特許第6246972号(P6246972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6246972
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】多層型シート加工装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/00 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   B26D5/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-132638(P2017-132638)
(22)【出願日】2017年7月6日
【審査請求日】2017年7月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599040355
【氏名又は名称】日本製図器工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】福田 正範
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−504446(JP,A)
【文献】 米国特許第04070890(US,A)
【文献】 特開平06−270099(JP,A)
【文献】 特開2005−230917(JP,A)
【文献】 特開平07−024785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/00
B43L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X方向に延びた第1案内部材と、
当該第1案内部材に沿って移動可能に配設された第1移動体と、
当該第1移動体に支持され前記X方向と直角なY方向に延びた第2案内部材と、
当該第2案内部材に沿って移動可能に配設された第2移動体と、
当該第2移動体を前記第2案内部材に沿って駆動するY駆動機構と、
前記X方向と前記Y方向を含む平面に配設された作業領域と、
当該作業領域に対して接離可能に前記第2移動体に配設され、前記作業領域に配設されたシートに加工線を形成する工具と、を有する加工ユニットを、
前記作業領域が前記X方向と前記Y方向に垂直な方向に重なるように複数ユニット重ね合わせ、
当該複数ユニットのうちの少なくとも1つのユニットの前記第1移動体を、X駆動機構によって前記第1案内部材に沿って駆動するように構成すると共に、当該X駆動機構で移動する第1移動体と他のユニットの当該X駆動機構のない前記第1移動体とを互いに連結したことを特徴とする多層型シート加工装置。
【請求項2】
前記加工ユニットを垂直方向に少なくとも3ユニット重ね合わせ、中間の加工ユニットの前記第1移動体を前記X駆動機構によって駆動可能に構成すると共に、当該中間の加工ユニットの前記第1移動体と、その上下の他のユニットの前記第1移動体とを互いに連結したことを特徴とする請求項1の多層型シート加工装置。
【請求項3】
前記Y駆動機構がYモータと当該Yモータの回転軸に連結されたピニオンとを有し、当該ピニオンが前記第2案内部材に沿って形成されたラックに噛み合わされた請求項1又は2の多層型シート加工装置。
【請求項4】
前記Y駆動機構が、前記第2案内部材に沿って張架されると共に前記第2移動体に連結されたY駆動ベルトと、当該Y駆動ベルトを駆動するYモータとを有することを特徴とする請求項1又は2の多層型シート加工装置。
【請求項5】
前記X駆動機構がXモータと当該Xモータの回転軸に連結されたピニオンとを有し、当該ピニオンが前記第1案内部材に沿って形成されたラックに噛み合わされた請求項1から4のいずれか1項の多層型シート加工装置。
【請求項6】
前記X駆動機構が、前記第1案内部材に沿って張架されると共に前記第1移動体に連結されたX駆動ベルトと、当該X駆動ベルトを駆動するXモータとを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項の多層型シート加工装置。
【請求項7】
前記Y駆動機構が、前記複数ユニットの各第2案内部材に沿って張架されて循環移動すると共に各第2移動体に連結された1つの共通Y駆動ベルトと、当該共通Y駆動ベルトを駆動する1つの共通Yモータとを有することを特徴とする請求項1又は2の多層型シート加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボール紙等のシートを切断するなどの加工を行う加工ユニットを複数ユニット重ね合わせた多層型シート加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボール紙、段ボールあるいは板紙等の紙、皮革、プラスチック等のシートを、押罫・切断により加工し、この加工したシートを組み立てて梱包箱やディスプレイとして使用することが従来から行われている。シートの押罫・切断は、一般に打抜型やカッティングプロッタで行われる。
【0003】
例えば特許文献1に、シートを第1の方向に駆動するとともに、刃を当該第1の方向と直交する第2の方向に駆動することにより、シートを所望の形状に切断するカッティングプロッタが記載されている。また特許文献2に、カッタをX方向とY方向に移動させてシートを切断する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005―230917号公報
【特許文献2】特開平7―24785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシート加工装置は、前記特許文献1、2の装置に限らず、いずれもX・Y方向で規定された二次元平面内で1枚のシートを加工(押罫・切断)する。そのため装置の高速化には自ずと限界があり、生産性向上が課題になっていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、従来のシート加工装置と同じ設置面積でその生産性を格段に増大可能な多層型シート加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る多層型シート加工装置は、X方向に延びた第1案内部材と、当該第1案内部材に沿って移動可能に配設された第1移動体と、当該第1移動体に支持され前記X方向と直角なY方向に延びた第2案内部材と、当該第2案内部材に沿って移動可能に配設された第2移動体と、当該第2移動体を前記第2案内部材に沿って駆動するY駆動機構と、前記X方向と前記Y方向を含む平面に配設された作業領域と、当該作業領域に対して接離可能に前記第2移動体に配設され、前記作業領域に配設されたシートに加工線を形成する工具と、を有する加工ユニットを、前記作業領域が前記X方向と前記Y方向に垂直な方向に重なるように複数ユニット重ね合わせ、当該複数ユニットのうちの少なくとも1つのユニットの前記第1移動体を、X駆動機構によって前記第1案内部材に沿って駆動するように構成すると共に、当該X駆動機構で移動する第1移動体と他のユニットの当該X駆動機構のない前記第1移動体とを互いに連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加工ユニットを複数ユニット重ね合わせ、少なくとも1つのユニットの第1移動体をX駆動機構によって第1案内部材に沿って駆動するように構成し、当該X駆動機構で移動する第1移動体と他のユニット第1移動体を連結したので、従来のシート加工装置と同じ設置面積でその生産性を格段に増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る多層型シート加工装置の正面図である。
図2A】多層型シート加工装置の前側第1斜視図である。
図2B】多層型シート加工装置の前側第2斜視図である。
図3A】多層型シート加工装置の後側第1斜視図である。
図3B】多層型シート加工装置の後側第2斜視図である。
図4】多層型シート加工装置の部分拡大断面図である。
図5】押罫機構の概略断面図である。
図6】切断機構の概略断面図である。
図7】Y駆動機構の変形実施形態を示す概略構成図である。
図8】シートの加工例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(シート加工装置の概略)
以下、本発明の実施形態に係る多層型シート加工装置を図面を参照して説明する。図1図3Bに示すように、多層型シート加工装置100は、基本構成が共通な3つの加工ユニット11〜13を上下方向に等間隔で重ねた三層構造を有する。各加工ユニット11〜13は水平な機枠11a〜13aを有し、当該機枠11a〜13aの四隅のコーナ部が、多層型シート加工装置100の前後左右に配設された支柱21〜24に連結されている。
【0011】
各加工ユニット11〜13の機枠11a〜13aは平面視で矩形状をなし、当該矩形状機枠11a〜13aの対向する辺々にローラRが配設されている。このローラRは互いに平行とされ、ローラR相互間に搬送ベルト31〜33が架け渡されている。搬送ベルト31〜33は、穴開スチールベルト等で構成されたエアサクション構造を有し、搬送ベルト31〜33上にセットされたシートSを吸引吸着し、位置ズレすることなく所定位置に確実に保持可能に構成されている。
【0012】
そして各機枠11a〜13aの一方のローラRが駆動されることで、搬送ベルト31〜33が図2A図2Bの手前側から奥側に同期してX方向に移動するように構成されている。この搬送ベルト31〜33上に、シートSを加工するための作業領域が形成される。当該作業領域は、X方向とY方向を含む平面に配設されている。
【0013】
図2A図2Bの搬送ベルト31〜33の手前側に、図示しないシート供給装置が配設される。そして当該シート供給装置から搬送ベルト31〜33に向けて、未加工のシートSが水平方向に間欠的に搬入され、各搬送ベルト31〜33上の所定位置(作業領域)に3枚のシートが同時にセットされるようになっている。
【0014】
(加工ユニットの重層構造)
各加工ユニット11〜13は、図4に示すように、搬送ベルト31〜33の搬送方向に向かって左右両側に第1移動体41〜43を有する。図4では片側(右側)の第1移動体41〜43のみを示すが、搬送ベルト31〜33を間に挟んで反対側(左側)にも同様に第1移動体41〜43が配設されている。
【0015】
当該第1移動体41〜43は上下方向(Z方向)で互いに連結されて一体化されている。当該一体化された第1移動体41〜43は、機枠11a〜13aの側面に固定された第1案内部材11b〜13bに沿って移動可能に配設されている。
【0016】
すなわち、機枠11a〜13aの内側面に、第1案内部材11b〜13bが上下一対で互いに平行に配設されている。この第1案内部材11b〜13bの方向は、搬送ベルト31〜33の搬送方向(X方向)と平行である。一方、加工ユニット11〜13の第1移動体41〜43は、図4に示すように、垂直板の側面に摺動部41b〜43bを有し、当該摺動部41b〜43bが前記第1案内部材11b〜13bに対してX方向に摺動可能に係合している。
【0017】
中間の第1移動体42は、3つの第1移動体41〜43を全体としてX方向に移動させるために、X駆動機構としての摺動用モータ(Xモータ)80と、ピニオン81と、ラック82を有する。摺動用モータ80は、第1移動体42の水平な腕部42aの上にその軸線を縦向きにして固定されている。
【0018】
当該摺動用モータ80の回転軸は、腕部42aを貫通して機枠12aの上方に突出し、当該突出端にピニオン81が固定されている。ピニオン81は、機枠12aの上面に固定されてY方向に延在するラック82と噛み合っている。したがって、摺動用モータ80を駆動することで、3つの第1移動体41〜43が第1案内部材11b〜13bに沿って、全体として往復移動可能に構成されている。
【0019】
各機枠11a〜13aの両側で互いに対向する第1移動体41〜43は、第2案内部材51〜53で互いに水平方向(Y方向)に連結されている。これら第2案内部材51〜53は、搬送ベルト31〜33上の作業領域の上方をY方向で横断するように配設されている。
【0020】
当該第2案内部材51〜53に対して、その長手方向すなわちY方向に沿って、第2移動体61〜63が移動可能に配設されている。この第2移動体61〜63に、搬送ベルト31〜33上の作業領域に搬入されたシートSに対して加工線(押罫線・切断線)を形成するための工具を有する。
【0021】
当該工具は、図5の押罫機構61a〜63aに保持された押罫部材210と、図6の切断機構61b〜63bに保持されたカッタ刃310である。押罫機構61a〜63aと切断機構61b〜63bは、この実施形態では第2移動体61〜63上で互いに隣り合わせで配設されている。
【0022】
(押罫機構)
図5の押罫機構61a〜63aは、詳しくは、第2移動体61〜63の本体部分を構成するフレーム201と、フレーム201に固定されたブラケット202と、押罫部材210と、ローラ保持部材223と、ガイド部材221と、上下動用モータ220と、摺動部222と、摺動用モータ230と、ピニオン231と、ラック232と、摺動部240aと、案内部240bとを備える。摺動用モータ(Yモータ)230、ピニオン231及びラック232によって、第2移動体61〜63を第2案内部材51〜53に沿って駆動するY駆動機構が構成される。
【0023】
押罫部材210は円板で構成されている。この円板は外縁部の厚みが徐々に薄くなり、周縁が尖った形状を有する。押罫部材210の中心軸211はローラ保持部材223に回転自在に保持されており、押罫部材210はR1方向に回転可能である。
【0024】
上下動用モータ220はブラケット202を介してフレーム201に固定されている。ローラ保持部材223はガイド部材221を介して上下動用モータ220の軸224に、軸224と同軸の回転軸225を中心に回動可能に保持されている。
【0025】
これにより、押罫部材210が受ける力に応じて、押罫部材210の向きが自由に変化する。上下動用モータ220はボール螺子機構を内蔵し、その回転により、軸224がZ方向(上下方向)に出し入れされる。
【0026】
ガイド部材221は軸224に固定され、上下動用モータ220の側面に沿って上方に延在している。ガイド部材221の上端部には、摺動部222が固定されている。摺動部222は、上下動用モータ220の側面にZ方向に延在して装着されたレール220aに摺動可能に取りつけられている。摺動部222がレール220aに沿ってZ方向に移動することにより、ガイド部材221を介して、押罫部材210もZ方向(上下方向)に移動する。
【0027】
フレーム201は、第2案内部材51〜53の上方でX方向に延びる腕部201aを備え、当該腕部201aの上に摺動用モータ230がその軸線を縦向きにして固定されている。当該摺動用モータ230の回転軸は腕部201aを貫通して第2案内部材51〜53の上方に突出し、当該突出端にピニオン231が固定されている。ピニオン231は、第2案内部材51〜53の上面に固定されてY方向に延在するラック232と噛み合っている。
【0028】
フレーム201の下端部の側面には上下一対でスライダ240aが取り付けられている。一方、第2案内部材51〜53の側面には、Y方向に延在するレール240bが上下一対で固定されている。そして上下一対のスライダ240aが上下一対のレール240bに対して摺動可能に取りつけられている。この構成により、摺動用モータ230の回転により、フレーム201及びフレーム201に支持された押罫部材210がY方向に摺動する。
【0029】
図示しない制御部は、押罫加工を開始する前に、摺動用モータ230を駆動してピニオン231を回転することで、フレーム201を±Y方向に移動し、押罫部材210をシートSの押罫加工する位置に配置する。また制御部は、押罫加工を開始する時に、上下動用モータ220を駆動してその軸224をモータ220本体から突出させ、押罫部材210をシートSの押罫加工の開始位置に押し当てる。押罫部材210をシートSに押し込む量(深さ)は、シートSの厚みや材質によって、上下動用モータ220の駆動を制御することにより微調整される。
【0030】
(切断機構)
図6の切断機構61b〜63bは、詳しくは、図示するように、カッタ刃310、カッタホルダ311、カッタ軸312、スリーブ313、プーリ314、検知板315、センサ316、ハウジング317、偏心カム318、圧縮バネ319、振動モータ320、角度調整用モータ321、プーリ322、タイミングベルト323、を備える。
【0031】
カッタ刃310は、カッタホルダ311に取り外し可能に装着されている。カッタホルダ311はカッタ軸312に固定されている。カッタ軸312は、スリーブ313内に、所定のストロークのみその中心軸方向(Z方向)に移動可能に保持されている。
【0032】
スリーブ313はハウジング317内でカッタ軸312の中心軸を中心に回転可能に保持されている。スリーブ313にはプーリ314が同軸で固定されている。プーリ314は、角度調整用モータ321の回転軸に同軸で固定されたプーリ322とタイミングベルト323で連結されている。検知板315はプーリ314に固定され、センサ316は検知板315を検知する。
【0033】
角度調整用モータ321の回転により、プーリ322が回転し、プーリ322の回転により、タイミングベルト323を介して、プーリ314とプーリ314に固定されたスリーブ313が回転する。スリーブ313が回転すると、スリーブ313内でカッタ軸312も回転し、カッタホルダ311に保持されたカッタ刃310がZ軸回りに回転する。カッタ刃310の回転量はセンサ316が検知板315を検知することで測定できる。
【0034】
ハウジング317の上部には振動モータ320が固定されている。振動モータ320の回転軸には偏心カム318が固定されている。偏心カム318は、カッタ軸312の上部に配置されている。カッタ軸312は、その上端部が偏心カム318に当接するように圧縮バネ319により上方に付勢されている。
【0035】
振動モータ320が回転すると、偏心カム318も回転し、偏心カム318に当接しているカッタ軸312がその軸方向に移動する。これにより、カッタ刃310がカッタ軸312の軸方向に振動する。
【0036】
ハウジング317はベース175に固定されている。ベース175にはスライダ150aが固定されている。スライダ150aは、フレーム201に固定されZ方向に延在するレール150bに摺動可能に保持されている。
【0037】
ベース175には、Z方向に延在するラック180が固定されている。ラック180には、ピニオン170が噛み合っている。ピニオン170は、フレーム201に固定された上下動用モータ130により駆動される。
【0038】
上下動用モータ130が回転すると、ピニオン170が回転し、ラック180をZ方向へ移動させる。ラック180の移動に伴って、ベース175もZ方向に移動し、ベース175に保持されたカッタ刃310をZ方向へ移動させる。
【0039】
制御部は、切断加工をする前に、図5の摺動用モータ230を駆動してピニオン231を回転することで、フレーム201を±Y方向に移動し、カッタ刃310をシートSの切断加工する位置に配置する。次に制御部は、角度調整用モータ321を駆動して、カッタ刃310の向きを形成予定の切断線の向き(X方向とY方向の向き)に一致させる。
【0040】
次に振動モータ320を駆動してカッタ刃310にZ方向の振動を与える。切断加工を開始するときに上下動用モータ130を駆動し、これによりカッタ刃310がシートSを切断する位置へ移動する。その後、カッタ刃310の位置を固定した状態で、シートSをX方向に移動させることで、シートSに切断線を形成する。
【0041】
或いは、必要に応じてシートSを固定したままでカッタ刃310をX方向に移動させることで、シートSに切断線を形成することもできる。カッタ刃310を振動させながらシートSを切断して、X方向に延びる切断線を形成する。
【0042】
(Y駆動機構の変形実施形態)
前述したY駆動機構は、各加工ユニット毎に配設して独立駆動可能に構成したが、当該Y駆動機構は、必ずしも各加工ユニット毎に配設する必要はない。図7はY駆動機構の変形実施形態を示すもので、同図より明らかなように、Y駆動機構は循環ベルト(Y駆動ベルト)90とこれを駆動するモータ(共通Yモータ)91を有する。
【0043】
循環ベルト90は、複数のプーリP1〜P9によって各加工ユニット11〜13の第2案内部材51〜53に沿って張架され、駆動用プーリP9をモータ91で正逆駆動することで、循環ベルト90を実線矢印方向又は破線矢印方向に駆動可能に構成されている。
【0044】
前述した押罫機構61a〜63aと切断機構61b〜63bを支持する第2移動体61〜63は当該循環ベルト90に連結され、モータ91の駆動により各加工ユニット11〜13の押罫機構61a〜63aと切断機構61b〜63bが同じ位置に駆動される。この変形実施形態によれば、Y駆動機構を簡略化することができるので、さらなるコストダウンも可能である。
【0045】
(押罫加工と切断加工)
シート加工装置1によるシートSの加工は、例えば図8(A)〜(D)に示すように行われる。同図は押罫加工と切断加工によりシートSから箱の展開シートS1を得る例を示している。図において実線は切断線、破線は押罫線を示し、全体として箱の展開図の形になる。シートSは、U軸がX方向に平行、V軸がY方向に平行になるように、搬送ベルト31〜33上の所定の作業領域にセットされる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。例えば、前記実施形態では加工ユニット11〜13を三層構造としたが、当該加工ユニットは二層構造、四層構造、五層構造など、任意の多層構造とすることができる。また、当該多層構造は、必ずしも垂直方向に重層する必要性はなく、傾斜状態で重層した多層構造としてもよい。
【0047】
また、前記実施形態では三層構造の場合に図4のように中間の加工ユニット12にX駆動機構としての摺動用モータ80、ピニオン81及びラック82を配設したが、当該X駆動機構は三層中の任意の加工ユニットに配設可能である。また、必要に応じて複数の加工ユニットにX駆動機構を配設してもよい。この場合は複数のX駆動機構を互いに同期させる。例えば図4の三層構造の加工装置において上下の加工ユニット11、13にのみ互いに同期するX駆動機構を配設し、中間の加工ユニット12はX駆動機構を省略した構造にしてもよい。
【0048】
また、前記実施形態ではX駆動機構を加工ユニット12に配設したが、当該X駆動機構を、第1案内部材に沿って張架されると共に第1移動体に連結されたX駆動ベルトと、当該X駆動ベルトを駆動する機枠側のXモータで構成することも可能である。このようにX駆動機構を固定側に配設すると、加工ユニット11〜13の重量軽減によりX駆動機構の負荷低減ないし第1移動体41〜43の高速化が可能になる。
【0049】
同様に、Y駆動機構についても、第2案内部材に沿って張架されると共に第2移動体に連結されたY駆動ベルトと、当該Y駆動ベルトを駆動する第2案内部材側のYモータで構成することも可能であり、これによりY駆動機構の負荷低減ないし第2移動体61〜63の高速化が可能になる。
【0050】
また、前記実施形態では第2移動体61〜63に押罫機構61a〜63aと切断機構61b〜63bを隣り合わせで配設したが、各加工ユニット11〜13で第2案内部材51〜53に沿って2つの第2移動体61〜63を配設し、押罫機構61a〜63aと切断機構61b〜63bをそれぞれ別々の第2移動体に配設してもよい。
【0051】
また前記実施形態では第2移動体61〜63に押罫機構61a〜63aと切断機構61b〜63bを配設したが、これら押罫・裁断機構に代えてシートに所望の加工線を形成するための任意の工具ないし機構を配設することも可能である。例えばレーザ光で布帛等のシートを裁断するシート加工装置においては、レーザ光をシートに照射する裁断ヘッドを第2移動体61〜63に配設することも可能である。
【0052】
また前記実施形態ではシートSを加工するための作業領域を搬送ベルト31〜33上に形成したが、当該搬送ベルト31〜33に代えて、各機枠11a〜13aに固定した作業テーブル上に作業領域を形成してもよい。当該作業テーブルには必要に応じてエアサクション構造の吸着手段やその他のシート固定手段を配設可能である。
【符号の説明】
【0053】
11〜13:加工ユニット
11a〜13a:機枠
11b〜13b:第1案内部材
21〜24:支柱
31〜33:搬送ベルト
41〜43:第1移動体
41b〜43b:摺動部
42a:腕部
51〜53:第2案内部材
61〜63:第2移動体
61a〜63a:押罫機構
61b〜63b:切断機構
80:摺動用モータ
81:ピニオン
82:ラック
90:循環ベルト
91:モータ
100:多層型シート加工装置
130:上下動用モータ
150a:スライダ
150b:レール
170:ピニオン
175:ベース
180:ラック
201:フレーム
201a:腕部
202:ブラケット
210:押罫部材
211:中心軸
220:上下動用モータ
220a:レール
221:ガイド部材
222:摺動部
223:ローラ保持部材
224:軸
225:回転軸
230:摺動用モータ
231:ピニオン
232:ラック
240a:摺動部
240b:案内部
310:カッタ刃
311:カッタホルダ
312:カッタ軸
313:スリーブ
314:プーリ
315:検知板
316:センサ
317:ハウジング
318:偏心カム
319:圧縮バネ
320:振動モータ
321:角度調整用モータ
322:プーリ
323:タイミングベルト
P1〜P9:プーリ
R:ローラ
S:シート
S1:展開シート
【要約】
【課題】従来のシート加工装置と同じ設置面積で生産性を格段に向上する。
【解決手段】本発明の多層型シート加工装置100はX方向に延びた第1案内部材11b〜13bと、第1案内部材に配設された第1移動体41〜43と、第1移動体に支持されY方向に延びた第2案内部材51〜53と、第2案内部材に配設された第2移動体61〜63と、第2移動体を第2移動部材に沿って駆動するY駆動機構と、X方向とY方向を含む平面に配設された作業領域と、作業領域に対して接離可能に第2移動体に配設され、作業面に配設されたシートに加工線を形成する工具とを有する加工ユニット11〜13を有する。加工ユニットを垂直方向に複数ユニット重ね合わせ、複数ユニットのうちの1ユニットの第1移動体42をX駆動機構によって第1案内部材に沿って駆動する。X駆動機構で移動する第1移動体と他のユニットの第1移動体41、43を互いに連結する。
【選択図】図1
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8