(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシートスライド装置においては、ロック部がアッパレールとロアレールとのロックを解除しているときには、その摺動抵抗を抑制できることにより、ロアレールに対するアッパレールの摺動を円滑にできる。
しかしながら、ロック解除時にアッパレールに摺動方向の力を加えるときには、アッパレールの摺動を円滑にできる一方、アッパレールに摺動方向の力を加えていないときに、アッパレールの位置ひいてはアッパレールに固定されたシートの位置を安定的に留めておくことが車両の停止姿勢等によって困難であることがあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、アッパレールの位置ひいてはアッパレールに固定されたシートの位置を安定的に留めることができるシートスライド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明に係るシートスライド装置によれば、フロアに固定されるロアレールと、該ロアレールに摺動可能に取り付けられたアッパレールと、前記ロアレールに対する前記アッパレールの摺動をロックするロック機構と、前記ロアレールと前記アッパレールとの間に設けられ、前記アッパレールの摺動方向に揺動可能に前記アッパレールに取り付けられた変位部材と、前記変位部材を一方向に付勢する付勢部材と、を備え、前記アッパレールは、前記ロアレールに摺動する方向における前記一方向に向かうにつれて前記ロアレールの内面に近接するように斜めに形成された傾斜部を有し、前記変位部材は、前記ロアレールの内面及び前記傾斜部に当接して配置された当接部を有し、該当接部は、前記付勢部材による前記変位部材への付勢によって前記傾斜部に前記一方向側で当接し、前記傾斜部は、前記当接部を介して受ける前記付勢部材による付勢の力を、前記ロアレールの内面に当接させる方向の力に変換して前記当接部に付与し、前記当接部と前記ロアレールの内面とを、前記ロック機構のロック時及びロック解除時に当接させることにより解決される。
【0008】
上記構成によれば、当接部が、ロック機構のロック時に、傾斜部とロアレール内面とに当接していることで、アッパレールとロアレールとのガタつきを抑制できる。
また、ロック解除時にも当接部が傾斜部とロアレール内面とに当接しており、当接部を介して受ける付勢部材による一方向に向かう付勢力が、ロアレールの内面に当接させる方向の力に傾斜部によって変換される。
そして、アッパレールが一方向に移動する場合には、一方向の逆方向の摩擦力がロアレール内面から当接部に加わり、当接部がロアレールの内面と傾斜部が離間する側に移動しようとする。このため、当接部からロアレール内面に対して押圧する力は抑制されて摺動抵抗を抑制でき、アッパレールをロアレールに対して円滑に摺動させることができる。
一方、アッパレールが、一方向の逆方向に移動する場合には、一方向の摩擦力がロアレール内面から当接部に加わり、当接部がロアレールの内面と傾斜部が近接する側に移動しようとする。このため、当接部からロアレール内面に対して押圧する力が増すことで、摺動抵抗を増大させることができ、アッパレールの位置ひいてはアッパレールに固定されたシートの位置を安定的に留めることができる。
【0009】
また、前記変位部材は、複数設けられており、前記複数の変位部材のそれぞれに当接するように設けられた前記傾斜部は、前記一方向に向かうにつれて前記ロアレールの内面に近接する方向に斜めに形成されていてもよい。
上記構成によれば、変位部材は、複数設けられており、複数の変位部材のそれぞれに当接するように設けられた傾斜部は、一方向に向かうにつれてロアレールの内面に近接する方向に斜めに形成されていることで、アッパレールが一方向の逆方向に移動する際に、当接部からロアレール内面に加わる力をより大きくすることができ、アッパレールの位置ひいてはアッパレールに固定されたシートの位置をより安定的に留めることができる。
【0010】
また、前記ロアレールと前記アッパレールとの間に設けられ、前記アッパレールの摺動方向に揺動可能に前記アッパレールに取り付けられた他の変位部材を備え、前記アッパレールは、前記ロアレールに摺動する方向における外方向に向かうにつれて前記ロアレールの内面に近接するように斜めに形成された他の傾斜部を有し、前記他の変位部材は、前記アッパレールに回動自在に取り付けられた第1リンク部と、該第1リンク部に回動可能に取り付けられた第2リンク部と、から構成され、前記第1リンク部は、前記ロック機構に当接可能に配置され、前記付勢部材によって付勢されており、前記ロック機構のロック解除動作に連動して前記付勢部材の付勢に抗して回動し、前記第2リンク部は、前記他の傾斜部に前記外方向に当接して配置され前記ロアレールの内面に当接可能に配置された他の当接部を有し、前記ロック機構のロック解除動作に連動する前記第1リンク部に連動して前記アッパレールの摺動方向における前記他の傾斜部の前記ロアレールの内面に近接する側の逆側に移動し、前記他の当接部は、前記ロック機構のロック時に、前記付勢部材の付勢力が前記第1リンク部を介して加えられて前記他の傾斜部によって前記ロアレールの内面に当接させる方向に変換された力が加えられることで、前記ロアレールの内面に当接し、前記ロック機構のロック解除時に、前記第1リンク部の動作に前記第2リンク部が連動することで、前記ロアレールの内面から離間するようにしてもよい。
上記構成によれば、ロック機構のロック解除動作に連動する他の変位部材を備え、他の変位部材が、ロック時に、他の当接部をロアレールの内面に当接するように移動させることで、ロック機構のロック解除時にアッパレールの円滑な摺動を実現できつつ、ロック機構のロック時に当接部をガタつき抑えとして機能させることができ、変位部材と他の変位部材とを組合せて設けることで、アッパレールの摺動抵抗のバランス調整が容易となる。
【0011】
また、前記フロアは車両内のフロアであり、前記ロアレールは、前記車両の後ろ側に向かうについて上方に向かうように傾斜して前記車両内のフロアに取り付けられており、前記傾斜部は、前記車両の前後方向のうち後ろ側になるにつれて前記ロアレールの内面に近接するように傾斜していてもよい。
上記構成によれば、ロアレールが後ろ側に向かうについて上方に向かうように傾斜して車両内のフロアに取り付けられていることで、アッパレールの前方への摺動を容易としつつ、摺動方向に力を加えていない状態においては、アッパレールの位置を安定的に留めておくことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アッパレールの位置ひいてはアッパレールに固定されたシートの位置を安定的に留めることができるシートスライド装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るシートスライド装置について図面を参照して説明する。
【0015】
<<第1実施形態について>>
まず、第1実施形態に係るシートスライド装置1について
図1〜
図5を参照して説明する。
ここで、
図1(A)は、本発明の一実施形態に係るシートスライド装置1のロック状態を示す一部切欠き正面図であり、(B)は、一部切欠き平面図、
図2(A)は、
図1(B)のIIA-IIA断面を示す図であり、ロック状態における当接部33を示す部分断面図、(B)は、ロック解除状態における当接部33を示す部分断面図である。
図3は、シートスライド装置1のロック状態を示す模式的な一部断面図、
図4は、シートスライド装置1のロック解除状態を示す模式的な一部断面図、
図5は、傾斜部30dと当接部33の内側部33cとロアレール2の内面とを示す図であり、
図4のIII部を拡大した図である。
【0016】
シートスライド装置1は、図示せぬ車両用シートの下部に設けられる装置であって、図示せぬ車両のフロアに固定されるロアレール2と、ロアレール2に対して摺動可能に設けられたアッパレール3と、ロアレール2に対するアッパレール3の摺動をロックするロック部材5とを備える。
【0017】
ロアレール2は、シート(車両)前後方向であるX方向に延在して、X方向に直交するシート左右方向であるY方向の両側で固定されている。そして、ロアレール2は、延在方向が同一方向となるように挿入されたアッパレール3を延在方向に摺動可能に支持している。なお、以下において、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向とも記載する。
ロアレール2は、
図2(A),
図2(B)に示すように、底板部20と、底板部20の左右の両端部から上方に延在する外側板部21と、左右の外側板部21の上端部から左右方向の内側に延在する上板部22と、左右の上板部22の内側端部から下方に延在する内側板部23とを有している。
【0018】
底板部20と左右の外側板部21と左右の上板部22と左右の内側板部23とで囲まれて、後述するアッパレール3の下部側を収容する収容部24は、左右の内側板部23の間から上方に開放されている。ロアレール2における左右の内側板部23間の開放された部位からアッパレール3の上部側が突出するようにしてアッパレール3が取り付けられている。
左右の内側板部23の一方には、
図1に示すように、本発明に係るロック機構の一部であるロック孔23aがX方向に断続的に複数形成されており、このロック孔23aに後述するロック部材5のロック爪50aが係合する。
【0019】
アッパレール3は、X方向に延在しており、
図2に示すY方向に重なり合わされた側板30を有する。
側板30の下部には、収容部24内に挿入されてY方向に間隔をあけて並ぶ2つの内側部30aと、2つの内側部30aの下端部に連続して形成され、Y方向の外側上方へ屈曲して外側板部21と内側板部23の間に配設された
図1(B)に示す外側部30bとが形成されている。
外側部30bには、ロアレール2内の底板部20上に載置されて、ロアレール2に対してアッパレール3を摺動させるためのローラ40が支持されている。
【0020】
外側部30bにおけるX方向の両端部には、
図2(A),(B)及び
図3に示すように、X方向へ延びる傾斜部30dが形成されている。傾斜部30dは、X方向の外側へ向かうにつれて上方に傾斜している。傾斜部30dは、換言すると、ロアレール2の上板部22の下面に近接するように傾斜している。ここで、X方向前側の傾斜部30dは、本発明に係る他の傾斜部に相当する。
【0021】
アッパレール3におけるX方向の中央近傍に、一方の側板30に取り付けられたブラケット21aによって、ロック部材5が取り付けられている。
ロック部材5は、本発明に係るロック機構の一部であり、ロアレール2に対するアッパレール3の摺動をロックする機能を有する。
【0022】
ロック部材5は、複数のロック爪50aを有し、このロック爪50aがロアレール2の内側板部23に、X方向に断続的に形成されたロック孔23aに嵌合することで、ロアレール2とアッパレール3とをロックする。なお、アッパレール3の内側部30aには、複数の挿通孔30cが形成されており、この挿通孔30cがロック爪50aを挿通させることによって、ロック爪50aとロック孔23aとが嵌合することを可能にしている。
ロック部材5は、ブラケット21aによって上下方向であるZ方向に回動可能に支持されている。また、アッパレール3とロック部材5との間には、本発明に係る付勢部材に相当する引張コイルばね36が取り付けられており、引張コイルばね36は、ロアレール2とアッパレール3とがロックされる方向にロック部材5を付勢している。
また、ロック部材5にはハンドル50bが連結されており、ハンドル50bを操作されることで、引張コイルばね36の付勢に抗してロック部材5をZ方向に回動させることでロック解除がされる。
【0023】
図3に示すように、アッパレール3において、ロック部材5を挟んだX方向両側のうちの前側にレバー31、後ろ側にレバー35が、それぞれに設けられたY方向へ延びる支軸34aにより回動可能に支持されている。
レバー31は、本発明に係る第1リンク部に相当し、後述する変位部材32を付勢して、これに一体に形成された当接部33をロアレール2の内面に当接させる機能、及び、ロック部材5のロック解除動作に応じて、当接部33をロアレール2の内面から離間させる機能を有する。
レバー31は、支軸34aの上方へ延びる上腕部31aと、支軸34aの下方へ延びる下腕部31bとを有している。上腕部31aには、ロック部材5の上方に突出する伝動部31cが一体的に形成されている。伝動部31cは、ロック部材5と係合してロック部材5の回動をレバー31の回動として伝える機能を有する。
レバー35は、後述する変位部材32を付勢して、これに一体に形成された当接部33をロアレール2の内面に当接させる機能を有する。
レバー35は、支軸34aの上方へ延びる上腕部35aと、支軸34aの下方へ延びる下腕部35bとを有している。この点で、レバー35はレバー31と一致し、伝動部31cを有さず、ロック部材5に直接的に連動しない点で、レバー31と異なる。
前後のレバー31,35の上腕部31a,35a間には、本発明に係る付勢部材に相当する引張コイルばね36aが連結されている。
【0024】
前後のレバー31,35の下腕部31bそれぞれには、変位部材32が支軸34bにより回動可能に連結されている。変位部材32は、左右の内側部30aの間において、アッパレール3の内側部30aに沿ってX方向に揺動可能に配設されている。具体的には、支軸34bは、支軸34aよりも下方であってX方向において外側にある。ここで、前側にありレバー31に連結された変位部材32は、レバー31とともに本発明に係る他の変位部材を構成するものである。
変位部材32は、X方向の両端部に、当接部33を一体的に有する。当接部33は、側板30よりもX方向において外側に配置されている。
【0025】
当接部33は、樹脂により成形され、
図2に示すように、中間部33aと、中間部33aに相互の下側を接続されて、Y方向両側の側方に位置する外側部33bと、Z方向上方に位置する内側部33cとから構成される。
ここで、中間部33aは、側板30に沿ってX方向に移動可能なように形成されているものである。
内側部33cは、ロアレール2の上板部22の下面に当接することで上下方向のアッパレール3のガタつきを抑えるために形成されているものである。内側部33cには、X方向に貫通する断面長方形状の規制孔33eが形成されている。この規制孔33e内に通される傾斜部30dに規制孔33eの縁面が接することによって、当接部33の移動が規制されることとなる。
外側部33bは、ロック部材5のロック時に、ロアレール2の外側板部21の内面に当接することで横方向のアッパレール3のガタつきを抑えるために形成されているものである。外側部33bは、内側部33cとの間にZ方向に貫通する空隙33dを形成するように上面視円弧状に形成されており、上下に延在している。
そして、中間部33aと左右の外側部33b及び内側部33cとの間に、ロアレール2の内側板部23が配設されている。
【0026】
<各部材の動作>
次に、
図3〜
図5を参照して、各部材の動作を説明する。なお、
図3〜
図7に示される、当接部33、及び後述する当接部63,73については、それぞれ、内側部33c,63c,73cの上側部位のみが示されているのみで、
図2に示された当接部33の形状と異なる。しかし、これらは動作説明を容易にするため簡略化して示されたものであり、実際の形状はX方向の向き以外
図2に示された当接部33の形状とすべて同一である。
【0027】
(レバー31について)
図3に示すように、当接部33は、引張コイルばね36aによりレバー31が支軸34aを中心に回動した状態に付勢されることで、レバー31に接続された変位部材32を介してX方向外側へ突出している。
このため、
図2(a)に示すように、当接部33の規制孔33eの内縁が傾斜部30dにより上方へ押され、内側部33cが、ロアレール2の内面であって左右の上板部22の下面に当接する。したがって、当接部33の内側部33cが圧接されることで、上板部22を有するロアレール2と、傾斜部30dを有するアッパレール3とのがた付きが抑制される。
【0028】
そして、前述したロック部材5のロック解除状態では、
図4に示すように、レバー31の伝動部31cがロック部材5により引張コイルばね36aの弾性力に抗して上方へ押されることで、レバー31が支軸34aを中心に
図4中、反時計回りに回動する。これに応じて、支軸34bを介して変位部材32に後ろ側かつ下方に荷重が加わり、変位部材32を介して当接部33がX方向内側へ退入する。
このため、X方向の前側の当接部33は、規制孔33eに対する傾斜部30dの規制が解除されて、下方に当接する傾斜部30dに沿って後方且つ下方に移動する。そして、ロアレール2の左右の上板部22に対しZ方向において離間する状態となる。
したがって、ロック解除状態で、当接部33の外側部33bがロアレール2の外側板部21の内面に軽く接触するとともに、ロアレール2の上板部22からZ方向において離間した状態で、ロアレール2に対しアッパレール3をX方向へ移動させることができる。
【0029】
(レバー35について)
一方、レバー35には、レバー31のような伝動部31cは形成されていない。このため、レバー35は、ロック部材5の動作によらず、
図3中、反時計回りに回動する方向に引張コイルばね36によって付勢されている。
また、レバー35に支軸34bを介して接続された変位部材32は、X方向後方かつ上方に荷重が常に加わることとなる。
よって、
図3及び
図4に示すように、X方向の後側の当接部33は、ロック部材5のロック時、ロック解除時に拘わらず、当接する傾斜部30dに沿って後方に付勢されていることとなる。
【0030】
(アッパレール3の動作について)
アッパレール3がロアレール2に対してX方向の前側に移動する場合には、ロアレール2の上板部22の下面に接する後側の当接部33が、上板部22から受ける摩擦力によって、傾斜部30dに対して相対的に後方に移動しようとする。
しかし、傾斜部30dは、後方に向かうにつれて上板部22の下面との距離が近接するように形成されているため、当接部33の移動が制限されて当接部33が楔のように上板部22と傾斜部30dの間に入り込むこととなる。このため、当接部33を介して上板部22に上方向に向かう荷重がかかることとなる。
つまり、特開2013−18439号公報の発明のようなロック解除時に完全に当接部33を上板部22から離間させる場合と比較して、X方向の前側に移動する場合の摺動抵抗が高まることとなる。
【0031】
一方、アッパレール3がロアレール2に対してX方向の後側に移動する場合には、ロアレール2の上板部22の下面に接する後側の当接部33は、上板部22から受ける摩擦力によって、傾斜部30dに対して相対的に前方に移動しようとする。
そして、傾斜部30dは、前方に向かうにつれて上板部22の下面との距離が離間するように形成されているため、当接部33の移動は制限されず、当接部33を介して上板部22に上方向に向かう追加的な荷重がかかることが抑制される。
つまり、X方向の後側に移動する場合の摺動抵抗の高まりが抑制されることとなる。
【0032】
上記実施形態に係るシートスライド装置1は、特開2013−18439号公報に記載された装置における後側のレバーの伝動部31cを加工により無くすことのみで、製造容易である。
そして、着座者のシート移動の操作性に鑑みて前方側に摺動し易く取り付けられる一般的なケースにおいて、前方向への摺動抵抗が高められることで、ロック解除時のシートの安定性を高めることができる。
【0033】
<<第2実施形態について>>
次に、第2実施形態に係るシートスライド装置1aについて、
図6を参照して説明する。なお、以下において、第1実施形態に係るシートスライド装置1と同一の形状及び機能を有するものについては同一符号を付し、説明の重複を回避する。
ここで、
図6は、第2実施形態に係るシートスライド装置1aを示す模式的な一部断面図である。
シートスライド装置1aは、ロック部材5の動作に拘わらずにロアレール2の上板部22の下面に当接する部材として、X方向の後ろ側に設けられた当接部33だけでなく、前側に設けられた当接部63を備える構成から成る。
【0034】
具体的には、シートスライド装置1aは、X方向の前側に、X方向に延在する変位部材62と、変位部材62の前側に一体的に形成された当接部63と、変位部材62の後ろ側に接続されて後方に付勢する引張コイルばね36bとを備える。
【0035】
変位部材62は、ロック部材5の動作にリンクさせる必要が無く、またX方向延長上に引張コイルばね36bが配設されているため、第1実施形態に係る変位部材32よりも短い長さで形成されている。
引張コイルばね36bは、本発明に係る付勢部材に相当し、アッパレール3aの内側部30aに形成された係止孔30fに掛け止めされている。
当接部63は、引張コイルばね36bの後方への付勢によって、後述する傾斜部60dの上面及びロアレール2の上板部22の下面に当接されている。
【0036】
また、アッパレール3aの前端部に形成された傾斜部60dは、前方に向かうにつれてロアレール2の上板部22の下面から離間するように傾斜して形成されている。
傾斜部60dがこのように傾斜しており、更に、変位部材62が引張コイルばね36aによって後方に付勢されていることによって、変位部材62に一体的に形成された当接部63に後方への力が加わることとなる。このため、当接部63と、上板部22のロアレール2と、傾斜部60dのアッパレール3aとの当接状態が維持される。
なお、X方向の後ろ側に設けられたレバー35に取り付けられた引張コイルばね36aは、第1実施形態に係るレバー31が設けられていないために、アッパレール3aの側板30における支軸34aのX方向前側であってZ方向上側に形成された係止孔30eに掛け止めされている。このように、引張コイルばね36aは、側板30に形成された係止孔30eに掛け止めされていることで、レバー35を介して変位部材32を前方に付勢することができる。
【0037】
このように構成されたシートスライド装置1aによっても、第1実施形態に係るシートスライド装置1同様に、X方向の前側にアッパレール3aが移動する際には、ロアレール2に対する摺動抵抗を大きくでき、X方向の後ろ側にアッパレール3aが移動する際には、ロアレール2に対する摺動荷重を小さくできる。
【0038】
具体的には、アッパレール3aがロアレール2に対してX方向の前側に移動する場合には、ロアレール2の上板部22の下面に接する前側の当接部63が、上板部22から受ける摩擦力によって、傾斜部60dに対して相対的に後方に移動しようとする。
しかし、傾斜部60dは、後方に向かうにつれて上板部22の下面との距離が近接するように形成されているため、当接部63の移動が制限されて当接部63が楔のように上板部22と傾斜部60dの間に入り込むこととなる。このため、当接部63を介して上板部22に上方向に向かう荷重がかかることとなる。
つまり、X方向の前側に移動する場合の摺動抵抗を高めることができる。
【0039】
一方、アッパレール3aがロアレール2に対してX方向の後側に移動する場合には、ロアレール2の上板部22の下面に接する後側の当接部33は、上板部22から受ける摩擦力によって、傾斜部30dに対して相対的に前方に移動しようとする。
そして、傾斜部30dは、前方に向かうにつれて上板部22の下面との距離が離間するように形成されているため、当接部33の移動は制限されず、上板部22に対して、上方向に向かう追加的な荷重がかかることが抑制される。
つまり、X方向の後側に移動する場合の摺動抵抗の高まりを抑制することができる。
【0040】
更には、シートスライド装置1aの前後において、当接部33,63の上面がロアレール2の上板部22の下面に接することとなるため、アッパレール3aが摺動する際の摺動抵抗が高まるとともに、前後方向のぐら付きが抑えられることで使用感を良好にすることが可能となる。
【0041】
<<第3実施形態について>>
次に、第3実施形態に係るシートスライド装置1bについて、
図7を参照して説明する。
ここで、
図7は、第3実施形態に係るシートスライド装置1bを示す模式的な一部断面図である。
【0042】
シートスライド装置1bは、第2実施形態に係るシートスライド装置1aのX方向後ろ側の変位部材32を、前側の変位部材62と略同じ長さの変位部材72とし、変位部材72を後方に付勢する圧縮コイルばね76を備える構成から成る。
【0043】
具体的には、シートスライド装置1bは、X方向の後ろ側に、X方向に延在する変位部材72と、変位部材72の後ろ側に一体的に形成された当接部73と、変位部材72の後ろ側に接続された圧縮コイルばね76とを備える。
【0044】
変位部材72は、X方向延長上に圧縮コイルばね76が配設されているため、第1実施形態に係る変位部材32よりも短い長さで形成されている。
圧縮コイルばね76は、本発明に係る付勢部材に相当し、アッパレール3bの内側部30aに一体的に形成された固定板77に前側端部を固定されており、圧縮コイルばね76の後側端部に変位部材72の前側端部が嵌められている。このように、圧縮コイルばね76は、側板30に形成された固定板77に固定されていることで、変位部材72を後方に付勢することができる。
当接部73は、圧縮コイルばね76の後方への付勢によって、傾斜部30dの上面及びロアレール2の上板部22の下面に当接されている。
【0045】
このように構成されたシートスライド装置1bによっても、傾斜部30dにおけるロアレール2の上板部22に近接する側に圧縮コイルばね76によって当接部73が付勢されることになる。このため、シートスライド装置1bは、第2実施形態に係るシートスライド装置1a同様に、X方向の前側にアッパレール3bが移動する際には、ロアレール2に対する摺動抵抗を大きくでき、X方向の後ろ側にアッパレール3bが移動する際には、ロアレール2に対する摺動抵抗を小さくできる。
【0046】
上記実施形態において説明したように、傾斜部30d,60dにおけるロアレール2の上板部22との隙間が狭まる側に変位部材32,62,72を付勢する構成であれば、当接部33,63,73の傾斜部30d,60dと上板部22との当接を維持することができる。このようにすることで、アッパレール3,3a,3bとロアレール2との間で摩擦力を生じさせることができる。
【0047】
特に、X方向後ろ側に向かうにつれてロアレール2の上板部22に近接するように傾斜した傾斜部30d,60dを備える構成によれば、アッパレール3,3a,3bを前方に摺動させる際の摺動抵抗を高めることができ、相対的に後方に摺動させる際の摺動抵抗を低めることができる。このようにすれば、前述のように、前方側に摺動し易く構成された一般的なスライド装置に広く好適に適用可能となる。
【0048】
上記実施形態に係るシートスライド装置1,1a,1bは、特に図示せぬ車両の後部座席に設けられていると好適である。後部座席に設けられたシートスライド装置は、スライド量が一般的に大きく、スライドさせる頻度も多いため、特に、アッパレール3,3a,3bの位置ひいてはアッパレール3,3a,3bに固定されたシートの位置を安定的に留めておく必要性が高いためである。
また、後部座席に設けられたシートスライド装置は、着座者が脚を使って前方向へのシート位置調整を容易にするために、車両のフロアに前がかりに固定されていることが多い。したがって、この場合には、シート自重による前方への摺動を防止するように構成されていると好ましい。
【0049】
本実施形態では、主として本発明に係るシートスライド装置に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0050】
例えば、本実施形態において、アッパレールの傾斜部とロアレールの内面とは、X方向の後ろ側に向かうについてZ方向における距離を変えるようにして、アッパレールをX方向の前側に摺動させる際の摺動抵抗を、後ろ側に摺動させる場合と比べて大きくするものとして説明した。このような構成によれば、ロック解除時にシートの自重によって前方に摺動する一般的なアッパレールに適用することで、これを好適に回避できる点で有効である。
しかし、ロック解除時において摺動方向にアッパレールに力が加えられていない状態のときにアッパレールが移動することを回避できればよく、前後方向のいずれの摺動抵抗を大きくするかは、シートスライド装置の取り付け部に合わせて適宜変更することが当然可能である。
【0051】
また、傾斜部は、X方向の位置に応じて、ロアレールの上板部の下面にZ方向に近接・離間するように形成されており、傾斜部の傾斜面の上側に当接する当接部を、上板部の下側に当接させる構成について説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。
つまり、X方向の一側への摺動抵抗と他側への摺動抵抗とを異なるものにできればよく、傾斜部は、X方向の位置に応じて、ロアレールの内面に対してX方向の垂直ないずれかの方向に近接・離間するように形成されていればよい。