(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明に係るトルクセンサの一実施の形態を示す図であり、トルクセンサを搭載した電動アシスト自転車1の概略構成を示す図である。
【0011】
電動アシスト自転車1は、フレーム11の前部に前輪12およびハンドル13を備え、後部に後輪14を備えている。サドル15を備えるシートチューブ16の下端には、軸受を保持するボトムブラケット18が設けられている。クランク軸17はボトムブラケット18の軸受により支持されている。クランク軸17にはチェーンホイール19およびクランクアーム20が取り付けられ、クランクアーム20にはペダル21が設けられている。チェーンホイール19と後輪14に設けられたスプロケット22との間には、ローラーチェーン23が掛け回されている。クランク軸17の回転は、ローラーチェーン23により駆動輪である後輪14へと伝達される。
【0012】
さらに、電動アシスト自転車1にはアシスト用のモータ24が設けられている。このモータ24によりクランク軸17に設けられた原動スプロケット25を回転駆動することにより、ペダル21の踏み込み力が軽減される。後述するように、電動アシスト自転車1には、クランク軸17に作用するトルクを計測するためのトルクセンサ(不図示)が設けられている。アシスト制御部27は、計測されたトルクに応じてアシスト量を決定し、必要アシスト量分だけモータ24を駆動する。
【0013】
シートチューブ16には、モータ24に電力を供給するバッテリ26が取り付けられている。アシスト制御を行うアシスト制御部27とモータ24との間には、電源供給用のケーブル28が接続されている。また、アシスト制御部27とトルクセンサに設けられた回転側基板(不図示であるが詳細は後述する)との間には電源供給とデータ信号伝達のためのケーブル29が接続されている。
【0014】
図2は、トルクセンサの全体構成を示す斜視図である。トルクセンサ30は、ボトムブラケット18に固定される固定側基板31と、クランク軸17に固定されてクランク軸17と一体に回転する回転側基板32および歪みセンサ部33を備えている。ボトムブラケット18には、クランク軸17を支持する軸受(不図示)が設けられている。略リング形状の固定側基板31は、スペーサ34を介してボトムブラケット18にネジ止めされている。クランク軸17は、固定側基板31の貫通孔311に隙間を介して貫挿される。略リング形状の回転側基板32は、クランク軸17の外周面に固定されている。回転側基板32の固定方法については、例えば、基板ホルダをクランク軸17に固定し、その基板ホルダに回転側基板32を固定するようにしても良い。
【0015】
回転側基板32は、クランク軸17に対して基板面がほぼ垂直になるように固定されている。固定側基板31と回転側基板32とは僅かな隙間を介してほぼ平行に配置されており、固定側基板31および回転側基板32の互いの対向面には、アンテナパターンが銅パターン等により形成されている。310は固定側基板31に形成されているアンテナパターンである。固定側基板31および回転側基板32のアンテナパターンが形成された面と反対側の面には、それぞれトルクセンサ30を構成する回路部品、およびそれらを接続する配線パターンが設けられている。上述したスペーサ34は、固定側基板31に実装された回路部品がボトムブラケット18に接触するのを防止するために設けられている。
【0016】
歪みセンサ部33は、クランク軸17に貼付される検出部331と、検出部331と回転側基板32とを接続するフレキシブルケーブル332とを備えている。検出部331にはADコンバータが内蔵されており、歪み量に対応した検出電圧はADコンバータによりデジタル信号に変換され検出部331から出力される。フレキシブルケーブル332は、回転側基板32に設けられたコネクタ321に接続される。
【0017】
図3は、トルクセンサ30の取り付け構造の他の例を示す図である。
図3に示す例では、クランク軸17を支持する軸受181が保持されるボトムブラケット18には、回転側基板32および歪みセンサ部33を収納するための収納空間182が形成されている。クランク軸17を軸受181に装着すると、回転側基板32および歪みセンサ部33が収納空間182に収納される。固定側基板31は、ボトムブラケット18の端面にネジ止めされる。
【0018】
図4は、トルクセンサ30の回路構成を示すブロック図である。
図4において、送電部410から受電部420に電力が供給される。送電部410は
図2の固定側基板31に設けられ、受電部420は回転側基板32に設けられる。
図4に示すトルクセンサ30では、送電部410と受電部420とにより非接触給電装置が構成される。
【0019】
送電部410は、発振器411と、送電側コイルである給電コイル310aおよび共鳴コイル310bと、復調回路412と、クロック(CLK)生成部413と、変調部414と、ドライバ415とを備えている。
図2に示したアンテナパターン310は、給電コイル310aのパターンと共鳴コイル310bのパターンとで構成されている。なお、
図4では、平面状に巻き回された給電コイル310aおよび共鳴コイル310bのコイル面が互いに対向するように記載しているが、後述するように、給電コイル310aは共鳴コイル310bの外周側の同一面内に配置されている。
【0020】
受電部420は、受電側コイル(負荷コイルとも呼ばれる)421と、受電側コイル421に直列に接続された共振用コンデンサ422(共振容量)と、整流回路423と、ローパスフィルタ424と、電源回路425と、負荷変調回路426と、クロック(SCLK)生成部427と、REQ検波部428とを備えている。受電側コイル421と共振用コンデンサ422とが直列接続されて直列共振回路を形成している。その直列共振回路に、整流回路423と電源回路425を介して歪みセンサ部33が接続されている。なお。受電側コイル421のターン数は1ターンでも、複数ターンでも良い。
【0021】
ローパスフィルタ424は、インダクタ424aおよびコンデンサ424bを備えている。負荷変調回路426は、スイッチング素子426a、コンデンサ426bおよび抵抗426cを備えている。歪みセンサ部33からの歪みデータ信号(AD変換後の歪みデータ信号)は、負荷変調回路426の抵抗426cを介してスイッチング素子426aのゲートに入力される。
【0022】
図4では図示を省略したが、共鳴コイル310bの共振の容量成分をコイル巻き線間の浮遊容量(寄生容量)のみとすると、共振周波数の調整が煩雑であるため、本実施の形態では、後述するように共鳴コイル310bには共振容量(コンデンサ)が接続されている(
図9参照)。ドライバ415は、発振器411からの信号に基づいて給電コイル310aに給電を行う。給電コイル310aは、共鳴コイル310bの自己インダクタとコイル巻き線間の浮遊容量および共振容量とにより決まる自己共振周波数に等しい周波数(例えば、16.384MHz)で給電される。
【0023】
共鳴コイル310bは電磁誘導作用により自己共振周波数に等しい周波数で励振され、共鳴コイル310bに大きな電流が流れ強い磁界が発生する。共鳴コイル310bのインダクタンス値をL、容量をC(共振用コンデンサの容量も含む)とすると、コイルの自己共振周波数fは次式(1)で求められる。
f=1/(2π√(LC)) …(1)
【0024】
共鳴コイル310bに近接して受電部420の受電側コイル421を配置すると、共鳴コイル310bからの強い磁界が受電側コイル421と磁気的に結合し、受電側コイル421の両端子間に起電力が発生する。発生した起電力は整流回路423により直流電圧に整流され、ローパスフィルタ424を介して電源回路425に入力される。整流回路423の後段にローパスフィルタ424を設けることにより、整流効率の向上を図ることができる。電源回路425は、整流回路423より出力される電圧を歪みセンサ部33が必要とする一定の電圧値に変換し、歪みセンサ部33に供給する。
【0025】
本実施の形態では、クランク軸17に掛かっているトルクを検出する方法として、歪みセンサ(歪みゲージ)でクランク軸の歪みを検出してトルクを検出するような構成としている。歪みセンサを用いたトルクセンサは、例えば磁歪式センサを用いる従来のトルクセンサに比べて、小型化、精度、コスト等の点で優れているが、電力を供給する必要がある。歪みセンサは回転側のクランク軸に設けられるため、ブラシ等の接点を用いた給電では耐久性やブラシの接触ノイズ等に問題があるため、無線での給電が要求される。
【0026】
本実施の形態では、上述のように、回転側基板32に設けられた受電部420は、送電部410から送電された電力を、送電側の共鳴コイル310bと受電側コイル421との磁気的な結合により非接触で受電することが可能となる。また、受電側は受電側コイル421のみで受電可能であることから、受電部420すなわち回転側基板32の小型化を図ることが可能である。
【0027】
次いで、受電部420から送電部410への歪みデータの伝送について説明する。本実施の形態におけるデータ伝送では、消費電力が小さく回路構成が簡単な負荷変調方式を用いている。負荷変調方式はICカード等にも採用されているが、上述した本実施の形態における非接触給電(無線給電)では、ICカードの場合に比べてコイル間の結合が格段に強い。
【0028】
従来は、
図4の二点鎖線で示す点H1に負荷変調回路が接続されているが、結合が強い場合には、アンテナパターン(コイル310a,310bおよび421を構成する基板上のパターン)が形成された基板31,32間の距離の変動や、アンテナパターンの近傍に位置するクランク軸17の材質等によりインピーダンス変動が大きくなり、負荷変調の変調度合いが大きく変化するという問題が発生する。変調度合いが大きいと給電効率が大きく低下し、受電部420における回路動作ができなくなるおそれがある。
【0029】
そのため、磁気結合の度合いがそれほど強くない場合には従来の配置でも良いが、磁気結合が強い本実施の形態では、整流回路423とローパスフィルタ424との間の点H2に、負荷変調回路426を接続して負荷変調をかけるような構成とした。歪みデータを受電部420から送電部410へ伝送する場合には、歪みセンサ部33から負荷変調回路426へ歪みデータ信号を入力する。スイッチング素子426aは、歪みデータ信号に応じてオンオフ動作する。このオンオフ動作により受電側のインピーダンスが変動し、送電部410からの搬送波(交流磁界)に対する反射を変化させる。すなわち、受電側コイル421で反射された搬送波は、インピーダンス変動に応じて振幅が変動する。送電部410では、反射された搬送波を復調回路412で復調処理し、歪みデータを取得する。
【0030】
負荷変調回路を従来の点H1に接続した場合に比べて、点H2に負荷変調回路426を接続した場合、負荷変調回路426と受電側コイル421との間に整流回路423が存在するため、負荷変調によるインピーダンス変動が抑制される。その結果、磁気結合が強い本実施の形態の場合であっても、変調度が大きくなりすぎて給電効率が大きく低下するのを防止することができる。
【0031】
次に、データ伝送の同期方法について説明する。クロック(CLK)生成部413は、発振器411から出力された信号を分周してクロック信号(CLK)を生成している。例えば、発振器411から出力される16.384MHの信号を分周して、16kHzのクロック信号を生成する。送電部410は、そのクロック信号(CLK)に基づいて動作する。一方、受電部420では、受電側コイル421で受信した交流信号(搬送波)を、クロック(SCLK)生成部427において分周することによって、クロック信号(CLK)と同一周波数のクロック信号(SCLK)を生成している。受電部420は、クロック信号(SCLK)に基づいて動作する。
【0032】
受電部420から送電部410への歪みデータの伝送は、
図1に示したアシスト制御部27からのリクエスト信号(REQ)に基づいて行われる。
図5は、アシスト制御部27と固定側基板31に設けられた送電部410との間のデータ伝送動作を説明する図である。クランク軸17に貼付された歪みセンサ部33からの歪みデータ(DATA)は、回転側基板32の受電部420を介して固定側基板31の送電部410にて受信され、さらに、固定側基板31に接続されたアシスト制御部27に伝送される。アシスト制御部27は、伝送された歪みデータから人力によるペダル踏力を算出し、アシスト用モータ24のアシスト量を決定する。
【0033】
図5(a)に示すように、アシスト制御部27から、歪みデータを要求するリクエスト信号(REQ)が送電部410に出力(立下り動作)される。
図4に示すように、リクエスト信号(REQ)は送電部410の変調部414に入力され、給電コイル310aへの給電信号をリクエスト信号(REQ)により変調する。このような変調を行うことにより変調前後で送電電力量が変化するので、その変化を受電側のREQ検波部428で検出することによりデータ伝送のトリガとして利用する。すなわち、リクエスト信号(REQ)の入力により、ドライバ415は変調部414を制御してデータ伝送のトリガを生成する。
【0034】
このリクエスト信号(REQ)で変調された交流信号を受信した受電部420は、リクエスト信号(REQ)検波部428によりリクエスト信号(REQ)を抽出し、クロック(SCLK)生成部427および歪みセンサ部33に入力する。クロック(SCLK)生成部427は、リクエスト信号(REQ)の立ち下がりに同期してクロック信号(SCLK)を歪みセンサ部33に供給する。歪みセンサ部33に設けられたADコンバータは、このクロック信号(SCLK)に基づき動作する。歪みセンサ部33は、クロック信号(SCLK)の立ち上がりから所定周期後(
図5では4周期後)より、歪みデータ信号を出力する。
【0035】
固定側基板31に設けられた送電部410は、
図5に示すように、受電部420から受信して復調回路412で復調した歪みデータ(DATA)と、クロック信号(SCLK)に同期したクロック信号(CLK)をアシスト制御部27に出力する。
【0036】
上述した実施の形態では、リクエスト信号(REQ)の立下りに同期してクロック信号(SCLK)をスタートするようにしているが、例えば、リクエスト信号(REQ)によらずクロックを常時動作させている場合、リクエスト信号(REQ)の立下りとクロック信号(SCLK)の同期が取れない。そのため、リクエスト信号(REQ)の立下りのタイミングからデータ出力までの時間はクロック信号(SCLK)の1周期分内でずれが生じ、データ取得に誤動作が発生してしまう可能性がある。
【0037】
これに対し、本実施の形態では、クロック信号(SCLK)はリクエスト信号(REQ)の立下りのタイミングでスタートするようにしているので、リクエスト信号(REQ)とクロック信号(SCLK)の同期が取れる。その結果、リクエスト信号(REQ)の立下りのタイミングからデータ出力までの時間ずれを改善することが可能となる。
【0038】
なお、
図5におけるリクエスト信号(REQ)の周期およびクロック信号(SCLK)の周期の一例を示すと、リクエスト信号(REQ)は250ms、クロック信号(SCLK)は62.5μs程度である。
【0039】
図6は、外部ノイズ等の飛び込みによる誤動作を抑えるための、固定側基板31の各端子処理の一例を示したものである。電源ラインにおいては、比較的容量値の大きいコンデンサ61で高周波接地を行うことで、電源ラインへのノイズ飛び込みを押さえている。また、リクエスト信号(REQ)のラインにおいては、直列に抵抗62を挿入することでノイズ飛び込みの影響を小さくしている。なお、電源ラインから抵抗63を介してリクエスト信号バイアスを加えているのは、リクエスト信号(REQ)は立下り動作であり、アシスト制御部27側のリクエスト信号(REQ)出力がオープンドレインタイプであっても対応可能なようにするためである。
【0040】
また、クロック(CLK)信号端子、DATA信号端子は、信号周波数に対しては高く、飛び込みノイズに対しては十分低いインピーダンスとなる容量64,65で接地するとともに、直列に抵抗66,67を挿入することでノイズの飛込みを抑える構成としている。
図6の構成は小容量による接地と直列抵抗の挿入であるが、小容量による接地もしくは直列抵抗の挿入のどちらかであってもよく、
図6の構成に限定されるものではない。
【0041】
図7は固定側基板31を示す図である。
図7(a)は、送電側の回路部品が実装される実装面を示している。
図7(b)は、
図7(a)の実装面とは反対側の面であって、アンテナパターン310(
図2参照)が形成されているパターン面を示している。
【0042】
図7(a)に示すように、円形状の固定側基板31の中央には、クランク軸17(
図2参照)が貫挿される貫通孔311が形成されている。固定側基板31の基板外周には、基板取り付け用の貫通孔313a,313b,313cが形成されている。なお、貫通孔313a,313b,313cの配置については、例えば、複数の貫通孔313a,313b,313cと貫通孔311の中心(即ち、コイル310a,310bの中心)との距離を互いに異ならせるようにしても良い。それにより、固定側基板31をボトムブラケット18に固定する際に、間違った角度配置で取り付けられてしまうのを防止することができる。
【0043】
回路部品316a〜316jは、貫通孔311を囲むように実装面に実装されている。回路部品316iは
図1に示したケーブル29が接続されるコネクタであり、ケーブル29は図の矢印方向に抜き差しされる。
【0044】
図7(b)では、アンテナパターン310は、固定側基板31のリング形状部に示したハッチングを施した領域312に形成されている。アンテナパターン310は、固定側基板31のリング形状部に銅パターンによりパターニングされている。前述したように(
図4参照)、アンテナパターン310は、給電コイル310aのパターンと共鳴コイル310bのパターンとから成る。
【0045】
また、固定側基板31の内周側の縁近傍には、貫通孔311の回りを1周するループ状のグラウンドパターン(GNDパターン)315が形成されている。貫通孔311には、
図2に示したように金属製のクランク軸17が挿入されるので、グラウンドパターン315を形成することで、クランク軸17のアンテナパターン310(給電コイル310a,共鳴コイル310b)への磁気的な影響を低減することができる。なお、グラウンドパターン315は伝送損失に影響するので、アンテナパターン310からの距離を可能な限り大きく設定するのが好ましい。また、回路部品間を接続する配線パターンの引き回しは、アンテナパターン310との磁気的な干渉を避ける意味で、貫通孔311を一周するループ状とならないようにする必要がある。
【0046】
図8は、回転側基板32を示す図である。
図8(a)は、受電側の回路部品が実装される実装面を示している。
図8(b)は、回転側基板32の断面を示している。
図8(c)は、
図8(a)の実装面とは反対側の面であって、アンテナパターン(受電側コイル421のパターン)が形成されているパターン面を示している。
【0047】
図8(a)に示すように、回転側基板32の中央には、クランク軸17(
図2参照)が貫挿される貫通孔324が形成されている。例えば、この貫通孔324にクランク軸17を嵌め合わせることにより、回転側基板32がクランク軸17に対して垂直に固定される。コネクタ321,回路部品325a〜325gは、貫通孔324を囲むように実装面に実装されている。回転側基板32はクランク軸17と一体に回転するので、回転側基板32に作用する遠心力の大きさがバランスするように、すなわち、遠心力の大きさが回転対称となるように、コネクタ321,回路部品325a〜325gおよびそれらを接続する配線を配置するのが好ましい。また、コネクタ321は、
図8(b)に示すように、フレキシブルケーブル332を基板面に垂直方向(クランク軸17の軸方向)に抜き差しするような構成となっている。このような構成とすることで、遠心力によりフレキシブルケーブル332の接続が外れてしまうのを防止している。
【0048】
回転側基板32のパターン形成面には、ハッチングを施した領域322に受電側コイル421のアンテナパターンが形成されている。なお、図示は省略したが、回転側基板32にも、固定側基板31の場合と同様に、ハッチング領域322よりも内周側にループ状のグラウンドパターンが形成されている。また、パターン形成面のアンテナパターンとの磁気的な干渉を避ける意味で、回路部品間を接続する配線パターンの引き回しは、貫通孔324を一周するループ状とならないようにする必要がある。
【0049】
なお、貫通孔324に形成されている切り欠き323は、回転側基板32をクランク軸17に装着する際に、クランク軸17の外周面に貼付された検出部331(
図2参照)が干渉するのを防止するために形成されているものである。切り欠き323を形成することで、組立性の向上が図れる。
【0050】
図9は、送電側コイルである給電コイル310aおよび共鳴コイル310bの詳細を示す模式図である。なお、
図9では、コイルパターン形状が分かりやすいように、パターン間隙間を実際よりも拡大して示している。前述したように、共鳴コイル310bには共振容量としてのコンデンサ317が設けられている。共鳴コイル310bは、複数ターンの渦巻き状コイルとなっている。一方、発振器411が接続される給電コイル310aは、共鳴コイル310bの外周側にパターニングされている。給電コイル310aは、複数ターン(巻き数が2巻き以上)の渦巻き状パターンにより形成されている。
【0051】
本実施の形態のコイルは磁気共鳴方式のコイルであるが、磁気共鳴方式は電磁誘導方式に比べて、伝送効率、伝送距離、コイルの位置ずれ等の点で優れている。また、磁気共鳴を利用しているため、受電側コイルが小型化できる、干渉結合が小さい(すなわち、ノイズの影響が小さい)、金属筐体等による効率低下が小さい等のメリットを有している。しかし、伝送周波数(コイルの自己共振周波数)に対してコイル形状が小さくなると伝送効率が低下しやすい。これは、コイル小型化により給電コイルのインダクタンス値が低下し、共鳴コイルとの磁気結合が不足するためと考えられる。電動アシスト自転車に適用するトルクセンサの場合、伝送周波数の波長が10〜20m程度であるのに対してコイル径が数センチと小さくなるので伝送効率の低下が顕著となりやすい。
【0052】
そこで、本実施の形態では、
図9に示したように給電コイル310aを共鳴コイル310bの外周側に配置し、さらに、ターン数を複数とすることにより給電コイル310aのインダクタンス値の低下を防止し、給電コイル310aと共鳴コイル310bとの磁気結合の低下を抑制するようにした。また、固定側基板31に形成された貫通孔311には金属製のクランク軸17が貫通するが、
図9のように給電コイル310aを外周側に配置することにより、クランク軸17の磁気的影響を低減することができ、このことも給電効率の低下を抑制できる一因となっている。
【0053】
さらに、共鳴コイル310bおよび受電側コイル421の各コイル面を対向配置することにより、効果的な磁気結合を行わせることができ、伝送効率の向上を図ることができる。また、データ伝送におけるノイズの影響を考慮した場合、磁気共鳴方式の方がQ値(=f0/ BW、f0:中心周波数、BW:中心周波数f0の有する利得から−3dBとなる帯域幅))が大きくなるので、伝送効率が向上すると共にノイズの影響を受けにくい。ただし、Q値が大きいと通信の帯域が狭くなるので、歪みデータを回転側基板32から固定側基板31に伝送する本実施の形態においては、データ送信側である受電側コイル421のQ値を、データ受信側である共鳴コイル310bのQ値よりも大きくするのが好ましい。
【0054】
図10は、アンテナパターンの配置を説明する断面図である。前述したように(
図2参照)、固定側基板31と回転側基板32とは、互いのアンテナパターンが形成された面が対向するように配置されている。共鳴コイル310bと受電側コイル421とは磁気的に結合することにより電力の授受およびデータの授受を行うので、コイル面同士が対向するように基板31,32を配置し、共鳴コイル310bと受電側コイル421との距離を狭くするのが伝達効率の点で好ましい。そのため、固定側基板31および回転側基板32は、アンテナパターンが形成された面が対向するように配置されている。固定側基板31には、アンテナパターン310として給電コイル310a,共鳴コイル310bのパターンが形成されており、回転側基板32にはアンテナパターンとして受電側コイル421のパターンが形成されている。
【0055】
なお、固定側基板31および回転側基板32は、それらに形成されているアンテナパターンの中心(すなわちコイル中心)がクランク軸17の軸Jと一致するように配置されている。また、
図10では、アンテナパターンの配置が分かりやすいように、各パターンのターン数については正確には記載していない。
【0056】
ところで、対向配置されたコイルの磁気結合をより効率的とするためには、以下のようなパターン配置とするのが好ましい。ここで、固定側基板31における共鳴コイル310bの内周半径をRa、外周側に配置された給電コイル310aの外周半径をRbとし、回転側基板32における受電側コイル421の内周半径をRc、外周半径をRdとする。また、固定側基板31および回転側基板32の外周側半径をそれぞれR1,R2とする。なお、基板31,32が円形でない場合には、半径R1,R2は、基板の縁の内、アンテナパターン中心から最も距離の短い縁までの距離とする。
【0057】
そして、Rc>Raの場合にはRb>Rcのように設定するのが好ましく、Ra>Rcの場合にはRd>Raのように設定するのが好ましい。すなわち、Ra〜Rdは、送電側コイルの領域H1と受電側コイルの領域H2とは径方向に関して完全にずれないように設定され、少なくとも一部が対向するように設定されている。好ましくは、送電側の共鳴コイル310bの平均径と、受電側の受電側コイル421の平均径とを等しくするのが良い。
【0058】
さらに、金属で形成されたクランク軸17の磁気的な影響を抑えるためには、アンテナパターンをクランク軸17からできる限り遠ざけるのが望ましい。例えば、クランク軸17の半径をRsとした場合、Ra−Rs>R1−Rb、Rc−Rs>R2−Rd、のように設定するのが好ましい。
【0059】
図11は、アンテナパターンと伝達特性(伝送特性)との関係を示す図である。
図11(a)は、アンテナパターンの幅寸法と伝達特性との関係のシミュレーション結果を示すグラフであり、
図11(b)はアンテナパターンを模式的に示したものである。Pは隣り合うパターン間のピッチであって、Wはパターン幅寸法である。なお、
図11(a)の横軸はピッチPとパターン幅Wとの比(W/P)である。ここでは、ピッチPは一定であって、P=3mmの場合について説明する。
【0060】
一般的に、パターン幅Wを大きくすると抵抗が下がるので伝達特性が高くなると考えられる。しかしながら、シミュレーションの結果、隣接するパターン同士が影響し合う近接効果によって、パターン間隔が狭くなると伝達特性が悪くなることが分かった。
図11(a)に示すように、W/P=3/6においてはパターン幅Wとパターン間の隙間寸法とが等しくなるが、W/Pを3/6よりも小さくした方が伝達特性が高くなっており、W/Pを小さくするほど伝達特性が良くなっている。
図11(a)に示すシミュレーション結果では、W/P=3/6までしか計算していないが、さらにパターン幅Wを小さくして比W/Pを小さくすると、コイル抵抗増加の影響が大きくなり伝達特性は低下することが分かっている。このように、隣接パターンとの近接効果を抑えるためには、コイルのパターン幅Wよりもコイル隙間(P−W)を大きくするのが好ましい。
【0061】
図12は歪みセンサ部33を示す図であり、
図12(a)は平面図、
図12(b)はC−C断面図である。歪みゲージを内蔵するセンサチップ333は薄い金属板(例えばステンレス製の薄板)334上に貼付されている。センサチップ333には、歪みゲージの他に、歪み計測に必要な回路および歪み量信号をデジタル信号に変換するADコンバータ等が組み込まれている。フレキシブルケーブル332の一端は金属板334上に貼付され、ワイヤ335によりセンサチップ333とフレキシブルケーブル332の配線パターン(不図示)とが接続されている。フレキシブルケーブル332は例えばフレキシブルプリント基板等により構成されており、フレキシブルケーブル332の他端は、複数の端子336が設けられたコネクタ接続部337となっている。センサチップ333、ワイヤ335、およびフレキシブルケーブル332のワイヤ接続部は、封止樹脂338によりモールドされている。
【0062】
なお、
図12(a)では、チップ配置等が分かり易いように、封止樹脂338を省略し、その配置を想像線(二点鎖線)で示した。金属板334の裏面側は、歪みの被測定対象であるクランク軸17の表面に貼り付けられる。その場合、クランク軸17の外周面の一部を平面状に加工し、その平面に検出部331の金属板334を貼付する。クランク軸17に歪みが生じると金属板334およびセンサチップ333が変形し、歪み量が計測される。
【0063】
図13は、フレキシブルケーブル332の回転側基板32への接続形態を説明する図であり、歪みセンサ部33の検出部331が貼付されたクランク軸17と回転側基板32とを側面方向から見た図である。回転側基板32は、基板面がクランク軸17に対して垂直になるように取り付けられている。回転側基板32には、フレキシブルケーブル332のコネクタ接続部337が接続されるコネクタ321が設けられている。コネクタ321は、フレキシブルケーブル332のコネクタ接続部337がクランク軸17に平行な方向に抜き差しされるように、回転側基板32に実装されている。符号Dで示す面はアンテナパターンが形成される面で、符号Eで示す面は回路部品が実装される面である
【0064】
検出部331は、検出部331からのフレキシブルケーブル332の引き出し方向が、回転側基板32の回路部品実装面Eと反対方向となるようにクランク軸17に貼付される。検出部331から引き出されたフレキシブルケーブル332は、途中から円弧状に変形されて回路部品実装面E側に向けられ、回転側基板32のコネクタ321に接続される。検出部331の取り付け形態およびフレキシブルケーブル332の接続形態を
図13のような形態とすることにより、フレキシブルケーブル332の変形部分(破線部分F)における曲率を小さくすることができ、その結果、フレキシブルケーブルの破断等が防止でき信頼性向上を図ることができる。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態においては、回転体非接触給電装置は、軸受181により支持されたクランク軸17に固定されて該クランク軸17と一体に回転し、受電側回路部品が実装される回転側基板32と、基板面が回転側基板32の基板面と対向するように軸受181を保持するボトムブラケット18に固定され、電源が接続されると共に送電側回路部品が実装される固定側基板31と、を備え、固定側基板31の表裏基板面の内、回転側基板32と対向する一方の基板面には渦巻き状で複数ターンの送電側コイル(給電コイル310a,共鳴コイル310b)が導電パターンにより形成され、表裏基板面の他方の基板面には送電側回路部品が実装され、回転側基板32の表裏基板面の内、固定側基板31と対向する一方の基板面には渦巻き状で複数ターンの受電側コイル421が導電パターンにより形成され、表裏基板面の他方の基板面には受電側回路部品が実装され、共鳴コイル310bと受電側コイル421とが磁気的に結合して、固定側基板31から回転側基板32へと非接触により電力を給電する。
【0066】
このように、基板31,32の基板面に形成されたコイルパターンによりコイル310a,310b,421を形成し、さらに、送電側の共鳴コイル310bと受電側コイル421とを対向配置したので、優れた給電効率を有する小型な非接触給電装置とすることができる。
【0067】
また、送電側のアンテナコイルは、平面状に巻かれた複数ターンの共鳴コイル310bと、共鳴コイル310bの外周側に該共鳴コイル310bを囲むように平面状に巻かれ、共鳴コイル310bと磁気的に結合する複数ターンの給電コイル310aとで構成するのが好ましい。それにより、給電コイル310aのインダクタンスを十分確保することができ、送電側コイルを小型化しても、十分な給電効率を確保することができる。
【0068】
なお、上述した実施の形態では、受電側を一つの受電側コイル421で構成したが、送電側と同様に2つのコイル(共鳴コイルと、整流回路423が接続される負荷コイル)で構成しても良いし、送電側および受電側の両方を、上述した受電側コイル421のような一つのコイルで構成しても良い。また、上述した実施の形態では、負荷回路として歪みゲージを備えた歪みセンサ部33としたが、負荷回路としては、歪みセンサに限らず温度センサや加速度センサなどの回路を適用しても良い。さらにまた、上記実施の形態では、電動アシスト自転車のトルクセンサとして、固定側基板31および回転側基板32の形状を、クランク軸17が貫通するリング形状としたが、本実施の形態のトルクセンサは、他の回転軸および回転体のトルクを計測するトルクセンサにも適用することができる。その場合、例えば、回転軸の端面に円盤状の回転側基板と固定し、軸受を保持する部材に円盤状の固定側基板を固定するようにしても良い。
【0069】
また、本発明は、特にシャフト等の回転体に実装した回路やセンサへの非接触給電および回転体センサからのデータを非接触で取り出す技術として、例えば、自動車のドライブレーンのトルクや電動アシスト自転車の踏力検出のために用いられるひずみゲージやひずみセンサへの非接触給電とデータ伝送に適用可能である。さらには、受電側コイルと送電側コイルとの位置関係が固定されない非接触給電装置、例えば、ICカードのように、固定された送電側に受電側のICカードを移動近接させて給電を行うような構成にも適用できる。
【0070】
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0071】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2014年第8087号(2014年1月20日出願)