(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246947
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】電子ロットマンレンズ
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/06 20060101AFI20171204BHJP
H01Q 3/24 20060101ALI20171204BHJP
H01Q 21/08 20060101ALI20171204BHJP
H01Q 3/28 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
H01Q19/06
H01Q3/24
H01Q21/08
H01Q3/28
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-555646(P2016-555646)
(86)(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公表番号】特表2017-509250(P2017-509250A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】US2015017103
(87)【国際公開番号】WO2015134221
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2016年9月15日
(31)【優先権主張番号】14/199,126
(32)【優先日】2014年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】マール,ハリー,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】シュルト,ウオルター ビー.ジュニア.
(72)【発明者】
【氏名】ギアンヴィットリオ,ジョン ピー.
【審査官】
佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−522561(JP,A)
【文献】
特開2007−189596(JP,A)
【文献】
特開2000−124727(JP,A)
【文献】
特表2010−518757(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0029461(US,A1)
【文献】
米国特許第05812089(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/00− 3/46
H01Q 21/00− 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロットマンレンズをエミュレーティングするためにアナログ信号処理回路を動作させる方法であって、
前記アナログ信号処理回路が、複数のビームポート群に関連する複数の信号群に対して、複数の時間遅延群を適用する工程と、
前記アナログ信号処理回路が、時間遅延信号群に基づき時間遅延信号群を加算することにより、アレイ内に含まれる複数のアレイポート群による送信のための複数の出力ビーム群を成形する工程と、
を含み、時間遅延が出力ビーム群の送信方向に基づいている、方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法であって、前記アナログ信号処理回路が、スイッチングされるサンプルアンドホールド回路群を有し、当該方法がさらに、
第1系列のサンプルアンドホールド回路群が、前記複数のビームポート群に含まれる第1ビームポートを、前記アレイに含まれる第1アレイポートに結合する工程、
を含む方法。
【請求項3】
請求項2に記載された方法であって、さらに、
第2系列のサンプルアンドホールド回路群が、前記複数のビームポート群に含まれる第2ビームポートを、前記第1アレイポートに結合する工程と、
前記第1系列のサンプルアンドホールド回路群の出力を、前記第2系列のサンプルアンドホールド回路群の出力に加算する工程と、
前記加算の出力に基づいて前記第1アレイポートを駆動する工程と、
を含む方法。
【請求項4】
請求項2に記載された方法であって、さらに、
前記第1系列のサンプルアンドホールド回路群に含まれる各サンプルアンドホールド回路に対して独立的な重み付けを適用する工程、
を含む方法。
【請求項5】
請求項4に記載された方法であって、さらに、
重み付けを実行するトランジスタのゲートに接続される一定の出力をもたらすようにプログラムされたデジタルアナログ変換器(DAC)又はフローティングゲートトランジスタを用いる工程、
を含む方法。
【請求項6】
請求項1に記載された方法であって、さらに、
前記アナログ信号処理回路が、出力ビーム群の成形において、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズム及び逆高速フーリエ変換アルゴリズムを適用する工程、
を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載された方法であって、さらに、
前記アナログ信号処理回路が、前記FFTアルゴリズムの出力に対して、位相シフト及び加算マトリクスを適用する工程、
を含む方法。
【請求項8】
請求項1に記載された方法であって、さらに、
前記アレイポート群を介して信号を受信する工程と、
前記アレイポート群の各アレイポートからの信号に対して高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを適用し、前記アレイポート群の各アレイポートからの信号を周波数ビンへと分割する工程と、
各入力ビームのために、各アレイポートの周波数ビンされた信号を加算し、各周波数ビンに対して位相シフトを適用する工程と、
各入力ビーム上で逆FFTアルゴリズムを実行する工程と、
を含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載された方法であって、さらに、
第2の信号に対してFFTアルゴリズムを適用して、複数のビーム群を生成する工程と、
生成されたビーム群に対して位相シフトを適用する工程と、
位相シフトされたビーム群に対して逆FFTアルゴリズムを適用する工程と、
逆FFTアルゴリズムの1個又は複数個の出力を、出力アレイポート群を介して送信する工程と、
を含む方法。
【請求項10】
ロットマンレンズをエミュレーティングするためのシステムであって、
複数のビームポート群と、
複数のアレイポート群を有するアレイと、
アナログ信号処理回路と、
を含み、
前記アナログ信号処理回路が、複数のビームポート群の少なくとも1個のビームポートからの信号に対して、送信のために選択した方向に従って選択された複数の時間遅延群を適用することに基づいて、前記アレイポート群による送信のための出力ビームを成形するように構成されており、
前記アレイが、各アレイポートで、多重ビームポート群からの時間遅延信号を加算することにより、多重出力ビーム群を同時的に送信するように構成されている、
システム。
【請求項11】
請求項10に記載されたシステムであって、
前記アナログ信号処理回路が、前記アレイポート群に適用されビームポートで加算された複数の時間遅延群に基づいて、入力ビーム群を成形するように構成されており、
複数の時間遅延群が各アレイ素子に適用され多重入力ビーム群を同時的に成形するように前記アレイが構成され、
受信のために選択された方向に従って真の時間遅延群が選択される、
ところの、システム。
【請求項12】
請求項10に記載されたシステムであって、前記アナログ信号処理回路が、スイッチングされるサンプルアンドホールド回路群を有する、システム。
【請求項13】
請求項12に記載されたシステムであって、
第1系列のサンプルアンドホールド回路群が、前記複数のビームポート群の第1ビームポートを、前記アレイポート群の第1アレイポートに結合する、システム。
【請求項14】
請求項13に記載されたシステムであって、
第2系列のサンプルアンドホールド回路群が、前記ビームポート群の第2ビームポートを、前記アレイポート群の前記第1アレイポートに結合し、
前記第1系列のサンプルアンドホールド回路群の出力が、前記第2系列のサンプルアンドホールド回路群の出力に加算され、
前記加算の出力が前記第1アレイポートを駆動する、システム。
【請求項15】
請求項13に記載されたシステムであって、
前記第1系列のサンプルアンドホールド回路群の各サンプルアンドホールド回路に対して独立的な重み付けを適用する、システム。
【請求項16】
請求項15に記載されたシステムであって、
フローティングゲートトランジスタを用いて重み付けを実行する、システム。
【請求項17】
請求項15に記載されたシステムであって、
電流ドメイン回路及び電荷ドメイン回路のうち少なくとも1つを用いて重み付けを実行する、システム。
【請求項18】
請求項10に記載されたシステムであって、
前記アナログ信号処理回路が、出力ビームの成形において、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズム及び逆高速フーリエ変換アルゴリズムを適用するように構成されており、
前記アナログ信号処理回路が、前記FFTアルゴリズムの出力に対して、位相シフト及び加算マトリクスを適用するように構成されている、
システム。
【請求項19】
請求項10に記載されたシステムであって、
前記アレイポート群が信号を受信するように構成されており、
前記アナログ信号処理回路が、
前記アレイポート群の各アレイポートからの信号に対して高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを適用し、前記アレイポート群の各アレイポートからの信号を周波数ビンへと分割し、
各アレイポートの周波数ビンされた信号を加算し、各周波数ビンに対して位相シフトを適用し、各入力ビームのために逆FFTアルゴリズムを実行する、
ように構成されている、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子工学に関し、より詳細には、電子戦(electronic warfare (EW))に用いられるアンテナシステムなどのアンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日の電子戦環境は、時間の30%から100%、異なる方向に同時的パルスを放射するEWアンテナシステムを要求する。これらは、現在使用されている2種の基本的なEWアンテナシステムがあり、アクティブ電子走査アレイシステム(active electronically scanned array (AESA) systems)とロットマンレンズシステム(Rotman lens systems)である。
【0003】
AESAシステムは、メインアレイを対応する組の多数のサブアレイに分割することなしに異なる多重方向に多重ビームを同時に放射することはできない。メインアレイを複数のサブアレイに分割すると、各サブアレイのビームパターンが拡大し、利得そして効果的な放射電力(effective radiated power (ERP))が減少してしまう。そうして、利得の損失及び電力の分割によりターゲットを打つERPが減少する。
【0004】
ロットマンレンズシステムは、各ビームのために完全アパーチャのアレイを用いて、多重方向に多重ビームを放射できる。そうして、ターゲットを打つERPは、電力の分割により減少するだけである。しかしながら、ロットマンレンズシステムの寸法は追加的な制約を付加する。ロットマンレンズシステムは大きく、その使用が2次元応用及び偏光分岐応用に制限されてしまう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に従った方法は、アナログ信号処理回路を動作させてロットマンレンズをエミュレーティングすることに向けられている。当該方法は、アナログ信号処理回路が、複数のビームポート群に関連する複数の信号群に対して、複数の時間遅延群を適用する工程と、アナログ信号処理回路が、時間遅延信号群に基づき時間遅延信号群を加算することにより、アレイ内に含まれる複数のアレイポート群による送信のための複数の出力ビーム群を成形する工程とを含み、時間遅延が出力ビーム群の送信方向に基づいている。
【0006】
他の実施形態に従ったシステムは、複数のビームポート群と、複数のアレイポート群を有するアレイと、アナログ信号処理回路とを含み、該アナログ信号処理回路が、複数のビームポート群の少なくとも1個のビームポートからの信号に対して、送信のために選択した方向に従って選択された複数の時間遅延群を適用することに基づいて、アレイポート群による送信のための出力ビームを成形するように構成されている。アレイが、各アレイポートで、多重ビームポート群からの時間遅延信号群を加算することにより、多重出力ビーム群を同時的に送信するように構成されている。
【0007】
本発明の技術を通じて追加的な特徴及び利点が実現される。本発明の他の実施形態及び特徴が本明細書において詳細に記述されており、それらは特許請求の範囲の一部であると考えられる。利点及び特徴を有する本発明をより良く理解するために、詳細な説明及び図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示をより完璧に理解することのために、添付図面と関係する上記図面の簡単な説明と、以下の詳細な説明を参照されたい。同様な参照符号は同様な要素を表している。
【0009】
【0010】
【
図2A】時間ドメインベースのビーム成形システムを示している。
【0011】
【
図2B】周波数ドメインベースのビーム成形システムを示している。
【0012】
【0013】
【
図4】例示的な方法のフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明及び図面において、素子(elements)間の様々な接続が説明されることに注意されたい(これらの内容は参照として本開示に含まれる)。これらの接続は、概して、特にことわりのないかぎり、直接接続でも間接接続でもよく、本明細書はこの点で限定的であることを意図していない。この点において、素子(entities)間の結合は、直接又は間接接続を意味する。
【0015】
装置、システム及び方法の例示的な実施形態を以下に説明するが、それらは、電子戦(EW)システムなどのシステムの寸法、重量及び電力を減少させたアナログ信号処理を利用する。本実施形態の実施は、寸法を従来のロットマンレンズの約100分の1(0.01)とすることができ、二重偏光のために方位角(azimuth)、及び仰角又は俯角(elevation)において用いることができる。本実施形態のアナログ信号処理は、従来のアクティブ電子走査アレイ(AESA)システムにおいて用いられたビーム指向案よりも数桁速く、モジュラー形式であり拡張可能である。
【0016】
ある実施形態において、第1レベルの電子ロットマンレンズが1以上の追加的なレベルを提供し、結果としての多重レベル提供が大きなアレイを照射する。ビームが完全な視野(FoV)に亘って連続的に操作できるように、レンズ又はレベルが配列される。
【0017】
ある実施形態において、アナログ信号処理回路(例えば、集積回路(IC))が、無線周波数(RF)で、マトリクスベースの時間遅延計算を可能にする。これらの回路は、アレイポート群が回路の内部及び外部に供給される電子ロットマンレンズの生成を可能にする。これらの回路は、動作帯域まで周波数独立であるいくつかの又は全てのアレイポート群を用いて、多重方向に同時にビーム群を成形できる。このようにして、光学/物理ベースのロットマンレンズ又は光学的レンズよりも数桁小型でありかつ数桁パワーのある、効果的なロットマンレンズが提供される。
【0018】
ある実施形態において、アナログサンプル空間内でのビーム成形を可能にする回路が用いられる。ビーム成形計算は空間−時間ビーム成形が可能であり、多重時間サンプルはビーム指向に複雑な重み付けをすることのために用いることができる。回路は、広帯域であり周波数独立である。回路は、製作したICにおいて4GHzまでの無線周波数(RF)で動作し、電流ノードでのシミュレーションにおいてX−bandまで動作する。回路に接続して使用されるRF周波数はムーアの法則に従ってスケールアップ可能である。すなわち、時間に亘り同一の回路の実際の面積又はスペースと同様な処理増大を可能とする。
【0019】
ロットマンレンズは、以下の形式のマトリクス乗算としてモデル化することができる。
,
ここに、A
1; A
2; . . . A
m は、アレイ(例えばアンテナアレイ)内のm個の放射器群への入力を表している。B
1; B
2; . . . B
n は、ビーム成形動作のための入力又はソースとして機能するn個のビーム群を表している。マトリクスτ
1,1; τ
1,2; . . . τ
1,n; τ
2,1; τ
2,2; . . . τ
2,n; . . . τ
m,1; τ
m,2; . . . τ
m,n は、入力ビーム群Bを放射器群Aにマッピングするのを促進するのに用いるパラメータを表しており、入力ビーム群Bをビーム成形又はビーム形状付けすることに用いられる。
【0020】
m個の放射器群Aは、所与の応用環境に要求される分解能又は鮮明度に基づいて選択される。mの値が大きいほど、ビーム群をより鮮明にし、それにつれてより積極的な干渉が得られる。n個のビーム群Bは、応用環境において潜在的に興味ある多数の対象又は脅威に基づいて選択される。
【0021】
図1を参照すると、システム100が示されている。システム100は、上述のマトリクス乗算の原理を示すのに用いることができる。特に、ビームポート102に関連するビーム群Bが、複数のアレイ群又はアレイ素子群Aを含むアレイポート104へ伝達される。所与の1個の入力ビームB(例えばB
1)は、第1のアレイ(例えばA1)と第2のアレイ(例えばA2)に到達するのに異なる特性(例えば通過距離)を経験する。これらの異なる特性(例えば‘τ’)は、アレイ群から(最終的に)出現するビームの方向を設定するのに用いられ或いは利用される。これらの特性は、動作周波数に(少なくとも第一次近似において)依存せず、広帯域動作を可能にする。
図1において、αは、第m番目のポートから生成されるパターンの指向を表しており、dは、素子間の分離距離を表している。
【0022】
図2Aを参照すると、システム200が示されている。システム200は、アナログ信号プロセッサなどの信号処理器の一部として実現できるものである。システム200は、時間ドメインにおいてマトリクス乗算を行うことにより、ロットマンレンズをエミュレーティングする。システム200は、そのような乗算を、実時間内で或いは実質的に実時間内で演算することができる。
【0023】
システム200の出力は複数の放射器アレイ群又はアレイ素子群A
1; A
2; . . . A
m に対応する。出力群A
1; A
2; . . . A
m の各々は、入力ビーム群B
1; B
2; . . . B
n の関数として駆動される。この点に関して、各入力ビームBの寄与が加算されて、所与の出力Aをもたらす。
【0024】
サンプルアンドホールド回路群(Sample-and-hold (S/H) circuits)が、増幅器群とも組合せ可能であり(S/H & A)、入力ビーム群Bを出力アレイ群Aへとマッピングする。S/H回路群又はS/H & A回路群は、連続的な信号群を離散的な時間信号群又は離散的な時間サンプル群へと変換する。
図2Aの実施形態で示されているように、一連の又は一系列のスイッチングされるS/H回路群又はS/H & A回路群が用いられ、真の時間遅延を実行し、広帯域に亘って多重同時ビーム群の提供を可能にする。一実施形態において、信号路へスイッチングされるS/H回路群又はS/H & A回路群の個数は、ビームを正確に成形するのに必要な真の時間遅延の量に基づいて選択される。例として、もしS/H回路群又はS/H & A回路群が1ナノ秒(ns)でクロックされ、10ナノ秒の真の時間遅延を生成するのが望ましいのであれば、10個のS/H回路群又はS/H & A回路群が含まれる或いはスイッチングされるであろう。
【0025】
システム200は重み(W*)を含む。重みW*は、狭帯域及び適応ソリューションのために印加される。例えば、重みW*は、時間−空間適応ビーム成形の目的のために用いられる。
【0026】
重みW*の重み付けは、一又はそれ以上の形式で実行することができる。例えば、重みW*は、オペアンプ回路、フローティングゲートトランジスタ回路等を用いて、重み付けすることができる。ある実施形態において、トランジスタのゲートに一定の電荷を維持するのに如何なる技法をも用いることができ、例えば、トランジスタのゲートに接続された(wired)一定出力を有するようにプログラムされたデジタルアナログ信号変換器(DAC)などを用いることができる。
【0027】
図2Bを参照すると、システム250が示されている。システム250は、アナログ信号処理器などの信号処理器の一部として実施することができる。システム250は、後述するように、周波数ドメイン技法に基づいて、ロットマンレンズビーム指向をエミュレーティングする。
【0028】
システム250は、複数の放射器アレイ群又はアレイ素子群A
1; A
2; . . . A
m を含む。アレイ素子A
1; A
2; . . . A
m は、入来する信号群を受信するように配列される。アナログ高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズム254が入来信号群に適用されて、アレイポート群A
1; A
2; . . . A
m の各ポートからの信号を複数の周波数成分又は複数の周波数ビン(bin)に分割する。各ビームB
1; B
2; . . . B
n のためのブロック260内で、各アレイポートの周波数ビンされた信号群が加算され、且つ位相シフトされ或いは各周波数ビンに対して周波数依存重み付けが適用される。各ビームB
1; B
2; . . . B
n に対して逆高速フーリエ変換(IFFT)アルゴリズム268が実行される。
【0029】
システム250を受信信号に関して説明した。上述の動作の逆を実行して信号伝送を支持することができることは、当業者に理解されるであろう。
【0030】
図3を参照すると、一又は数実施形態に従った重み付け回路300が示されている。特に、
図2Aに関連する重み群W*などの1個又はそれ以上の個数の重み付けを実行するために重み付け回路300を用いることができる。
【0031】
T重み付け回路300は、多数の入力電流群(例えば、I
in1, I
in2, I
in3)に関連する多数の入力トランジスタ群306(例えば、フローティングゲートトランジスタ)を含む。重み付け回路300は、多数の出力電流群(例えば、I
out1, I
out2, I
out3, I
out4)に関連する多数の出力トランジスタ群308(例えば、フローティングゲートトランジスタ)を含む。重み付け回路300は、入力トランジスタ群306と出力トランジスタ群308とを結合する多数のフォロワー又は比較器310を含む。
【0032】
回路300は、入力電流群の重み付け加算として、出力電流群の各々を生成するように構成される。例えば、出力電流群は以下の式で計算される。
,
ここに、中央の[w
11, w
12, … w
43]マトリクスは、重み群又は重み付け要素群に対応する。
【0033】
重み[w
11, w
12, … w
43]の各々は、出力トランジスタ308のゲート電圧の指数を、入力トランジスタ306のゲート電圧の指数で除算した比として表現されている。W
11を例にとると、W
11は以下のように表現される。
e
Vfg11 / e
Vfga ,
ここで、電圧V
fg11 及び V
fgaは、
図3に示すように位置づけられる。他の重み群w
12, … w
43 についても同様な例を作ることができる。
【0034】
重み付け回路300は、電流ドメイン技法に関して実施されるものとして示された。重み付け実行のために、他のタイプのドメイン又は技法も用いることができる。例えば、当業者に知られている電荷ドメイン回路又は技法をある実施形態において用いることができる。
【0035】
図4を参照すると、例示的な方法400のフローチャートが示されている。方法400は、本明細書で記述したような1つ又はそれ以上のデバイス、成分、又はシステムに関連して実行することができる。方法400は、マトリクス動作(例えば、乗算及び加算)を実行して1つ又はそれ以上のビームを成形するために用いられる。
【0036】
ブロック402において、入力仕様が受信される。入力仕様は、必要な入力ビーム群Bの個数n、及び必要なアレイ又はアレイ素子群Aの個数mなどの要求を含み得る。
【0037】
ブロック404において、出力ビーム群の方向が選択される。方向は、潜在的に興味のある特定の標的又は場面又は地理学的位置の認識に基づいて選択される。
【0038】
ブロック406において、ブロック402及び404で確立されたクライテリアに従って出力ビーム群を成形するために、1個又はそれ以上の個数のパラメータが選択される。例えば、ブロック406の一部として、S/H回路群又はS/H & A回路群に結合した1個又はそれ以上の個数のスイッチ群に関連した状態(例えば、開路又は閉路)が選択される。S/H回路群又はS/H & A回路群に関連する重み群W*をブロック406の一部として選択することができる。
【0039】
ブロック408において、アレイ群又はアレイ素子群により出力ビーム群が送信され或いは放射される。
【0040】
本開示の実施形態は、機能性又は能力を送信及び受信するためのビーム成形を可能にする。ある実施形態において、多重ビーム群が同時に多重方向に生成され、そのようなビーム群を提供するのに用いる素子群又は要素群は周波数に依存しないものとすることができる。ある実施形態において、二重偏光の完全アレイを用いてビーム群が同時に送受信され、目標とする偏光に整合した効果的な放射電力(effective radiated power (ERP))を増大する。多重同時ビーム群を使用することにより、各ビームが完全アレイを使用できるので、自動電力管理をビームごとに提供可能にする。ビーム群は、フロントエンドで、Kuバンドまでの高周波数でアナログで成形される。ビーム群の本数及びアレイ素子群又はアレイ要素群の個数とともに有意にスケールアップさせることのない、小寸法、重量、電力及びコスト(SWAP-C)構成に従ってビーム成形が達成される。
【0041】
一実施形態において、所与の信号を採用し、スイッチングされる容量回路群を用いてアレイ素子(ポート)ごとの一意の時間遅延を創成することにより、一本又はそれ以上の出力ビーム群が成形される。一組のアレイ素子(ポート)群にマッピングされる一組の一意の時間遅延群を、単一の送信(出力ビーム)に関連づけることができる。それにより、一本のビームを成形するのに一組の時間遅延群が用いられる。一組のアレイポート群にマッピングされる多重組の時間遅延群を適用し、各アレイポートにおいてこれらの時間遅延信号群を加算することにより、多重同時ビーム群が成形される。
【0042】
一実施形態において、一組のアレイポート群から来る信号群を受信し、スイッチングされる容量回路群を用いて時間遅延を適用することができる。この実施形態に関して、各アレイポート信号に対して適用する時間遅延として一組の時間遅延群を定義する。一組のアレイポート群に適用されるこの一組の時間遅延群によって、受信(入力ビーム)におけるビームの成形が可能になる。同じ一組のアレイポート群に対して一意の一組の時間遅延群を適用することにより、多重同時入力ビーム群が創成され或いは生成される。
【0043】
ある実施形態において、所与の位置において、且つ/或いは、一つ又はそれ以上の装置、システム又はデバイスの動作に関して、多数の機能又は作用が生じ得る。例えば、第1のデバイス又は位置において、所与の機能又は作用の一部が実行され、1個又はそれ以上の個数の追加的なデバイス又は位置において、該機能又は作用の残部が実行される。
【0044】
特許請求の範囲内の機能手段構成要素又は機能工程構成要素に対応する構造、材料、作用及び均等物は、特定的に請求した他の請求項構成要素と連携して機能を実行するためのあらゆる構造、材料又は作用を含むことを意図している。例示的及び記述的目的のために本発明の説明をしてきたが、本発明は開示された形態で尽くされたりそれに限定されることは意図していない。本発明の範囲及び真意から逸脱せずに、多くの修正及び変形が当業者に明らかである。本発明の原理及び実際的な応用を最良に説明するために、且つ、期待される特定用途に適する様々な修正を伴う様々な実施形態に向けた本発明を当業者が理解可能となるようにするために、実施形態を選択し説明した。
【0045】
本発明の好適な実施形態を説明してきたが、当業者が後続の特許請求の範囲内に収まる様々な改良及び増強を、現在及び将来において、なし得ることを理解されたい。特許請求の範囲は、ここで初めて開示した本発明の適正な保護を維持するように解釈すべきである。