(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
X線焦点からX線を発生するX線源と、複数のX線検出素子が二次元的に配列され、前記X線源から照射され被写体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線源と前記X線検出器を対向配置した状態で回転させる回転機構と、前記X線の照射方向を回転させながら前記X線源からX線を照射することによって前記X線検出器が検出した複数の投影データを用いて前記被写体の断層画像を再構成する演算部とを備えたX線撮像装置であって、
前記複数の投影データは、前記X線検出器の回転方向の検出素子番号を第一の軸、前記X線源の回転角度に対応する投影番号を第二の軸として取得データを並べた第一のサイノグラムを含み、
前記演算部は、前記第一のサイノグラムを補間するデータ補間部と、前記データ補間部で作成された第二のサイノグラムを用いて画像再構成する画像再構成部とを備え、
前記データ補間部は、前記第一のサイノグラムに含まれるデータ欠損を補う、もしくはデータを再構成処理に適した形式に再配置する際に、複数の異なる角度θに沿って補間することで、複数の第二のサイノグラムを作成し、
前記画像再構成部は、再構成したい画素位置に置いた仮想点が前記第二のサイノグラム上に描く軌跡の傾きと、前記角度θとの角度差に応じた重みで、複数の前記第二のサイノグラムを加重平均する処理を含む画像再構成処理を行うことを特徴とするX線撮像装置。
X線源とX線検出器と回転機構を備えたX線撮像装置で得た、前記X線検出器の回転方向に並んだ検出素子番号を第一の軸、前記X線源の回転角度に対応する投影番号を第二の軸として取得データを並べた第一のサイノグラムを用いて被写体の断層画像を再構成する方法であって、
前記第一のサイノグラムに含まれるデータ欠損を補う、もしくはデータを再構成処理に適した形式に再配置する際に、複数の異なる角度θに沿って補間し、複数の第二のサイノグラムを作成する処理を含み、
当該処理において、再構成したい画素位置に置いた仮想点が前記第二のサイノグラム上に描く軌跡の傾きと、前記角度θとの角度差に応じた重みで、複数の前記第二のサイノグラムを加重平均する処理を含むことを特徴とする画像再構成方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態のX線撮像装置は、X線焦点からX線を発生するX線源と、複数のX線検出素子が二次元的に配列し、前記X線源から照射され被写体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線源と前記X線検出器を対向配置した状態で回転させる回転機構と、前記X線源からX線を回転照射することによって前記X線検出器が検出した複数の投影データを用いて前記被写体の断層画像を再構成する演算部とを備える。
【0017】
前記複数の投影データは、前記X線検出器の回転方向の検出素子番号を第一の軸、前記X線源の回転角度に対応する投影番号を第二の軸として取得データを並べた第一のサイノグラムを含む。前記演算部は、前記第一のサイノグラムを補間するデータ補間部と、前記データ補間部で作成された第二のサイノグラムを用いて画像再構成する画像再構成部とを備え、前記データ補間部は、前記第一のサイノグラムに含まれるデータ欠損を補う、もしくはデータを再構成処理に適した形式に再配置する際に、複数の異なる角度θに沿って補間し、複数の第二のサイノグラムを作成し、前記画像再構成部は、再構成したい画素位置に置いた仮想点が前記第二のサイノグラム上に描く軌跡の傾きと、前記角度θとの角度差に応じた重みで、複数の前記第二のサイノグラムを加重平均する処理を含む画像再構成処理を行う。
【0018】
なおデータ補間部が補間処理する方向(補間方向)とは、データ空間(サイノグラム)において欠損データを通る所定の角度の直線を想定し、欠損データの周囲に位置する複数のデータ(欠損していないデータ)のうち、その直線上に存在するデータあるいはその直線との距離が近いデータを補間に用いるときの、当該直線の角度(方向)を言う。但し、直線上に存在しないデータや直線との距離が相対的に遠いデータを補間処理に用いることを排除するものではない。
【0019】
以下、図面を参照して、本発明のX線撮像装置の実施形態を説明する。
図1に、本実施形態のX線CT装置100の概要を示す。この図では、撮像部の構造を検査対象である被写体3の体軸方向から見た図として示し、制御・演算等を行う部分(制御系という)をブロック図で示す。
【0020】
撮像部は、図示しないガントリを備え、その中央部に被写体3が進入できる開口部2が設けられ、内部に回転板とその駆動機構を有するスキャナ装置(回転機構)が収納されている。回転板は、開口部2の中心を回転中心軸としてガントリに回転可能に支持されており、X線源であるX線管球1と、X線検出器4とが備えられている。開口部2内を移動可能に寝台5が備えられており、被写体3は寝台5に載置された状態で開口部2内に移動させられる。このような構成により、開口部2内の被写体3を回転撮像することが可能となる。
【0021】
X線源は、X線管球1とX線管球1を駆動する磁場(もしくは電場)発生装置を備え、X線管球1内にある有限の大きさを持つX線焦点9からX線を発生する。被写体3を挟んでX線管球1と対向する位置にX線検出器4が配置される。X線検出器4は複数のモジュール8に分割されており、各検出器モジュール8はX線焦点9を中心として円弧状もしくはフラットパネル状に配置されている。検出器モジュール8には、
図2に示すように、複数のX線検出素子41が2次元アレイ状に配列されている。ここでは、X線検出素子の円弧に沿った配列方向をチャネル方向、被写体3の体軸方向に沿った配列方向をスライス方向と呼ぶ。
【0022】
制御系は、主として、メモリやハードディスクドライブ等の記録装置101、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置(演算部)102、制御装置(制御部)103、マウスやキーボード等の入力装置104、及びモニタやプリンタなどの出力装置105からなる。また出力装置105は入力装置104と一体としてGUI(Graphical User Interface)を構成することも可能である。
【0023】
記憶装置101には、撮像によって得られたデータや演算装置102による計算途中のデータ、演算装置102の演算に必要なパラメータや数値、さらには演算装置102や制御装置103を動作させるプログラムなどが格納されている。
【0024】
演算装置102は、投影・逆投影などの画像再構成の演算の他、データ補正や補間などの演算を行う。
【0025】
制御装置103は、スキャナ装置の制御、X線管球1やX線検出器4の動作の制御、被検体3が寝かせられる寝台5の制御など、装置全体の動作を制御する。例えば、X線源がX線管球1の焦点位置を振動させる機能を有する場合、回転撮影に伴い、焦点位置を振動させる制御を行う。
【0026】
X線CT装置100の撮影制御は、ユーザーが入力装置104を通して設定したスキャン条件に基づき、制御装置103の制御のもとで行われる。回転撮影によって得られた多数の投影データ(X線検出器4が検出したデータ)は記録装置101に記録され、演算装置102で画像処理演算が実行され、被写体3の断層画像等の情報としてモニタ等の出力装置105に表示される。
【0027】
本実施形態のX線CT装置は、演算装置102の機能、具体的には検出したデータに欠損がある場合のデータ補間処理に特徴がある。データ補間処理の機能を持つ演算装置102の機能ブロック図の一例を
図3に示す。
【0028】
図3に示すように、演算装置102は、計測したデータに対し、オフセット補正、感度補正、散乱線補正、ビームハードニング補正等の補正を行う補正部1021、計測したデータがファンビームデータである場合に、仮想的な平行ビームデータに変換するファン−パラ変換部1022、計測したデータの欠損部(欠損データという)を補間する処理を行うデータ補間部1023、補間後のデータを用いてCT画像を再構成する画像再構成部1024を備えている。これら各部の機能の一部または全部は、予め記憶装置101に格納されているプログラムをCPUにロードし実行することにより実現される。また機能の一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)によって実現される場合もある。
【0029】
演算装置102の具体的な処理内容及び手順を説明する前に、まず欠損が存在するデータについて、典型的な例であるFFS撮像を例に説明する。
【0030】
図4にFFSによる倍密度サンプリングの概念図を示す。
FFS撮影では、X線管球1に備わった磁場(もしくは電場)発生装置を用いて、電子ビームの軌道を曲げることによって、X線焦点9の位置を投影(ビュー)毎に変位させる。焦点の変位方向は、ガントリ回転方向(チャネル方向)や、体軸方向(スライス方向)があり得る。
図4では、説明を簡単にするために、チャネル方向の二ヵ所F1、F2の間で焦点9を変位させる場合を示しており、以下でもチャネル方向に変位させる場合を説明するが、本発明はこの焦点変位方法に限定されるものではない。
【0031】
図4に示すように、焦点変位により照射視野の中央付近(一点鎖線で示す平面)でX線と検出素子中心を繋ぐ線分の密度を倍化することができる。
【0032】
倍密度化するための、焦点中心位置(一投影の間の平均位置とする)の移動量Δfは、式(1)に従う。ここで、p
detは焦点変位方向の検出素子ピッチ、SODはX線焦点9とガントリ回転中心間の距離、SIDはX線焦点9と検出器モジュール8までの距離である(以下、同じ)。
【数1】
【0033】
上記条件で、焦点をチャネル方向に変位させながら連続回転撮影する場合、隣接する投影角度間で焦点位置が切り替わるので、同じ投影角度で両焦点位置のデータは同時には得られない。このため、
図5に示すように、FFS実施時のサイノグラム(第一のサイノグラム)は、チャネル方向及びビュー方向にそれぞれ一つ置きに欠損データが存在することになる。
図5中、斜線を付けたボクセルが欠損データを表す。
【0034】
欠損したデータを補間する最も簡単な方法は、チャネル方向の線形補間(チャネル補間)や、ビュー方向の線形補間(ビュー補間)である。サイノグラムを一様にチャネル補間した場合と、一様にビュー補間した場合を比較すると、照射視野 (SFOV) 中央部の空間分解能はビュー補間が、照射視野周辺部の空間分解能はチャネル補間が、それぞれ優れている。この理由は、照射視野中央部の位置の点応答軌跡はビュー方向に沿う部分が多く、照射視野周辺部の位置の点応答軌跡はチャネル方向に沿う部分が多いためである。
【0035】
上記特性を考慮すると、最適な補間方法は、各画素がサイノグラムに描く点応答軌跡に沿った方向への補間(以下、軌跡補間)であると考えられる。軌跡補間の概念を
図6に示す。
図6では、上側に示す照射視野SFOVの3つの位置O、A、Bについて、下側のサイノグラム上の点応答軌跡LO、LA、LBを示している。図示するように、照射視野の中心位置Oの点応答軌跡は、チャネル方向の中心を通るビュー方向に平行な直線LOとなるが、それ以外の位置では、中心位置からのずれに応じた振幅を持つ、直線LOを横軸とする略サイン曲線となる(ファンビームの場合、サイン曲線がやや歪んだ形状となる)。軌跡補間は、この点応答軌跡に沿った方向を補間方向としてデータを補間するものであり、その点応答軌跡を描く位置の画素については理想的な補間となる。しかし、
図6からもわかるように、サイノグラム上で各画素の点応答軌跡が重なり合っているため、一通りのサイノグラムとして補間することはできない。
【0036】
本実施形態では、異なる補間方向で補間した複数のサイノグラム(第二のサイノグラム、以下、代表サイノグラム)を作成し、これら複数の代表サイノグラムを画素位置毎に異なる重みで重み付けて画像再構成(逆投影)に用いることにより、計算負荷を低減しながら、画素位置に依存した空間分解能の劣化がなく、全体として画質の優れた画像を得る。ここで代表サイノグラムの設定については、計算負荷の低減や画質の向上(特に空間分解能の向上)の観点から、いくつか異なる手法を取ることができる。以下、演算装置102の動作の実施形態を説明する。
【0037】
<第一実施形態>
第一実施形態は、予め決められた代表角度について、データ補間を行う。本実施形態による演算装置102の処理の流れを
図7に示す。なお、ここでは再構成法はフィルタ補正逆投影法として説明する。
【0038】
まずFFS計測によって得たデータ(700)に対し、補正部1021が、対数変換、及び、検出素子のオフセット補正及び感度補正、X線強度補正、散乱線補正、ビームハードニング補正等の既知の補正を行う(S710)。
【0039】
次に、データ補間部1023が、サイノグラム上でビュー方向を軸として、軸に対する代表角度θ
i(複数)を決めて、代表角度毎に、その方向への補間を行う(S720)。代表角度θ
iは、例えば90度(絶対値)を最大値として、所定の角度刻みで設定する。例えば、角度刻みを30度とし、θ
i=−90度、−60度、−30度、0度、30度、60度、90度の7つの代表角度とする。θの添え字iは、角度の小さい順に代表角度に付けた通し番号である。なお代表角度は等間隔である必要はない。
【0040】
特定の角度方向の補間とは、その角度方向に沿って並ぶデータ(欠損していないデータ)を用いた補間である。その一例を、
図8を参照して説明する。
図8中、欠損位置を四角で示し、その周りのデータd1〜d4を丸で示している。サイノグラムデータdは、チャネル方向の検出素子番号chと、スライス方向の検出素子番号slと、投影番号viewの関数で表される。これらの変数に適切な係数α、β、γを掛けてまとめたものをベクトルx=(αch、 βsl、 γview)で表し、サイノグラム上の欠損位置をx’と表すと、補間後のデータは一般に式(2)に従う。
【0041】
【数2】
式(2)中において、w(x−x’)は、欠損位置x’とそれを補間するためのデータd(x)の変数であるベクトルxとの関係に基づいて決められる重みである。サイノグラム上でのデータ間の距離rを式(3)で定義し、重みをw(r)=r
−2とすると、式(2)は、欠損位置x’に最も近い位置のデータ(
図8ではd1)の重みを重くして補間することとなり、角度方向は考慮されていない。
【0043】
これに対し、
図8に点線で示す角度方向の補間を行う場合には、欠損位置を通り代表角度(ビュー方向の軸に対する角度)の直線Lとの距離を考慮して補間を行う。具体的には、欠損位置の近隣のデータ(
図8、d1〜d4)について、直線Lへの最短距離r
ortを求め、w(r
ort)=r
ort−2とする。あるいは、直線L(代表角度方向)と平行な距離r
pal(=(r
2−r
ort2)
1/2)も求め、式(4)に示すように、r
ortとr
palを適切な重みεを用いて結合した新たな距離r’を定義し、w(r’)=r’
−2としてもよい。
【数4】
【0044】
また、式(5)のように、ある距離Rよりも遠くのデータを用いないという制限を加えてもよい。これにより分解能の劣化を防ぐことができる。
【数5】
【0045】
データ補間部1023は、以上の補間処理を、角度方向を一様にして、全ての欠損位置について、その角度方向の代表サイノグラムを得る。この処理を設定したすべての角度方向について行い、設定した角度方向(代表角度)と同数の代表サイノグラム(補間後のサイノグラム)を得る。
【0046】
次に、
図7に戻り、各代表サイノグラムに対して、ファン−パラ変換部1022及び画像再構成部1024が、それぞれ、ファン−パラ変換(S730)と、再構成フィルタ処理(S740)を実施する。ファン−パラ変換は、ファンビームとして得られたデータを、平行ビームを照射したと仮定して得られるデータに変換する処理で、一種の補間処理であり、公知の補間手法、例えば距離に応じた重み付けを行った補間などを行うことができる。また再構成フィルタ処理は、データに再構成関数をコンボリューションする処理で、Ramachandranフィルタ、Sheppフィルタ、Cheslerフィルタなど公知の再構成フィルタを、所望の空間分解能やコントラスト分解能を考慮して適宜選択して適用することができる。これら再構成フィルタの選択は、例えば、ユーザーが入力装置104を介して、フィルタの種類を直接選択するか所望の分解能を選択することにより行われる。
【0047】
なお
図7では、代表サイノグラムの作成(S720)の後にファン−パラ変換(S730)を行う例を示したが、これらの処理は逆であってもよい。即ち、補正後のデータをファン−パラ変換した後に、補間方向の異なる複数の代表サイノグラムを作成してもよい。但し分解能を低下させないためには
図7に示す手順のほうが好ましい。また、代表サイノグラムの作成(S720)とファン−パラ変換(S730)を同時に行ってもよい。
【0048】
こうしてファン−パラ変換及び再構成フィルタ処理を施したサイノグラムのデータ(角度方向毎のデータ)を用いて、逆投影を行う。このため、まず逆投影処理に用いる軌跡補間された投影データを代表サイノグラムから計算する(S750)。
【0049】
ここで、処理S740後のサイノグラムをD[θ
i]と表す(θ
iは代表角度である)。D[θ
i]は、ファン−パラ変換後のチャネル方向の検出素子番号CH、ファン−パラ変換後のスライス方向の検出素子番号SL、ファン−パラ変換後の投影番号VIEWの関数である。
【0050】
逆投影対象の画素の座標が決まると、それに応じてサイノグラム上に描く点応答軌跡が決まる。この軌跡をf(VIEW)と表すと、軌跡方向の角度Θは、arctan[f’(VIEW)]で表される。逆投影に用いるサイノグラムデータD[Θ]は、角度がΘと近い代表角度の代表サイノグラムを複数用いて、式(6)により求める。
【数6】
【0051】
式(6)中、gは、Θとθ
iとの角度差の関数である重みである。すなわちθ
iとサイノグラムデータD[Θ]の角度Θとの角度差が小さいほど大きい重みとする。式(6)の計算に用いる代表サイノグラムデータは、θ
j ≦ Θ < θ
j+1となる二つの代表角度データのみでよい。このときの重みは、例えば、クロネッカーのデルタ記号δを用いて、式(7)で表すことができる。
【数7】
【0052】
なお、軌跡方向の角度Θは、回転中心位置以外の画素では点応答軌跡f(VIEW)に沿って変化するので、上記式(6)の計算は、投影番号(ファン−パラ変換後のビュー数)毎に行われる。この様子を
図9に示す。
図9の右側に示すサイノグラム上の点応答軌跡の角度の変化に合わせて、用いる代表サイノグラムの組み合わせが異なる。例えば、点応答軌跡の角度の絶対値が最大(但し60度以下)となるサイノグラムの領域1では、−30度の補間方法で補間した代表サイノグラムと−60度の補間方法で補間した代表サイノグラムに、式(7)の重みを適用してデータを得る。また領域3では、点応答軌跡はほぼビュー方向と平行であるため、0度の補間方法で補間した代表サイノグラムが用いられる。
【0053】
次に、式(6)により求めたD[Θ]をある画素に逆投影する(S760)。逆投影の計算方法は一般的に知られており、一例として以下の方法で行うことができる。
【0054】
逆投影方向について、画素中心の座標を平行化された仮想検出器面に射影した位置(再構成したい画素位置に置いた仮想点の位置)を(CH’、 SL’)とする。上記D[Θ]は(CH、 SL)に依存するデータであるが、CH、 SLは離散的であり、補間により(CH’、 SL’)のデータを推定する必要がある。補間は、補間すべきデータ位置と補間に用いるデータ位置との距離に応じた適当な重みhを用いて、式(8)のように行う。
【数8】
【0055】
ここで、ΔCH=|CH’−CH|、ΔSL=|SL’−SL|である。式(8)では、特定の方向に沿った補間を行う必要はなく、既知のスプライン補間等を利用すればよい。なお式(6)と式(8)の補間を同時に行っても良い。この場合には、式(9)により、D[Θ]を求めることができる。
【数9】
【0056】
上述した式(6)及び(8)または式(9)を用いた処理をすべての画素とすべてのビューについて行うことで被写体の断層画像が得られる。断層画像は、モニタ等の出力装置105に表示される(S770)。
【0057】
本実施形態によれば、補間方向が異なる複数の代表サイノグラムを用意しておき、逆投影時に、画素の点応答軌跡を考慮して、画素毎にこれら代表サイノグラムのデータを重み付けして用いることにより、近似的な点応答軌跡補間を行うことができ、FFS等の欠損データの補間が必要となる技術において、画質を向上し、実効ある高密度化を実現できる。
【0058】
なお本実施形態は、FFSのみならず、データに欠損を生じる場合のすべての計測に適用することができる。例えば、X線検出器4のいずれかのX線検出素子に欠陥があり、その検出素子の部分のデータが欠損している場合にも本実施形態を適用することができる。
【0059】
また上記説明では、代表サイノグラムの代表角度の最大値が+90度、最小値が−90度の場合を示したが、代表サイノグラムの決め方は上述した実施形態に限定されず、変更が可能である。以下、データ補間部1023が代表サイノグラムを作成する際の変更例を説明する。
【0060】
<変更例1>
変更例1では、代表角度の最大値及び最小値をスキャン条件に応じた角度に設定する。
図6を参照するとわかるように、点応答軌跡の傾きの最大値Θ
maxは90度を超えることはないので、代表角度の最大値をスキャン条件に応じて90度より小さい値に設定する。スキャン条件に応じた代表角度の最大値Θ
maxは、次式(10)で求められる。なお最小値は-Θ
maxで与えられる。
【数10】
【0061】
ここで、VIEW
maxは一回転当たりのVIEW数、R
DFOVはガントリ回転中心を軸とする円柱座標で測ったときの画像視野に含まれる画素位置の最大半径である。なお、上記R
DFOVはユーザーが指定した任意の関心領域(ROI、 Region Of Interest)に含まれる画素位置の最大半径R
ROIとしても良い。
【0062】
変更例1によれば、不必要な代表サイノグラムを作成しないことで、計算負荷をさらに低減できる。また代表サイノグラム数が同一であれば、刻み角度を小さくすることにより、軌跡補間との近似度をより高めることができ、補間の精度を高めることができる。
【0063】
<変更例2>
変更例1は、スキャン条件に応じて代表角度の最大値や最小値を変更した例であるが、変更例2では、再構成フィルタの設定に応じて、代表角度の刻み角度を変更する。
【0064】
再構成フィルタは、ユーザーが画像の空間分解能などを考慮して選択する。このとき低分解能の再構成フィルタが選択されている場合には、刻み角度を大きくし代表サイノグラムの数を少なくしてもよい。また高分解能の再構成フィルタが選択されている場合には、刻み角度を小さくし、軌跡補間の精度を高めるようにしてもよい。
【0065】
なお、焦点サイズ、回転速度、ヘリカルピッチ、逐次近似応用再構成法の平滑化強度の選択についても、ユーザーが求めていると推測される画質に応じて、自動的に代表サイノグラム数を調整する機能を持たせることが可能である。要求空間分解能が高いほど、代表サイノグラム数を多くするよう調整するのは、上記と同様である。
【0066】
<変更例3>
変更例3では、補間方法を補間角度の絶対値にのみ依存する形に簡易化する。即ち、代表サイノグラムとして正負の一方(例えば正)のみを採用する。この場合には、式(2)の代わりに式(11)を用いる。
【数11】
【0067】
式(11)は+Θと-Θで同じ結果を与えるので、代表サイノグラムは正の角度(0≦θ≦Θ
max)のみ作成すればよい。
【0068】
この変更例3は、
図10に示すように、近接4点のデータのみを用いるという制限のもとで有効である。すなわち欠損データを囲む近接4点(d1〜d4)のみを考えたとき、補間方向(角度)が+Θでも−Θでも、用いるデータ及びその重みは等しくなる。この場合には、代表サイノグラムとして正の代表角度のものだけを用意しておけば、点応答軌跡の角度が正負いずれの場合にも対応することができる。
【0069】
<第二実施形態>
第二実施形態は、ユーザーの直接設定により代表サイノグラムを設定する機能を追加したことが特徴である。
【0070】
図11に、入力装置104に表示されるGUIの一例を示す。この例は、補間の程度を「弱」、「中」、「強」で指定するGUIであり、例えば、ユーザーによる画質の選択メニューの一部として表示される。補間の程度がユーザーによって選択されると、選択された補間の程度に応じて、代表サイノグラムの数を変更する。代表サイノグラムの数が多い、すなわち細かい角度刻みで代表サイノグラムが作成されているほうが、補間の精度は高くなるので、「弱」より「中」、「中」より「強」で代表サイノグラム数が多くなるように補間の程度を変更する。
【0071】
またデフォルトとして標準的な補間方法、例えばチャネル補間を設定しておき、これら補間の程度が選択されたときに、軌跡補間を行うようにしてもよい。標準的な補間方法では、サイノグラムは一通りに補間できるため、ユーザーは標準の補間方法で得た画像を確認してから、より精度の高い補間を選択することができる。
【0072】
なお、ユーザーが直接的に、代表サイノグラム数や補間角度刻み、最大補間角度を入力できるようにしてもよい。
【0073】
以上、本発明のX線撮像装置を、主としてFFSに適用した実施形態に基づき説明したが、本発明はFFSのみならず欠損データを生じており補間が必要な投影データについて適用することが可能である。また図面では、横軸をチャネル方向、縦軸をビュー方向とする二次元的なサイノグラムを示したが、横軸をスライス方向、縦軸をビュー方向とする二次元的なサイノグラムでもよいし、さらにチャネル方向とスライス方向の軸を含む三次元的なデータについても同様に適用することが可能である。
【0074】
その他、上記実施形態で示した数値は単なる例示であり、本発明を限定するものではない。