特許第6246862号(P6246862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246862
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】炉蓋のクリーニング装置
(51)【国際特許分類】
   C10B 43/08 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   C10B43/08
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-133162(P2016-133162)
(22)【出願日】2016年7月5日
(62)【分割の表示】特願2012-225328(P2012-225328)の分割
【原出願日】2012年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-188383(P2016-188383A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2016年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄住金テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】伏貫 征四郎
(72)【発明者】
【氏名】伊東 光一
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−202822(JP,A)
【文献】 特開平09−085131(JP,A)
【文献】 特開昭64−080458(JP,A)
【文献】 特開平07−179859(JP,A)
【文献】 実開平06−033946(JP,U)
【文献】 実公昭59−025870(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 43/08
B05B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の前側又は後側を走行する車両に取り付けられ、高圧水を噴射する複数のノズルを保持して高圧水の噴射反力により回転するノズルホルダを備えた水噴射手段を有し、該各ノズルから噴き出した高圧水を前記コークス炉の炉蓋に当てて付着しているタールを洗浄する炉蓋のクリーニング装置であって、
前記複数のノズルは、前記ノズルホルダの回転軸心を中心とした第1の円の周上の対向する位置に、正面視して前記高圧水の噴出方向を該第1の円の接線方向に向けて傾斜配置された第1、第2のノズルと、前記ノズルホルダの回転軸心を中心とし前記第1の円の外側に形成される第2の円の周上の対向する位置に、正面視して前記高圧水の噴出方向を該第2の円の接線方向に向けて傾斜配置された第3、第4のノズルとを有し、
前記ノズルホルダには、前記第1、第3のノズルを垂直に取り付ける第1の傾斜面と、前記第2、第4のノズルを垂直に取り付ける第2の傾斜面とが、正面視して前記回転軸心に対して回転対称に設けられ、しかも、前記第1、第2の傾斜面は、断面視して前記回転軸心側が高く外周側が低くなっており、
前記第1、第2のノズルのみ使用する状態、又は前記第3、第4のノズルのみ使用する状態の選択が可能であることを特徴とする炉蓋のクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1記載の炉蓋のクリーニング装置において、1)前記炉蓋の上部とその周辺部、2)前記炉蓋の下部とその周辺部、及び3)前記炉蓋の両側部をそれぞれ独立に洗浄する前記水噴射手段を有し、前記炉蓋の両側部を洗浄する前記水噴射手段は前記炉蓋に沿って昇降する移動手段に取り付けられていることを特徴とする炉蓋のクリーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の前側(赤熱コークスの排出側)及び後側(石炭の押出側)に設置された炉蓋とその周辺部に付着したタールを洗浄する炉蓋のクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コークス炉の炭化室では、操業時にタール成分を含んだガスが発生し、発生したガスは、炭化室の前後に設けられた炉蓋から外部に漏れ出して冷却される。このため、ガス中のタール成分はタールとなって炉蓋とその周辺部に付着する。そして、付着したタールの厚みが増大すると、炉蓋による炭化室の密閉性が低下し、炭化室からのガス漏れが更に顕著になると共に、炭化室内への空気の進入が起こり、コークス炉の操業に支障をきたすという問題が生じる。そこで、例えば、コークス炉の赤熱コークスの排出側をコークス炉の長手方向に沿って移動するガイド車に高圧水を噴射するノズルを設け、炭化室に対する赤熱コークスの押出作業を行った後、開放状態の炉蓋に向かって高圧水を噴射して、炉蓋に付着しているタールを洗浄することが行われている(例えば、特許文献1参照)。なお、高圧水を噴射する場合、高圧水を噴射するノズルが取り付けられているノズルホルダを、例えば、油圧モータで回転させて、高圧水が一定の範囲に均一に噴き付けられるようにして、洗浄効果を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−179859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、炉蓋に高圧水を噴射して炉蓋の洗浄作業を行う場合、炉蓋周辺はCOガス濃度が高く、炭化室からの輻射で高温となって、しかも、粉塵やタールが浮遊すると共に噴射した高圧水の跳ね返りもあり、作業環境は非常に悪化する。このため、ノズルホルダを回転する油圧モータ用の油圧配管ラインの油圧電磁弁及びホース類が頻繁に(平均して、約10ヶ月に1回の頻度で)損傷し、定期的な交換を余儀なくされている。このため、メンテナンスの負担が高く、メンテナンスに伴うガイド車の自動化運転率が低下し、コークス炉の操業が低下するという問題が生じる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、炉蓋(即ち、その周囲)に付着したタールを確実に除去することができると共に、メンテナンスの負担が軽減された炉蓋のクリーニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
【0007】
【0008】
【0009】
前記目的に沿う本発明に係る炉蓋のクリーニング装置は、コークス炉の前側又は後側を走行する車両に取り付けられ、高圧水を噴射する複数のノズルを保持して高圧水の噴射反力により回転するノズルホルダを備えた水噴射手段を有し、該各ノズルから噴き出した高圧水を前記コークス炉の炉蓋に当てて付着しているタールを洗浄する炉蓋のクリーニング装置であって、
前記複数のノズルは、前記ノズルホルダの回転軸心を中心とした第1の円の周上の対向する位置に、正面視して前記高圧水の噴出方向を該第1の円の接線方向に向けて傾斜配置された第1、第2のノズルと、前記ノズルホルダの回転軸心を中心とし前記第1の円の外側に形成される第2の円の周上の対向する位置に、正面視して前記高圧水の噴出方向を該第2の円の接線方向に向けて傾斜配置された第3、第4のノズルとを有し、
前記ノズルホルダには、前記第1、第3のノズルを垂直に取り付ける第1の傾斜面と、前記第2、第4のノズルを垂直に取り付ける第2の傾斜面とが、正面視して前記回転軸心に対して回転対称に設けられ、しかも、前記第1、第2の傾斜面は、断面視して前記回転軸心側が高く外周側が低くなっており、
前記第1、第2のノズルのみ使用する状態、又は前記第3、第4のノズルのみ使用する状態の選択が可能である。
【0010】
【0011】
本発明に係る炉蓋のクリーニング装置において、1)前記炉蓋の上部とその周辺部、2)前記炉蓋の下部とその周辺部、及び3)前記炉蓋の両側部をそれぞれ独立に洗浄する前記水噴射手段を有し、前記炉蓋の両側部を洗浄する前記水噴射手段は前記炉蓋に沿って昇降する移動手段に取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
本発明に係る炉蓋のクリーニング装置においては、複数のノズルが、ノズルホルダの回転軸心を中心とした第1の円の周上の対向する位置に、正面視して高圧水の噴出方向を第1の円の接線方向に向けて傾斜配置された第1、第2のノズルと、ノズルホルダの回転軸心を中心とし第1の円の外側に形成される第2の円の周上の対向する位置に、正面視して高圧水の噴出方向を第2の円の接線方向に向けて傾斜配置された第3、第4のノズルとを有しているので、第1のノズルから噴射する高圧水の噴射反力によってノズルホルダを回転させることができると共に、噴射した高圧水はノズルホルダの前方に向けて拡がり炉蓋に均等に衝突し、付着しているタールを洗浄(除去)することができる。これにより、従来、ノズルホルダを回転するために必要であった回転駆動手段(例えば、油圧モータと油圧モータを稼動する油圧系統)を削減することができ、装置構成が簡単になって、装置コストの低減とメンテナンス負担の軽減を図ることができる。
【0016】
本発明に係る炉蓋のクリーニング装置においては、ノズルホルダに、第1、第3のノズルを垂直に取り付ける第1の傾斜面と、第2、第4のノズルを垂直に取り付ける第2の傾斜面とを設けているので、第1のノズルを第1、第2の円の接線方向に向けて傾斜配置することが容易にできる。
【0017】
本発明に係る炉蓋のクリーニング装置において、1)炉蓋の上部とその周辺部、2)炉蓋の下部とその周辺部、及び3)前記炉蓋の両側部をそれぞれ独立に洗浄する水噴射手段を有し、炉蓋の両側部を洗浄する水噴射手段は炉蓋に沿って昇降する移動手段に取り付けられている場合、炉蓋の各部位の洗浄を並行し効率的に行うことができ、炉蓋を短時間でコークス炉に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る炉蓋のクリーニング装置の模式図である。
図2】同炉蓋のクリーニング装置の上面クリーナの説明図である。
図3】(A)、(B)はそれぞれ水噴射手段の先側の側面図、平面図である。
図4】同炉蓋のクリーニング装置の下面クリーナの説明図である。
図5】同炉蓋のクリーニング装置の側面クリーナの説明図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る炉蓋のクリーニング装置の水噴射手段の先側の平面図である。
図7】変形例に係る水噴射手段の先側の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る炉蓋のクリーニング装置10(以下、単にクリーニング装置10という)は、コークス炉(図示せず)の前側を走行する車両の一例であるガイド車(図示せず)に取り付けられて、コークス炉から取り外され立設状態の炉蓋11に付着したタールを洗浄する装置であって、立設状態の炉蓋11の幅方向に沿って移動して炉蓋11の上部とその周辺部を洗浄する上面クリーナ12と、炉蓋11の幅方向に沿って移動して炉蓋11の下部とその周辺部を洗浄する下面クリーナ13と、炉蓋11の両側部を洗浄する側面クリーナ15とを有している。なお、側面クリーナ15は、炉蓋11に沿って昇降する移動手段14に取り付けられている。以下、詳細に説明する。
【0020】
図2に示すように、上面クリーナ12は、立設状態の炉蓋11の上方に、炉蓋11の幅方向に沿って配置された上搬送台16と、上搬送台16上を移動する上移動台車17と、上移動台車17に吊り下げられた水噴射手段18とを有している。そして、水噴射手段18から噴き出した高圧水を炉蓋11の上部内側面及び上部内側面の周囲に向けて噴射することができる。
【0021】
ここで、上搬送台16は、炉蓋11と距離を設け、長手方向を炉蓋11の幅方向に合わせて同一高さ位置に間隔を設けて平行配置され、長手方向の先側が炉蓋11の幅方向の中間に位置するように配置された断面コ字状の対となる梁部材19、20と、梁部材19、20の長手方向に沿った対向する複数の位置をそれぞれ接続する連結部材21とを有している。なお、上搬送台16は図示しない取り付け部材を介してガイド車に固定されている。また、梁部材19、20は、長手方向に沿った開口をそれぞれ対向させて配置されている
【0022】
更に、上移動台車17は、梁部材19、20間に挿入されたフレーム22と、フレーム22の進行方向(梁部材19、20の長手方向に沿った方向)の両側にそれぞれ軸心方向を進行方向に対して直交させて取り付けられた図示しない車軸と、車軸の両側に取り付けられた車輪23と、梁部材19、20の長手方向の基側に設けられた取り付け部材24を介して、梁部材19、20の間に軸心方向を梁部材19、20の長手方向に沿って固定され、フレーム22の進行方向の前側に設けられたベース部材25に接続手段26を介して連結されるピストン27を備えた油圧シリンダ28とを有している。なお、車軸両側の車輪23は、断面視してコ字状の梁部材19、20の開口から内側空間部内に挿入されている。
【0023】
図2図3(A)、(B)に示すように、水噴射手段18は、フレーム22に設けられたベース部材25の前側に突出して設けられた支持部材29の先側に下方に向けて突出して設けられた取り付け台30に固定されている。そして、水噴射手段18は、取り付け台30に固定され、図示しない給水系統を介して高圧水が流入するノズル本体部31と、ノズル本体部31に高圧水が通過する導水路を備えた回転軸32を介して回転可能に取り付けられた正面視して円形のノズルホルダ33とを有している。なお、水噴射手段18のノズルホルダ33の回転軸心方向は、上移動台車17の移動方向に対して、角度θ(<90度)で交差している。
【0024】
ノズルホルダ33には、高圧水を噴射する複数、本実施の形態では第1、第2、第3、及び第4のノズル34、35、36、37がそれぞれ設けられている。ここで、ノズルホルダ33の正面側(回転軸32が取り付けられていない側)には、図3(A)に示すように、断面視して回転軸心O側が高く外周側が低くなって、図3(B)に示すように、正面視して回転軸心Oに対して回転対称となった対となる第1、第2の傾斜面33a、33bが形成されている。そして、第1、第2のノズル34、35は、ノズルホルダ33の回転軸心Oを中心とした半径Rの第1の円の周上の回転軸心Oを中心とした対向する位置に、第1、第2のノズル34、35の軸心方向がそれぞれ第1、第2の傾斜面33a、33bに対して直交するように取り付けられ、第3、第4のノズル36、37は、ノズルホルダ33の回転軸心Oを中心とした半径Rの第2の円(R<R)の周上の回転軸心Oを中心とした対向する位置に、第3、第4のノズル36、37の軸心方向がそれぞれ第1、第2の傾斜面33a、33bに対して直交するように取り付けられている。
【0025】
このような構成とすることにより、ノズルホルダ33の回転軸心Oを中心とした第1の円の周上の対向する位置に、第1、第2のノズル34、35を第1の円の同じ接線方向に向けて傾斜配置することができ、第1の円の外側に形成される第2の円の周上の対向する位置に、第3、第4のノズル36、37を第2の円の同じ接線方向に向けて傾斜配置することができる。ここで、ノズルホルダ33を正面視した際、第1、第2のノズル34、35の軸心方向は、第1の円の接線方向に対して−10度から+10度の範囲に設定する。これによって、第1〜第4のノズル34〜37から噴射する高圧水の噴射反力によってノズルホルダ33を回転させることができ、噴射した高圧水はノズルホルダ33の前方に向けて拡がる。その結果、第1〜第4のノズル34〜37から噴射した高圧水を、炉蓋11の上部内側面及び上部内側面の周囲に均等に衝突させることができ、付着しているタールを洗浄(除去)することができる。
【0026】
ここで、第1、第2の傾斜面33a、33bとノズルホルダ33の回転軸心Oに直交する平面とのなす角度は、例えば、20〜60度である。これによって、第1〜第4のノズル34〜37の軸心方向を、ノズルホルダ33の回転軸心O方向に対して20〜60度の範囲に設定することができ、第1〜第4のノズル34〜37から高圧水を噴射することで、ノズルホルダ33を回転させながら、噴射された高圧水が炉蓋11の上部内側面及び上部内側面の周囲に衝突した際、炉蓋11の上部内側面及び上部内側面の周囲に対して垂直方向に作用する衝撃力を確保することができ、炉蓋11の上部内側面及び上部内側面の周囲に付着しているタールの洗浄効果を向上させることができる。
【0027】
また、第1、第2のノズル34、35の噴出口径をDとし、第3、第4のノズル36、37の噴出口径をD(<D)とした場合、D/D=0.8〜1.2としている。このため、第1及び第2のノズル34、35と第3及び第4のノズル36、37からそれぞれ噴出する高圧水量に大きな差が生じることを防止でき、第1、第2のノズル34、35から噴射する高圧水の噴射反力による回転モーメントと、第3、第4のノズル36、37から噴射する高圧水の噴射反力による回転モーメントを一定にすることができる。その結果、第3、第4のノズル36、37をノズルホルダ33から取り外し、図示しない栓を代わりに取り付けて第1、第2のノズル34、35からのみ高圧水を噴射しても、又は第1、第2のノズル34、35をノズルホルダ33から取り外し、図示しない栓を代わりに取り付けて第3、第4のノズル36、37からのみ高圧水を噴射しても、ノズルホルダ33を略同一の回転速度で効率的かつ安定して回転させることができ、タールの洗浄効果を一定にすることができる。
【0028】
図4に示すように、下面クリーナ13は、立設状態の炉蓋11の下方に、炉蓋11の幅方向に沿って配置された下搬送台38と、下搬送台38上を移動する下移動台車39と、下移動台車39に取り付けられた2台の水噴射手段40、40aとを有している。そして、水噴射手段40、40aから噴射した高圧水を炉蓋11の下部内側面及び下部内側面の周囲に向けて噴射することができる。
【0029】
ここで、下搬送台38は、炉蓋11と距離を設け、長手方向を炉蓋11の幅方向に合わせて同一高さ位置に間隔を設けて平行配置され、長手方向の中間位置が炉蓋11の幅方向の中間に対向するように配置された梁部材41、42を有している。なお、下搬送台38は図示しない取り付け部材を介してガイド車に固定されている。更に、下移動台車39は、梁部材41、42間の上方に配置されたフレーム43と、フレーム43の進行方向(梁部材41、42の長手方向に沿った方向)の両側にそれぞれ軸心方向を進行方向に対して直交させて取り付けられた図示しない車軸と、車軸の両側に取り付けられた車輪44と、梁部材41、42の長手方向の基側(下移動台車39の進行方向の後側)に設けられた取り付け部材45を介して、梁部材41、42の間に軸心方向を梁部材41、42の長手方向に向けて固定され、フレーム43の進行方向の前側に設けられた図示しない取り付け部材に接続手段を介して連結されるピストンを備えた油圧シリンダ46とを有している。
【0030】
水噴射手段40、40aは、フレーム43の中央部に設けられたベース部材47の上方に突出して設けられた支持部材48の先部及び中間部にそれぞれ設けられた取り付け台49、50に固定されている。ここで、水噴射手段40、40aは、水噴射手段40、40aにそれぞれ設けられたノズルホルダ51の回転軸心方向が、下移動台車39の移動方向に対して直交するように、ノズルホルダ51を回転可能に保持するノズル本体52を介して取り付け台49、50に固定している。なお、ノズルホルダ51の構成は、ノズルホルダ33と同一なので、同一の構成部材には同一の符号を付して、説明は省略する。
【0031】
図5に示すように、側面クリーナ15は、立設状態の炉蓋11の上部及び下部を除いた領域に突出して設けられた耐火構造体53を間にして、耐火構造体53の幅方向の両側に耐火構造体53の突出方向に沿って並べてそれぞれ配置された第1、第2、第3、第4の水噴射手段54、55、56、57を有している。そして、第1〜第4の水噴射手段54〜57は、炉蓋11(耐火構造体53)の上下方向に沿って昇降する移動手段14に取り付けられ、第1〜第4の水噴射手段54〜57から噴射した高圧水を炉蓋11(耐火構造体53)の両側部に向けて噴射することができる。
【0032】
ここで、移動手段14は、立設状態の炉蓋11と距離を設けて対向してガイド車に立設配置された柱部材59と、中央部を柱部材59が上下方向に貫通し、図示しない駆動機構により、柱部材59に案内されて上下方向に移動する昇降部60とを有している。そして、昇降部60の炉蓋11の幅方向に沿った両側部材には、それぞれ取り付け台61、62が設けられ、取り付け台61には、第1、第2の水噴射手段54、55が、取り付け台62には、第3、第4の水噴射手段56、57が固定されている。
【0033】
第1〜第4の水噴射手段54〜57は、第1〜第4の水噴射手段54〜57にそれぞれ設けられたノズルホルダ63の回転軸心方向を、炉蓋11の幅方向に対して傾斜させて、耐火構造体53の両側部に対してそれぞれ斜めに対向するように、ノズルホルダ63を回転可能に保持するノズル本体64を介して取り付け台61、62に固定している。なお、ノズルホルダ63の構成は、ノズルホルダ33と同一なので、同一の構成部材には同一の符号を付して、説明は省略する。
【0034】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係るクリーニング装置10の作用について説明する。
クリーニング装置10は、上面クリーナ12、下面クリーナ13、及び側面クリーナ15で構成されている。ここで、上面クリーナ12は、コークス炉から取り外された立設状態の炉蓋11の幅方向に沿って配置された上搬送台16と、上搬送台16上を移動する上移動台車17と、上移動台車17に取り付けられた水噴射手段18とを有しているので、上移動台車17を上搬送台16に沿って移動させることにより、炉蓋11の上部とその周辺部に高圧水を噴射することができる。また、下面クリーナ13は、炉蓋11の幅方向に沿って配置された下搬送台38と、下搬送台38上を移動する下移動台車39と、下移動台車39に取り付けられた2台の水噴射手段40、40aとを有しているので、下移動台車39を下搬送台38上で移動させることにより、炉蓋11の下部とその周辺部に高圧水を噴射することができる。これにより、炉蓋11の上部とその周辺部、及び下部とその周辺部にそれぞれ付着したタールを洗浄することができる。また、側面クリーナ15は、立設状態の炉蓋11の耐火構造体53に対向配置され、耐火構造体53の上下方向に沿って昇降する移動手段14の耐火構造体53幅方向に沿った両側にそれそれ取り付けられた第1〜第4の水噴射手段54〜57を有しているので、移動手段14を昇降させることにより、耐火構造体53の長手方向に沿った両側部に高圧水を噴射することができる。その結果、炉蓋11の上部とその周辺部、下部とその周辺部、及び炉蓋11の長手方向に沿った両側部をそれぞれ独立に洗浄することができる。
【0035】
ここで、上面クリーナ12の水噴射手段18、下面クリーナ13の水噴射手段40、40a、及び側面クリーナ15の第1〜第4の水噴射手段54〜57において、第1〜第4のノズル34〜37を、ノズルホルダ33の回転軸心Oを中心とした第1の円(半径R)の周上の回転軸心Oを中心とした対向する位置、第2の円(半径R)の周上の回転軸心Oを中心とした対向する位置に、正面視した高圧水の噴出方向を第1、第2の円の接線方向に一致させてそれぞれ配置し、第1、第2のノズル34、35の噴出口径Dと第3、第4のノズル36、37の噴出口径D(<D)との間にD/D=0.8〜1.2の関係が成立している場合、第1、第2のノズル34、35から噴射する高圧水の噴射反力による回転モーメントと、第3、第4のノズル36、37から噴射する高圧水の噴射反力による回転モーメントを一定にすることができる。
【0036】
その結果、第3、第4のノズル36、37をノズルホルダ33から取り外し栓を取り付けて第1、第2のノズル34、35のみから高圧水を噴射しても、又は第1、第2のノズル34、35をノズルホルダ33から取り外し栓を取り付けて第3、第4のノズル36、37のみから高圧水を噴射しても、ノズルホルダ33を略同一の回転速度で効率的かつ安定して回転させることができ、しかも、高圧水の噴射範囲を変えることができる。このため、上、下面クリーナ12、13及び側面クリーナ15がそれぞれ担当する領域におけるタールの付着範囲に応じて、水噴射手段18、40、40a、及び第1〜第4の水噴射手段54〜57の各ノズルホルダ33、51、63において、第1、第2のノズル34、35のみ使用する(即ち、第3、第4のノズル36、37を取り外して栓をする)状態、又は第3、第4のノズル36、37のみ使用する(即ち、第1、第2のノズル34、35を取り外して栓をする)状態を選択することにより、タールの付着範囲に合わせて高圧水の噴射範囲を変えると共にタールの洗浄効果を一定にすることができ、無駄のない効率的な洗浄を行うことができる。
更に、従来、ノズルホルダを回転するために必要であった例えば、油圧モータと油圧モータを稼動する油圧系統等の回転駆動手段を削減することができ、装置構成が簡単になって、装置コストの低減を図ることができる。そして、油圧系統に設けられた油圧電磁弁及びホース類の損傷有無の検査と損傷したものを交換する等のメンテナンス負担の軽減を図ることができる。これにより、コークス炉の稼働率が高くなって、生産性を向上させることができる。
【0037】
本発明の第2の実施の形態に係る炉蓋のクリーニング装置は、第1の実施の形態に係るクリーニング装置10と略同一の構成を有し、上、下面クリーナと側面クリーナにそれぞれ設けられている水噴射手段のノズルホルダ65の構成が、図6に示すように、第1の実施の形態に係るクリーニング装置10に設けられた水噴射手段のノズルホルダ33(ノズルホルダ51、63も同様)と異なり、ノズルホルダ65の回転軸心Pを中心とした円の周上の対向する位置に接線方向に向けて傾斜配置された第1、第2のノズル66、67を有していることが特徴となっている。このため、ノズルホルダ65についてのみ説明する。
【0038】
ノズルホルダ65の正面側(回転軸が取り付けられていない側)には、断面視して回転軸心P側が高く外周側が低くなって、正面視して回転軸心Pに対して回転対称となった対となる第1、第2の傾斜面68、69が形成されている。そして、第1、第2のノズル66、67は、ノズルホルダ65の回転軸心Pを中心とした半径Rの円の周上の回転軸心Pを中心とした対向する位置に、第1、第2のノズル66、67の軸心方向がそれぞれ第1、第2の傾斜面68、69に対して直交するように取り付けられている。
【0039】
このような構成とすることにより、ノズルホルダ65の回転軸心Pを中心とした円の周上の対向する位置に、第1、第2のノズル66、67を接線方向に向けて傾斜配置することができる。ここで、ノズルホルダ65を正面視した際、第1、第2のノズル66、67の軸心方向は、円の接線方向に対して−10度から+10度の範囲に設定する。これによって、第1、第2のノズル66、67から噴射する高圧水の噴射反力によってノズルホルダ65を効率的に回転させることができ、噴射した高圧水はノズルホルダ65の前方に向けて拡がる。その結果、上、下面クリーナ及び側面クリーナにそれぞれ設けた水噴射手段の第1、第2のノズル66、67から噴射した高圧水を、炉蓋の上部内側面、上部内側面の周囲、炉蓋の下部内側面、下部内側面の周囲、及び炉蓋(耐火構造体)の両側部に向けて噴射し、それぞれ均等に衝突させることができる。これにより、付着しているタールを洗浄(除去)することができる。
【0040】
ここで、第1、第2の傾斜面68、69とノズルホルダ65の回転軸心Pに直交する平面とのなす角度は、例えば、20〜60度である。これによって、第1、第2のノズル66、67の軸心方向を、ノズルホルダ65の回転軸心P方向に対して20〜60度の範囲に設定することができ、第1、第2のノズル66、67から高圧水を噴射することで、ノズルホルダ65を回転させながら、噴射された高圧水が炉蓋の上部内側面及び上部内側面の周囲に衝突した際、炉蓋の上部内側面及び上部内側面の周囲に対して垂直方向に作用する衝撃力を確保することができ、炉蓋に付着しているタールの洗浄効果を向上させることができる。
【0041】
図7に、変形例に係る水噴射手段のノズルホルダ70を示す。ノズルホルダ70は、ノズルホルダ65と比較して、第1、第2の傾斜面71、72における第1、第2のノズル73、74がそれぞれ取り付けられる位置を通過しノズルホルダ70の回転軸心Qを中心とする円の半径Rが、ノズルホルダ65の第1、第2の傾斜面68、69における第1、第2のノズル66、67がそれぞれ取り付けられる位置を通過する円の半径Rと比較して小さいことが特徴となっている。このため、第1、第2のノズル73、74から噴射される高圧水の範囲は、第1、第2のノズル66、67から噴射される高圧水の範囲より狭くなる。従って、ノズルホルダ65、70を選択使用することで、炉蓋に付着したタールの範囲(タールの洗浄範囲)に応じて高圧水の噴射領域を変えることができ、無駄のない洗浄を行うことができる。
なお、本発明の第2の実施の形態に係るクリーニング装置の作用は、第1の実施の形態に係るクリーニング装置10の作用と同一であるので、説明は省略する。
【0042】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、炉蓋のクリーニング装置をコークス炉前側を走行するガイド車に設けた場合について説明したが、コークス炉の後側を走行する押出機に炉蓋のクリーニング装置を設けることもできる。更に、ガイド車及び押出機の双方に炉蓋のクリーニング装置を設けてもよい。
また、本発明の第2の実施の形態に係る炉蓋のクリーニング装置では、水噴射手段のノズルホルダに第1、第2のノズル、即ち2個のノズルを設けたが、ノズルホルダの回転軸心を中心とした円の周上に3個以上のノズルを設けてもよい。ここで、n(n≧3)個のノズルを設ける場合、各ノズルは、ノズルホルダの回転軸心を中心とした円の周上をn等分する位置に接線方向に向けて傾斜配置することが好ましい。これにより、ノズルホルダを効率的かつ安定して回転させることができる。
【符号の説明】
【0043】
10:炉蓋のクリーニング装置、11:炉蓋、12:上面クリーナ、13:下面クリーナ、14:移動手段、15:側面クリーナ、16:上搬送台、17:上移動台車、18:水噴射手段、19、20:梁部材、21:連結部材、22:フレーム、23:車輪、24:取り付け部材、25:ベース部材、26:接続手段、27:ピストン、28:油圧シリンダ、29:支持部材、30:取り付け台、31:ノズル本体部、32:回転軸、33:ノズルホルダ、33a:第1の傾斜面、33b:第2の傾斜面、34:第1のノズル、35:第2のノズル、36:第3のノズル、37:第4のノズル、38:下搬送台、39:下移動台車、40、40a:水噴射手段、41、42:梁部材、43:フレーム、44:車輪、45:取り付け部材、46:油圧シリンダ、47:ベース部材、48:支持部材、49、50:取り付け台、51:ノズルホルダ、52:ノズル本体、53:耐火構造体、54:第1の水噴射手段、55:第2の水噴射手段、56:第3の水噴射手段、57:第4の水噴射手段、59:柱部材、60:昇降部、61、62:取り付け台、63:ノズルホルダ、64:ノズル本体、65:ノズルホルダ、66:第1のノズル、67:第2のノズル、68:第1の傾斜面、69:第2の傾斜面、70:ノズルホルダ、71:第1の傾斜面、72:第2の傾斜面、73:第1のノズル、74:第2のノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7