来のソルビタン脂肪酸エステルおよびビタミンEと構造が全く異なり、ポリオキシエチレンの特性を用いた親水性界面活性剤として使用される物質であるという点で、本発明の構成成分とは異なる。
【0013】
米国登録特許第5,888,533号は、インプラントを形成する流体組成物であって、非ポリマー性、水不溶性および生分解性を有する物質と、この物質を少なくとも部分的に溶解させ、水または生体液に混和または分散可能な溶媒とからなり、人体への適用の際に該溶媒が生体液に拡散しながら抜け出て非ポリマー性、水不溶性および生分解性を有する物質が凝集または沈殿することによりインプラントが形成される組成物を開示している。ここで、非ポリマー性、水不溶性および生分解性を有する物質として、ステロール、コレステリルエステル、脂肪酸、脂肪酸グリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪アルコール、脂肪アルコールと脂肪酸のエステル結合物、脂肪酸の脱水物、リン脂質、ラノリン、ラノリンアルコールなどを使用することができると説明し、溶媒としてエタノールなどが挙げられると説明している。ところが、前記特許は、液晶を形成することができないうえ、単なる凝集または沈殿によってインプラントを形成する組成物であるという点、および多量の有機溶媒を必須的に使用しなければならないという点で、本発明とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開特許公報WO2005/117830号
【特許文献2】国際公開特許公報WO2006/075124号
【特許文献3】国際公開特許公報WO2009/024795号
【特許文献4】国際公開特許公報WO2008/152401号
【特許文献5】国際公開特許公報WO1999/33491号
【特許文献6】日本公開特許公報第62−1239226号
【特許文献7】米国登録特許公報第7,731,947号
【特許文献8】米国登録特許公報第7,871,642号
【特許文献9】米国登録特許公報第5,888,533号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、アニオン性定着剤を含むことにより、カチオン性薬理学的活性物質の徐放性を強化させる徐放性脂質初期製剤を提供するところにある。
【0016】
本発明の他の目的は、アニオン性定着剤を含んでも、安全性および生分解性が低下しない徐放性脂質初期製剤を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、a)液晶形成剤と、b)中性リン脂質(neutral phospholipid)と、c)液晶硬化剤と、d)アニオン性定着剤(anionic anchoring agent)と、を含み、水性流体の不在下で脂質液相として存在し且つ水性流体上で液晶を形成する徐放性脂質初期製剤(pre-concentrate)を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記徐放性脂質初期製剤およびe)総電荷が(+)であるカチオン性薬理学的活性物質を含み、前記徐放性初期製剤のアニオン性定着剤が前記カチオン性薬理学的活性物質とイオン結合することにより、カチオン性薬理学的活性物質の徐放性が強化される薬剤学的組成物を提供する。
【0019】
以下、各構成成分について詳細に説明する。
【0020】
a)液晶形成剤
【0021】
本発明の液晶形成剤(liquid crystal former)は、非層状構造である液晶を形成する物質であり、ソルビタン不飽和脂肪酸エステル(sorbitan unsaturated fatty acid ester)、モノアシルグリセロール(monoacyl glycerol)、ジアシルグリセロール(diacyl glycerol)およびこれらの混合物の中から1種以上選択される。
【0022】
本発明の液晶形成剤であるソルビタン不飽和脂肪酸エステルは、極性頭基に−OH(ヒドロキシル、hydroxyl)が2つ以上存在することが好ましい。このようなソルビタン不飽和脂肪酸エステルは、下記の[化学式1]の化合物を意味し、中でも、ソルビタンモノエステル(sorbitan monoester)は、R1=R2=OH、R3=R、ソルビタンジエステル(sorbitan diester)は、R1=OH、R2=R3=R、ここで、Rは、炭素数が4〜30であり、二重結合を1つ以上含むアルキルエステル基(alkyl ester group)を意味する。
【0023】
【化1】
【0024】
具体的に、本発明のソルビタン不飽和脂肪酸エステルは、植物性オイル(たとえば、ヤシ油、ヒマシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、菜種油、トウモロコシ油、胡麻油、綿実油、大豆油、ひまわり油、 紅花油、亜麻仁油など)、動物性脂肪および油(たとえば、乳脂肪、豚脂および牛脂)だけでなく、鯨油および魚油から得られる脂肪酸に由来するソルビタンモノエステル(sorbitan monoester)、ソルビタンセスキエステル(sorbitan sesquiester)、ソルビタンジエステル(sorbitan diester)およびこれらの混合物の中から1種以上選択される。
【0025】
前記ソルビタンモノエステルは、ソルビタンに1つの脂肪酸基がエステル結合したものであり、モノオレイン酸ソルビタン(sorbitan monooleate)、モノリノール酸ソルビタン(sorbatan monolinoleate)、モノパルミトレイン酸ソルビタン(sorbitan monopalmitoleate), モノミリストレイン酸ソルビタン(sorbitan monomyristoleate)およびこれらの混合物の中から1種以上選択される。
【0026】
前記ソルビタンセスキエステルは、ソルビタンに平均1.5個の脂肪酸基がエステル結合したものであり、セスキオレイン酸ソルビタン(sorbitan sesquioleate)、セスキリノール酸ソルビタン(sorbitan sesquilinoleate)、セスキパルミトレイン酸ソルビタン(sorbitan sesquipalmitoleate)、セスキミリストレイン酸ソルビタン(sorbitan sesquimyristoleate)およびこれらの混合物の中から1種以上選択される
【0027】
前記ソルビタンジエステルは、ソルビタンに2つの脂肪酸基がエステル結合したものであり、ジオレイン酸ソルビタン(sorbitan dioleate)、ジリノール酸ソルビタン(sorbitan dilinoleate)、ジパルミトレイン酸ソルビタン(sorbitan dipalmitoleate)、ジミリストレイン酸ソルビタン(sorbitan dimyristoleate)およびこれらの混合物の中から1種以上選択される。
【0028】
本発明に係るソルビタン不飽和脂肪酸エステルは、モノオレイン酸ソルビタン(sorbitan monooleate)、モノリノール酸ソルビタン(sorbitan monolinoleate)、モノパルミトレイン酸ソルビタン(sorbitan monopalmitoleate)、モノミリストレイン酸ソルビタン(sorbitan monomyristoleate)、セスキオレイン酸ソルビタン(sorbitan sesquioleate)およびこれらの混合物の中から選択して用いることが好ましい。
【0029】
また、本発明の他の液晶形成剤であるモノアシルグリセロール(monoacyl glycerol)は、グリセリン(glycerine)からなる極性頭部(polar head)に1つの脂肪酸基がエステル結合したものであり、ジアシルグリセロール(diacyl glycerol)は、グリセリンからなる極性頭部に2つの脂肪酸基がエステル結合したものである。本発明のモノアシルグリセロールまたはジアシルグリセロールに結合する脂肪酸基の炭素数は4〜30個であり、互いに同一または異なる炭素数を有し、それぞれ独立して飽和または不飽和される。具体的に、前記脂肪酸(fatty acid)基は、パルミチン酸(palmitic acid)、パルミトレイン酸(pamitoleic acid)、ラウリン酸(lauric acid)、酪酸(butyric acid)、吉草酸(valeric acid)、カプロン酸(caproic acid)、エナント酸(enanthic acid)、カプリル酸(caprylic acid)、ペラルゴン酸(pelargonic acid)、カプリン酸(capric acid)、ミリスチン酸(myristic acid)、ミリストレイン酸(myristoleic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、アラキジン酸(arachidic acid)、ベヘン酸(behenic acid)、リグノセリン酸(lignoceric acid)、セロチン酸(cerotic acid)、リノレン酸(linolenic acid)、アルファリノレン酸(alpha−linolenic acid、ALA)、エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid、EPA)、ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid、DHA)、リノール酸(linoleic acid、LA)、ガンマリノール酸(gamma−linoleic acid、GLA)、ジホモガンマ−リノール酸(dihomo gamma−linoleic acid、DGLA)、アラキドン酸(arachidonic acid、AA)、オレイン酸(oleic acid)、バクセン酸(vaccenic acid)、エライジン酸(elaidic acid)、エイコサン酸(eicosanoic acid)、エルカ酸(erucic acid)、ネルボン酸(nervonic acid)およびこれらの混合物の中から1種以上選択される。
【0030】
具体的に、本発明のモノアシルグリセロールは、モノ酪酸グリセロール(glycerol monobutyrate)、モノベヘン酸グリセロール(glycerol monobehenate)、モノカプリル酸グリセロール(glycerol monocaprylate)、モノラウリン酸グリセロール(glycerol monolaurate)、モノメタクリル酸グリセロール(glycerol monomethacrylate)、モノパルミチン酸グリセロール(glycerol monopalmitate)、モノステアリン酸グリセロール(glycerol monostearate)、モノオレイン酸グリセロール(glycerol monooleate)、モノリノール酸グリセロール(glycerol monolinoleate)、モノアラキジン酸グリセロール(glycerol monoarachidate)、モノアラキドン酸グリセロール(glycerol monoarachidonate)、モノエルカ酸グリセロール(glycerol monoerucate)およびこれらの混合物の中から1種以上選択される。好ましくは、下記の[化学式2]のモノオレイン酸グリセロール(glycerol monooleate、GMO)が使用可能である。
【0031】
【化2】
【0032】
また、本発明のジアシルグリセロールは、ジベヘン酸グリセロール(glycerol dibehenate)、ジラウリン酸グリセロール(glycerol dilaurate)、ジメタクリル酸グリセロール(glycerol dimethacrylate)、ジパルミチン酸グリセロール(glycerol dipalmitate)、ジステアリン酸グリセロール(glycerol distearate)、ジオレイン酸グリセロール(glycerol dioleate)、ジリノール酸グリセロール(glycerol dilinoleate)、ジエルカ酸グリセロール(glycerol dierucate)、ジミリスチン酸グリセロール(glycerol dimyristate)、ジリシノレイン酸グリセロール(glycerol diricinoleate)、ジパルミトレイン酸グリセロール(glycerol dipalmitoleate)およびこれらの混合物の中から1種以上選択される。好ましくは、下記の[化学式3]のジオレイン酸グリセロール(glycerol dioleate、GDO)が使用可能である。
【0033】
【化3】
【0034】
b)中性リン脂質
【0035】
本発明のリン脂質(phospholipid)は、既存の技術ではリポソームなどの層状構造(lamellar structure)の製造に必須的に使用されてきた物質であって、独自的には非層状構造(non−lamellar phase structure)の液晶を形成することはできない。ところが、本発明の液晶形成剤によって触発される非層状構造に参加して液晶を安定化させる役割を果たす。
【0036】
具体的に、本発明のリン脂質は、中性であることが好ましく、飽和または不飽和された炭素数4〜30のアルキルエステル基を有し、極性頭部の構造に応じてホスファチジルコリン(phosphatidylcholine)、ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolamine)、ホスファチジルイノシトール(phosphatidylinositol)、スフィンゴミエリン(sphingomyellin)およびこれらの混合物の中から1種以上選択される。
【0037】
また、リン脂質は、豆や卵などの植物または動物に由来する形態であり、リン脂質に結合されるアルキルエステル基としては、モノおよびジパルミトイル(mono- and dipalmitoyl)、モノおよびジミリストイル(mono- and dimyristoyl)、モノおよびジラウリル(mono- and dilauryl)、モノおよびジステアリル(mono- and distearyl)などの飽和脂肪酸エステルやモノおよびジリノレイル(mono- or dilinoleyl)、モノおよびジオレイル(mono- and dioleyl)、モノおよびジパルミトレイル(mono- and dipalmitoleyl)、モノおよびジミリストレイル(mono- and dimyristoleyl)などの不飽和脂肪酸エステルが挙げられ、飽和脂肪酸エステルおよび不飽和脂肪酸エステルが共存する形態であってもよい。
【0038】
c)液晶硬化剤
【0039】
本発明の液晶硬化剤(liquid crystal hardener)は、独自的には液晶形成剤のように非層状構造を形成することができないうえ、リン脂質のようにリポソームなどの層状構造を形成することもできない。ところが、本発明の液晶硬化剤は、液晶形成剤によって触発される非層状構造に参加して非層状構造の曲率(curvature、ねじれ)を高めて油水(oil、water)の規則的な混在程度をさらに高める結果をもたらす。このような液晶硬化剤としての機能を持つためには、分子構造の内部に極性が非常に制限的に存在すると同時に、非極性を示す部位の体積が大きい(bulky)ことが求められる。
【0040】
ところが、本発明の液晶硬化剤は、実際には、非常に特異的に、直接かつ反復的な実験によってのみ、人体に投与可能で生体に適した物質が選択され、その結果、本発明の組成物に適した液晶硬化剤は、それぞれが異なる分子構造を持っており、1つの構造で説明することはできなかった。但し、本発明の組成物に適した液晶硬化剤を解明した後、これらの構造を観察してみるとき、カルボキシル基やアミン基などのイオン化基を有せず、疎水性部分は全体炭素数15〜40のバルキー(bulky)なトリアシル基または炭素環構造を有する物質であることを確認することができた。好ましくは、カルボキシル基やアミン基などのイオン化基を有せず、弱い極性部分として水酸化基およびエステル構造を最大1個有し、相対的に疎水性部分は全体炭素数20〜40のバルキー(bulky)なトリアシル基または炭素環構造を有する物質である。よって、具体的に、本発明の液晶硬化剤は、トリグリセリド(triglyceride)、パルミチン酸レチニル(retinyl palmitate)、酢酸トコフェロール(tocopherol acetate)、コレステロール(cholesterol)、安息香酸ベンジル(benzyl benzoate)、ユビキノン(ubiquinone)およびこれらの混合物の中から1種以上選択されるが、これに限定されるものではない。好ましくは、酢酸トコフェロール(tocopherol acetate)、コレステロール(cholesterol)およびこれらの混合物の中から1種以上選択される。
【0041】
d)アニオン性定着剤
【0042】
イオン性定着剤(anchoring agent)とは、「いかりを下ろしてしっかりとつなぎとめる物質」の語源であり、イオン性薬理活性物質と反対イオンを有する定着剤との間のイオン性相互作用(ionic interaction)を用いて薬理学的活性物質の遅延放出を可能にするあらゆる物質を意味する。
【0043】
本発明の徐放性脂質初期製剤は、カチオン性薬理活性物質の徐放性を強化させるためにアニオン性定着剤を使用する。
【0044】
本発明のアニオン性定着剤は、極性頭基に少なくとも1つ以上のカルボン酸(carboxylate)、リン酸(phosphate)、硫酸(sulfate)および/またはスルホン酸(sulfonate)を有し、疎水性部分は、炭素数4〜40の化合物が使用可能である。
【0045】
具体的に、本発明のアニオン性定着剤のうちカルボン酸(carboxylate)構造を有するアニオン性定着剤は、パルミチン酸(palmitic acid)、パルミトレイン酸(palmitoleic acid)、ラウリン酸(lauric acid)、酪酸(butyric acid)、吉草酸(valeric acid)、カプロン酸(caproic acid)、エナント酸(enanthic acid)、カプリル酸(caprylic acid)、ペラルゴン酸(pelargonic acid)、カプリン酸(capric acid)、ミリスチン酸(myristic acid)、ミリストレイン酸(myristoleic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、アラキジン酸(arachidic acid)、ベヘン酸(behenic acid)、リグノセリン酸(lignoceric acid)、セロチン酸(cerotic acid)、リノレン酸(linolenic acid)、アルファリノレン酸(alpha-linolenic acid, ALA)、エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid, EPA)、ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid, DHA)、リノール酸(linoleic acid, LA)、ガンマリノール酸(gamma-linoleic acid, GLA)、ジホモガンマ−リノール酸(dihomo gamma-linoleic acid, DGLA)、アラキドン酸(arachidonic acid, AA)、オレイン酸(oleic acid)、バクセン酸(vaccenic acid)、エライジン酸(elaidic acid)、エイコサン酸(eicosanoic acid)、エルカ酸(erucic acid)、ネルボン酸(nervonic acid)、安息香酸(benzoic acid)、ソルビン酸(sorbic acid)、パモ酸(pamoic acid)、リポ酸(lipoic acid)およびこれらの混合物の中から1種以上選択されるが、これに限定されるものではない。
【0046】
リン酸(phosphate)構造を有するアニオン性定着剤は、ホスファチジルセリン(phosphatidylserine)、ホスファチジルグリセリン(phosphatidylglycerine)、ホスファチジルイノシトール(phosphatidylinositol)およびホスファチジン酸(phosphatidic acid)の中から1種以上選択され、好ましくは、1、2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファート(1,2-dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphate)である。
【0047】
硫酸(sulfate)構造を有するアニオン性定着剤は、ラウリル硫酸(lauryl sulfate)、コレステリル硫酸(cholesteryl sulfate)およびこれらの混合物の中から1種以上選択されるが、これに限定されるものではない。
【0048】
スルホン酸(sulfonate)構造を有するアニオン性定着剤は、ベンゼンスルホン酸(benzene sulfonate)、ドデシルベンゼンスルホン酸(dodecylbenzene sulfonate)およびこれらの混合物の中から1種以上選択されるが、これに限定されるものではない。
【0049】
e)カチオン性薬理学的活性物質
【0050】
本発明のカチオン性薬理学的活性物質とは、陽電荷を帯びるか、あるいは、総電荷(net charge)が陽電荷である薬理学的活性物質のことをいう。
【0051】
前記カチオン性薬理学的活性物質は、少なくとも1つ以上の1次アミン(primary amine)、2次アミン(secondary amine)、3次アミン(tertiary amine)、芳香族アミン(aromatic amine)、スルホニウム(sulfonium)、ヨードニウム(iodonium)、アンモニウム(ammonium)、ホスホニウム(phosphonium)、ピリジニウム(pyridinium)、チアゾリウム(thiazolinium)、イミダゾリニウム(imidazolinium)、スルホキソニウム(sulfoxonium)、イソチウロニウム(isothiouronium)、アゼチジニウム(azetidinium)またはジアゾニウム(diazonium)構造を有する薬理活性物質よりなる群から選択される。
【0052】
具体的に、カチオン性薬理学的活性物質は、ロイプロリド(leuprolide)、トリプトレリン(triptorelin)、ゴセレリン(goserelin)、ナファレリン(nafarelin)、ブセレリン(buserelin)、ヒストレリン(histrelin)、デスロレリン(deslorelin)、メテレリン(meterelin)、ゴナドレリン(gonadrelin)、エンテカビル(entecavir)、アナストロゾール(anastrozole)、リバスチグミン(rivastigmine)、アカポデン(acapodene)、アビラテロン(abiraterone)、チボロン(tibolone)、フェンタニール(fentanyl)、タクロリムス(tacrolimus)、メトトレキサート(methotrexate)、タムスロシン(tamsulosin)、デュタステライド(dutasteride)、フィナステリド(finasteride)、ソリフェナシン(solifenacin)、タダラフィル(tadalafil)、ドネペジル(donepezil)、オランザピン(olanzapine)、リスペリドン(risperidone)、アリピプラゾール(aripiprazole)、ナルトレキソン(naltrexone)、バレニクリン(varenicline)、ロピニロール(ropinirole)、ラタノプロスト(latanoprost)、オロパタジン(olopatadine)、プロゲステロン(progesterone)、ケトチフェン(ketotifen)、モンテルカスト(montelukast)、ヒト成長ホルモン(human growth hormone)、トラマドール(tramadol)、ジアゼパム(diazepam)、ジクロフェナク(diclofenac)、ピロカルピン(pilocarpine)、レボカバスチン(levocabastine)、チモロール(timolol)、ベタキソロール(betaxolol)、カルテオロール(carteolol)、レボブノロール(levobunolol)、エピネフリン(epinephrine)、ジピベフリン(dipivefrine)、クロニジン(clonidine)、アプラクロニジン(apraclonidine)、インドメタシン(indomethacin)、アシクロビル(acyclovir)、テストステロン(testosterone)、スタチン(statin)、ニフェジピン(nifedipine)、ボリコナゾール(voriconazole)、クロトリマゾール(clotrimazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)、フルベストラント(fulvestrant)、フィブラート(fibrate)、オクトレオチド(octreotide)、エストラジオール(estradiol)、コルチゾン(cortisone)、プロゲステロン(progesterone)、アンホテリシンB(amphotericin B)、クロルヘキシジン(chlorhexidine)、コルチコステロイド(corticosteroid)、シクロスポリンA(cyclosporine A)、デスモプレシン(desmopressin)、ソマトスタチン(somatostatin)、カルシトニン(calcitonin)、オキシトシン(oxytocin)、バソプレッシン(vasopressin)、フォリトロピンアルファおよびベータ(follitropin−alpha or beta)、チロトロピンアルファ(thyrotropin alpha)、セクレチン(secretin)、ブラジキニン(bradykinin)、低血圧性組織ホルモン(hypotensive tissue hormone)、インシュリンおよび誘導体(insulin or insulin derivatives)、インターフェロン(interferon)、タフトシン(tuftsin)、マガイニン(magainin)、インドリシジン(indolicidin)、プロテグリン(protegrin)、ポリミキシン(polymyxin)、グラミシジン(gramicidin)、バプレオチド(vapreotide)、エクセナチド(exenatide)、リラグルチド(liraglutide)、CJC−1131、AVE010、LY548806およびTH−0318、BIM 51077、デガレリクス(degarelix)、グルカゴン(glucagon)、デフェンシン(defensin)、ヒスタチン(histatin)、ガランタミン(galantamine)、メマンチン(memantine)、タクリン(tacrine)、アルプラゾラム(alprazolam)、クエン酸タンドスピロン(tandospirone citrate)、ジフェニルピラリン(diphenylpyraline)、シメチジン(cimetidine)、イソチペンジル(isothipendyl)、フェニレフリン(phenylephrin)、プロカインアミド(procainamide)、キニジン(quinidine)、イソソルビド(isosorbide)、ニコランジル(nicorandil)、アムロジピン(amlodipine)、アテノロール(atenolol)、フェロスピン(pherospin)、フロキサシン(floxacin)、セファレキシン(cephalexin)、セフカペンピボキシル(cefcapene pivoxil)、スルファメトキサゾール(sulfamethoxazole)、テトラサイクリン(tetracycline)、メトロニダゾール(metronidazole)、インダパミド(indapamide)、パパベリン(papaverine)、ブロムヘキシン(bromhexine)、チクロピジン(ticlopidine)、カルベタペンタン(carbetapentane)、フェニルプロパノールアミン(phenylpropanolamine)、セチリジン(cetirizine)、マイシン(mycin)、アセトアミノフェン(acetaminophen)、コキシブ(coxib)、モルフィン(morphine)、コデイン(codeine)、オキシコドン(oxycodone)、ブプレノルフィン(buprenorpine)、プラゾシン(prazosin)、ヒドロキシジン(hydroxyzine)、ブスピロン(buspirone)、クロルジアゼポキシド(chlordiazepoxide)、メプロバマート(meprobamate)、トリフルオペラジン(trifluoperazine)、クロラゼプ酸(clorazepate)、アブシキマブ(abciximab)、エプチフィバチド(eptifibatide)、チロフィバン(tirofiban)、ラミフィバン(lamifiban)、クロピドグレル(clopidogrel)、ジクマロール(dicoumarol)、ヘパリン(heparin)、ワルファリン(warfarin)、フェノバルビタール(phenobarbital)、クロバザム(clobazam)、フェルバマート(felbamate)、カルバマゼピン(carbamazepine)、オキスカルバゼピン(oxcarbazepine)、ビガバトリン(vigabatrin)、プロガビド(progabide)、チアガビン(tiagabine)、トピラマート(topiramate)、ガバペンチン(gabapentin)、プレガバリン(pregabalin)、エトトイン(ethotoin)、パラメタジオン(paramethadione)、ベクラミド(beclamide)、プリミドン(primidone)、レベチラセタム(levetiracetam)、アセタゾラミド(acetazolamide)、ラモトリギン(lamotrigine)、フェナセミド(phenacemide)、バルプロミド(valpromide)、バルノクタミド(valnoctamide)、レパグリニド(repaglinide)、メトホルミン(metformin)、グリタゾン(glitazone)、ミグリトール(miglitol)、ビルダグリプチン(vildagliptin)、シタグリプチン(sitagliptin)、トルブタミド(tolbutamide)、アセトヘキサミド(acetohexamide)、トラザミド(tolazamide)、グリブリド(glyburide)、グリメピリド(glimepiride)、グリクラジド(gliclazide)、グリピジド(glipizide)、クロルプロパミト(chlorpropamide)、プソイドエフェドリン(pseudoephedrine)、オキシメタゾリン(oxymetazoline)、メピラミン(mepyramine)、アンタゾリン(antazoline)、ジフェンヒドラミン(diphenhydramine)、カルビノキサミン(carbinoxamine)、ドキシラミン(doxylamine)、クレマスチン(clemastine)、ジメンヒドリナート(dimenhydrinate)、フェニラミン(peniramin)、トリプロリジン(triprolidine)、サイクリジン(chlorcyclizine)、メクリジン(meclizine)、プロメタジン(promethazine)、トリメプラジン(trimeprazine)、シプロヘプタジン(cyproheptadine)、アザタジン(azatadine)、デキストロメトルファン(dextromethorphan)、ノスカピン(noscapine)、クロランブシル(chlorambucil)、ロムスチン(lomustine)、ベタメサゾン(betamethasone)、アスピリン(aspirin)、ピロキシカム(piroxicam)、カルプロフェン(carprofen)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、チモロール(timolol)、ナドロール(nadolol)、テオブロミン(theobromine)、ドキソルビシン(doxorubicin)、アルプレノロール(alprenolol)、ソタロール(sotalol)、アセブトロール(acebutolol)、アテノロール(atenolol)、ビソプロロール(bisoprolol)、エスモロール(esmolol)、メトプロロール(metoprolol)、ネビボロール(nebilet)、カルベジロール(carvedilol)、セリプロロール(celiprolol)、ラベタロール(labetalol)、アダリムマブ(adalimumab)、アザチオプリン(azathioprine)、クロロキン(chloroquine)、D−ペニシラミン(D−phenicillamine)、エタネルセプト(etanercept)、オーロチオ(aurothio)、オーラノフィン(auranofin)、インフリキシマブ(infliximab)、レフルノミド(leflunomide)、スルファサラジン(sulfasalazine)、プレドニゾン(prednisone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、アルドステロン(aldosterone)、ベノリラート(benorilate)、ジフルニサル(diflunisal)、アセメタシン(acemetacin)、ブロムフェナク(bromfenac)、エトドラク(etodolac)、ナブメトン(nabumetone)、スリンダク(sulindac)、トルメチン(tolmetin)、ケトロラック(ketololac)、メフェナム酸(mefenamic acid)、フェニルブタゾン(phenylbutazone)、メタミゾール(metamizole)、オキシフェンブタゾン(oxyphenbutazone)、スルフィンピラゾン(sulfinpyrazone)、メロキシカム(meloxicam)、ニメスリド(nimesulide)、ジプラシドン(ziprasidone)、フル



スピリレン(fluspirilene)、ペンフルリドール(penfluridol)、アンパキン(ampakine)、デキセドリン(dexedrin)、フェンフルラミン(fenfluramine)、フェンテルミン(phentermine)、オルリスタット(orlistat)、アカルボース(acarbose)、リモナバン(rimonabant)、シルデナフィル(sildenafil)、カルベニシリンインダニル(carbenicillin indanyl)、バカンピシリン(bacampicillin)、アンピシリン(ampicillin)、ペニシリンG(penicillin G)、ネルフィナビル(nelfinavir)、ビラゾール(virazole)、ベンザルコニウム(benzalkonium)、グリセオフルビン(griseofulvin)、チアベンダゾール(thiabendazole)、オクスフェンダゾール(oxfendazole)、オキシベンダゾール(oxibendazole)、モランテル(morantel)、コトリモキサゾール(co−trimoxazole)、アルファキサロン(alfaxalone)、エトミダート(etomidate)、レボドパ(levodopa)、ブロモクリプチン(bromocriptine)、プラミペキソール(pramipexole)、ペルゴリド(pergolide)、セレギリン(selegiline)、トリヘキシフェニジル(trihexyphenidyl)、ベンズトロピン(benztropine)、プロサイクリジン(phencyclidine)、オルフェナドリン(orphenadrine)、アマンタジン(amantadine)、ガランタミン(galantamine)、リファンピン(rifampin)、セファゾリン(cefazolin)、イミペネム(imipenem)、アズトレオナム(aztreonam)、スルファメトキサゾール(sulfamethoxazole)、トリメトプリム(trimethoprim)、テイコプラニン(teicoplanin)、ムピロシン(mupirocin)、ナリジクス酸(nalidixic acid)、スルバクタム(sulbactam)、クラブラン酸(clavulanic acid)、ナイスタチン(nystatin)、イソカルボキサジド(isocarboxazid)、フェネルジン(phenelzine)、トラニルシプロミン(tranylcypromine)、ジドブジン(zidovudine)、ジデオキシイノシン(dideoxyinosine)、ザルシタビン(zalcitabine)、ネビラピン(nevirapine)、ラミブジン(lamivudine)、サクイナビル(saquinavir)、デラビルジン(delavirdine)、メチルフェニダート(methylphenidate)、カベルゴリン(cabergoline)、オンダンセトロン(ondansetron)、ドンペリドン(domperidone)、ペリドール(peridol)、クロルプロマジン(chloropromazine)、プロクロルペラジン(prochlorperazine)、メトクロプラミド(metoclopramide)、アリザプリド(alizaprid)、ロペラミド(loperamide)、シサプリド(cisapride)、チオリダジン(thioridazine)、アミトリプチリン(amitriptyline)、ブプロピオン(bupropion)、クロルジアゼポキシド(chlordiazepoxide)、シタロプラム(citalopram)、クロザピン(clozapine)、フルオキセチン(fluoxetine)、フルフェナジン(fluphenazine)、フルボキサミン(fluvoxamine)、ヒドラジン(hydrazine)、ロラゼパム(lorazepam)、ロクサピン(loxapine)、ミルタザピン(mirtazapine)、モリンドン(molindone)、ネファゾドン(nefasodone)、ノルトリプチリン(nortriptyline)、パロキセチン(paroxetine)、クエチアピン(quetiapine)、セルトラリン(sertraline)、チオチキセン(thiothixene)、トラゾドン(trazodone)、ベンラファキシン(venlafaxine)、フェンタニール(fentanyl)、メタドン(methadone)、オキシモルホン(oxymorphone)、バルプロアート(valproate)、ペントイン(pentoin)、アルブテロール(albuterol)、バクロフェン(baclofen)、カリソプロドール(carisoprodol)、クロルゾキサゾン(chlorzoxazone)、シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)、ダントロレン(dantrolene)、メタキサロン(metaxalone)、オルフェナドリン(orphenadrine)、パンクロニウム(pancuronium)、ジシクロミン(dicyclomine)またはその薬剤学的塩よりなる群から1種以上選択されるが、これに限定されない。
【0053】
好ましくは、ロイプロリド(leuprolide)、トリプトレリン(triptorelin)、ゴセレリン(goserelin)、ナファレリン(nafarelin)、ブセレリン(buserelin)、ヒストレリン(histrelin)、デスロレリン(deslorelin)、メテレリン(meterelin)、ゴナドレリン(gonadrelin)、エンテカビル(entecavir)、アナストロゾール(anastrozole)、リバスチグミン(rivastigmine)、アカポデン(acapodene)、アビラテロン(abiraterone)、チボロン(tibolone)、フェンタニール(fentanyl)、タクロリムス(tacrolimus)、メトトレキサート(methotrexate)、タムスロシン(tamsulosin)、デュタステライド(dutasteride)、フィナステリド(finasteride)、ソリフェナシン(solifenacin)、タダラフィル(tadalafil)、ドネペジル(donepezil)、オランザピン(olanzapine)、リスペリドン(risperidone)、アリピプラゾール(aripiprazole)、ナルトレキソン(naltrexone)、バレニクリン(varenicline)、ロピニロール(ropinirole)、ラタノプロスト(latanoprost)、オロパタジン(olopatadine)、プロゲステロン(progesterone)、ケトチフェン(ketotifen)、モンテルカスト(montelukast)およびこれらの混合物の中から1種以上選択されるが、さらに好ましくは、ロイプロリド(leuprolide)、トリプトレリン(triptorelin)、ゴセレリン(goserelin)、ナファレリン(nafarelin)、ブセレリン(buserelin)、ヒストレリン(histrelin)、デスロレリン(deslorelin)、メテレリン(meterelin)、ゴナドレリン(gonadrelin)、エンテカビル(entecavir)、アナストロゾール(anastrozole)、リバスチグミン(rivastigmine)またはその薬剤学的塩よりなる群から1種以上選択されるが、これに限定されない。
【0054】
本発明の初期製剤の組成において目的とする液晶に適したa)およびb)の重量比は10:1〜1:10であり、好ましくは5:1〜1:5である。a)+b)およびc)の重量比は1000:1〜1:1であり、好ましくは100:1〜1:1であり、さらに好ましくは50:1〜2:1である。a)+b)+c)およびd)の重量比は5000:1〜5:1であり、好ましくは500:1〜10:1である。上述の範囲内において、本発明で目的とする液晶による徐放性効果およびアニオン性定着剤の徐放性の強化効果をよりさらに上手に発現することができる。
【0055】
また、本発明の組成において目的とする薬剤学的組成物に適したa)+b)+c)+d)およびe)の重量比は、一般に10000:1〜2:1であるが、薬理学的活性物質の種類、適用される製剤の種類、所望の徐放パターンおよび医療業界においてその薬理学的な活性物質に対して求められる含量に応じて異なる。
【0056】
本発明において、水性流体は、水を含んで生体粘膜液、涙、汗、唾、胃腸管液、血管外液、細胞外液、間質液(interstitial fluid)または血漿などの体液を意味する。よって、水溶性体液が外界の環境を形成する身体表面、部位または腔(たとえば、身体内)と接触するとき、本発明の組成物は液相から転換されて半固形の外観を示す液晶を形成する特徴を持つ。このように本発明の組成物は人体への適用前には脂質液相であるが、実際に人体への適用の際に徐放性を示す液晶に転換される。
【0057】
本発明において、「液晶」は非常に制限された条件で油水(oil, water)が規則的に混在し、配列されて内相と外相が区分できない状態の非層状構造を有し、このような非層状構造は特異的に油水の規則的な配列により液相(liquid phase)と固相(solid phase)の中間相(mesophase)の性質を有する。これは、既存に薬学的剤形の設計に広く使用されてきたミセル(micelle)、エマルジョン(emulsion)、マイクロエマルジョン(microemulsion)、リポソーム(liposome)、二重脂質膜(lipid bilayer)などはいずれも層状構造の特徴を共通的に有し、このような層状構造は水中油(o/w、oil in water)または油中水(w/o、water in oil)の形で内相(inner phase)と外相(out phase)が区分されることにより、形成される構造が異なる。
【0058】
本発明において、「液晶」を示す液晶化現象は、上述したような初期製剤から水性油体に晒されることにより、非層状構造(non-lamella phase structure)の液晶(liquid crystal)が形成される現象を意味する。
【0059】
本発明の徐放性脂質初期製剤は、a)液晶形成剤の中から選択された1種以上、b)中性リン脂質の中から選択された1種以上、c)液晶硬化剤の中から選択された1種以上およびd)アニオン性定着剤の中から選択された1種以上を添加して室温で製造し、必要に応じて、熱を加えたりホモジナイザーを用いたりして製造する。このとき、ホモジナイザーは、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、破砕ホモジナイザーなどの中から選択されて用いられる。
【0060】
本発明の徐放性脂質初期製剤は、水性流体の不在下で脂質液相として存在し且つ水性流体上で液晶を形成する薬剤学的組成物である。また、本発明の初期製剤は、注射、塗布、滴下、パッド、経口、噴霧などの中から選択される方法により人体に適用されることを特徴とする薬剤学的組成物であり、注射剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、カプセル剤、錠剤、液剤、懸濁剤、噴霧剤、吸入剤、点眼剤、粘着剤、貼付剤の中から選択された剤形であることが好ましく、さらに好ましくは、注射剤である。
【0061】
特に、注射剤の投与経路としては、皮下注射、筋肉注射のいずれの投与形態も採用可能であり、投与形態は、それぞれの薬理活性物質の特性により選択される。
【0062】
本発明の薬剤学的組成物は、注射剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、カプセル剤、錠剤、液剤、懸濁剤、噴霧剤、吸入剤、点眼剤、粘着剤、貼付剤の中から1種以上選択された剤形であることが好ましく、注射剤であることがさらに好ましい。
【0063】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明の初期製剤に薬理学的活性物質を室温で添加して製造し、必要に応じて、熱を加えたりホモジナイザーを用いたりして製造するが、本発明がこれに限定されない。
【0064】
本発明の薬剤学的組成物の投与量は、使用された薬理学的活性物質の公知の投与量と同量であり、患者の重症度、年齢、性別などに応じて異なり、薬理学的活性物質および薬剤の特性に応じて経口および非経口で投与可能である。
【0065】
本発明は、本発明の薬剤学的組成物を人間をはじめとする哺乳類に投与することにより、薬理学的活性物質を徐放性で放出してこの薬理効果を持続する方法および用途をさらに提供する。
【発明の効果】
【0066】
本発明の徐放性脂質初期製剤および薬理学的組成物は、液晶の内部でアニオン性定着剤およびカチオン性薬理学的活性物質間のイオン結合を通じて薬理学的活性物質の徐放性を強化させる作用効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】徐放性脂質初期製剤内のアニオン性定着剤がカチオン性薬理活性物質と部分的にまたは全体的にイオン結合することを示す模式図である。
図2】実施例2、実施例13および比較例1〜7の生体内(in vivo)における生分解性を示す図である。
図3】実施例21および比較例15、比較例21の薬理学的活性物質(ロイプロリド)の生体内(in vivo)における放出挙動を示す図である。
図4】実施例24および比較例18、比較例22の薬理学的活性物質(エンテカビル)の生体内(in vivo)における放出挙動を示す図である。
図5】実施例13および比較例1の水性流体上における相変化挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、実施例および実験例によって本発明を具体的に説明する。但し、これらの実施例および実験例は本発明の例示に過ぎないものであり、本発明の範囲を限定するものでない。
【0069】
本発明における添加剤は、薬局方規格の賦形剤およびAldrich、Lipoid、Croda、Seppic社から購入した試薬を使用した。
【0070】
[実施例1〜19]本発明の脂質初期製剤の製造
【0071】
下記[表1]に示す重量で、液晶形成剤、中性リン脂質、液晶硬化剤、アニオン性定着剤および/または適用溶媒を添加した。
【0072】
実施例1〜19では20〜75℃の湯煎環境でホモジナイザー(PowerGen model125, Fisher)で約1,000〜3,000rpmの条件下で0.5〜3時間混合して均質化させた。その後、製造された脂質溶液を常温で放置して25℃の熱平衡状態にした後、1ccの使い捨て用注射器に充填し、水相(2gの3次蒸留水)に注入することにより、実施例1〜19の脂質溶液である本発明の初期製剤を製造した。
【0073】
【表1】
【0074】
[実施例20〜30]本発明の薬剤学的組成物の製造
【0075】
下記[表2]に示す重量で、液晶形成剤、中性リン脂質、液晶硬化剤、アニオン性定着剤およびカチオン性薬理学的活性物質を添加した。
【0076】
実施例20〜30では20〜75℃の湯煎環境でホモジナイザー(PowerGen model125, Fisher)で約1,000〜3,000rpmの条件下で0.5〜3時間混合して均質化させた。その後、製造された脂質溶液を常温で放置して約25℃の熱平衡状態にした後、ここに薬理学的活性物質としてロイプロリド、エンテカビル、リスペリドン、アナストロゾール、インターフェロン、エクセナチドをそれぞれ添加してホモジナイザーで約5〜30分間約1,000〜3,000rpmの条件下で均質化させて溶液相の薬剤学的組成物を製造した。
【0077】
【表2】
【0078】
[比較例1〜13]アニオン性定着剤を含有しない脂質初期製剤の製造
【0079】
下記[表3]に示す重量で、液晶形成剤、リン脂質と液晶硬化剤および適用溶媒を添加した。
【0080】
比較例1〜13では25〜75℃の湯煎環境でホモジナイザー(PowerGen model125, Fisher)で約3,000rpmの条件下で約10分間混合した。その後、製造された脂質溶液を常温で放置して25℃の熱平衡状態にした後、1ccの使い捨て用注射器に充填し、水相(2gの3次蒸留水)に注入することにより、比較例1〜13の脂質溶液である本発明の初期製剤を製造した。
【0081】
【表3】
【0082】
[比較例14〜20]アニオン性定着剤を含有しない薬剤学的組成物の製造
【0083】
下記[表4]に示す重量で、液晶形成剤、リン脂質、液晶硬化剤および適用溶媒を添加した。
【0084】
比較例14〜20では20〜75℃の湯煎環境でホモジナイザー(PowerGen model125, Fisher)で約1,000〜3,000rpmの条件下で0.5〜3時間混合して均質化させた。その後、製造された脂質溶液を常温で放置して約25℃の熱平衡状態にした後、ここに薬理学的活性物質として、デュタステライド、ロイプロリド、エクセナチド、タムスロシン、エンテカビルをそれぞれ添加してホモジナイザーで約5〜30分間約1,000〜3,000rpmの条件下で均質化させて溶液相の薬剤学的組成物を製造した。
【0085】
【表4】
【0086】
[比較例21〜22]
【0087】
比較例21の製剤は、3.75mgのロイプロリドを1mLの生理食塩水に添加し、室温で溶解させて製造した。
【0088】
比較例22の製剤は、2.3mgのエンテカビルを1mLの生理食塩水に添加し、室温で溶解させて製造した。
【0089】
[実験例1]生体外(in vitro )での安全性(safety)効果の確認
【0090】
次のようなExtraction Colony Assay細胞毒性実験によって、生体外(in vitro)での本発明のアニオン性定着剤の安全性効果を確認した。
【0091】
実施例2、実施例7、実施例16、比較例5、比較例7および比較例12の組成物それぞれ2gを、10%ウシ胎仔血清(fetal bovine serum, FBS)の含有されたEMEM(Eagle’s minimum essential medium)培地18mLで抽出した。1×102個のL929細胞(Mouse fibroblast、American Type Culture)を6wellに24時間37℃、5%二酸化炭素湿潤インキュベーターで安定化させた後、前記抽出培地をEMEM培地で希釈して(0、5、25、50%)2mLずつ安定化L929細胞に塗布した。
【0092】
その後、これを7日間37℃、5%二酸化炭素湿潤インキュベーターで培養した後、10%ホルマリン溶液(formalin solution)で固定させ、ギムザ染色液(Giemsa stain solution)で細胞染色を行ってコロニー(colony)数を測定し、その結果を[表5]に示す。
【0093】
【表5】
【0094】
[表5]の結果から抽出された培地の希釈比率を5%、25%、50%の比率に高めながら培養されたコロニー形成率(colony formation rates)を観察したとき、実施例2と比較例7、実施例7と比較例5および実施例16と比較例12の実施例の投与群と比較例の投与群が互いに略同じ細胞成長率を示した。よって、本発明のアニオン性定着剤は、安全性に影響を及ぼさないということを確認した。
【0095】
[実験例2]生体内(in vivo)における生分解性効果の比較
【0096】
次のような実験によって、本発明の組成物の生分解性効果を確認した。
【0097】
400mgの実施例2、実施例13、比較例1および比較例7の組成物を注射器に平均300gの9週齢のSDラット(雄性)6匹の背に皮下注射した後、一定の時間観察した。生分解性効果の比較のために、試験日から2週および4週が経過した時点の結果は、[図2]のとおりである。
【0098】
[図2]から明らかなように、実施例2および実施例13の組成物は、比較例1および比較例7と同じ生分解能を示す。よって、本発明のアニオン性定着剤は、生分解性に影響を及ぼさないということを確認した。
【0099】
[実験例3] 生体内(in vivo)におけるロイプロリド徐放性効果の確認
【0100】
次のような実験によって、生体内(in vivo)における本発明の組成物の薬物放出挙動を確認した。
【0101】
ロイプロリドの投与重量が12.5mg/kg(人間容量であり、約28日に相当する量)となるように使い捨て用注射器を用いて実施例21および比較例15の組成物を平均300gの9週齢のSDラット(雄性)6匹の背に皮下注射した。一般注射剤のPKプロファイル(pharmacokinetic profile)の比較のために、比較例21の組成物をロイプロリドの投与重量が0.45mg/kg(人間容量であり、約1日に相当する量)となるように同様の方法で投与した。
【0102】
SDラットの血漿サンプルにおけるロイプロリドの濃度のPKプロファイル(pharmacokinetic profile)をLC−MS/MS(液体クロマトグラフィ−質量分析器)を用いて28日間分析した。
【0103】
SDラットに対するPK試験結果は、[図3]のとおりである。比較例15の初期の血中濃度は、実施例21の結果に比べて約2倍高かった。なお、皮下注射時にやや低い薬物濃度で約10日間徐放効果を示した。
【0104】
比較例21の初期の血中濃度は、実施例21の結果に比べて約5倍高かった。なお、皮下注射時に徐放効果はなかった。
【0105】
結果的に、アニオン性定着剤を含有する実施例21は、アニオン性定着剤およびカチオン性薬理活性物質と部分的にまたは全体的にイオン結合して不要な初期の薬物濃度を効果的に下げ、薬効が発現される有効薬物濃度以上の安定的なPKプロファイル(pharmacokinetic profile)を約28日間以上維持して優れた徐放性を示した。
【0106】
特に、既存の徐放型製剤の欠点として知られている初期の急激な薬物放出現象(initial burst)を改善して徐放目標日数の間に理想的なPKプロファイル(pharmacokinetic profile)を実現したことは、本発明の重要な特徴であるといえる([図3]の結果は、実験に供された6匹のマウスに対する平均値を記載したものであり、2番目のグラフは、後半部のラットの薬物の血中濃度差を確認するためにログ変換して示したものである。)。
【0107】
[実験例4] 生体内(in vivo)におけるエンテカビル徐放性効果の確認
【0108】
次のような実験によって、生体内(in vivo)における本発明の組成物の薬物放出挙動を確認した。
【0109】
エンテカビルの投与重量が5.6mg/kg(ラット容量であり、約7日に相当する量)となるように使い捨て用注射器を用いて実施例24および比較例18の組成物を平均300gの9週齢のSDラット(雄性)6匹の背に皮下注射した。一般注射剤のPKプロファイル(pharmacokinetic profile)の比較のために、比較例22の組成物をエンテカビルの投与重量が0.2mg/kg(ラット容量であり、約1日に相当する量)となるように同様の方法で投与した。
【0110】
SDラットの血漿サンプルにおけるエンテカビルの濃度のPKプロファイル(pharmacokinetic profile)をLC−MS/MSを用いて7日間分析した。
【0111】
SDラットに対するPK試験結果は、[図4]のとおりである。比較例18の初期の血中濃度は、実施例24の結果に比べて約1.5倍高かった。なお、皮下注射時に約3日間徐放効果を示した。
【0112】
比較例22の初期の血中濃度は、実施例24の結果に比べて約3倍高かった。なお、皮下注射時に徐放効果はなかった。
【0113】
結果的に、アニオン性定着剤を含有する実施例24は、アニオン性定着剤およびカチオン性薬理活性物質と部分的にまたは全体的にイオン結合して不要な初期の薬物濃度を効果的に下げ、薬効が発現される有効薬物濃度以上の安定的なPKプロファイル(pharmacokinetic profile)を約7日間以上維持して優れた徐放性を示した([図4]の結果は、実験に供された6匹のマウスに対する平均値を記載したものであり、2番目のグラフは、後半部のラットの薬物の血中濃度差を確認するためにログ変換して示したものである。)。
【0114】
[実験例5]水性流体上における液晶(liauid crystal)の確認
【0115】
次のような実験によって、本発明の組成物が水性流体上で液晶(liquid crystal)が形成されることを確認した。液相の実施例13、比較例1の組成物を注射器に充填して、2gのPBS(pH7.4)に注射し、その結果は[図5]のとおりである。
【0116】
実施例13および比較例1は、注射前の水性流体の不在下で脂質液相として存在し、注射後には水性流体上で同様に液晶を形成した。よって、本発明の徐放性を強化させるためのアニオン性定着剤は、液晶の形成に影響を及ぼさない。
【0117】
実施例13および比較例1は、水性流体の不在下で液相として存在し且つ水性流体上である体内では優れた徐放性効果を示す液晶を速やかに形成するので、徐放性医薬品製剤に活用可能である。
【0118】
このような液晶の内部にはメビウスの帯のようにナノサイズ(20nm以下)直径の数多くの不連続な水路(water channel)が存在し、これらの水路は脂質層で取り囲まれた形態を取っている。よって、特定の脂質組成物が液晶を形成して半固形の性状を持つと、薬物が内部から放出されるためには数多くの水層と脂質層を通過しなければならないから、優れた徐放効果を示す。
図1
図2
図3
図4
図5