(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246925
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】導電トレースを形成する方法
(51)【国際特許分類】
H01B 5/14 20060101AFI20171204BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20171204BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20171204BHJP
C03C 17/36 20060101ALI20171204BHJP
C03C 17/42 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
H01B5/14 B
C23C26/00 A
H05K3/12 610B
C03C17/36
C03C17/42
【請求項の数】21
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-531748(P2016-531748)
(86)(22)【出願日】2014年7月22日
(65)【公表番号】特表2016-535924(P2016-535924A)
(43)【公表日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】US2014047512
(87)【国際公開番号】WO2015017171
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2016年1月28日
(31)【優先権主張番号】61/859,323
(32)【優先日】2013年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503468695
【氏名又は名称】フエロ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】サコスケ,ジョージ,イー.
(72)【発明者】
【氏名】メイトランド,フィル
(72)【発明者】
【氏名】シュペーア,ディートリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ブロンスキ,ロバート ピー.
(72)【発明者】
【氏名】スリダーラン,スリニバサン
【審査官】
神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−350938(JP,A)
【文献】
特開平04−350937(JP,A)
【文献】
特開平05−206635(JP,A)
【文献】
特開平06−237026(JP,A)
【文献】
特開昭61−001088(JP,A)
【文献】
特表2013−507772(JP,A)
【文献】
特開2012−104613(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1722616(EP,A2)
【文献】
米国特許第4409261(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
C03C 17/36、17/42
C23C 26/00
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に接合された界面層と、
前記界面層上の導電層と、
前記界面層を覆うレドックス制御層と、
前記レドックス制御層の1つまたは複数の空隙を通して前記導電層と電気通信する金属層と、
を備える、焼成導電トレースであって、
前記界面層と前記レドックス制御層は、前記導電層が大気に暴露されるのを防ぐ、焼成導電トレース。
【請求項2】
前記導電層は、銅、アルミニウム、ニッケル、錫、タングステン、亜鉛、鉄、銀、スチール、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択された金属を含む、請求項1に記載の導電トレース。
【請求項3】
前記基板がガラスまたはセラミックを含む場合、前記界面層は、ガラスフリットを含み、
前記基板が金属を含む場合、前記界面層は誘電材料を含み、
前記基板がポリマーを含む場合、前記界面層は、シランベースの接着促進剤を含む、
請求項1に記載の導電トレース。
【請求項4】
前記基板は、ガラスまたはセラミックを含み、前記界面層は、ホウケイ酸ガラスフリットを含む、請求項3に記載の導電トレース。
【請求項5】
前記界面層は、前記導電層の熱膨張係数と前記基板の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する1つまたは複数の膨張調整剤を含み、
前記膨張調整剤は、コージライト、ベータユークリプタイト、石英、ジルコニア、アルミナ、尖晶石、金属、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、バリウムアルミニウムケイ酸塩、ストロンチウムアルミニウムケイ酸塩、リチウムアルミニウムケイ酸塩、ケイ酸ジルコニウム、バリウムマグネシウムケイ酸塩、バリウムチタニウムケイ酸塩、シリカ、チタニア、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択される、
請求項1に記載の導電トレース。
【請求項6】
前記界面層は、シリコン、鉄、亜鉛、硫黄を含むガラスフリット、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択される銀移動制御添加剤を含む、請求項1に記載の導電トレース。
【請求項7】
前記界面層は、ホウケイ酸ガラスフリット、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニアベースの化合物、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択された誘電材料を含む、請求項1に記載の導電トレース。
【請求項8】
前記金属層は貴金属層であって、該貴金属層は、銀、金、白金、チタニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、ベリリウム、ガリウム、インジウム、テルル、水銀、ビスマス、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択されたものを含む、請求項1に記載の導電トレース。
【請求項9】
前記貴金属層上に誘電体層をさらに備え、前記誘電体層は、磁器、ガラス、ポリマー、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択されたものを含む、請求項8に記載の導電トレース。
【請求項10】
前記基板を含まない導電トレースの体積が、
前記界面層は、10体積%以下存在し、
前記導電層は、40〜90体積%存在し、
前記レドックス制御層は、20体積%以下存在し、
前記貴金属層は、15体積%以下存在し、
前記誘電体層は、15体積%以下存在する、
請求項9に記載の導電トレース。
【請求項11】
前記導電トレースの1つまたは複数の層は、CuCr、CuCrMn、FeCrCo、TiO2、NiCrFe、FeCo、FeMn、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択された無機顔料を含む、請求項8に記載の導電トレース。
【請求項12】
基板上に導電トレースを形成する方法であって、
界面材料から形成された界面層を基板表面に接合することと、
前記界面層上に、導電性材料からなる導電層であって、露出部分を有する導電層を形成することと、
前記導電層上にレドックス制御材料を層状に重ねて、前記導電層の前記露出部分を覆うレドックス制御層を形成することと、
前記レドックス制御層の1つまたは複数の空隙を通して前記導電層と電気通信する金属層を金属材料から形成することと、
を含み、
前記界面層と前記レドックス制御層は、前記導電層が環境に存在する酸素に暴露されるのを防ぐ、方法。
【請求項13】
前記基板は、(i)ガラスもしくはセラミック、(ii)金属、または、(iii)ポリマーのうちの1つを含み、
前記基板が(i)ガラスもしくはセラミックを含む場合、前記界面材料は、ホウケイ酸ガラスフリットを含み、前記基板が(ii)金属を含む場合、前記界面材料は、誘電剤を含み、前記基板が(iii)ポリマーを含む場合、前記界面材料は、シランベースの接着促進剤を含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記界面材料は、シリコン、鉄、亜鉛、硫黄を含むガラスフリット、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択される銀移動制御添加剤を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記界面材料は、ホウケイ酸ガラスフリット、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニアベース化合物、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択された誘電材料を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記導電性材料は、銅、アルミニウム、ニッケル、錫、タングステン、亜鉛、鉄、銀、スチール、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択された導電性金属粉末を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記レドックス制御材料は、炭素粒子、酸素ゲッター材料、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択されたレドックス制御剤を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記金属層は貴金属層であり、該貴金属層は、銀、金、白金、チタニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、ベリリウム、ガリウム、インジウム、テルル、水銀、ビスマス、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択されたものを含む貴金属材料から形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
誘電体層を前記金属層上に生成することをさらに含み、前記誘電体層は、ホウケイ酸ガラスフリット、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニアベースの化合物、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択された誘電剤を含む誘電材料から形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記誘電材料は、アルミン酸塩、ジルコン酸塩、ケイ酸塩、粘土、タルク、耐火性酸化物材料、耐火性窒化物材料、耐火性ホウ化物材料、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択された粒子をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記界面材料、前記導電性材料、前記レドックス制御材料、前記金属材料、及び、前記誘電材料は、それぞれ、溶剤及び結合剤をさらに含み、20℃で1〜2000センチポアズの粘度を有し、かつ、デジタルプリントと焼成によって各層に形成される、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の内容は、導電トレースと、導電トレース形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電トレースは、当技術分野では周知であり、典型的には、導電性材料として、ごく小さく薄い銅経路を用いて作成される。銅トレースに関連する1つの問題は、様々な原因により腐食することである。銅は、酸化状態+1(第一銅)及び+2(第二銅)の化合物を形成する。銅は水と反応しないが、大気中の酸素と反応して黒褐色の酸化銅の層を形成する。銅表面の酸化により、緑色の層である緑青(炭化銅)を形成し、銅のバルクをさらなる腐食から守る。しかしながら、ごく薄い幅及び厚みを有する層から銅が形成される導電トレースにおいては、「表面」の腐食は、導電経路を遮断、または、導電トレースの性能を劣化させる可能性がある。銅は、硫化水素等の硫化物とも反応して、銅の表面に様々な硫化銅を形成する。硫化物と反応する時、銅は、硫黄化合物を含む空気にさらされた時に見られるように、腐食する。酸素と塩酸と反応して、塩化銅と酸性の過酸化水素を形成し、銅(II)塩を形成するように、酸素を含むアンモニア溶液も銅と反応して、水溶性複合体を生成する。塩化(第二)銅と銅は反応して塩化(第一)銅を形成する。従って、銅トレースを腐食から守る必要がある。
【0003】
導電トレースは、典型的には、サブトラクティブ法またはアディティブ法によって形成される。一般的に、サブトラクティブ法においては、銅が基板に塗布され、不必要な部分が取り除かれて、薄い銅トレースを残す。従来のサブトラクティブ法の1つの問題は、不必要な廃棄物を生成することである。サブトラクティブ生成技術は、基板の片側または両側に銅を塗布することで始まることが多い。基板から不必要な銅をエッチングで取り除いて、基板上に薄い導電銅トレースを残すことによってトレースを形成する。エッチングプロセスは、典型的には、過硫酸アンモニウムまたは塩化第二鉄を用いる。化学薬品と取り除かれた不必要な銅は、腐食性、有毒で、環境への懸念と過度の廃棄物を生む。さらに、エッチングは比較的、長い時間がかかる。さらに、エッチング液を繰り返し使用するので、銅が化学薬品であるエッチング液を飽和させ、銅を続けて取り除くとき、徐々にエッチング液の効果が失われていく。
【0004】
一般的に、アディティブ法でトレースを形成する時、基板上のトレースを形成するエリアにのみ銅を形成する。従来のアディティブ法による導電トレース形成に関する1つの問題は、様々な器具や機械を必要とする複数のステップを要することである。典型的なアディティブ法においては、感光膜を用いて基板を撮像し、露光パターンを生成する。露光パターンを薬浴させて、金属イオンと結合可能なパターンを生成する。そして、感光性を得たエリアが銅メッキされて、トレースを形成する。次に基板からマスクをはずして銅トレースのみを残す。
【0005】
従来のアディティブ及びサブトラクティブ生成技術に関連する問題は、銅トレースは、一度形成されると、凝縮によるトレースの腐食や短絡に対して銅トレースの保護を必要とすることである。トレースは、形成された後、腐食に対する保護のために、保護被覆処理される。この手順は、追加のステップを必要とし、追加の時間、費用、及び、器具を含む。従来の生産技術の別の問題は、基板上に形成された銅トレースはただ一色をしめすということである。すなわち、ガラスや透明なプラスチックにトレースを行う場合、トレースの銅の色が基板の片側または両側から見えるということである。従来の技術に関連する別の問題は、銅が適切に表面に接合するように、基板を処理しなければならないことである。これもまた、時間及び費用を必要とする追加のステップを要する。
【0006】
従来のメッキ技術のさらなる弱点は、薄い銅トレースは、摩耗及び摩滅し、導電経路が容易に遮断されることである。導電性が遮断されるまで摩滅すると、導電トレースは、意図した用途に使用できなくなる。
【発明の概要】
【0007】
既知の導電トレース及び製造戦略に関連する困難や欠点は、本導電トレース及び導電トレース形成方法で克服される。
【0008】
本発明の内容は、様々な基板上に形成される層状の導電トレースに関する。
【0009】
一態様において、本発明の内容は、基板に接合された界面層と、界面層上の導電層とを備える導電トレースを提供する。
【0010】
別の態様において、本発明の内容は、基板に接合された界面層と、界面層上の導電層と、導電層の露出された部分を覆うレドックス制御層と、レドックス制御層上の貴金属層と、レドックス制御層上の誘電体層と、を備える導電トレースを提供する。
【0011】
さらに別の態様において、本発明の内容は、基板上に導電トレースを形成する方法を提供する。方法は、基板の表面に界面層を接合することと、界面層上に導電層を形成することと、導電層上にレドックス制御材料を層状に重ねることと、を含み、レドックス制御層は、導電層の露出した部分を覆う。
【0012】
本発明の内容によって、トレースの性能に悪影響を与えることなく、特定の使用、製造プロセス、状況のための特定の需要に対処するために、トレースの属性及び特性を変更するように多層導電トレースの特定の層の調整が可能になる。
【0013】
本明細書に記載の発明の内容は、他の異なる実施形態を行うことができ、その幾つかの詳細は特許を請求する発明の内容から逸脱することなく、様々な点で修正できることは、理解されよう。例えば、各層は、その層の様々な部分で、組成や有効な固体の量充填物(loading)が徐々に変化してよい。これは傾斜層と呼ばれ、本明細書でより詳細に記載する。従って、図面及び記載は、例示的なもので、制限を目的としていない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の内容のこれら及び他の特徴、態様、利点は、本発明の内容の例示の実施形態の以下のより詳細な記載を、添付の図面と共に参照することによって、より完全に理解、認識されよう。
【0015】
【
図1】基板に焼成を行う前の、本発明の内容に係る、導電トレースの略断面図である。
【
図2】基板に焼成を行う前の、本発明の内容に係る、別の導電トレースの略断面図である。
【
図3】基板に焼成を行う前の、本発明の内容に係る、別の導電トレースの略断面図である。
【
図4】基板に焼成を行う前の、本発明の内容に係る、別の導電トレースの略断面図である。
【
図5】基板に焼成を行う前の、本発明の内容に係る、別の導電トレースの略断面図である。
【
図6】基板に形成された、本発明の内容に係る、導電トレースの略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載の発明の内容は、導電トレースと、基板に導電トレースを形成する方法と、を提供する。関連する基板の目的に応じて、導電トレースは、電気回路において、信号、電力、または、接地として機能してよい。同様に、導電トレースは、ファンイン、ファンアウト、または、その両方を行うことができる。導電トレースは、多くの電子製品で利用されて、電気インパルスを送信することができ、同時に、既存の技術を用いるより、より耐久性があり、より容易に生産できる。本発明の内容の導電トレースは、生産に比較的費用がかからず生産が簡単な多層構成を備え、耐久性があり、良好な導電性を発揮する。
【0017】
このトレースは、様々な基板に適用できるので、様々な電気回路に組み込むことができる。このトレースは、多層で、各層は、特定の利点のために設けられており、一層のトレースでは得られない特別な特性をトレースに与える。典型的な導電トレースは一層なので、特定の性能特性に影響を与える組成への調整は、トレース全体やその属性に必ず影響を与える。一部の状況においては、1つの性能特性に影響する調整は、また、既知の一層導電トレースの他の性能特性に有害な影響を与え得る。それに反して、本発明の内容は、多層導電トレースを形成するように構築された複数の独立した層を提供する。独立した層は、他の層の性能を必ずしも変更することなく、特定の性能特性に影響を与えるように個々に変更することができる。導電トレースは、様々な意図した用途及び需要に適合させることができ、従来の生産技術に替わる経済的な技術を提供する。
【0018】
基板
本発明の内容の導電トレースは、特に、ガラス、セラミック、金属、ポリマーの基板、及び、それらの組み合わせに適用することができる。選択する基板の種類によって、本明細書で記載する導電トレースの層の組成及びアセンブリがある程度決まる。
【0019】
ガラス基板に適用される導電トレースの典型的な用途には、自動車、建築、電気器具、容器、発光ダイオード(LED)、及び、表示/装飾への適用が含まれる。セラミック基板に適用される導電トレースの典型的な用途は、電気通信、ソーラー、自動車、医療、消費者、及び、軍事の用途に用いられるハイブリッド集積回路(HIC)厚膜材料等の電子部品実装材料、電子医療機器、消費者A/V、コンピュータ、無線ハンドセット、自動車サブアセンブリ、データ/電気通信インフラストラクチャ機器、及び、防衛/航空宇宙用途のモジュール用の低温同時焼成セラミック(LTCC)システム、高周波セラミックインダクタ、フロントエンドモジュール、ブルートゥースモジュール、アンテナ切り替えモジュール、コモンモードフィルタ、MEMS、センサ、LED、並びに、他の電子装置を含む。金属基板に適用される導電トレースの典型的な用途には、電気器具及びLEDへの適用が含まれる。ポリマー基板に適用される導電トレースの典型的な用途には、コンピュータ回路基板への適用が含まれる。
【0020】
導電トレース
本発明の内容の導電トレースは、様々な用途のために電気インパルスを送信するように適合された多層トレースである。幾つかの実施形態を関連する図面に記載する。図面中、類似の番号の物は、各実施形態の類似の特徴を示す。
図1〜
図5を参照すると、焼成作業前の導電トレース1が示されている。トレース1は、基板2の表面10上に堆積される。焼成前、トレース1は、界面層3、導電層4、レドックス制御層5、及び、貴金属層6を備える。レドックス制御層5は、
図1〜
図5に示されているが、犠牲層として働くことを理解されよう。すなわち、レドックス制御層は、焼成中、導電層4を酸化から保護するために用いられてよく、従って焼成手順中に、完全に、または、大部分、取り除かれてよい。
図2に示す別の実施形態においては、導電トレース1は、貴金属層6上に誘電体/傷防止層7も含むことができる。
図3に示すさらに別の実施形態においては、貴金属層6は、レドックス制御層5の1つまたは複数の開口または空隙20を通して導電層4と接触することができる。これらの開口または空隙20は、レドックス制御層の最初のプリントで形成することができる、または、焼成プロセスの結果として形成することができる。ここで、レドックス制御層は、焼成中に、犠牲層として、大部分または完全に焼失する。この態様は、
図6に示されており、焼成プロセス後、基板2の表面10に接合された導電トレース1を示している。
図6において、レドックス制御層は焼成中に大部分または完全に焼失しているので、図に示されていない。代わりに、界面層3が基板2の表面10に接合される。導電層4は界面層の上にある。レドックス制御層は焼成中に大部分取り除かれているので、導電層は、貴金属層6に接触しており、貴金属層6は、その上に誘電体/傷防止層7を有する。
【0021】
導電トレースの特定の層は、
図1〜
図4において、その下の層を完全に覆うように示されているが、これは本発明の内容によって要求されているわけではなく、実施形態はこれに制限されない。この態様は、
図5に示されている。
図5においては、貴金属層6は、下にあるレドックス制御層5を部分的に覆っているだけである。また、本発明の内容の導電トレースは、本明細書に示し記載された層の組成または配置に限定されず、必要に応じて、より多くまたはより少ない層を組み込むこともでき、異なる配置であってもよい。
【0022】
一般的に、本発明の内容の焼成前の導電トレースは、体積0%〜約10%の界面層、体積約40%〜約90%の導電層、体積0%〜約20%のレドックス制御層、体積0%〜約15%の貴金属層、及び、体積0%〜約15%の誘電体層を備える。本明細書に記載の層に限定されない他のオプション層を、必要に応じて導電トレースに組み込むこともできる。
【0023】
界面層
界面層は、多層導電トレースの最下部の層である。界面層は、基板表面上に形成され、基板と導電トレースの他の層の間にある。より詳細には、界面層は、導電層と基板の間にある。導電トレースに組み込まれた他の層、すなわち、レドックス制御層、貴金属層、誘電体層等は、界面層によって必ずしも基板から分離されるわけではない。これは
図4に示されており、導電層4のみが界面層3によって基板2から分離されている。レドックス制御層5及び貴金属層6は、位置20で基板2と接触している。
【0024】
界面層は、特定の基板材料に強力に接合するように調整することができるので、基板への接着を向上させる、同時に、トレース全体の性能に影響を与えない。これは、界面層は電気インパルスの伝導を行わないので、その組成を調整させることによって、その導電性に影響を与えないからである。
【0025】
界面層の組成は、接着性に影響し、導電トレースが接合される基板の組成に大きく左右される。一般的に、セラミック基板及びガラス基板においては、界面層は、適切な接合を促進するためにセラミック基板またはガラス基板に似た材料を含み、また、基板と、全体としての導電トレースとの間、特に、導電層との間の潜在的な熱膨張の差の低減を助ける金属粉末または他の膨張調整剤等の添加物を含むことができる。膨張調整剤は、導電層の熱膨張係数と基板の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する材料である。界面層が、導電層と基板の熱膨張係数の相違を埋めることができると、周りの環境の温度変化に対して強い良好で強い接合を導電トレースに与える。典型的には、膨張調整剤は、金属であるが金属に限定されない。適切な膨張調整剤の例には、石英、ジルコニア、尖晶石、及び、それらの混合物が含まれる。他の例には、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、バリウムアルミニウムケイ酸塩、ストロンチウムアルミニウムケイ酸塩、リチウムアルミニウムケイ酸塩、ケイ酸ジルコニウム、バリウムマグネシウムケイ酸塩、バリウムチタニウムケイ酸塩、コージライト、ジルコニア、アルミナ、シリカ、チタニア、及び、それらの混合物が含まれる。典型的な膨張調整剤は、SiO
2、Al
2O
3、CaZrO
3、CaSiO
3、Mg
2 SiO
4、CaTiO
3、BaZrO
3と、SrZrO
3、SiO
2、Mg
2 SiO
4と、CaSiO
3も含むことができる。一実施形態において、膨張調整剤は、コージライト、ベータユークリプタイト、ジルコニア、及び、それらの組み合わせを含む。
【0026】
詳細には、セラミック基板とガラス基板の場合、界面層は、ホウケイ酸ガラスフリット、ジルコニア、アルミナ、コージライト、混合金属酸化物顔料、銅、アルミニウム、銀、及び、錫等の金属粉末を含む。シリコン太陽電池の場合、界面層は、シリコン、鉛、ビスマス、アルミニウム、亜鉛、チタニウム、タンタル、リン、アルカリ金属類、及び、アルカリ土類金属類からなるグループから選択された少なくとも1つの金属の酸化物を含むガラスフリットを含む。金属基板の場合、界面層は、ホウケイ酸ガラスフリット、ジルコニア、アルミナ、及び、他の誘電材料を含んで、電気的に絶縁の界面層を提供する。ポリマー基板の場合、界面層は、シランベースの接着促進剤を含む。
【0027】
追加の態様において、界面層は、基板と導電トレース間の不必要な相互作用を制御することができる材料をさらに含む。例えば、導電トレースをガラス基板に適用する時、界面層は、ガラスと導電トレース間のイオン交換を低減する材料を含む。ガラス中のNa+等のアルカリが、導電トレース中の大きいK+イオンまたは小さいLi+イオンと交換されるイオン交換が起こり、ガラス基板に張力または圧縮の表面応力を生んで、基板のその部分が構造的に弱くなるのを示す。イオン交換を制御する界面層を用いると、そのような応力が、基板とトレースの界面で形成されない。結果として、より強い基板と、導電トレースとのより耐久性のある接合が生まれる。この態様において、ナトリウムやカリウム等のアルカリイオンが、イオン交換を制御するために界面層に含まれてよい。
【0028】
一実施形態において、界面層は、銀、銅、または、他の金属のイオンの導電層から基板のバルク内への移動、または、基板表面を通る移動の防止を支援する材料も含む。特に、ガラス基板に関しては、シリコン、鉄、または、亜鉛などの金属等の移動制御添加物、及び、硫黄を含むガラスフリットが、この目的に用いられる。ガラス基板または他の基板のための他の添加物は、パラジウム、銅、金、錫、炭素、ポリマー、及び、低誘電材料を含み得る。一態様において、自動車の(ガラスの)黒い不透明な帯状部分の場合、黒いセラミックエナメルを通しての銀または銅イオンの移動は、極めて望ましくなく、止めるのが難しい。従って、導電トレースの界面層を焼成されていないガラスセラミックエナメル上に堆積し、ガラスセラミックエナメルをガラスにプリントする。
【0029】
別の実施形態において、界面層は顔料を含む。トレースが透明な基板を通して見える場合、CuCr、CuCrMn、FeCrCo、TiO
2等の無機顔料を界面層に添加する。これらの顔料は、透明または半透明な基板を通して見えるように色調を導電トレースに与える。基板を通して従来の着色していない銅トレースを見るよりも、顔料を添加することによって、トレースのシースルー色に影響を及ぼして、トレースを審美的により魅力あるものにする。他の適切な顔料は、調整剤を用いた、または、用いていない、NiCrFe、FeCo、FeMn、または、それらの組み合わせである。有機顔料及び染料を含む他の着色剤を用いてよい。このような無機顔料の色を強くするのに用いられる適切な調整剤は、例えば、以下の元素の任意の1つまたはその組み合わせを含む。その元素とは、クロム、リチウム、マグネシウム、シリコン、ストロンチウム、錫、チタニウム、及び、亜鉛である。分散性、熱安定性、耐光性、耐候性、不透明性に影響を与えるため、及び、層からの顔料の移動を防ぐために、他の調整剤を含むことができる。
【0030】
金属または他の導電性基板の一実施形態において、誘電材料は、界面層として、または、界面層を形成する他の材料と共に、含まれる。誘電材料は、電界を印加することによって分極可能な電気的絶縁体である。電荷は、材料を通って流れるのではなく、ほんの少し分子を移動させて誘電分極を起す。固体誘電材料は、当分野では周知であり、磁器、ガラス、及び、ほとんどのポリマーを含む。液体及び気体の誘電材料も知られている。誘電材料は、導電層と導電基板の間で起こり得る、トレースの電気接触または短絡を防ぐ。一態様において、誘電材料は、界面層として適用される。別の態様において、誘電体層は、他の材料と共に適用されて界面層を形成する。この態様においては、誘電材料は、界面層全体に用いてもよく、または、トレースと導電基板の間の選択された位置で電気接触を可能にするという特別な目的のために、界面層の所望の選択したエリアでのみ用いてもよい。典型的な誘電材料は、ホウケイ酸ガラスフリット、シリカ、ジルコニア、アルミナ、及び、チタン酸バリウム等のチタニアベースの化合物で形成される。
【0031】
界面層は、導電トレースの全体としての電気伝導性を低下させずに特定の目的に合わせて、その組成を変更できるという点で、基板との相互作用を調整することができ、有利である。
【0032】
導電層
本発明の内容の導電層は、電気インパルスを伝導することができる多層導電トレースの低コストのベースメタルコアを提供する。導電層は、界面層の上に位置し、界面層は、基板と導電層の間にある。
【0033】
一実施形態において、導電層は、導電性の金属及び/または金属粉末を含む。適切な金属及び金属粉末は、銅、アルミニウム、ニッケル、錫、タングステン、亜鉛、鉄、銀、様々なスチール等の、単一の粉末またはその組み合わせである。これらの金属は、良導体で比較的費用がかからないが、環境暴露によって腐食の可能性がある。本発明の内容の多層導電トレースは、これらの低コスト金属の腐食への保護を提供する。酸化、または、環境暴露による他の劣化から導電層を保護するために、導電トレースの様々な他の層が提供される。この保護によって、銀等の腐食しない高コストの貴金属を使用せず、低コストの導電性金属を導電層に使用することが可能になる。
【0034】
一態様において、導電層は、ガラスフリットを含む焼結助剤も含む。焼結助剤は、様々な金属粉末を電気抵抗の低い連続した導電経路に形成する助けをする。焼結助剤は、焼結プロセス中に金属粉末が結合するのを可能にし、導電トレースの導電性に悪影響を与える金属の導電経路の空隙、ギャップ、または、他の不整合箇所ができる可能性を低減する。
【0035】
導電層は、前述の低コストの金属粉末を含むが、一態様においては、1つまたは複数の貴金属を、それだけで、または、低コストの金属粉末と組み合わせて導電層に組み込むことも考えている。導電層は、基板と導電層の最も(基板に)近い部分との熱膨張の差を最小限にするように、デジタルで組成勾配をつけて適用することもできる。この実施形態において、導電層内の金属粉末の勾配(すなわち、濃度の増加)は、層を通して垂直方向に金属粉末の濃度を変えることによって、調整される。すなわち、界面層に最も近い導電層の部分は、界面層から最も遠い導電層の部分とは異なる金属粉末の比率を有し、比率はその2つの部分の間で連続的に増加または減少している。導電層における金属粉末の割合が、基板近くの部分で高い場合、勾配は基板の方に向いている。導電層における金属粉末の割合が基板から最も遠い部分で高い場合、勾配は、基板から離れる方に向いている。同様に、金属粉末濃度は、導電層の水平方向に変化してもよい。金属粉末の量を水平方向及び垂直方向に変化させることを組み合わせることも考えている。
【0036】
酸化還元制御層
一実施形態において、酸化還元(以下「レドックス」)制御層が、本発明の内容の多層導電トレースに組み込まれている。この層を導電トレースに含むか否かは、残りのトップコート層で用いる材料に左右される。レドックス制御層は、導電層を酸化から保護する。従って、レドックス制御層は、導電層の上に層状に重ねられる。界面層及びレドックス制御層は、焼成前に導電層を包み込む。すなわち、導電層を界面層上に堆積した後、レドックス制御層が導電層の露出した部分を覆う。別の実施形態においては、レドックス制御層、または、別個の第2のレドックス制御層は、導電層の上にある貴金属層(次に記載)の上に堆積させてよく、その結果、レドックス制御層、または、場合によっては第2のレドックス制御層は、貴金属層の外側に向かう層として存在し、焼成及び焼結プロセス中、導電トレースへの酸素拡散を阻止するように働くことができる。
【0037】
一態様において、レドックス制御層は、炭素粒子、酸素ゲッター材料、または、その組み合わせを含む。炭素粒子は、平均粒径10〜50ナノメートルの範囲の炭素ナノ粒子を含み得る。「酸素ゲッター」とは、酸素と反応して酸素を消費する、または、酸素を吸収する組成または材料を意味する。そうすることによって、導電層と反応して導電層を腐食させるための導電トレース内の遊離酸素を実質的に得られなくする。レドックス制御層は、導電トレースの酸素ゲッターとして、シリコン、チタニウム、窒化物、炭化物、高分子ポリマー、または、それらの組み合わせを、オプションで含む。
【0038】
一態様において、レドックス制御層は、焼成プロセス中、犠牲酸化される。この態様においては、レドックス制御層は、導電トレースから完全に、または、大部分、取り除かれてよく、導電層と貴金属層とを導電接続する。別の態様において、レドックス制御層は、例えば、酸素ゲッターが使用される場合、完全には焼失しない。その場合、酸素ゲッター自体が、焼成後に残る酸化物化合物を形成してよい。図面には示していないが、レドックス制御層は、焼成後、存在してもしなくてもよいことは理解されよう。図面には、レドックス制御層の描写が、便宜上、及び、理解しやすいように、含まれているが、最終的な焼成後のトレースにレドックス制御層を有するものに本発明の内容は限定されない。レドックス制御層は、周りの環境から酸素が導電層に移動するのを防ぐためのバリア材料も含むことができる。この態様においては、レドックス制御層は、焼成プロセス中、大きく取り除かれなくてもよく、残存して、酸素に対するバリアを提供する。炭素粒子、バリア材料、及び、酸素ゲッター材料は、それぞれ、レドックス制御層に個々に使用することもでき、組み合わせて使用することもできる。
【0039】
貴金属層
一実施形態において、導電トレースは貴金属層を備える。貴金属層は、酸化に対する追加の保護を導電層に提供する。貴金属層は、タブまたは他の電気的接続のはんだ接着を改善するために、また、高温下での使用時に導電層を酸化から保護するためにも備えられる。
【0040】
貴金属層を備えるか否かは、導電トレースの層の焼成サイクルと、レドックス制御層の有効性に左右される。導電トレースを形成する焼成サイクルの時間と温度が増加するにつれて、導電層が酸化する可能性も増す。同様に、形成された導電トレースが高温で酸素を含む環境で使用される場合、導電層が酸化する可能性が増す。これらの懸念に対処するために、貴金属層を備えて、導電層の酸化の可能性を最小限にする。同様に、はんだ接点がトレースに必要な場合、典型的に、銀等の貴金属は、導電層で使用される低コストの金属と形成されるはんだ接続よりも強いはんだ接続を形成するので、貴金属層が備えられる。
【0041】
一実施形態において、貴金属層は、焼成前にレドックス制御層の上に組み込まれる。典型的には、貴金属層は、レドックス制御層を完全に、または、大部分、覆う。別の態様において、貴金属層は、レドックス制御層の一部のみを覆う。あるいは、貴金属層は、レドックス制御層に用いられている材料に貴金属粒子/材料を供給、または、その逆を行って、その2つの層の処理と最終的な機能を本質的に組み合わせることによって、レドックス制御層の一部として導入されてよい。2つの層に用いられている材料の焼成及びその中の金属粒子の焼結を行うと、レドックス制御材料は、導電層と焼結された貴金属材料との良好な電気接触を可能にするために、犠牲として酸化され、大部分、取り除かれる。これらの実施形態において、焼結された貴金属材料は、レドックス制御層の空隙を通して導電層に物理的に接触する。空隙は、レドックス制御層が連続した層にならないようにレドックス制御材料に意図的にプリントされる、または、焼成中に、レドックス制御材料に後に形成される。この接続は、貴金属層と導電層との間に電気通信を提供することができる。そして、貴金属層は、導電層と協働して使用されて、電気インパルスを伝導することができる。
【0042】
別の実施形態において、導電層と貴金属層は、互いに電気的に分離することができる。例えば、導電層と貴金属層との間のレドックス制御層に誘電材料を導入することができる。この実施例においては、貴金属層と導電層は、同時に、同じ導電トレース上で、同方向または逆方向に別個の電気インパルスを送信することができる。
【0043】
貴金属層は、銀、金、白金、チタニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、ベリリウム、ガリウム、インジウム、テルル、水銀、ビスマス、または、それらの組み合わせ及び合金の粒子からなる。また、貴金属層は、容易に腐食せず及び/または強いはんだ接続を形成することができる任意の金属または合金の粒子をさらに含むことができる。
【0044】
誘電体層
一実施形態において、金属基板の界面層に用いられている誘電材料とは別個の異なった誘電体層が、本発明の内容の多層導電トレースに組み込まれている。この追加の層は、導電トレースがユーザに見える時に、導電トレースに視覚的に魅力的な美的な外観を与えるために、界面層と同様に無機顔料をさらに含むことができる。この層の誘電性は、トレースに電気絶縁性を与えて、トレースが組み込まれた回路の短絡を防止する。この層は、摩滅やスカッフが導電トレースの性能の劣化または導電経路の遮断を起さないように、導電トレースにハードコート仕上げを提供することもできる。
【0045】
一態様において、誘電体層は、導電トレースの貴金属層上に組み込まれる。別の態様において、誘電体層は、貴金属層を完全または大部分、覆う。さらに別の態様において、誘電体層は貴金属層の一部のみを覆う。
【0046】
一実施形態において、誘電体/傷防止層は、磁器、ガラス、ポリマー、または、それらの組み合わせからなる。一態様において、誘電体層は、アルミン酸塩、ジルコン酸塩、ケイ酸塩、粘土、タルク、耐火性酸化物材料、耐火性窒化物材料、耐火性ホウ化物材料、及び、それらの組み合わせの粒子をさらに含む。これらの粒子成分は、ガラスフリット材料と混ぜ合わされて、貴金属層上に焼結される。
【0047】
1つの例示の態様において、誘電体層は顔料をさらに含む。顔料は、調整剤を用いた、または、用いていない、CuCr、CuCrMn、FeCrCo、TiO
2、NiCrFe、FeCo、FeMn、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択される。有機顔料及び染料を含む他の着色剤を用いてよい。調整剤は、顔料の色の強さ、分散性、熱安定性、耐光性、耐候性、不透明性に影響を与えるために、また、層からの顔料の移動を防止するために含まれてよい。この層に顔料を含むことによって、導電トレースが基板表面から見える場合、導電トレースに美的外観を与える。
【0048】
他のオプション層
本発明の内容の多層導電トレースは、本明細書で前述した層に限定されず、描写されている層の順にも限定されず、導電トレースの機能を向上させるように、他のオプション層を備えることもでき、または、本明細書に記載の多層を異なる配置で重ねることもできる。多層導電トレースの他のオプション層は、熱反射層、熱伝導層、放射率制御層、赤外線反射層、色修正層等を含んでよい。
【0049】
方法
本発明の内容は、本明細書で前述した導電トレースを形成する方法に関する。一実施形態において、方法は、基板表面に界面層を接合することを含む。ガラスまたはセラミック基板に接合する時、界面層は、一般的に、ガラスフリット、セラミック、及び、金属粉末を含む界面材料から形成される。前述して、本明細書に組み込んだように、界面材料は、特に、膨張調整剤、銀移動制御添加剤、無機顔料、及び、誘電材料をさらに含むことができる。一態様において、界面材料は、基板表面にデジタルプリントされる。この態様においては、界面材料は、溶剤と結合剤をさらに含む。界面材料は、基板表面にデジタルプリントされた後、焼成されて、溶剤と結合剤を焼失させ、界面材料の残りの成分を焼結させて界面層を形成して、その界面層を基板に接合させる。
【0050】
方法は、界面層上に導電層を形成することをさらに含む。導電層は、銅、アルミニウム、ニッケル、錫、タングステン、亜鉛、鉄、銀、スチール、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択された導電性の金属粉末を含む導電性材料から形成される。一態様において、導電性材料は、焼結助剤をさらに含むことができる。別の態様において、導電性材料は、界面材料上にデジタルプリントされる。この態様においては、導電性材料は、溶剤と結合剤をさらに含み、導電性材料を界面材料上にデジタルプリントした後、導電性材料を焼成して、溶剤と結合剤を焼失させ、内部の金属粉末を焼結させて、界面層上に導電層を形成する。
【0051】
方法は、導電層上にレドックス制御層を層状に重ねることをさらに含む。レドックス制御層は、炭素粒子、酸素ゲッター材料、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択されたレドックス制御剤を含むレドックス制御材料から形成される。一態様において、炭素粒子は、10〜50ナノメートルの平均粒径を有する。一実施形態において、酸素ゲッター材料は、シリコン、チタニウム、窒化物、炭化物、高分子ポリマー、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択される。一態様において、レドックス制御材料は、導電性材料を包み込んで酸化から保護するように、導電性材料上にデジタルプリントされる。このデジタルプリント法においては、レドックス制御材料は、溶剤と結合剤をさらに含む。レドックス制御材料を導電性材料上にデジタルプリントした後、レドックス制御材料は、焼成されて、ほぼ全ての成分材料、すなわち、溶剤、結合剤、及び、犠牲酸化材料を焼失させる。この態様においては、レドックス制御材料は、導電層から大部分、取り除かれる。レドックス制御材料が酸素バリア材料を含む別の態様においては、レドックス制御材料は、焼成中に大きく取り除かれることはなく、焼成後、酸素に対するバリアとして、及び/または、誘電体層として残る。
【0052】
方法は、導電層上に貴金属層を生成することをさらに含む。貴金属層は、銀、金、白金、チタニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、ベリリウム、ガリウム、インジウム、テルル、水銀、ビスマス、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択された貴金属を含む貴金属材料から形成される。一実施形態において、貴金属は粉末状である。一態様において、貴金属材料は、レドックス制御材料上にデジタルプリントされ、レドックス制御材料の一部として組み込まれる。このデジタルプリント法においては、貴金属材料は、溶剤及び結合剤をさらに含む。貴金属材料をレドックス制御材料上に、または、レドックス制御材料と共にデジタルプリントした後、貴金属材料を焼成して、溶剤及び結合剤を焼失させ、貴金属粉末を焼結させて導電層上に貴金属層を形成する。一態様において、貴金属層は、プリントされたレドックス制御材料の開口または空隙を通して導電層に接触する。これらの空隙は、意図的にプリントにより形成されて、焼成後、レドックス制御材料はバリア層として働く。または、これらの空隙は、焼成の産物として形成され、レドックス制御材料は大部分、焼失される。
【0053】
方法は、貴金属層上に誘電体層を生成することをさらに含む。誘電体層は、磁器、ガラス、ポリマー、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択された誘電剤を含む誘電材料から形成される。誘電材料は、アルミン酸塩、ジルコン酸塩、ケイ酸塩、粘土、タルク、耐火性酸化物材料、耐火性窒化物材料、耐火性ホウ化物材料、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択された粒子をさらに含むことができる。誘電材料は、調整剤を用いて、または、用いずに、CuCr、CuCrMn、FeCrCo、TiO
2、NiCrFe、FeCo、FeMn、及び、それらの組み合わせからなるグループから選択された顔料をさらに含むことができる。有機顔料及び染料を含む他の着色剤を使用することができる。調整剤は、顔料の色の強さ、分散性、熱安定性、耐光性、耐候性、不透明性に影響を与えるために、また、層からの顔料の移動を避けるために含んでよい。一態様において、誘電材料は、貴金属材料上にデジタルプリントされる。このデジタルプリント法においては、誘電材料は、溶剤及び結合剤をさらに含む。誘電材料を貴金属材料上にデジタルプリント後、誘電材料を焼成して、溶剤及び結合剤を焼失させ、誘電材料の残りの成分を焼結して、貴金属層上に誘電体層を形成する。
【0054】
一実施形態において、導電トレースの各層の材料の焼成は、全ての層の全ての材料をプリント/堆積後、1つの焼成ステップで行われる。代替方法として、プリント/焼成/プリント/焼成・・・等の方法で別個の焼成ステップを用いることができ、各層は個々に形成される。この代替方法では、各層の材料は、下にある焼成前の材料ではなく、下にある焼成された層の上に堆積されることになる。デジタルプリントを用いて様々な材料を堆積させるが、当分野で既知の他の技術を用いて、材料を堆積させ、導電トレースの個々の層を形成できることも意図している。
【0055】
各層をデジタルプリントによって塗布する時、各層の上記の固体成分は、有機ビヒクルと混ぜ合わせて、ペーストを形成してよい。一実施形態において、各層のペーストは、一般に、約30〜80重量%の固体と、約20〜70重量%の有機ビヒクルと、を含む。各層のペーストが所望の方法及び厚さで所望の基板上にデジタルプリントできるように、ペーストの粘度は、形成する個々の層と含まれる固体に合わせて調整される。
【0056】
ペーストのための有機ビヒクルは、結合剤及び溶剤を含み、それらは、デジタル塗布技術に必要な粘度と、プリントする基板の材料組成と、ペーストの固体部分の組成及び物理的特性と、プリントする層の所望の厚さと、に基づいて選択される。ビヒクルは、プリント中、微粒子(すなわち、金属粉末、顔料、フリット、酸素ゲッター材料、ポリマー、粘土等の固体部分)を懸濁し、焼成して、完全または大部分、焼失する。特に、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及び、それらの組み合わせを含む結合剤を使用してよい。適切な溶剤は、プロピレングリコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、2,2,4‐トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート(Texanol(商標))、アルファ‐テルピネオール、ベータ‐テルピネオール、ガンマテルピネオール、トリデシルアルコール、ジエチレングリコールエチルエーテル(Carbitol(商標))、ジエチルグリコールブチルエーテル(Butyl Carbitol(商標))、松油、植物油、鉱物油、低分子量石油留分、トリデシルアルコール、水、合成もしくは天然樹脂、または、それらの混合物を含む。界面活性剤及び/または他の膜形成調整剤も含むことができる。溶剤及び結合剤は、約50:1〜約20:1の重量比で存在してよい。
【0057】
各インクにおいて、固体部分は、勾配層を形成するためにプリント中、連続的に変化してよい。勾配層は、個々の層の異なる部分の間で、連続的に調整された焼結材料含有量を有する。デジタルプリントのためのペーストの粘度は、20℃で1.0〜2000センチポアズの範囲である。
【0058】
多くの他の利点は、本技術の今後の適用及び発展から明らかとなることを確信している。
【0059】
本明細書に記載したように、本発明の内容は、従来の戦略、システム、及び/または、装置に関連する多くの問題を解決する。しかしながら、本発明の内容の性質を説明するために記載、図示した構成要素の詳細、材料、及び、配置は、請求項に記載する特許を請求する発明の内容の原理及び範囲を逸脱することなく、当業者によって様々に変更されてよいことは、理解されよう。