特許第6246960号(P6246960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6246960
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】船舶の推進装置及び船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 1/08 20060101AFI20171204BHJP
   B63H 5/08 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B63B1/08 Z
   B63H5/08
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-11688(P2017-11688)
(22)【出願日】2017年1月25日
【審査請求日】2017年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 大輔
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−150983(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/095774(WO,A1)
【文献】 特開2011−098678(JP,A)
【文献】 特開昭59−075885(JP,A)
【文献】 特開2016−097687(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0232158(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/140357(WO,A1)
【文献】 特開2011−025918(JP,A)
【文献】 特開2011−168251(JP,A)
【文献】 実開平01−128489(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/08
B63H 5/08 − 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船尾に船体の長手方向に沿うと共に前記船体の幅方向に所定間隔を空けて回転自在に支持される左舷プロペラシャフト及び右舷プロペラシャフトと、
前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトの軸方向の先端部にそれぞれ固定される左舷プロペラ及び右舷プロペラと、
前記船尾に設けられて前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトを回転自在に支持する左舷シャフトブラケット及び右舷シャフトブラケットと、
前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラより前記船体の後方に配置される舵と、
前記左舷プロペラシャフトと前記右舷プロペラシャフトとの間で船底に配置されるスケグと、
を備え、
前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトが前記船尾から外部に突出する位置と前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラの中心までの前後距離をL1とし、
前記左舷プロペラの中心及び前記右舷プロペラの中心からL1/2前方へ移行した中間位置における前記スケグの最下端位置での幅をb1、前記中間位置における前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトの軸心位置での前記スケグの幅をb2としたとき、
b1≦b2に設定され、
前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラの直径をDpとしたとき、前記船体の幅方向の中心側における前記左舷プロペラの先端と前記右舷プロペラの先端との最短距離dは、0<d≦0.2Dpに設定され、
前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラのそれぞれの回転方向は、前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラの上部において前記船体の外側から幅方向の中心側に向かって回転する内回りに設定される、
ことを特徴とする船舶の推進装置。
【請求項2】
前記スケグは、前記中間位置にて、最下端位置と前記軸心位置との間に幅b1及び幅b2より幅の広い膨出部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の船舶の推進装置。
【請求項3】
前記スケグは、前記中間位置にて、前記船底から下方に向けて幅が小さくなる先細形状をなすことを特徴とする請求項1に記載の船舶の推進装置。
【請求項4】
前記スケグは、前記中間位置にて、最下端位置が前記船体の幅方向の中心側に接近する両側の傾斜面が設けられることを特徴とする請求項3に記載の船舶の推進装置。
【請求項5】
前記スケグは、前記中間位置にて、前記船底から下方に向けて幅が同じになる同幅形状をなすことを特徴とする請求項1に記載の船舶の推進装置。
【請求項6】
前記スケグは、前記船底における船幅方向の中心部の後部側が水平方向に延出し、途中から後方に向けて上方に湾曲した形状をなし、前記船底に沿った水平面から後方に向けて上方に湾曲した湾曲面への変曲位置は、前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラの中心から前記中間位置までの領域に設けられることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の船舶の推進装置。
【請求項7】
前記スケグと前記船底の最下端形状は、前記船底側から見て前記船体の幅方向の中心側に向けて凹んだ凹形状をなすことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の船舶の推進装置。
【請求項8】
前記左舷プロペラシャフトと前記右舷プロペラシャフトは、軸心間距離が前記船体の後方に行くほど大きくなるように設定されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の船舶の推進装置。
【請求項9】
前記左舷プロペラシャフトと前記右舷プロペラシャフトは、前記船底から軸心までの高さが前記船体の後方に行くほど小さくなるように設定されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の船舶の推進装置。
【請求項10】
前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラの直径をDpとしたとき、前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトの軸心位置における前記左舷プロペラの中心及び前記右舷プロペラの中心から前記舵の前縁までの距離L2は、0<L2≦1.0Dpに設定されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の船舶の推進装置。
【請求項11】
前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラより前記船体の後方に左舷舵及び右舷舵がそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の船舶の推進装置。
【請求項12】
前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトは、船尾管から前記船体の外方部に突出した中間部が左舷中間シャフトブラケット及び右舷中間シャフトブラケットにより回転自在に支持されることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の船舶の推進装置。
【請求項13】
前記左舷中間シャフトブラケット及び前記右舷中間シャフトブラケットは、前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトを回転自在に支持する筒状支持部と、前記筒状支持部から上方に向けてV字状に延びて上端が前記船尾に連結される複数のストラットから構成されることを特徴とする請求項12に記載の船舶の推進装置。
【請求項14】
前記左舷中間シャフトブラケット及び前記右舷中間シャフトブラケットは、前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトを回転自在に支持する筒状支持部と、前記筒状支持部から鉛直方向の上方に向けて真っ直ぐ延びて上端が前記船尾に連結されるそれぞれ1本のストラットから構成されることを特徴とする請求項12に記載の船舶の推進装置。
【請求項15】
前記左舷中間シャフトブラケット及び前記右舷中間シャフトブラケットは、前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトを回転自在に支持する筒状支持部と、前記筒状支持部から横方向に向けて真っ直ぐ延びて先端が前記スケグに連結されるそれぞれ1本のストラットから構成されることを特徴とする請求項12に記載の船舶の推進装置。
【請求項16】
前記左舷中間シャフトブラケット及び前記右舷中間シャフトブラケットは、前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトを回転自在に支持する筒状支持部と、前記筒状支持部から斜め方向に向けて真っ直ぐ延びて先端が前記スケグに連結されるそれぞれ1本のストラットから構成されることを特徴とする請求項12に記載の船舶の推進装置。
【請求項17】
前記左舷中間シャフトブラケット及び前記右舷中間シャフトブラケットは、前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトが前記船尾管から前記船体の外方部に突出する位置と前記中間位置との間の領域に設けられることを特徴とする請求項12から請求項16のいずれか一項に記載の船舶の推進装置。
【請求項18】
前記スケグと前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトの間は、前記スケグの両側を上昇する水流が前記スケグに邪魔されずにスムースに流れることを可能とするように開放されていることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の船舶の推進装置。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の船舶の推進装置を備えることを特徴とする船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本のプロペラシャフトとセンタースケグを備える船舶の推進装置、この船舶の推進装置を搭載した船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な船舶の推進装置は、主機によりプロペラを回転させて推進力を得るものであり、一つの主機と一つのプロペラとを備える一軸船では、船舶が大型化すると、一基のプロペラに作用する荷重度が増加し、十分な推進力を得るためには、プロペラの回転速度を高めたり、プロペラの径を大きくしたりする必要がある。すると、プロペラの周速が速くなるので、プロペラ翼端近傍の圧力が下がって水中に気泡が生じる現象であるキャビテーションが過大に発生することがある。キャビテーションが発生すると、船尾船底を通じて船体が振動する。また、キャビテーションによりプロペラにエロージョンが生じることがあり、プロペラの耐久性に悪影響を及ぼしてしまう。
【0003】
そこで、二つの主機と二つのプロペラとを備える二軸船を適用することが知られている。二軸船は、一つ当たりのプロペラの荷重度が低減されてプロペラ効率が向上し、キャビテーション発生を抑制することができる。二軸船の推進装置としては、オーバーラッピングプロペラ(OLP;Overlapping Propellers)方式やインターロックプロペラ方式などがある。このような船舶の推進装置としては、下記特許文献1,2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−098678号公報
【特許文献2】特開2016−097687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述したOLP方式を用いた推進装置では、後方に配置されたプロペラは、1回転する間に前方のプロペラによって加速された速い流れと船幅方向中心の近傍の遅い流れの中を交互に通過する。そのため、後方のプロペラのプロペラ翼に掛かる荷重が大きく変動する。すると、OLP方式を用いた二軸船は、一軸船と比較して、後方のプロペラのプロペラ軸のベアリングに作用するベアリングフォースが過大となるおそれがある。また、OLP方式を用いた二軸船は、前方のプロペラの回転により、速度の速い回転流が新たに形成されるため、後方のプロペラは非常に複雑な流れの中で動作する必要があり、キャビテーションが発生する範囲が広がってしまう。すると、過大な振動が発生するおそれがある。更に、前方のプロペラのプロペラ翼の先端からチップボルテックスキャビテーションを発生した場合、発生した気泡が後方のプロペラのプロペラ翼面上で破裂するなどして、そのプロペラ翼にエロージョンを発生させるおそれもある。
【0006】
一方、インターロックプロペラ方式を用いた推進装置では、一方のプロペラの翼と他方のプロペラの翼とが干渉しないように、双方のプロペラの回転を制御しなければならず、回転制御が困難となる。そして、一方のプロペラの翼と他方のプロペラの翼とが干渉すると、各プロペラを損傷させてしまう。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、キャビテーションやエロージョンなどの発生を抑制する一方で、推進性能を向上させる船舶の推進装置及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の船舶の推進装置は、船尾に船体の長手方向に沿うと共に前記船体の幅方向に所定間隔を空けて回転自在に支持される左舷プロペラシャフト及び右舷プロペラシャフトと、前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトの軸方向の先端部にそれぞれ固定される左舷プロペラ及び右舷プロペラと、前記船尾に設けられて前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトを回転自在に支持する左舷シャフトブラケット及び右舷シャフトブラケットと、前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラより前記船体の後方に配置される舵と、前記左舷プロペラシャフトと前記右舷プロペラシャフトとの間で船底に配置されるスケグと、を備え、前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトが前記船尾から外部に突出する位置と前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラの中心までの前後距離をL1とし、前記左舷プロペラの中心及び前記右舷プロペラの中心からL1/2前方へ移行した中間位置における前記スケグの最下端位置での幅をb1、前記中間位置における前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトの軸心位置での前記スケグの幅をb2としたとき、b1≦b2に設定される、ことを特徴とするものである。
【0009】
従って、スケグを最下端位置に向けてその幅を同じかまたは狭く設定することで、スケグの両側を上昇する水流がスケグに邪魔されずにスムースに流れることとなり、船体抵抗を低減しつつ、プロペラ面内における船幅方向Wの中心位置の近傍での上昇流を効率良く回収して推進性能向上を図ることができる。
【0010】
本発明の船舶の推進装置では、前記スケグは、前記中間位置にて、最下端位置と前記軸心位置との間に幅b1及び幅b2より幅の広い膨出部が設けられることを特徴としている。
【0011】
従って、スケグの両側を上昇する水流がスケグに邪魔されずに膨出部に沿ってスムースに流れることとなり、船体抵抗を低減しつつ、プロペラ面内における船幅方向Wの中心位置の近傍での上昇流を効率良く回収して推進性能向上を図ることができる。
【0012】
本発明の船舶の推進装置では、前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラの直径をDpとしたとき、前記船体の幅方向の中心側における前記左舷プロペラの先端と前記右舷プロペラの先端との最短距離dは、0<d≦0.2Dpに設定されることを特徴としている。
【0013】
従って、左舷プロペラ及び右舷プロペラを船体の幅方向の中心側に近接して配置することとなり、幅方向の中心部の上昇流を効率良く回収することができ、推進性能を向上することができる。また、左舷プロペラ及び右舷プロペラは、インターロックプロペラ方式のように互いに干渉することもなく、船体を容易に製造することが可能となる。そして、左舷プロペラと右舷プロペラを並列で配置することで、OLP方式に比較して後方プロペラにおけるベアリングフォース過大、キャビテーション範囲拡大、エロージョンの発生などのリスクを大幅に抑制することができる。
【0014】
本発明の船舶の推進装置では、前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラのそれぞれの回転方向は、前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラの上部において前記船体の外側から幅方向の中心側に向かって回転する内回りに設定されることを特徴としている。
【0015】
従って、左舷プロペラと右舷プロペラは、上昇流の発生領域と重なる領域の範囲で、効率良く上昇流を回収することができ、推進性能をより向上させることができる。
【0016】
本発明の船舶の推進装置では、前記左舷プロペラシャフトと前記右舷プロペラシャフトは、軸心間距離が前記船体の後方に行くほど大きくなるように設定されることを特徴としている。
【0017】
従って、左舷プロペラ及び右舷プロペラを回転させるための主機を船体の幅方向の中心側に設置することができ、船尾を痩せさせることが可能となり、船体抵抗を低減することができる。
【0018】
本発明の船舶の推進装置では、前記左舷プロペラシャフトと前記右舷プロペラシャフトは、船底から軸心までの高さが前記船体の後方に行くほど小さくなるように設定されることを特徴としている。
【0019】
従って、左舷プロペラ及び右舷プロペラを回転させるための主機と船底からの高さを増加することができ、船尾を痩せさせることが可能となり、船体抵抗を低減することができる。
【0020】
本発明の船舶の推進装置では、前記左舷プロペラ及び前記右舷プロペラの直径をDpとしたとき、前記左舷プロペラシャフト及び前記右舷プロペラシャフトの軸心位置における前記左舷プロペラの中心及び前記右舷プロペラの中心から前記舵の前縁までの距離L2は、0<L2≦1.0Dpに設定されることを特徴としている。
【0021】
従って、左舷プロペラ及び右舷プロペラの前縁を舵に近づけることができ、左舷プロペラ及び右舷プロペラからの後流を舵面に確実に当てることができ、舵効き及び推進性能を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の船舶は、前記船舶の推進装置を備えることを特徴とするものである。
【0023】
従って、船体抵抗を低減しつつ、プロペラ面内における船幅方向Wの中心位置の近傍での上昇流を効率良く回収して推進性能向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の船舶の推進装置及び船舶によれば、船体抵抗を低減しつつ、プロペラ面内における船幅方向Wの中心位置の近傍での上昇流を効率良く回収して推進性能向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、第1実施形態の船舶の推進装置が装着された船尾を表す側面図である。
図2図2は、船舶の推進装置が装着された船尾を表す平面図である。
図3図3は、図1のIII−III断面図である。
図4図4は、図1のIV−IV断面図である。
図5図5は、プロペラチップ間距離/プロペラ直径に対する推進性能指標を表すグラフである。
図6図6は、船速に対する必要馬力を表すグラフである。
図7図7は、第2実施形態の船舶の推進装置が装着された船尾を表す概略図である。
図8図8は、第3実施形態の船舶の推進装置が装着された船尾を表す側面図である。
図9図9は、船舶の推進装置が装着された船尾を表す平面図である。
図10図10は、第4実施形態の船舶の推進装置が装着された船尾を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る船舶の推進装置及び船舶の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0027】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の船舶の推進装置が装着された船尾を表す側面図、図2は、船舶の推進装置が装着された船尾を表す平面図、図3は、図1のIII−III断面図、図4は、図1のIV−IV断面図である。
【0028】
第1実施形態において、図1及び図2に示すように、船舶11は、二軸船であって、船体12の船尾13に推進装置14を搭載している。この推進装置14は、左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22と、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24と、左舷シャフトブラケット25及び右舷シャフトブラケット26と、左舷舵27及び右舷舵28と、センタースケグ29とを備えている。
【0029】
ここで、船舶11は、推進装置14により前進及び後退が可能であり、船舶11が前進する方向を船体12の前方Fと称し、船舶11が後退する方向を船体12の後方Rと称し、船体12の前方Fと後方Rに平行な方向を船体12の船長方向Lと称する。また、船体12の前方F及び後方Rに直交する船体12の水平方向を船幅方向Wと称し、船体12の前方F及び後方Rに直交する船体12の鉛直方向を船高方向Hと称する。
【0030】
船体12は、後部側が船底15(ベースラインBL)から後方Rに向けて上方に湾曲した形状をなし、船尾13が設けられている。また、船体12は、船幅方向Wの中心部の後部側が船尾13の後方Rの位置で船底15から後方Rに向けて上方に湾曲した形状をなし、センタースケグ29が設けられている。そして、船尾13におけるセンタースケグ29の両側に左舷舵27と右舷舵28がそれぞれ設けられている。
【0031】
左舷プロペラ23は、船尾13の船底15の左舷側の下方に設けられている。左舷プロペラ23は、左舷プロペラシャフト21における軸方向の一端部に接続されている。船体12は、左舷側の内部に左舷主機(例えば、ディーゼルエンジン)31が設置されている。左舷プロペラシャフト21は、軸方向の他端部が船底15に設けられた船尾管32を通して船体12の内部に挿通され、左舷主機31に接続されている。そのため、左舷主機31は、左舷プロペラシャフト21を介して左舷プロペラ23を回転することができる。
【0032】
右舷プロペラ24は、船尾13の船底15の右舷側の下方に設けられている。右舷プロペラ24は、右舷プロペラシャフト22における軸方向の一端部に接続されている。船体12は、右舷側の内部に右舷主機(例えば、ディーゼルエンジン)33が設置されている。右舷プロペラシャフト22は、軸方向の他端部が船底15に設けられた船尾管34を通して船体12の内部に挿通され、右舷主機33に接続されている。そのため、右舷主機33は、右舷プロペラシャフト22を介して右舷プロペラ24を回転することができる。
【0033】
左舷プロペラシャフト21は、船尾管32から船体12の外方に突出した後端部が、左舷プロペラ23の前方の位置で、左舷シャフトブラケット25により回転自在に支持されている。また、右舷プロペラシャフト22は、船尾管34から船体12の外方に突出した後端部が、右舷プロペラ24の前方で、右舷シャフトブラケット26により回転自在に支持されている。各シャフトブラケット25,26は、図3に示すように、各プロペラシャフト21,22を回転自在に支持する筒状支持部25a,26aと、この筒状支持部25a,26aから上方に向けてV字状に延びて上端が船尾13に連結された複数(本実施形態では、2本)のストラット25b,25c,26b,26cとから構成されている。
【0034】
図1及び図2に示すように、左舷プロペラシャフト21と右舷プロペラシャフト22は、軸心間距離が後方Rに行くほど大きくなるように設定されている。即ち、左舷プロペラシャフト21は、軸心位置O1が後方Rに行くに伴って船幅方向Wの中心位置Cから離間する方向(左舷側)に向かって傾斜して配置されている。また、右舷プロペラシャフト22は、軸心位置O2が後方Rに行くに伴って船幅方向Wの中心位置Cから離間する方向(右舷側)に向かって傾斜して配置されている。また、左舷プロペラシャフト21と右舷プロペラシャフト22は、船底15から軸心位置O1,O2までの高さが後方Rに行くほど小さくなるように設定されている。即ち、左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22は、軸心位置O1,O2が後方Rに行くに伴って船底15側に向かって傾斜して配置されている。
【0035】
本実施形態にて、図1及び図4に示すように、左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22が船尾13(船体12)から外部に突出する位置P1と左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24の中心P2までの前後距離をL1とする。また、左舷プロペラ23の中心P2及び右舷プロペラ24の中心P2からL1/2だけ前方Fへ移行した中間位置P3におけるセンタースケグ29の最下端位置での幅をb1とする。更に、中間位置P3における左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22の軸心位置O1,O2の高さでのセンタースケグ29の幅をb2とする。この場合、中間位置P3にて、センタースケグ29の最下端位置と左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22の軸心位置O1,O2とは、高さhとなっている。このとき、b1≦b2に設定されている。
【0036】
即ち、センタースケグ29は、船底15における船幅方向Wの中心部の後部側が水平方向に延出し、途中から後方Rに向けて上方に湾曲した形状をなしている。ここで、センタースケグ29は、船底15に沿った水平面から後方Rに向けて上方に湾曲した湾曲面への変曲位置は、左舷プロペラ23の中心P2及び右舷プロペラ24の中心P2からL1/2だけ前方Fへ移行した中間位置P3までの領域に設けられている。また、センタースケグ29は、船尾13の下面から船高方向Hの下方に向けてその幅が小さくなる(船幅方向Wの厚さが薄くなる)先細形状となっている。即ち、センタースケグ29は、船高方向Hに対して下方が中心位置C側に接近する船長方向Lに沿う傾斜面29a,29bと、各傾斜面29a,29bの下端部で交差する水平な水平面29cとから構成されている。このような形状のセンタースケグ29を採用することで、船体抵抗を低減しつつ、プロペラ面内における船幅方向Wの中心位置Cの近傍での上昇流を効率良く回収して推進性能向上を図ることができる。
【0037】
なお、センタースケグ29は、b1<b2に設定することで、先細形状をなすが、b1=b2に設定することで、船尾13の下面から下方に向けて同幅形状としてもよい。この場合、傾斜面29a,29bは、鉛直面となる。また、各傾斜面29a,29bと水平面29cとの交点に湾曲面を設けてもよく、この場合、センタースケグ29の最下端位置での幅b1は、各傾斜面29a,29bと湾曲面との変曲位置の幅である。
【0038】
また、図3に示すように、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24は、互いのプロペラ翼が干渉しない程度の距離を隔てて船幅方向Wの中心位置Cに対して左右対称に配置されている。即ち、本実施形態の船舶11は、OLP方式やインターロックプロペラ方式ではなく、左舷プロペラ23と右舷プロペラ24とを船幅方向Wに並列させた方式となっている。
【0039】
即ち、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24のプロペラ直径をDpとする。また、船幅方向Wの中心位置C側における左舷プロペラ23の先端と右舷プロペラ24の先端との最短距離(プロペラチップ間距離)をdとする。このとき、0<d≦0.5Dp、好ましくは、0<d≦0.2Dpに設定されている。なお、ここで、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24のプロペラ直径Dpは、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24が回転したときの最外周位置での回転直径である。このプロペラチップ間距離dは、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24におけるプロペラ翼同士に接触のおそれがなく、且つ、上昇流を捉えられるように左舷プロペラ23と右舷プロペラ24とを船幅方向Wの中心位置Cにできるだけ近づけて配置できるように、なるべく小さく設定するのが好ましい。
【0040】
具体的に、本実施形態の船舶11は、左舷プロペラ23と右舷プロペラ24とを並列させた方式とするため、プロペラチップ間距離dを、0mより大きく、好ましくは、0.1m以上とするのがよい。これは、加工誤差や組み立て誤差を考慮しても、左舷プロペラ23と右舷プロペラ24とが干渉しないようにするためである。また、プロペラチップ間距離dは、好ましくは1.0m以下、より好ましくは0.5m以下に設定する。これは、プロペラチップ間距離dをなるべく小さくすることで、船幅方向Wの中心位置Cの近くの縦渦を捉え、推進性能をより向上させることができるからである。また、プロペラチップ間距離dは、左舷舵27及び右舷舵28の最大厚さ以上であってもよい。
【0041】
図5は、プロペラチップ間距離/プロペラ直径に対する推進性能指標を表すグラフである。
【0042】
図5にて、横軸は、左舷プロペラ23と右舷プロペラ24とのプロペラチップ間距離/プロペラ直径であり、縦軸は、船舶11の推進性能指標であり、同じ船体12を一組のプロペラおよび主機で推進させる二軸船とした場合の推進性能を1.0として正規化した値を示している。ここで、推進性能は馬力性能のことであり、同一速力を出すために必要な馬力が小さいほど性能、つまり、燃費性能が良いことになる。そのため、縦軸の推進性能指標の数値が小さくなるほど推進性能が良く、数値が大きくなるほど推進性能が悪いこととなる。この図5のグラフからわかるように、推進性能を向上させるためには、推進性能を1.0以下にする必要があり、プロペラチップ間距離/プロペラ直径を0.5以下、好ましくは、0.2以下に設定するとよい。
【0043】
また、図3に示すように、左舷プロペラ23と右舷プロペラ24との間の領域には、点線で表すような上昇流が発生している。この上昇流を効率良く回収して推進性能向上を図るために、本実施形態では、左舷プロペラ23と右舷プロペラ24の回転方向は、左舷プロペラ23と右舷プロペラ24との上部において船幅方向Wの外側から中心位置C側に向かって回転する内回りR1,R2としている。左舷プロペラ23と右舷プロペラ24は、縦渦の発生領域と重なる領域の範囲で、効率良く上昇流を回収できる。そして、プロペラチップ間距離dを小さくすればするほど、効率よく上昇流を回収でき、推進性能をより向上させることができる。
【0044】
なお、左舷プロペラ23と右舷プロペラ24の軸心位置O1,O2の高さは、船舶11の操縦性を考慮すると同一の位置であることが好ましいが、同一の位置である必要はない。
【0045】
また、図2に示すように、左舷舵27及び右舷舵28は、左舷プロペラ23と右舷プロペラ24の後方Rであって、船体12の平面視で、左舷プロペラ23と右舷プロペラ24の軸心位置O1,O2上に設けられることが好ましいが、軸心位置O1,O2上よりも船体中心側に設けられてもよい。この左舷舵27及び右舷舵28は、翼断面形状で、船尾13から鉛直下方に延びる舵軸(図示略)に支持され、鉛直軸線回りに回転して針路方向を変更する。
【0046】
ここで、左舷舵27及び右舷舵28は、前縁と左舷プロペラ23と右舷プロペラ24をなるべく近接させるのが好ましい。これは、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24により生成される速い流れが左舷舵27及び右舷舵28に流入し、舵効きが良くなるためである。具体的に、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24のプロペラ直径をDpとする。また、左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22の軸心位置における左舷プロペラ23の中心P2及び右舷プロペラ24の中心P2から左舷舵27及び右舷舵28の前縁までの距離をL2とする。このとき、0<L2≦1.0Dpに設定されている。
【0047】
このように第1実施形態の船舶の推進装置にあっては、左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22と、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24と、左舷シャフトブラケット25及び右舷シャフトブラケット26と、左舷舵27及び右舷舵28と、センタースケグ29とを備え、各プロペラシャフト21,22が船尾13から外部に突出する位置P1と各プロペラ23,24の中心P2までの前後距離をL1とし、各プロペラ23,24の中心P2からL1/2前方へ移行した中間位置P3におけるセンタースケグ29の最下端位置での幅をb1、中間位置P3における各プロペラシャフト21,22の軸心位置O1,O2の高さでのセンタースケグの幅をb2としたとき、b1≦b2に設定するものである。
【0048】
従って、センタースケグ29を最下端位置に向けてその幅を同じかまたは狭く設定することで、センタースケグ29の両側を上昇する水流がセンタースケグ29に邪魔されずにスムースに流れることとなり、船体抵抗を低減しつつ、プロペラ面内における船幅方向Wの中心位置Cの近傍での上昇流を効率良く回収して推進性能向上を図ることができる。即ち、図6に示すように、船速に対する必要馬力が従来に比較して低減することができる。
【0049】
第1実施形態の船舶の推進装置では、各プロペラ23,24の直径をDpとしたとき、船体12の船幅方向Wの中心位置C側における各プロペラ23,24の先端との最短距離dは、0<d≦0.2Dpに設定される。従って、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24を船体12の船幅方向Wの中心位置C側に近接して配置することとなり、船幅方向Wの中心位置Cの近傍の上昇流を効率良く回収することができ、推進性能を向上することができる。また、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24は、インターロックプロペラ方式のように互いに干渉することもなく、船体12を容易に製造することが可能となる。そして、左舷プロペラ23と右舷プロペラ24を並列で配置することで、OLP方式に比較して後方プロペラにおけるベアリングフォース過大、キャビテーション範囲拡大、エロージョンの発生などのリスクを大幅に抑制することができる。
【0050】
第1実施形態の船舶の推進装置では、各プロペラ23,24のそれぞれの回転方向を各プロペラ23,24の上部において船体12の外側から船幅方向Wの中心位置C側に向かって回転する内回りに設定している。従って、左舷プロペラ23と右舷プロペラ24は、縦渦の発生領域と重なる領域の範囲で、効率良く上昇流を回収することができ、推進性能をより向上させることができる。
【0051】
第1実施形態の船舶の推進装置では、左舷プロペラシャフト21と右舷プロペラシャフト22の軸心間距離を船体12の後方Rに行くほど大きくなるように設定している。従って、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24を回転させるための主機31,33を船体12の船幅方向Wの中心位置C側に設置することができ、船尾13を痩せさせることが可能となり、船体抵抗を低減することができる。
【0052】
第1実施形態の船舶の推進装置では、左舷プロペラシャフト21と右舷プロペラシャフト22を船底15から軸心位置O1,O2までの高さが船体12の後方Rに行くほど小さくなるように設定している。従って、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24を回転させるための主機31,33と船底15からの高さを増加することができ、船尾13を痩せさせることが可能となり、船体抵抗を低減することができる。
【0053】
第1実施形態の船舶の推進装置では、各プロペラ23,24の直径をDpとしたとき、各プロペラシャフト21,22の軸心位置O1,O2における各プロペラ23,24の中心P2から各舵27,28の前縁までの距離L2は、0<L2≦1.0Dpに設定されている。従って、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24の前縁を左舷舵27及び右舷舵28に近づけることができ、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24からの後流を舵面に確実に当てることができ、舵効き及び推進性能を向上させることができる。
【0054】
また、第1実施形態の船舶にあっては、船舶11の推進装置14を備えている。従って、船体抵抗を低減しつつ、プロペラ面内における船幅方向Wの中心位置Cの近傍での上昇流を効率良く回収して推進性能向上を図ることができる。
【0055】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態の船舶の推進装置が装着された船尾を表す概略図である。なお、本実施形態の船舶の推進装置の基本的な構成は、上述した第1実施形態とほぼ同様の構成であり、図1及び図2を用いて説明すると共に、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
第2実施形態において、図1及び図2図7に示すように、推進装置14は、左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22と、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24と、左舷シャフトブラケット25及び右舷シャフトブラケット26と、左舷舵27及び右舷舵28と、センタースケグ41とを備えている。
【0057】
船体12は、後部側が船底15から後方Rに向けて上方に湾曲した形状をなし、船尾13が設けられている。また、船体12は、船幅方向Wの中心部の後部側が船尾13の後方Rの位置で船底15から後方Rに向けて上方に湾曲した形状をなし、センタースケグ41が設けられている。そして、船尾13におけるセンタースケグ41の両側に左舷舵27と右舷舵28がそれぞれ設けられている。
【0058】
図1及び図7に示すように、左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22が船尾13(船体12)から外部に突出する位置P1と左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24の中心P2までの前後距離をL1とする。また、左舷プロペラ23の中心P2及び右舷プロペラ24の中心P2からL1/2だけ前方Fへ移行した中間位置P3におけるセンタースケグ41の最下端位置での幅をb1とする。更に、中間位置P3における左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22の軸心位置O1,O2の高さでのセンタースケグ41の幅をb2とする。この場合、中間位置P3にて、センタースケグ41の最下端位置と左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22の軸心位置O1,O2とは、高さhとなっている。このとき、b1≦b2に設定されている。
【0059】
即ち、センタースケグ41は、船底15における船幅方向Wの中心部の後部側が水平方向に延出し、途中から後方Rに向けて上方に湾曲した形状をなしている。また、センタースケグ41は、船尾13の下面から船高方向Hの下方に向けてその幅が一度大きくなって(船幅方向Wの厚さが厚くなって)から小さくなる(船幅方向Wの厚さが薄くなる)膨出先細形状となっている。即ち、センタースケグ41は、船高方向Hに対して下方が中心位置C側から離間する船長方向Lに沿う第1湾曲面41a,41bと、第1湾曲面41a,41bの下方に設けられて外側に突出する船長方向Lに沿う膨出部41c,41dと、膨出部41c,41dから下方が中心位置C側に接近する船長方向Lに沿う第2湾曲面41e,41fと、第2湾曲面41e,41fの下端部で交差する水平な水平面41gとから構成されている。このような形状のセンタースケグ41を採用することで、船体抵抗を低減しつつ、プロペラ面内における船幅方向Wの中心位置Cの近傍での上昇流を効率良く回収して推進性能向上を図ることができる。
【0060】
この場合、センタースケグ41は、中間位置P3にて、最下端位置と軸心位置O1,O2との間に幅b1及び幅b2より広い幅b3の膨出部41c,41dが設けられることとなる。なお、センタースケグ41は、b1<b2に設定することで、先細形状をなすが、b1=b2に設定することで、第2湾曲面41e,41fの下部を下方に向けて同幅形状としてもよい。
【0061】
このように第2実施形態の船舶の推進装置にあっては、センタースケグ41は、中間位置P3にて、最下端位置と軸心位置O1,O2との間に幅b1及び幅b2より広い幅b3の膨出部41c,41dが設けられている。
【0062】
従って、センタースケグ41の両側を上昇する水流がセンタースケグ41に邪魔されずに膨出部41c,41dに沿ってスムースに流れることとなり、船体抵抗を低減しつつ、プロペラ面内における船幅方向Wの中心位置Cの近傍での上昇流を効率良く回収して推進性能向上を図ることができる。
【0063】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態の船舶の推進装置が装着された船尾を表す側面図、図9は、船舶の推進装置が装着された船尾を表す平面図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
第3実施形態において、図8及び図9に示すように、推進装置14は、左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22と、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24と、左舷シャフトブラケット25及び右舷シャフトブラケット26と、左舷中間シャフトブラケット51及び右舷中間シャフトブラケット52と、左舷舵27及び右舷舵28と、センタースケグ29とを備えている。
【0065】
左舷プロペラ23は、船尾13の船底15の左舷側の下方に設けられ、左舷プロペラシャフト21における軸方向の一端部に接続されている。左舷プロペラシャフト21は、軸方向の他端部が船尾管32を通して船体12の内部に挿通され、左舷主機31に接続されている。一方、右舷プロペラ24は、船尾13の船底15の右舷側の下方に設けられ、右舷プロペラシャフト22における軸方向の一端部に接続されている。右舷プロペラシャフト22は、軸方向の他端部が船尾管34を通して船体12の内部に挿通され、右舷主機33に接続されている。
【0066】
左舷プロペラシャフト21は、船尾管32から船体12の外方に突出した後端部が、左舷プロペラ23の前方の位置で、左舷シャフトブラケット25により回転自在に支持されている。右舷プロペラシャフト22は、船尾管32から船体12の外方に突出した後端部が、右舷プロペラ24の前方で、右舷シャフトブラケット26により回転自在に支持されている。また、左舷プロペラシャフト21は、船尾管32から船体12の外方に突出した中間部が、左舷中間シャフトブラケット51により回転自在に支持されている。また、右舷プロペラシャフト22は、船尾管32から船体12の外方に突出した中間部が、右舷中間シャフトブラケット52により回転自在に支持されている。各中間シャフトブラケット51,52は、各プロペラシャフト21,22を回転自在に支持する筒状支持部51a,52aと、この筒状支持部51a,52aから上方に向けてV字状に延びて上端が船尾13に連結された複数(本実施形態では、2本)のストラット51b,51c,52b,52cとから構成されている。
【0067】
このように第3実施形態の船舶の推進装置にあっては、各プロペラシャフト21,22の後端部を各シャフトブラケット25,26により船体12に支持すると共に、各プロペラシャフト21,22の中間部を各中間シャフトブラケット51,52により船体12に支持している。従って、各プロペラシャフト21,22の支持剛性を上げることができる。
【0068】
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態の船舶の推進装置が装着された船尾を表す平面図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0069】
第4実施形態において、図10に示すように、推進装置14は、左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22と、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24と、左舷シャフトブラケット25及び右舷シャフトブラケット26と、左舷中間シャフトブラケット53及び右舷中間シャフトブラケット54と、左舷舵27及び右舷舵28と、センタースケグ29とを備えている。
【0070】
左舷プロペラ23は、船尾13の船底15の左舷側の下方に設けられ、左舷プロペラシャフト21における軸方向の一端部に接続されている。左舷プロペラシャフト21は、軸方向の他端部が船尾管32を通して船体12の内部に挿通され、左舷主機31に接続されている。一方、右舷プロペラ24は、船尾13の船底15の右舷側の下方に設けられ、右舷プロペラシャフト22における軸方向の一端部に接続されている。右舷プロペラシャフト22は、軸方向の他端部が船尾管34を通して船体12の内部に挿通され、右舷主機33に接続されている。
【0071】
左舷プロペラシャフト21は、船尾管32から船体12の外方に突出した後端部が、左舷プロペラ23の前方の位置で、左舷シャフトブラケット25により回転自在に支持されている。右舷プロペラシャフト22は、船尾管32から船体12の外方に突出した後端部が、右舷プロペラ24の前方で、右舷シャフトブラケット26により回転自在に支持されている。また、左舷プロペラシャフト21は、船尾管32から船体12の外方に突出した中間部が、左舷中間シャフトブラケット53により回転自在に支持されている。また、右舷プロペラシャフト22は、船尾管32から船体12の外方に突出した中間部が、右舷中間シャフトブラケット54により回転自在に支持されている。各中間シャフトブラケット53,54は、各プロペラシャフト21,22を回転自在に支持する筒状支持部53a,54aと、この筒状支持部53a,54aから上方に向けて延びて上端が船尾13に連結された1本のストラット53b,54bとから構成されている。
【0072】
この場合、1本のストラット53b,54bは、第2実施形態のストラット51b,52bの形状、または、ストラット51c,52cの形状であってもよく、筒状支持部53a,54aから鉛直方向の上方に真っ直ぐ向けて延びて上端が船尾13に連結される形状であってもよく、筒状支持部53a,54aから横方向または斜め方向に真っ直ぐ向けて延びて先端がセンタースケグ29に連結される形状としてもよい。
【0073】
このように第4実施形態の船舶の推進装置にあっては、各プロペラシャフト21,22の後端部を各シャフトブラケット25,26により船体12に支持すると共に、各プロペラシャフト21,22の中間部を各中間シャフトブラケット53,54により船体12に支持している。従って、各プロペラシャフト21,22の支持剛性を上げることができる。また、筒状支持部53a,54aに対して一つのストラット53b,54bを用いることで、構造の簡素化を図ることができる。
【符号の説明】
【0074】
11 船舶
12 船体
13 船尾
14 推進装置
15 船底
21 左舷プロペラシャフト
22 右舷プロペラシャフト
23 左舷プロペラ
24 右舷プロペラ
25 左舷シャフトブラケット
26 右舷シャフトブラケット
27 左舷舵
28 右舷舵
29,41 センタースケグ(スケグ)
31 左舷主機
32,34 船尾管
33 右舷主機
51,53 左舷中間シャフトブラケット
52,54 右舷中間シャフトブラケット
【要約】
【課題】船舶の推進装置及び船舶において、キャビテーションやエロージョンなどの発生を抑制する一方で、推進性能を向上させる。
【解決手段】左舷プロペラシャフト21及び右舷プロペラシャフト22と、左舷プロペラ23及び右舷プロペラ24と、左舷シャフトブラケット25及び右舷シャフトブラケット26と、左舷舵27及び右舷舵28と、センタースケグ29とを備え、各プロペラシャフト21,22が船尾13から外部に突出する位置P1と各プロペラ23,24の中心P2までの前後距離をL1とし、各プロペラ23,24の中心P2からL1/2前方へ移行した中間位置P3におけるセンタースケグ29の最下端位置での幅をb1、中間位置P3における各プロペラシャフト21,22の軸心位置O1,O2の高さでのセンタースケグ29の幅をb2としたとき、b1≦b2に設定する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図6
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図8
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図10