【実施例】
【0043】
まず、
図1から
図4を用いて、本実施例の押込装置を用いる対象の回転機械の一例を説明する。
図1は、回転機械の概略構成を示す斜視図である。
図2は、動翼とロータとの係合部の近傍を示す斜視図である。
図3は、翼根ばねの概略構成を示す斜視図である。
図4は、
図1の回転機械の部分切断図である。また、本実施例では、回転機械の回転軸に直交し、かつ回転軸を通過する方向を回転軸の径方向とし、回転軸周りの方向を回転軸の周方向とし、回転軸に平行な方向を回転軸の軸方向とする。
【0044】
図1に示す回転機械10は、ガスタービン、蒸気タービン、圧縮機等であり、回転軸であるロータ12とロータ12に装着された複数の動翼14とを有する。複数の動翼14は、ロータ12の外周部から放射状に延出するように装着される。ロータ12は、複数の部材を連結させても、1つの部材でもよい。例えば、ロータ12は、軸となる主軸に動翼14が固定されるディスクを固定した構造でもよく、1つの部材の表面に動翼14を固定する形状が形成された構造でもよい。つまり、ロータ12は、主軸に固定されるディスクでもよい。
【0045】
動翼14は、翼面を形成する翼部22と、翼部22のロータ12側の端部に設けられた翼根部24とを有する。翼部22は、径方向外側に延在する板状の部材である。翼部22は、例えば、横断面形状が流線形をなし、この形状を確保しながら徐々に捩られながら延出しており、先端部がケーシング(固定側の部材)の内壁面側に延出している。翼部22は、作動ガスを円滑に流動させるべく機能する。翼根部24は、
図2に示すように、軸方向からみた断面形状が、所謂、クリスマスツリー形状に形成され、ロータ12に軸方向(ロータ12の板厚方向)から嵌合して固定可能となっている。
【0046】
ロータ12は、外周部に動翼14の翼根部24の断面形状とほぼ同じ形状をなす翼溝28が、周方向に等間隔で軸方向に沿って形成されている。ここで、「軸方向に沿って形成されている」とは、軸方向に平行に形成されているものに加え、軸方向に対して傾斜して形成されているものも含む。つまり軸方向に沿った方向は、軸方向に平行な方向と軸方向に対して傾斜している方向を含む。また、軸方向に沿った方向を軸方向に平行な方向の成分と軸方向に直交する方向の成分とに分離した場合、軸方向に平行な方向の成分が軸方向に直交する方向の成分よりも長くなる。本実施形態の翼溝28は、軸方向に対して傾斜している。この各翼溝28は、動翼14の翼根部24が軸方向から挿入されて固定される。
【0047】
回転機械10は、翼根部24と翼溝28との間に隙間30が形成される。隙間30は、翼根部24の径方向内側の端部に形成される。隙間30は、翼溝28と同様に、軸方向に対して傾斜した方向に延在している。本実施形態の隙間30は、延在方向を軸方向に対して傾斜させたが、隙間の延在方向が軸方向と平行な方向としてもよい。なお、隙間30と翼溝28と、翼根部24は、同じ方向に延在する。回転機械10は、隙間30に翼根ばね(動翼固定部材)18が挿入されている。翼根ばね18は、圧縮されることで少なくとも径方向に縮む弾性体であり、動翼14をロータ12に対して径方向外側に向けて押し上げる。回転機械10は、翼根ばね(動翼固定部材)18を挿入する方向と翼溝28の方向とが同じ方向となる。本実施形態の翼溝28の方向は、軸方向に沿った方向となる。
【0048】
翼根ばね18は、隙間30の延在方向が長手方向となる長尺の板ばねであり、翼根部24と接触する動翼接触面52と、翼溝28と接触するロータ接触面56と、を有する。翼根ばね18は、1枚の板を折り曲げて形成され、長手方向に直交する方向に切断した切断面の形状が、径方向下側の面に開口58が形成され、一部が変形したC字形状となる。具体的には、翼根ばね18は、開口58を挟んだ1対のロータ接触面56と、ロータ接触面56に略平行に配置された動翼接触面52とが、湾曲形状を有する一対の側面57を介して一体に形成されている。動翼接触面52は、3つの湾曲部がつながった形状となる。
【0049】
また、
図4に示すように、動翼14は、翼根部24よりも径方向外側の軸方向の端面の、軸方向に突出し、周方向に延在する凸部を有し、凸部の径方向内側の面に翼側溝32が形成されている。ロータ12は、翼溝28よりも径方向内側の軸方向の端面に軸方向に突出し、周方向に延在する凸部を有し、凸部の径方向外側の面にロータ側溝34が形成されている。したがって、回転機械10は、翼根部24と翼溝28とが重なる領域の軸方向の端面の径方向外側に翼側溝32が形成され、径方向内側にロータ側溝34が形成され、翼側溝32とロータ側溝34とが向かい合っている。
【0050】
回転機械10は、動翼14がロータ12に装着されている部分、つまり、動翼14とロータ12との係合部の軸方向の端面にシール機構19が配置されている。シール機構19は、径方向外側の端部が翼側溝32に挿入され、径方向内側の端部がロータ側溝34に挿入されている。シール機構19は、板状部材であり、径方向外側の端部が翼側溝32に挿入され動翼14と接し、径方向内側の端部がロータ側溝34に挿入されロータ12と接することで、動翼14とロータ12との間を塞ぎ、動翼14とロータ12との係合部の隙間30に回転機械10を流れる作動ガス(燃焼ガス、排ガス、蒸気)が流入することを抑制する。
【0051】
シール機構19は、シール板40と、ロックプレート42と、ロックピース44と、を有する。シール板40は、係合部を覆う板であり、径方向外側の端部が翼側溝32に挿入されている。ロックプレート42は、径方向外側の端部がシール板40と接し、径方向内側の端部がロータ側溝34と接している。ロックプレート42は、ロータ側溝34とシール板40との間に挿入されることで、シール板40を翼側溝32に押し当てる。ロックピース44は、ロックプレート42とロータ側溝34との軸方向の隙間に挿入され、ロックプレート42をロータ側溝34に固定する。シール機構19は、シール板40を翼側溝32に挿入させた後、シール板40とロータ側溝34との間にロックプレート42を挿入する。シール機構19は、その後、ロックピース44でロックプレート42をロータ側溝34に固定することで、シール板40、ロックプレート42を翼側溝32とロータ側溝34との間に固定し、動翼14とロータ12との係合部の隙間を軸方向の側面側から塞ぐ。
【0052】
本実施例では、回転機械10のうち、ロータ12と動翼14とシール機構19と翼根ばね18のみを示したが、回転機械10は、ステータ側の各種機構や、他の段の動翼、回転軸等、回転機械が備えている種々の構成を備えている。
【0053】
次に、
図5から
図18を用いて、上述した回転機械10に対して用いることができる押込装置100について説明する。
図5は、本実施例の押込装置の概略構成を示す模式図である。
図6は、動翼保持装置と挿入冶具とが回転機械に装着されている状態を示す正面図である。
図7は、動翼保持装置と挿入冶具との概略構成を示す正面図である。
図8は、動翼保持装置と挿入冶具との概略構成を示す側面図である。
図9は、動翼保持装置と挿入冶具との概略構成を示す上面図である。
【0054】
押込装置100は、上述したロータ12と動翼14との隙間30に対して翼根ばね18を着脱、つまり挿入、抜き取りする際に用いる装置である。具体的には、押込装置100は、ロータ12に対して動翼14を軸方向90に沿って移動させて、翼根部24と翼溝28とを係合させた後、隙間30に翼根ばね18を挿入する際に用いられる。また、押込装置100は、回転機械10からシール機構19を取り外して、隙間30から翼根ばね18を抜き取る際に用いられる。したがって、押込装置100は、シール機構19が設置されていない状態で使用される。また、以下の実施例では、隙間30に2つの翼根ばね18a、18bが回転軸の軸方向90に沿って直列に配置される場合として説明する。なお、翼根ばね18の回転軸の軸方向90に沿って(隙間30の延在方向109に)直列につなげる数は特に限定されない。
【0055】
押込装置100は、
図5に示すように、動翼保持装置102と、2つの挿入冶具104と、押し棒106と、押圧装置108と、を有する。動翼保持装置102は、ロータ12に対して動翼14を保持し、動翼14の回転軸の軸方向90における位置を規制する。本実施例の動翼保持装置102は、
図6に示すように、回転軸の周方向92において、2つの隙間30を含む範囲に配置される部材である。挿入冶具104は、隙間30に対応して配置されている。挿入冶具104は、隙間30に挿入される翼根ばね18a、18bを補助する。押し棒106は、翼根ばね18a、18bのいずれかと接触する剛体の棒であり、押圧装置108から付与される力を翼根ばね18a、18bに伝達する。押し棒106は、翼根ばね18a、18bと押圧装置108との距離を調整する調整冶具である。押圧装置108は、油圧シリンダ等、翼根ばね18a、18bを所定の方向に押す装置である。
【0056】
以下、各部について説明する。まず、
図5から
図11を用いて、動翼保持装置102について説明する。
図10は、動翼保持装置の板部の概略構成を示す正面図である。
図11は、動翼保持装置の板部の概略構成を示す側面図である。
【0057】
動翼保持装置102は、板部110と、支持部112と、磁石114と、ワイヤ116と、を有する。動翼保持装置102は、板部110が第1部材となり、支持部112が第2部材となる。
【0058】
板部110は、回転軸の径方向94の長さが、翼側溝32の底面からロータ側溝34の底面までの距離よりも短く、回転軸の周方向92の長さが、2つの隙間30の距離よりも長い、つまり動翼14の配置ピッチよりも長い板である。板部110は、使用時に、回転軸の径方向の端部である外周側端部120が翼側溝32に挿入され、回転軸の径方向94の内側の端部である内周側端部122がロータ側溝34に挿入される。
【0059】
板部110は、使用時に、隙間30と重なる部分に開口124が形成されている。本実施例の板部110は、2つの隙間30と重なるので、2つの開口124が形成されている。開口124は、開口面積が隙間30よりも大きくなり、挿入冶具104が挿入される。
【0060】
板部110は、使用時に、翼根部24、翼溝28と対面する面とは反対側の面に突起部126が設けられている。突起部126は、使用時に作業者が板部110の位置を調整する際につかむ把持部となる。また、把持部となる突起部126は、作業者が手でつかむことに限定されず、ドライバ、たがね等の工具を当接させたり、ペンチ等の工具で把持したりすることで板部110を移動させ、位置を調整することもできる。突起部126には、ワイヤ116が挿入される穴が開口されている。
【0061】
板部110は、軸方向90から見た場合に周方向の一方の端辺となり、軸方向90に沿って延在する面に基準端面128が形成され、軸方向から見た場合に周方向の他方の端辺となり、軸方向90に沿って延在する面に基準端面129が形成されている。基準端面128、129は、板部110を適切な位置に設置した場合、具体的には、開口124が隙間30と重なる位置に設置した場合、対応する位置にある動翼14またはロータ12と、回転軸に直交する面における形状が一致する。つまり、端面の凹凸が動翼14またはロータ12の凹凸と一致する形状となる。これにより、作業者は、基準端面128、129の凹凸と動翼14またはロータ12の凹凸とを触ることで、位置が適切かどうかを判定することができる。板部110は、周方向の端部の近傍に連結孔130が開口されている。連結孔130は、支持部112が挿入される穴である。
【0062】
支持部112は、回動部140と、支点142と、を有する。本実施形態の動翼保持装置102は、支持部112が相対位置変更機構となる。回動部140は、棒状の部材である。回動部140は、延在方向の端部が曲面となっている。これにより、回動部140が他の部材を傷つけることを抑制でき、かつ、回動をより容易にすることができ、端部を対象の部材に接触させやすくすることができる。支点142は、板部110の連結孔130に挿入される蝶ネジであり、回動部140を回動可能な状態で支持する。支点142は、蝶ネジを回転させ、締めることで、回動部140に対して締め付け力を作用させることができ、板部110に対して回動部140を所望の位置に固定することもできる。
【0063】
磁石114は、ワイヤ116を介して板部110と連結している。ワイヤ116は、板部110の突起部126に形成された穴に挿入され、板部110と磁石114とを繋げている。動翼保持装置102は、使用時に磁石114を動翼14またはロータ12等の周辺の金属に付着させることで、作業者が板部110を誤って落とした場合も回転機械10の内部に落下しないようにすることができる。また、ワイヤ116を手繰ることで回収することを可能とする。また、磁石114であるため、着脱が簡単になる。
【0064】
動翼保持装置102は、板部110の外周側端部120を翼側溝32に挿入し、支持部112の回動部140をロータ12のロータ側溝34を構成する立ち上がり部の径方向外側の端面(言い換えれば、径方向外側へ伸びる部分の径方向の外側を向く端面)と接触させることで、板部110の径方向の位置を固定する。したがって、板部110は、外周側端部120が翼側溝32に挿入された状態で、動翼14とロータ12との間に固定される。また、板部110は、
図6に示すように、翼根部24と翼溝28とが配置されている領域の隙間30以外の部分を覆っている。また、板部110は、翼根部24と翼溝28とに対面している。
【0065】
これにより、動翼保持装置102は、動翼14がロータ12に対して、軸方向に沿って移動する力が作用したら、より具体的には、軸方向に沿った方向(つまり、動翼固定部材が挿入される方向、翼溝28の方向)において動翼保持装置102が設置されている側の端部から反対側の端部に向かって移動する力が動翼14に対して作用したら、動翼14の翼側溝32のロータ12の端面と対面している面が、板部110と接触する。板部110は、外周側端部120のロータ12の端面と対面していない側(軸方向に交差する面のうち、軸方向においてロータ12、動翼14から遠い側)の面が翼接触部(第1部分)131となる。この状態で、さらに動翼14に移動する力が作用すると、ロータ12の翼溝28が設けられている領域の軸方向の端面が板部110と接触する。板部110は、ロータ12の翼溝28と対面している部分がロータ接触部(第2部分)132となる。動翼保持装置102は、板部110のロータ接触部132のロータと接触する面が第1面133となる。動翼保持装置102は、板部110の翼接触部131の動翼14と接触する面が第2面134となる。ここで、本実施形態において、第1面133は、ロータ12に設けられた軸方向端面のうち翼根ばね18を挿入する側の軸方向端面に接触する面である。第2面134は、第1面133とは逆方向を向き、動翼14に設けられた軸方向端面に接触する面である。動翼保持装置102は、板部110の翼接触部131が動翼14と接触し、ロータ接触部132がロータ12と接触することで、つまり、第1面133がロータ12と接触し、第2面134が動翼14と接触することで、動翼14がさらに軸方向に沿って移動しようとしても、板部110がロータ接触部132でロータ12に支持されているため、板部110が移動できない状態となる。これにより、動翼14の軸方向に沿った方向への移動を抑制することができ、ロータ12に対して動翼14を所定の位置に保持する。
【0066】
また、動翼保持装置102は、外周側端部120の端面が第3面135となり、回動部140の径方向94において支点142から遠い側の端面が第4面136となる。動翼保持装置102は、第3面135と第4面136により、動翼保持装置102の径方向94の位置を定める。本実施形態の動翼保持装置102は、上述したように、第3面135が翼側溝32と接し、第4面136がロータ12と接することで径方向94の位置が固定される。また、本実施形態において、第3面135は、ロータ12の径方向外側または内側を向く面であって、ロータ12及び動翼14の少なくとも一方と接して動翼保持装置102の径方向の位置を定める面である。また、本実施形態において、第4面136は、ロータ12の径方向外側または内側を向く面であって、第3面135とは逆方向を向き、動翼保持装置102の径方向の位置を定める面である。
図5から
図9の説明では、径方向外側の面を第3面135とし、径方向内側の面を第4面136としたが、第3面135と第4面136とを逆としてもよい。また、動翼保持装置102は、第3面135と第4面136の両方が径方向に対面するロータ12または動翼14の面と接することが好ましいがこれに限定されない。動翼保持装置102は、第3面135と第4面136の一方だけが径方向に対面するロータ12または動翼14の面と接触していれば、径方向の位置を固定することができる。つまり、動翼保持装置102は、第3面135と第4面136の他方が径方向に対面するロータ12または動翼14の面との間に隙間が設けられていてもよい。
【0067】
次に、
図5から
図9に加え、
図12から
図14を用いて、挿入冶具について説明する。
図12は、挿入冶具の概略構成を示す正面図である。
図13は、挿入冶具の概略構成を示す上面図である。
図14は、挿入冶具の概略構成を示す断面図である。
図14は、
図12のA−A線矢視図である。
【0068】
挿入冶具104は、動翼保持装置102と同様に、ワイヤ148を介して磁石146と連結されている。挿入冶具104は、使用時に磁石146を動翼14またはロータ12の金属に付着させることで、作業者が挿入冶具104を落としても回転機械10の内部に落下しないようにすることができる。また、ワイヤ148を手繰ることで挿入冶具104を回収することを可能とする。また、ワイヤ148は、動翼保持装置102の突起部126の穴を通過させ、磁石146と挿入冶具104が、動翼保持装置102から離れないようにすることもできる。
【0069】
挿入冶具104は、外縁150の外形形状が動翼保持装置102の開口124と略同じかやや小さい形状であり、内部に開口152が形成された筒状の部材である。挿入冶具104は、使用時に翼根ばね18が挿入される側(隙間30と対面しない側)の面である入口154が筒形状の延在方向に対して直交する面となる。挿入冶具104は、使用時に翼根ばね18が排出される側(隙間30と対面する側)の面である出口156が筒形状の延在方向に対して傾斜した面となる。具体的には、開口152は、
図14に示すように、出口156側の端部が、周方向に見た場合に傾斜している。つまり挿入冶具104は、入口154に対して出口156が傾斜している。また、挿入冶具104は、開口152の入口154側の端面にテーパ部(傾斜部)158が設けられている。挿入冶具104は、端面にテーパ部158を設け、開口152の開口面積が入口154側の端部で他の部分よりも高い割合で大きくすることで、後述する押し棒106を入口154から挿入しやすくなる。また、開口152は、出口156側の端部が、径方向からに見た場合にも傾斜していてもよい。
【0070】
また、挿入冶具104は、開口152の径が入口154よりも出口156で小さくなる。つまり、開口152は絞りが形成されている。また、開口152には、使用時に翼根ばね18の開口58と対面する位置に突起160が形成されている。
【0071】
挿入冶具104は、使用時に開口152に翼根ばね18が挿入される。挿入冶具104は、外縁150を動翼保持装置102の開口124に挿入することで、翼根ばね18を隙間30に対して所定向きに支持することができる。ここで、挿入冶具104は、開口152の延在方向に対する出口156の向きを隙間30の延在方向109に対応する向きとすることで、挿入冶具104を開口124に設置した時に隙間30の延在方向109に対して開口152の延在方向が一致するようにすることができる。つまり、隙間30の延在方向が軸方向に対して傾斜している場合等でも、隙間30の延在方向109と翼根ばねの挿入方向を一致させることができる。また、挿入冶具104は、開口152の出口156側の開口面積が入口154側より小さくなっていることで、翼根ばね18を圧縮して、出口156側から押し出すことができる。これにより、隙間30に挿入することができ、翼根ばね18を挿入しやすくすることができる。また、挿入冶具104は、開口152の出口156側の開口面積が隙間30の開口面積より小さくなっていることが好ましい。これにより、翼根ばね18を隙間30に挿入しやすくすることができる。ここで、挿入冶具104は、開口152の入口154と出口156との開口面積を上記関係とすることが好ましいがこれに限定されない。挿入冶具104は、開口152の入口154の径方向の寸法と出口156の径方向の寸法とが上記関係、つまり、開口152の出口156の径方向の寸法が入口154の径方向の寸法よりも小さい形状としてもよい。このように、挿入冶具104は、開口152がテーパを有する形状とすることで、上記効果を得ることができる。また、挿入冶具104は、開口152の出口156と隙間30との開口面積を上記関係とすることが好ましいが、これに限定されない。挿入冶具104は、開口152の出口156の径方向の寸法と隙間30の径方向の寸法とが上記関係、つまり隙間30の径方向の寸法が、出口156の径方向の寸法よりも小さい形状としてもよい。上記関係の開口面積、寸法の関係は、一方より他方を小さくすることが好ましいが略同じとすることでも挿入しやすくすることができる。
【0072】
次に、押し棒106について説明する。
図15は、押し棒の概略構成を示す斜視図である。
図16は、押し棒の概略構成を示す正面図である。
図17は、押し棒の概略構成を示す底面図である。
図18は、押し棒の概略構成を示す側面図である。押し棒106は、金属等の剛体で形成されており、棒状の基部170と基部170の先端に設けられた先端部172とを有する。基部170は、端面が翼根ばね18よりも大きく、開口152よりも小さく、断面の形状が基本的に変わらない柱形状である。先端部172は、基部170の端面175に設けられている突起である。先端部172は、端面の外縁よりも所定距離内側に設けられており、基部170の延在方向に伸びた柱状の部材である。また、基部170は、側面の一部、具体的には、挿入冶具104の開口152の突起160に対応する位置にガイド溝174が設けられている。ガイド溝174は、基部170の延在方向に沿って直線状に形成されている。また、基部170は、ガイド溝174が設けられている側面とは反対側の面にねじ穴176が設けられている。
【0073】
押し棒106は、使用時に先端部172が設けられた基部170の端面175が翼根ばね18と接し、反対側の端面が押圧装置108と接する。これにより、押し棒106は、押圧装置108で押されると、その力で翼根ばね18を押す。押し棒106は、先端部172が設けられていることで、翼根ばね18に対して押し棒106が傾いた場合、先端部172が翼根ばね18と接触する。これにより、押し棒106に対して翼根ばね18を抜けにくくすることができる。また、押し棒106は、先端部172を端面175の外縁よりも所定距離内側に設けることで、挿入冶具104の突起160に当たりにくくすることができる。また、押し棒106は、ガイド溝174を設けることで、ガイド溝174に突起160が挿入された状態となり、挿入冶具104に対して押し棒106が隙間30の延在方向109に対して傾いた方向に移動することを抑制することができる。また、ねじ穴176を設けることで、挿入時に押し棒106を支持する支持具を押し棒106に対して固定することができる。
【0074】
次に、押込装置100を用いた動翼固定部材着脱方法について説明する。
図19は、動翼固定部材着脱方法の動作を説明するためのフローチャートである。
図20は、動翼固定部材着脱方法の動作を説明するための説明図である。
【0075】
まず、翼根ばね18(18a、18b)を挿入冶具104に挿入する(ステップS12)。具体的には、翼根ばね18を挿入冶具104の開口152の入口154側から挿入することで、翼根ばね18の外縁と開口152の内周面を接触させ、翼根ばね18を挿入冶具104に挿入する。次に、翼根ばね18の延在方向において開口152に挿入されていない側の端部をハンマー等でたたくことで、開口152に翼根ばね18を押し込む。
【0076】
次に、動翼保持装置102をロータ12と動翼14とに対して装着する(ステップS14)。具体的には、動翼保持装置102の板部110を翼側溝32とロータ側溝34との間に挿入して、基準端面128、129の凹凸と、ロータ12と動翼14の凹凸を触りながら、見ながら、周方向の位置を調整する。基準端面128、129の凹凸と、ロータ12と動翼14の凹凸とが一致する位置となったら、支持部112の回動部140を回転させて、回動部140をロータ12に突き当て固定し、板部110の外周側端部120を、翼側溝32と接触させる。これにより、動翼保持装置102がロータ12と動翼14とに対して装着される。なお、ステップS12とステップS14とは順序を逆にしてもよい。つまり、動翼保持装置102をロータ12と動翼14に対して装着した後、翼根ばね18を挿入冶具104に挿入してもよい。
【0077】
次に、挿入冶具104を動翼14とロータ12との隙間30に対して設置する(ステップS16)。つまり、挿入冶具104を動翼保持装置102の開口124に挿入する。動翼固定部材着脱方法は、翼根ばね18が挿入された挿入冶具104を動翼保持装置102の開口124に挿入した後、動翼保持装置102をロータ12と動翼14に対して装着してもよい。次に、押圧装置108で押し込む(ステップS18)。具体的には、翼根ばね18の挿入冶具104に挿入されている側とは反対側の端部に押圧装置108の押圧部を接触させ、押圧装置108で翼根ばね18を隙間30に押し込む。
【0078】
その後、翼根ばね18を一定距離隙間30に押し込んだら、押圧装置108と翼根ばね18との間に押し棒106を設置する(ステップS20)。つまり、
図20に示すように、翼根ばね18と押圧装置108の間に押し棒106を設置し、押し棒106を介して、押圧装置108の力を翼根ばね18に伝達する。これにより、押圧装置108のストロークを短くすることができる。また、押圧装置108の押し棒106、翼根ばね18と接触する部分の形状の自由度を高くすることができる。つまり押圧装置108の先端を挿入冶具104に挿入する必要がないため、小さくする必要がない。また、
図20に示すように、押圧装置108は、支持機構180で押圧装置108に対して押し棒106を支持するようにしてもよい。支持機構180は、押し棒106のねじ穴176に挿入されている。支持機構180は、押圧装置108の本体に対して、挿入方向182に平行な方向に移動自在な状態で支持されている。なお、支持機構180は、押し棒106のねじ穴176に挿入されず、押し棒106を挿入する穴を有し、挿入方向182に平行な方向に移動自在な状態で支持する構造としてもよい。この場合、支持機構180は、押圧装置108に対して固定してもよい。
【0079】
次に、押圧装置108で押し込む(ステップS22)。押し棒106を介して、押圧装置108で翼根ばね18を隙間30に押し込む。押圧装置108は、翼根ばね18の全域が隙間30に挿入される位置まで押し込む。
【0080】
対象の翼根ばね18を挿入したら、同じ隙間30にさらに翼根ばねを挿入するかを判定する(ステップS24)、つまり次の翼根ばねがあるかを判定する。次の翼根ばねがある場合(ステップS24でYes)、ステップS12に戻り、同じ処理を繰り返す。この場合、動翼保持装置を装着したままとしステップS14の処理を省略してもよい。次の翼根ばねがない場合(ステップS24でNo)、つまり隙間30への翼根ばねの挿入が終了した場合、本処理を終了する。
【0081】
ここで、上記実施例では、翼根ばね18を隙間30に挿入する場合として説明したが、翼根ばね18を隙間30から抜き取る場合も押込装置100で抜き取ることができる。具体的には、動翼保持装置102を装着した後、押し棒106を用いて、隙間30に挿入されている翼根ばね18を押すことで、押している端面とは反対側の端面の隙間30から翼根ばね18を抜き取ることができる。この時、押し棒106は、隙間30よりも小さいものを用いる。また、挿入冶具104は用いても用いなくてもよい。
【0082】
このように、本実施例は、動翼保持装置102を動翼14とロータ12との間に装着する。これにより、ステップS18、ステップS22で押圧装置108により翼根ばね18を押し込んだ力で、動翼14に翼根ばね18で押される方向に移動する力が作用した場合も、板部110の翼接触部131と動翼14が接触し、ロータ接触部132とロータ12とが接触した状態となる。これにより、動翼14は、ロータ12で支持される板部110によって、翼根ばね18で押される方向に移動できない状態となる。以上より、動翼14の軸方向に沿った移動を抑制しつつ、翼根ばね18を隙間30に挿入することができる。
【0083】
動翼保持装置102を用い、回転軸の軸方向に沿った方向における動翼14の移動を抑制できることで、動翼14の位置を調整しながら翼根ばね18を挿入したり、翼根ばねの挿入後に、動翼14の位置を調整する作業をしたりしなくてもよい。動翼保持装置102は、簡単な構造であり、取りはずしも容易に行うことができる。また、動翼保持装置102は、シール機構19と同様の位置に同様に装着できる構造であるため、特殊な工具を用いずに装着することができる。
【0084】
また、本実施例のように、翼根ばね18を軸方向に複数に分割することで、翼根ばね18を押し込む量(ストローク)を短くすることができるため、押込装置100を設置するスペースを小さくすることができる。また、翼根ばね18を短くできるため、安定して隙間30に挿入することができる。
【0085】
ここで、上述した押込装置100を用いた動翼固定部材着脱方法のうち、動翼固定部材の装着方法は、回転機械の製造方法として用いることもできる。また、回転機械の製造方法は、動翼保持装置を用いて、上述した動翼固定部材着脱方法以外の方法で回転機械を製造してもよい。
【0086】
図21は、回転機械の製造方法の動作を説明するためのフローチャートである。
図21に示す回転機械の製造方法は、ロータ12に翼溝を形成し、かつ動翼14や翼根ばね18等の各部品や作業用の工具を準備した後の処理である。まず、回転機械10のロータ12の外周面に軸方向に沿って設けられた翼溝28に動翼14を挿入する(ステップS32)。翼溝28に動翼14を挿入した後、動翼保持装置102を装着する(ステップS34)。具体的には、翼溝28の方向への動翼14の移動を規制する動翼保持装置102をロータ12に取り付ける。本実施形態では、ロータ12と動翼14とに取り付ける。これにより、動翼保持装置102を装着することで動翼14がロータ12に対して翼溝28の方向に移動することを抑制する。その後、翼溝28と動翼14との隙間30に翼根ばね18を翼溝28の方向に挿入する(ステップS36)。
【0087】
図21に示すように動翼保持装置102を用いて、翼溝28の方向への動翼14の移動を規制した状態で、翼根ばね18を隙間30に挿入することで、動翼14の位置を調整しながら翼根ばね18を挿入したり、翼根ばねの挿入後に、動翼14の位置を調整する作業をしたりしなくてもよい。これにより、作業性を向上させることができ、回転機械の製造をより簡単にすることができる。
【0088】
次に、
図22を用いて回転機械の製造方法の他の例について説明する。
図22は、回転機械の製造方法の動作を説明するためのフローチャートである。
図22に示す回転機械の製造方法は、
図21に示す回転機械の製造方法と同様に、ロータ12に翼溝を形成し、かつ動翼14や翼根ばね18等の各部品や作業用の工具を準備した後の処理である。
【0089】
まず、回転機械10のロータ12の外周面に軸方向に沿って設けられた翼溝28に動翼14を挿入する(ステップS42)。次に、翼溝28に動翼14を挿入した後、動翼保持装置102を装着する(ステップS44)。これにより、動翼保持装置102を装着することで動翼14がロータ12に対して翼溝28の方向に移動することを抑制する。
【0090】
次に、挿入冶具104に翼根ばね18を保持させる(ステップS46)。つまり、挿入軸104の開口に翼根ばね18を挿入する。その後、翼根ばね18が隙間30と対面する位置に挿入冶具104を配置する(ステップS48)。つまり、翼根ばね18が保持された挿入冶具104を、翼根ばね18を挿入する側のロータ12または動翼14の軸方向端面に対向させ、かつ、翼溝28の方向において隙間28と対向する位置に翼根ばね18を配置する。その後、翼溝28と動翼14との隙間30に挿入冶具104に挿入された翼根ばね18を翼溝28の方向に挿入する(ステップS50)。
【0091】
このように、動翼保持装置でロータ12と動翼14の翼溝の方向の相対位置を抑制し、かつ、挿入冶具104で翼根ばね18を保持して翼根ばね18を挿入することで、作業性を向上させることができ、回転機械の製造をより簡単にすることができる。
【0092】
ここで、上述した押込装置100を用いた動翼固定部材着脱方法は、回転機械の製造時だけではなく、回転機械の組立方法としても用いることができる。回転機械の組立方法は、回転機械をメンテナンス等で分解した後組み立てる場合や、回転機械の製造時に用いることができる。また、回転機械の組立方法の工程は、回転機械の製造方法と同様の工程で実現することができる。
【0093】
ここで、上述した押込装置100を用いた動翼固定部材着脱方法は、回転機械の分解方法としても用いることができる。回転機械の分解方法は、回転機械をメンテナンス等で分解する場合、廃棄する回転機械を分解する場合に用いることができる。
【0094】
図23を用いて、回転機械の解体方法の一例について説明する。
図23は、回転機械の解体方法の動作を説明するためのフローチャートである。まず、ロータ12と動翼14との間に配置されたシール機構19のシール板40を取り外す(ステップS62)。次に、動翼保持装置100を装着する(ステップS64)。具体的には、ロータ12と動翼14とに動翼保持装置100を取り付ける。次に、ロータ12と動翼14との隙間30に翼溝28の方向に冶具を挿入し、翼根ばね18を翼溝28の方向に押し出すことで、翼根ばね18を取り外す(ステップS66)。翼根ばね18を隙間30から取り外したら、ロータ12から動翼14を取り外す(ステップS68)。
【0095】
このように、回転機械の解体方法は、動翼保持装置102を用いて、翼溝28の方向への動翼14の移動を規制した状態で、翼根ばね18を隙間30から取り外すことで、動翼14の位置を調整しながら翼根ばね18をはずさなくてもよい。これにより、作業性を向上させることができ、回転機械の解体をより簡単にすることができる。
【0096】
また、上記実施例では、動翼固定部材として翼根ばね18を用いた場合で説明したが、動翼14をロータ12に対して固定する部材であり、軸方向に沿って動翼14とロータ12との間に挿入される部材であればよい。また動翼固定部材を挿入する隙間30も翼根部24と翼溝28との間に限定されず、動翼14とロータ12との間であればよい。
【0097】
ここで、動翼保持装置102は、上記実施例に限定されない。上記例の動翼保持装置102は、第1部材である板部110に第1面133と第2面134と第3面135とを設け、第2部材である支持部112に第4面を設けたがこれに限定されない。
【0098】
動翼保持装置102は、着脱時に翼根ばね(動翼固定部材)18または押し棒106が通過する領域が開放され、部材が重なっておらず、動翼14、ロータ12の少なくとも一方に支持され、第2面134を備える翼接触部131と、第1面133を備えるロータ接触部132とが設けられていればよい。つまり、動翼保持装置102は、連結して、連動して動く部分に、動翼14のロータ12の動翼固定部材の挿入側の端面と対面する面と接触する翼接触部131、具体的には第2面134と、ロータ12の動翼固定部材の挿入側の端面と接触するロータ接触部132、具体的には第1面133と、を備えることで、ロータ12で動翼14に作用する力を受け止め、動翼14の移動を抑制することができる。また、動翼保持装置102は、第3面135と第4面136を設けることで、径方向の位置を固定することができるが、いずれか一方の面のみを備えていていもよい。また、本実施形態では、径方向外側の面を第3面135とし、径方向内側の面を第4面136としたが、逆にしてもよい。
【0099】
図24は、他の例の動翼保持装置が回転機械に装着されている状態を示す正面図である。
図25は、他の例の動翼保持装置の概略構成を示す正面図である。
図26は、他の例の動翼保持装置の概略構成を示す側面図である。
図27は、他の例の動翼保持装置を用いた動翼固定部材着脱方法の動作を説明するための説明図である。
【0100】
図24から
図27に示す押込装置100aは、動翼保持装置102aと、押し棒106と、押圧装置108と、を有する。動翼保持装置102aは、第1板部202と、第2板部204と、締結装置206と、を有する。動翼保持装置102aは、第1板部202が第2部材となり、第2板部204が第1部材となる。動翼保持装置102aは、第1板部202と第2板部204と径方向に位置がずれた状態で重なって配置されており、締結装置206によって固定されている。第1板部202は、開口208が形成されている。開口208は、使用時に、工具等が接触されることで第1板部202に力を作用される。動翼保持装置102aは、開口208から第1板部202に力が付与されることで、ロータ12、動翼14に対して移動される。また、動翼保持装置102aは、開口208から第1板部202に力が付与されることで、第2板部204に対して第1板部202が移動される。第1板部202は、板部の径方向内側の面に径方向内側に伸びた足部210が設けられている。足部210は、ロータ12の径方向外側に向いた面に形成される溝に挿入される。締結装置206は、蝶ネジである。第1板部202は、締結装置206の蝶ネジが挿入される穴209が形成されている。穴209は、径方向が長手方向となる長穴である。第2板部204は、締結装置206の蝶ネジが挿入される穴が形成されている。第2板部204に形成されている穴は、蝶ネジの径と略同じ穴である。動翼保持装置102aは、締結装置206の蝶ネジを緩めて締結状態を解除することで、第1板部202と第2板部204とを径方向(
図25における矢印の方向)に相対移動させることができる。
【0101】
動翼保持装置102aは、第1板部202が第2板部204よりも回転軸の径方向の内側に配置されている。第1板部202は、使用時に径方向内側の端部がロータ12と接触する。第2板部204は、使用時に径方向外側の端部が動翼14の溝に挿入される。また、第1板部202、第2板部204は、使用時に、隙間30の延在方向から見た場合、隙間30と重ならない位置に配置されている。第1板部202、第2板部204は、隙間30の延在方向から見た場合、隙間30と重なる位置に部材が配置されていない。
【0102】
動翼保持装置102aは、第1板部202と第2板部204とを径方向に相対的に移動させ、第1板部202と第2板部204とのそれぞれをロータ12、動翼14に接触させることで、ロータ12、動翼14に対して固定する機構が支持部となる。動翼保持装置102aのように、支持部をスライド機構とした場合も、スライド機構により、第1板部202、第2板部204をロータ12、動翼14に対して固定することで、第2板部204における板部110と同様の位置が翼接触部131a、ロータ接触部132aとなる。このように、支持部の構造が異なる場合も、翼接触部131a、ロータ接触部132aを設けることで、ロータ12に対して動翼14を支持することができる。動翼保持装置102aは、第2板部204がロータ12と接する第1面133aと動翼と接する第2面134aと径方向の位置を固定する第3面135aを有する第1部材となる。第1板部202が径方向の位置を固定する第4面136aを有する第2部材となる。第2部材204の第1面133aがロータ12と接し、第2面134aが動翼14と接することで、ロータ12に対して動翼14を支持することができる。また、
図27に示すように、押圧装置108は、支持機構180で押圧装置108に対して押し棒106を支持するようにしてもよい。支持機構180は、押し棒106のねじ穴176に挿入されている。支持機構180は、押圧装置108の本体に対して、挿入方向に平行な方向に移動自在な状態で支持されている。
【0103】
図28は、他の例の動翼保持装置の概略構成を示す側面図である。
図29は、他の例の動翼保持装置の概略構成を示す斜視図である。
図28及び
図29に示す動翼保持装置102bは、板部110bと、支持部112bと、挿入部118と、を有する。板部110bは、板部110と同様の動翼14の翼根部24とロータ12の翼溝28と対面する板状の部材である。板部110bは、動翼14の翼根部24とロータ12の翼溝28と対面する面とは反対側の面に突起部126bが設けられている。板部110bは、使用時に、径方向上側の部分が動翼14の溝に挿入される。
【0104】
支持部112bは、連結部190と、締結部192とを有する。連結部190は、断面が径方向に延びる板190aの径方向の端部に軸方向に伸びる板190b、190cを連結した形状である。連結部190は、径方向内側の板190cの径方向外側の面が、板部110bの突起部126bの径方向内側の面と接する。また、連結部190は、径方向外側の板190bの径方向内側の面が、動翼14の溝が形成されている突起の径方向外側の面と対面している。締結部192は、連結部190の径方向外側の板190bに捻じ込まれたボルトであり、連結部190の径方向外側の板190bからの突出量を調整することで、連結部190の径方向外側の板190bと動翼14の突起部との距離を調整する。締結部192は、動翼14に対する連結部190の径方向外側の板190bの位置を調整することで、動翼14に対する板部110bの径方向の位置を調整することができる。支持部112bは、締結部192により、連結部190の径方向外側の板190bと動翼14の突起部との距離を広げることで、板部110bを径方向上側に移動させることができ、動翼14の溝に板部110bを挿入させることができる。これにより、動翼14に対して板部110bを固定することができる。
【0105】
挿入部118は、板部110bの径方向内側の端部に連結されている。挿入部118は、隙間30に対応する位置に開口が形成された筒状の部材であり、開口に翼根ばね18が挿入される。つまり挿入部118は、挿入冶具104と同様の機能を備えている。
【0106】
動翼保持装置102bは、板部110bが支持部112bによって動翼14に支持される。また、板部110bの動翼14の溝に挿入されている部分のロータ12の端面と対面している面と反対側の面が翼接触部131bとなり、板部110bのロータ12の端面と対面している面がロータ接触部132bとなる。動翼保持装置102bは、板部110bがロータ12と接する第1面133bと動翼と接する第2面134bと径方向の位置を固定する第3面135bを有する第1部材となる。支持部112bが径方向の位置を固定する第4面136bを有する第2部材となる。板部110bの第1面133bがロータ12と接し、第2面134bが動翼14と接することで、ロータ12に対して動翼14を支持することができる。このように、支持部112bを動翼14に対して板部110bを固定する構造とした場合も動翼保持装置102と同様に、動翼14の軸方向に沿った移動を抑制することができる。また、動翼保持装置102bは、挿入部118を設けることで、挿入冶具を一体化することができる。動翼保持装置102bは、ロータ12に溝が形成されていない機構にも適用することができる。
【0107】
図30は、他の例の動翼保持装置の概略構成を示す側面図である。
図30に示す動翼14cは、軸方向の端面に軸方向に突出した突起302が形成されている軸方向の先端に、径方向外側に突出した先端部303が設けられている。
【0108】
図30に示す動翼保持装置102cは、板部312と、支持部314と、を有する。板部312は、板部110と同様の動翼14cの翼根部24とロータ12の翼溝28と対面する板状の部材である。板部312は、隙間30に対応する位置に開口316が形成されている。
【0109】
支持部314は、板部312の径方向外側の端部に連結した部材である。支持部314は、断面が径方向に延びる板320の径方向の端部に軸方向に伸びる板322、324を連結した形状である。軸方向に伸びる板322、324は、径方向に延びる板320よりも動翼14c、ロータ12側に突出している。つまり、支持部314は、径方向内側の板322、径方向外側の板324の、ロータ12の端面から離れている側の端部が径方向に延びる板と連結している。径方向内側の板322は、ロータ12の端面側の端部が板部312の径方向外側の端部と連結している。径方向外側の板324は、ロータ12の端面側の端部に径方向内側の突出した突起326を有する。径方向外側の板324の突起326のロータ12の端面から離れている側の面は、先端部303の、ロータ12の端面側の面と対面している。支持部314は、突起302の先端部303を囲う形状とし、径方向外側の板324の径方向内側の面が先端部303の径方向外側の面と接する。これにより、支持部314は、先端部303で吊り下げられ、動翼14cに支持される。板部312は、支持部314に連結しているため、動翼14cに支持される。
【0110】
動翼保持装置102cは、板部312が支持部314によって動翼14cに支持される。また、先端部303の径方向外側の板324の突起326のロータ12の端面から離れている側の面は、先端部303の、ロータ12の端面側の面と対面しているため、翼接触部131cとなる。また、板部312のロータ12の端面と対面している面がロータ接触部132cとなる。動翼保持装置102cは、板部312と支持部314を一体化させた部材がロータ12と接する第1面133cと動翼と接する第2面134cと径方向の位置を固定する第3面135bを有する第1部材となる。板部312の第1面133cがロータ12と接し、支持部314の第2面134bが動翼14と接することで、ロータ12に対して動翼14を支持することができる。
【0111】
このように、翼接触部131cを板部312以外に設けても、翼接触部131cとロータ接触部132cとが連動して移動する位置に設けられることで、動翼保持装置102と同様に、動翼14cの軸方向に沿った移動を抑制することができる。また、動翼保持装置102cは、シール板を設置する溝が形成されていない回転機械にも好適に用いることができる。
【0112】
ここで、翼接触部とロータ接触部とは、一体で設けられた部材に設けることが好ましい。つまり、動翼保持装置は、第1面と第2面とを同じ部材に設けることが好ましい。これにより、動翼14がロータ12に対して移動することをより確実に防止することができる。このように、動翼保持装置は、第1面と第2面とを同じ部材に設けることが好ましいが、第1面がある部材と第2面がある部材とを別の部材としてもよい。
【0113】
図31は、他の例の動翼保持装置の概略構成を示す側面図である。
図31に示す動翼保持装置102dは、第1板部402と、第2板部404と、締結装置406と、を有する。
【0114】
動翼保持装置102dは、第1板部402と第2板部404と径方向に位置がずれた状態で重なって配置されており、締結装置406によって固定されている。また、動翼保持装置102dは、第1板部402と第2板部404と径方向に相対移動可能となる。第1板部402は、板状の部材であり、隙間30と重なる位置に開口416が形成されている。第1板部402は、ロータ12の径方向外側に向いた面に形成されるロータ側溝34に挿入される。第2板部404は、第1部材402よりも径方向外側に配置されており、径方向内側の一部の径方向において第1部材402と重なる。第2部材404は、ロータ12側の面が第1板部402と接触する。第2部材404は、径方向において第1部材402と重なる部分よりも径方向外側で、軸方向においてロータ12側にずれる段差部が形成されている。第2板部404は、例えば、2枚の板が溶接された一体化した部材であり、第1部材402と重なる部材の径方向外側かつロータ12側の面にもう1つの部材を配置して固定した構造となる。第2部材404は、径方向外側の端部が、動翼14に形成された翼側溝32に挿入されている。
【0115】
締結装置406は、蝶ネジである。第1板部402は、締結装置406の蝶ネジが挿入される穴が形成されている。第1板部402に形成されている穴は、蝶ネジの径と略同じ穴である。第2板部404は、締結装置406の蝶ネジが挿入される穴409が形成されている。穴409は、径方向が長手方向となる長穴である。動翼保持装置102dは、締結装置406の蝶ネジを緩めて締結状態を解除することで、第1板部402と第2板部404とを径方向に相対移動させることができる。
【0116】
動翼保持装置102dは、第1板部402が第2板部404よりも回転軸の径方向の内側に配置されている。第1板部402は、使用時に径方向内側の端部がロータ12と接触する。第2板部404は、使用時に径方向外側の端部が動翼14の溝に挿入される。また、第1板部402、第2板部404は、第1部材402に開口416が形成されており、使用時に、隙間30の延在方向から見た場合、隙間30と重ならない位置に配置されている。第1板部402、第2板部404は、隙間30の延在方向から見た場合、隙間30と重なる位置に部材が配置されていない。
【0117】
動翼保持装置102dは、第1板部402と第2板部404とを径方向に相対的に移動させ、第1板部402と第2板部404とのそれぞれをロータ12、動翼14に接触させることで、ロータ12、動翼14に対して固定する機構が支持部となる。動翼保持装置102dは、第1部材402が第2部材404よりもロータ12側に配置され、第2部材404が第1部材402よりも径方向外側に配置され、動翼の溝に挿入されている。このため、動翼保持装置102dは、第2板部404が翼接触部131dを有し、第1板部402がロータ接触部132dを有する。動翼保持装置102dは、第2板部404がロータと接する第1面133dと径方向の位置を固定する第4面136dを有する第1部材となり、第1板部402が動翼と接する第2面134dと径方向の位置を固定する第3面135dを有する第2部材となる。
【0118】
動翼保持装置102dは、第1面133dと第2面134dとを別の部材に設ける構造としても、動翼14がロータ12に対して翼溝28の方向に移動することを抑制することができる。
【0119】
本実施形態では、1つの動翼保持装置102に2つの挿入冶具104を設置可能な構造としたが、1つの動翼保持装置102に3つ以上の挿入冶具を設置可能とし、動翼保持装置102を一度、動翼14及びロータ12に固定することで、3つ以上の隙間30に翼根ばね18を挿入可能とすることもできる。また、上記実施形態では、動翼保持装置102を、径方向においてロータ及び動翼の少なくとも一方と対面している面を、ロータ及び動翼の少なくとも一方の回転軸の径方向外側を向いた面と接触させたがこれに限定されない。動翼保持装置102は、径方向においてロータ及び動翼の少なくとも一方と対面している面を、ロータ及び動翼の少なくとも一方の回転軸の径方向内側を向いた面と接触させ、ロータ及び動翼の少なくとも一方の回転軸の径方向外側を向いた面と接触していない構造としてもよい。