特許第6246974号(P6246974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6246974
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】犬用靴
(51)【国際特許分類】
   A01K 13/00 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   A01K13/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-158041(P2017-158041)
(22)【出願日】2017年8月18日
(62)【分割の表示】特願2017-9495(P2017-9495)の分割
【原出願日】2017年1月23日
【審査請求日】2017年8月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513101755
【氏名又は名称】有限会社エクラン
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛生 裕子
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3128268(JP,U)
【文献】 アニサポナックルン/犬用コルセット・介護用品の販売 アニフル,日本,2016年10月14日,http://anifull.jp/products/detail.php?pr,URL, https://web.archive.org/web/20160717084530/http://anifull.jp/products/detail.php?product_id=66
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
犬の足のつま先から指節部又は趾節部までを覆う袋状部と、該袋状部から連続して少なくとも犬の足の中手部又は中足部の一部までを覆う筒状部と、装着用の1つ以上の巻き付けベルトとを備える犬用靴であって、
犬の歩行方向を基準とした前方側に、前記袋状部の、犬の足のつま先近傍に装着される部位と、前記筒状部の、犬の足の中手部又は中足部の前側部分に装着される部位とを、接近させるように付勢する付勢手段が設けられており、
該付勢手段は、前記袋状部の、犬の足のつま先近傍に装着される部位から、前記筒状部の、犬の足の中手部又は中足部の前側部分に装着される部位までの領域を構成する、弾性を有する生地状部材であり、
前記袋状部及び前記筒状部は、前記生地状部材と、前記袋状部及び前記筒状部の前記領域以外の領域を構成する、少なくとも1種の生地とが縫製されて形成されていることを特徴とする犬用靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬用靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、汚れの防止、怪我の防止、肉球の保護、足の傷口の保護等を目的として、犬に靴を履かせる機会が増えている。その際に用いられる犬用靴として、耐久性が向上された犬用靴等も発案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−87332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年では、犬が足の甲に相当する部位を地面につけて歩行する、或いはつま先や爪を引きずりながら歩行するといった、所謂ナックリングと呼ばれる症状が発生することがあり、このような症状を予防、抑制することが求められている。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、犬用靴を利用してナックリングを予防及び抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)犬の足のつま先から指節部又は趾節部までを覆う袋状部と、該袋状部から連続して少なくとも犬の足の中手部又は中足部の一部までを覆う筒状部と、装着用の1つ以上の巻き付けベルトとを備える犬用靴であって、犬の歩行方向を基準とした前方側に、前記袋状部の、犬の足のつま先近傍に装着される部位と、前記筒状部の、犬の足の中手部又は中足部の前側部分に装着される部位とを、接近させるように付勢する付勢手段が設けられている犬用靴。
【0007】
本項に記載の犬用靴は、袋状部、筒状部、1つ以上の巻き付けベルト、及び、付勢手段を含むものであり、靴の本体部分は、袋状部と筒状部とで構成される。袋状部は、犬の足のつま先から、前足の場合は指節部まで、後足の場合は趾節部までを覆う部位であり、筒状部は、袋状部から連続して形成され、少なくとも犬の足の、前足の場合は中手部の一部まで、後足の場合は中足部の一部までを覆う部位である。これらは、犬の足に直接触れても犬にストレスを感じさせないような柔らかい素材、例えば、各種の布材料や合成樹脂等で構成される。
【0008】
巻き付けベルトは、袋状部及び筒状部を犬の足に履かせた後に、袋状部及び/又は筒状部の周囲に巻き付けられることで、袋状部及び筒状部を犬の足に固定するための、装着用のベルトである。巻き付けベルトは、袋状部や筒状部の大きさ等に応じて、具備される本数や位置が決定され、又、その形成材料には、例えば、各種の布材料が用いられる。更に、巻き付けベルトは、その一部が袋状部や筒状部に予め固定されていてもよく、袋状部や筒状部の周囲に設けられたベルト通し用の穴に通されることで、袋状部や筒状部に保持されるものであってもよい。又、巻き付けベルトの結合手段としては、面ファスナー等の従来既知の各種の結合手段が利用される。好ましくは、巻き付けベルトは、袋状部や筒状部の周囲に、平面視で左巻きと右巻きとの互いに逆方向に巻き付けられる、2本以上の巻き付けベルトを含んでいる。
【0009】
付勢手段は、袋状部の、犬の足のつま先近傍に装着される部位と、筒状部の、犬の足の中手部(前足の場合)或いは中足部(後足の場合)の前側部分に装着される部位とを、接近させるように付勢するものであり、犬の歩行方向を基準とした靴の前方側に設けられる。これにより、本項に記載の犬用靴は、犬の前足又は後足に装着されると、付勢手段によって、犬の足のつま先と中手部或いは中足部の前側部分とが接近するように付勢することになる。従って、本項に記載の犬用靴を装着した犬は、付勢手段による付勢力に逆らってつま先を下側や後側に向けることが抑制されるため、足の甲をつけての歩行や、つま先や爪を引きずりながらの歩行となってしまう、所謂ナックリングが予防及び抑制されることとなる。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記付勢手段は、前記袋状部の、犬の足のつま先近傍に装着される部位と、前記筒状部の、犬の足の中手部又は中足部の前側部分に装着される部位とを、前記巻き付けベルトの前記前方側を通って連結する弾性部材である犬用靴。
本項に記載の犬用靴は、袋状部の、犬の足のつま先近傍に装着される部位と、筒状部の、犬の足の中手部(前足の場合)又は中足部(後足の場合)の前側部分に装着される部位とを連結する、例えばゴムやバネ等の弾性部材によって、上記(1)項に記載した付勢手段が構成されるものである。
【0011】
この弾性部材は、犬用靴の装着のために巻き付けられた状態の巻き付けベルトの、犬の歩行方向を基準とした靴の前方側を通って連結される。すなわち、弾性部材は、犬の足に装着された犬用靴を側面視したときに、犬の足のつま先近傍と、中手部又は中足部の前側部分との間を、略直線状に斜めに延在する態様となる。このような構成により、犬の足のつま先と中手部又は中足部の前側部分とが接近するように付勢しながらも、犬の足のつま先と中手部又は中足部の前側部分とが離間する方向への、弾性部材の弾性力に応じた引張が許容される。このため、本項に記載の犬用靴は、犬の足に履かせる際の変形や、歩行中の犬の足の動きへ追従する際の変形が、弾性部材が伸縮する範囲で許容されるものとなる。これにより、犬用靴を犬の足に履かせる作業を妨げることなく、又、歩行中の犬にストレスを感じさせることなく、犬の足のナックリングを予防及び抑制するものとなる。
【0012】
(3)上記(2)項において、前記弾性部材は、1本以上の紐状弾性部材を含む犬用靴。
本項に記載の犬用靴は、付勢手段を構成する弾性部材が、1本以上の紐状弾性部材を含むものであり、このような紐状弾性部材として、例えば、紐状ゴムや引張コイルバネ等が用いられる。紐状弾性部材の本数は、犬用靴の大きさや、利用する紐状弾性部材の弾性力等に応じて決定される。又、紐状弾性部材が複数本用いられる場合は、何れの紐状弾性部材も、袋状部のつま先近傍に装着される部位と、筒状部の中手部又は中足部の前側部分に装着される部位とを連結するように配置される。その際、袋状部或いは筒状部への連結位置は、複数本の紐状弾性部材が同一位置を共用してもよく、紐状弾性部材毎に犬用靴の幅方向等に異なっていてもよい。このような構成により、例えば、犬用靴の幅方向に太い弾性部材を用いる場合と比較して、取り回しが容易になる。
【0013】
(4)上記(2)(3)項において、前記弾性部材は、前記袋状部の、犬の足のつま先近傍に装着される部位と、前記筒状部の、犬の足の中手部又は中足部の前側部分に装着される部位とへの、少なくとも一方の連結部が、着脱可能に連結されている犬用靴。
本項に記載の犬用靴は、弾性部材の2つの連結部、すなわち、袋状部の、犬の足のつま先近傍に装着される部位への連結部と、筒状部の、犬の足の中手部又は中足部の前側部分に装着される部位への連結部とのうち、少なくとも一方が、着脱可能に連結されているものである。このような連結部の構成として、例えば、袋状部又は筒状部への連結位置に、環状金具等を取り付け、そこへ、一端に弾性部材が取り付けられた、カラビナやキーフック等の着脱可能な連結金具を連結する構成が挙げられる。これにより、弾性部材の連結部の一方又は双方が、必要に応じて着脱されることとなるため、犬用靴を履かせる又は脱がせる際に弾性部材の連結部を取り外すことにより、犬用靴を履かせる又は脱がせる作業が、より円滑に行われることとなる。
【0014】
(5)上記(2)から(4)項において、前記弾性部材は、非引張状態での長さが調節可能である犬用靴。
本項に記載の犬用靴は、弾性部材の非引張状態での長さが調節可能であることで、犬の足の大きさや、犬の足のつま先と中手部又は中足部の前側部分との間に作用させる所望の付勢力に合わせた、適切な長さに、弾性部材の長さが調節されるものである。これにより、犬の足の大きさ等に応じた適切な付勢力で付勢しながら、犬の足のナックリングを予防及び抑制するものとなる。
【0015】
(6)上記(1)項において、前記付勢手段は、前記袋状部の、犬の足のつま先近傍に装着される部位から、前記筒状部の、犬の足の中手部又は中足部の前側部分に装着される部位までの領域を構成する、弾性を有する生地状部材であり、前記袋状部及び前記筒状部は、前記生地状部材と、前記袋状部及び前記筒状部の前記領域以外の領域を構成する、少なくとも1種の生地とが縫製されて形成されている犬用靴(請求項1)。
本項に記載の犬用靴は、袋状部の、犬の足のつま先近傍に装着される部位から、筒状部の、犬の足の中手部又は中足部の前側部分に装着される部位までの領域が、例えばゴムや伸縮可能な合成樹脂等が利用された弾性を有する生地状部材によって構成され、この生地状部材により、上記(1)項に記載した付勢手段が構成されるものである。すなわち、生地状部材は、犬用靴を側面視したときの前方側の部位が、犬の足のつま先近傍と、中手部又は中足部の前側部分との間を、略直線状に斜めに延在する態様となる。又、袋状部及び筒状部は、上記の生地状部材と、袋状部及び筒状部の、生地状部材で構成される領域以外の領域を構成する、少なくとも1種の生地とが縫製されて形成されている。
【0016】
そして、犬用靴が犬の足に装着され、生地状部材の上から巻き付けベルトが巻き付けられると、生地状部材が犬の足にフィットするように変形する。このように変形した状態であっても、生地状部材の弾性力により、犬の足のつま先と中手部又は中足部の前側部分とを接近させるような付勢力が作用することになる。更に、本項に記載の犬用靴は、犬の足に履かせる際の変形や、歩行中の犬の足の動きへ追従する際の変形が、生地状部材が伸縮する範囲で許容されるものである。これにより、犬用靴を犬の足に履かせる作業を妨げることなく、又、歩行中の犬にストレスを感じさせることなく、犬の足のナックリングを予防及び抑制するものとなる。
【0017】
(7)上記(1)項において、前記付勢手段は、前記袋状部の前記前方側に取り付けられる第1の板状部材と、前記筒状部の前記前方側に取り付けられる第2の板状部材と、前記第1の板状部材の前記前方側の面の、前記第2の板状部材側の端部と、前記第2の板状部材の前記前方側の面の、前記第1の板状部材側の端部とを、回動自在に接続する接続部と、該接続部によって接続された前記第1の板状部材の端部と前記第2の板状部材の端部との間に配置され、前記第1の板状部材に対して前記第2の板状部材が所定角度を成すように、前記接続部と協働して、前記第1の板状部材に対して前記第2の板状部材を保持する、弾性変形可能な保持部材と、を含む犬用靴。
【0018】
本項に記載の犬用靴は、上記(1)項に記載した付勢手段が、第1の板状部材、第2の板状部材、接続部、及び、保持部材を含むものである。第1及び第2の板状部材は、夫々、袋状部及び筒状部の前方側に取り付けられるものであり、形状が変化しないような肉厚及び剛性を有する木材、金属、合成樹脂等で形成される。なお、ここにおける第1及び第2の板状部材の「板状」とは、例えば取り付け先の袋状部や筒状部の形状に沿って、僅かに丸みがつけられた板状の部材も含むものとする。
【0019】
又、接続部は、第1の板状部材の前方側の面の、第2の板状部材側の端部と、第2の板状部材の前方側の面の、第1の板状部材側の端部とを、回動自在に接続するものである。すなわち、接続部により、第1及び第2の板状部材の近接する端部同士が、第1及び第2の板状部材の、袋状部又は筒状部への取り付け面とは反対の面において接続されることで、第1の板状部材に対して第2の板状部材が回動自在に接続される。このような接続部として、例えば、ヒンジ軸を用いない折り曲げ式の樹脂製のヒンジ機構等が挙げられ、第1及び第2の板状部材が樹脂製である場合には、ヒンジ機構を構成する接続部と第1及び第2の板状部材とを一体に成形してもよい。
【0020】
一方、保持部材は、接続部によって接続された第1の板状部材の端部と第2の板状部材の端部との間に配置される。ここで、接続部による接続は、第1及び第2の板状部材の一方の面側のみにおいて行われるため、第1の板状部材に対して第2の板状部材が角度を成して配置されるとき、接続部により接続された第1及び第2の板状部材の端部同士の間には、第1及び第2の板状部材の肉厚と、上述した配置の角度とに応じた大きさの、隙間が形成される。保持部材は、このような隙間に配置され、第1の板状部材の端部と第2の板状部材の端部との何れか一方又は双方に、接着等によって固定される。又、保持部材は、第1の板状部材に対して第2の板状部材が所定角度を成すように、接続部と協働して、第1の板状部材に対して第2の板状部材を保持する。すなわち、保持部材は、上述した隙間において、第1の板状部材の端部と第2の板状部材の端部とにより挟み込まれることで、その形状や大きさに応じた角度に、第1の板状部材に対して第2の板状部材を保持する。なお、ここにおける第1の板状部材に対する第2の板状部材の配置角度とは、第1の板状部材と第2の板状部材とが平行な場合に最も小さくなる(ゼロになる)位置関係での角度である。
【0021】
更に、保持部材は、例えばゴム製や発泡ウレタン製等の弾性変形可能なものである。このため、第1の板状部材に対する第2の板状部材の配置角度が小さくなる方向、すなわち、第1の板状部材と第2の板状部材とが平行になる方向に、保持部材が変形する以上の力が加えられることで、保持部材が弾性変形されながら、第1の板状部材に対する第2の板状部材の配置角度が小さくなる。この際、保持部材は、第1及び第2の板状部材の端部同士の間の隙間が小さくなるため、その隙間から一部がはみ出るような態様で弾性変形する。従って、保持部材には、上記の如き力が加えられない状態において、所定角度を成すように第1の板状部材に対して第2の板状部材を保持し、かつ、上記の如き力が加えられた状態において、第1の板状部材に対する第2の板状部材の、配置角度が小さくなる配置変更を許容するように弾性変形する、適切な大きさ、形状、弾性力のものが用いられる。
【0022】
上記のような構成により、本項に記載の犬用靴は、犬の足に履かされる際又は犬の足から脱がされる際に、犬の飼い主等によって、第1の板状部材と第2の板状部材とが平行になる方向に力が加えられることで、袋状部と筒状部とが略直列の配置状態になるため、犬の足へ履かせる又は犬の足から脱がせる作業が容易となる。一方、犬の足に装着された状態では、保持部材によって第1の板状部材に対する第2の板状部材の配置角度が保持されることで、第1の板状部材が取り付けられた袋状部の、犬の足のつま先近傍に装着される部位と、第2の板状部材が取り付けられた筒状部の、犬の足の中手部又は中足部の前側部分に装着される部位とを、接近させるような付勢力が作用する。更に、弾性変形可能な保持部材は、歩行中の犬の足の動きへ追従する程度の、第1の板状部材に対する第2の板状部材の配置角度の変化を許容する。このため、歩行中の犬にストレスを感じさせることなく、犬の足のナックリングを予防及び抑制するものとなる。
【0023】
(8)上記(7)項において、前記所定角度が、正常な犬の足の、つま先から指節部又は趾節部までと、指節部又は趾節部から中手部又は中足部までとが成す角度と等しい犬用靴。
本項に記載の犬用靴は、保持部材により保持された状態で、第2の板状部材が第1の板状部材に対して成す所定角度が、正常な犬の足の、つま先から指節部(前足の場合)又は趾節部(後足の場合)までと、指節部又は趾節部から中手部(前足の場合)又は中足部(後足の場合)までとが成す角度と、等しいものである。ここで、正常な犬の足とは、ナックリング等が発生していない健全な状態の犬の足を示している。又、所定角度が上記の犬の足の角度と「等しい」ことは、犬の種類や大きさ等を考慮して、複数の種類や大きさの犬の足に対応し得る範囲で、ある程度の数値的な差分を許容する意味を含んでいる。従って、本項に記載の犬用靴は、装着された犬の足を、健全な状態の犬の足の、つま先から指節部又は趾節部までと、指節部又は趾節部から中手部又は中足部までとが成す角度と等しい角度に、付勢することとなる。このため、より適切な角度に犬の足を付勢しながら、ナックリングを予防及び抑制するものとなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記のような構成であるため、犬用靴を利用してナックリングを予防及び抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴を示しており、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図2】(a)は犬の足を示す側面図であり、(b)は犬の足に装着した状態の図1の犬用靴を示す側面図である。
図3】弾性部材を引張した状態の図1の犬用靴を示す側面図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る犬用靴を示しており、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図5】本発明の第3の実施の形態に係る犬用靴を示しており、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図6図5に示した接続部近傍の拡大断面図であり、(a)は保持部材に力が作用していない状態、(b)は保持部材に力が作用している状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。なお、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10を示し、図2は、犬の足70及び犬の足70に装着した状態の犬用靴10を示している。図1に示されているように、犬用靴10は、袋状部12と、袋状部12から連続して形成され、犬の足に履かせるための開口部を有する筒状部14と、本実施例では2本の巻き付けベルト16と、付勢手段20とを含んでいる。
【0027】
袋状部12は、図2で確認できるように、犬の足70のつま先72から、指節部又は趾節部74までを覆うものであり、筒状部14は、袋状部12に続いて、犬の足70の中手部又は中足部76の一部までを覆うものである。ここで、筒状部14は、犬の足70の中手部又は中足部76の全体を覆うものであってもよく、犬の足70の手根部又は足根部78までを覆うものであってもよい。又、図1に示されるように、本実施例では、袋状部12及び筒状部14が、ラバー生地m1とメッシュ生地m2とナイロン生地m3とで縫製されて構成されている。なお、袋状部12及び筒状部14を構成する生地には、任意の生地を使用可能であり、各生地により構成する部位も任意である。
【0028】
巻き付けベルト16の各々は、布製の帯状部16aと、帯状部16aの端部16cと反対の端部に取り付けられた金属製のバックル部16bとで構成され、帯状部16aの一部が、袋状部12及び筒状部14を構成するナイロン生地m3に縫い付けられて固定されている。又、帯状部16aの一方の面(図1(a)で確認できる面と反対の面)には、面ファスナーが設けられており、帯状部16aのナイロン生地m3に縫い付けられた領域に、面ファスナーのフック部が設けられ、帯状部16aのそれ以外の領域に、面ファスナーのループ部が設けられている。なお、図1に示す巻き付けベルト16の構成は一例であり、その構成要素、構成材料、本数、袋状部12及び/又は筒状部14への取り付け位置及び取り付け方法、並びに、上記の面ファスナーに相当する結合手段には、任意のものが採用できる。
【0029】
上記のような構成の巻き付けベルト16は、犬用靴10が犬の足70に装着される際に、図2(b)に示すように用いられる。すなわち、まず、袋状部12及び/又は筒状部14の前方側(図中左側)に帯状部16aが巻き付けられ、帯状部16aの端部16c(図1(a)参照)がバックル部16bに通された後に、バックル部16bを基点として帯状部16aが折り返される。そのような状態から、帯状部16aは、袋状部12及び/又は筒状部14の前方側(図中左側)に再度巻き付けられることで、バックル部16bに通される前の領域と、バックル部16bに通された後の領域とが、重なる態様になる。その後、犬の足70への締め付け度合いの調整のために、帯状部16aの端部16cが引張られ、帯状部16aのナイロン生地m3に縫い付けられた領域に端部16cが達するように、帯状部16aが巻き付けられる。すると、帯状部16aの端部16c近傍の領域には、面ファスナーのループ部が設けられ、帯状部16aのナイロン生地m3に縫い付けられた領域には、面ファスナーのフック部が設けられていることから、ループ部とフック部とが結合され、巻き付けベルト16により、犬用靴10が犬の足70に固定されることとなる。
【0030】
又、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10において、付勢手段20は、袋状部12の、犬の足70のつま先72近傍に装着される部位12aと、筒状部14の、犬の足70の中手部又は中足部76の前側部分に装着される部位14aとを連結する、弾性部材30によって構成されている。更に、この弾性部材30は、本実施例において、犬用靴10の幅方向(図1(a)における左右方向)に離間して配置された、2本の紐状弾性部材32で構成されている。紐状弾性部材32の各々は、本実施例では紐ゴムで構成され、袋状部12側の端部が、連結部34を介して袋状部12の部位12aに着脱可能に連結され、筒状部14側の端部が、筒状部14の部位14aに縫い付けられて固定されている。連結部34は、袋状部12の部位12aに縫い付け等で固定される環状金具36と、環状金具36に対して着脱可能なカラビナやキーフック等の連結金具38とで構成され、連結金具38に紐状弾性部材32の端部が結び付けられている。すなわち、紐状弾性部材32は、連結金具38への結び目の位置が調整されることで、非引張状態での長さが調節されるようになっている。
【0031】
上記のような構成により、弾性部材30は、犬用靴10が犬の足70に装着されると、図2(b)に示されているような状態になる。すなわち、弾性部材30を構成する2本の紐状弾性部材32は、2本の巻き付けベルト16よりも前方側(図中左側)において、袋状部12の、犬の足70のつま先72近傍に装着される部位12aと、筒状部14の、犬の足70の中手部又は中足部76の前側部分に装着される部位14aとが接近するように、それらの間を連結している。更に、紐状弾性部材32は、弾性力を有するものであるため、図3に示されているように、袋状部12と筒状部14とが直列に配置される状態になるまで、引張可能なものである。
【0032】
ここで、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10の弾性部材30は、紐状弾性部材32を含む構成に限定されず、袋状部12の部位12aと、筒状部14の部位14aとを連結するものであれば、例えば、平板状のものであってもよい。又、弾性部材30や紐状弾性部材32には、所望の弾性を有する、例えばゴム製の布及び紐や、バネ等が用いられる。又、弾性部材30や紐状弾性部材32は、袋状部12の部位12a側の端部と、筒状部14の部位14a側の端部との双方が、連結部34を介して着脱可能に連結されていてもよく、或いは、各部位に固定されていてもよい。このとき、弾性部材30や紐状弾性部材32の各部位への固定方法は、縫い付けに限定されることなく、接着や別の方法で固定されていてもよい。又、着脱可能な連結部34の構成や、弾性部材30や紐状弾性部材32の、非引張状態での長さ調節が可能な構成も、図1に示した構成に限定されることはなく、別の構成であってもよい。更に、弾性部材30を構成する紐状弾性部材32の本数、設置位置等は任意である。
【0033】
さて、上記構成をなす本発明の第1の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10は、図1及び図2に示されているように、袋状部12、筒状部14、1つ以上の巻き付けベルト16、及び、付勢手段20を含むものであり、靴の本体部分は、袋状部12と筒状部14とで構成される。袋状部12は、犬の足70のつま先72から、前足の場合は指節部74まで、後足の場合は趾節部74までを覆う部位であり、筒状部14は、袋状部12から連続して形成され、少なくとも犬の足70の、前足の場合は中手部76の一部まで、後足の場合は中足部76の一部までを覆う部位である。これらは、犬の足70に直接触れても犬にストレスを感じさせないような柔らかい素材、例えば、各種の布材料や合成樹脂等で構成される。
【0034】
巻き付けベルト16は、袋状部12及び筒状部14を犬の足70に履かせた後に、袋状部12及び/又は筒状部14の周囲に巻き付けられることで、袋状部12及び筒状部14を犬の足70に固定するための、装着用のベルトである。巻き付けベルト16は、袋状部12や筒状部14の大きさ等に応じて、具備される本数や位置が決定され、図示の例では、2本の巻き付けベルト16が具備されている。又、巻き付けベルト16の形成材料には、各種の布材料が用いられる。更に、巻き付けベルト16は、図示の例のように、その一部が袋状部12や筒状部14に予め固定されていてもよく、或いは、袋状部12や筒状部の周囲に設けられたベルト通し用の穴に通されることで、袋状部12や筒状部14に保持されるものであってもよい。又、巻き付けベルト16の結合手段としては、図示の例のような面ファスナー等の、従来既知の各種の結合手段が利用される。好ましくは、巻き付けベルト16は、図示の例のように、袋状部12や筒状部14の周囲に、平面視で左巻きと右巻きとの互いに逆方向に巻き付けられる、2本以上の巻き付けベルト16を含んでいる。
【0035】
付勢手段20は、袋状部12の、犬の足70のつま先72近傍に装着される部位12aと、筒状部14の、犬の足70の中手部(前足の場合)或いは中足部(後足の場合)76の前側部分に装着される部位14aとを、接近させるように付勢するものであり、犬の歩行方向を基準とした靴の前方側(図1(b)や図2(b)中の左側)に設けられる。これにより、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10は、犬の前足又は後足に装着されると、付勢手段20によって、犬の足70のつま先72と中手部或いは中足部76の前側部分とが接近するように付勢することができる。従って、犬用靴10を装着した犬は、付勢手段20による付勢力に逆らって、つま先72を下側や後側に向けることが抑制されるため、足の甲をつけての歩行や、つま先72や爪を引きずりながらの歩行となってしまう、所謂ナックリングを予防及び抑制することが可能となる。
【0036】
又、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10は、袋状部12の、犬の足70のつま先72近傍に装着される部位12aと、筒状部14の、犬の足70の中手部(前足の場合)又は中足部(後足の場合)76の前側部分に装着される部位14aとを連結する、例えばゴムやバネ等の弾性部材30によって、付勢手段20が構成されているものである。この弾性部材30は、犬用靴10の装着のために巻き付けられた状態の巻き付けベルト16の、犬の歩行方向を基準とした靴の前方側を通って連結される。すなわち、弾性部材30は、図2(b)で確認できるように、犬の足70に装着された犬用靴10を側面視したときに、犬の足70のつま先72近傍と、中手部又は中足部76の前側部分との間を、略直線状に斜めに延在する態様となる。
【0037】
このような構成により、犬の足70のつま先72と中手部又は中足部76の前側部分とが接近するように付勢しながらも、犬の足70のつま先72と中手部又は中足部76の前側部分とが離間する方向への、弾性部材30の弾性力に応じた引張が許容される。このため、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10は、犬の足70に履かせる際の変形や、歩行中の犬の足70の動きへ追従する際の変形が、弾性部材30が伸縮する範囲で許容されるものとなる。これにより、犬用靴10を犬の足70に履かせる作業を妨げることなく、又、歩行中の犬にストレスを感じさせることなく、犬の足70のナックリングを予防及び抑制することができる。
【0038】
更に、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10は、付勢手段20を構成する弾性部材30が、1本以上の紐状弾性部材32を含むものであり、図示の例では2本の紐状弾性部材32を含んでいる。このような紐状弾性部材32として、例えば、図示の例のような紐状ゴムや、引張コイルバネ等が用いられる。紐状弾性部材32の本数は、犬用靴10の大きさや、利用する紐状弾性部材32の弾性力等に応じて決定される。又、紐状弾性部材32が複数本用いられる場合は、何れの紐状弾性部材32も、袋状部12のつま先近傍に装着される部位12aと、筒状部14の中手部又は中足部の前側部分に装着される部位14aとを連結するように配置される。その際、袋状部12或いは筒状部14への連結位置は、複数本の紐状弾性部材32が同一位置を共用してもよく、紐状弾性部材32毎に犬用靴10の幅方向(図1(a)における左右方向)等に異なっていてもよい。このような構成により、例えば、犬用靴10の幅方向に太い弾性部材30を用いる場合と比較して、取り回しを容易にすることができる。
【0039】
又、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10は、弾性部材30の2つの連結部、すなわち、袋状部12の、犬の足70のつま先72近傍に装着される部位12aへの連結部と、筒状部14の、犬の足70の中手部又は中足部76の前側部分に装着される部位14aへの連結部とのうち、少なくとも一方が、着脱可能に連結されているものである。図示の例では、袋状部12の部位12aへの連結部が、着脱可能な連結部34として構成されている。このような連結部34の構成として、図示の例のように、袋状部12又は筒状部14への連結位置に、環状金具36等を取り付け、そこへ、一端に弾性部材30が取り付けられた、カラビナやキーフック等の着脱可能な連結金具38を連結する構成が挙げられる。これにより、弾性部材30の連結部34を、必要に応じて着脱することができるため、犬用靴10を履かせる又は脱がせる際に弾性部材30の連結部34を取り外すことにより、犬用靴10を履かせる又は脱がせる作業を、より円滑に行うことが可能となる。
【0040】
加えて、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10は、弾性部材30の非引張状態での長さが調節可能であることで、犬の足70の大きさや、犬の足70のつま先72と中手部又は中足部76の前側部分との間に作用させる所望の付勢力に合わせた、適切な長さに、弾性部材30の長さを調節することができる。これにより、犬の足70の大きさ等に応じた適切な付勢力で付勢しながら、犬の足70のナックリングを予防及び抑制することが可能となる。
【0041】
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る犬用靴10’について説明する。図4において、図1図3に示した本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10と同一部分、若しくは相当する部分については、同一の符号を付している。なお、本発明の第2の実施の形態に係る犬用靴10’について、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10との相違部分のみ説明をすることとし、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10と同様の部分の構成や作用効果については、説明を省略する。又、犬の足70の構造については、適宜、図2(a)を参照されたい。
【0042】
図4に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る犬用靴10’は、袋状部12、筒状部14、2本の巻き付けベルト16、及び、付勢手段20を含み、付勢手段20が、弾性を有する生地状部材40により構成されているものである。生地状部材40は、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10においてはメッシュ生地m2によって形成されていた、袋状部12及び筒状部14の領域の一部を、メッシュ生地m2に替って形成している。より詳しくは、生地状部材40は、袋状部12の、犬の足70のつま先72近傍に装着される部位12aから、筒状部14の、犬の足70の中手部又は中足部76の前側部分に装着される部位14aまでの領域を形成している。すなわち、ラバー生地m1、メッシュ生地m2、ナイロン生地m3、及び、生地状部材40が縫製されて、袋状部12及び筒状部14が形成されている。
【0043】
又、生地状部材40は、袋状部12の、犬の足70のつま先72近傍に装着される部位12aと、筒状部14の、犬の足70の中手部又は中足部76の前側部分に装着される部位14aとを、接近させるように付勢するような弾性力を有する、ゴム製の布等で構成されている。更に、生地状部材40は、弾性力を有するものであるため、図3に示した犬用靴10の弾性部材30と同様に、袋状部12と筒状部14とが直列に配置される状態になるまで、引張可能なものである。なお、生地状部材40により形成される領域の形状や大きさは、袋状部12の部位12aと筒状部14の部位14aとを接近させるように付勢することができれば任意であり、例えば、メッシュ生地m2によって形成されている領域の全てが、生地状部材40により形成されていてもよい。
【0044】
上記構成をなす本発明の第2の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の第2の実施の形態に係る犬用靴10’は、図4に示すように、袋状部12の、犬の足70のつま先72近傍に装着される部位12aから、筒状部14の、犬の足70の中手部又は中足部76の前側部分に装着される部位14aまでの領域が、例えばゴムや伸縮可能な合成樹脂等が利用された弾性を有する生地状部材40によって構成されている。そして、この生地状部材40により、袋状部12の、犬の足70のつま先72近傍に装着される部位12aと、筒状部14の、犬の足70の中手部又は中足部76の前側部分に装着される部位14aとを、接近させるように付勢する付勢手段20が構成されるものである。すなわち、生地状部材40は、図4(b)で確認できるように、犬用靴10’を側面視したときの前方側(図中左側)の部位が、袋状部12の部位12aと筒状部14の部位14aとの間を、略直線状に斜めに延在する態様となる。
【0045】
そして、犬用靴10’が犬の足70に装着され、生地状部材40の上から巻き付けベルト16が巻き付けられると、生地状部材40が犬の足70にフィットするように変形する。このように変形した状態であっても、生地状部材40の弾性力により、犬の足70のつま先72と中手部又は中足部76の前側部分とを接近させるような付勢力を作用させることができる。更に、本発明の第2の実施の形態に係る犬用靴10’は、犬の足70に履かせる際の変形や、歩行中の犬の足70の動きへ追従する際の変形が、生地状部材40が伸縮する範囲で許容されるものである。これにより、犬用靴10’を犬の足70に履かせる作業を妨げることなく、又、歩行中の犬にストレスを感じさせることなく、犬の足70のナックリングを予防及び抑制することが可能となる。
【0046】
続いて、図5及び図6を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る犬用靴10”について説明する。図5において、図1図3に示した本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10と同一部分、若しくは相当する部分については、同一の符号を付している。なお、本発明の第3の実施の形態に係る犬用靴10”について、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10との相違部分のみ説明をすることとし、本発明の第1の実施の形態に係る犬用靴10と同様の部分の構成や作用効果については、説明を省略する。又、犬の足70の構造については、適宜、図2(a)を参照されたい。
【0047】
図5に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る犬用靴10”は、袋状部12、筒状部14、2本の巻き付けベルト16、及び、付勢手段20を含み、付勢手段20が、第1の板状部材50、第2の板状部材52、接続部54、及び、保持部材56(図6参照)を含むものである。第1の板状部材50及び第2の板状部材52は、形状が変形しない程度の肉厚及び剛性を有しており、図示の例では合成樹脂で形成されている。第1の板状部材50と第2の板状部材52とは、近接して、袋状部12と筒状部14とに取り付けられている。より詳しくは、第1の板状部材50は、袋状部12の前方側(図5(b)における左上側)に取り付けられ、第2の板状部材52は、筒状部14の前方側(図5(b)における左側)に取り付けられている。この際、第1の板状部材50及び第2の板状部材52の双方は、袋状部12及び筒状部14を形成しているメッシュ生地m2に、例えば接着や縫い付け等の固定方法で取り付けられる。又、本実施例において、第1の板状部材50及び第2の板状部材52の双方は、図5(a)における左右方向の中心部分を構成する平板状の平板部50a、52aと、平板部50a、52aの左右両側から、メッシュ生地m2に沿って僅かに丸みを帯びて延びる延在部とで構成されている。
【0048】
接続部54は、近接して配置された第1の板状部材50と第2の板状部材52とを、第1の板状部材50に対して第2の板状部材52が回動自在になるように接続するものであり、図示の例では、第1の板状部材50の平板部50aと、第2の板状部材52の平板部52aとを接続している。より詳しくは、図6に示すように、第1の板状部材50の平板部50aの、第2の板状部材52側の端部50bと、第2の板状部材52の平板部52aの、第1の板状部材50側の端部52bとを、第1の板状部材50及び第2の板状部材52の、メッシュ生地m2への取付面50c、52cと反対の面50d、52dにおいて接続している。本実施例における接続部54は、ヒンジ軸を用いない折り曲げ式の樹脂製のヒンジ機構で構成されており、第1の板状部材50及び第2の板状部材52と一体に成形されている。
【0049】
保持部材56は、図6で確認できるように、第1の板状部材50の端部50bと、第2の板状部材52の端部52bとの間に配置され、弾性変形可能なゴム等で構成されている。保持部材56は、図示の例では、第1の板状部材50の端部50bに、接着で固定されているが、第2の板状部材52の端部52bや、端部50bと端部52bとの双方に、接着やその他の固定方法で固定されていてもよい。又、保持部材56は、図6(a)に示すように、外部から力が加えられない状態において、第1の板状部材50に対する第2の板状部材52の配置角度Aが所定角度を成すように、接続部54と協働して、第1の板状部材50に対して第2の板状部材52を保持している。本実施例では、第1の板状部材50に対する第2の板状部材52の配置角度Aが、ナックリング等が発生していない正常な犬の足70のつま先72から指節部又は趾節部74までと、指節部又は趾節部74から中手部又は中足部76までとが成す角度a(図2(a)参照)と等しくなるように、保持部材56により保持されている。従って、図5に示すように、第1の板状部材50が取り付けられた袋状部12の前方側と、第2の板状部材52が取り付けられた筒状部14の前方側とは、第1の板状部材50と第2の板状部材52とが成す配置角度Aに従った配置関係となる。
【0050】
又、保持部材56は、弾性変形可能なものであり、第1の板状部材50及び/又は第2の板状部材52に、直接或いは間接的に、配置角度Aが小さくなるような方向への力が加えられると、図6(b)に示すように、端部50bと端部52bとの間で潰されるようにして弾性変形する。これにより、第1の板状部材50及び/又は第2の板状部材52は、保持部材56が弾性変形する範囲で、配置角度Aが小さくなる方向へ回動する。一方、第1の板状部材50及び/又は第2の板状部材52に、直接或いは間接的に、配置角度Aが大きくなるような方向への力が加えられると、以下のようになる。
【0051】
すなわち、本実施例では、保持部材56が第1の板状部材50の端部50bのみに固定されているため、第2の板状部材52は、保持部材56の影響を受けることなく、取り付け先のメッシュ生地m2が追従する範囲で、配置角度Aが大きくなる方向に回動する。又、本実施例と異なり、保持部材56が端部50bと端部52bとの双方に固定されている場合は、第1の板状部材50及び/又は第2の板状部材52は、保持部材56が端部50bと端部52bとに追従して延ばされるようにして弾性変形する範囲で、配置角度Aが大きくなる方向へ回動する。なお、本実施例において、保持部材56は、図6における紙面と直交する方向に延在する、断面が円形の円柱状のものであり、図6(a)では、第1の板状部材50の端部50bと、第2の板状部材52の端部52bとによって、僅かに潰された状態が図示されている。
【0052】
ここで、本発明の第3の実施の形態に係る犬用靴10”は、第1の板状部材50及び第2の板状部材52の、構成材料、形状、大きさ、及び、袋状部12や筒状部14に対する取り付け方法等が、上述した実施例のものに限定されず、例えば形状は、全体が平板状であってもよい。又、接続部54の構成や、保持部材56の構成材料、形状、大きさ等も、上述した実施例に限定されるものではない。更に、保持部材56を挟み込む、第1の板状部材50の端部50bと、第2の板状部材52の端部52bとは、図6の例では、断面が直線状の平坦に形成されているが、保持部材56を保持し易いように、断面が円弧状に内部に窪んだ形状であってもよい。この場合、配置角度Aが小さくなるような方向への力が加えられると、保持部材56は、図6における紙面と直交する方向にはみ出るようにして弾性変形することとなる。
【0053】
さて、上記構成をなす本発明の第3の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の第3の実施の形態に係る犬用靴10”は、図5及び図6に示されているように、袋状部12の、犬の足70のつま先72近傍に装着される部位12aと、筒状部14の、犬の足70の中手部又は中足部76の前側部分に装着される部位14aとを、接近させるように付勢する付勢手段20が、第1の板状部材50、第2の板状部材52、接続部54、及び、保持部材56を含むものである。第1及び第2の板状部材50、52は、夫々、袋状部12及び筒状部14の前方側(図5(b)における上側又は左側)に取り付けられるものであり、形状が変化しないような肉厚及び剛性を有する木材、金属、合成樹脂等で形成され、図示の例では合成樹脂で形成されている。
【0054】
又、接続部54は、第1の板状部材50と第2の板状部材52とを、回動自在に接続するものである。すなわち、接続部54により、第1及び第2の板状部材50、52の近接する端部50b、52b同士が、第1及び第2の板状部材50、52の、袋状部12又は筒状部14への取り付け面50c、52cとは反対の面50d、52dにおいて接続されることで、第1の板状部材50に対して第2の板状部材52が回動自在に接続される。このような接続部54として、図示の例では、ヒンジ軸を用いない折り曲げ式の樹脂製のヒンジ機構用いられており、第1及び第2の板状部材50、52が樹脂製である場合には、ヒンジ機構を構成する接続部54と第1及び第2の板状部材50、52とを一体に成形してもよい。
【0055】
一方、保持部材56は、接続部54によって接続された、第1の板状部材50の端部50bと、第2の板状部材52の端部52bとの間に配置される。ここで、接続部54による接続は、第1及び第2の板状部材50、52の一方の面50d、52d側のみにおいて行われるため、第1の板状部材50に対して第2の板状部材52が角度を成して配置されるとき、接続部54により接続された、第1の板状部材50の端部50bと、第2の板状部材52の端部52bとの間には、第1及び第2の板状部材50、52の肉厚と、上述した配置の角度とに応じた大きさの、隙間が形成される。保持部材56は、このような隙間に配置され、第1の板状部材50の端部50bと第2の板状部材52の端部52bとの、何れか一方又は双方に、接着等によって固定される。又、保持部材56は、第1の板状部材50に対して第2の板状部材52が所定角度を成すように、接続部54と協働して、第1の板状部材50に対して第2の板状部材52を保持する。すなわち、保持部材56は、上述した隙間において、第1の板状部材50の端部50bと第2の板状部材52の端部52bとにより挟み込まれることで、その形状や大きさに応じた配置角度Aに、第1の板状部材50に対して第2の板状部材52を保持する。
【0056】
更に、保持部材56は、例えばゴム製や発泡ウレタン製等の弾性変形可能なものである。このため、第1の板状部材50に対する第2の板状部材52の配置角度Aが小さくなる方向、すなわち、第1の板状部材50と第2の板状部材52とが平行になる方向に、保持部材56が変形する以上の力が加えられることで、図6(b)に示されているように、保持部材56が弾性変形されながら、第1の板状部材50に対する第2の板状部材52の配置角度Aが小さくなる。この際、保持部材56は、第1及び第2の板状部材50、52の端部50b、52b同士の間の隙間が小さくなるため、その隙間から一部がはみ出るような態様で弾性変形する。従って、保持部材56には、上記の如き力が加えられない状態において、所定角度を成すように第1の板状部材50に対して第2の板状部材52を保持し、かつ、上記の如き力が加えられた状態において、第1の板状部材50に対する第2の板状部材52の、配置角度Aが小さくなる配置変更を許容するように弾性変形する、適切な大きさ、形状、弾性力のものが用いられる。
【0057】
上記のような構成により、本発明の第3の実施の形態に係る犬用靴10”は、犬の足70に履かされる際又は犬の足70から脱がされる際に、犬の飼い主等によって、第1の板状部材50と第2の板状部材52とが平行になる方向に力が加えられることで、袋状部12と筒状部14とが略直列の配置状態になるため、犬用靴10”を犬の足70へ履かせる又は犬の足70から脱がせる作業を、容易にすることができる。一方、犬の足70に装着された状態では、保持部材56によって第1の板状部材50に対する第2の板状部材52の配置角度Aが保持されることで、第1の板状部材50が取り付けられた袋状部12の、犬の足70のつま先72近傍に装着される部位12aと、第2の板状部材52が取り付けられた筒状部14の、犬の足70の中手部又は中足部76の前側部分に装着される部位14aとを、接近させるような付勢力が作用する。更に、弾性変形可能な保持部材56は、歩行中の犬の足70の動きへ追従する程度の、第1の板状部材50に対する第2の板状部材52の配置角度Aの変化を許容する。このため、歩行中の犬にストレスを感じさせることなく、犬の足70のナックリングを予防及び抑制することが可能となる。
【0058】
更に、本発明の第3の実施の形態に係る犬用靴10”は、保持部材56により保持された状態で、第2の板状部材52が第1の板状部材50に対して成す配置角度Aが、正常な犬の足70の、つま先72から指節部(前足の場合)又は趾節部(後足の場合)74までと、指節部又は趾節部74から中手部(前足の場合)又は中足部(後足の場合)76までとが成す角度a(図2(a)参照)と、等しいものである。ここで、正常な犬の足70とは、ナックリング等が発生していない健全な状態の犬の足70を示している。従って、犬用靴10”は、装着された犬の足70を、健全な状態の犬の足70の、つま先72から指節部又は趾節部74までと、指節部又は趾節部74から中手部又は中足部76までとが成す角度aと等しい角度に、付勢することができる。このため、より適切な角度に犬の足70を付勢しながら、ナックリングを予防及び抑制することができる。
【0059】
なお、本発明の実施の形態に係る犬用靴は、上述した本発明の第1〜第3の実施の形態に係る犬用靴10、10’、10”に限定されるものではなく、袋状部12の、犬の足70のつま先72近傍に装着される部位12aと、筒状部14の、犬の足70の中手部又は中足部76の前側部分に装着される部位14aとを、接近させるように付勢する付勢手段20が、犬の歩行方向を基準とした前方側に設けられていればよいものである。例えば、付勢手段20は、正常な犬の足70が成す角度aと等しい配置角度Aを成す、犬用靴10”の第1の板状部材50と第2の板状部材52とが連続して一体に形成されたような形状を有し、第1の板状部材50及び第2の板状部材52と同じ位置に取り付けられる、形状記憶部材によって構成されていてもよい。このような形状記憶部材には、形状記憶合金、形態記憶加工が施された布帛、形状記憶ポリマー等が含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10、10’、10”:犬用靴、12:袋状部、12a:犬の足のつま先近傍に装着される部位、14:筒状部、14a:犬の足の中手部又は中足部の前側部分に装着される部位、16:巻き付けベルト、20:付勢手段、30:弾性部材、32:紐状弾性部材、34:着脱可能な連結部、40:生地状部材、50:第1の板状部材、50b:端部、50d:前方側の面、52:第2の板状部材、52b:端部、52d:前方側の面、54:接続部、56:保持部材、70:犬の足、72:つま先、76:中手部又は中足部、A:第1の板状部材に対する第2の板状部材の配置角度(所定角度)、a:正常な犬の足が成す角度
【要約】
【課題】犬用靴を利用してナックリングを予防及び抑制する。
【解決手段】犬用靴10’は、犬の足のつま先から指節部又は趾節部までを覆う袋状部12と、袋状部12から連続して少なくとも犬の足の中手部又は中足部までを覆う筒状部14と、1つ以上の巻き付けベルト16と、付勢手段20とを含んでいる。付勢手段20は、袋状部12の、犬の足のつま先近傍に装着される部位12aと、筒状部14の、犬の足の中手部或いは中足部の前側部分に装着される部位14aとを、接近させるように付勢するものである。これにより、犬の足に装着されると、付勢手段20によって、犬の足のつま先と中手部或いは中足部の前側部分とが接近するように付勢することができる。従って、犬用靴10’を装着した犬は、付勢手段20による付勢力に逆らって、つま先を下側や後側に向けることが抑制されるため、ナックリングを予防及び抑制することが可能となる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6