(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246836
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】メソ構造VPO触媒によるアルコール化合物の酸化
(51)【国際特許分類】
C07D 307/46 20060101AFI20171204BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20171204BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20171204BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
C07D307/46
B01J35/10 301G
B01J31/02 102Z
!C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-556474(P2015-556474)
(86)(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公表番号】特表2016-509005(P2016-509005A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2014052188
(87)【国際公開番号】WO2014122142
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2017年1月5日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2013/071563
(32)【優先日】2013年2月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(73)【特許権者】
【識別番号】509016944
【氏名又は名称】セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(シー.エヌ.アール.エス.)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クレセン, ジャン−マルク
(72)【発明者】
【氏名】デカンポ, フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】グラッセ, ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】カトリーニオク, バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】ドメニィール, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ポール, セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ラタイ, ヴェロニク
【審査官】
奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−506984(JP,A)
【文献】
特表2006−515584(JP,A)
【文献】
MOISES A. CARREON , VADIM V. GULIANTS,MESOSTRUCTURED VANADIUM-PHOSPHORUS-OXIDE PHASES,MICROPOROUS AND MESO@POROUS MATERIALS,2002年,55,297-304
【文献】
MOISES A. CARREON AND VADIM V. GULIANTS,SYNTHESIS AND CHARACTERIZATION OF MESOSTRUCTURED VANADIUM-PHOSPHORUS-OXIDE PHASES,STUDIES IN SURFACE SCIENCE AND CATALYSIS,2002年,141,301-308
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/29
B01J 31/02
B01J 35/10
C07C 47/12
C07D 307/48
C07B 61/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤の存在下で、50℃〜200℃の間に含まれる温度で、少なくともメソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒の存在下での少なくともアルコール化合物の酸化反応によるアルデヒド化合物の製造方法。
【請求項2】
少なくとも次の工程:
(a)バナジウムリン混合酸化物化合物を水溶液中で界面活性剤と混合し、メソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒を生成するために加熱することによるメソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒の調製;および
(b)酸化剤の存在下で、50〜200℃の間に含まれる温度で、少なくともメソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒の存在下での少なくともアルコール化合物の酸化反応
を含む、アルデヒド化合物の製造方法。
【請求項3】
前記メソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒が、1°〜5°の間に含まれるXRD回折角シータを示す材料である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記メソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒が、少なくとも10m2/gのBET比表面積を提供する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記メソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒が、VO(PO3)2、(VO)2P2O7、VOPO4、VOPO4−2H2O、およびVOHPO4−0.5H2Oからなる群において選択される化合物から調製される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
界面活性剤が、非イオン性界面活性剤またはイオン性界面活性剤である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
界面活性剤がテトラアルキルアンモニウム塩である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
界面活性剤が、C12H25NMe3Br、C14H29NMe3Br、およびC16H33NMe3Br、ならびにC12H25NH2からなる群において選択される、請求項2〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アルコール化合物が、式(I)
R−(OH)x (I)
(式中:
− xは、1、2または3であり、
− Rは、直鎖、分岐または環状炭化水素基である)
の化合物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルコール化合物が、フルフリルアルコール、2,5フランジメタノール、2,5−テトラヒドロフランジメタノール、ベンジルアルコール、1,6−ヘキサンジオール、1,3ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、5−ヒドロキシメチルフラン−2−カルボキシアルデヒド、および1,4−ベンゼンジメタノールからなる群において選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルデヒド化合物が、フルフラール、2,5フランジカルボキシアルデヒド、2,5−テトラヒドロフランジカルボキシアルデヒド、ベンズアルデヒド、1,6−ヘキサンジアール、3−オキソブタナール、1,7−ヘプタンジアール、および1,4−ベンゼンジカルボキシアルデヒドからなる群において選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
反応媒体中の前記メソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒の重量が、とりわけ前記反応の開始時に、前記アルコール化合物の重量を基準として、1〜80重量%に含まれる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応媒体が、少なくとも1つの溶媒を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒が、アルカン溶媒、アルキル環状溶媒、芳香族溶媒、塩素溶媒およびエーテル溶媒からなる群において選択される非極性溶媒である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤の存在下で、50℃〜200℃に含まれる温度で、メソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒の存在下でのアルコール化合物の酸化反応によるアルデヒド化合物の製造方法に関する。反応媒体はまた溶媒を含んでもよい。
【背景技術】
【0002】
先行技術についての以下の考察は、本発明を適切な技術的前後関係に置き、そしてその利点がより十分に理解されることを可能にするために提供される。しかし、本明細書の全体にわたっての先行技術のいかなる考察も、そのような先行技術が広く知られているかまたは当該分野における共通の一般知識の一部を形成するという明確なまたは暗黙の了解と見なされるべきでないことは十分よく理解されるべきである。
【0003】
HMF(ヒドロキシメチルフルフラール)は、化学品へのバイオマスの変換において極めて重要なプラットフォーム分子と考えられる。しかし、フルクトースまたはグルコースなどの、糖類から誘導することができるHMFは、安定ではなく、容易に単離するのが困難である。それどころか、HMFの選択的酸化によって得ることができる、DFF(2,5−ジホルミルフラン)は、より安定であり、直接使用のためのまたは他の分子もしくはポリマー用の中間体として容易に単離することができよう。
【0004】
Co/Mn/Br/Zrアセテート混合物などの均一触媒(Partenheimer W.,Gruchin V.V.,Adv. Synth. Catal. (2001)343(1):102−111)または均一バナジウム錯体(Hanson S.K.,Wu R.,Silks L.A.P. Org. Lett. (2011)13(8):1908−1911)を使用する2,5−ジホルミルフランへの5−ヒドロキシメチルフルフラールの選択的酸化が記載されている。しかし、O
2との不均一触媒の使用が、反応生成物からのその容易な分離のために好ましい。
【0005】
酸化バナジウムV
2O
5がそのとき触媒と5−HMFとの間の2の重量比で国際公開第9617836A2号パンフレットにおいて使用されている。トルエン中10バールでの空気下に170℃で1時間30分の反応後に、転化率は91%、収率は62%である。V
2O
5をTiO
2上に担持し、触媒と5−HMFとの間の比を2に保つことによって、トルエン中16バールでの空気下に110℃、1時間30分で定量的転化率が97%の収率で何とか得られている。しかし、このタイプの担持酸化バナジウムは、Nieによって最近研究されており、報告されたDFFへの選択性は常に70%よりも下であった(Nie J.,Liu H.Pure Appl. Chem. (2012)84(3):765−777)。
【0006】
フロー化学酸化が担持5%w/w Pt/SiO
2を使用して行われたが、150psiの空気下に100℃で60%の5−HMF転化率およびDFFへの70%選択率をもたらしたにすぎなかった(Lilga M.A.,Hallen R.T.,Gray M.Top. Catal. 2010/53 1264−1269)。
【0007】
最良の選択率は、イソプロパノール中165℃で15バールの空気下にICaT−4 15%w/w銀置換か焼マンガンメソ多孔性材料(1の触媒/5−HMF重量比)の使用で報告され、それは、4時間で98%のHMF転化率でDFFへの100%選択率を与えた。この非常に高い温度は、135℃では60%転化率で、完全転化を得るために必要とされる。
【0008】
幾つかの研究は、HMFをDFFへ選択的に酸化できる触媒系、特にリン酸バナジウムの系統を報告している。
【0009】
酸化バナジウムおよびリン酸バナジウム酸化物が、いかなる精製もなしにフルクトースの脱水によって直接形成された5−HMFの酸化について国際公開第03024947A2号パンフレットによって報告された。空気バブリング下に150℃でDMSO中で使用されるV
2O
5は、形成されたHMFを基準として13時間後にDFFの58%収率をもたらす。150℃で5時間の空気バブリングおよび触媒と5−HMFとの間の0.5の重量比でDMSO中の市販5−HMFの酸化に関してVOPO
4またはVOHPO
4・0.5H
2Oなどの他のバナジウム酸化物が選別された。最良の結果は、DFFの80%超の収率で完全な転化を示した。DMSOの使用は、DFFの回収を困難にする。
【0010】
Carliniは次に、80℃でMIBK中1バールのO
2下に5−HMFとの0.4重量比においてVOPO
4・2H
2Oを使用することを試みた。6時間および5−HMFの98%転化後に、DFFへの選択率は50%であった(Carlini C.,Patrono P.,Raspolli Galleti A.M.,Sbrana G.,Zima V.Appl. Catal. A: Gen. (2005)289:197−204)。100℃での有毒な高沸点溶媒ジメチルホルムアミドの使用は、56%への転化率の低下で選択率を93%に上げた。バナジウム触媒の構造への鉄の組み込みは、87%での高選択率および59%での並の転化率を保ちながら触媒と5−HMFとの間の比を0.01に下げることを可能にした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、リン酸バナジウム混合酸化物の系統に関するこれらの研究は、DFFへの高い転化率および選択率を得ることが非常に困難であり、そして典型的には触媒の高い使用量または高温が必要とされることを示唆する。リン酸バナジウム混合酸化物触媒はそのとき、制限された転化率および選択率でHMFをDFFへ変換する反応に活性であることが実証された。工業化可能な方法を開発するという目的で、より活性で、かつ、選択的であり得る新規触媒を見いだすことが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
さて、本発明は、メソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒を生成するために触媒の構造内に界面活性剤添加物を使用することによってこの系統の触媒の活性および選択性を調整でき、最適化できることを示すように思われる。そのような改質は、同じ条件で触媒の活性ならびにそれらの選択性を大幅に改善することを可能にする。
【0013】
本発明はしたがって、酸化剤の存在下で、50℃〜200℃に含まれる温度で、少なくともメソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒の存在下での少なくともアルコール化合物の酸化反応によるアルデヒド化合物の製造方法に関する。
【0014】
本発明はまた、少なくとも次の工程:
(a)リン混合酸化物化合物を水溶液中で界面活性剤と混合し、メソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒を生成するために加熱することによるメソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒の調製;および
(b)酸化剤の存在下で、50℃〜200℃に含まれる温度で、少なくともメソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒の存在下での少なくともアルコール化合物の酸化反応
を含む、アルデヒド化合物の製造方法に関する。
【0015】
本発明はまた、前記方法によって得られやすい生成物に関する。
【0016】
本発明はしたがって、非常に活性な系統のメソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒の使用による、相当するアルデヒド化合物へのアルコール化合物の高い収率および選択率に達することを可能にする方法を提供する。
【0017】
定義
特許請求の範囲を含めて、本明細書の全体にわたって、用語「1つを含む」は、特に明記しない限り、用語「少なくとも1つを含む」と同じ意味であると理解されるべきであり、「〜」は、その両端を含むと理解されるべきである。
【0018】
「アルキル」は、本明細書で用いるところでは、直鎖もしくは分岐の飽和脂肪族炭化水素を意味する。好ましくはアルキル基は、1〜20個の炭素原子を含む。代表的な飽和の直鎖アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチルなどが挙げられ;一方、飽和の分岐アルキルとしては、イソプロピル、第二ブチル、イソブチル、第三ブチル、イソペンチルなどが挙げられる。
【0019】
「アルケニル」は、本明細書で用いるところでは、少なくとも1個の二重結合を含有する脂肪族基を意味し、「非置換アルケニル」および「置換アルケニル」の両方を含むことを意図し、それらのうちの後者は、アルケニル基の1個もしくは複数個の炭素原子上の水素に置き換わる置換基を有するアルケニル部分を意味する。代表的な不飽和の直鎖アルケニルとしては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルなどが挙げられる。
【0020】
用語「環状基」は、脂環式基、芳香族基、または複素環基として分類される閉環炭化水素基を意味する。用語「脂環式基」は、脂肪族基の特性に似ている特性を有する環状炭化水素基を意味する。
【0021】
「アリール」は、本明細書で用いるところでは、各環の0、1、2、3、または4原子が置換されている6−炭素単環または10−炭素二環芳香環系を意味する。アリール基の例としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。用語「アリールアルキル」または用語「アラルキル」は、アリールで置換されたアルキルを意味する。用語「アリールアルコキシ」は、アリールで置換されたアルコキシを意味する。
【0022】
「シクロアルキル」は、本明細書で用いるところでは、例えばシクロヘキシルなどの、3〜8個の炭素原子を含有するシクロアルキル基を意味する。
【0023】
「複素環の」は、本明細書で用いるところでは、例えば、オキシラン、オキシレン、オキセタン、オキセト、オキセチウム、オキサラン(テトラヒドロフラン)、オキソール、フラン、オキサン、ピラン、ジオキシン、ピラニウム、オキセパン、オキセピン、オキソカン、オキソシンク(oxocinc)基、アジリジン、アジリン、アジレン、アゼチジン、アゼチン、アゼト、アゾリジン、アゾリン、アゾール、アジナン、テトラヒドロピリジン、テトラヒドロテトラジン、ジヒドロアジン、アジン、アゼパン、アゼピン、アゾカン、ジヒドロアゾシン、アゾシン(azocinic)基およびチイラン、チイレン、チエタン、チイレン、チエタン、チエテ、チエチウム、チオラン、チオール、チオフェン、チアン、チオピラン、チイン、チイニウム(thiinium)、チエパン、チエピン、チオカン、チオシン(thiocinic)基のラジカルなどの、O、NおよびSから通常選択される1または2つのヘテロ原子と一緒に6個以下の炭素原子を含有する複素環基を意味する。
【0024】
「複素環の」はまた、ベンゼン環と縮合した複素環基を意味してもよく、ここで、縮合環は、N、OおよびSから選択される1または2つのヘテロ原子と一緒に炭素原子を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のメソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒は、1°〜5°に含まれる、とりわけ0.5°〜2.5°に含まれるXRD回折角シータを示す材料であってもよい。メソ構造材料は、ミクロレベルとマクロレベルとの間の中間の寸法を持った薄板状、立方晶系、六方晶系および/または多孔性であってもよい構造を有する秩序化材料と一般に考えられる。XRD回折で測定される角度シータは、Braggの法則に基づく粉末X線回折を含む方法によってとりわけ得られてもよい。
【0026】
メソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒のBET比表面積は、少なくとも10m
2/g、好ましくは10m
2/g〜100m
2/g、より好ましくは10m
2/g〜50m
2/gのものであってもよい。以下に続く説明において、用語「比表面積」は、定期刊行の「The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)」に記載されているBrunauer−Emmett−Teller法から策定された標準ASTM D 3663−78に従って窒素吸着によって測定されるBET比表面積を意味すると理解される。
【0027】
メソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒は、水溶液中でのリン混合酸化物化合物と界面活性剤との付加と、前記メソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒を生成するための加熱とによって調製され得る。メソ構造の薄板状、六方晶系および立方晶系バナジウム−リン−酸化物は、アルキルアンモニウムブロミドなどの、カチオン界面活性剤、スルホネートおよびホスホネートなどの、アニオン界面活性剤、およびアルキルアミン界面活性剤を用いることによって調製されることが実際に知られている。典型的な合成では、リンおよびバナジウム源を含有する水溶液が水性界面活性剤溶液に添加された(M.A Carreon,V.V.Guliants,Studies in Surface Science and Catalysis 141(2002)301/M.A.Carreon,V.V. Guliants,Microporous and Mesoporous Materials 5,3,(2002)297)。
【0028】
いかなる特定の理論に制約されることなく、メソ多孔性材料の形成を説明するためにおよび様々な合成ルートに合理的基盤を与えるために多数のモデルが提案されている。最も一般的なレベルでは、これらのモデルは、同じ分子内の可溶化無機前駆体基および長い疎水性テール基からの無機メソ構造の形成を導くための溶液中の界面活性剤の存在に基づいており、相いれない末端間の接触を最小限にするような方法で自己組織化するであろう。どのようにして無機前駆体が界面活性剤と相互作用するかは、それによってモデルが分化する核心であり;界面活性剤と無機前駆体との間の相互作用のタイプは、様々な合成ルート、形成モデル、および結果として生じたメソ多孔性材料のクラス間の著しい違いとして見られるであろう。
【0029】
メソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒は、次の化合物:VO(PO
3)
2、(VO)
2P
2O
7、VOPO
4、VOPO
4−2H
2O、およびVOHPO
4−0.5H
2O
から好ましくは調製される。
【0030】
本発明に使用することができる界面活性剤はとりわけ、非イオン性界面活性剤またはカチオン界面活性剤などのイオン性界面活性剤である。
【0031】
好ましくは界面活性剤は、ハロゲン塩などのテトラアルキルアンモニウム塩、例えばテトラアルキルアンモニウムブロミドであってもまたはテトラアルキルアンモニウムクロリドであってもよい。テトラアルキルアンモニウム塩のアルキルは、−OHおよび/または−NH
2などの1つもしくは幾つかの官能基をとりわけ含み、1〜20個の炭素原子を含む炭化水素鎖であってもよい。
【0032】
より好ましくは本発明の界面活性剤は、ハロゲン塩などの、アルキルトリメチルアンモニウム塩であってもよい。アルキルトリメチルアンモニウム塩のアルキルは、−OHおよび/または−NH
2などの1つもしくは幾つかの官能基をとりわけ含み、4〜20個の炭素原子を含む炭化水素鎖であってもよい。アルキルはとりわけ、C
10、C
12、C
14、C
16およびC
18であり得る。
【0033】
界面活性剤はまた、アルキル鎖が−OHおよび/または−NH
2などの1つもしくは幾つかの官能基をとりわけ含み、1〜20個の炭素原子を含むアルキル−アミンであってもよい。
【0034】
本発明の界面活性剤は、C
12H
25NMe
3Br、C
14H
29NMe
3Br、およびC
16H
33NMe
3Br、ならびにC
12H
25NH
2からなる群において特に選択される。
【0035】
メソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒を生成するための反応の温度は、50℃〜120℃、好ましくは60℃〜100℃に含まれてもよい。反応媒体のpHは、0〜10、とりわけ0〜7.5、好ましくは1〜3に含まれてもよい。pHはしたがって反応の開始時にとりわけ調整されてもよい。
【0036】
結果として生じた化合物は、真空濾過によって回収され、水で洗浄され、とりわけ乾燥させられてもよい。100℃〜180℃に含まれる温度での熱水処理、および/または空気もしくは窒素下の、200℃〜500℃に含まれる温度でのか焼処理などの後処理に進むこともまた可能である。
【0037】
本発明のアルコール化合物は、少なくとも第一級アルコールを含んでもよい。上に定義されたアルコールが反応媒体中の溶媒としてまた使用されてもよいことは、本発明の一実施形態によれば完全に可能である。
【0038】
アルコール化合物はとりわけ、式(I)
R−(OH)
x (I)
(式中:
− xは、1、2または3であり、
− Rは、直鎖、分岐または環状の炭化水素基である)
の化合物であってもよい。
【0039】
Rは、O、S、F、およびNなどの1つもしくは幾つかのヘテロ原子をとりわけ含む、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキルまたは複素環基であり得る、1〜30個の炭素原子を好ましくは含む、直鎖、分岐または環状炭化水素基を表してもよい。Rについて好ましい基は、例えば、アルキル、環状アルカン、環状アルケン、フェニル、フラニル、およびテトラヒドロフラニルであってもよい。
【0040】
さらにアルコール化合物は、アルデヒド官能基、カルボン酸官能基、およびアミン官能基などの、追加の官能性を含んでもよい。
【0041】
式(I)の化合物などの、本発明の好ましいアルコール化合物は、フルフリルアルコール、2,5フランジメタノール、2,5−テトラヒドロフランジメタノール、ベンジルアルコール、1,6−ヘキサンジオール、1,3ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、5−ヒドロキシメチルフラン−2−カルボキサルデヒド(5−HMF)、および1,4−ベンゼンジメタノールからなる群において選択される。
【0042】
本発明の方法で製造されるアルデヒド化合物は、フルフラール、2,5フランジカルボキサルデヒド(DFF)、2,5−テトラヒドロフランジカルボキサルデヒド、ベンズアルデヒド、1,6−ヘキサンジアール(アジポアルデヒド)、3−オキソブタナール、1,7−ヘプタンジアール、および1,4−ベンゼンジカルボキシアルデヒド(テレフタルアルデヒド)からなる群において選択されてもよい。
【0043】
反応媒体が溶媒を含む場合、とりわけ反応の開始時の、反応媒体中のアルコール化合物の量は、0.01〜1モル/L、好ましくは0.05〜0.2モル/Lに含まれてもよい。
【0044】
とりわけ反応の開始時の、反応媒体中のメソ構造バナジウムリン混合酸化物触媒の重量は、アルコール化合物の重量を基準として、1〜80重量%、好ましくは40〜80重量%に含まれてもよい。
【0045】
反応媒体は少なくとも1つの溶媒を含んでもよい。「溶媒」とは、単一溶媒または好適な溶媒の組み合わせを意味する。本方法の反応媒体に使用される溶媒は、有機または無機であってもよい。
【0046】
溶媒は好ましくは、
− ペンタン、ヘキサンのような、アルカン溶媒、
− シクロペンタン、シクロヘキサンのような、アルキル環状溶媒、
− ベンゼン、トルエン、m−キシレン、p−キシレンなどの、芳香族溶媒
− クロロホルムなどの塩素溶媒
− 1,4−ジオキソランなどのエーテル溶媒
などの、非極性溶媒である。
【0047】
本発明の方法での酸化剤は好ましくは、空気などの、しかしそれに限定されない、酸素含有ガスまたはガス混合物である。酸素それ自体もまた好ましい酸化剤である。好適である他の酸化剤としては、過酸化水素または有機ヒドロペルオキシドが挙げられる。
【0048】
好ましい温度範囲は、使用される触媒で変わるであろうが、約70℃〜150℃、好ましくは約80℃〜120℃である。上に記載されたように、反応は、より高温でより速く起こるであろう。DFFへのHMFの反応は、バナジウム化合物によって触媒される不均一反応であるので、おおよそ100%転化率に達するために必要とされる時間は、とりわけ、(i)反応温度、(ii)攪拌効率、(iii)液相を通しての空気/酸素流量、(iv)使用される触媒のタイプ、(v)触媒量、(vi)(大量の水は触媒活性を低下させるので)第1工程で生成した水の量、(vii)触媒分散、(viii)第1工程で形成された副生物から生じる触媒毒の存在または不在に依存するであろう。反応の時間はまた、反応条件および所望の収率で変わるであろうが、一般的には約1〜約24時間、好ましくは約1〜約10時間である。反応は、空気または酸素の圧力下で行われてもよい。攪拌がまた用いられてもよい。
【0049】
上で形成されたアルデヒド化合物は、液−液抽出、結晶化、真空蒸留/昇華、ならびに水での希釈およびジクロロメタンなどの、好適な有機溶媒での抽出などのしかしそれらに限定されない、任意の公知手段を用いて反応混合物から任意選択的に単離されてもよい。芳香族溶媒が反応混合物中の溶媒として使用される場合には、好ましい方法は、水などの溶媒での液−液精製である。
【0050】
本発明は、以下の実施例に関連して下に詳述されるが、それらによって限定されない。
【実施例】
【0051】
実施例1:メソ構造C
14VOPO
4およびC
14VOHPO
4の調製
テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(3.4g、0.01モル)の水溶液(120mL)に、VOPO
4・2H
2O(2.0g、0.01モル)を添加した。pHを、水性濃NH
3でおおよそ7.5に調整し、48時間74℃で加熱した。茶色固体を真空濾過によって回収し、水(4×250mL)で洗浄し、50℃でオーブン中3日乾燥させた。同じ手順を、VOHPO
4・0.5H
2Oから出発して適用し、C
14VOHPO
4をもたらした。
【0052】
得られた生成物のXRDシータ角およびBET表面積に関する結果を表1に示す。
【0053】
【0054】
XRDシ−タ角は、ガラス粉末XRD試料ホルダー上に堆積された接地試料に関して測定した。データは、室温でBragg−Brentano配置の装置を用いて0.5〜100°のシータ範囲(0.01°/秒および1秒/ステップ)で集めた。
【0055】
BET表面積は、接地試料に関して測定した。試料を、標準ASTM D 3663−78に従った窒素吸着による分析の前に少なくとも3時間80℃で脱ガスした。
【0056】
実施例2:5−HMFの接触酸化:
5−HMFを、1気圧O
26時間有機溶媒の存在下で、DFFを生成するために幾つかの触媒の存在下で反応させる。結果を表2に示す。
【0057】
【0058】
表1の試験C1およびC2は、Carlini C.,Patrono P.,Raspolli Galleti A.M.,Sbrana G.,Zima V.Appl. Catal. A: Gen. (2005)289:197−204から取った。試験C3は、国際公開第03024947号パンフレットから取った。試験C4およびC5は、バナジウム触媒でのアンモニウムの導入の影響を証明するために対照として存在する。への選択性の欠如は、6%よりも下の収率でVOPO
4・2H
2OおよびVOHPO
4・0.5H
2Oの両方で観察される。
【0059】
試験1〜3は、C
14/VOPO
4およびC
14/VOHPO
4触媒の両方に関して、収率およびDFFへの選択性に対するバナジウム触媒でのアンモニウムの導入の強いプラス影響を明らかにする。
【0060】
実施例3:幾つかのメソ構造VOPO
4の調製
メソ構造VOPO
4を、C
12H
25NMe
3Br、C
14H
29NMe
3Br、およびC
16H
33NMe
3Br、ならびにC
12H
25NH
2などの幾つかの界面活性剤化合物の使用を除いては実施例1の方法に従って製造する。
【0061】
実施例4:5−HMFの接触酸化:
5−HMFを、1気圧O
2と6時間有機溶媒の存在下で、DFFを生成するために幾つかの触媒の存在下で反応させる。結果を表3に示す。
【0062】
【0063】
その結果、良好な収率および転化率がメソ構造VPO触媒を製造するために使用された界面活性剤化合物に関して幾らかの変動ありで本発明の方法で得られるように思われる。