(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
mCMV−IE1遺伝子プロモーターは完全プロモーターである;IBDV VP2遺伝子は古典的なタイプのIBDVからのVP2タンパク質をコードする;転写ターミネーターはターミネーター領域およびポリA領域の両方を含む;転写ターミネーターはシミアンウイルス40(SV40)に由来する;hCMV−IE1遺伝子プロモーターはコアプロモーターである;NDV F遺伝子は長潜伏期性NDV株に由来する;発現カセットは、NDV F遺伝子の下流に位置する追加的転写ターミネーターを含む;ならびに追加的転写ターミネーターはhCMV−IE1遺伝子に由来することからなる群から選択される条件の1以上または全部が適用される、請求項1記載の組換えDNA発現カセット。
請求項1または2のいずれか1項記載の組換えDNA発現カセットを含む組換えシチメンチョウヘルペスウイルス(HVT)であって、該発現カセットが組換えHVTのゲノムのUs領域内に挿入されている、組換えシチメンチョウヘルペスウイルス(HVT)。
請求項1または2のいずれか1項記載の組換えDNA発現カセットを組換えHVTのゲノムのUs領域内に挿入することを含む、請求項4記載の組換えHVTの構築のための方法。
請求項1または2のいずれか1項記載の発現カセット、請求項3記載の組換えDNA分子、請求項4記載の組換えHVT、請求項5記載の宿主細胞またはそれらの任意の組合せの、家禽用ワクチンの製造のための使用。
請求項7または8のいずれか1項記載のワクチンを家禽に投与することを含む、IBDVおよび/もしくはNDVによる感染または疾患の関連徴候を予防または軽減するための方法。
【背景技術】
【0002】
マレック病(MD)は、世界中で発生している、家禽の高感染性疾患であり、幾つかの器官および神経におけるT細胞リンパ腫の存在により特徴づけられる。これは種々の症状、とりわけ、麻痺および死を招く。新たに生まれたニワトリは免疫母体からの母体由来抗体(MDA)により防御されうる。MDは、アルファヘルペスウイルス科およびマルディウイルス属に属するマレック病ウイルス(MDV)により引き起こさる。そのビリオンは包膜されており、約160nmのサイズを有する。カプシド内には100〜200kbpのサイズの線状二本鎖DNAの大きなゲノムが含まれる。
【0003】
種々のMDV血清型が存在し、それぞれは異なる特徴を有する。MDV血清型1(MDV1)およびMDV2は家禽に対して病原性であるが、MDV3はそうではない。MDV3は、シチメンチョウヘルペスウイルス1、七面鳥ヘルペスウイルスとして、より一般に公知であるが、典型的にはシチメンチョウヘルペスウイルス(HVT)として公知である。HVTは、ニワトリに対して非病原性であるシチメンチョウヘルペスウイルスとして1970年に記載された(Witterら,1970,Am.J.Vet.Res.,vol.31,p.525)。それ以来、PB1またはFC−126のようなHVT株が、MDV1またはMDV2により引き起こされるMDに対してニワトリにワクチン接種するために一般的に使用されてきた。より高い病原性のMDV1変異体に対する防御が必要な場合には、HVTはMDV2ワクチン株、例えばNobilis(商標)Marexine CA126+SB1(MSD Animal Health)または弱毒化MDV1ワクチン株、例えばRispens、例えばNobilis(商標)RISMAVAC+CA126(MSD Animal Health)におけるものと組合せて使用される。
【0004】
HVTはトリ末梢血リンパ球(PBL)において複製され、したがって、主に細胞性免疫系を対象とする長期間の免疫応答を誘導する全身性ウイルスである。
【0005】
HVTワクチンは凍結HVT感染細胞として商業的に入手可能であり、若い齢のニワトリに適用されうる。なぜなら、それは、例えばMDAの場合のように、HVTに対する抗体に比較的に非感受性だからである。新生ニワトリはその最初の日からMDVの感染の圧力に直面し、したがって、HVTワクチンがニワトリに可能な限り早く、例えば卵からのその孵化の日(第1日)または更にはまだ卵内に存在する孵化前に接種される。この最後のアプローチはいわゆる「卵内ワクチン接種」と称され、孵化の約3日前の、胚発生(ED)の第18日に一般に適用される胚ワクチン接種の一形態である。
【0006】
ワクチン自体として使用されることに加えて、HVTは家禽への種々の免疫原性タンパク質の発現および運搬のためのウイルスベクターワクチンとしても使用される(例えば、WO 87/04463を参照されたい)。典型的には、発現される遺伝子は、ワクチン接種が要求される、家禽に病原性である微生物の防御抗原(の一部)をコードしている。長年にわたり、例えばニューカッスル病ウイルス(NDV)(Sondermeijerら,1993,Vaccine,vol.11,p.349−358)、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)(Darteilら,1995,Virology,vol.211,p.481−490)からの及び寄生虫抗原(Cronenbergら,1999,Acta Virol.,vol.43,p.192−197)の多数の異種遺伝子がHVTベクターにおいて発現されている。
【0007】
したがって、家禽へのHVTベクターワクチンの投与は発現異種遺伝子に対する及びMDから防御するHVTに対する免疫応答を生成する。これは種々の市販のHVTベクターワクチン製品、例えば、NDVFタンパク質遺伝子:Innovax(商標)−ND(MSD Animal Health)およびVectormune(商標)HVT−NDV(Ceva)、またはIBDV VP2遺伝子:Vaxxitek(商標)HVT+IBD(Merial;旧称Gallivac(商標)HVT−IBD)およびVectormune(商標)HVT−IBD(Ceva)において適用される。
【0008】
あるいは、HVTベクターは、ニワトリの免疫応答を操作するために、治療用タンパク質、例えばサイトカインの発現および運搬のために使用されうる(WO 2009/156.367;Tarpeyら,2007,Vaccine,vol.25,p.8529−8535)。
【0009】
HVTのゲノムヌクレオチド配列は、例えば、GenBank(商標)からAF291866(株FC−126)として入手可能である。異種遺伝子をHVT内に挿入するための幾つかの方法が記載されており、例えば、異種組換え(Sondermeijerら,前掲)、コスミド再生(US 5,961,982)またはバクミド(細菌人工染色体)(Baigentら,2006,J.of Gen.Virol.,vol.87,p.769−776)の使用が挙げられる。
【0010】
HVTゲノムへの異種遺伝子構築物の挿入のための多数の遺伝的位置が研究されており、幾つかの適切な非必須遺伝子座が記載されており、例えば、HVTゲノムのユニーク短(Us)領域(EP 431.668)またはHVTユニーク長(UL)領域(EP794.257)におけるものが挙げられる。
【0011】
HVT用の発現カセットにおける異種遺伝子の発現を駆動するために種々のプロモーターが使用されており、例えば、PRV gpXプロモーター(WO 87/04463)、ラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター、SV40初期遺伝子プロモーター、ニワトリベータアクチン遺伝子プロモーター(EP 1.298.139)、またはヒトサイトメガロウイルス由来の前初期1遺伝子プロモーター(hCMV IE1)(例えば、ニワトリベータ)もしくはマウスサイトメガロウイルス由来の前初期1遺伝子プロモーター(mCMV IE1)が挙げられる(EP 728.842を参照されたい)。最近、NDVおよびIBDVの両方からの抗原を単一構築物から発現するHVTベクターワクチンが記載された(WO 2013/057.235)。
【0012】
組換えベクターの構築の場合、ベクターゲノム内に挿入されるべき異種核酸は、通常、抗原(の少なくとも免疫原性部分)をコードする少なくとも1つの異種遺伝子またはコード領域を含む。また、構築物は、異種遺伝子の発現を駆動するためのプロモーター配列、および調節シグナル、例えばエンハンサーまたは転写ターミネーターを含みうる。そのような組合されたインサートは、しばしば、「発現カセット」と称される。
【0013】
ベクターのゲノム内への発現カセットの挿入の効果は、それが挿入される位置および様態によって異なる。ゲノム上の最終結果が遺伝物質の付加であるのか、置換であるのか、または欠失であるのかによって、ベクターゲノムは、サイズが、それぞれ、より大きく、同じに、またはより小さくなりうる。また、ゲノムのコード化、非コード化または調節領域内に配置される場合、挿入の位置が影響を及ぼしうる。とりわけ、これらの選択は、得られるベクターワクチンの特性に、その複製および発現の能力ならびにその遺伝的安定性に関して影響を及ぼす。
【0014】
厳密な構築物が何であるにせよ、挿入される発現カセットは、生組換えウイルスベクターがその安定性および有効性に対する幾つかの生物学的ストレスを克服することを可能にするものでなければならない。第1に、異種インサートを受容した後に複製し、後代を生成する能力が挙げられる。これは、組換えベクターウイルス自体が、そのゲノム内への挿入にもかかわらず、尚も生存可能であることを示す。第2に、異種インサートの複製および発現を正確かつ完全に維持しながら、多数のサイクルにわたって宿主細胞系においてインビトロで複製する能力が挙げられる。これは、組換え体がその挿入によっては複製において減弱されず、挿入発現カセットが安定に維持され、発現されることを示す。第3に、インビボでの複製および発現が挙げられる。これは、組換えウイルスが、生きた動物において、例えばその免疫系によって課される、強い選択圧を克服しうること示す。この環境においては、ベクターによる異種遺伝子の発現の消失は、動物における、より速い複製に有利であろう。そのような「エスケープ突然変異体」は外来遺伝子内またはその調節配列内に突然変異または大きな欠失を獲得していた可能性があり、この突然変異体は無傷ウイルスベクターよりもよく増殖しうるであろう。最後に、最も重要なことに、標的におけるベクターの複製および異種遺伝子の発現は、ベクターが発現する異種インサートのドナーであった微生物に対する有効な免疫応答を生成しうることが必要である。
【0015】
したがって、組換えベクターワクチンは、標的において防御免疫応答を誘導し維持するためには、インビトロおよびインビボの両方におけるベクターおよびそのインサートの良好な複製ならびにインビボにおける異種遺伝子の有効な発現(好ましくは、高レベルで経時的に一貫した発現)をもたらす必要がある。
【0016】
特徴のこの組合せは、接種標的動物においてベクターワクチンが複製している場合、大規模生産に必要な並びに挿入外来遺伝子の連続的な発現および宿主免疫系に対する提示に必要な広範なインビトロ複製ラウンドを可能にするであろう。また、政府機関または規制当局から販売許可を得た後で市販品として現場に導入される組換えウイルスが満たさなければならない非常に高い安全性基準および生物学的安定性に適合するためには、複製および発現におけるこの安定性がベクターワクチンに要求される。
【0017】
ニューカッスル病(ND)および伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBD)は、世界中で発生する家禽の重要な疾患であり、動物愛護および経済運営の点で家禽産業に深刻な悪影響を及ぼしうる。これは、例えば、‘The Merck veterinary manual(2010,10th ed.,2010,C.M.Kahn編,ISBN:091191093X)および‘Disease of poultry’(2008,12th ed.,Y.Saif編,Iowa State Univ.press,ISBN−10:0813807182)のようなハンドブックに記載されている。
【0018】
NDは、モノネガウイルス目、特にパラミクソウイルス科に属するニューカッスル病ウイルス(NDV)により引き起こされ、それらの病原性に応じて異なる病原型に分類されうる。非病原性の長潜伏期型NDVは家禽においてほとんど症状を引き起こさない。これとは対照的に、亜病原性(中程度の病原性)および短潜伏期性(高病原性)NDV株は広範な疾患および致死を引き起こし、したがって、多数の国では届出伝染病である。疾患症状には呼吸器および神経異常が含まれ、最も顕著な徴候としては喘鳴および「甲状腺炎」が挙げられる。
【0019】
商業的家禽業においては、病原性NDV株により引き起こされる感染および/または疾患に対する防御は、典型的には孵化日における、生長潜伏期性NDV株、例えばNobilis(商標)ND Clone 30(MSD Animal Health)での家禽の通常のワクチン接種により達成される。
【0020】
NDVは非セグメント化マイナスセンス一本鎖RNAゲノムを有し、これは約15kbのサイズであり、6つの遺伝子を含有し、その代表例としては融合(F)糖タンパク質の遺伝子が挙げられる。Fタンパク質は宿主細胞へのNDVの付着および侵入に関与し、免疫優性タンパク質として、それはNDVに対する有効な免疫応答の基礎となりうる。NDV Fタンパク質は天然F0タンパク質として発現され、これは細胞外ペプチダーゼによる切断の際に活性化される。
【0021】
IBDは、ビルナウイルス科のメンバーである、「ガンボロ病ウイルス」とも称される伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)により引き起こされる。これらのウイルスは、二本鎖RNAの2つのセグメント(AおよびB)からなるゲノムを有する。大きいほうのセグメントAは110kDaのポリタンパク質をコードしており、ついでこれは自己タンパク質分解により切断されて成熟ウイルスタンパク質VP2、VP3およびVP4を形成する。これらのうち、VP2およびVP3はビリオンの構造カプシドタンパク質であり、VP2は主要宿主防御免疫原である。
【0022】
IBDVの場合、血清型1および2の2つの血清型が存在する.それらの2つの血清型はウイルス中和(VN)試験により区別されうる。血清型1ウイルスはニワトリに対して病原性であることが示されており、血清型2 IBDVはシチメンチョウにおいて亜急性疾患を引き起こすに過ぎない。
【0023】
歴史的には、IBDV血清型1ウイルスは、「古典的」IBDウイルスとして公知の1つの型のみからなるものであった。その後、いわゆる「変異体」IBDV株が出現し、これは、モノクローナル抗体のパネルを使用するウイルス中和試験により又はRT−PCRにより特定され識別されうる。これはWuら(2007,Avian Diseases,vol.51,p.515−526)により概説されている。よく知られている古典的IBDV株はD78、ファラグハー(Faragher)52/70、およびSTCである。
【0024】
IBDVは、鳥類の必須免疫器官であるファブリキウス嚢をその主要標的として、鳥類リンパ組織の急性高感染性ウイルス感染を引き起こす。感受性群における罹患率は高く、急激な体重減少および中等度ないし高度の死亡率を伴う。この疾患から回復する鳥類はファブリキウス嚢(の一部)の破壊による免疫不全を有しうる。このため、それらは二次感染を受けやすくなる。
【0025】
IBDに対して通常のワクチン接種は、弱毒化IBDV株を使用して家禽の一生における可能な限り早い時期に行われるが、これらは、IBDVに対するMDAのレベルが十分に減少した時(これは一般には孵化後15〜20日の間のあたりである)にのみ適用可能である。多数の「生」または不活化IBDVワクチンが商業的に入手可能である(例えば、Nobilis(商標)Gumboro D78(MSD Animal Health)のような「生」ワクチン)。
【0026】
費用効率を達成するための一般的なアプローチは、抗原の組合せを含む獣医用ワクチンを設計することである。このようにして、1回のワクチン接種ラウンドで一度に多数の疾患に対して動物を免疫することができる。これにより、時間および労力が節約できるだけでなく、そうでなければ反復ワクチン接種を受けなければならないことから生じるワクチン接種動物への不快感およびストレスも軽減される。これは、個々の注射により投与される必要があるワクチン(例えば、ウイルスベクターとしての組換えHVTに基づくワクチン)に、より一層よく当てはまり、したがって、この場合の組合せワクチンも非常に望ましく、HVTベクター自体からのMDV防御に加えて、幾つかの異なる疾患に対して一度で防御可能であることは大きな利点となろう。しかし、従来、単一の異種遺伝子インサートを含有する2つの別々のHVTベクターの単なる組合せは失敗に終わっている。複製ベクター間の干渉がワクチン接種標的において一方または他方を抑制状態にした。したがって、研究は単一組換えHVTベクターからの2以上の異種抗原の組合された発現および運搬に焦点を合わせている。
【0027】
幾つかの刊行物は、多遺伝子インサートを含むHVTベクター構築物を記載している。例えば、WO 93/025.665およびWO 96/005.291は二価および三価「ワクチン」を記載している(同様に、EP 719.864およびEP 1.026.246も)。しかし、記載されている多遺伝子構築物のほとんどは単に示唆されているに過ぎず、複数のインサートを含有する組換えベクターの幾つかだけが実際に構築され単離されたに過ぎない。ニワトリにおいてこれまでに試験されたのは非常に少数である。全体としては、複製の際のそれらの安定性または外来遺伝子発現レベルに関する結果は示されておらず、ましてや、標的動物における有効な免疫防御の誘導に関するデータは全く示されていない。
【0028】
実際、十分に試験されており、3以上のトリ病原体に対する有効なベクターワクチンであることが実証されている構築物としては、多遺伝子HVTベクターワクチンに関する多数の先行技術文献からは、WO 2013/057.235に記載されている、NDV F遺伝子およびIBDV VP2遺伝子を含むHVT構築物、ならびにWO 2013/057.236に記載されているHVTベクターILT−NDワクチンが挙げられるに過ぎない。
【0029】
残念ながら、製品開発中の長期試験では、HVP309と称される、WO 2013/057.235に記載されている主要構築物の1つは、適切な遺伝的安定性および異種インサートの持続的発現を示さなかった。このHVP309組換えHVTベクターは、ヒトサイトメガロウイルス前初期1遺伝子コアプロモーターにより駆動されるNDV F遺伝子、およびその下流に続く、ニワトリベータアクチン遺伝子コアプロモーターにより駆動されるIBDV VP2遺伝子を含有する発現カセットを含む。
【0030】
HVP309ベクター構築物の不安定性はインビトロおよびインビボでのその複製の後で明らかになった。HVP309ウイルスの1〜3%が、それらが異種遺伝子の一方または両方をもはや発現しないことを示したのである。これはワクチン有効性の観点からは望ましくなく、政府当局から販売認可を得る場合に障害となる。したがって、一貫した信頼性のある遺伝的安定性を有する、NDおよびIBDの両方に対する安全かつ有効なHVTベクターワクチンは現在のところ尚も存在しない。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の組換えDNA発現カセットは組換えHVTベクターウイルスワクチンの製造に使用可能であり、これは、IBDVおよびNDVによる感染または疾患の関連徴候の予防または軽減に有効であり、インビトロで継代された場合およびインビボで継代された場合の両方において一貫した且つ信頼しうる遺伝的安定性を有する。
【0040】
「組換え体」は、核酸分子または微生物の遺伝物質がその出発状態または天然状態と比べて修飾されていて、それが元々有していなかった遺伝的構成が生じている、核酸分子または微生物である。
【0041】
本発明における「発現カセット」は、本明細書に記載され定義されている遺伝子および調節要素を含む。所望により、発現カセットは、分子クローニングを可能にする、その作製および操作を補助しうる他のDNA要素(例えば、PCRプライマーまたは制限酵素認識のための部位)を含有していてもよい。発現カセットはDNAまたはRNA形態で存在しうるが、HVTベクターにおけるその意図される使用を考慮すると、発現カセットはDNAとして使用される。
【0042】
当業者に明らかなとおり、発現カセットは自己完結型発現モジュールであり、したがって、ベクターウイルスゲノムにおけるその配向は一般に重要ではない。それは、該カセットが全体として、例えば、HVTゲノムのUs領域内に2つの配向(すなわち、TRに向かう又はIRに向かう読取り)のいずれかで組込まれうることを意味する。その点に関して、
図1は、これらの2つの可能な配向の1つを示しているに過ぎない。しかし、特定の配向が望まれる場合には、発現カセットはベクターのゲノムからのフランキング部分と共に使用可能であり、該フランキング部分は、ベクターのゲノムの特定の遺伝子座における及び所望の配向でのその組込みを導きうる。
【0043】
本発明の組換えDNA発現カセットの、および本明細書に記載されている他の遺伝的要素の作製、構築および集合は、クローニング、トランスフェクション、組換え、選択および増幅を含む良く知られた分子生物学的技術により行われうる。これらの及び他の技術はSambrook & Russell:“Molecular cloning:a laboratory manual”(2001,Cold Spring Harbour Laboratory Press;ISBN:0879695773);Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology(J.Wiley and Sons Inc,NY,2003,ISBN:047150338X);C.Dieffenbach & G.Dveksler:“PCR primers:a laboratory manual”(CSHL Press,ISBN 0879696540);およびJ.BartlettおよびD.Stirling,“PCR protocols”(Humana press,ISBN:0896036421)のような標準的なテキストに非常に詳細に説明されている。
【0044】
本明細書中で用いる「含む」なる語(ならびに「含み」、「含まれ」および「含んで」のような変形)は、この用語が用いられている本文、段落、特許請求の範囲などに包含され又は含まれる、本発明に関して考えられる全ての要素および任意の可能な組合せに関するものであり、そのような要素または組合せが明示的に列挙されていない場合であっても、そのような要素または組合せはいずれも除外されないと意図される。
【0045】
したがって、いずれかのそのような本文、段落、特許請求の範囲などは、「含む」(またはその変形)なる語が「からなる」または「からなり」または「から実質的になる」のような語により置き換えられている1以上の実施形態に関するものでありうる。
【0046】
「5’から3’への方向」なる語は「下流方向」としても公知であり、当技術分野でよく知られている。「この順序で」なる語と一緒になって、それは、本発明の発現カセットを含む組換えHVTが複製され発現される宿主細胞の遺伝子発現装置を用いた場合に機能的となるために、その前または後にまとめて挙げられている要素が有することを要するお互いに対する相対的配向を示すものとして用いられる。当業者が認識するとおり、この方向は、「コード鎖」であるHVTの二本鎖DNAゲノムからのDNA鎖に関するものであり、それは、「+」または「センス」配向であるコード化mRNA分子に関するものである。
【0047】
それにもかかわらず、そして前記に対して偏見を持つことなく、HVT dsDNAゲノムの相補鎖(「鋳型」鎖)上では、挙げられている要素の相対的順序は同じであるが、そのDNA鎖上では、これらの要素の方向は3’から5’である。
【0048】
「遺伝子」なる語は、タンパク質をコードしうるDNAの部分を示すために用いられる。本発明の遺伝子は、好ましくは、完全なタンパク質をコードする。しかし、遺伝子はタンパク質の一部分をコードすることも可能であり、例えば、タンパク質の成熟形態(すなわち、「リーダー」、「アンカー」または「シグナル配列」を有さないもの)のみをコードしうる。その点において、本明細書中で用いる遺伝子はオープンリーディングフレームまたはORFに対応する。遺伝子は、タンパク質の特定の部分、例えば、免疫防御エピトープを含む部分をもコードしうる。
【0049】
この点において、本発明における「タンパク質」はアミノ酸の分子鎖である。タンパク質は、天然もしくは成熟タンパク質、プレ−もしくはプロ−タンパク質、またはタンパク質の機能的断片でありうる。とりわけ、ペプチド、オリゴペプチドおよびポリペプチドがタンパク質の定義内に含まれる。
【0050】
本発明における「プロモーター」は、下流コード領域の転写を指令する、生物のゲノム上の機能的領域であることがよく知られている。したがって、プロモーターは遺伝子の上流に位置する。
【0051】
プロモーターにより指令されるmRNA合成は「転写開始部位」(TSS)から始まる。産生されたmRNAは今度は、遺伝子の開始コドンから始まるタンパク質へと翻訳され、該開始コドンはオープンリーディングフレームにおける最初のATG配列(mRNAにおける最初のAUG)である。典型的には、TSSは開始コドンの30〜40ヌクレオチド上流に位置する。TSSは、例えばRACE技術により、遺伝子のmRNAの5’末端を配列決定することにより決定されうる。
【0052】
一般に、プロモーターは開始コドンのAの位置(これは一般にA+1として示される)の約1000ヌクレオチド上流に含まれ、ほとんどのプロモーターはヌクレオチド−500とA+1との間に位置する。
【0053】
プロモーターの命名法は、一般に、それが発現を制御する遺伝子に基づく。例えば、「mCMV−IE1遺伝子プロモーター」なる語は、mCMVからのIE1遺伝子の発現を本質的に駆動し、したがってその遺伝子の直上流に位置するプロモーターを意味する。IE1−遺伝子は詳細に記載されており、明確に認識可能な遺伝子であるため、そして幾つかのmCMVのゲノムは(全体的または部分的に)配列決定されているため、そのようなプロモーターは通常の技術により容易に特定されうる。例えば、基本的なプロトコールにおいては、プロモーターは、2つの連続する遺伝子の間の領域(例えば、上流遺伝子のポリAシグナルから下流遺伝子のTSSまで)を大雑把にサブクローニングによって容易に得られうる。ついで、プロモーターは標準的な試験により特定可能であり、例えば、プロモーターと疑われる部分を徐々に小さくしたものによりマーカー遺伝子を発現させることにより特定されうる。
【0054】
一般に、プロモーターは、転写の時間、持続時間、条件およびレベルに影響を及ぼす調節因子の結合に関与する幾つかの認識可能な調節領域、例えばエンハンサー領域を含有する。エンハンサー領域は一般に上流に位置するが、プロモーターは、転写因子の結合およびRNAポリメラーゼ自体の指令に関与する、より下流の領域をも含有する。この下流領域は、一般に、幾つかの保存されたプロモーター配列要素、例えばTATAボックス、CAATボックスおよびGCボックスを含有する。
【0055】
エンハンサー領域と下流領域との両方を含むプロモーターは「完全」プロモーターと称され、下流領域のみを含むプロモーターは「コア」プロモーターと称される。
【0056】
(ウイルス)ベクターにおける(異種)遺伝子の発現のためのプロモーターは、その下流のコード領域の転写を有効に駆動できる必要がある。これは、遺伝子に「機能的に連結された」プロモーターと称され、その場合、該遺伝子は該プロモーターの「制御下」にあり、または該プロモーター「により駆動」される。これは、発現カセットにおいて、プロモーターおよび遺伝子が有効に接近して同一DNA上で連結されており、それらの間に、有効な転写を妨げるシグナルまたは配列が存在しないことを一般に意味する。
【0057】
したがって、本発明の組換えDNA発現カセットにおいては、本発明におけるmCMV−IE1遺伝子プロモーターおよびhCMV−IE1遺伝子プロモーターは、それらの下流遺伝子、それぞれIBDV VP2遺伝子およびNDV F遺伝子に「機能的に連結」されている。
【0058】
「転写ターミネーター」は、RNAへのコード領域の転写の終結に関与する調節DNA要素である。一般に、そのような要素は、RNAポリメラーゼ複合体に転写を停止させうる二次構造、例えばヘアピンを有する部分をコードする。したがって、転写ターミネーターは、翻訳されるべき領域からの終止コドンの下流(3’非翻訳領域)に常に位置する。ターミネーターはポリアデニル化シグナルまたはポリAシグナルをも含みうる。これは、mRNA分子の輸送および安定性に関連した、ほとんどの真核生物mRNAで生じるポリアデニル化を誘導する。
【0059】
本発明においては、2つの異種遺伝子の間での転写ターミネーターの使用はそれらの発現の有効な分離をもたらして、RNA転写の生じうるリードスルーを防ぐ。
【0060】
本発明においては、ある遺伝子が、それを運搬する組換えHVTベクターに対して「異種」であると言えるのは、その遺伝子が、該組換えHVTベクターを作製するのに使用された親HVTに存在しない場合である。
【0061】
mCMV−IE1またはhCMV−IE1遺伝子プロモーターは当技術分野でよく知られており、種々の商業的供給源、例えば、クローニングおよび発現のための市販プラスミドの供給者から容易に入手可能である。IE1遺伝子は「主要IE遺伝子」とも称される。
【0062】
mCMV−IE1タンパク質はpp89とも称される。mCMV IE1遺伝子プロモーターは1985年に記載された(K.Dorsch−Haslerら,1985,PNAS,vol.82,p.8325)。異種発現におけるこのプロモーターの使用はWO 87/03.905およびEP 728.842に記載されている。完全なmCMV IE遺伝子座のヌクレオチド配列はGenBankからアクセッション番号L06816.1として入手可能である(2004年3月以降)。mCMV自体は当初からアクセッション番号VR−194としてATCCから入手可能であり、最近になって、これはアクセッション番号VR−1399として継続されている。
【0063】
完全形態のhCMV−IE1遺伝子プロモーターは約1.5kbのサイズであり、エンハンサー、コアプロモーターおよびイントロンからなり、それにより、プロモーター活性はイントロン領域へと進む。Koedoodら(1995、J.of Virol.,vol.69,p.2194−2207)を参照されたい。
【0064】
hCMV−IE1遺伝子プロモーターは、通常の分子生物学的手段および方法を用いて、IE1遺伝子に先行するゲノム領域をサブクローニングすることにより、hCMVウイルスのゲノム(これは広範に入手可能である)から入手可能である。あるいは、プロモーターは、例えば、Coxら(2002,Scand.J.Immunol.,vol.55,p.14−23)により記載されているpI17のような発現型プラスミド、または哺乳類発現ベクター、例えばpCMV(Clontech)もしくはpCMV−MCS系列(Stratagene;GenBank(商標)アクセッション番号AF369966)に由来する。
【0065】
hCMV−IE1遺伝子プロモーターから、多数の非常に類似した形態(例えば、GenBankからのもの)が公知である。そのようなホモログおよび変異体は本発明の範囲内である。
【0066】
本発明における「NDV Fタンパク質遺伝子」はよく知られており、配列情報は先行技術において広範に利用可能である。Fタンパク質遺伝子は、一般的に入手可能な種々のプラスミド構築物から得られうる。あるいは、それは、RNAウイルスを操作するための通常の技術を用いて、天然から単離されたNDVから得られうる。NDVは、血清学または分子生物学を用いて容易に特定されうる。
【0067】
本発明においては、NDV Fタンパク質遺伝子のホモログ、および例えば長潜伏期、亜病原または短潜伏期型NDVからの変異体が同等に適用可能であろう。なぜなら、Fタンパク質遺伝子配列自体がこれらの種々のNDV病原型において高度に保存されているからである。
【0068】
本発明の発現カセットの1つの実施形態においては、mCMV−IE1遺伝子プロモーターは、mCMV−IE1遺伝子のためのエンハンサー領域とコアプロモーター領域との両方を含む完全プロモーターである。完全mCMV−IE1遺伝子プロモーターは約1.4kbのサイズである。
【0069】
当業者によく知られているとおり、mCMV IE1遺伝子プロモーターの長さだけでなく、本発明の組換えDNA発現カセットを構成するその他の要素の長さにおいても、幾らかの変動が生じうる。これは、クローニングおよび構築のために用いられる厳密な条件の相違(例えば、異なる制限酵素部位、PCRクローニングプライマー、または使用されるクローニング分子の末端を適合させるための異なる条件の使用)から生じうる。その結果、全体的な発現カセットの安定性および有効性に影響を及ぼすことなく、構成要素の長さにおける幾らかの変動(より短い又はより長い)が生じうる。その場合、これらの長さの相違は重要ではなく、本発明の範囲内である。
【0070】
したがって、本発明におけるmCMV−IE1遺伝子プロモーターに関しては、「約1.4kb」は1.4kb±約25%、好ましくは±約20、15、12、10、8、6、5、4、3、2または更には±約1%(その順に好ましくなる)である。
【0071】
同様に、同等に有効であり安定である、プロモーター要素のホモログまたは変異体が使用されうる。
【0072】
したがって、1つの実施形態においては、本発明におけるmCMV−IE1遺伝子プロモーターは、配列番号1のヌクレオチド630−2020の領域の全長に対して少なくとも95%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む約1.4kbのDNA分子である。より好ましいのは、少なくとも96、97、98または更には99%(その順に好ましくなる)のヌクレオチド配列同一性である。
【0073】
1つの実施形態においては、mCMV−IE1遺伝子プロモーターは配列番号1のヌクレオチド630−2020の領域である。
【0074】
本発明の発現カセットの1つの実施形態においては、本発明におけるIBDV VP2遺伝子は、古典的な型のものであるIBDVからのVP2タンパク質をコードする。そのような遺伝子はよく知られており、それらの配列情報は先行技術において容易に入手可能である。例えば、GenBankアクセッション番号D00869(F52/70)、D00499(STC)またはAF499929(D78)を参照されたい。あるいは、この遺伝子は、ビルナウイルスを操作するための通常の技術を用いて、天然から単離された古典的IBDVのゲノムから得られうる。古典的な型のIBDVは、血清学または分子生物学を用いて容易に特定されうる。
【0075】
IBDV VP2遺伝子のホモログまたは変異体は同等の有効性および安定性を有しうるため、1つの実施形態においては、本発明におけるIBDV VP2タンパク質遺伝子は、配列番号1のヌクレオチド2052−3410の領域の全長に対して少なくとも90%のヌクレオチド配列同一性を有し、好ましくは、少なくとも92、94、95、96、97、98または更には99%(その順に好ましくなる)のヌクレオチド配列同一性を有する。
【0076】
1つの実施形態においては、本発明におけるIBDV VP2タンパク質遺伝子は古典的IBDV株Faragher(ファラグハー)52/70に由来する。
【0077】
1つの実施形態においては、本発明におけるIBDV VP2タンパク質遺伝子は配列番号1のヌクレオチド2052−3410の領域である。
【0078】
本発明の発現カセットにおいては、RNA転写の有効なターミネーターが提供される限り、特定のタイプの転写ターミネーターの選択は重要ではない。
【0079】
本発明の発現カセットの1つの実施形態においては、転写ターミネーターはターミネーター領域およびポリA領域の両方を含む。
【0080】
1つの実施形態においては、転写ターミネーターは、シミアンウイルス40(SV40)、好ましくはSV40後期遺伝子に由来する。このターミネーターおよび異種発現におけるその使用は長年にわたって分子ウイルス学において適用されており、それらの「pCMVβ」クローニングプラスミド(これは1980年代の終わりから商業的に入手可能である)と共にClontechにより商品化された。
【0081】
1つの実施形態においては、転写ターミネーターはSV40後期遺伝子に由来し、約0.2kbのサイズである。
【0082】
本発明における転写ターミネーターに関しては、厳密なサイズは重要ではないため、「約0.2kb」は0.2kb±約25%、好ましくは±約20、15、12、10、8、6、5、4、3、2または更には±約1%(その順に好ましくなる)である。
【0083】
1つの実施形態においては、SV40後期遺伝子に由来し、約0.2kbのサイズである転写ターミネーターは、配列番号1のヌクレオチド3441−3650の領域の全長に対して少なくとも95%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。より好ましいのは、少なくとも96、97、98または更には99%(その順に好ましくなる)のヌクレオチド配列同一性である。
【0084】
1つの実施形態においては、SV40後期遺伝子に由来する転写ターミネーターは配列番号1のヌクレオチド3441−3650の領域である。
【0085】
本発明の発現カセットの1つの実施形態においては、hCMV−IE1遺伝子プロモーターはコアプロモーターである。そのようなコアプロモーターは、典型的には、1kbのサイズより小さく、好ましくは約0.4kbのサイズである。
【0086】
記載されているとおり、本発明におけるhCMV−IE1遺伝子コアプロモーターに関しては、厳密なサイズは重要ではないため、「約0.4kb」は0.4kb±約25%、好ましくは±約20、15、12、10、8、6、5、4、3、2または更には±約1%(その順に好ましくなる)である。
【0087】
1つの実施形態においては、本発明におけるhCMV−IE1遺伝子プロモーターは、配列番号1のヌクレオチド3789−4149の領域の全長に対して少なくとも95%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む約0.4kbのDNA分子である。より好ましいのは、少なくとも96、97、98または更には99%(その順に好ましくなる)のヌクレオチド配列同一性である。
【0088】
1つの実施形態においては、hCMV−IE1遺伝子コアプロモーターは配列番号1のヌクレオチド3789−4149の領域である。
【0089】
本発明の発現カセットの1つの実施形態においては、NDV Fタンパク質遺伝子は長潜伏期型のNDVに由来する。
【0090】
好ましくは、長潜伏期性NDV株に由来するNDV Fタンパク質遺伝子はNDV株クローン30に由来する。
【0091】
1つの実施形態においては、本発明におけるNDV Fタンパク質遺伝子は配列番号1のヌクレオチド4174−5835の領域の全長に対して少なくとも90%のヌクレオチド配列同一性を有し、好ましくは、少なくとも92、94、95、96、97、98または更には99%(その順に好ましくなる)のヌクレオチド配列同一性を有する。
【0092】
1つの実施形態においては、本発明におけるNDV Fタンパク質遺伝子は配列番号1のヌクレオチド4174−5835の領域である。
【0093】
1つの実施形態においては、本発明の発現カセットは、NDV Fタンパク質遺伝子の下流に位置する追加的な転写ターミネーターを含む。
【0094】
適切な転写終結がもたらされ、安定性および発現が影響されない限り、NDV Fタンパク質遺伝子の下流に位置する追加的な転写ターミネーターは、本発明の発現カセット内にIBDV VP2タンパク質遺伝子とhCMV−IE1プロモーターとの間に存在する転写ターミネーターと同じ又は異なることが可能である。
【0095】
1つの実施形態においては、該追加的転写ターミネーターはhCMV−IE1遺伝子に由来する。好ましくは、該追加的転写ターミネーターは約0.3kbのサイズである。
【0096】
hCMV−IE1遺伝子に由来する追加的転写ターミネーターに関しては、厳密なサイズは重要ではないため、「約0.3kb」は0.3kb±約25%、好ましくは±約20、15、12、10、8、6、5、4、3、2または更には±約1%(その順に好ましくなる)である。
【0097】
1つの実施形態においては、hCMV−IE1遺伝子に由来する約0.3kbのサイズの追加的転写ターミネーターは、配列番号1のヌクレオチド5847−6127の領域の全長に対して少なくとも95%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。より好ましいのは、少なくとも96、97、98または更には99%(その順に好ましくなる)のヌクレオチド配列同一性である。
【0098】
1つの実施形態においては、hCMV−IE1遺伝子に由来する追加的転写ターミネーターは配列番号1のヌクレオチド5847−6127の領域である。
【0099】
本発明の組換えDNA発現カセットの1つの実施形態においては、
・mCMV−IE1遺伝子プロモーターは完全プロモーターである、
・IBDV VP2遺伝子は古典的なタイプのIBDVからのVP2タンパク質をコードする、
・転写ターミネーターはターミネーター領域およびポリA領域の両方を含む、
・転写ターミネーターはシミアンウイルス40(SV40)に由来する、
・hCMV−IE1遺伝子プロモーターはコアプロモーターである、
・NDV F遺伝子は長潜伏期性NDV株に由来する、
・発現カセットは、NDV F遺伝子の下流に位置する追加的転写ターミネーターを含む、ならびに
・追加的転写ターミネーターはhCMV−IE1遺伝子に由来する
ことからなる群から選択される条件の1以上または全部が適用される。
【0100】
1つの実施形態においては、本発明の組換えDNA発現カセットは、HVT由来の遺伝子からの5’および/または3’フランキング領域を含む。これらのフランキング領域は、所望の配向でのベクターゲノム上の標的遺伝的挿入遺伝子座への挿入を導く相同組換えを可能にする。
【0101】
好ましい実施形態においては、本発明の組換えDNA発現カセットは両側においてHVT Us2遺伝子の部分に隣接している。
【0102】
一例は、配列番号1に示されているDNA配列である。
【表1】
【0103】
1つの実施形態においては、本発明の組換えDNA発現カセットは約5.5kbのサイズである。記載されているとおり、本発明の組換えDNA発現カセットに関しては、厳密なサイズは重要ではないため、そのサイズは約5.5kbであり、これは5.5kb±約25%、好ましくは±約20、15、12、10、8、6、5、4、3、2または更には±約1%(その順に好ましくなる)を意味する。
【0104】
記載されているとおり、本発明の組換えDNA発現カセットの要素のホモログまたは変異体は同等に安全であり、安定しており、有効でありうる。
【0105】
したがって、1つの実施形態においては、本発明の組換えDNA発現カセットは、配列番号1のヌクレオチド630−6127の領域の全長に対して少なくとも95%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む約5.5kbのDNA分子である。より好ましいのは、少なくとも96、97、98または更には99%(その順に好ましくなる)のヌクレオチド配列同一性である。
【0106】
1つの実施形態においては、本発明の組換えDNA発現カセットは配列番号1のヌクレオチド630−6127の領域である。
【0107】
本発明の組換えDNA発現カセットの簡便な構築、操作および使用を促進するために、これ自体がDNA分子内に含まれうる。
【0108】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、本発明の組換えDNA発現カセットを含む組換えDNA分子に関する。
【0109】
1つの実施形態においては、本発明の組換えDNA分子は、本発明の組換えDNA発現カセットを含むクローニングプラスミドからなる。一般的なクローニングプラスミドの例としては、例えば、pBR322またはpUC系からのプラスミドが挙げられる。これらは広範に商業的に入手可能である。
【0110】
本発明の組換えDNA分子であるプラスミドの1つの実施形態においては、該プラスミドは、細菌における増幅の際のプラスミドのコピー数を小さな数に抑制する、大きなインサートの安定な維持を可能にする調節配列を含有しうる。大きなインサートのためのそのようなクローニングプラスミドはコスミドまたはバクミドとして一般に公知である。
【0111】
本発明の組換えDNA分子をトランスフェクション法において使用する場合、それは一般に「導入ベクター」、「シャトルベクター」または「供与(ドナー)プラスミド」と称される。この場合、本発明の組換えDNA分子は本発明の組換えDNA発現カセットを含み、該カセットは、両側において、挿入を導くベクターゲノム由来の配列に隣接していることが可能である。
【0112】
典型的には、トランスフェクションにおいて使用される導入ベクターはそれ自体はベクターのゲノム内に組込まれず、それは、それを運搬する発現カセットの組込みを促進するに過ぎない。
【0113】
1つの実施形態においては、本発明の組換えDNA分子は配列番号1のヌクレオチド630−6127の領域を含む。
【0114】
1つの実施形態においては、本発明の組換えDNA分子は、配列番号1に示されているDNA分子を含む。
【0115】
本発明の組換えDNA発現カセットは、好ましくは、組換えHVTベクターウイルスワクチンの製造に使用される。
【0116】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、本発明の組換えDNA発現カセットを含む組換えシチメンチョウヘルペスウイルス(HVT)であって、該発現カセットが組換えHVTのゲノムのUs領域内に挿入される、組換えHVTに関する。
【0117】
「シチメンチョウヘルペスウイルス」(HVT)なる語は、その分類群メンバーの特徴的特性、例えば形態学的特性、ゲノム特性および生化学的特性、ならびにその群の生物学的特徴、例えばそれらの生理学的、免疫学的または病理学的挙動を示すウイルス微生物を意味する。これはまた、例えば亜種、株、分離体、遺伝子型、変異体、サブタイプ、血清型、病原型またはサブグループなどとして、いずれかの方法で細分されたHVTをも含む。
【0118】
新たな洞察が新たな又は異なる分類群への再分類をもたらして、本発明におけるHVT、MDV、NDVまたはIBDVのような本明細書に記載の微生物の現在の分類学的分類はそのうち変更されうることが当業者に明らかであろう。しかし、これは微生物自体またはその生物学的挙動を変化させるものではなく、その科学的名称または分類のみを変更するものであるため、そのような再分類された微生物は依然として本発明の範囲内である。
【0119】
本発明においては、組換えDNA発現カセットを「含む」は、本発明の組換えDNA発現カセットの、HVTのゲノム内への挿入に関するものである。この挿入は、原理上は、任意の利用可能な技術により行われることが可能であり、HVTベクターのゲノムに対する挿入、置換または欠失をもたらしうる。ただし、生じる組換えHVTは、安全で安定で有効な多価抗原発現のその好ましい効果を示しうるものでなければならない。詳細および実施例は後記に記載されている。
【0120】
本発明の組換えHVTは、単一遺伝子座内およびユニーク短(Unique short)領域またはUsとして公知のそのゲノムの領域内に、本発明の組換えDNA発現カセットを含む。HVTのUs領域はよく知られており、容易に特定可能である。それは、HVTゲノム内の2つのよく知られた反復要素(すなわち、IRSおよびTRS)の間に位置する。
【0121】
HVT Us領域に関しては、幾つかの挿入遺伝子座が公知であり、原理上は、これらは全て、本発明における使用に適している。ただし、挿入された発現カセットおよび生じる組換えHVTはそれらの安定で有効な特性を示しうるものでなければならない。
【0122】
1つの実施形態においては、本発明の組換えHVTは、組換えHVTのゲノムのUs10遺伝子内またはUs2内に挿入された本発明の組換えDNA発現カセットを含む。
【0123】
本発明における特に安定で有効な組換えHVTベクターは、本発明における単一遺伝子挿入遺伝子座としてHVTゲノムのUs2遺伝子を使用することにより製造可能である。
【0124】
したがって、本発明の組換えHVTの1つの実施形態においては、本発明の組換えDNA発現カセットは組換えHVTのゲノムのUs2遺伝子内に挿入される。
【0125】
本発明においては、「Us2遺伝子内」または「Us10遺伝子内」なる語は、それぞれUs2またはUs10遺伝子を含むHVTゲノムの領域内に挿入が行われたことを示すと意図される。これは該遺伝子のプロモーターまたはそのコード領域を意味しうる。また、HVTゲノムに対する挿入の正味の効果は、記載されているとおり、挿入、置換または欠失でありうる。そのような挿入の予想される結果は、生じた組換えHVTにおいて、Us10遺伝子と比較した場合のUs2遺伝子の正常なコード化機能が阻害され又は更には完全に阻止されることである。
【0126】
1つの実施形態においては、HVT Us領域内の組換えDNA発現カセットの挿入は挿入である。すなわち、クローニングプロセスの結果として欠けている又は置換されている可能性のある少数のヌクレオチドは別として、Usゲノム領域内の実質的な欠失は生じない。したがって、このように、サイズの正味の増加と共に、生じる組換えHVTは、その親のゲノムより大きなゲノムサイズを有する。
【0127】
1つの実施形態においては、本発明の組換えHVTは、配列番号1のヌクレオチド630−6127の領域の全長に対して少なくとも95%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む約5.5kbのDNA分子を含む。より好ましいのは、少なくとも96、97、98または更には99%(その順に好ましくなる)のヌクレオチド配列同一性である。
【0128】
1つの実施形態においては、本発明の組換えHVTは配列番号1のヌクレオチド630−6127の領域を含む。
【0129】
1つの実施形態においては、本発明の組換えHVTは、配列番号1に示されているヌクレオチド配列を含む。
【0130】
ワクチン用途に安全な本発明の組換えHVTを製造するためには、組換えHVTは、若いトリまたは胚への接種に適していることが知られており良く複製する樹立HVTワクチン株(例えば、HVTワクチン株PB1またはFC−126)である親HVTに基づくものでありうる。これらは一般に入手可能である。FC−126はATCC(VR#584−C)から入手可能であり、PB1は例えばMSD Animal Healthから商業的に入手可能である。本発明の組換えDNA発現カセットの組込みは親HVTのビルレンス(毒性)または病原性を増強しない。それどころか、HVTは自然では非病原性であるため、ビルレンスへの復帰は予想され得ない。
【0131】
したがって、1つの実施形態においては、本発明の組換えHVTの製造に使用される親HVTはHVTワクチン株、好ましくは、PB1のHVT株またはFC−126株である。
【0132】
本発明の組換えHVTは生組換え担体微生物または「ベクター」ウイルスであり、これは家禽のワクチン接種に有利に使用されうる。それは、NDおよびIBDに対する安全かつ有効なワクチンである特徴を兼ね備えており、そしてまた、遺伝的に安定である。
【0133】
本発明における「遺伝的に安定」であるは、本発明の組換えHVTの遺伝的構成が後続のウイルス複製ラウンドにおいて変化しないこと、または少なくとも、検出可能な程度で変化しないことを意味する。あるいは、不安定な構築物は挿入異種遺伝子の一方または両方の発現の喪失を招きうる。この安定性は、通常の技術で、例えば、本発明の組換えHVTを細胞培養内の後続の継代およびそれに続く動物における継代に付すことにより、簡便にモニターされうる。これらの工程中で再単離されたウイルスを細胞培養皿上にプレーティングし、寒天で覆い、HVT特異的プラークが視認可能となるまでインキュベートすることが可能であり、これらは全て、通常の技術を用いて行われうる。つぎに、免疫蛍光アッセイ(IFA)法において適当な抗体調製物ならびに適当な陽性および陰性対照を使用して、該プラークをFまたはVP2タンパク質の発現に関して染色することが可能である。蛍光を示さないプラークの数を記録することが可能であり、この場合、個々のサンプルの少なくとも100個のプラークをモニターすべきである。
【0134】
本発明の組換えHVTの遺伝的安定性に関する厳密な試験は、15連続組織培養継代、ならびにそれに続く、標的動物への接種、再単離およびチャレンジ−感染を適用することである。詳細は後記に記載されている。
【0135】
驚くべきことに、前記の厳密な安定性試験における本発明の組換えHVTは、試験したプラークの全てにおいて、そして15細胞継代および1動物継代に関して、NDV FおよびIBDV VP2タンパク質遺伝子の両方の存在および発現を維持することが判明した。詳細は実施例に記載されている。
【0136】
これは、従来のHVT組換え体で見出された結果に対する、そして本発明における実験の経過中に製造され試験された他の組換え体に対する大きな且つ非常に顕著な改善である。
【0137】
本発明の組換えHVTは、一般的な技術により、主に初代ニワトリ細胞、典型的にはニワトリ胚線維芽細胞(CEF)のインビトロ培養における複製により増幅されうる。これらはニワトリ胚のトリプシン処理により調製可能であり、全て当技術分野でよく知られている。CEFを単層内にプレーティングし、HVTを感染させる。このプロセスは工業規模の製造まで大規模化されうる。
【0138】
一般に、組換えHVTは、組換えHVTをその細胞随伴形態で含有する感染宿主細胞を回収することにより収集される。凍結および保存中の安定化をもたらすために、これらの細胞を適当な担体組成物中に入れる。つぎに感染細胞を一般にはガラスアンプル内に充填し、それを密封し、凍結し、液体窒素中で保存する。
【0139】
HVT細胞随伴凍結保存が好ましいが、液体窒素の使用が不可能な場合には、代替手段として凍結乾燥を用いる。これは、例えば全培養を使用する超音波処理またはフレンチプレスによる細胞破壊によりHVTがその宿主細胞から単離されうるというHVTの好ましい特徴を利用する。これを遠心分離により清澄化することが可能であり、ついで安定剤中に入れ、長期保存のたえに凍結乾燥する。
【0140】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、本発明の組換えHVTを含む宿主細胞に関する。
【0141】
本発明における「宿主細胞」は、HVTによる感染および複製に感受性である細胞である。そのような細胞の例としては鳥類細胞、特にリンパ球または線維芽細胞が挙げられる。
【0142】
1つの実施形態においては、本発明の宿主細胞は初代鳥類細胞、すなわち、細胞系からではなく動物または動物器官から直接誘導された細胞である。典型的には、初代細胞は少数の限られた数の細胞分裂を行いうるに過ぎず、一方、細胞系からの細胞は有効に不死であり、適切な条件下で分裂し続けうる。
【0143】
1つの実施形態においては、本発明の初代鳥類宿主細胞は初代ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)である。
【0144】
1つの実施形態においては、本発明の宿主細胞は不死化鳥類細胞である。幾つかの不死化鳥類細胞が例えばWO 97/044.443およびWO 98/006.824に記載されている。
【0145】
好ましい実施形態においては、本発明の不死化鳥類宿主細胞は不死化CEF、好ましくは、EP 14196345に記載されている不死化CEFである。
【0146】
クローニングおよびトランスフェクションの種々の方法により、本発明の組換えDNA発現カセットを使用して、組換えHVTのゲノムのUs領域内に安定に組込まれた発現カセットを含む本発明の組換えHVTを得ることが可能である。
【0147】
したがって、本発明のもう1つの態様は、本発明の組換えDNA発現カセットを組換えHVTのゲノムのUs領域内に挿入することを含む、本発明の組換えHVTの構築のための方法に関する。
【0148】
本発明の組換えDNA発現カセットをHVTゲノム内に挿入して本発明の組換えHVTを得ることは、全て当技術分野で公知の種々の方法で行われうる。1つの簡便な方法は、導入ベクターを使用することであり、1つの実施形態においては、これは本発明の組換えDNA分子でありうる。
【0149】
HVTゲノム内への本発明の組換えDNA発現カセットの直接的挿入は、本発明の組換えHVTを製造するための好ましい方法である。しかし、そのような組換えHVTが製造されうる2つのよく知られた方法が存在する。例えば、間接的挿入により、単一または複数のラウンドのトランスフェクションにおいて発現カセットの複数の部分をHVT内に挿入する。これらの部分は、全部分が組込まれたら全体的なインサートが完全発現カセットを形成するように(例えば、それらの部分の順序および配向を導くために重複領域を使用することにより)工夫されうる。別法は、EP 996.738に記載されているバクミドの使用である。
【0150】
本発明の組換えHVTを製造するための好ましい挿入技術は、例えばWO 93/25.665に記載されているとおり、コスミド再生を用いることによるものである。この技術は本質的には、HVTゲノムの大きな重複サブゲノム断片のセットを使用して、宿主細胞内へのコトランスフェクションにより完全HVTゲノムを再構築する。コスミドの1つは、本発明の組換えDNA発現カセットを含むようにされているため、これは組換えHVTのゲノム内に安定に組込まれる。
【0151】
記載されているとおり、本発明の組換えHVTの好ましい使用は家禽用ワクチンにおけるものである。
【0152】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、本発明の組換えHVTおよび/または本発明の宿主細胞と医薬上許容される担体とを含む家禽用ワクチンに関する。
【0153】
「ワクチン」は、免疫学的に活性な化合物を医薬上許容される担体中に含む組成物であることがよく知られている。「免疫学的に活性な化合物」または「抗原」は、接種標的の免疫系により認識され免疫応答を誘導する分子である。該応答は先天性または後天性免疫系に由来するものであることが可能であり、細胞性および/または体液性タイプのものでありうる。
【0154】
本発明のワクチンは、NDおよびIBDに対するニワトリの安全で早期の防御をもたらす。この効果は、NDVまたはIBDVのそれらのそれぞれの標的器官における野外感染による増殖性感染の確立または拡散を予防または低減することにより得られる。これは、例えば、ウイルス負荷を低減すること又はウイルス複製の持続期間を短縮することにより達成される。そしてこれは、ウイルス感染により引き起こされる疾患の病変および関連臨床徴候の数、強度または重症度の、標的動物における低減を招く。そのようなワクチンはNDVまたはIBDV「に対する」ワクチンと口語的に称される。
【0155】
NDおよびIBDに対するワクチンの有効性に加えて、本発明のワクチンは、HVT自体によるワクチン接種能ゆえに、MDに対しても有効である。これはUs領域内への本発明の組換えDNA発現カセットの挿入によっては低下しない。しかし、ある領域におけるMDV野外ウイルスの病原性に応じて、MDVに対するワクチンとして完全に有効にするためには、記載されているもう1つのMDワクチン成分を加えることが必要かもしれない。
【0156】
本発明のワクチンの有効性の決定は通常の実施者の技量の範囲内に十分に含まれ、例えば、ワクチン接種後に免疫応答をモニターし、またはチャレンジ感染後の臨床症状もしくは死亡の出現を試験し(例えば、標的の疾患徴候、臨床スコア、血清学的パラメータをモニターすることにより、またはチャレンジ病原体の再単離により)、模擬ワクチン接種動物において見られるワクチン接種−チャレンジ応答とこれらの結果を比較することにより行われうる。NDに対するワクチン有効性を評価するためには、チャレンジ生存は簡便な尺度であり、IBDの場合、嚢における疾患の臨床徴候が簡便に使用されうる。
【0157】
本発明のワクチンの種々の実施形態、優先性および具体例(実施例)は後記に記載されている。
【0158】
本発明における「家禽」なる語は、獣医実施に関連したトリの種を意味し、それはHVT接種に感受性であり、好ましい家禽種はニワトリ、シチメンチョウおよびウズラである。ニワトリが最も好ましい種である。
【0159】
本発明においては家禽は任意のタイプ、品種または変種(例えば、産卵鶏、種鶏、ブロイラー、組合せ品種またはそのような品種のいずれかの親系統)のものでありうる。好ましいタイプはブロイラー、種鶏および産卵鶏である。最も好ましいのはブロイラーニワトリである。なぜなら、このタイプのトリの場合、NDおよびIBDに対する早期防御は生存、成長速度および飼料要求率の改善をもたらすからである。
【0160】
「医薬上許容される担体」は、標的において無害で十分に許容される一方でワクチンの安定化および投与を補助すると意図される。そのような担体は例えば滅菌水または滅菌生理食塩水でありうる。より複雑な形態においては、担体は、例えば、安定剤または保存剤のような他の添加剤を含みうるバッファーでありうる。詳細および具体例は、例えば、よく知られたハンドブック、例えば“Remington:the science and practice of pharmacy”(2000,Lippincott,USA,ISBN:683306472)および“Veterinary vaccinology”(P.Pastoretら編,1997,Elsevier,Amsterdam,ISBN 0444819681)に記載されている。
【0161】
本発明においては、ワクチンが細胞随伴HVTである場合には、医薬上許容される担体は、好ましくは、培地および約10% 血清および約6% DMSOの混合物である。血清は、細胞培養に通常使用される任意の血清、例えば胎児または新生ウシ血清でありうる。
【0162】
本発明のワクチンは、当業者によって容易に適用可能な本明細書に記載されている方法により、本発明の組換えHVTから製造される。例えば、本発明の組換えHVTを、トランスフェクションおよび組換えにより、本発明の組換え発現カセットの挿入により構築する。つぎに所望の組換えHVTを選択し、より小さな又は大きな容量(好ましくはインビトロ細胞培養、例えばCEF)において工業的に増幅する。そのような培養から、該ウイルスを含む懸濁液を全感染細胞または無細胞調製物(細胞破壊により得られる)として回収する。この懸濁液をワクチンに製剤化し、最終製品をパッケージングする。ついで細胞随伴ワクチンを液体窒素中で保存し、ワクチンを−20または+4℃で凍結乾燥する。品質、量および無菌性に関する詳細な試験の後、ワクチン製品を発売する。
【0163】
ワクチン製剤に適用される一般的技術および考慮事項は当技術分野でよく知られており、例えば政府当局(薬局方)ならびに“Veterinary vaccinology”および“Remington”(共に前掲)に記載されている。
【0164】
1つの実施形態においては、本発明のワクチンは細胞随伴ワクチンである。
【0165】
「細胞随伴」は、本発明の組換えHVTに感染した本発明の宿主細胞を含むことを意味する。したがって、このタイプのワクチンは、共に本発明の宿主細胞と組換えHVTとの両方を含む。
【0166】
1つの実施形態においては、本発明のワクチンは無細胞ウイルスワクチンである。
【0167】
「無細胞」は、本発明の宿主細胞を実質的に含有することなく本発明の組換えHVTを含むことを意味する。しかし、無細胞ワクチンは、細胞破壊プロセスから残存した(非常に)少量の宿主細胞断片を含有しうる。無細胞ワクチンは好ましくは凍結乾燥形態である。凍結乾燥のための方法は当業者に公知であり、種々の規模における凍結乾燥のための装置が商業的に入手可能である。
【0168】
したがって、1つの実施形態においては、本発明の無細胞ウイルスワクチンは凍結乾燥形態である。
【0169】
凍結乾燥ワクチンを再構成(還元)するためには、それを生理的に許容される希釈剤に懸濁させる。ワクチンの最良の品質を確保するために、これは一般に投与の直前に行われる。希釈剤は例えば滅菌水または生理食塩水でありうる。ワクチンの再構成に使用される希釈剤はそれ自体が追加的成分、例えばアジュバントを含有しうる。
【0170】
本発明の凍結乾燥無細胞ワクチンのもう1つの実施形態においては、ワクチン用希釈剤は、活性ワクチン組成物を含む凍結乾燥ケークとは別に供給される。この場合、凍結乾燥ワクチンおよび希釈剤組成物は、一緒になって本発明のワクチンを具現化するパーツのキットを構成する。
【0171】
したがって、本発明の凍結乾燥無細胞ワクチンの好ましい実施形態においては、ワクチンは、少なくとも2つのタイプの容器(1つの容器は凍結乾燥ワクチンを含み、1つの容器は水性希釈剤を含む)を伴うパーツのキットである。
【0172】
本発明のワクチンのための標的動物は原理上は健常動物または罹患動物であることが可能であり、NDVもしくはIBDVの存在に関して又はNDVもしくはIBDVに対する抗体に関して陽性または陰性でありうる。また、該標的は、それがワクチン接種に感受性である任意の体重、性別または齢のものでありうる。しかし、健常未感染標的にワクチン接種すること、ならびに野外感染およびその続発症を予防するために可能な限り早くワクチン接種することが明らかに好ましい。
【0173】
したがって、本発明のワクチンは予防または治療または両方に使用されうる。なぜなら、それはNDVまたはIBDVによる感染の確立および進行の両方を妨げるからである。
【0174】
その点において、本発明のワクチンによるウイルス負荷の低減のもう1つの有利な効果は、後代への垂直的ならびに群または集団内および地理的領域内の水平的の両方で、ウイルスの放出およびそれによる広がりの予防または低減である。その結果、本発明のワクチンの使用はNDVまたはIBDVの罹患率の減少を招く。
【0175】
したがって、本発明の他の態様は、
・集団内または地理的領域内のNDVまたはIBDVの罹患率を減少させるための本発明のワクチンの使用、および
・集団内または地理的領域内のNDVまたはIBDVの罹患率を減少させるための本発明のワクチンである。
【0176】
接種された組換えHVTが防御感染を確立しうる限り、本発明のワクチンは、原理上は、種々の適用経路により、そして一生における種々の時点で標的家禽に投与されうる。
【0177】
しかし、NDVまたはIBDVの感染は既に非常に若い齢で確立されうるため、可能な限り早く本発明のワクチンを適用することが有利である。したがって、本発明のワクチンは孵化の日(「第1日」)に又は卵内(例えば、18日ED)に適用されうる。
【0178】
したがって、1つの実施形態においては、本発明のワクチンは卵内に投与される。
【0179】
工業規模での卵内へのワクチンの自動注射のための装置は商業的に入手可能である。これは労働コストを最小にする一方で可能な限り早い防御をもたらす。種々の卵内接種経路(例えば、卵黄嚢、胚または尿膜液腔内)が公知であり、これらは、必要に応じて最適化されうる。好ましくは、針が実際に胚に接触するように卵内接種を行う。
【0180】
1つの実施形態においては、本発明のワクチンは非経口経路、好ましくは筋肉内または皮下経路により投与される。
【0181】
本発明のワクチンは、所望の適用経路および所望の効果に適合する、家禽標的への投与に適した形態で製造されうる。
【0182】
好ましくは、本発明のワクチンは、卵内または非経口の注射に適した注射液(例えば、懸濁液、溶液、分散液または乳液)として製剤化される。
【0183】
本発明のワクチンの適用経路に応じて、ワクチンの組成を適合させる必要があるかもしれない。これは当業者の能力の範囲内に十分に含まれ、ワクチンの有効性または安全性の微調整を一般に含む。これは、別の形態または製剤中のワクチンを使用することによりワクチン用量、量、頻度、経路を適合させることにより、あるいはワクチンのその他の構成成分(例えば、安定剤またはアジュバント)を適合させることにより行われうる。
【0184】
例えば、卵内適用に適合させるためには、卵の孵化率を低下させないためにはワクチン組成物は非常に安全であることが要求される。しかし、それでも、例えば接種自体または感染などによる胚への機械的損傷から、孵化率の幾らかの低下が尚も生じうる。
【0185】
本発明のワクチンの動物用量当たりの本発明の組換えHVTの厳密な量は不活化型ワクチンの場合ほど重要ではない。これは、組換えHVTが複製可能であり、したがって、生物学的に持続可能なウイルス血症のレベルまで標的動物内で増幅しうるからである。原理上は、ワクチン用量は、そのような生産的感染を開始させるのに十分なものであることを要するに過ぎない。より高い接種物用量は、宿主において最適ウイルス血症感染に達するのに要する時間を短縮しない。したがって、非常に高い用量は有効ではなく、また、経済的理由からも魅力的ではない。
【0186】
したがって、好ましい接種物用量は動物用量当たり本発明の組換えHVTの1×10
∧1〜1×10
∧5 プラーク形成単位(pfu)、より好ましくは、1×10
∧2〜1×10
∧4 pfu/用量、より一層好ましくは、500〜5000 pfu/用量、最も好ましくは、約1000〜約3000 pfu/用量である。
【0187】
本発明のワクチンが細胞随伴性である場合、これらの量の組換えHVTは感染宿主細胞に含まれる。
【0188】
本発明の組換えHVTのウイルス粒子を計数するための方法はよく知られている。
【0189】
本発明の組換えHVTの動物用量当たりの体積は、意図される適用経路に応じて最適化されうる。卵内適用は一般に約0.01〜約0.5ml/卵の用量で行われ、非経口注射は一般に約0.1〜約1ml/トリの用量で行われる。
【0190】
本発明のワクチンの免疫学的有効量の決定または用量当たりのワクチン体積の最適化は共に当業者の能力の範囲内に十分に含まれる。
【0191】
標的生物に本発明のワクチンを適用するための投与レジメンは、免疫学的に有効な量での、ワクチンの製剤化に適合した様態の、単一または複数用量のものであることが可能である。
【0192】
好ましくは、本発明のワクチンの投与のためのレジメンは、動物に対するストレスを軽減させ労働コストを低下させるために、標的家禽が要しうる他のワクチンの既存ワクチン接種スケジュールに組込まれる。これらの他のワクチンは、それらの正規使用に適合する様態で、同時、並行的または連続的に投与されうる。
【0193】
言うまでもなく、安定剤、担体、アジュバント、希釈剤、エマルションなどのような他の化合物を本発明のワクチンと混合することも本発明の範囲内である。そのような添加剤は“Remington”および“Veterinary Vaccinology”(共に前掲)のようなよく知られたハンドブックに記載されている。
【0194】
このように、ND、IBDおよびMDに対して非常に若い齢での1回の接種で家禽を防御する本発明のワクチンの有効性は更に最適化されうる。
【0195】
本発明のワクチンは事実上はNDVに関する及びIBDVに関する「マーカーワクチン」である。なぜなら、それが生成する免疫はこれらのウイルス由来の1つのタンパク質のみに対するものだからである。これは「感染動物およびワクチン接種動物の識別」(いわゆるDIVAアプローチ)を可能にする。これは血清学的アッセイ、例えばELISAまたは免疫蛍光アッセイによって簡便に検出されうる。
【0196】
本発明のワクチンは、異種インサートの発現によりNDVおよびIBDVに対する、そしてまた、HVTベクター自体によりMDVに対する多重免疫を既にもたらしている。それでも、追加的免疫活性成分による更なる組合せを施すことが有利でありうる。これは、既に付与されている免疫防御を増強するように、または他の病原体に拡張するように働きうる。
【0197】
したがって、1つの実施形態においては、本発明のワクチンは少なくとも1つの追加的免疫活性成分を含む。
【0198】
そのような「追加的免疫活性成分」は抗原、免疫増強物質、サイトカイン、ワクチンまたはそれらの任意の組合せでありうる。これはコスト、効率および動物愛護に関する利点をもたらす。あるいは、本発明のワクチンはそれ自体がワクチンに加えされうる。
【0199】
1つの実施形態においては、前記の少なくとも1つの追加的免疫活性成分は免疫刺激性化合物、好ましくはサイトカインまたは免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチドである。
【0200】
免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチドは、好ましくは、免疫刺激性非メチル化CpG含有オリゴデオキシヌクレオチド(INO)である。好ましいINOは鳥類Toll(トール)様受容体(TLR)21アゴニスト、例えばWO 2012/089.800(X4ファミリー)、WO 2012/160.183(X43ファミリー)またはWO 2012/160.184(X23ファミリー)に記載されているものである。
【0201】
1つの実施形態においては、前記の少なくとも1つの追加的免疫活性成分は、家禽に病原性である微生物に由来する抗原である。これは、任意の適当な様態で、例えば、家禽に病原性であるその微生物から、「生」弱毒化、不活化またはサブユニット抗原として「由来」しうる。
【0202】
家禽に病原性である微生物に由来する追加的抗原は、好ましくは、
・ウイルス:感染性気管支炎ウイルス、NDV、アデノウイルス、産卵低下症候群ウイルス、IBDV、ニワトリ貧血ウイルス、トリ脳脊髄炎ウイルス、鶏痘ウイルス、シチメンチョウ鼻気管炎ウイルス、アヒルペストウイルス(アヒルウイルス性腸炎)、ハトポックスウイルス、MDV、トリ白血病ウイルス、ILTV、トリニューモおよびレオウイルス;
・細菌:大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ(Salmonella)、オルニトバクテリウム・リノトラケレ(Ornitobacterium rhinotracheale)、ヘモフィルス・パラガリナルム(Haemophilus paragallinarum)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、エリジペロスリックス・ルジオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、エリシペラス(Erysipelas)、マイコプラズマ(Mycoplasma)およびクロストリジウム(Clostridium);
・寄生虫:アイメリア(Eimeria);ならびに
・真菌:アスペルギルス(Aspergillus)
からなる以上の群から選択される1以上の微生物に由来する。
【0203】
該追加的抗原はもう1つのHVTベクターワクチンでありうる。
【0204】
本発明のワクチンの有効性、安全性および安定性が負の影響を受けない限り、全てのこれらの組合せが可能である。
【0205】
本発明のワクチンの1つの実施形態においては、家禽に病原性である微生物に由来する追加的抗原は「生」弱毒化MDV、NDVまたはIBDVワクチン株である。これは本発明のワクチンの免疫原性を改善し拡大するように働き、これは、MDV、NDVまたはIBDVの高病原性野外株が流行している場合または地理的領域において有利である。
【0206】
これに関してはMDV1、MDV2またはHVTとのHVTの組合せが公知であり、本発明においては、リスペンス(Rispens)株(MDV1)、SB1株(MDV2)またはFC−126もしくはPB1株(HVT)のMDVが追加的免疫活性成分として好ましい。
【0207】
NDVに対する応答を改善するために、本発明の組換えHVTは軽度生NDVワクチン株C2のようなNDVワクチン株と組合されうる。
【0208】
同様に、IBDVに対する応答を改善するために、本発明の組換えHVTはD78、PBG98、Cu−1、ST−12または89−03のような軽度生IBDVワクチンと組合されうる。
【0209】
当業者が理解するとおり、これらの「組合せ」はワクチンスケジュールをも含み、この場合、本発明の組換えHVTおよび該追加的免疫活性成分は同時には適用されず、並行的または連続的に適用され、例えば、該組換えHVTは卵内に適用され、NDV C2は第1日に適用され、IBDV 89−03株は第17日に適用されうる。
【0210】
したがって、少なくとも1つの追加的免疫活性成分を含む本発明のワクチンの1つの実施形態においては、前記の少なくとも1つの追加的免疫活性成分は、MDV、NDVおよびIBDVまたはそれらの任意の組合せからのワクチン株からなる群から選択される微生物である。
【0211】
より好ましくは、該追加的免疫活性成分は、MDV リスペンス(Rispens)、MDV SB1、NDV C2、IBDV D78およびIBDV 89−03からなる群から選択される。
【0212】
そのような組合せワクチンは、ウイルスもしくは宿主細胞の調製物またはこれらの混合物を組合せることにより、種々の方法で製造可能であり、全ては本発明の範囲内である。好ましい実施形態においては、そのような組合せワクチンの成分は別々に簡便に製造され、ついで、同じワクチン容器内に充填することにより組合される。
【0213】
前記の方法および後記で例示されている方法により、本発明のワクチンは製造されうる。
【0214】
したがって、本発明のもう1つの態様は、
・本発明の組換えHVTを宿主細胞に感染させ、
・感染宿主細胞を回収し、
・回収感染宿主細胞を医薬上許容される担体と混合する工程を含む、本発明のワクチンの製造方法に関する。
【0215】
本発明における適当な宿主細胞および医薬上許容される担体は前記に記載されている。また、感染、培養および回収のための適当な方法は当技術分野でよく知られており、本明細書に記載され例示されている。
【0216】
前記で詳細に説明されているとおり、本発明の組換えHVTは、MD、NDおよびIBDまたは疾患の関連徴候に対する安全で安定で有効なワクチン接種がもたらされるように家禽用ワクチンにおいて有利に適用可能であり、非常に若い齢の家禽に投与されうる。
【0217】
したがって、本発明のもう1つの態様は、家禽用ワクチンにおける使用のための、本発明の組換えHVTに関する。
【0218】
本発明の組換えHVTの「ワクチンにおける使用」の種々の態様および実施形態は前記に記載されており、家禽の接種のための種々のワクチン組成物における無細胞ウイルスまたは細胞随伴ウイルスとしての使用を含む。
【0219】
したがって、本発明の種々の態様および実施形態は、安全で安定で有効な家禽用ワクチンを製造するために有利に使用されうる。
【0220】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、全て本発明の発現カセット、組換えDNA分子、組換えHVTもしくは宿主細胞またはそれらの任意の組合せの、家禽用ワクチンの製造のための使用に関する。
【0221】
前記のとおり、そして後記で例示されているとおり、本発明のワクチンは、非常に若い齢での1回の接種により、IBDVおよび/もしくはNDVによる感染または疾患の関連徴候を予防または軽減するために有利に使用されうる。
【0222】
したがって、本発明の他の態様としは以下のものが挙げられる。
【0223】
・IBDVおよび/もしくはNDVによる感染または疾患の関連徴候を予防または軽減するための、本発明のワクチンの使用、
・本発明のワクチンを家禽に投与することを含む、IBDVおよび/もしくはNDVによる感染または疾患の関連徴候を予防または軽減するための方法、
・本発明のワクチンを家禽に接種する工程を含む、家禽のワクチン接種の方法。
【0224】
家禽の接種による本発明のワクチンの使用に関する詳細、特に、日齢のニワトリの筋肉内または皮下接種による接種、あるいは18日齢の胚の卵内接種は、前記に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【
図1】本発明の好ましい組換えHVTであるHVP360を作製するために使用した、発現カセットおよびUs2遺伝子フランキング配列を含む本発明の好ましい組換えDNA分子のインサート部分の概要図。発現カセットの要素が縮尺どおりに描かれている。略語(左から右へ):5’US2:HVT Us2遺伝子からのフランキング上流配列;mlE:マウスCMV IE1遺伝子プロモーター;VP2:IBDV VP2遺伝子;term:SV40転写ターミネーター;hIE:ヒトCMV IE1遺伝子コアプロモーター;F:NDV F遺伝子;term:hCMV IE1遺伝子ターミネーター;3’US2:HVT Us2遺伝子からのフランキング下流配列。
【
図2】試験した代表的な組換えHVT構築物の関連要素の図示(縮尺どおりには描かれていない)。比較のために、先行技術の構築物HVP309も示されている。
【
図3】1日齢SPF産卵鶏のワクチン接種後の第10日、第24日および第38日における種々のHVT組換え体のウイルス血症レベル(群当たりの平均として)。
【
図4】1日齢SPF産卵鶏のワクチン接種後の第37日における種々のHVT組換え体により誘導された血清学的応答(群当たりの平均として)。
【0226】
つぎに以下の非限定的な実施例を参照して本発明を更に詳細に説明する。
【0227】
実施例
1.
試験した種々の発現カセット挿入
NDV FおよびIBDV VP2の両方を発現する安定かつ有効な組換えHVTの探索において、本発明者らは、種々の要素および配向を用いて、Us2内に挿入された種々の発現カセットを含有する一連の組換えHVT構築物を構築した。
図2に、試験した代表的な類似構築物の関連要素が図示されている(縮尺どおりには描かれていない)。比較のために、先行技術の構築物HVP309も示されている。
【0228】
試験した変動はタンパク質遺伝子の順序、使用した種々のプロモーター、および使用した挿入遺伝子のタイプにおけるものであった。
【0229】
より詳細には、IBDV VP2遺伝子を以下のプロモーターに連結した:
・mCMV IE1遺伝子プロモーター(エンハンサーおよびコア領域を含む)
・ラウス肉腫ウイルス(シュミット・ルピン(Schmidt−Ruppin)D株)の3’末端からの長末端反復(LTR)プロモーター、および
・ワクチン株バーサ(Bartha)(GenBankアクセッション番号BK001744)からの仮性狂犬病ウイルス由来のgB遺伝子プロモーター。
【0230】
また、HVTコドン表を使用して、天然形態およびコドン最適化形態においてVP2遺伝子を試験した。
【0231】
更に、幾つかの構築物においては、異種遺伝子は互いに逆の順序であった。
【0232】
全てのこれらの種々の組換えHVTを構築し、トランスフェクトし、増幅した。つぎにそれらを、CEF細胞上のインビトロでの発現ならびに実験動物への接種によるインビボでの発現およびウイルス血症を試験することにより選択した。
【0233】
2.
種々の組換えHVT構築物のウイルス血症および血清学
動物試験において、種々の組換えHVT構築物により誘発されたウイルス血症および血清学的応答を試験した。動物実験は、WO 2013/057.235に記載されているのと実質的に同じ方法で行った。簡潔に説明すると、1日齢のSPF産卵鶏を筋肉内ワクチン接種に付し、陰圧下の隔離飼育器内で維持した。ワクチン接種後の第10日、第24日および第38日に、HVTウイルスを脾臓(第10日および第38日)または血液サンプル(第24日;末梢血リンパ球:PBL)から再単離して、ウイルス血症を試験した。ワクチン接種後の第37日に採取した血液サンプルにおいて血清学的応答を測定した。結果を表2ならびに
図3および4に示す。
【表2】
【0234】
全てのHVT組換え体が接種ニワトリにおいて複製された。HVP364およびそのミラー構築物HVP367のウイルス血症レベルは、その他の組換え体に比べて低かった。第10日および第24日のウイルス血症からの両方のウイルスのプラークの部分はIFアッセイにおいてVP2および/またはFの発現を示さなかった。したがって、第38日のウイルス血症レベルは測定されず、HVP364およびHVP367は更なる研究から除外された。全ての他の組換え体は、試験した全時点で全プラークにおいてVP2およびFの発現を示した。
【0235】
実験動物における接種に際して誘発された血清学的応答を測定した。NDV Fに関しては、ELISA値は特徴的ではなく、したがってNDV(クローン30)に対する赤血球凝集(HI)を選択手段として用いた。IBDVに関しては、D78に対する中和(VN)を用いた(
図4)。
【0236】
HVP364およびHVP367が非発現性プラークを示した場合であっても、抗体誘導を測定した。組換えHVT HVP362は優れたウイルス血症を示したが、IBDV VP2に対する血清応答を示さなかった。同様に、HVP361およびHVP366はNDVに対してはセロコンバージョンを示したが、IBDVに対しては非常に僅かしか又は全く示さなかった。その結果、これらの3つの組換え体も更なる研究から除外した。驚くべきことに、HVP360構築物のみが良好なウイルス血症および血清学レベルを示し、したがって、この組換えHVTを更なる研究のために選択した。
【0237】
3.
組換えHVT:HVP360の特徴づけ
3.1.
序論
HVP360は本発明の組換えHVTであり、IBDV VP2遺伝子およびNDV F遺伝子の両方を発現する。HVT FC−126に基づくコスミドセットを使用して、その発現カセットをHVTゲノム上のUs遺伝子座内に挿入した。
【0238】
HVP360においては、IBDVのVP2遺伝子を古典的なタイプのF52/70株から単離した。それはmCMV株ATCC VR−194からのIE1遺伝子プロモーターにより駆動される。F遺伝子はNDVワクチン株クローン30に由来し、hCMV株AD169からのIE1遺伝子プロモーターにより駆動される。また、HVP360は、本明細書に記載されているSV40終結シグナルおよびhCMV IE1遺伝子ターミネーターを含有する。
図1はHVP360における発現カセットの概要図を示し、全ての要素は縮尺どおりに描かれており、HVT Us2遺伝子のフランキング配列が示されている。本実施例においては、HVP360の構築および特徴づけを記載する。
【0239】
3.2.
材料および方法
3.2.1.HVP組換え体の構築
HVP360の構築のために、WO 2013/057.235に記載されているとおり、CEF内へのトランスフェクションの後で感染性ウイルスを再生したHVTワクチン株FC−126からの重複コスミド由来DNA断片のセットを使用して、HVT Us2遺伝子座内への組換えDNA発現カセットの挿入を行った。また、pBR322に基づくプラスミドを導入ベクターとして使用した。可能なユニーク制限酵素消化部位を使用する場合、利用不可能な場合には、これらを、そのようなユニーク部位を含む合成リンカー配列のPCR誘発性挿入により導入した。
【0240】
該コスミドベクターからの及び該導入ベクターからのウイルスDNA断片を適当な制限酵素での消化により切り出した。ついで線状DNA断片をリン酸カルシウム沈殿によりCEF細胞内にトランスフェクトした。DNAが該細胞内に進入した後、該DNA断片の重複配列間の相同組換えにより感染性HVTウイルスを再生させ、それにより、Us2内に該発現カセットを含む無傷HVT FC−126ゲノムを得た。このウイルス構築物をHVT360と命名した。
【0241】
該トランスフェクト化培養物の後代を新鮮なCEF上で1回増幅し、これらの抗原に対するモノクローナル抗血清を使用する免疫蛍光アッセイ(IFA)により、VP2およびFを発現するHVTの存在を確認した。組換えウイルスを単一プラーク精製により単離した。感染CEFの単層を培養内でアガロースで覆ったところ、HVT CPEが明らかに視認可能となった。幾つかのプラークを無作為に採取し、CEF上で2回継代した後、回収し、細胞随伴ウイルス調製物として保存した。
【0242】
2つのHVP360並行プラーク単離物(A1およびB1)のそれぞれを連続CEF細胞培養内で15回継代し、種々の継代レベルにおいてIFAによりVP2およびFの発現に関してスクリーニングした。
【0243】
3.2.2.DNA分析
HVP360構築物の詳細な特徴づけのために、導入ベクターのプラスミドDNAに関して、および共に並行単離物からのFC−126またはHVP360継代5に感染したCEF培養の全DNAに関して、幾つかのDNA分析を行った。挿入カセットのコードヌクレオチド配列およびHVT Us2フランキング領域の配列分析およびサザンブロット分析を行って、Us2内への適切な組込み、および継代の際の遺伝的安定性を確認した。また、ウイルスを再構築するために使用したコスミドセットからのHVT DNA断片の重複領域における適切な組換えを確認するために、HVP360の全ゲノムに関してサザンブロット分析を行った。
【0244】
HV360または対照HVT FC−126(これは、HVP360に使用したコスミドのセットから構築されたが、Us2発現カセットを含有しておらず、後続実験における対照ウイルスとして使用され、HVT FC−126/435と命名された)に感染したCEF細胞培養からHVT DNAを単離した。ウイルスストックをCEF上で1回継代し、Easy−DNA(商標)キット(Invitrogen)を使用して全DNAを単離した。導入ベクターのプラスミドDNAを、該導入ベクターで形質転換された大腸菌(E.coli)培養から単離し、Quantum Prep(商標)Plasmid Midiprepキット(Bio−Rad)を使用してDNAを単離した。
【0245】
3.2.3.サザンブロットによる特徴づけ
ウイルス構築が厳密に意図どおりであり、意図しない挿入または欠失がウイルス再生中に生じなかったことを確認するために、HVP360のゲノム構造の詳細分析のためにサザンブロットを行った。
【0246】
HVTウイルスDNAを制限酵素PvuIおよびAatIIで又はBamHI、KpnI、BglIIおよびEcoRIで消化した。導入プラスミドDNAを制限酵素PvuIおよびAatIIで消化した。
【0247】
消化後、DNA断片を0.7% アガロース/TAEゲル上の複数の平行レーン内にローディングし、電気泳動し、ニトロセルロース膜上に移した。ブロットを同じ小片に切断し、DNAサイズマーカー(Smartladder(商標),Eurogentec)を検出するプローブおよび
32P標識HVTプローブの1つで個々にハイブリダイズさせた。16時間のインキュベーションの後、過剰なプローブを2回の洗浄工程で除去し、ブロットをX線フィルムにさらした。オートラジオグラムを現像した後、該プローブに特異的にハイブリダイズするDNA制限断片が視認可能であった。
【0248】
クローニングプラスミドのいずれかの部分が組換えHVT内に組込まれたかどうかを検出するために、プラスミドpBR322をより小さな断片へとHaeIIIで消化することによりプローブを作製した。これらの断片を
32Pで標識した。HVTの再構築において使用した全てのクローニングベクターはpBR322の誘導体であり、ベクター配列が存在すれば、このプローブにより検出されるであろう。また、プラスミド配列の検出のための陽性対照として、サザンブロットの1つのレーンにおいてHVP360導入プラスミドを使用した。
【0249】
コスミドインサートの重複領域およびHVTゲノムの反復領域における適切な構築を確認するために、これらの関連領域においてハイブリダイズするようにプライマーペアを設計し、感染CEF細胞培養から調製されたHVT FC−126ウイルスDNA上のPCRによりプローブを得た。アンプリコンをSau3AIで、より小さな断片へと消化し、
32Pで標識し、サザンブロットハイブリダイゼーションにおけるプローブとして使用した。
【0250】
つぎに、BamHI、KpnI、BglIIまたはEcoRIで消化されたHVP360 DNAに種々のプローブをハイブリダイズさせた。
【0251】
サザンブロットにおいて検出された制限断片長を、HVT株FC−126に関する公開配列(GenBankアクセッション番号AF291866)に基づいて予想されるものと比較した。
【0252】
3.2.4.配列分析による特徴づけ
コード配列の適切な挿入および安定性を確認するために、発現カセットおよびHVT Usフランキング領域に関して完全DNA配列分析を行った。
【0253】
DNA配列決定を可能にするために、特異的プライマーを使用するPCRによりHVTの特異的DNA断片を増幅した。Qiaquick(商標)キット(Qiagen)を使用してアンプリコンを精製した。つぎに、Big Dye Terminator(商標)v.3.1 Cycle Sequencingキット(Applied Biosystems)を製造業者の説明に従い使用して、これらのアンプリコン上でPCR配列決定を行った。3500シリーズGenetic Analyzer(商標)(Applied Biosystems)を使用して配列決定を行った。Sequencher(商標)v.5.0ソフトウェア(Gene Codes Corporation)を使用して配列読取を分析した。
【0254】
重複配列読取から隣接配列を集合させた。配列決定反応を繰返し、複数の配列読取をまとめることにより、曖昧さが有る場合にはそれを解明した。
【0255】
3.2.5.IFAによる発現の特徴づけ
トランスフェクション、プラーク精製および連続継代の後、継代レベル5、10および15からのHVP360の並行単離体の両方の単離体を挿入遺伝子の発現の維持に関してIFAによりモニターした。CEF単層に該組換え単離体を感染させ、それを、CPEが明らかに視認可能となるまで2〜3日間インキュベートし、ついで80% エタノールで固定した。IBDV VP2またはNDV Fの発現を第1試薬としてのモノクローナル抗体および2次抗体としてのフルオレセインイソチオシアナート(FITC)標識コンジュゲートで検出し、UV顕微鏡法により読取った。
【0256】
3.3.
結果
3.3.1.サザンブロットハイブリダイゼーションの結果
特異的プローブを使用するサザンブロット分析により遺伝的均質性および安定性を確認した。株HVP360およびFC−126からの制限DNAを含有するレーン上でプラスミドpBR322プローブにハイブリダイズしたブロットは該プラスミドプローブでシグナルを与えなかった。しかし、該プラスミドプローブは、導入プラスミドからの制限DNAを含有するレーンと陽性に反応した。これは、予想どおりのプラスミドバックボーンに特異的な断片を示している。また、プラスミドプローブはDNAサイズマーカーのバンドのほとんどに関して陽性であった。
【0257】
ついで同じブロットを、Us2挿入遺伝子座に特異的なプローブでハイブリダイズさせたところ、再び、予想どおりの制限断片が示された。
【0258】
予想どおり、発現カセットが挿入されたゲノム領域に関しては、異なる予想バンドパターンが観察された。
【0259】
HVP360のウイルスゲノムは適切に再集合し、親HVTコスミド再構築株FC−126/435に関して観察されたパターンに合致することを、ハイブリダイゼーションは示した。
【0260】
重複配列および反復領域を検出したプローブとのハイブリダイゼーションにおいては、HV360およびFC−126に関するパターンはほぼ同一であることが判明したが、幾つかの領域においては、見出されたパターンは、HVT FC−126の公開DNA配列に基づけば、ユニーク長領域と末端反復領域との間の連結部に関して、予想されたサザンブロットハイブリダイゼーションパターンと若干異なっていた。しかし、これらの領域内のパターンは組換え株および親ウイルス株の両方に関して同一である。
【0261】
したがって、これらの相違は親株HVT FC−126および公開配列のウイルスゲノムの配列における相違により引き起こされたのであり、コスミド再構築技術によるウイルスゲノムの集合中の再配列により引き起こされたのではない。
【0262】
3.3.2.配列分析による特徴づけの結果
使用した導入プラスミドの挿入カセットおよびフランキング領域の全DNA配列をPCR配列決定により決定した。HVP360のウイルスゲノムにおけるインサートのコンセンサス配列を単離物A1およびB1の両方に関して整列させ、導入プラスミド内の配列および親株FC−126の挿入領域の配列と比較した。アライメントの結果は、HVP360内に挿入された配列が単離物A1およびB1に関して同一であることを証明している。
【0263】
また、この配列は導入プラスミドにおける元の発現カセットと同一であることが示された。また、HVP360 A1およびB1ならびにFC−126の導入プラスミドのUs2挿入遺伝子座のフランキング領域は全て、DNA配列において同一であることが示された。
【0264】
3.3.3.IFAによる発現の特徴づけの結果
両方の並行単離物に関する並びに継代レベル5、10および15の3つ全てからのHVP360のプラーク精製ウイルスをVP2およびFの発現に関してIFAによりスクリーニングした。試験した全てのプラークはFおよびVP2遺伝子の完全な発現を示した。これは(少なくとも)細胞継代レベル15までのVP2およびFの機能的かつ安定な発現を証明した。
【0265】
3.4.
結論
HVP360は、IBDV VP2およびNDV Fの両方を発現する組換えHVTである。IFA、ウイルスDNAに関するサザンブロット分析ならびにインサートおよびフランキング領域のDNA配列決定による詳細な特徴づけは、2つの独立したHVP360単離物A1およびB1が共に、HVT FC−126のUs2領域内に発現カセットを適切に組込んでおり、プラーク精製後のCEF細胞における後続の15継代中にCEFの感染培養においてIBDV VP2およびNDV F遺伝子を機能的に発現することを証明した。
【0266】
HVP360単離物A1およびB1の発現カセットおよび全ゲノムは、一連のHVT特異的ゲノムプローブでのサザンブロットハイブリダイゼーションの後で得られた制限消化パターンにおいて欠失、再配列または追加的外来配列が検出されなかった点で適切である。該インサートのただ1つのコピーがUs2領域内に組込まれる。
【0267】
Us2挿入遺伝子座のフランキング領域および発現カセットの詳細な配列分析の後、HVP360 A1およびB1は、お互いに、および導入ベクター内の配列と、および親ウイルスFC−126と同一であると結論づけた。
【0268】
4.
ワクチン接種 − HVP360でのチャレンジ試験
組換えHVT HVP360を使用して、ワクチン接種−チャレンジ実験を行った。簡潔に説明すると、1日齢のSPF産卵鶏に並行単離物HVP360 A1またはB1のいずれかを皮下にワクチン接種した。ワクチン接種後の第3週または第4週に、IBDVまたはNDVのいずれかによる激しいチャレンジ感染に対する誘導防御を測定した。IBDVチャレンジの場合、株CS89を0.1ml中の3000 CID50で各眼への眼内経路により接種した。NDVの場合、株Herts 33/56を0.2ml/動物で6Log10 ELD50でim経路により投与した。ワクチンおよび対照ウイルスのウイルス血症のレベルを接種動物の脾臓からのウイルス再単離により測定した。結果を表3に示す。
【0269】
チャレンジ防御のレベルを以下のとおりに決定した。
【0270】
NDVチャレンジの場合、3または4週p.v.のチャレンジの後の第2週に、生存動物と死亡動物との比を決定した。例えば、該群内の20羽の動物のうちの18羽の生存体は90%のNDV防御スコアを与える。
【0271】
IBDVチャレンジの場合、チャレンジの10日後の剖検における嚢の臨床症状には、リンパ球欠乏の非存在から重度までを表す0〜5のスコアが与えられる。0〜2のスコアを有する動物は防御されているとみなされ、3〜5のスコアは防御されていない。IBD防御は該群内の動物数に対する防御動物(嚢臨床スコア0〜2)の比率である。
【0272】
該結果は、この実験において、HVP360でのimワクチン接種が、ワクチン接種後の第3週に、NDに対して1日齢のニワトリを59〜73%防御することを示した。第4週に、ND防御は79〜93%であった。ワクチン接種後の第3〜4週におけるIBDに対する防御は93〜100%であった。
【表3】
【0273】
5.
NDおよびIBDに対する免疫の開始および持続
後続のワクチン接種−チャレンジ実験において、ワクチンとしてHVP360を使用し、NDVまたはIBDVでチャレンジして、免疫の開始および免疫の持続を測定した。HVP360ワクチンウイルスは継代レベル13におけるものであり、動物は1日齢のSPF産卵鶏であり、ワクチン接種経路は皮下であり、ワクチン接種用量は0.2mlの動物用量当たり1500〜2500 pfuであった。チャレンジウイルスはIBDV CS89またはNDV Herts 33/56のいずれかであった。対照動物にHVT FC−126/435をsc接種した。
【表4】
【0274】
該結果は、HVP360のワクチン接種の後、皮下経路による日齢におけるワクチン接種後の第4週におけるNDVでのチャレンジに対して90%以上の防御が得られることを示した。これは生NDワクチンに関するPhEur 0450モノグラフ要件を満たしている。
【0275】
更に良かったことには、IBDVでのチャレンジに対する防御が達成された。HVP360でのワクチン接種後の第2週のチャレンジに対する90%以上の防御が得られる。これはIBDワクチンに関するPhEur 0587モノグラフ要件を満たしている。
【0276】
また、これらの結果は、免疫防御の持続が、NDに対する及びIBDに対する100%防御のレベルで、ワクチン接種の(少なくとも)8週間後まで進むことを示している。
【0277】
6.
NDに対する用量応答および種々の投与経路の試験
動物試験において、種々の用量のHVP360のワクチン接種を適用し、種々の経路[卵内(io)および皮下(sc)]を試験して、これらの用量からの応答およびNDVのチャレンジ感染に対するこれらの経路を試験した。また、種々の処理群における接種動物からの再単離の際のHVP360ワクチンおよびFC−126対照ウイルスのウイルス血症レベルを測定した。
【0278】
SPF産卵鶏の18日齢胚形成卵(io)またはsc経路による1日齢SPF産卵鶏のワクチン接種の後、動物を3または4週齢でNDV Herts 33/56でチャレンジした。ワクチン/対照ウイルスを第4日、第11日または第17日に脾臓または血液サンプルから再単離して、到達したウイルス血症レベルを測定した。結果を表5に示す。ウイルス血症は以下の2つの方法で表される:その群内のトリの総数のうちのワクチン/対照ウイルス再単離に関して陽性のトリの数、および2×10
∧6個の脾臓細胞当たりの平均ウイルスpfu。
【0279】
「用量」の列に、ワクチン接種後の接種物の残余物の逆滴定により決定された実際の接種用量が示されている。
【表5】
【0280】
皮下ワクチン接種は使用用量にはほとんど左右されないようである。500〜2500 pfu/動物の用量は全て、満足しうる免疫防御レベルをもたらした。
【0281】
最終的に、両方の経路(ioおよびsc)は、第3週および第4週に、それぞれ65〜70%および84〜90%の同じ防御を惹起することが可能であった。
本発明は、標的動物に対するIBDV由来のVP2遺伝子およびNDV由来のF遺伝子を含む組換えHVTを含む新規かつ改良HVTベクターND−IBDワクチンに関する。該組換えHVTは家禽用ワクチンにおいて使用可能であり、それは、先行技術の構築物と比べて良好なウイルスベクター複製、NDV FおよびIBDV VP2遺伝子の有効な発現、NDおよびIBDに対する改良された免疫防御、ならびに改良された遺伝的安定性を示した。