【課題を解決するための手段】
【0005】
副鼻腔アクセス移植装置は、この副鼻腔アクセス移植装置の内部通路を通して副鼻腔への流体のアクセスを得るためにヒトに移植されるように構成される。この副鼻腔アクセス移植装置は、副鼻腔の医学的処置および治療の実施において重要な可能性を有するが、そのような可能性はまだ実現されていない。移植装置を好適にアンカー固定し、患者にとって快適であり、移植後の移植装置が耐久性を備え、医療処置を効果的に実施することができる、容易且つ効果的な移植を促進する移植装置およびこれに伴う処置が継続的に要求されている。本開示の様々な態様は、移植される移植装置を通した移植処置および治療のための副鼻腔アクセス移植装置、器具、および方法、並びに副鼻腔アクセス移植装置を含むキットに関する。簡潔に述べるために、副鼻腔アクセス移植装置は通常単に移植装置と呼ぶ。
【0006】
本開示の第1の態様は、涙器と副鼻腔との間に形成されるフィステルを通して涙器を副鼻腔に流体接続するための、ヒトにおける移植に有用な移植装置を含む。
移植装置が、移植用のフィステルに挿入される導管に沿って突出領域および窪み領域を含むアンカー固定面を含む場合、移植装置が移植後により良好に保持されることが分かっている。アンカー固定は、フィステルに配置される突出領域によって形成される最大外径が移植装置の導管を受承するために形成されるフィステルの径よりも大きい場合に、増強される。これにより、フィステルに導管が嵌入し、アンカー固定面の窪み領域内に組織が強制的に移動される。しかしながら、比較的柔軟なプラスチック材料で形成されるそのような移植用導管は例えば蛇腹状に束ねられるため、移植のためにフィステル内に導管を挿入することは困難である。移植装置の導管の近位部により厚みのある導管壁を含むことにより、フィステルに最初に挿入される遠位部に含む場合よりも、導管の挿入の容易さが相当改善されることが分かっている。付加的に、導管の近位部のより厚みのある導管壁により、移植装置の近位端に隣接する導管の付加的な機械的耐久性が得られ、また、移植処置時や、移植後の医療処置および他の処置の実施時に使用される移植装置と器具との間に生じる機械的相互作用による導管の近位部への機械的な損傷の可能性が低減される。
【0007】
第1の態様の移植装置は、装置の第1の長手方向端部における近位端と、第1の長手方向端部に対して長手方向の反対側の、装置の第2の長手方向端部における遠位端と、近位端と遠位端との間に配置される導管と、導管を通した内部通路と、2ミリメートル乃至50ミリメートルの範囲における、近位端と遠位端との間の移植装置に長手方向に沿った、移植装置の長さと、0.25ミリメートル乃至5ミリメートルの範囲の、長さを横断する、内部通路の幅とを備え、導管は、第1の長手方向部分、および第1の長手方向部分に対して遠位端に向かって配置される第2の長手方向部分を含み、導管の第1の長手方向部分は、内部通路に隣接して最小壁厚(第1の最小壁厚)を有し、導管の第2の長手方向部分は、内部通路に隣接して第1の最小壁厚より小さな最小壁厚(第2の最小壁厚)を有し、移植装置は、涙器を副鼻腔に流体接続するべく移植されるように構成され、これにより、移植時に、近位端は涙器に配置され、遠位端は副鼻腔に配置され、導管は、フィステルを通して配置され、導管の第1の長手方向部分および第2の長手方向部分の各々の少なくとも一部分がフィステル内に配置され、導管の第2の長手方向部分の少なくとも一部分は副鼻腔内に配置される。
【0008】
多くの特徴および付加的な特徴は本開示の第1の態様に適用可能である。これらの特徴および付加的な特徴は、本開示の第1の態様や任意の他の態様の主題の範囲内で個別に、あるいは任意の組み合わせにて使用される。従って、後述する特徴の各々は、任意の他の特徴、あるいは本開示の第1の態様や任意の他の態様の特徴の組み合わせとともに使用されるが、組み合わせた使用が要求されるものではない。
【0009】
導管の第1の長手方向部分は、一様な壁厚を有しても、有さなくてもよい。導管の第1の長手方向部分は、円滑な外側表面を有する。導管の第1の長手方向部分の長さは、少なくとも3ミリメートル、少なくとも4ミリメートル、少なくとも5ミリメートル、少なくとも8ミリメートル、あるいは少なくとも10ミリメートルである。導管の第1の長手方向部分の長さは、通常20ミリメートル以下、15ミリメートル以下、12ミリメートル以下、あるいは10ミリメートル以下である。
【0010】
第1の最小壁厚は、少なくとも0.25ミリメートル、少なくとも0.3ミリメートル、少なくとも0.35ミリメートル、あるいは少なくとも0.4ミリメートルである。第1の最小壁厚は、通常0.75ミリメートル以下、0.6ミリメートル以下、0.55ミリメートル以下、0.5ミリメートル以下、あるいは0.45ミリメートル以下である。導管の第1の長手方向部分の壁厚は、略同じであり、第1の長手方向部分の所定の部分あるいは全長にわたって第1の最小壁厚に等しい。
【0011】
導管の第2の長手方向部分の長さは、少なくとも3ミリメートル、少なくとも4ミリメートル、少なくとも5ミリメートル、少なくとも8ミリメートル、あるいは少なくとも10ミリメートルである。導管の第2の長手方向部分の長さは、通常30ミリメートル以下、25ミリメートル以下、20ミリメートル以下、15ミリメートル以下、12ミリメートル以下、あるいは10ミリメートル以下である。
【0012】
第2の最小壁厚は、0.6ミリメートル以下、0.5ミリメートル以下、0.45ミリメートル以下、0.4ミリメートル以下、0.35ミリメートル以下、0.3ミリメートル以下、0.25ミリメートル以下、あるいは0.2ミリメートル以下である。第2の最小壁厚は、通常少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.15ミリメートル、あるいは少なくとも0.2ミリメートルである。導管の第2の長手方向部分の壁厚は、導管の第2の長手方向部分の所定の一部分あるいは複数の部分にわたって略同じである。導管の第2の長手方向部分は、突出領域および窪み領域を含むアンカー固定面を含む外側部分を有する。窪み領域に対応する位置における壁厚は、突出領域に対応する位置における壁厚よりも小さい。第2の最小壁厚は、この1つ以上の窪み領域に対応する1つ以上の位置に生じる。
【0013】
第1の最小壁厚は、第2の最小壁厚よりも少なくとも0.05ミリメートル、少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.15ミリメートル、あるいは少なくとも0.175ミリメートル大きい。第1の最小壁厚は、第2の最小壁厚よりも0.3ミリメートル以下、0.25ミリメートル以下、あるいは0.2ミリメートル以下だけ大きい。
【0014】
導管の第1の長手方向部分は、導管の第2の長手方向部分の最大の外側幅(第2の最大の外側幅)よりも小さい最大の外側幅(第1の最大の外側幅)を有する。第2の最大の外側幅は、第1の最大の外側幅よりも少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.25ミリメートル、少なくとも0.3ミリメートル、少なくとも0.35ミリメートル、少なくとも0.4ミリメートル、あるいは少なくとも0.5ミリメートル大きい。第2の最大の外側幅は、第1の最大の外側幅よりも通常1ミリメートル以下、0.75ミリメートル以下、0.5ミリメートル以下、あるいは0.4ミリメートル以下だけ大きい。第1の最大の外側幅は、少なくとも1.25ミリメートル、少なくとも1.5ミリメートル、少なくとも1.75ミリメートル、あるいは少なくとも2ミリメートルである。第1の最大の外側幅は、通常3ミリメートル以下、2.5ミリメートル以下、2.25ミリメートル以下、あるいは2ミリメートル以下である。第2の最大の外側幅は、少なくとも1.5ミリメートル、少なくとも1.6ミリメートル、少なくとも1.75ミリメートル、少なくとも2ミリメートル、少なくとも2.25ミリメートル、あるいは少なくとも2.5ミリメートルである。第2の最大の外側幅は、5ミリメートル以下、4ミリメートル以下、3ミリメートル以下、2.75ミリメートル以下、2.5ミリメートル以下、あるいは2.25ミリメートル以下である。
【0015】
導管の第1の長手方向部分は最小の外側幅(第1の最小の外側幅)を有し、導管の第2の長手方向部分は、第1の最大の外側幅よりも小さい最小の外側幅(第2の最小の外側幅)を有する。第1の最小の外側幅は第2の最小の外側幅よりも少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.25ミリメートル、少なくとも0.3ミリメートル、少なくとも0.35ミリメートル、少なくとも0.4ミリメートル、あるいは少なくとも0.5ミリメートル大きい。第1の最小の外側幅は、3ミリメートル以下、2.5ミリメートル以下、2.25ミリメートル以下、あるいは2ミリメートル以下である。第1の最小の外側幅は、少なくとも1ミリメートル、少なくとも1.25ミリメートル、少なくとも1.5ミリメートル、少なくとも1.75ミリメートル、あるいは少なくとも2ミリメートルである。導管の第1の長手方向部分は、略一定の断面(例、一定の円形の断面)を有し、この場合に、導管の第1の長手方向部分の最大および最小の外側幅は、同じ(例、一定の円形の断面の径)である。第2の最小の外側幅は、2.5ミリメートル以下、2ミリメートル以下、1.75ミリメートル以下、あるいは1.5ミリメートル以下である。第2の最小の外側幅は、通常少なくとも1ミリメートル、少なくとも1.25ミリメートル、少なくとも1.50ミリメートル、あるいは少なくとも1.75ミリメートルである。第2の長手方向部分は、第2の最小の外側幅が第2の長手方向部分の第2の最大の外側幅よりも小さい表面外形を有する。第2の最小の外側幅は、第2の最小壁厚の位置に一致する。
【0016】
導管は、導管の第1および第2の長手方向部分の長さに沿った所定のあるいはすべての地点において円形の断面を有する。第1の最小壁厚および第2の最小壁厚は、管状の壁部である。
【0017】
導管は、装置が移植される際に導管の外側部分が移植装置をアンカー固定することを支援するアンカー固定面を含むように構成される。アンカー固定面は、突出領域および窪み領域を含む。第2の最小壁厚は、窪み領域の少なくとも1つに対応する位置に生じる。移植装置は、移植時に導管がフィステルを通して配置され、窪み領域の少なくとも一部がフィステル内に配置され、突出領域の少なくとも一部がフィステル内に配置されるとともに移植装置をアンカー固定するためにフィステル内に露出した組織と係合するように構成される。突出領域の突出部の発生部位の構造的および機械的特性は、突出領域のアンカー固定性能に影響する。窪み領域に対する突出領域の高さは、移植装置の移植時のアンカー固定効果に影響する。より大きな高さにより、より大きなアンカー固定効果が得られるが、フィステル内に挿入されるべき移植装置のより大きな幅全体も含まれる。突出領域は、窪み領域に対して少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.25ミリメートル、あるいは少なくとも0.3ミリメートルの高さを有する。突出領域は、窪み領域に対して2ミリメートル以下、1.5ミリメートル以下、1ミリメートル以下、0.75ミリメートル以下、0.5ミリメートル以下、あるいは0.4ミリメートル以下の高さを有する。高さは窪み部の隣接した領域に対する所定の突出部の発生によるものである。突出部の発生部位は、以下アンカー突出部とも呼ぶ。このアンカー突出部は、移植のために導管がフィステルを通して挿入される際に柔軟に変形するように、例えば、挿入時にアンカー突出部がフィステル内に位置される組織に接触する際に、挿入方向とは反対の方向に柔軟に変形するように構成される。挿入後、アンカー突出部は、所定の時間にわたってその原形に復帰し、よりよく移植装置をアンカー固定するために隣接した組織内により深く延びる。アンカー突出部の機械的性質は構成材料によって影響を受ける。突出領域、およびさらに移植装置の他の部分用の好ましい構成材料は、高分子材料である。高分子材料は、好適に医療グレード材料である。いくつかの好ましい高分子材料はシリコーンおよびポリウレタンである。性能を高めるために、例えば、負荷分散および良好なアンカー固定を促進するために、構成材料は、フィステル近傍の組織と能動的に相互に作用する剛性を有するべきである。好ましい1つの構成材料は、上限値が下限値よりも大きい場合、50、60、70、あるいは80の下限値、および100、80、70、あるいは60の上限値を有する範囲のデュロメータ硬さ(ショアA)を有する高分子材料(例、シリコーンまたはポリウレタン)である。好ましい一範囲は、60乃至100のデュロメータ硬さ(ショアA)であり、80乃至100の範囲がより好ましい。いくつかの実施において、高分子材料は、約60、約80、あるいは約100のデュロメータ硬さ(ショアA)を有する。突出領域の突出部の発生部位の機械的性質も突出部の発生部位の外形によって影響されるであろう。突出部の発生部位は、突出部の発生部位の基部から頂部に向かう方向に先端ほど細くなるか狭くなる幅を有し、基部は、導管の内部通路に向かって配置される突出部の発生部位の一部であり、突出部の発生部位の頂部は、導管の内部通路から離間する突出部の発生部位の末端である。導管の幅は長さを横断する。突出部の発生部位は、基部において2ミリメートル以下、1.5ミリメートル以下、1.25ミリメートル以下、あるいは1ミリメートル以下の幅を有する。1つ以上の突出部の発生部位は、基部において少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.3ミリメートル、少なくとも0.5ミリメートル、少なくとも0.75ミリメートル、あるいは少なくとも1ミリメートルの幅を有する。突出部の発生部位は、基部における幅の0.75倍以下、基部における幅の0.5倍以下、基部における幅の0.25倍以下の、頂部に隣接した幅を有する。突出部の発生部位は、基部の幅の0.8倍以下、基部の幅の0.7倍以下、基部の幅の0.6倍以下、あるいは基部の幅の0.5倍以下の、基部と頂部との間の幅を有する。
【0018】
突出領域は、移植装置が移植される際に、フィステルの内部に一致するように位置される単一の突出部の発生部位要素によって設けられてもよい。より好ましい実施において、突出領域は、導管の外側部分上に一定間隔で配置される複数の突出部の発生部位を含む。突出部の発生部位は、1つ以上の方向に、少なくとも0.5ミリメートル、少なくとも0.75ミリメートル、少なくとも1ミリメートル、あるいは少なくとも1.75ミリメートルの中心間の間隙を有する。突出部の発生部位は、2.5ミリメートル以下、2ミリメートル以下、あるいは1.75ミリメートル以下の中心間の間隙を有する。突出部の発生部位は、導管に沿って長手方向に中心間の間隙を有する。突出部の発生部位は、突出部の発生部位の基部幅の少なくとも0.5倍、突出部の発生部位の基部幅の少なくとも等倍、あるいは突出部の発生部位の基部幅の少なくとも2倍である中心間の間隙を有する。突出部の発生部位は、突出部の発生部位の基部幅の5倍以下、突出部の発生部位の基部幅の3倍以下、あるいは突出部の発生部位の基部幅の2倍以下である中心間の間隙を有する。
【0019】
突出領域は、移植装置が移植される際、フィステル内に配置される導管の少なくとも一部を含む、導管の長手方向部分に位置される。突出領域は、移植装置の長さに沿って少なくとも2ミリメートル延びる、移植装置の長さに沿って少なくとも3ミリメートル延びる、移植装置の長さに沿って少なくとも4ミリメートル延びる、移植装置の長さに沿って少なくとも5ミリメートル延びる、あるいは移植装置の長さに沿って少なくとも8ミリメートル延びる、導管の長手方向部分上にある。突出領域を含む導管の長手方向部分は、20ミリメートル以下、15ミリメートル以下、あるいは10ミリメートル以下である。突出領域を含む導管の長手方向部分は、装置の近位端から少なくとも2ミリメートル、装置の近位端から少なくとも3ミリメートル、あるいは装置の近位端から少なくとも4ミリメートルの位置に配置される。移植装置が頭部を有する場合、突出部を含む導管の長手方向部分は、頭部から少なくとも1ミリメートル、少なくとも2ミリメートル、あるいは少なくとも3ミリメートルの位置に配置される。頭部と突出領域の始点との間に相当な距離を設けることにより、頭部は組織の表面でより良好に「浮かぶ」ことができ、これにより、患者の快適さ、および装置の性能が高められる。突出領域は、導管の長手方向部分に沿って配置され、導管の長手方向部分に沿った領域の35%以下、導管の長手方向部分に沿った領域の25%以下、あるいは導管の長手方向部分に沿った領域の20%以下を覆う。突出部の発生部位間に相当な間隙を設けることにより、アンカー固定面によって組織とより係合する。突出部の発生部位のうちのいくつかあるいはすべては導管の第2の長手方向部分上にある。
【0020】
突出領域は少なくとも1つの周方向隆起部を含む。周方向隆起部は、導管の全周の周囲を延びる隆起部を意味する。突出領域は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、あるいは少なくとも5つの周方向隆起部を含む。突出領域は螺旋状の隆起部を含む。この螺旋状の隆起部は、導管の長手方向部分に沿って延びる。突出領域は1つ以上のノブを含む。アンカー固定面は、テクスチャ面を含み、突出領域は、テクスチャ面の突出部を含み、窪み領域は、テクスチャ面の窪み部を含む。
【0021】
移植装置の長さは、フィステルの全長を通して延びるために十分な導管の長さを設けるように、また、フィステルよりも近位側の涙器に、およびフィステルよりも遠位側の副鼻腔に望ましい任意の拡張距離を設けるように選択される。移植装置および/または導管の長さは、上限値が下限値よりも大きい場合、2ミリメートル、3ミリメートル、4ミリメートル、5ミリメートル、8ミリメートル、10ミリメートル、あるいは12ミリメートルの下限値、および50ミリメートル、40ミリメートル、30ミリメートル、25ミリメートル、20ミリメートル、15ミリメートル、あるいは10ミリメートルの上限値を有する範囲にある。移植装置の長さ、および/または導管の長さに関して、フィステルが眼窩と篩骨蜂巣または上顎洞との間にある場合のいくつかの実施における好ましい一範囲は、10ミリメートル乃至30ミリメートルの範囲、より好ましくは、15ミリメートル乃至25ミリメートルの範囲である。移植装置や導管の長さは、移植装置または導管に長手方向に沿った寸法を示し、場合に応じて、移植装置または導管の近位端から遠位端までを示し、また内部通路を通した長手方向軸線に沿う。例えば内部通路が直線的である場合、長さは直線的であり、また、例えば内部通路が直線的でない場合、長さは曲線、あるいは他の所定の形状である。長さを横断して参照すると、ある点で長さの長手方向に対して直角が参照される(例えば長さの線、あるいは長さの湾曲部に対する接線に対する直角)。
【0022】
移植装置は、所望の寸法のフィステル内に嵌入する好適な幅寸法の導管により効果的に設計される。移植装置は、装置の長さを横断する突出領域の最大の範囲によって形成される第1の外側幅を有し、この第1の外側幅は、上限値が下限値よりも大きい場合、0.75ミリメートル、1ミリメートル、1.25ミリメートル、1.5ミリメートル、1.75ミリメートル、あるいは2ミリメートルの下限値、および8ミリメートル、7ミリメートル、6ミリメートル、5ミリメートル、4ミリメートル、3ミリメートル、2ミリメートル、あるいは1.75ミリメートルの上限値を有する範囲内にある。導管は、装置の長さを横断する窪み領域の最小の範囲によって形成される第2の外側幅を有し、この第2の外側幅は、突出領域によって形成される第1の外側幅よりも小さいであろう。窪み領域によって形成される第2の外側幅は、0.2ミリメートル、0.25ミリメートル、0.35ミリメートル、あるいは0.5ミリメートルの下限値を有するとともに、1.5ミリメートル、1ミリメートル、あるいは0.75ミリメートルの上限値を有する範囲内の量だけ突出領域によって形成される外側幅よりも小さい。突出領域の高さは、第1の外側幅と第2の外側幅との間の差の2分の1である。第1の外側幅および第2の外側幅のいずれも各々円の径である。
【0023】
移植装置は、導管の遠位部の導管壁を通して1つ以上の側方開口部を含み、遠位部は、移植装置を通して副鼻腔に至る流体のアクセスを提供するために移植装置が移植される場合に、副鼻腔内に配置されるように構成される導管の一部であるか、導管の一部を含む。側方開口部は、導管を通して内部通路内に開放され、所定の理由により導管の遠位端における内部通路の遠位側開口部が閉塞または制限されたとしても、移植装置の内部通路と副鼻腔との間の連通のための通路を提供する。1つ以上の側方開口部が、導管の第2の長手方向部分の壁部を通して、また、第2の最小壁厚を有する壁部を通して設けられる。1つ以上の側方開口部は、導管のアンカー固定面の1つ以上の窪み領域内(例えば周方向隆起部間)に配置される。導管の第1の長手方向部分よりも導管の第2の長手方向部分の最小壁厚がより肉薄であることにより、導管の第2の長手方向部分、特に、導管の第2の長手方向部分の遠位端の近傍は、その遠位端における、あるいは遠位端近傍における導管の潰れにより制限される傾向にあり、側方開口部850は、副鼻腔への代替的な流体のアクセスを提供する。
【0024】
移植装置は、移植装置の近位端に、導管に隣接する頭部を含む。移植装置は、移植装置が移植される際、頭部が涙器に、また、好ましくは頭部が眼窩に配置されるように構成される。頭部は、移植装置の移植後に移植装置がフィステルを通して副鼻腔に向かって移動しないように効果的に保持する。頭部は、導管に向かって配置されるとともに移植装置が移植される際にフィステルの外側およびフィステルに隣接する組織と係合するように構成される、頭部の一側部のフランジ付き組織係合面を含む。フランジ付き組織係合面は、平坦面である。フランジ付き組織係合面は、組織に対する表面の着座を改善するように、例えば移植後の移植装置のフィステル内での回転を防止するように構成される非平坦面を有する。頭部は、フランジ付き組織係合面の反対側に、導管から離間するように位置されるとともに移植装置が移植される際に、フランジ付き組織係合面と係合する組織から離間するように位置されるフェース面を有する。フェース面は略平坦である。フェース面は移植装置の近位端に配置され、また、内部通路はフェース面に開放される。フェース面とフランジ付き組織係合面との間の分離距離は、0.25ミリメートル、0.5ミリメートル、あるいは0.75ミリメートルの下限値を有するとともに、2ミリメートル、1.5ミリメートル、あるいは1ミリメートルの上限値を有する範囲にある。この分離距離はフランジ付き組織係合面およびフェース面を横断して一定である必要がない。フェース面とフランジ付き組織係合面との間の最大の分離距離は、頭部の深みと呼ばれ、この深みは、フェース面とフランジ付き組織係合面との間の分離距離に関して上述した範囲にある。フランジ付き組織係合面は連続的である必要はなく、複数の個別の表面部分に分割されてもよい。例えば、フランジ付き組織係合面は、内部通路の片側に設けられる第1のフランジ部、および内部通路の第1の側の反対側の第2の側に設けられる第2のフランジ付き表面部を含む。フェース面およびフランジ付き組織係合面の各々は、それぞれの表面の外側縁上の地点間の最大の分離距離を示し、各々は、長さを横断する外側縁上の地点間の最大の分離距離である幅寸法を有する。フェース面およびフランジ付き組織係合面の長さ寸法は、同じであるか異なる。フェース面およびフランジ付き組織係合面の幅寸法は、同じであるか異なる。フェース面およびフランジ付き組織係合面は対応する外側縁を有する。フェース面、フランジ付き組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべての長さ寸法は、上述したように移植装置がアンカー固定面を含む場合、移植装置の長さを横断する突出領域の範囲によって形成される、導管の第1の外側幅よりも大きい。フェース面、組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべての長さ寸法は、1ミリメートル、2ミリメートル、3ミリメートル、4ミリメートル、あるいは5ミリメートルの下限値、および10ミリメートル、8ミリメートル、あるいは7ミリメートルの上限値を有する範囲にある。フェース面、組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべての幅寸法は、0.5ミリメートル、1ミリメートル、1.5ミリメートル、あるいは2ミリメートルの下限値、および5ミリメートル、4ミリメートル、あるいは3ミリメートルの上限値を有する範囲にある。フェース面、フランジ付き組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべての長さ寸法は、上述したように移植装置がアンカー固定面を含む場合、突出領域の範囲によって形成される、導管の上記第1の外側幅よりも少なくとも1ミリメートル、少なくとも2ミリメートル、少なくとも3ミリメートル、あるいは少なくとも4ミリメートル大きい。導管のこの第1の外側幅に対するフェース面、フランジ付き組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべての長さの比は、少なくとも2である。この比は4未満である。フェース面、フランジ付き組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべての幅は、上述したように移植装置がアンカー固定面を含む場合、突出領域の範囲によって形成される導管の上記第1の外側幅よりも(例えば少なくとも0.1mm、あるいは少なくとも0.2mmだけ)大きいか小さい。フェース面、フランジ付き組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべてにおける幅寸法に対する長さ寸法の比は、上限値が下限値より大きいに相違ない場合、1、1.5、2、あるいは2.5の下限値、および5、4、3、あるいは2.5の上限値を有する範囲にある。頭部が涙丘と半月ひだとの間で眼窩に位置する場合、頭部に幅寸法に対してより大きな長さ寸法を有することが、特に好まれる。その理由として、長さ寸法が眼球の隣に縦方向に効果的に整列し、十分なフランジ付き表面領域の形成を補助し、移植装置を近位端上に効果的にアンカー固定するとともに結膜の組織が開口部を覆って移植装置の内部通路内に至ることを防止し、より狭小な幅を補償することが挙げられる。上述したような構成の高分子材料を使用する場合、これは特に効果的である。
【0025】
移植装置を通した内部通路は移植装置の全長に沿って略一様な形状を有してもよいし、あるいは変化する形状を有してもよい。内部通路は、装置の近位端から装置の遠位端に向かって略直線的である。内部通路は、流通可能な断面(装置の長さを横断する)を有し、断面は、移植装置の近位端から遠位端に向かって略一様である。内部通路は略円形の断面を有する。内部通路は略楕円形の断面を有してもよい。導管の幅(内部通路の流通可能な断面を横断する最大の寸法部分)は、0.25ミリメートル、0.5ミリメートル、あるいは0.75ミリメートル、および1ミリメートルの下限値、並びに5ミリメートル、4ミリメートル、3ミリメートル、2ミリメートル、あるいは1.5ミリメートルの上限値を有する範囲にある。
【0026】
移植装置が移植される場合、涙器と副鼻腔とは移植装置の内部通路を通して連通する。導管は移植装置の近位端に隣接してそこから延びる。導管は移植装置の遠位端に隣接してそこに向かって延びる。内部通路は、近位端に開放する第1の端、および遠位端に開放する第2の端を有し、また、移植装置が移植される際、内部通路の第1の端は涙器内に開放され、内部通路の第2の端は副鼻腔内に開放される。
【0027】
移植装置は、導管が、眼窩内の涙器における位置と、前頭洞、篩骨蜂巣、上顎洞、および蝶形骨洞から構成される一群から選択される副鼻腔との間のフィステルを通過するように移植用に構成される。前頭洞、上顎洞、あるいは篩骨蜂巣が好ましく、篩骨蜂巣、あるいは上顎洞がより好ましく、篩骨蜂巣が特に好ましい。移植装置は、導管が鼻涙管内の涙器における位置と、篩骨蜂巣および上顎洞から構成される一群から選択される副鼻腔との間を通過するように、移植用に構成される。鼻涙管内の位置は涙嚢内にある。
【0028】
移植装置は、涙器から副鼻腔への通路を設けるように涙器と副鼻腔との間に形成されるフィステルにて移植可能な移植装置として主に構成され、この移植装置に主に言及して開示される。さらに、移植装置は、例えば涙の流体のドレナージュを高めるために涙器(例えば涙丘と半月ひだとの間の眼窩の中間部の隅部からの)と鼻腔との間に形成されるフィステルにも移植可能であり、また、鼻腔に向けられたそのような適用は、本開示の異なる態様の範囲内にある。
【0029】
本開示の第2の態様は、涙器と連通するように人工の流体通路を設けるための移植装置の移植用要素を備えた移植キットを含む。第2の態様のキットは、副鼻腔アクセス移植装置、および移植装置の移植や、移植装置による医療処置や処理の実施に関して有用な少なくとも1つの付加的な要素を含む。
【0030】
多くの特徴および付加的な特徴は、本開示の第2の態様に適用可能である。これらの特徴および付加的な特徴は、本開示の第2の態様や任意の態様の主題の範囲内で個別に、あるいは任意の組み合わせにて使用される。従って、次の特徴の各々は、任意の他の特徴の範囲内、あるいは本開示の第1の態様、第2の態様や、任意の他の態様の特徴の組み合わせの範囲内において使用されるが、そのような使用が要求されるものではない。
【0031】
移植装置は、移植装置の対向する長手方向端部における近位端および遠位端と、近位端と遠位端との間に位置される導管と、導管を通して延びる内部通路と、2ミリメートル乃至50ミリメートルの範囲における、移植装置の近位端と遠位端との間の長手方向長さと、0.25ミリメートル乃至5ミリメートルの範囲における、長さを横断する内部通路の幅とを備え、移植装置は、移植装置の近位端が涙器に位置され、導管の少なくとも一部が涙器へのフィステル開口部に位置されるように移植されるように構成される。移植装置は本開示の第1の態様の移植装置であるか、あるいは例えば移植装置が第1の態様によるものでなくても、本開示の第1の態様において開示される任意の特徴あるいは特徴の組み合わせを有する。
【0032】
キットは、ここに開示される装置、器具、機器、製品、要素、あるいは治療混合物のうちの任意のもの、あるいは任意の組み合わせを含む。
キットは、副鼻腔への流体のアクセスを提供するための移植装置の移植後に移植装置を通して副鼻腔に輸送可能な流体の治療混合物を含む。この流体の治療混合物は、例えば、副鼻腔炎あるいは副鼻腔の他の症状について処置するために副鼻腔への輸送用の流体ディスペンサの操作により移植装置の内部通路に案内されるのに好適である。治療混合物は水性の灌水液である。治療混合物は薬物治療混合物であってもよい。薬物治療混合物は、副鼻腔炎あるいは副鼻腔の他の症状の処置のために少なくとも1つの薬を含む。薬物治療混合物は、抗生物質、ステロイド、抗ウイルス薬、抗ヒスタミン剤、抗真菌薬、肥満細胞安定化薬、粘液溶解薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、血管収縮薬、および免疫抑制薬のうちの1つ以上を含む。いくつかの例による抗生物質は、サルファ剤、あるいはスルホンアミド、例えば、スルファセタミド(例えばOCUSOLにおける) およびスルフィソクサゾール(例えばGANTRISIN(登録商標)における)のような薬;例えば、アジスロマイシン(例えばAZACITE(登録商標)における)およびエリスロマイシン(例えばERYPED(登録商標)における)のようなマクロライド薬;例えばトブラマイシン(例えばTOBPvEX(登録商標)における)およびゲンタマイシン(例えばGENOPTIC(登録商標)における)のようなアミノグリコシド薬;例えば、シプロフロキサシン(例えばシロクサン(登録商標)における)、ベシフロキサシン(例えばベシバンス(登録商標)における)、およびモキシフロキサシン(例えばVI GAM OX(登録商標)における)のようなフルオロキノロン薬;例えば、オキシテトラサイクリン(例えばCODEXにおける)のようなテトラサイクリン薬;並びに例えば、バシトラシン、ネオマイシン、およびポリミクシンB(例えばOCUSPORE Bにおける)の組み合わせおよびグラミシジン、ネオマイシン、およびポリミクシンB(例えばNEOCIN PGにおける)の組み合わせを含むような抗生物質の組み合わせを含む。いくつかの例による抗ウイルス薬は、ガンシクロビル(例えばZIRGAN(登録商標)における)およびトリフルリジン (例えばヴィロプティック(登録商標)における)を含む。いくつかの例によるステロイドは、ロテプレドノール(例えばロテマックス(登録商標)における)およびプレドニゾロン(例えばプレド・フォルテ(登録商標)における)を含む。抗ヒスタミン剤のいくつかの例は、ケトチフェン(例えばALA WAY(登録商標)における)、オロパタジン(例えばパタデイ(登録商標)における)、およびエピナスチン(例えばエレスタット(登録商標)における)を含む。肥満細胞安定化薬のいくつかの例は、ネドクロミルナトリウム(例えばALOCRIL(登録商標)における)およびロドキサミド(例えばALOMIDE(登録商標)における)を含む。抗真菌薬のいくつかの例は、ナタマイシン (例えばNATACYN(登録商標)における)およびeuconzolを含む。粘液溶解薬のいくつかの例は、N−アセチルシステイン(例えばPARVOLEXにおける)を含む。NSAIDの材料のいくつかの例は、ネパフェナク(例、ネバナック(登録商標)における)およびブロムフェナク(例えばBROMDAY(登録商標)における)を含む。血管収縮薬のいくつかの例は、ナファゾリン(例えばナフコンA(NAPHCON A)(登録商標)における)、およびテトラヒドロゾリン(例えばバイシン(登録商標)における)を含む。免疫抑制薬のいくつかの例は、シクロスポリン(例、レスタシス(登録商標)における)を含む。上記材料はすべてその任意の薬学的に許容される塩類を含む。
【0033】
流体の治療混合物は、キットにおいて提供されるような流体の容器内に配置される。流体の容器は、任意の所望の量の治療混合物を含む。この量は、0.1、0.25、0.5、0.75、あるいは1ミリリットルの下限値、および5、3、あるいは2ミリリットルの上限値を有する範囲にある。この範囲は、流体の容器内に含まれる治療混合物の合計であるか、流体の容器から輸送可能な、流体の容器内に含まれる治療混合物の量であり、これを輸送可能量と呼ぶ。輸送可能量は、流体ディスペンサから効果的に輸送可能な、流体の容器内の流体の量を示す。輸送量は、流体の容器内や流体ディスペンサ内に保持される残りの治療混合物により、流体の容器内に含まれる治療混合物の総量未満である。例えば、残りの治療混合物は、流体の容器と、遠位側の流体放出先端(例、分配針に残る流体)との間において、上記流体ディスペンサの内壁面(例、例えば注射器バレルの内壁面のような流体容器の内壁面)に付着するもの、あるいは上記流体ディスペンサの流体案内部に残るものである。
【0034】
治療混合物を含む流体の容器は、流体ディスペンサの一部である。流体ディスペンサは、移植装置の移植後に流体の容器から内部通路内に、あるいは内部通路を通して直接副鼻腔内に治療混合物の少なくとも一部を分配するように操作可能である。流体の容器は注射器によってキットにおいて提供され、これは、上記流体ディスペンサであるか上記流体ディスペンサの一部である。流体の容器は、注射器バレルの少なくとも一部を含む。流体ディスペンサは、流体の容器における治療混合物と連通する流体放出部材を含む。この流体放出部材は移植装置の内部通路に挿入可能である。また、流体ディスペンサは、移植装置が、流体放出部材の遠位端から移植装置の内部通路内に、あるいは遠位側の内部通路よりも遠位側から直接副鼻腔内に治療混合物の少なくとも一部を放出するように移植される場合に、流体放出装置を移植装置の内部通路に挿入する際に、操作可能である。例えば、流体放出部材の遠位側の流体放出先端は内部通路に配置され、治療混合物は副鼻腔に流れ込むように内部通路に分配されるか、あるいは、先端が内部通路の遠位端よりも遠位側の副鼻腔に位置されるまで流体放出部材が内部通路に挿入され、治療混合物が副鼻腔内に直接分配される。流体放出部材はルアー接続等により注射器に接続される。流体放出部材は、内部通路内に挿入されるように構成される挿入部を有し、この挿入部は、1.75ミリメートル以下、1.5ミリメートル以下、1.25ミリメートル以下、1ミリメートル以下、あるいは0.9ミリメートル以下の最大の外側幅(例、径)を有する。流体放出部材は、鈍い先端を有する中空の針(例えば鈍い先端の皮下注射針)であるか、これを含む。流体放出部材は、取り払い可能な保護キャップにより覆われる。例えば、キットは、使用前に針を保護する保護キャップにより覆われる皮下注射針が取り付けられるとともに治療混合物を含む、予め充填した注射器を含む。キットは、複数の異なる治療混合物を含み、また、各々異なる治療混合物を含む複数の流体の容器(例、複数の注射器)を含む。
【0035】
涙器と副鼻腔との間に流体の通路を設けるように移植装置の移植用のフィステルを形成することは、副鼻腔の穴が位置する骨の壁部を通す穴を形成することを含む。ここに開示されるように、移植装置の移植のための所望の寸法にフィステルを形成することに必要なため、この穴は探り針や他の中実な穿刺器具によって形成され、続いて拡幅される。例えば、最初の穴を形成するための最初の穿刺後に、穴は、所望の寸法となるまで穴を次第に拡大させるべく拡張器を使用して拡張される。しかしながら、上記方法にて移植用のフィステルを形成する場合、骨が穴近傍で割れて粉砕される傾向にあることが分かっている。これは医学的課題を示すものではないが、骨が穴の近傍でより完全な状態に保持される場合に、骨が移植装置を適所に固定することを補助するように機械的に支持するとともに移植後に移植装置がフィステルから抜け出ることを防止することが分かっている。フィステルの近傍の骨の完全性は、穴の貫通および拡張よりむしろフィステル用に穴を切断することによって改善される。骨を通すよう押圧するのではなく骨を切断して通すことによって、骨は、穴の近傍においてより完全な状態に保持され、移植後に移植装置をフィステル内の適所に保持することを支援するように機械的により支持する。第2の態様の移植キットは、フィステル用の穴を切断するとともに移植装置を移植することに有用な器具を含む。
【0036】
キットは、フィステルを通して移植装置が移植処置の間に移植されるように、フィステルを形成するべく組織を切り取るための少なくとも1つの切断器具を含む。この切断器具は、フィステルを通して移植装置を移植するためにフィステルを所定の寸法に形成するべく組織を切断するように構成される切削部材の遠位端に中空の切断先端を有する中空部材を含む。この切削部材は、移植中にフィステルを通して配置されるように構成される移植装置の導管の最大の外側幅よりも小さい切断幅を有する。この切断器具はドリルである。
【0037】
キットは、切断器具の内部通路を通して配置可能な使い捨てのガイド部材によって案内可能な切断器具を含む。切断器具は、フィステルを通して移植装置を移植するためにフィステルを所定の寸法に形成するべく組織を切断するように構成される切削部材の遠位端に中空の切断先端を有する中空の切削部材を含む。切断器具の中空の切断先端は、ガイド部材を収容するように予め形成された小径の準備された切断部を拡大するべくより大きな径を形成するように構成されるか、あるいは切断器具がより小型の最初のフィステルを予め形成することなく最終的な所望の切断部を形成するように構成される。切削部材は、ガイド部材と摺動自在に係合するように構成され、ガイド部材は、切削部材の通路を通して配置され、ガイド部材の遠位端は、切削部材の遠位端よりも遠位側に配置される。ガイド部材の遠位端は、切削部材がガイド部材を覆うように摺動可能となるようにフィステル内に、あるいはフィステルよりも遠位側に配置されるように構成される。これにより、例えば、より小さな最初のフィステルが既に形成されている場合に、移植組織装置を移植するためにフィステルを所定の寸法に形成するべく組織を切断するように切削部材の切断先端が案内され、あるいは切削部材が後退されるとともにフィステルの位置に別の1つ以上の器具を案内することに使用するべくガイド部材が適所に残される。器具は、例えば、移植用の所望の寸法にフィステルを切断して形成した後に移植のためにフィステル内の適所に移植装置を挿入するための移植器具である。
【0038】
切断器具の切削部材は、中空の針あるいは切断カニューレであるか、これらを含む。切削部材は、移植装置の導管の最大の外側幅よりも小さい切断幅、あるいは円形の切断の場合は径を有する。移植装置の導管の最大の外側幅は、導管上にアンカー固定面の一部を形成する1つ以上の突出領域に生じてもよい。切断幅は、移植装置の導管の最大の外側幅未満であり、少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.25ミリメートル、少なくとも0.3ミリメートル、少なくとも0.35ミリメートル、あるいは少なくとも0.4ミリメートルである。切断幅は、導管の最大の外側幅未満であり、1ミリメートル以下、0.75ミリメートル以下、0.6ミリメートル以下、あるいは0.5ミリメートル以下である。切断幅は、5ミリメートル、4ミリメートル、3.5ミリメートル、3ミリメートル、2.5ミリメートル、2.25ミリメートル、2ミリメートル、1.9ミリメートル、あるいは1.8ミリメートル以下である。切断幅は、少なくとも1ミリメートル、1.5ミリメートル、1.75ミリメートル、あるいは1.85ミリメートルである。
【0039】
キットは、近位端と遠位端とを備える移植物ガイド器具を含み、移植物ガイド器具は、移植物ガイド器具の近位端から遠位端に向かう方向に長手方向に延びるガイド部材を含む。ガイド部材および内部通路は、ガイド部材に移植装置を取り付けるように構成され、ガイド部材は、移植装置の内部通路を通して配置され、ガイド部材の遠位端は、移植装置の遠位端よりも遠位側に配置され、ガイド部材の遠位端は、フィステル内またはフィステルよりも遠位側に配置されるように構成され、これにより、ガイド部材に取り付けられた移植装置は、ガイド部材の遠位端に向かってガイド部材上を摺動自在であり、移植装置を移植するためにフィステル内に案内する。ガイド部材は、フィステルの部位に器具を案内するための器具(例えば切断器具あるいは輸送器具)により通路を通して挿入されるように構成される。
【0040】
ガイド部材の一例において、ガイド部材は、ガイドワイヤあるいは小径の針(例、20ゲージのクモ膜下穿刺針)であり、切削部材は、ガイド部材が挿入されるより大きなゲージの針(例えば12乃至14ゲージのクモ膜下穿刺針)であり、移植装置は、ガイド部材が挿入される内部通路(例、1mm)を有する。
【0041】
ガイド部材は、ガイド部材によって案内される移植装置あるいは器具が、移植のためにガイド部材に沿って摺動自在に案内されるような任意の好適な寸法に形成される部材である。ガイド部材は、剛性、可撓性、あるいは順応性を備える材料である。ガイド部材は、中実の部材、例えば中実のガイドワイヤあるいは探り針である。ガイド部材は中空の部材であり、例えば、ガイド部材は針あるいはカニューレであるかこれらを含む。ガイド部材は、その遠位端に、フィステルの少なくとも一部を形成するべく組織を切断するように構成される切削刃を含む。切削刃を備えるこの中空のガイド部材は、針または切断カニューレである。切削刃を備えるこの中空のガイド部材は、移植装置の移植のために所望の寸法となるようにより大きく続いて形成される最初の穴を切断することに有用である。
【0042】
キットは、移植処置の間に移植装置を搬送するために、移植器具とも呼ばれる輸送器具を含む。この輸送器具は、先端を備える輸送部材を含み、輸送部材は、眼窩の涙器と副鼻腔との間のフィステルを通して配置されるように構成され、先端は、副鼻腔に配置される。輸送器具は、輸送部材に接続される、手操作可能な取っ手を含む。移植装置は、移植装置の移植のために輸送部材に取り付け可能であり、取り付けられた移植装置は、取っ手と先端との間に配置され、輸送部材は内部通路を通して配置され、移植装置の近位端は、取っ手に向かって配置され、移植装置の遠位端は、部材の先端に向かって配置される。移植装置が移植のために取り付けられる場合、輸送部材および輸送器具は、移植処置の間に移植装置の移植のために移植装置から取り外し可能であり、副鼻腔への流体のアクセスを提供する。移植装置が移植物配置用の輸送部材に取り付けられる場合の、移植装置の内部通路における輸送部材の空隙適合部は、確実な適合、および移植中の移植装置の側面の変形の防止の確実な支援のために小さい。例えば、この空隙適合部は、0.5ミリメートル未満、0.4ミリメートル未満、0.3ミリメートル未満、0.2ミリメートル未満、あるいは0.1ミリメートル未満である。移植装置の内部通路における輸送部材が、これらの間に気密な適合を有することにより、取り付けられた装置を備えた輸送器具が前進されて、移植のためにフィステル内に輸送部材および取り付けられた移植装置を前進させる(押圧付勢する)際に、移植処置時に移植装置が蛇腹状に束ねられることを防止することが支援される。
【0043】
キットの任意の部分および全ての部分は、共通の箱、袋、あるいは他の共通の包囲物のような共通の包装内に好都合に含まれる。キットのうちのいくつかあるいはすべての要素は、殺菌され、例えば密封された袋や包装物のような密封された包囲物内にシールされる。
【0044】
本開示の第3の態様は、副鼻腔に対する医学的処置を行い、かつ/または治療混合物を投薬し、あるいは副鼻腔に向けられた移植された移植装置を通して医療手術を行う方法を含む。
【0045】
多くの特徴および付加的な特徴は、本開示の第3の態様に適用可能である。これらの特徴および付加的な特徴は、本開示の第3の態様や任意の態様の主題の範囲内で個別に、あるいは任意の組み合わせにて使用される。従って、次の特徴の各々は、任意の他の特徴の範囲内において、あるいは本開示の第1の態様、第2の態様、第3の態様、あるいは任意の他の態様の特徴の組み合わせの範囲内において使用されるが、そのような使用が要求されるものではない。
【0046】
第3の態様の方法の医学的処置は、涙器と連通する人工の流体の通路を設けるべく移植装置を移植する工程を含む。第3の態様の方法は、移植装置の移植のためのフィステルを形成するべく組織を切り取る工程を含む。これは、涙器と副鼻腔との間に人工的な流体の通路を設けるように構成された移植装置の場合のように、フィステルが骨を通過する場合、特に効果的である。組織を切り取ることにより、移植装置の導管の少なくとも一部を受承するための寸法のフィステルが形成される。フィステルは、涙器への近位端開口部を有する。移植装置の導管の少なくとも一部がフィステル内にあるように、移植装置が移植される。組織の切り取り後に、方法は涙器と副鼻腔とを流体接続するべく移植装置を移植する工程を含む。移植する工程は、輸送器具を使用して移植装置を移植位置に前進させる工程を含む。移植する工程は、輸送器具が移植位置に移植装置を押圧付勢するように輸送器具を前進させる工程を含む。移植する工程は、移植位置にガイド部材に沿って、あるいは輸送器具の輸送部材に沿って移植装置を摺動させる工程を含む。移植する工程は、移植位置に位置される移植装置から輸送器具を取り外す工程を含む。
【0047】
一変形において、第3の態様の方法は、涙器への近位端開口部および副鼻腔への遠位端開口部を有するフィステルを形成するために組織を切り取る工程と、涙器と副鼻腔とを流体接続させるべく移植装置を移植する工程とを含み、移植する工程は、移植装置が移植位置に至り、導管の遠位端が副鼻腔内に位置されるまで、移植装置が取り付けられる輸送器具を前進させ、導管をフィステルの近位端からフィステル内に押圧付勢する、輸送器具を前進させる工程と、移植位置に位置された移植装置から輸送器具を取り外す工程とを含む。
【0048】
別の変形において、第3の態様の方法は、涙器への近位端開口部を有し、かつ移植装置の導管の少なくとも一部を受承する寸法のフィステルを形成するべく組織を切り取る工程と、フィステル内またはフィステルよりも遠位側に配置される遠位端を有するガイド部材に沿って、移植装置をフィステルに向かって摺動させる工程と、移植装置の導管の少なくとも一部をフィステル内に配置する工程とを含む。
【0049】
第3の態様の方法の方法処置は、涙器を副鼻腔に流体接続する移植装置を通して副鼻腔に治療混合物を投与する工程であるか、工程を含む。
第3の態様の方法、あるいはその一部は、本開示の第2の態様のキットあるいはそのようなキットの部分を使用して行われる。方法が組織を切り取る工程を含む場合、組織を切り取る工程は、そのようなキットの切断器具を使用して組織を切断する工程を含む。切り取り工程やその一部の間に、切削部材は、ガイド部材による切断のために所定の位置を覆うように位置されるか、位置されず、また、所定の位置に案内されるか、案内されない。例えば、より小型の予備的な穴を形成するべく予備的な切断が行われ、ガイド部材は、遠位端が予備的な穴内に、あるいは予備的な穴よりも遠位側に位置されるように配置され、切削部材は、ガイド部材を覆うように摺動し、組織を切断し、移植装置を移植するための所望の寸法のより大きなフィステルを形成する。別例として、単一の最終的な切断が行われ、ガイド部材の支援を伴うことなく、かつ予備的な穴を形成することなく移植のための最終的な所望の寸法の穴が形成されてもよい。この点において、眼窩に面する節骨の上の肩部は、篩骨蜂巣の切断を配向するための好都合な目標であると認識されている。肩部はウィロビーの肩部と命名されている。方法が副鼻腔に治療混合物を投与する工程を含む場合、治療混合物は、第2の態様のキットに関して上述したとおりである。
【0050】
組織を切り取る工程は、ドリルにより組織を通してドリリングすることによって組織を取り払うことによって実施され、このドリルは第2の態様のキットにおいて提供される。
第3の態様における(あるいは第2の態様における)移植装置は、移植装置の対向する長手方向端部における近位端および遠位端と、近位端と遠位端との間に位置される導管と、移植装置の近位端と遠位端との間を導管を通して延びるとともに、移植装置の近位端における第1の端開口部と、移植装置の遠位端における第2の端開口部とを有する第1の内部通路と、2ミリメートル乃至50ミリメートルの範囲における、移植装置の近位端と遠位端との間の長手方向長さと、0.25ミリメートル乃至5ミリメートルの範囲における、長さを横断する第1の内部通路の幅とを備え、移植装置は、移植装置の近位端が涙器に配置されるように移植されるように構成される。
【0051】
第3の態様における移植装置は本開示の第1の態様における移植装置であるか、あるいは例えば移植装置が第1の態様によるものでなくても、本開示の第1の態様に関して開示される任意の1つ以上の特徴を含む。移植装置は第2の態様に関して開示されるものであるか、あるいは第2の態様に関して開示される任意の1つ以上の特徴を有する。
【0052】
これらおよび他の態様、並びにその特徴は、さらに後述されるか、図面および下記の明細書から明らかになるであろう。