特許第6246835号(P6246835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6246835副鼻腔アクセス移植装置および関連するツール、方法、並びにキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246835
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】副鼻腔アクセス移植装置および関連するツール、方法、並びにキット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/24 20060101AFI20171204BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A61B17/24
   A61F9/007 140
【請求項の数】12
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-555352(P2015-555352)
(86)(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公表番号】特表2016-504163(P2016-504163A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】US2014012995
(87)【国際公開番号】WO2014116980
(87)【国際公開日】20140731
【審査請求日】2017年1月23日
(31)【優先権主張番号】61/757,046
(32)【優先日】2013年1月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/891,250
(32)【優先日】2013年10月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513082236
【氏名又は名称】シノプシス サージカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SINOPSYS SURGICAL,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウィロビー、ブライアン ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】オリバー、クリストファー リー
(72)【発明者】
【氏名】ロス、ハリー
(72)【発明者】
【氏名】チミノ、ウィリアム ダブリュ.
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0089071(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0276738(US,A1)
【文献】 特表2012−518494(JP,A)
【文献】 特表2010−504784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/24
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
涙器と副鼻腔との間に形成されるフィステルを通して副鼻腔に涙器を流体接続させる、ヒトへの移植に有用な副鼻腔アクセス移植装置であって、
前記移植装置の第1の長手方向端部における近位端と、
前記第1の長手方向端部に対して長手方向反対側に位置される、前記移植装置の第2の長手方向端部における遠位端と、
前記近位端と前記遠位端との間の導管と、
同導管を通した内部通路とを備え、
前記近位端と前記遠位端との間における前記移植装置の長手方向に沿った長さは、ミリメートル乃至50ミリメートルの範囲にあり、
前記長さを横断する前記内部通路の幅は、0.25ミリメートル乃至5ミリメートルの範囲にあり、
前記導管は、少なくとも3ミリメートルの長さを有する第1の長手方向部分、および少なくとも3ミリメートルの長さを有するとともに前記第1の長手方向部分に対して前記遠位端に向かうように配置される第2の長手方向部分を含み、
前記導管の前記第1の長手方向部分は、前記内部通路に隣接する第1の最小壁厚を有し、
前記導管の前記第2の長手方向部分は、前記内部通路に隣接するとともに前記第1の最小壁厚より小さい第2の最小壁厚を有し、前記第1の最小壁厚は、前記第2の最小壁厚よりも少なくとも0.05ミリメートル大きく、前記導管の前記第2の長手方向部分の外側部分は、突出領域および窪み領域を含むアンカー固定面を含み、前記第2の最小壁厚は、1つ以上の前記窪み領域に対応する1つ以上の位置に生じ、
前記移植装置は、前記涙器を前記副鼻腔に流体接続させるべく移植されるように構成され、これにより、移植の際に、
前記近位端は前記涙器に配置され、
前記遠位端は前記副鼻腔に配置され、
前記導管は、前記フィステルを通して前記涙器と前記副鼻腔との間に配置され、前記導管の前記第1の長手方向部分および前記第2の長手方向部分の各々の少なくとも一部分が前記フィステル内に配置され、前記導管の前記第2の長手方向部分の少なくとも一部分が前記副鼻腔内に配置されることを特徴とする副鼻腔アクセス移植装置。
【請求項2】
前記導管の前記第1の長手方向部分は、一様な壁厚、および円滑な外側表面を有することを特徴とする請求項1に記載の移植装置
【請求項3】
前記導管の前記第1の長手方向部分の前記長さは5ミリメートル乃至15ミリメートルの範囲にあり、前記導管の前記第2の長手方向部分の前記長さは5ミリメートル乃至15ミリメートルの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の移植装置。
【請求項4】
前記第1の最小壁厚は0.35ミリメートル乃至0.55ミリメートルの範囲にあり、前記第2の最小壁厚は0.15ミリメートル乃至0.4ミリメートルの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至のうちのいずれか一項に記載の移植装置
【請求項5】
前記導管の前記第1の長手方向部分は前記導管の前記第2の長手方向部分の第2の最大の外側幅よりも少なくとも0.2ミリメートル小さい第1の最大の外側幅を有し、
前記導管の前記第1の長手方向部分は第1の最小の外側幅を有し、前記導管の前記第2の長手方向部分は第2の最小の外側幅を有し、
前記第2の最小の外側幅は前記第1の最大の外側幅よりも小さく、
前記第1の最小の外側幅は前記第2の最小の外側幅よりも大きく、
前記第1の最大の外側幅および前記第1の最小の外側幅は各々、1.5ミリメートル乃至2.5ミリメートルの範囲内にあり、
前記第2の最大の外側幅は1.75ミリメートル乃至3ミリメートルの範囲にあり、
前記第2の最小の外側幅は1ミリメートル乃至2ミリメートルの範囲にあり、
前記第1の最小の外側幅は前記第2の最小の外側幅よりも少なくとも0.1ミリメートル大きく、
前記第2の最大の外側幅は前記第1の最大の外側幅よりも少なくとも0.2ミリメートル大きく、
前記移植装置は、前記近位端に、前記導管に隣接する頭部を備え、
同頭部は、前記導管に向かって配置されるとともに前記移植装置が移植される際に前記フィステルの外側かつ前記フィステルに隣接する組織と係合するように構成され、また、該頭部の一側部にフランジ付き組織係合面を含み、
前記頭部は、前記フランジ付き組織係合面の外側縁上の地点間の最大の分離距離である第1の寸法を有し、同第1の寸法は、前記装置の長さを横断する前記突出領域の範囲によって形成される、前記導管の外側幅よりも大きく、
前記頭部は、前記第1の寸法を横断する線上にある前記外側縁上の地点間の最大の分離距離である前記第1の寸法を横断する第2の寸法、および1乃至4の範囲の前記第2の寸法に対する前記第1の寸法の比を有することを特徴とする請求項1乃至のうちのいずれか一項に記載の移植装置
【請求項6】
前記第1の最小の外側幅および前記第1の最大の外側幅は等しいことを特徴とする請求項に記載の移植装置。
【請求項7】
前記第2の最小の外側幅は前記第2の最小壁厚に対応する位置に生じることを特徴とする請求項5または6に記載の移植装置
【請求項8】
前記突出領域は、少なくとも0.2ミリメートルの窪み領域に対する高さを有し、
前記突出領域は前記装置の前記長さに沿って少なくとも5ミリメートルの長さで前記導管の前記第2の長手方向部分上に設けられ、
前記突出領域の始点は、前記移植装置の前記近位端から少なくとも4ミリメートルの位置に配置されることを特徴とする請求項1乃至のうちのいずれか一項に記載の移植装置
【請求項9】
前記導管が移植のために前記フィステルを通して挿入される場合において、前記突出領域は、前記フィステルに露出した組織と接触する際に柔軟に変形するように構成され、
前記突出領域は、各々が前記導管の全周の周囲を延びる少なくとも3つの一定間隔で配置された周方向隆起部を含むことを特徴とする請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の移植装置。
【請求項10】
前記導管の前記第2の長手方向部分の導管壁を通して前記内部通路への1つ以上の側方開口部を含み、1つ以上の前記側方開口部は、1つ以上の前記窪み領域内に配置されることを特徴とする請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の移植装置。
【請求項11】
前記導管は、50乃至100の範囲のデュロメータ硬さ(ショアA)を有する高分子材料から形成されることを特徴とする請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載の移植装置
【請求項12】
副鼻腔の処置に使用するためのキットであって、
請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載の副鼻腔アクセス移植装置と、
前記副鼻腔へのアクセスを提供する前記移植装置の移植後に前記移植装置を通して副鼻腔に輸送可能な流体の治療混合物とを備え、
前記治療混合物は、抗生物質、ステロイド、抗ウイルス薬、抗ヒスタミン剤、抗真菌薬、肥満細胞安定化薬、粘液溶解薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、血管収縮薬、および免疫抑制薬のうちの任意の1つ以上の任意の組み合わせを含む薬物治療混合物であることを特徴とする副鼻腔の処置に使用するためのキット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副鼻腔の症状の治療に関し、副鼻腔アクセス移植装置、手術用具、方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
米国では単独で、年間3500万人が鼻腔感染症、すなわち副鼻腔炎のために処置され、それらのうちの700万人が慢性の副鼻腔炎に苦しみ、処方薬治療に対して最小の反応を有する。従来の外科的介入は、せいぜい単に適度な症状改善をもたらすものであるが、治療を行うものではない。
【0003】
従来の薬物治療は、錠剤として経口投与、および鼻の局所的投与を含む。そのいずれも、複雑な副鼻腔に対して十分な濃度の薬剤を輸送することに資するものではない。薬剤に付加的に、頻繁な鼻腔灌水は、残骸、刺激物、および妨害する粘性流体を洗い流すことにおいて有用であるが、患者は通常家でこの処置を十分に行うことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に重い症状を有する患者にとって、外科的ドレナージュは最後の手段であった。初期の外科的処置は、上顎洞篩骨洞根本手術(Caldwell−Luc)であり、これは、正面の上切歯の上で、副鼻腔の基部から口腔内に恒久的なフィステルを形成することを含む。より最近、副鼻腔への他の外科的アクセスポイントが試みられた。機能的な内視鏡検査法の鼻腔手術(FESS)およびバルーン副鼻腔拡張術(balloon sinuplasty)を含む鼻を通して副鼻腔にアクセスする様々な内視鏡技術が開発されている。すべてドレナージュを高めることを試みるが、これらは異なる経路や器具を使用する。涙器と副鼻腔との間にフィステルを外科的に形成することは、副鼻腔への直接的なアクセスを得るための技術であると認識されており、これを通して、様々な医療処置および医学的処置が副鼻腔に向けられている。これらの外科的アプローチのいずれもまだ広く受け入れられ、あるいは成功しているものではなく、何百万もの慢性の副鼻腔炎患者が長期的な不能および不快を受け続けている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
副鼻腔アクセス移植装置は、この副鼻腔アクセス移植装置の内部通路を通して副鼻腔への流体のアクセスを得るためにヒトに移植されるように構成される。この副鼻腔アクセス移植装置は、副鼻腔の医学的処置および治療の実施において重要な可能性を有するが、そのような可能性はまだ実現されていない。移植装置を好適にアンカー固定し、患者にとって快適であり、移植後の移植装置が耐久性を備え、医療処置を効果的に実施することができる、容易且つ効果的な移植を促進する移植装置およびこれに伴う処置が継続的に要求されている。本開示の様々な態様は、移植される移植装置を通した移植処置および治療のための副鼻腔アクセス移植装置、器具、および方法、並びに副鼻腔アクセス移植装置を含むキットに関する。簡潔に述べるために、副鼻腔アクセス移植装置は通常単に移植装置と呼ぶ。
【0006】
本開示の第1の態様は、涙器と副鼻腔との間に形成されるフィステルを通して涙器を副鼻腔に流体接続するための、ヒトにおける移植に有用な移植装置を含む。
移植装置が、移植用のフィステルに挿入される導管に沿って突出領域および窪み領域を含むアンカー固定面を含む場合、移植装置が移植後により良好に保持されることが分かっている。アンカー固定は、フィステルに配置される突出領域によって形成される最大外径が移植装置の導管を受承するために形成されるフィステルの径よりも大きい場合に、増強される。これにより、フィステルに導管が嵌入し、アンカー固定面の窪み領域内に組織が強制的に移動される。しかしながら、比較的柔軟なプラスチック材料で形成されるそのような移植用導管は例えば蛇腹状に束ねられるため、移植のためにフィステル内に導管を挿入することは困難である。移植装置の導管の近位部により厚みのある導管壁を含むことにより、フィステルに最初に挿入される遠位部に含む場合よりも、導管の挿入の容易さが相当改善されることが分かっている。付加的に、導管の近位部のより厚みのある導管壁により、移植装置の近位端に隣接する導管の付加的な機械的耐久性が得られ、また、移植処置時や、移植後の医療処置および他の処置の実施時に使用される移植装置と器具との間に生じる機械的相互作用による導管の近位部への機械的な損傷の可能性が低減される。
【0007】
第1の態様の移植装置は、装置の第1の長手方向端部における近位端と、第1の長手方向端部に対して長手方向の反対側の、装置の第2の長手方向端部における遠位端と、近位端と遠位端との間に配置される導管と、導管を通した内部通路と、2ミリメートル乃至50ミリメートルの範囲における、近位端と遠位端との間の移植装置に長手方向に沿った、移植装置の長さと、0.25ミリメートル乃至5ミリメートルの範囲の、長さを横断する、内部通路の幅とを備え、導管は、第1の長手方向部分、および第1の長手方向部分に対して遠位端に向かって配置される第2の長手方向部分を含み、導管の第1の長手方向部分は、内部通路に隣接して最小壁厚(第1の最小壁厚)を有し、導管の第2の長手方向部分は、内部通路に隣接して第1の最小壁厚より小さな最小壁厚(第2の最小壁厚)を有し、移植装置は、涙器を副鼻腔に流体接続するべく移植されるように構成され、これにより、移植時に、近位端は涙器に配置され、遠位端は副鼻腔に配置され、導管は、フィステルを通して配置され、導管の第1の長手方向部分および第2の長手方向部分の各々の少なくとも一部分がフィステル内に配置され、導管の第2の長手方向部分の少なくとも一部分は副鼻腔内に配置される。
【0008】
多くの特徴および付加的な特徴は本開示の第1の態様に適用可能である。これらの特徴および付加的な特徴は、本開示の第1の態様や任意の他の態様の主題の範囲内で個別に、あるいは任意の組み合わせにて使用される。従って、後述する特徴の各々は、任意の他の特徴、あるいは本開示の第1の態様や任意の他の態様の特徴の組み合わせとともに使用されるが、組み合わせた使用が要求されるものではない。
【0009】
導管の第1の長手方向部分は、一様な壁厚を有しても、有さなくてもよい。導管の第1の長手方向部分は、円滑な外側表面を有する。導管の第1の長手方向部分の長さは、少なくとも3ミリメートル、少なくとも4ミリメートル、少なくとも5ミリメートル、少なくとも8ミリメートル、あるいは少なくとも10ミリメートルである。導管の第1の長手方向部分の長さは、通常20ミリメートル以下、15ミリメートル以下、12ミリメートル以下、あるいは10ミリメートル以下である。
【0010】
第1の最小壁厚は、少なくとも0.25ミリメートル、少なくとも0.3ミリメートル、少なくとも0.35ミリメートル、あるいは少なくとも0.4ミリメートルである。第1の最小壁厚は、通常0.75ミリメートル以下、0.6ミリメートル以下、0.55ミリメートル以下、0.5ミリメートル以下、あるいは0.45ミリメートル以下である。導管の第1の長手方向部分の壁厚は、略同じであり、第1の長手方向部分の所定の部分あるいは全長にわたって第1の最小壁厚に等しい。
【0011】
導管の第2の長手方向部分の長さは、少なくとも3ミリメートル、少なくとも4ミリメートル、少なくとも5ミリメートル、少なくとも8ミリメートル、あるいは少なくとも10ミリメートルである。導管の第2の長手方向部分の長さは、通常30ミリメートル以下、25ミリメートル以下、20ミリメートル以下、15ミリメートル以下、12ミリメートル以下、あるいは10ミリメートル以下である。
【0012】
第2の最小壁厚は、0.6ミリメートル以下、0.5ミリメートル以下、0.45ミリメートル以下、0.4ミリメートル以下、0.35ミリメートル以下、0.3ミリメートル以下、0.25ミリメートル以下、あるいは0.2ミリメートル以下である。第2の最小壁厚は、通常少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.15ミリメートル、あるいは少なくとも0.2ミリメートルである。導管の第2の長手方向部分の壁厚は、導管の第2の長手方向部分の所定の一部分あるいは複数の部分にわたって略同じである。導管の第2の長手方向部分は、突出領域および窪み領域を含むアンカー固定面を含む外側部分を有する。窪み領域に対応する位置における壁厚は、突出領域に対応する位置における壁厚よりも小さい。第2の最小壁厚は、この1つ以上の窪み領域に対応する1つ以上の位置に生じる。
【0013】
第1の最小壁厚は、第2の最小壁厚よりも少なくとも0.05ミリメートル、少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.15ミリメートル、あるいは少なくとも0.175ミリメートル大きい。第1の最小壁厚は、第2の最小壁厚よりも0.3ミリメートル以下、0.25ミリメートル以下、あるいは0.2ミリメートル以下だけ大きい。
【0014】
導管の第1の長手方向部分は、導管の第2の長手方向部分の最大の外側幅(第2の最大の外側幅)よりも小さい最大の外側幅(第1の最大の外側幅)を有する。第2の最大の外側幅は、第1の最大の外側幅よりも少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.25ミリメートル、少なくとも0.3ミリメートル、少なくとも0.35ミリメートル、少なくとも0.4ミリメートル、あるいは少なくとも0.5ミリメートル大きい。第2の最大の外側幅は、第1の最大の外側幅よりも通常1ミリメートル以下、0.75ミリメートル以下、0.5ミリメートル以下、あるいは0.4ミリメートル以下だけ大きい。第1の最大の外側幅は、少なくとも1.25ミリメートル、少なくとも1.5ミリメートル、少なくとも1.75ミリメートル、あるいは少なくとも2ミリメートルである。第1の最大の外側幅は、通常3ミリメートル以下、2.5ミリメートル以下、2.25ミリメートル以下、あるいは2ミリメートル以下である。第2の最大の外側幅は、少なくとも1.5ミリメートル、少なくとも1.6ミリメートル、少なくとも1.75ミリメートル、少なくとも2ミリメートル、少なくとも2.25ミリメートル、あるいは少なくとも2.5ミリメートルである。第2の最大の外側幅は、5ミリメートル以下、4ミリメートル以下、3ミリメートル以下、2.75ミリメートル以下、2.5ミリメートル以下、あるいは2.25ミリメートル以下である。
【0015】
導管の第1の長手方向部分は最小の外側幅(第1の最小の外側幅)を有し、導管の第2の長手方向部分は、第1の最大の外側幅よりも小さい最小の外側幅(第2の最小の外側幅)を有する。第1の最小の外側幅は第2の最小の外側幅よりも少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.25ミリメートル、少なくとも0.3ミリメートル、少なくとも0.35ミリメートル、少なくとも0.4ミリメートル、あるいは少なくとも0.5ミリメートル大きい。第1の最小の外側幅は、3ミリメートル以下、2.5ミリメートル以下、2.25ミリメートル以下、あるいは2ミリメートル以下である。第1の最小の外側幅は、少なくとも1ミリメートル、少なくとも1.25ミリメートル、少なくとも1.5ミリメートル、少なくとも1.75ミリメートル、あるいは少なくとも2ミリメートルである。導管の第1の長手方向部分は、略一定の断面(例、一定の円形の断面)を有し、この場合に、導管の第1の長手方向部分の最大および最小の外側幅は、同じ(例、一定の円形の断面の径)である。第2の最小の外側幅は、2.5ミリメートル以下、2ミリメートル以下、1.75ミリメートル以下、あるいは1.5ミリメートル以下である。第2の最小の外側幅は、通常少なくとも1ミリメートル、少なくとも1.25ミリメートル、少なくとも1.50ミリメートル、あるいは少なくとも1.75ミリメートルである。第2の長手方向部分は、第2の最小の外側幅が第2の長手方向部分の第2の最大の外側幅よりも小さい表面外形を有する。第2の最小の外側幅は、第2の最小壁厚の位置に一致する。
【0016】
導管は、導管の第1および第2の長手方向部分の長さに沿った所定のあるいはすべての地点において円形の断面を有する。第1の最小壁厚および第2の最小壁厚は、管状の壁部である。
【0017】
導管は、装置が移植される際に導管の外側部分が移植装置をアンカー固定することを支援するアンカー固定面を含むように構成される。アンカー固定面は、突出領域および窪み領域を含む。第2の最小壁厚は、窪み領域の少なくとも1つに対応する位置に生じる。移植装置は、移植時に導管がフィステルを通して配置され、窪み領域の少なくとも一部がフィステル内に配置され、突出領域の少なくとも一部がフィステル内に配置されるとともに移植装置をアンカー固定するためにフィステル内に露出した組織と係合するように構成される。突出領域の突出部の発生部位の構造的および機械的特性は、突出領域のアンカー固定性能に影響する。窪み領域に対する突出領域の高さは、移植装置の移植時のアンカー固定効果に影響する。より大きな高さにより、より大きなアンカー固定効果が得られるが、フィステル内に挿入されるべき移植装置のより大きな幅全体も含まれる。突出領域は、窪み領域に対して少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.25ミリメートル、あるいは少なくとも0.3ミリメートルの高さを有する。突出領域は、窪み領域に対して2ミリメートル以下、1.5ミリメートル以下、1ミリメートル以下、0.75ミリメートル以下、0.5ミリメートル以下、あるいは0.4ミリメートル以下の高さを有する。高さは窪み部の隣接した領域に対する所定の突出部の発生によるものである。突出部の発生部位は、以下アンカー突出部とも呼ぶ。このアンカー突出部は、移植のために導管がフィステルを通して挿入される際に柔軟に変形するように、例えば、挿入時にアンカー突出部がフィステル内に位置される組織に接触する際に、挿入方向とは反対の方向に柔軟に変形するように構成される。挿入後、アンカー突出部は、所定の時間にわたってその原形に復帰し、よりよく移植装置をアンカー固定するために隣接した組織内により深く延びる。アンカー突出部の機械的性質は構成材料によって影響を受ける。突出領域、およびさらに移植装置の他の部分用の好ましい構成材料は、高分子材料である。高分子材料は、好適に医療グレード材料である。いくつかの好ましい高分子材料はシリコーンおよびポリウレタンである。性能を高めるために、例えば、負荷分散および良好なアンカー固定を促進するために、構成材料は、フィステル近傍の組織と能動的に相互に作用する剛性を有するべきである。好ましい1つの構成材料は、上限値が下限値よりも大きい場合、50、60、70、あるいは80の下限値、および100、80、70、あるいは60の上限値を有する範囲のデュロメータ硬さ(ショアA)を有する高分子材料(例、シリコーンまたはポリウレタン)である。好ましい一範囲は、60乃至100のデュロメータ硬さ(ショアA)であり、80乃至100の範囲がより好ましい。いくつかの実施において、高分子材料は、約60、約80、あるいは約100のデュロメータ硬さ(ショアA)を有する。突出領域の突出部の発生部位の機械的性質も突出部の発生部位の外形によって影響されるであろう。突出部の発生部位は、突出部の発生部位の基部から頂部に向かう方向に先端ほど細くなるか狭くなる幅を有し、基部は、導管の内部通路に向かって配置される突出部の発生部位の一部であり、突出部の発生部位の頂部は、導管の内部通路から離間する突出部の発生部位の末端である。導管の幅は長さを横断する。突出部の発生部位は、基部において2ミリメートル以下、1.5ミリメートル以下、1.25ミリメートル以下、あるいは1ミリメートル以下の幅を有する。1つ以上の突出部の発生部位は、基部において少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.3ミリメートル、少なくとも0.5ミリメートル、少なくとも0.75ミリメートル、あるいは少なくとも1ミリメートルの幅を有する。突出部の発生部位は、基部における幅の0.75倍以下、基部における幅の0.5倍以下、基部における幅の0.25倍以下の、頂部に隣接した幅を有する。突出部の発生部位は、基部の幅の0.8倍以下、基部の幅の0.7倍以下、基部の幅の0.6倍以下、あるいは基部の幅の0.5倍以下の、基部と頂部との間の幅を有する。
【0018】
突出領域は、移植装置が移植される際に、フィステルの内部に一致するように位置される単一の突出部の発生部位要素によって設けられてもよい。より好ましい実施において、突出領域は、導管の外側部分上に一定間隔で配置される複数の突出部の発生部位を含む。突出部の発生部位は、1つ以上の方向に、少なくとも0.5ミリメートル、少なくとも0.75ミリメートル、少なくとも1ミリメートル、あるいは少なくとも1.75ミリメートルの中心間の間隙を有する。突出部の発生部位は、2.5ミリメートル以下、2ミリメートル以下、あるいは1.75ミリメートル以下の中心間の間隙を有する。突出部の発生部位は、導管に沿って長手方向に中心間の間隙を有する。突出部の発生部位は、突出部の発生部位の基部幅の少なくとも0.5倍、突出部の発生部位の基部幅の少なくとも等倍、あるいは突出部の発生部位の基部幅の少なくとも2倍である中心間の間隙を有する。突出部の発生部位は、突出部の発生部位の基部幅の5倍以下、突出部の発生部位の基部幅の3倍以下、あるいは突出部の発生部位の基部幅の2倍以下である中心間の間隙を有する。
【0019】
突出領域は、移植装置が移植される際、フィステル内に配置される導管の少なくとも一部を含む、導管の長手方向部分に位置される。突出領域は、移植装置の長さに沿って少なくとも2ミリメートル延びる、移植装置の長さに沿って少なくとも3ミリメートル延びる、移植装置の長さに沿って少なくとも4ミリメートル延びる、移植装置の長さに沿って少なくとも5ミリメートル延びる、あるいは移植装置の長さに沿って少なくとも8ミリメートル延びる、導管の長手方向部分上にある。突出領域を含む導管の長手方向部分は、20ミリメートル以下、15ミリメートル以下、あるいは10ミリメートル以下である。突出領域を含む導管の長手方向部分は、装置の近位端から少なくとも2ミリメートル、装置の近位端から少なくとも3ミリメートル、あるいは装置の近位端から少なくとも4ミリメートルの位置に配置される。移植装置が頭部を有する場合、突出部を含む導管の長手方向部分は、頭部から少なくとも1ミリメートル、少なくとも2ミリメートル、あるいは少なくとも3ミリメートルの位置に配置される。頭部と突出領域の始点との間に相当な距離を設けることにより、頭部は組織の表面でより良好に「浮かぶ」ことができ、これにより、患者の快適さ、および装置の性能が高められる。突出領域は、導管の長手方向部分に沿って配置され、導管の長手方向部分に沿った領域の35%以下、導管の長手方向部分に沿った領域の25%以下、あるいは導管の長手方向部分に沿った領域の20%以下を覆う。突出部の発生部位間に相当な間隙を設けることにより、アンカー固定面によって組織とより係合する。突出部の発生部位のうちのいくつかあるいはすべては導管の第2の長手方向部分上にある。
【0020】
突出領域は少なくとも1つの周方向隆起部を含む。周方向隆起部は、導管の全周の周囲を延びる隆起部を意味する。突出領域は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、あるいは少なくとも5つの周方向隆起部を含む。突出領域は螺旋状の隆起部を含む。この螺旋状の隆起部は、導管の長手方向部分に沿って延びる。突出領域は1つ以上のノブを含む。アンカー固定面は、テクスチャ面を含み、突出領域は、テクスチャ面の突出部を含み、窪み領域は、テクスチャ面の窪み部を含む。
【0021】
移植装置の長さは、フィステルの全長を通して延びるために十分な導管の長さを設けるように、また、フィステルよりも近位側の涙器に、およびフィステルよりも遠位側の副鼻腔に望ましい任意の拡張距離を設けるように選択される。移植装置および/または導管の長さは、上限値が下限値よりも大きい場合、2ミリメートル、3ミリメートル、4ミリメートル、5ミリメートル、8ミリメートル、10ミリメートル、あるいは12ミリメートルの下限値、および50ミリメートル、40ミリメートル、30ミリメートル、25ミリメートル、20ミリメートル、15ミリメートル、あるいは10ミリメートルの上限値を有する範囲にある。移植装置の長さ、および/または導管の長さに関して、フィステルが眼窩と篩骨蜂巣または上顎洞との間にある場合のいくつかの実施における好ましい一範囲は、10ミリメートル乃至30ミリメートルの範囲、より好ましくは、15ミリメートル乃至25ミリメートルの範囲である。移植装置や導管の長さは、移植装置または導管に長手方向に沿った寸法を示し、場合に応じて、移植装置または導管の近位端から遠位端までを示し、また内部通路を通した長手方向軸線に沿う。例えば内部通路が直線的である場合、長さは直線的であり、また、例えば内部通路が直線的でない場合、長さは曲線、あるいは他の所定の形状である。長さを横断して参照すると、ある点で長さの長手方向に対して直角が参照される(例えば長さの線、あるいは長さの湾曲部に対する接線に対する直角)。
【0022】
移植装置は、所望の寸法のフィステル内に嵌入する好適な幅寸法の導管により効果的に設計される。移植装置は、装置の長さを横断する突出領域の最大の範囲によって形成される第1の外側幅を有し、この第1の外側幅は、上限値が下限値よりも大きい場合、0.75ミリメートル、1ミリメートル、1.25ミリメートル、1.5ミリメートル、1.75ミリメートル、あるいは2ミリメートルの下限値、および8ミリメートル、7ミリメートル、6ミリメートル、5ミリメートル、4ミリメートル、3ミリメートル、2ミリメートル、あるいは1.75ミリメートルの上限値を有する範囲内にある。導管は、装置の長さを横断する窪み領域の最小の範囲によって形成される第2の外側幅を有し、この第2の外側幅は、突出領域によって形成される第1の外側幅よりも小さいであろう。窪み領域によって形成される第2の外側幅は、0.2ミリメートル、0.25ミリメートル、0.35ミリメートル、あるいは0.5ミリメートルの下限値を有するとともに、1.5ミリメートル、1ミリメートル、あるいは0.75ミリメートルの上限値を有する範囲内の量だけ突出領域によって形成される外側幅よりも小さい。突出領域の高さは、第1の外側幅と第2の外側幅との間の差の2分の1である。第1の外側幅および第2の外側幅のいずれも各々円の径である。
【0023】
移植装置は、導管の遠位部の導管壁を通して1つ以上の側方開口部を含み、遠位部は、移植装置を通して副鼻腔に至る流体のアクセスを提供するために移植装置が移植される場合に、副鼻腔内に配置されるように構成される導管の一部であるか、導管の一部を含む。側方開口部は、導管を通して内部通路内に開放され、所定の理由により導管の遠位端における内部通路の遠位側開口部が閉塞または制限されたとしても、移植装置の内部通路と副鼻腔との間の連通のための通路を提供する。1つ以上の側方開口部が、導管の第2の長手方向部分の壁部を通して、また、第2の最小壁厚を有する壁部を通して設けられる。1つ以上の側方開口部は、導管のアンカー固定面の1つ以上の窪み領域内(例えば周方向隆起部間)に配置される。導管の第1の長手方向部分よりも導管の第2の長手方向部分の最小壁厚がより肉薄であることにより、導管の第2の長手方向部分、特に、導管の第2の長手方向部分の遠位端の近傍は、その遠位端における、あるいは遠位端近傍における導管の潰れにより制限される傾向にあり、側方開口部850は、副鼻腔への代替的な流体のアクセスを提供する。
【0024】
移植装置は、移植装置の近位端に、導管に隣接する頭部を含む。移植装置は、移植装置が移植される際、頭部が涙器に、また、好ましくは頭部が眼窩に配置されるように構成される。頭部は、移植装置の移植後に移植装置がフィステルを通して副鼻腔に向かって移動しないように効果的に保持する。頭部は、導管に向かって配置されるとともに移植装置が移植される際にフィステルの外側およびフィステルに隣接する組織と係合するように構成される、頭部の一側部のフランジ付き組織係合面を含む。フランジ付き組織係合面は、平坦面である。フランジ付き組織係合面は、組織に対する表面の着座を改善するように、例えば移植後の移植装置のフィステル内での回転を防止するように構成される非平坦面を有する。頭部は、フランジ付き組織係合面の反対側に、導管から離間するように位置されるとともに移植装置が移植される際に、フランジ付き組織係合面と係合する組織から離間するように位置されるフェース面を有する。フェース面は略平坦である。フェース面は移植装置の近位端に配置され、また、内部通路はフェース面に開放される。フェース面とフランジ付き組織係合面との間の分離距離は、0.25ミリメートル、0.5ミリメートル、あるいは0.75ミリメートルの下限値を有するとともに、2ミリメートル、1.5ミリメートル、あるいは1ミリメートルの上限値を有する範囲にある。この分離距離はフランジ付き組織係合面およびフェース面を横断して一定である必要がない。フェース面とフランジ付き組織係合面との間の最大の分離距離は、頭部の深みと呼ばれ、この深みは、フェース面とフランジ付き組織係合面との間の分離距離に関して上述した範囲にある。フランジ付き組織係合面は連続的である必要はなく、複数の個別の表面部分に分割されてもよい。例えば、フランジ付き組織係合面は、内部通路の片側に設けられる第1のフランジ部、および内部通路の第1の側の反対側の第2の側に設けられる第2のフランジ付き表面部を含む。フェース面およびフランジ付き組織係合面の各々は、それぞれの表面の外側縁上の地点間の最大の分離距離を示し、各々は、長さを横断する外側縁上の地点間の最大の分離距離である幅寸法を有する。フェース面およびフランジ付き組織係合面の長さ寸法は、同じであるか異なる。フェース面およびフランジ付き組織係合面の幅寸法は、同じであるか異なる。フェース面およびフランジ付き組織係合面は対応する外側縁を有する。フェース面、フランジ付き組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべての長さ寸法は、上述したように移植装置がアンカー固定面を含む場合、移植装置の長さを横断する突出領域の範囲によって形成される、導管の第1の外側幅よりも大きい。フェース面、組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべての長さ寸法は、1ミリメートル、2ミリメートル、3ミリメートル、4ミリメートル、あるいは5ミリメートルの下限値、および10ミリメートル、8ミリメートル、あるいは7ミリメートルの上限値を有する範囲にある。フェース面、組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべての幅寸法は、0.5ミリメートル、1ミリメートル、1.5ミリメートル、あるいは2ミリメートルの下限値、および5ミリメートル、4ミリメートル、あるいは3ミリメートルの上限値を有する範囲にある。フェース面、フランジ付き組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべての長さ寸法は、上述したように移植装置がアンカー固定面を含む場合、突出領域の範囲によって形成される、導管の上記第1の外側幅よりも少なくとも1ミリメートル、少なくとも2ミリメートル、少なくとも3ミリメートル、あるいは少なくとも4ミリメートル大きい。導管のこの第1の外側幅に対するフェース面、フランジ付き組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべての長さの比は、少なくとも2である。この比は4未満である。フェース面、フランジ付き組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべての幅は、上述したように移植装置がアンカー固定面を含む場合、突出領域の範囲によって形成される導管の上記第1の外側幅よりも(例えば少なくとも0.1mm、あるいは少なくとも0.2mmだけ)大きいか小さい。フェース面、フランジ付き組織係合面、および頭部のうちのいずれか、あるいはすべてにおける幅寸法に対する長さ寸法の比は、上限値が下限値より大きいに相違ない場合、1、1.5、2、あるいは2.5の下限値、および5、4、3、あるいは2.5の上限値を有する範囲にある。頭部が涙丘と半月ひだとの間で眼窩に位置する場合、頭部に幅寸法に対してより大きな長さ寸法を有することが、特に好まれる。その理由として、長さ寸法が眼球の隣に縦方向に効果的に整列し、十分なフランジ付き表面領域の形成を補助し、移植装置を近位端上に効果的にアンカー固定するとともに結膜の組織が開口部を覆って移植装置の内部通路内に至ることを防止し、より狭小な幅を補償することが挙げられる。上述したような構成の高分子材料を使用する場合、これは特に効果的である。
【0025】
移植装置を通した内部通路は移植装置の全長に沿って略一様な形状を有してもよいし、あるいは変化する形状を有してもよい。内部通路は、装置の近位端から装置の遠位端に向かって略直線的である。内部通路は、流通可能な断面(装置の長さを横断する)を有し、断面は、移植装置の近位端から遠位端に向かって略一様である。内部通路は略円形の断面を有する。内部通路は略楕円形の断面を有してもよい。導管の幅(内部通路の流通可能な断面を横断する最大の寸法部分)は、0.25ミリメートル、0.5ミリメートル、あるいは0.75ミリメートル、および1ミリメートルの下限値、並びに5ミリメートル、4ミリメートル、3ミリメートル、2ミリメートル、あるいは1.5ミリメートルの上限値を有する範囲にある。
【0026】
移植装置が移植される場合、涙器と副鼻腔とは移植装置の内部通路を通して連通する。導管は移植装置の近位端に隣接してそこから延びる。導管は移植装置の遠位端に隣接してそこに向かって延びる。内部通路は、近位端に開放する第1の端、および遠位端に開放する第2の端を有し、また、移植装置が移植される際、内部通路の第1の端は涙器内に開放され、内部通路の第2の端は副鼻腔内に開放される。
【0027】
移植装置は、導管が、眼窩内の涙器における位置と、前頭洞、篩骨蜂巣、上顎洞、および蝶形骨洞から構成される一群から選択される副鼻腔との間のフィステルを通過するように移植用に構成される。前頭洞、上顎洞、あるいは篩骨蜂巣が好ましく、篩骨蜂巣、あるいは上顎洞がより好ましく、篩骨蜂巣が特に好ましい。移植装置は、導管が鼻涙管内の涙器における位置と、篩骨蜂巣および上顎洞から構成される一群から選択される副鼻腔との間を通過するように、移植用に構成される。鼻涙管内の位置は涙嚢内にある。
【0028】
移植装置は、涙器から副鼻腔への通路を設けるように涙器と副鼻腔との間に形成されるフィステルにて移植可能な移植装置として主に構成され、この移植装置に主に言及して開示される。さらに、移植装置は、例えば涙の流体のドレナージュを高めるために涙器(例えば涙丘と半月ひだとの間の眼窩の中間部の隅部からの)と鼻腔との間に形成されるフィステルにも移植可能であり、また、鼻腔に向けられたそのような適用は、本開示の異なる態様の範囲内にある。
【0029】
本開示の第2の態様は、涙器と連通するように人工の流体通路を設けるための移植装置の移植用要素を備えた移植キットを含む。第2の態様のキットは、副鼻腔アクセス移植装置、および移植装置の移植や、移植装置による医療処置や処理の実施に関して有用な少なくとも1つの付加的な要素を含む。
【0030】
多くの特徴および付加的な特徴は、本開示の第2の態様に適用可能である。これらの特徴および付加的な特徴は、本開示の第2の態様や任意の態様の主題の範囲内で個別に、あるいは任意の組み合わせにて使用される。従って、次の特徴の各々は、任意の他の特徴の範囲内、あるいは本開示の第1の態様、第2の態様や、任意の他の態様の特徴の組み合わせの範囲内において使用されるが、そのような使用が要求されるものではない。
【0031】
移植装置は、移植装置の対向する長手方向端部における近位端および遠位端と、近位端と遠位端との間に位置される導管と、導管を通して延びる内部通路と、2ミリメートル乃至50ミリメートルの範囲における、移植装置の近位端と遠位端との間の長手方向長さと、0.25ミリメートル乃至5ミリメートルの範囲における、長さを横断する内部通路の幅とを備え、移植装置は、移植装置の近位端が涙器に位置され、導管の少なくとも一部が涙器へのフィステル開口部に位置されるように移植されるように構成される。移植装置は本開示の第1の態様の移植装置であるか、あるいは例えば移植装置が第1の態様によるものでなくても、本開示の第1の態様において開示される任意の特徴あるいは特徴の組み合わせを有する。
【0032】
キットは、ここに開示される装置、器具、機器、製品、要素、あるいは治療混合物のうちの任意のもの、あるいは任意の組み合わせを含む。
キットは、副鼻腔への流体のアクセスを提供するための移植装置の移植後に移植装置を通して副鼻腔に輸送可能な流体の治療混合物を含む。この流体の治療混合物は、例えば、副鼻腔炎あるいは副鼻腔の他の症状について処置するために副鼻腔への輸送用の流体ディスペンサの操作により移植装置の内部通路に案内されるのに好適である。治療混合物は水性の灌水液である。治療混合物は薬物治療混合物であってもよい。薬物治療混合物は、副鼻腔炎あるいは副鼻腔の他の症状の処置のために少なくとも1つの薬を含む。薬物治療混合物は、抗生物質、ステロイド、抗ウイルス薬、抗ヒスタミン剤、抗真菌薬、肥満細胞安定化薬、粘液溶解薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、血管収縮薬、および免疫抑制薬のうちの1つ以上を含む。いくつかの例による抗生物質は、サルファ剤、あるいはスルホンアミド、例えば、スルファセタミド(例えばOCUSOLにおける) およびスルフィソクサゾール(例えばGANTRISIN(登録商標)における)のような薬;例えば、アジスロマイシン(例えばAZACITE(登録商標)における)およびエリスロマイシン(例えばERYPED(登録商標)における)のようなマクロライド薬;例えばトブラマイシン(例えばTOBPvEX(登録商標)における)およびゲンタマイシン(例えばGENOPTIC(登録商標)における)のようなアミノグリコシド薬;例えば、シプロフロキサシン(例えばシロクサン(登録商標)における)、ベシフロキサシン(例えばベシバンス(登録商標)における)、およびモキシフロキサシン(例えばVI GAM OX(登録商標)における)のようなフルオロキノロン薬;例えば、オキシテトラサイクリン(例えばCODEXにおける)のようなテトラサイクリン薬;並びに例えば、バシトラシン、ネオマイシン、およびポリミクシンB(例えばOCUSPORE Bにおける)の組み合わせおよびグラミシジン、ネオマイシン、およびポリミクシンB(例えばNEOCIN PGにおける)の組み合わせを含むような抗生物質の組み合わせを含む。いくつかの例による抗ウイルス薬は、ガンシクロビル(例えばZIRGAN(登録商標)における)およびトリフルリジン (例えばヴィロプティック(登録商標)における)を含む。いくつかの例によるステロイドは、ロテプレドノール(例えばロテマックス(登録商標)における)およびプレドニゾロン(例えばプレド・フォルテ(登録商標)における)を含む。抗ヒスタミン剤のいくつかの例は、ケトチフェン(例えばALA WAY(登録商標)における)、オロパタジン(例えばパタデイ(登録商標)における)、およびエピナスチン(例えばエレスタット(登録商標)における)を含む。肥満細胞安定化薬のいくつかの例は、ネドクロミルナトリウム(例えばALOCRIL(登録商標)における)およびロドキサミド(例えばALOMIDE(登録商標)における)を含む。抗真菌薬のいくつかの例は、ナタマイシン (例えばNATACYN(登録商標)における)およびeuconzolを含む。粘液溶解薬のいくつかの例は、N−アセチルシステイン(例えばPARVOLEXにおける)を含む。NSAIDの材料のいくつかの例は、ネパフェナク(例、ネバナック(登録商標)における)およびブロムフェナク(例えばBROMDAY(登録商標)における)を含む。血管収縮薬のいくつかの例は、ナファゾリン(例えばナフコンA(NAPHCON A)(登録商標)における)、およびテトラヒドロゾリン(例えばバイシン(登録商標)における)を含む。免疫抑制薬のいくつかの例は、シクロスポリン(例、レスタシス(登録商標)における)を含む。上記材料はすべてその任意の薬学的に許容される塩類を含む。
【0033】
流体の治療混合物は、キットにおいて提供されるような流体の容器内に配置される。流体の容器は、任意の所望の量の治療混合物を含む。この量は、0.1、0.25、0.5、0.75、あるいは1ミリリットルの下限値、および5、3、あるいは2ミリリットルの上限値を有する範囲にある。この範囲は、流体の容器内に含まれる治療混合物の合計であるか、流体の容器から輸送可能な、流体の容器内に含まれる治療混合物の量であり、これを輸送可能量と呼ぶ。輸送可能量は、流体ディスペンサから効果的に輸送可能な、流体の容器内の流体の量を示す。輸送量は、流体の容器内や流体ディスペンサ内に保持される残りの治療混合物により、流体の容器内に含まれる治療混合物の総量未満である。例えば、残りの治療混合物は、流体の容器と、遠位側の流体放出先端(例、分配針に残る流体)との間において、上記流体ディスペンサの内壁面(例、例えば注射器バレルの内壁面のような流体容器の内壁面)に付着するもの、あるいは上記流体ディスペンサの流体案内部に残るものである。
【0034】
治療混合物を含む流体の容器は、流体ディスペンサの一部である。流体ディスペンサは、移植装置の移植後に流体の容器から内部通路内に、あるいは内部通路を通して直接副鼻腔内に治療混合物の少なくとも一部を分配するように操作可能である。流体の容器は注射器によってキットにおいて提供され、これは、上記流体ディスペンサであるか上記流体ディスペンサの一部である。流体の容器は、注射器バレルの少なくとも一部を含む。流体ディスペンサは、流体の容器における治療混合物と連通する流体放出部材を含む。この流体放出部材は移植装置の内部通路に挿入可能である。また、流体ディスペンサは、移植装置が、流体放出部材の遠位端から移植装置の内部通路内に、あるいは遠位側の内部通路よりも遠位側から直接副鼻腔内に治療混合物の少なくとも一部を放出するように移植される場合に、流体放出装置を移植装置の内部通路に挿入する際に、操作可能である。例えば、流体放出部材の遠位側の流体放出先端は内部通路に配置され、治療混合物は副鼻腔に流れ込むように内部通路に分配されるか、あるいは、先端が内部通路の遠位端よりも遠位側の副鼻腔に位置されるまで流体放出部材が内部通路に挿入され、治療混合物が副鼻腔内に直接分配される。流体放出部材はルアー接続等により注射器に接続される。流体放出部材は、内部通路内に挿入されるように構成される挿入部を有し、この挿入部は、1.75ミリメートル以下、1.5ミリメートル以下、1.25ミリメートル以下、1ミリメートル以下、あるいは0.9ミリメートル以下の最大の外側幅(例、径)を有する。流体放出部材は、鈍い先端を有する中空の針(例えば鈍い先端の皮下注射針)であるか、これを含む。流体放出部材は、取り払い可能な保護キャップにより覆われる。例えば、キットは、使用前に針を保護する保護キャップにより覆われる皮下注射針が取り付けられるとともに治療混合物を含む、予め充填した注射器を含む。キットは、複数の異なる治療混合物を含み、また、各々異なる治療混合物を含む複数の流体の容器(例、複数の注射器)を含む。
【0035】
涙器と副鼻腔との間に流体の通路を設けるように移植装置の移植用のフィステルを形成することは、副鼻腔の穴が位置する骨の壁部を通す穴を形成することを含む。ここに開示されるように、移植装置の移植のための所望の寸法にフィステルを形成することに必要なため、この穴は探り針や他の中実な穿刺器具によって形成され、続いて拡幅される。例えば、最初の穴を形成するための最初の穿刺後に、穴は、所望の寸法となるまで穴を次第に拡大させるべく拡張器を使用して拡張される。しかしながら、上記方法にて移植用のフィステルを形成する場合、骨が穴近傍で割れて粉砕される傾向にあることが分かっている。これは医学的課題を示すものではないが、骨が穴の近傍でより完全な状態に保持される場合に、骨が移植装置を適所に固定することを補助するように機械的に支持するとともに移植後に移植装置がフィステルから抜け出ることを防止することが分かっている。フィステルの近傍の骨の完全性は、穴の貫通および拡張よりむしろフィステル用に穴を切断することによって改善される。骨を通すよう押圧するのではなく骨を切断して通すことによって、骨は、穴の近傍においてより完全な状態に保持され、移植後に移植装置をフィステル内の適所に保持することを支援するように機械的により支持する。第2の態様の移植キットは、フィステル用の穴を切断するとともに移植装置を移植することに有用な器具を含む。
【0036】
キットは、フィステルを通して移植装置が移植処置の間に移植されるように、フィステルを形成するべく組織を切り取るための少なくとも1つの切断器具を含む。この切断器具は、フィステルを通して移植装置を移植するためにフィステルを所定の寸法に形成するべく組織を切断するように構成される切削部材の遠位端に中空の切断先端を有する中空部材を含む。この切削部材は、移植中にフィステルを通して配置されるように構成される移植装置の導管の最大の外側幅よりも小さい切断幅を有する。この切断器具はドリルである。
【0037】
キットは、切断器具の内部通路を通して配置可能な使い捨てのガイド部材によって案内可能な切断器具を含む。切断器具は、フィステルを通して移植装置を移植するためにフィステルを所定の寸法に形成するべく組織を切断するように構成される切削部材の遠位端に中空の切断先端を有する中空の切削部材を含む。切断器具の中空の切断先端は、ガイド部材を収容するように予め形成された小径の準備された切断部を拡大するべくより大きな径を形成するように構成されるか、あるいは切断器具がより小型の最初のフィステルを予め形成することなく最終的な所望の切断部を形成するように構成される。切削部材は、ガイド部材と摺動自在に係合するように構成され、ガイド部材は、切削部材の通路を通して配置され、ガイド部材の遠位端は、切削部材の遠位端よりも遠位側に配置される。ガイド部材の遠位端は、切削部材がガイド部材を覆うように摺動可能となるようにフィステル内に、あるいはフィステルよりも遠位側に配置されるように構成される。これにより、例えば、より小さな最初のフィステルが既に形成されている場合に、移植組織装置を移植するためにフィステルを所定の寸法に形成するべく組織を切断するように切削部材の切断先端が案内され、あるいは切削部材が後退されるとともにフィステルの位置に別の1つ以上の器具を案内することに使用するべくガイド部材が適所に残される。器具は、例えば、移植用の所望の寸法にフィステルを切断して形成した後に移植のためにフィステル内の適所に移植装置を挿入するための移植器具である。
【0038】
切断器具の切削部材は、中空の針あるいは切断カニューレであるか、これらを含む。切削部材は、移植装置の導管の最大の外側幅よりも小さい切断幅、あるいは円形の切断の場合は径を有する。移植装置の導管の最大の外側幅は、導管上にアンカー固定面の一部を形成する1つ以上の突出領域に生じてもよい。切断幅は、移植装置の導管の最大の外側幅未満であり、少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.25ミリメートル、少なくとも0.3ミリメートル、少なくとも0.35ミリメートル、あるいは少なくとも0.4ミリメートルである。切断幅は、導管の最大の外側幅未満であり、1ミリメートル以下、0.75ミリメートル以下、0.6ミリメートル以下、あるいは0.5ミリメートル以下である。切断幅は、5ミリメートル、4ミリメートル、3.5ミリメートル、3ミリメートル、2.5ミリメートル、2.25ミリメートル、2ミリメートル、1.9ミリメートル、あるいは1.8ミリメートル以下である。切断幅は、少なくとも1ミリメートル、1.5ミリメートル、1.75ミリメートル、あるいは1.85ミリメートルである。
【0039】
キットは、近位端と遠位端とを備える移植物ガイド器具を含み、移植物ガイド器具は、移植物ガイド器具の近位端から遠位端に向かう方向に長手方向に延びるガイド部材を含む。ガイド部材および内部通路は、ガイド部材に移植装置を取り付けるように構成され、ガイド部材は、移植装置の内部通路を通して配置され、ガイド部材の遠位端は、移植装置の遠位端よりも遠位側に配置され、ガイド部材の遠位端は、フィステル内またはフィステルよりも遠位側に配置されるように構成され、これにより、ガイド部材に取り付けられた移植装置は、ガイド部材の遠位端に向かってガイド部材上を摺動自在であり、移植装置を移植するためにフィステル内に案内する。ガイド部材は、フィステルの部位に器具を案内するための器具(例えば切断器具あるいは輸送器具)により通路を通して挿入されるように構成される。
【0040】
ガイド部材の一例において、ガイド部材は、ガイドワイヤあるいは小径の針(例、20ゲージのクモ膜下穿刺針)であり、切削部材は、ガイド部材が挿入されるより大きなゲージの針(例えば12乃至14ゲージのクモ膜下穿刺針)であり、移植装置は、ガイド部材が挿入される内部通路(例、1mm)を有する。
【0041】
ガイド部材は、ガイド部材によって案内される移植装置あるいは器具が、移植のためにガイド部材に沿って摺動自在に案内されるような任意の好適な寸法に形成される部材である。ガイド部材は、剛性、可撓性、あるいは順応性を備える材料である。ガイド部材は、中実の部材、例えば中実のガイドワイヤあるいは探り針である。ガイド部材は中空の部材であり、例えば、ガイド部材は針あるいはカニューレであるかこれらを含む。ガイド部材は、その遠位端に、フィステルの少なくとも一部を形成するべく組織を切断するように構成される切削刃を含む。切削刃を備えるこの中空のガイド部材は、針または切断カニューレである。切削刃を備えるこの中空のガイド部材は、移植装置の移植のために所望の寸法となるようにより大きく続いて形成される最初の穴を切断することに有用である。
【0042】
キットは、移植処置の間に移植装置を搬送するために、移植器具とも呼ばれる輸送器具を含む。この輸送器具は、先端を備える輸送部材を含み、輸送部材は、眼窩の涙器と副鼻腔との間のフィステルを通して配置されるように構成され、先端は、副鼻腔に配置される。輸送器具は、輸送部材に接続される、手操作可能な取っ手を含む。移植装置は、移植装置の移植のために輸送部材に取り付け可能であり、取り付けられた移植装置は、取っ手と先端との間に配置され、輸送部材は内部通路を通して配置され、移植装置の近位端は、取っ手に向かって配置され、移植装置の遠位端は、部材の先端に向かって配置される。移植装置が移植のために取り付けられる場合、輸送部材および輸送器具は、移植処置の間に移植装置の移植のために移植装置から取り外し可能であり、副鼻腔への流体のアクセスを提供する。移植装置が移植物配置用の輸送部材に取り付けられる場合の、移植装置の内部通路における輸送部材の空隙適合部は、確実な適合、および移植中の移植装置の側面の変形の防止の確実な支援のために小さい。例えば、この空隙適合部は、0.5ミリメートル未満、0.4ミリメートル未満、0.3ミリメートル未満、0.2ミリメートル未満、あるいは0.1ミリメートル未満である。移植装置の内部通路における輸送部材が、これらの間に気密な適合を有することにより、取り付けられた装置を備えた輸送器具が前進されて、移植のためにフィステル内に輸送部材および取り付けられた移植装置を前進させる(押圧付勢する)際に、移植処置時に移植装置が蛇腹状に束ねられることを防止することが支援される。
【0043】
キットの任意の部分および全ての部分は、共通の箱、袋、あるいは他の共通の包囲物のような共通の包装内に好都合に含まれる。キットのうちのいくつかあるいはすべての要素は、殺菌され、例えば密封された袋や包装物のような密封された包囲物内にシールされる。
【0044】
本開示の第3の態様は、副鼻腔に対する医学的処置を行い、かつ/または治療混合物を投薬し、あるいは副鼻腔に向けられた移植された移植装置を通して医療手術を行う方法を含む。
【0045】
多くの特徴および付加的な特徴は、本開示の第3の態様に適用可能である。これらの特徴および付加的な特徴は、本開示の第3の態様や任意の態様の主題の範囲内で個別に、あるいは任意の組み合わせにて使用される。従って、次の特徴の各々は、任意の他の特徴の範囲内において、あるいは本開示の第1の態様、第2の態様、第3の態様、あるいは任意の他の態様の特徴の組み合わせの範囲内において使用されるが、そのような使用が要求されるものではない。
【0046】
第3の態様の方法の医学的処置は、涙器と連通する人工の流体の通路を設けるべく移植装置を移植する工程を含む。第3の態様の方法は、移植装置の移植のためのフィステルを形成するべく組織を切り取る工程を含む。これは、涙器と副鼻腔との間に人工的な流体の通路を設けるように構成された移植装置の場合のように、フィステルが骨を通過する場合、特に効果的である。組織を切り取ることにより、移植装置の導管の少なくとも一部を受承するための寸法のフィステルが形成される。フィステルは、涙器への近位端開口部を有する。移植装置の導管の少なくとも一部がフィステル内にあるように、移植装置が移植される。組織の切り取り後に、方法は涙器と副鼻腔とを流体接続するべく移植装置を移植する工程を含む。移植する工程は、輸送器具を使用して移植装置を移植位置に前進させる工程を含む。移植する工程は、輸送器具が移植位置に移植装置を押圧付勢するように輸送器具を前進させる工程を含む。移植する工程は、移植位置にガイド部材に沿って、あるいは輸送器具の輸送部材に沿って移植装置を摺動させる工程を含む。移植する工程は、移植位置に位置される移植装置から輸送器具を取り外す工程を含む。
【0047】
一変形において、第3の態様の方法は、涙器への近位端開口部および副鼻腔への遠位端開口部を有するフィステルを形成するために組織を切り取る工程と、涙器と副鼻腔とを流体接続させるべく移植装置を移植する工程とを含み、移植する工程は、移植装置が移植位置に至り、導管の遠位端が副鼻腔内に位置されるまで、移植装置が取り付けられる輸送器具を前進させ、導管をフィステルの近位端からフィステル内に押圧付勢する、輸送器具を前進させる工程と、移植位置に位置された移植装置から輸送器具を取り外す工程とを含む。
【0048】
別の変形において、第3の態様の方法は、涙器への近位端開口部を有し、かつ移植装置の導管の少なくとも一部を受承する寸法のフィステルを形成するべく組織を切り取る工程と、フィステル内またはフィステルよりも遠位側に配置される遠位端を有するガイド部材に沿って、移植装置をフィステルに向かって摺動させる工程と、移植装置の導管の少なくとも一部をフィステル内に配置する工程とを含む。
【0049】
第3の態様の方法の方法処置は、涙器を副鼻腔に流体接続する移植装置を通して副鼻腔に治療混合物を投与する工程であるか、工程を含む。
第3の態様の方法、あるいはその一部は、本開示の第2の態様のキットあるいはそのようなキットの部分を使用して行われる。方法が組織を切り取る工程を含む場合、組織を切り取る工程は、そのようなキットの切断器具を使用して組織を切断する工程を含む。切り取り工程やその一部の間に、切削部材は、ガイド部材による切断のために所定の位置を覆うように位置されるか、位置されず、また、所定の位置に案内されるか、案内されない。例えば、より小型の予備的な穴を形成するべく予備的な切断が行われ、ガイド部材は、遠位端が予備的な穴内に、あるいは予備的な穴よりも遠位側に位置されるように配置され、切削部材は、ガイド部材を覆うように摺動し、組織を切断し、移植装置を移植するための所望の寸法のより大きなフィステルを形成する。別例として、単一の最終的な切断が行われ、ガイド部材の支援を伴うことなく、かつ予備的な穴を形成することなく移植のための最終的な所望の寸法の穴が形成されてもよい。この点において、眼窩に面する節骨の上の肩部は、篩骨蜂巣の切断を配向するための好都合な目標であると認識されている。肩部はウィロビーの肩部と命名されている。方法が副鼻腔に治療混合物を投与する工程を含む場合、治療混合物は、第2の態様のキットに関して上述したとおりである。
【0050】
組織を切り取る工程は、ドリルにより組織を通してドリリングすることによって組織を取り払うことによって実施され、このドリルは第2の態様のキットにおいて提供される。
第3の態様における(あるいは第2の態様における)移植装置は、移植装置の対向する長手方向端部における近位端および遠位端と、近位端と遠位端との間に位置される導管と、移植装置の近位端と遠位端との間を導管を通して延びるとともに、移植装置の近位端における第1の端開口部と、移植装置の遠位端における第2の端開口部とを有する第1の内部通路と、2ミリメートル乃至50ミリメートルの範囲における、移植装置の近位端と遠位端との間の長手方向長さと、0.25ミリメートル乃至5ミリメートルの範囲における、長さを横断する第1の内部通路の幅とを備え、移植装置は、移植装置の近位端が涙器に配置されるように移植されるように構成される。
【0051】
第3の態様における移植装置は本開示の第1の態様における移植装置であるか、あるいは例えば移植装置が第1の態様によるものでなくても、本開示の第1の態様に関して開示される任意の1つ以上の特徴を含む。移植装置は第2の態様に関して開示されるものであるか、あるいは第2の態様に関して開示される任意の1つ以上の特徴を有する。
【0052】
これらおよび他の態様、並びにその特徴は、さらに後述されるか、図面および下記の明細書から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】涙器から副鼻腔に流体のアクセスを提供するための移植物用のいくつかの例による経路を示す図。
図2】一実施形態における移植装置を示す斜視図。
図3】同実施形態における図2に示すような移植装置を示す側面図。
図4】同実施形態における図2に示すような移植装置を示す端面図。
図5】同実施形態における図2に示すような移植装置を部分的に示す斜視図。
図6】一実施形態における移植装置を部分的に示す側面図。
図7】一実施形態における移植装置を部分的に示す側面図。
図8】移植装置のためのアンカー突出部のための様々な構成を示す断面図。
図9】移植装置のための様々な頭部構成を示す図。
図10】一実施形態における移植装置を示す斜視、正面、側面、および端面図。
図11】いくつかの可能な寸法の例を示す、一実施形態における移植装置の斜視、正面、側面、および端面図。
図12】一実施形態における移植装置を示す斜視、正面、側面、および端面図。
図13】いくつかの可能な寸法の例を示す、一実施形態における移植装置の斜視、正面、側面、および端面図。
図14】一実施形態における移植装置の頭部が涙丘と半月ひだとの間で眼窩内に配置される、移植装置の配置を示す図。
図15】外科的処置時に眼窩と篩骨蜂巣との間にフィステルを形成するための切断器具の形態における手術用具の使用を示す図。
図16】外科的処置時におけるフィステルの形成後のガイドワイヤの挿入を示す図。
図17】外科的処置時におけるフィステルのガイド部としての適所におけるガイドワイヤを示す図。
図18】外科的処置時における移植装置の移植のための輸送器具の形態における手術用具の使用を示す図。
図19】外科的処置時における移植後の移植装置の配置を示す図。
図20】副鼻腔アクセス移植装置を移植し、この副鼻腔アクセス移植装置を使用して医療処置を行うことに有用な、一実施形態におけるキットを示す図。
図21】一実施形態における移植装置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図面は本開示の様々な態様および可能な特徴、並びにこれらに適用可能な付加的な特徴の理解を支援するべく含まれる。図面に示す特徴は、例示の目的のためにのみ示され、必ずしも正確な縮尺ではなく、必ずしもすべての点を詳述するものではない。
【0055】
用語「涙器」および「涙器系」は、ここでは交換可能に使用され、眼球を円滑にすべく涙の流体を生成および分泌し、眼窩における涙の流体の貯水池に涙の流体を含み、眼窩から鼻腔に涙の流体をドレナージュ可能な生理学的要素の集合体を示す。涙器は、涙腺、涙ドレナージュ系、および涙腺と涙ドレナージュ系との間に位置される涙の流体の貯水池を含む。涙の流体の貯水池は、眼瞼縁および結膜嚢を含む(また、通常涙の湖と呼ばれるより低い結膜円蓋における涙のプールを含む)。涙ドレナージュ系は、涙点、小管、および鼻涙管を含み(鼻涙管の頂部に位置するいわゆる涙嚢を含む)、これらを通して過剰な涙がハスネル弁、および鼻腔に流出する。図1は涙器を概略的に示す。眼窩内に配置される眼球104の表面を円滑にするために、涙の流体は涙腺102から生成されるとともに分泌される。涙の流体は、眼球104を覆うコーティングを形成し、通常結膜嚢(結膜によって並べられる下眼瞼106、上眼瞼108、および眼球104間の空間)内に含まれる。過剰な涙の流体は、中間の眼角(目の中間部の隅部)の近傍に案内され、涙小管112内に、および鼻涙管116の涙嚢114内に涙点110を通して流出する。涙の流体は、続いて鼻涙管116からハスネル弁を通して鼻腔内に流出する。
【0056】
ここに使用されるように、涙器と副鼻腔との間のフィステルは、涙器を副鼻腔に流体接続する人工的に形成された通路を示す。このフィステルは外科的に形成される。副鼻腔は、前頭部洞、上顎洞、篩骨蜂巣、および蝶形骨洞を含み、これらはそれぞれ前頭骨、上顎骨、篩骨、および蝶形骨内に含まれる穴である。副鼻腔は鼻腔に流出する。図1は、涙器の面に対する前頭部洞122、上顎洞124、および篩骨蜂巣126の近傍の概略、並びに点線によって示すフィステル経路のいくつかの例をさらに示す。第1の例のフィステル経路130は、眼窩から前頭部洞までである。際2の例のフィステル経路132は、眼窩から篩骨蜂巣126までである。第3の例のフィステル経路134は、眼窩から上顎洞124までである。第4の例のフィステル経路136は、鼻涙管116の頂部における涙嚢114から篩骨蜂巣126までである。第5の例のフィステル経路138は、涙嚢114よりも下方の位置の鼻涙管116から篩骨蜂巣126までである。第6の例のフィステル経路140は、涙嚢114よりも下方の位置の鼻涙管116から上顎洞124までである。図1に示す例によるフィステル経路は、概略的に示す目的のためのみのものであり、涙器の一部を対応する副鼻腔に接続するためにフィステルが形成される正確な位置を示すものではない。図1に示さないが、蝶形骨洞へのフィステル経路の例は、眼窩から蝶形骨洞まで、および鼻涙管116から蝶形骨洞までを含む。
【0057】
図2乃至5は、例えば、一実施形態において、図1に示す第1の経路130、第2の経路132、あるいは第3の経路134でフィステルを通して移植される移植装置を示す。図2乃至5に示すように、移植装置200は移植装置200の対向する長手方向端部に位置される近位端202および遠位端204を有する。移植装置200は、近位端202における頭部206、および頭部206から遠位端204まで延びる導管208を含む。内部通路210は、近位端202から遠位端204まで延び、頭部206および導管208を通過する。内部通路210は、近位端202および遠位端204で開放され、これにより、移植装置200の長手方向全長を通して通路を設ける。図2に示す実施形態の内部通路210は、一様な円形の断面(移植装置200の長さを横断する)を備える円筒形状を有し、内部通路の幅は、断面の円の径と等しく、かつ移植装置200の長さに沿って一様である。移植装置200の長手方向に沿った長さは、近位端202と遠位端204との間の最小の距離であり、通常内部通路210の軸線に沿った近位端202から遠位端204までの距離と等しい。移植装置200は、導管208の外側部分上に複数のアンカー突出部212を含む。図2乃至5に示す実施形態において、アンカー突出部212は、各々が導管208の全周の周囲を延びる一定間隔で配置された周方向隆起部の形態にある。アンカー突出部212の周方向隆起部に隣接して、導管208の外側部分上の窪み214の領域が設けられる。
【0058】
頭部206は、頭部206の片側に導管208に向かって位置されるフランジ付き組織係合面216を有し、このフランジ付き組織係合面216は、フィステルの近位端に隣接する組織と係合するとともに移植装置200の近位端202が移植後にフィステルから抜け出ることを防止するように効果的に構成される。フランジ付きの組織係合面216の反対側の頭部206の他方の側に、頭部206のフェース面218が設けられる。フェース面218は、移植装置が移植される際、フランジ付き組織係合面216が係合する組織から離間するように配置される。頭部206は、フランジ付き組織係合面216およびフェース面218の両者に第1の寸法220および第2の寸法222を有する。第1の寸法220は、各面の長さであり、第2の寸法は各面の幅である。この長さおよび幅は、主寸法および副寸法とも呼ばれる。面216あるいは218の第1の寸法220は、面の外側縁における地点間の最大分離距離(頭部を横断する最大の断面寸法)に相当し、面216あるいは218の第2の寸法222は、第1の寸法を横断(直交)する線上にある面の外側縁上の地点間の最大分離距離に相当する。好適に、フェース面218およびフランジ付き組織係合面216は、対応する外側縁により形成され、これにより、要求されるものではないが、対向する面216および218は略等しい長さ寸法および幅寸法を有する。図2乃至5に示す実施形態における場合と同様に、面216および218が対応する形状を有する場合、第1の寸法220および第2の寸法222を、通常それぞれ頭部206の長さおよび幅と呼ぶ。面216および面218が対応する形状を有さない場合、頭部の長さ寸法および幅寸法は、面216および面218の長さ寸法および幅寸法の1つ以上と異なるであろう。頭部206は、面216と面218との間の深さ寸法223を有する。
【0059】
図2乃至5を継続的に参照して、導管208は、導管208の長さを横断するアンカー突出部212の最大の範囲によって形成されるような導管208の最大の外側幅である第1の外側幅224を有する。導管208は、窪み214の領域の最も窪んだ部分間に形成される導管208の最小の外側幅である第2の外側幅226を有する。図2乃至5に示す実施形態において、アンカー突出部212の高さは、導管208の第1の外側幅224と第2の外側幅226との間の差の2分の1に等しい。図2乃至5に示す頭部206の構造体において、頭部の第1の寸法220は、導管208の第1の外側幅224および第2の外側幅226の両者よりも大きく、頭部の第2の寸法222は、導管208の第1の外側幅224と略等しい。
【0060】
図2乃至5を継続して参照すると、アンカー突出部212は、一定間隔で配置される周方向隆起部の形態にあり、周方向隆起部は、窪み214の領域に隣接して位置される隆起部の底部に最大の幅を有し、この幅は、窪み領域214から離間して位置される隆起部212の頂部で最小となるように先端ほど先細である。アンカー突出部の他の構成が可能であり、移植装置上のすべてのアンカー突出部は同じ寸法、外形、あるいは高さである必要がない。同様に、窪みの領域は変化する構成を有してもよく、移植装置上のすべての窪みは同じ寸法あるいは構成である必要がない。移植装置200は、頭部206の深さ223および導管208の長さを含む長さ228を有する。アンカー突出部212は導管208の長手方向部分230上にある。
【0061】
図6を参照して、別例による移植装置の導管240が示される。移植装置は、ノブ、あるいはボタンの形態のアンカー突出部242、およびアンカー突出部242に隣接する窪み244の領域を有する。導管240は、アンカー突出部242によって形成される第1の外側幅246、およびより小さな、窪み244の領域によって形成される第2の外側幅248を有する。図7にアンカー突出部のための別の構成の一例を示す。図7に示すように、移植装置の導管250は、導管250の外側表面にアンカー突出部252および窪み254の領域を有する。アンカー突出部252は、導管250の長手方向長さの一部に沿って延びる連続的な螺旋状の隆起部の形態にある。導管250は、アンカー突出部252によって形成される第1の外側幅256、およびより小さな、窪み254の領域によって形成される第2の外側幅258を有する。図2乃至5に示す実施形態と同様に、図6および図7に示す実施形態の導管は、各導管のより大きな外径およびより小さな外径間の差の2分の1に等しいアンカー突出部の高さを含む。図6および図7の実施形態から評価されるように、第1の外側幅は、アンカー突出部を包含する包囲する量の幅として決定される。
【0062】
図8は、アンカー突出部の基部からアンカー突出部の頂部に向かう方向に先端ほど細くなる幅を含む、アンカー突出部のいくつかの形状の例を示す。図8は、アンカー突出部構造体の断面(A乃至Dで示す)を示し、それぞれ頂部におけるよりも基部においてより大きな幅を有する。図8にアンカー突出部の高さ(H)および基部幅(W)を示す。
【0063】
図9は、移植装置の頭部のためのいくつかの異なる構造体の例(E乃至Hで示す)を示す。各頭部の構造体における頭部の構造体の長さ寸法(L)および幅寸法(W)を示す。構造体E乃至Hの頭部は、移植装置の近位端におけるフェース面(移植時にフィステルに面していない面)および内部通路の開口部を示す端部上に示される。構造体F乃至Hは、幅より大きな長さを有し、隣接する眼球の内眼角と中間部との間、例えば、半月ひだと涙丘との間で眼窩内へのフィステル開口部と組み合わせた使用のために効果的に構成され、好ましくは、頭部が眼球に隣接する眼窩の底部から眼窩の頂部に向かう方向に通常延びる長さ寸法を有し、構造体Hにおいて、半月体の凹部が眼球に向かって配置され、半月体の凸部が涙丘に向かって配置される。
【0064】
図10は、頭部702および導管704を備える移植装置700を示す。導管704は、第1の長手方向部分706、および第1の長手方向部分706よりも遠位側に配置される第2の長手方向部分708を含む。第1の長手方向部分706は、円滑な外側表面を含み、第2の長手方向部分708は、一定間隔で配置される周方向隆起部の形態のアンカー突出部710、およびアンカー突出部710間の窪み領域712を含むアンカー固定面を含む。第2の長手方向部分708のアンカー固定面の始点の前に配置される第1の長手方向部分706の長さは、患者の快適さのために「浮かぶ」ように移植されると、頭部702に隣接する結膜組織に効果的に配置される。第2の長手方向部分708のアンカー固定要素は、頭部702から所定の距離に効果的に配置され、これにより、1つ以上のアンカー突出部710は、移植時に移植装置700が貫通する副鼻腔の骨壁の近傍に位置され、好ましくは1つ以上のアンカー突出部は骨の各側に配置される。図10に示す実施形態において、導管704の外側幅は、第1の長手方向部分706の全長にわたって、および第2の長手方向部分708の窪み領域712において略同じである。導管704は円形の断面を有し、これにより、導管704に沿った任意の位置の導管704の外側幅は、その位置の導管704の円形の断面の径によって示される。図10に示すように、移植装置700は、移植装置700の近位端716から遠位端718までの長さ714を有する。第2の長手方向部分708の始点は、近位端716よりも遠位側の距離720の位置に配置される。アンカー突出部710は、アンカー突出部722の基部に幅722、および隣接した窪み領域712の上に高さ724を有する。アンカー突出部710は、中心間の間隙726に一定間隔で配置される。導管704は、アンカー突出部710の頂部に対応する最大の外側幅728を有し、この最大の外側幅728は、アンカー突出部710の頂部における導管704を通した断面の円の径と等しい。導管704は、第1の長手方向部分706の長さに沿って、および導管704の第2の長手方向部分708の窪み領域712に最小の外側幅730を有し、この最小の外側幅730は、これらの位置における円形の断面の径と等しい。頭部702は、長さ寸法732、幅寸法734、および深さ寸法736を有する。移植装置700は、導管704の長さを通して近位端716と遠位端718との間を延びる内部通路738を有する。内部通路738は幅740を有し、この幅740は、本実施形態における内部通路738の円形の断面の径と等しい。図11は、図10に示すものと同じ移植装置700を示し、1つの非制限的例における移植装置700の構造体のためのミリメートルのいくつかの例示的な寸法を示す。
【0065】
図12は、導管の第2の長手方向部分のアンカー固定面の窪み領域よりも肉厚な壁部を有する導管の第1の長手方向部分を含むこと以外は、図10および図11に示す移植装置700と同様の移植装置800を示す。導管の第1の長手方向部分におけるより肉厚な壁により、導管のその部分に付加的な剛性が得られ、これにより、移植処置の間に所定の位置に移植装置800を押圧付勢することが促進される。導管の第2の長手方向部分の窪み領域のより肉薄な壁部により、その部分はより容易に変形し、移植時にフィステルを通して適合し、続いて組織と係合するように拡張し、移植装置800をアンカー固定する。より詳細に、図12に示すように、移植装置800は、頭部802および導管804を含む。導管804は、第1の長手方向部分806、および第1の長手方向部分806よりも遠位側に位置される第2の長手方向部分808を有する。第1の長手方向部分806は、略一定の外側幅を備えた実質的に円滑な外側表面を含み、この略一定の外側幅は、第1の長手方向部分806に沿った、導管804の円形の断面の径である。第2の長手方向部分808は、周方向隆起部の形態のアンカー突出部810、およびアンカー突出部810間の間隙の窪み領域812を含むアンカー固定面を含む。図12に、図10の移植装置700に例示されるものと同様の、移植装置800の様々な寸法を示す。移植装置800は、移植装置800の近位端816から遠位端818までの長さ814を有する。第2の長手方向部分808の始点は、近位端816よりも遠位側の距離820の位置に配置される。アンカー突出部は、基部に幅822、および隣接した窪み領域812の上に高さ824を有する。アンカー突出部は、中心間の間隙826にて一定間隔で配置される。導管804およびさらに第2の長手方向部分808は、アンカー突出部810の頂部に生じる最大の外側幅828を有し、この最大の外側幅828は、アンカー突出部810の頂部を通して導管804の円形の断面の径と等しい。導管804、および導管804の第2の長手方向部分808は、窪み領域812に位置される最小の外側幅830を有する。頭部802は、長さ寸法832、幅寸法834、および深さ寸法836を有する。移植装置800は、導管804の長さを通して近位端816と遠位端818との間を延びる内部通路838を有する。内部通路838は幅840を有し、この幅840は、図12に示す実施形態において、内部通路838の円形の断面の径と等しい。
【0066】
図12を継続的に参照して、導管804の壁厚(内部通路838と導管804の外側表面との間の壁部の厚み)は、第2の長手方向部分808の窪み領域812におけるよりも第1の長手方向部分806に沿ってより大きい。内部通路838は、導管804の長さに沿って一定の幅を有し、第1の長手方向部分806に沿った導管804のより大きな壁厚により、外側幅842は、窪み領域812の最小の外側幅830よりも大きくなる。アンカー突出部810の最大の外側幅828は、第1の長手方向部分806に沿った外側幅842よりも大きい。図13は、1つの非制限的例における移植装置800の構造体のためのミリメートルのいくつかの例示的な寸法を示す。
【0067】
図21は、図20の移植装置800の変形を示す。図21の移植装置800’は、移植装置800’が導管804’の遠位部の壁部を通して複数の側方開口部850(これらは、孔、穴、あるいはポートとも呼ばれる)を含むこと以外は、図20の移植装置800と同じ特徴を有する。側方開口部850は、移植装置800’の移植時に、副鼻腔に配置される導管壁の一部上に配置され、これにより、導管804’の遠位端の内部通路の遠位側開口部が所定の理由により閉鎖されるか制限されたとしても、側方開口部850により、移植装置800’の内部通路と副鼻腔との間の連通のための通路が得られる。図21に示す所定の実施において、移植装置800’の側方開口部850は、導管804’のアンカー固定面の一対の周方向隆起部間の窪み領域に位置される。図21は、一対の周方向隆起部間の1つのみの窪み領域に配置される側方開口部850を示すが、1つ以上の同様の側方開口部が、さらに、あるいはこれに代えて、異なる1対の周方向隆起部間のより近位側の窪み領域に配置されてもよい。
【0068】
図14は、涙丘142と半月ひだ144との間で眼窩から結膜下に形成されるフィステルを通過する導管を備える移植装置の一例を示し、涙丘142と半月ひだ144との間の眼窩に配置される移植装置の頭部304のための位置の例を示す。頭部304は、例えば、図2乃至5、図10乃至13のいずれかに示す頭部構造体、あるいは図11に示す構造体F乃至Hのような長尺状をなす構造体により示される。
【0069】
図15乃至18を参照して、フィステルを形成する工程、および副鼻腔へのアクセスを提供するように移植装置を移植する工程を含む外科的処置のいくつかの例、並びにこれとともに使用される手術用具のいくつかの例を後述する。
【0070】
図15に、涙丘142と半月ひだ144との間の組織を通してフィステルを形成する工程における進入器具600の形態の手術用具を示す。組織の参照符号は図1のものと同じである。フィステルは、眼窩の結膜嚢と篩骨蜂巣126との間の組織によって形成される。フィステルの経路は図1に示すような通常のフィステル経路132と一致するであろう。進入器具600は、中空の切削先端610を備えた中空の作動部材606を含み、切削先端610の形状は、結膜嚢から篩骨蜂巣126までフィステルを形成するべく組織を切り取ることに好適である。進入器具600は切断器具とも呼ばれ、作動部材は切削部材とも呼ばれる。進入器具600は手操作可能な取っ手612を含む。取っ手612は、中空の作動部材606を前進または後退させるべく前進または後退される。図15に示すように、結膜嚢と篩骨蜂巣126との間にフィステルを形成するために、切削先端610は、結膜嚢における所定の位置から丘142と半月ひだ144との間を前進されている。図示のように、フィステルは、篩骨蜂巣126にアクセスするために丘142、小管112、および鼻涙管116の背面を通過する。
【0071】
進入器具600が最初に篩骨蜂巣126へのフィステルを形成するために使用された後に、ガイドワイヤあるいは他のガイド部材が、続いて取っ手612および中空の作動部材606を通して延びる内部通路を通して挿入される。図16は、取っ手612および作動部材606を通して挿入されたガイドワイヤ620を示す。ガイドワイヤ620の挿入後に、進入器具600は、図17に示すように、ガイドワイヤ620をフィステルへのガイド、およびフィステルを通したガイドとして所定の位置に残し、フィステルから後退されるとともに取り払われる。ガイドワイヤ620は、フィステルに向かって、およびフィステルを通して篩骨蜂巣126内に付加的な器具をガイドすることに利用可能である。
【0072】
図18を参照して、ガイドワイヤ620は、移植器具624の形態における手術用具をガイドするために使用されている。移植器具は輸送器具とも呼ぶ。移植器具624は、中空の作動部材626および手操作可能な取っ手628を含む。フィステルが最終的な所望の寸法に既に形成されている場合、作動部材626はフィステルの形成後に進入器具600を使用して付加的に組織を切断する必要がないので、作動部材626は、図18に示すように、鈍い先端を有する。作動部材626は輸送部材とも呼ばれる。移植器具624は、取っ手628および中空の作動部材626を通過する内部通路を含む。図18に示すように、ガイドワイヤ620は、移植器具624の内部通路を通してねじ係合し、フィステルに向かって、およびフィステルを通して篩骨蜂巣126内に中空の作動部材626をガイドする移植装置630は、移植器具624の中空の作動部材626に取り付けられる。図18は、移植装置630の遠位端が結膜嚢内へのフィステル開口部の近位端の近傍に位置される地点に向かって前進される移植器具624を示す。この位置から、移植装置630はフィステル内に前進され、移植装置630の頭部は結膜嚢における結膜に隣接して配置され、移植装置630の遠位端は篩骨蜂巣126内に延びる。例えば、外科医は、移植のためにフィステルを通して配置するための中空の作動部材626を下るように移植装置630を摺動させるか、あるいは、外科医は、取っ手628が移植物配置のためにフィステル内に移植装置630を押し込むように取っ手628を前進させる。中空の作動部材626の外径は、移植装置630の内径に気密に適合するような寸法に形成され、これにより、移植装置630がフィステル内に押圧付勢される際に、移植装置630が束ねられるとともに横断方向に変形することを防止することが支援される。取っ手628および中空の作動部材626は、移植装置630用の輸送具を形成する。移植装置630がフィステルを通して移植のために適切に位置された後に、取っ手628は後退され、中空の作動部材626は移植装置630から取り払われる。図19は、移植器具624の中空の作動部材626の取り外し後の移植される際の移植装置630を示す。移植されると、移植装置630の近位端の頭部632は、丘142と半月ひだ144との間の眼窩内で結膜嚢における結膜に隣接して配置され、移植装置630の遠位端634は、篩骨蜂巣126に配置される。組織と係合するとともに移植装置630をアンカー固定することを支援するために、移植装置630の導管のいくつかのアンカー突出部636は、フィステル内に配置される。移植装置630は、医学的処置または治療を行うために、例えば篩骨蜂巣に治療混合物を投与するかあるいは篩骨蜂巣から流体を吸引するために、篩骨蜂巣126へのアクセスを提供するために使用される。
【0073】
図15乃至19に関して開示されるような処置により、進入器具600の作動部材606はより大きな径の作動部材626を有し、移植装置630を収容するために好適な寸法のフィステルを形成する。移植装置630は、続いて移植器具624を使用して別の工程で移植され、移植装置630は、フィステルを形成するために使用される作動部材606より小さな径を効果的に有する作動部材626で輸送される。代替として、フィステルを拡大するか、あるいは移植のために所望の寸法の穴を形成するべく付加的に組織を切断する中間の工程が、進入器具600によりフィステルを最初に形成する工程と、移植器具624を使用して移植装置630を移植する工程との間に行われてもよい。
【0074】
図15を再び参照して、任意により1つ以上の処置が、中空の作動部材606を後退させるに先立って行われてもよい。1つ以上の流体が中空の作動部材606を通して射出される。例えば、造影剤が中空の作動部材612を通して射出され、移植に移る前に、適切な位置にフィステルが形成されたことを確認するために画像化される。
【0075】
切断は、例えば、組織を切断する針やカニューレのような切断器具、あるいは組織をドリリングして通すドリルにより行われる。方法は所望のフィステルの位置に最初の穴を切断して形成する工程、および移植処置を完了するためにガイド部材およびさらなる器具を続いて使用する工程を含む。例えば、最初の切断は、予備的な穴を形成するためになされ、より大きな標準規格注射針、あるいは切断カニューレが、移植装置の移植のためにフィステルを最終的な所望の寸法に切断して形成するべくガイド部材によってガイドされる。これに代えて、切断される最初の穴は、移植装置の移植のための最終的な所望の寸法である。穴が所望の寸法に形成された後に、ガイド部材は、移植装置の移植のために移植装置、あるいは移植装置が取り付けられる輸送器具をフィステルにガイドすることに続いて使用される。一例として、小型の標準規格注射針が最初の切断を形成するために使用され、ガイドワイヤがフィステルの制御を保持するために針を通してフィステル内に続いて挿入される。より小型の標準規格注射針は続いて後退され、より大型の標準規格注射針の形態の第2の切断器具が、ガイドワイヤを伝って摺動し、移植装置の移植に適切な寸法にフィステルを切断して形成するために適切な位置に案内される。このような操作を行うためのキットは、移植装置、より小型の標準規格注射針、ガイドワイヤ(ガイド部材としての)、および最終的な所望の寸法にフィステルを形成するための切断器具としてのより大型の標準規格注射針を含む。別例として、最初の切断器具、あるいはその一部は、後の切断器具のためのガイド部材として使用されてもよい。例えば、最初の切断は、クモ膜下穿刺針や同様の構成による、取っ手を有するより小型の標準規格注射針を使用してなされる。最初の切断後に、取っ手あるいは頭部は、切り取られるとともにより小型の標準規格注射針から取り払われ、より大型の標準規格注射針の形態の切断器具はより小型の標準規格注射針を伝って続いて摺動され、最終的な所望の寸法のフィステルに穴を切断する。より大型の標準規格注射針は続いて取り払われ、移植装置は、より小型の標準規格注射針を伝って摺動し、移植のための適切な位置に案内される。このような操作を行うためのキットは、移植装置、より小型の標準規格注射針(ガイド部材として機能する)、および最終的な所望の寸法にフィステルを形成するための切断器具としてのより大型の標準規格注射針を含む。これに代えて、キットは、最終的な所望の寸法の穴を切断して形成する寸法に形成される1つの切断器具(例、中空の針あるいは切断カニューレ)を含み、さらなる切断または拡張により拡大されることなくこの穴を通して移植装置が移植される。
【0076】
図20を参照して、副鼻腔アクセス移植装置を移植するとともに移植装置を通して副鼻腔に治療混合物を輸送するための要素を含む、例による実施形態におけるキットが示される。図20に示すように、キット968は副鼻腔アクセス移植装置970を含む。移植装置970は、例えば図2乃至13のうちのいずれかに関して開示される特徴による任意の構成を有するか、異なる構成を有する。キットはさらに副鼻腔流体操作器具972を含み、これは注射器974の形態の流体ディスペンサ、および鈍い先端の中空の針の形態の流体放出部材977を含む流体輸送アタッチメント976を含む。流体輸送アタッチメント976は、移植装置970の近位端における頭部と係合するように遠位端に係合構造体を含み、これにより、注射器974のバレル内からの流体の輸送を促進し、流体放出部材977の先端から放出する。注射器974は、注射器974のバレルに配置されるピストン978を含み、これは、プランジャ980を前進または後退させることにより手操作可能であり、これにより、注射器バレルのピストン978を移動させ、圧力を生じさせて注射器バレルから流体輸送アタッチメント976を介して流体を放出するか、真空を生じさせて流体輸送アタッチメント976を通して注射器バレル内に流体を吸引する。流体操作器具972は、図20に示すように組み立てられた注射器974および流体輸送アタッチメント976を備えるか、あるいは図20に示すようなアセンブリに組み立てることができる、個別の分解された部分としての注射器974および流体輸送アタッチメント976を備える。いくつかの好ましい実施において、注射器974は、注射器974のバレル内に配置される治療混合物で予め充填される。この予め充填した注射器974は、図20に示すような流体輸送アタッチメント976、および好ましくは流体輸送アタッチメント976を覆う保護キャップと組み立てられるキット968に設けられる。保護キャップは、操作器具972の使用のための医師によって取り払われ、副鼻腔へのアクセスを提供するために移植装置970が移植された患者に治療混合物が投与される。注射器974のバレルに配置される治療混合物は、上述したように、例えば灌水液あるいは薬剤である。
【0077】
図20に示すようなキット968は、眼窩の涙器と副鼻腔、例えば前面の上顎洞、あるいは篩骨蜂巣との間にフィステルを形成するための器具も含む。図20に示すように、キット968はさらなる切断あるいは拡張による拡大を伴うことなく移植装置970の移植に好適な寸法のフィステルを形成するために組織を切り取るための中空の切削部材984(例、中空の針)を有する切断器具982を含む。これに代えて、キットは、最初の穴を形成するためのより小型の標準規格切削部材、あるいは貫通部材を備えた切断器具を含み、また、1つ以上の付加的な器具(例、より大型の標準規格切削部材および/または拡張器を備えた切断器具)が、移植のための最終的な所望の寸法に最初の穴を拡大するべくキットに含まれてもよい。切断器具982は、例えば図15および図16のうちのいずれかに関して開示される特徴によるまたは特徴を含む構成を有するか、異なる構成を有する。
【0078】
図20に示すようなキット968は、輸送部材988を有する輸送器具986をさらに含む。輸送部材988は、移植装置970の内部通路を通して輸送部材988を挿入できるような外径の寸法に形成され、これにより、輸送部材988に移植装置970を取り付け、フィステルが所望の寸法に形成された後に移植するために移植装置970を輸送する。輸送器具986は、例えば図18に関して開示される特徴によるまたは特徴を含む構成を有するか、異なる構成を有する。輸送器具986および移植装置970は、図20に示すような個別の組立可能な部品としてキット968に設けられる。これに代えて、輸送器具986および移植装置970は、移植処置で使用するように準備される構成における輸送部材988上に予め取り付けられる移植装置970を備えるキットに設けられてもよい。
【0079】
流体放出部材977は、移植装置970を通して延びる内部通路に挿入されるように構成される。副鼻腔へのアクセスを提供するための移植装置970の移植後に、流体放出部材977は、移植後に眼窩に配置される移植装置970の近位端から内部通路に挿入される。移植装置970の内部通路内に流体放出部材977を挿入した後に、プランジャ980がピストン978を前進させるべく押圧され、注射器974のバレル内の治療混合物を流体放出部材977の遠位端に向かって強制的に流れさせるとともに遠位端から放出させる。流体放出部材977は移植装置970の内部通路に挿入され、これにより、治療混合物が放出されかつ治療混合物が内部通路から副鼻腔に流れるその内部通路に治療混合物が放出される際に、流体放出部材977の先端は内部通路に配置される。これに代えて、放出部材977は、放出部材の遠位端が内部通路の遠位端を出て副鼻腔内に至るまで、移植装置970の内部通路に挿入されてもよい。その場合には、治療混合物は流体放出部材977から副鼻腔内に直接放出される。
【0080】
切断器具982および輸送器具986は、ガイド部材(例えばガイドワイヤ)を挿入するための、これらを通る内部通路を有する。キットはこのガイドワイヤあるいは他のガイド部材を含む。
【0081】
様々な医療処置および処理は、副鼻腔へのアクセスを提供するために移植される副鼻腔アクセス移植装置を通して行われる。流体の治療混合物は、移植装置を通して副鼻腔に投与される。流体は副鼻腔から移植装置を通して吸引される。1つ以上の医療器具が移植装置を通して副鼻腔に挿入される。本発明およびその異なる態様の先の議論は、実例および開示の目的のために示されている。
【0082】
先の議論は、本発明を特にここに開示される1つ以上の形態のみに限定するようには意図されない。従って、上記の教示に均等な変更および修正、並びに関連する技術や知識は、本発明の範囲内にある。上述した実施形態は、本発明の実施のための公知の最良の形態をもっともよく説明すること、および当業者が本発明の所定の応用や使用により要求される様々な変形とともに上記あるいは他の実施形態において本発明を利用できるように意図したものである。添付の特許請求の範囲は、先行技術によって許容される程度まで別例を含めるように解釈されることが意図される。本発明の開示は、1つ以上の可能な実施および所定の変更および変形の開示を含むが、他の変更および変形は、本発明の範囲内であり、例えば、本開示を理解した後に当業者の技術および知識の範囲内にある。許容される程度まで別例を含む権利を取得するように意図される。これには特許請求の範囲に記載の別例の、交換可能な、および/または均等な構造体、機能、範囲や、工程が、ここに開示されるかどうかに関わらず、かつ任意の特許可能な主題を公に奉仕することなく含まれる。さらに、任意の開示される実施に関する開示されるか特許請求の範囲に記載される任意の要素は、要素が技術的に互換性が必ずしもない程度まで1つ以上の任意の他の実施の1つ以上の任意の要素との任意の組み合わせに組み合わされる。
【0083】
用語「備える」、「含む」、および「有する」、並びにこれらの用語の文法上の変形は、包括的なものであると意図され、そのような用語の使用はある条件や特徴の存在を示すが、さらに任意の他の条件や特徴の存在を排除するものではない点において非制限的なものである。1つ以上の要素、サブ要素、あるいは材料の存在に関する用語「備える」、「含む」、および「有する」、並びにこれらの用語の文法上の変形の使用も、用語「備える」、「含む」や、「有する」(あるいはこれらの用語の変形)が場合に応じて任意の下位概念の用語「のみからなる」(あるいはこのような下位概念の文法上の好適な変形)によって代えられるより具体的な実施形態を含むとともに開示するように意図される。例えば、ある物が記載される1つ以上の要素を「含む」という記載も、より具体的なより狭い実施形態における物が「記載される1つ以上の要素のみからなる」ことを含むとともに開示することを意図している。様々な要素の例は例示の目的のために設けられ、用語「例」、「例えば」等は、非制限的な例示であり、1つ以上の特徴を任意の所定の例に制限するものと解釈されるものではない。数が後に続く用語「少なくとも」(例、「少なくとも1つ」)は、その数、あるいはその数以上を意味する。用語「少なくとも一部」は、すべてあるいはすべて未満である一部を意味する。用語「少なくとも一部分」は、すべてあるいはすべて未満である一部分を意味する。
【0084】
図面中の要素は例示の目的のために示され、相対的な位置および相互作用が通常示されるものであり、図示の要素の縮尺は必ずしも正確なものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
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図11
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図13
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