(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂の温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレートは、0.5g/10min以上、10g/10min以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のダイシングシート。
前記基材フィルムは、前記樹脂層における前記粘着剤層とは反対側の位置に第2の樹脂層をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のダイシングシート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
1.ダイシングシート
図1は、本発明の第1の実施形態に係るダイシングシートの断面図である。また、
図2は、本発明の第2の実施形態に係るダイシングシートの断面図である。これらのダイシングシート1は、基材フィルム2と、基材フィルム2の片面側に積層された粘着剤層3とを備える。なお、本実施形態に係るダイシングシートは、ダイシングのみに使用されるものであってもよいし、ダイボンディングにも使用されるダイシング・ダイボンディングシートであってもよい。
【0025】
(1)基材フィルム
本実施形態に係るダイシングシート1では、基材フィルム2が、粘着剤層3に最近位に位置する樹脂層21を少なくとも備える。特に、
図1に示されるダイシングシート1では、基材フィルム2が、樹脂層21のみからなる。また、
図2に示されるダイシングシート1では、基材フィルム2が、粘着剤層3に最近位に位置する樹脂層21と、樹脂層21における粘着剤層3とは反対側の位置に存在する第2の樹脂層22とを備える。
【0026】
(1−1)樹脂層の物性
本実施形態に係るダイシングシート1では、樹脂層21を構成する樹脂の融点が、60℃以上、170℃以下であり、さらに、当該樹脂の融点と流動化温度との差が、40℃以上、190℃以下である。
【0027】
樹脂層21の融点および上記温度の差が上述の範囲であると、それに応じて、樹脂層21を構成する樹脂は、流動化温度が十分に高いものとなる。これにより、ダイシング時に摩擦熱が生じたとしても、当該摩擦熱により樹脂層21を構成する樹脂が流動化することが抑制される。結果として、本実施形態に係るダイシングシート1では、糸状の切削片の発生が抑制される。また、樹脂層21の融点および上記温度の差が上述の範囲であることにより、樹脂層21を構成する樹脂の弾性率は比較的低いものとなる。これにより、本実施形態に係るダイシングシート1は、良好なエキスパンド性を示す。さらに、樹脂層21の融点および上記温度の差が上述の範囲である基材フィルム2は、電子線またはγ線といった放射線の照射を経ることなく作製できる。これにより、本実施形態に係るダイシングシート1は、放射線照射の工程を含む方法により製造されるダイシングシートと比較して、低いコストで製造することができる。
【0028】
本実施形態に係るダイシングシート1では、樹脂層21を構成する樹脂の融点が、上述の通り60℃以上であり、70℃以上であることが好ましく、特に80℃以上であることが好ましい。また、当該樹脂の融点は、上述の通り170℃以下であり、140℃以下であることが好ましく、特に120℃以下であることが好ましい。当該融点が60℃以上であることで、基材フィルム1は、タックがなくロールに張り付くことがないため、押出成形によって基材フィルム1を効率的に得ることができる。また、樹脂層21を構成する樹脂の融点が60℃以上である場合、当該樹脂は適度な結晶性を有し、それにより樹脂層21は耐溶剤性に優れたものとなる。一方、樹脂層21を構成する樹脂の融点が170℃以下であると、当該樹脂の結晶性は過度に高くならず、基材フィルム1が優れたエキスパンド性を効果的に発揮できる。
【0029】
また、本実施形態に係るダイシングシート1では、樹脂層21を構成する樹脂の融点と流動化温度との差が、上述の通り40℃以上であり、50℃以上であることが好ましく、特に60℃以上であることが好ましい。また、当該樹脂の融点と流動化温度との差が、上述の通り190℃以下であり、135℃以下であることが好ましく、特に80℃以下であることが好ましい。当該差が40℃以上であることで、糸状の切削片を抑制する効果を良好に得ることができる。また、当該差が190℃以下であることで、樹脂が適度な流動化温度を示すものとなり、加工適性が優れたものとなる。例えば、このような樹脂を使用して基材フィルム2を製造する際に、ペレット状の樹脂を溶融させてシート状に成形することが容易となる。なお、電子線またはγ線といった放射線を照射して、内部に共有結合による架橋構造を形成した樹脂は流動化を示さない。
【0030】
本実施形態に係るダイシングシート1では、樹脂層21を構成する樹脂の流動化温度が、100℃以上であることが好ましく、特に120℃以上であることが好ましく、さらには140℃以上であることが好ましい。また、当該樹脂の流動化温度は、360℃以下であることが好ましく、特に275℃以下であることが好ましく、さらには200℃以下であることが好ましい。当該樹脂の流動化温度が100℃以上であることで、上述した、糸状の切削片の発生を抑制する効果を良好に得ることができる。また、流動化温度が360℃以下であることで、加工適性が優れたものとなる。
【0031】
本実施形態に係るダイシングシート1では、樹脂層21の23℃における引張弾性率は、30MPa以上であることが好ましく、特に40MPa以上であることが好ましく、さらには50MPa以上であることが好ましい。また、当該引張弾性率は、500MPa以下であることが好ましく、特に300MPa以下であることが好ましく、さらには200MPa以下であることが好ましい。上記引張弾性率が30MPa以上であることで、ダイシングシート1が適度な強度を有するものとなり、マウント適性に優れたものとなる。具体的には、ダイシングシート1をウェハおよびリングフレームに貼付した際のダイシングシート1の弛みの発生が抑制され、搬送時のエラーの発生が効果的に抑制される。また、上記引張弾性率が500MPa以下であることで、エキスパンド工程の際にダイシングシート1に過剰な応力がかかることが回避され、エキスパンド時においてもリングフレームからダイシングシート1が剥離することなく良好に保持される。なお、上記引張弾性率は、JIS K7127:1999に準拠して測定したものであり、その具体的な測定方法は、後述の試験方法に示す通りである。
【0032】
本実施形態に係るダイシングシート1では、樹脂層21を構成する樹脂の、温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレートは、0.5g/10min以上であることが好ましく、特に0.7g/10min以上であることが好ましく、さらには1g/10min以上であることが好ましい。また、当該メルトフローレートは、10g/10min以下であることが好ましく、特に8g/10min以下であることが好ましく、さらには7g/10min以下であることが好ましい。メルトフローレートが上記範囲であることで、樹脂層21を含む基材フィルム2を押出成形により形成する場合に、均一な膜厚精度を効果的に達成することができる。なお、上記メルトフローレートは、JIS K7210:2014に準拠して、温度190℃および荷重2.16kgにて測定したものである。
【0033】
基材フィルム2が、
図1に示されるように樹脂層21のみからなる場合、樹脂層21の厚さは、20μm以上であることが好ましく、40μm以上であることが好ましく、さらには60μm以上であることが好ましい。さらに、当該厚さは、600μm以下であることが好ましく、300μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。また、基材フィルム2が、
図2に示されるように、樹脂層21および第2の樹脂層22からなる場合、樹脂層21のみの厚さは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることが好ましく、さらには30μm以上であることが好ましい。さらに、当該厚さは、300μm以下であることが好ましく、120μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。樹脂層21の厚さが、基材フィルム2が樹脂層21のみからなる場合に20μm以上であり、基材フィルム2が樹脂層21および第2の樹脂層22からなる場合に10μm以上であることで、糸状の切削片の発生を抑制する効果を十分に発揮することができる。また、樹脂層21の厚さが、基材フィルム2が樹脂層21のみからなる場合に600μm以下であり、基材フィルム2が樹脂層21および第2の樹脂層22からなる場合に300μm以下であることで、ダイシングシート1が優れたエキスパンド性を効果的に発揮することができる。
【0034】
(1−2)樹脂層の組成等
樹脂層21を構成する樹脂としては、上述した物性を達成できるものであれば、特に限定されない。
【0035】
このような物性を達成することができる、樹脂層21を構成する樹脂の例としては、オレフィンを構成成分として含む複数の分子鎖を有する樹脂であって、当該分子鎖同士が温度依存性動的共有結合により結合している樹脂が好ましく挙げられる。本明細書において、温度依存性動的共有結合とは、温度に依存して(加熱・冷却により)可逆的に結合反応および解離反応が生じる共有結合のことをいう。このような樹脂では、分子鎖同士が温度依存的に共有結合によって拘束されるため、分子鎖同士が常に結合されていない樹脂と比較して、流動化温度が高温化する。その結果、上述したような糸状の切削片の発生を抑制する効果を、良好に得ることができる。また、分子鎖同士は温度依存的に共有結合するため、基材フィルム2の製造の際に、共有結合を生じさせるための電子線照射といった工程を行う必要がなく、その結果、製造コストの増大を抑制することができる。
【0036】
上述したオレフィンを構成成分として含む複数の分子鎖の例としては、エチレンおよびラジカル重合性酸無水物を構成単位として含むエチレン系共重合体が挙げられる。当該エチレン系共重合体は極性が比較的高くないため、当該エチレン系共重合体から得られる樹脂は耐溶剤性に優れたものとなる。
【0037】
エチレン系共重合体に構成単位として含まれるラジカル重合性酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水エンディック酸、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、反応性および経済性の観点から無水マレイン酸を使用することが好ましい。
【0038】
ラジカル重合性酸無水物のエチレン系共重合体中の含有量は、エチレン系共重合体を構成する構成単位のうち、0.1質量%以上であることが好ましく、特に0.3質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、エチレン系共重合体を構成する構成単位のうち、20質量%以下であることが好ましく、特に5.0質量%以下であることが好ましい。当該含有量が、0.1質量%以上であることで、樹脂層21を構成する樹脂が十分に前述した温度依存性動的共有結合を行うことが可能となり、上述した糸状の切削片の発生を抑制する効果を良好に得ることができる。また、当該含有量が20質量%以下であることで、適度な密度で前述した温度依存性動的共有結合が生じ、これにより、樹脂層21の弾性率が適度なものとなり、ダイシングシート1がより優れたエキスパンド性を発揮する。
【0039】
上記エチレン系共重合体は、エチレンおよびラジカル重合性酸無水物以外の構成単位(以降、「第3モノマー」という場合がある。)を含んでもよい。これにより、樹脂層21の融点、流動化温度、柔軟性等の制御が容易となる。エチレンおよびラジカル重合性酸無水物以外の構成単位の例としては、エチレン系不飽和エステル化合物、エチレン系不飽和アミド化合物、エチレン系不飽和カルボン酸化合物、エチレン系不飽和エーテル化合物、エチレン系不飽和炭化水素化合物等が挙げられる。
【0040】
上記第3モノマーのより具体的な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、フマル酸メチル、フマル酸エチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、メチルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0041】
上記第3モノマーを使用する場合、その含有量は、エチレン系共重合体を構成する構成単位のうち、30質量%以下であることが好ましく、特に25質量%以下であることが好ましい。30質量%以下であることで、樹脂の融点が過度に下がることが抑制され、樹脂層21が実用的な耐熱性を発揮することができる。
【0042】
前述した温度依存性動的共有結合の例としては、エステル結合が挙げられる。特に、分子鎖として前述したエチレン系共重合体が使用される場合には、樹脂層21を構成する樹脂が、2つ以上のヒドロキシ基を有する多価アルコール化合物をさらに含み、温度依存性動的共有結合として、当該多価アルコール化合物のヒドロキシ基と、上記ラジカル重合性酸無水物から誘導されるカルボキシ基との間でエステル結合が生じることが好ましい。このようなエステル結合が生じることで、上記エチレン系共重合体同士が上記多価アルコール化合物によって架橋される。これにより、エチレン系共重合体同士が拘束され、架橋構造を常に含まない樹脂と比較して流動化温度が高温化し、前述したような糸状の切削片の発生を良好に抑制することができる。
【0043】
上記多価アルコール化合物の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、アルビトール、ソルビトール、キシロース、グルコース、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリビニルアルコール、ヒドロキシ基を1分子中2つ以上有するポリオレフィン系オリゴマー、エチレン−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体など分子内にヒドロキシ基を複数有する重合体、以上のようなアルコール化合物にエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド等を付加して得られるポリオキシアルキレン化合物、ポリグリセリンエステル類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの多価アルコール化合物の融点は、エチレン系共重合体を作製する際のその他の化合物との混合のしやすさの点で、300℃以下であることが望ましい。
【0044】
上記多価アルコール化合物の使用量は、上記ラジカル重合性酸無水物から誘導されるカルボキシ基に対する、多価アルコール由来のヒドロキシ基のモル比が、0.01以上であることが好ましく、特に0.05以上であることが好ましい。また、当該モル比は、10以下であることが好ましく、特に5以下であることが好ましい。
【0045】
前述した温度依存性動的共有結合のその他の例としては、ディールス・アルダー反応によって生じる共有結合が挙げられる。この反応では、共役ジエン構造とジエノフィル構造とから6員環構造が生じる結合反応と、6員環構造から共役ジエン構造とジエノフィル構造とが生じる解離反応とが温度依存的に生じる。このような温度依存性動的共有結合を利用する場合、例えば、共役ジエン構造を側鎖に有する分子鎖と、複数のジエノフィル構造を有する化合物との組み合わせが使用される。この場合、当該分子鎖が、複数のジエノフィル構造を有する化合物によって架橋される。
【0046】
共役ジエン構造を側鎖に有する分子鎖の例としては、側鎖にフラン環を有する分子鎖が挙げられる。このような分子鎖は、アミン基を有する分子鎖に対し、当該アミン基を介して共役ジエン化合物をグラフト化することで得ることができる。このような共役ジエン化合物としては、例えばフルフリルアミン、5−メチルフルフリルアミン、N−メチル−フルフリルアミン、ピロール、1−アミノピロール、イミダゾール、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、2−(2−アミノエチル)チオフェン、ピラゾール、3−アミノピラゾール、3−アミノ−5−メチルイソオキサゾール、トリアゾール、3−アミノ−1,2,4トリアゾール、4−アミノ−1,2,4トリアゾール等が挙げられる。
【0047】
複数のジエノフィル構造を有する化合物の例としては、ビス(3−エチル−5−メチル−4マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、1,2−ビス(マレイミド)エタン、1,6−ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N’−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンビスマレイミド等が挙げられる。
【0048】
樹脂層21を構成する樹脂において、分子鎖同士が温度依存性動的共有結合により結合している場合、当該樹脂は、当該温度依存性動的共有結合の結合反応および解離反応を促進する反応促進剤をさらに含むことが好ましい。当該反応促進剤が当該温度依存性動的共有結合の結合速度および解離速度を速めることで、可逆的な相転移が迅速に行われるようになる。これにより、当該樹脂を加熱・溶融して製膜することが容易となる。その結果、前述したような糸状の切削片の抑制と、優れた製膜性との両立が可能となる。
【0049】
上記反応促進剤の例としては、カルボン酸の金属塩、またはカルボキシ基を含む重合体の金属塩等が挙げられる。カルボン酸の金属塩の例としては、酢酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、コハク酸、安息香酸、テレフタル酸、ピロメリット酸などのカルボン酸と、周期表のIA族、IIA族、IIB族、IIIB族の元素(例えばLi、Na、K、Mg、Ca、Zn、Al等)との金属塩が挙げられる。
【0050】
カルボキシル基を含む重合体の金属塩の例としては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の一部または全部のカルボキシル基と、周期表のIA族、IIA族、IIB族、IIIB族の元素(例えばLi、Na、K、Mg、Ca、Zn、Al等)との金属塩、あるいは、エチレンとエチレン−(メタ)アクリル酸金属塩との共重合体などが挙げられる。また、カルボキシル基を含む重合体のモノマーとして、上述した第3モノマーを使用してもよい。
【0051】
さらに、上記反応促進剤は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂に、不飽和カルボン酸金属塩をグラフト重合させたものであってもよい。また、上記反応促進剤の他の例としては、トリエチルアミン、トリメチルアミン、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド等を挙げることができる。
【0052】
これらの反応促進剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの反応促進剤のうち、取扱いの容易さ、経済性の観点から、カルボン酸金属塩を使用することが好ましい。
【0053】
反応促進剤の使用量は、その種類に応じて適宜調整することができるが、一般に、側鎖導入前のエチレン系共重合体100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、特に0.01質量部以上であることが好ましい。また、当該使用量は、20質量部以下であることが好ましく、特に15質量部以下であることが好ましい。
【0054】
本実施形態に係るダイシングシート1では、樹脂層21を構成する樹脂として、上市されている市販品を用いてもよく、その例としては、日本ポリエチレン社製の熱可塑性樹脂であるレクスパールシリーズが挙げられ、特に、レクスパールES323YまたはレクスパールES333Yが好適に使用される。これら市販品は、前述したエチレン系共重合体、前述した多価アルコール化合物および反応促進剤を含む樹脂であり、エチレン系共重合体同士が多価アルコール化合物を介して架橋する状態をとりうるため、上述した融点や流動化温度に関する物性を達成することができる。
【0055】
樹脂層21には、上述した融点や流動化温度に関する物性が達成される限り、上記樹脂以外に、顔料、染料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤が含まれていてもよい。顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。また、フィラーとしては、メラミン樹脂のような有機系材料、ヒュームドシリカのような無機系材料およびニッケル粒子のような金属系材料が例示される。
【0056】
樹脂層21における粘着剤層3側の面は、粘着剤層3との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されてもよい。また、基材フィルムが樹脂層21のみからなる場合、樹脂層21における粘着剤層3とは反対側の面には各種の塗膜が設けられていてもよい。
【0057】
(1−3)第2の樹脂層
基材フィルム2が、
図2に示されるように第2の樹脂層22を含む場合、第2の樹脂層22を構成する材料は特に限定されず、一般的なダイシングシートの基材に使用される樹脂フィルムを使用することができる。このような樹脂フィルムの具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。ポリエチレンフィルムの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等が挙げられる。また、これらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムといった変性フィルムも用いられる。基材は、これらの1種からなるフィルムでもよいし、これらを2種類以上組み合わせた積層フィルムであってもよい。
【0058】
上述の樹脂フィルムのなかでも、層間密着性、成形加工性、エキスパンド性および耐溶剤性の観点から、エチレン系共重合体フィルム、特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルムおよびエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;ポリオレフィン系フィルム、特に、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルムおよびノルボルネン樹脂フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリスチレンフィルムまたはフッ素樹脂フィルムを使用することが好ましい。
【0059】
第2の樹脂層22には、樹脂層21と同様に、上記樹脂以外に、顔料、染料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤が含まれていてもよい。また、第2の樹脂層22における粘着剤層とは反対側の面には各種の塗膜が設けられていてもよい。
【0060】
第2の樹脂層22の厚さは、特に限定されないが、10μm以上であることが好ましく、40μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。さらに、当該厚さは、300μm以下であることが好ましく、120μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。第2の樹脂層22の厚さが10μm以上であることで、ダイシングシート1が適度な強度を有するものとなり、マウント適性が向上する。第2の樹脂層22の厚さが300μm以下であることで、ダイシングシート1が優れたエキスパンド性を効果的に発揮することができる。
【0061】
(1−4)基材フィルムの物性等
本実施形態に係るダイシングシート1では、基材フィルム2の厚さに特に限定されず、一般的なダイシングシートの基材フィルムと同様の厚さとすることができる。例えば、
図1に示されるように、基材フィルム2が樹脂層21のみからなる場合には、その厚さは、20μm以上であることが好ましく、40μm以上であることが好ましく、さらには60μm以上であることが好ましい。さらに、当該厚さは、600μm以下であることが好ましく、300μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。また、
図2に示されるように、基材フィルム2が樹脂層21および第2の樹脂層22からなる場合には、樹脂層21および第2の樹脂層22の両方の層を含む基材フィルム2の厚さは、20μm以上であることが好ましく、60μm以上であることが好ましく、さらには80μm以上であることが好ましい。さらに、当該厚さは、600μm以下であることが好ましく、240μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。
【0062】
粘着剤層3が活性エネルギー線硬化性粘着剤を含み、粘着剤層3を硬化させるために照射するエネルギー線として紫外線を用いる場合、基材フィルム2は紫外線に対して透過性を有することが好ましい。また、当該エネルギー線として電子線を用いる場合、基材フィルム2は電子線に対して透過性を有することが好ましい。
【0063】
(2)基材フィルムの製造方法
基材フィルム2は、一般的な方法により製造することができる。例えば、樹脂層21を構成する樹脂を得た後、当該樹脂を、溶融押出成形法、カレンダー法等によりフィルム状に成形することで、樹脂層21を形成することができる。これにより、樹脂層21のみからなる基材フィルム2を得ることができる。
【0064】
このような樹脂を得る方法の好ましい例としては、少なくともエチレンおよびラジカル重合性酸無水物を含む構成単位を共重合させてエチレン系共重合体を得た後、前述した反応促進剤の存在下で、上記エチレン系共重合体における上記ラジカル重合性酸無水物から誘導されるカルボキシ基と、前述した多価アルコール化合物におけるヒドロキシ基との間でエステル結合させる方法が挙げられる。これにより、エチレン系共重合体同士が、上記多価アルコール化合物より架橋された構造を有する樹脂が得られる。
【0065】
樹脂層21を構成する樹脂として市販品を使用する場合には、溶融押出成形法、カレンダー法等により、当該市販品をフィルム状に成形することで、樹脂層21を形成することができる。
【0066】
基材フィルム2が第2の樹脂層22を含む場合には、一般的な共押出法やラミネート法により、樹脂層21と第2の樹脂層22とが積層された基材フィルム2を得ることができる。
【0067】
(3)粘着剤層
粘着剤層3を構成する粘着剤としては、特に限定されず、ダイシングシート1として通常用いられるものを使用することができ、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等の粘着剤が用いられ、また、エネルギー線硬化型(紫外線硬化型を含む)や加熱硬化型の粘着剤であってもよい。また、本実施形態におけるダイシングシート1がダイシング・ダイボンディングシートとして使用される場合には、ウェハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えた粘接着剤、熱可塑性接着剤、Bステージ接着剤等が用いられる。
【0068】
粘着剤層3の厚さは特に限定されず、例えば3μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に80μm以下であることが好ましい。
【0069】
(4)剥離シート
本実施形態に係るダイシングシート1は、粘着剤層3における基材フィルム2とは反対側の面に剥離シートを備えてもよい。当該剥離シートは、粘着剤層3の粘着面を保護するために使用される。
【0070】
剥離シートとして、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等を用いることができる。また、これらの架橋フィルムを用いてもよい。さらに、これらのフィルムの複数が積層された積層フィルムであってもよい。
【0071】
上記剥離シートの剥離面(粘着剤層3と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0072】
剥離シートの厚さは特に限定されず、例えば20μm以上、150μm以下であることが好ましい。
【0073】
2.ダイシングシートの製造方法
ダイシングシート1の製造方法は、基材フィルム2を上述した方法により製造する以外は、一般的な方法により製造することができる。
【0074】
例えば、まず、粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製する。次に、この塗布剤を、上述のように製造した剥離シートの剥離面上に、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター等により塗布し、乾燥することにより、粘着剤層3を形成することができる。その後、粘着剤層3の剥離シートとは反対側の面と、基材フィルム2の一方の面とを貼合することで、ダイシングシート1が得られる。なお、基材フィルム2が第2の樹脂層22を含む場合には、基材フィルム2の樹脂層21側の面と、粘着剤層3とを貼合する。塗布剤は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、粘着剤層3を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。
【0075】
ダイシングシート1の別の製造方法としては、基材フィルム2の一方の面(第2の樹脂層22が存在する場合には、基材フィルム2の樹脂層21側の面)上に、上述した塗布剤を塗布し、乾燥することにより、基材フィルム2上に粘着剤層3が形成されたダイシングシート1を得ることができる。
【0076】
上述した方法により製造されるダイシングシート1では、樹脂層21を構成する樹脂が、温度依存性動的共有結合により互いに結合した分子鎖からなる。そのため、当該分子鎖が適度に拘束され、そのような拘束を受けない樹脂と比較して、流動化温度が高温化する。その結果、上述したような糸状の切削片の発生を抑制する効果とエキスパンド性とを、良好に両立することができる。また、当該分子鎖同士は温度依存的に共有結合するため、共有結合を生じさせるための電子線照射といった工程を行う必要がなく、その結果、製造コストの増大を抑制することができる。
【0077】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0078】
例えば、上記ダイシングシート1における基材フィルム2と粘着剤層3との間には、他の層が介在していてもよい。
【実施例】
【0079】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0080】
〔実施例1〕
1.基材フィルムの作製
エチレンおよびラジカル重合性酸無水物を構成単位として含むエチレン系共重合体、2つ以上のヒドロキシ基を有する多価アルコール化合物および温度依存性動的共有結合の結合反応および解離反応を促進する反応促進剤を含む熱可塑性樹脂であって、上記エチレン系共重合体における上記ラジカル重合性酸無水物から誘導されるカルボキシ基と、上記多価アルコール化合物におけるヒドロキシ基とが上記反応促進剤の存在下でエステル結合した熱可塑性樹脂(日本ポリエチレン社製,製品名「レクスパールES323Y」,温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレート:4g/10min)を、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)によって押出成形し、厚さ80μmの樹脂層からなる基材フィルムを得た。
【0081】
2.粘着剤組成物の調製
n−ブチルアクリレート95質量部およびアクリル酸5質量部を共重合してなる共重合体(Mw:500,000)100質量部と、ウレタンアクリレートオリゴマー(Mw:8,000)120質量部と、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製,製品名「コロネートL」)5質量部と、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製,製品名「イルガキュア184」)4質量部とを混合し、エネルギー線硬化型粘着剤組成物を得た。
【0082】
3.ダイシングシートの作製
上記工程2で得られたエネルギー線硬化型粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤により剥離処理された剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET38111(S)」)の剥離処理面に塗布し、100℃で1分間乾燥させて、10μmの膜厚の粘着剤層を形成した。この粘着剤層の剥離シートとは反対側の面と、上記工程1で得られた基材フィルムの片面とを貼合することで、ダイシングシートを得た。
【0083】
〔実施例2〕
エチレンおよびラジカル重合性酸無水物を構成単位として含むエチレン系共重合体、2つ以上のヒドロキシ基を有する多価アルコール化合物および温度依存性動的共有結合の結合反応および解離反応を促進する反応促進剤を含む熱可塑性樹脂であって、上記エチレン系共重合体における上記ラジカル重合性酸無水物から誘導されるカルボキシ基と、上記多価アルコール化合物におけるヒドロキシ基とが上記反応促進剤の存在下でエステル結合した熱可塑性樹脂(日本ポリエチレン社製,製品名「レクスパールES333Y」,温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレート:6g/10min)を使用する以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得た。
【0084】
〔比較例1〕
熱可塑性樹脂として、密度924kg/m
3のポリエチレン樹脂(住友化学社製,製品名「スミカセンL405」,温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレート:3.7g/10min)を使用する以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得た。
【0085】
〔比較例2〕
熱可塑性樹脂として、プロピレンのランダム共重合体(プライムポリマー社製,製品名「プライムポリプロF−744NP」,温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレート:7g/10min)を使用する以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得た。
【0086】
〔比較例3〕
熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン(日本ポリプロ社製,製品名「ノバテックHY540」,温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレート:1g/10min)を使用する以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得た。
【0087】
〔比較例4〕
熱可塑性樹脂として、エチレン単独重合体である高圧法低密度ポリエチレン(住友化学社製,製品名「スミカセンF101−1」,温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレート:0.3g/10min)を使用する以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得た。
【0088】
〔比較例5〕
熱可塑性樹脂として、低密度ポリエチレン(住友化学社製,製品名「スミカセンG801」,温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレート:20g/10min)を使用する以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得た。
【0089】
〔比較例6〕
熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン系エラストマー(三井化学社製,製品名「タフマーPN2070」,温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレート:3.2g/10min)を使用する以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得た。
【0090】
〔比較例7〕
熱可塑性樹脂として、エチレン−α−オレフィン(三井化学社製,製品名「タフマー4070S」,温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレート:3.6g/10min)を使用する以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得た。
【0091】
〔比較例8〕
熱可塑性樹脂として、ポリ4−メチル−1−ペンテン(三井化学社製,製品名「TPX MX002」,温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレート:0g/10min)を使用する以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得た。
【0092】
〔試験例1〕(引張弾性率の測定)
実施例および比較例で得られた基材フィルムを15mm×140mmの試験片に裁断し、JIS K7127:1999に準拠して、引張弾性率を測定した。具体的には、上記試験片を、引張試験機(島津製作所製,製品名「オートグラフAG−IS 500N」)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行い、引張弾性率(MPa)を測定した。結果を表1に示す。ただし、基材フィルムを良好に製膜できず、引張弾性率を測定できなかったものについては、表1中に「−」と表示した。
【0093】
〔試験例2〕(融点の測定)
実施例および比較例で使用した熱可塑性樹脂の融点を、JIS K7121に準じて、示差走査熱量計(DSC ティー・エイ・インスツルメンツ社製,製品名「Q2000」)を用いて測定した。
【0094】
〔試験例3〕(流動化温度の測定)
実施例および比較例で使用した熱可塑性樹脂の流動化温度を、降下式フローテスター(島津製作所社製,型番「CFT−100D」)を用いて測定した。荷重5.0Nとし、穴形状がφ2.0mm、長さが5.0mmのダイを使用し、測定試料の温度を昇温速度10℃/分で上昇させながら、昇温とともに変動するストローク変位速度(mm/分)を測定して、試料のストローク変位速度の温度依存性チャートを得た。この温度依存性チャートから、軟化点を超えて得られるピークを経過した後、再度ストローク変位速度が上昇し始める温度を流動化温度とした。結果を表1に示す。
【0095】
さらに、得られた流動化温度の値から、試験例2で得られた融点の値を減じて、それらの温度差ΔT(℃)を算出した。その値を表1に示す。
【0096】
〔試験例4〕(製膜性の評価)
(1)2種2層構成の基材フィルムの作製
実施例および比較例において使用した各々の樹脂と、低密度ポリエチレン(住友化学社製,製品名「スミカセンL705」,温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレート:7.0g/10min)とを、フィードブロック方式によりこれらの樹脂が5:5の割合となるように、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)によって押出成形し、厚さ80μmの2種2層の樹脂層からなる基材フィルムを得た。
(2)評価
実施例および比較例において製造した単層の基材フィルム、ならびに上記(1)において製造した2種2層の基材フィルムについて、実施例および比較例ごとの製膜性を評価した。具体的には、単層および2種2層の両フィルムについて評価用のサンプルを良好に作製できたものを○、厚み精度が不安定でであったり、ダイラインが確認されたり、基材フィルムが冷却ロールに取られたりする等して、フィルムの何れか一方または両方のサンプル作製ができなかったものを×と評価した。結果を表1に示す。
【0097】
〔試験例5〕(切削片の評価)
上記試験例4において製膜性が○と評価された実施例および比較例のダイシングシートについて、粘着剤層をシリコンウェハに貼付した後、ダイシング装置(DISCO社製,製品名「DFD−651」)にセットし、以下の条件でダイシングを行った。
・ワーク(被着体):シリコンウェハ
・ワークサイズ:6インチ,厚さ0.35mm
・ダイシングブレード:ディスコ社製,製品名「27HEEE」
・ブレード回転数:50,000rpm
・ダイシングスピード:10mm/秒
・切り込み深さ:基材フィルム表面より、25μmの深さまで切り込み
・ダイシングサイズ:5mm×5mm
【0098】
その後、基材フィルム側から紫外線を照射(光量:160mJ/cm
2)して、切断されたチップを、ダイシングシートから剥離した。縦及び横のダイシングラインのうち、それぞれの中央付近における縦の1ライン及び横の1ラインに発生した糸状の切削片の個数を、デジタル顕微鏡(キーエンス社製,製品名「VHX−100」,倍率:100倍)を用いてカウントした。そして、糸状の切削片の個数が0〜10個のものを○、11個以上のものを×として評価した。結果を表1に示す。
【0099】
〔試験例6〕(マウント適性の評価)
上記試験例4において製膜性が○と評価された実施例および比較例のダイシングシートについて、粘着剤層に6インチウェハを貼付した後、当該ダイシングシートをフラットフレームに装着した。その後、フラットフレームを地面と平行に持ち上げた際に、ダイシングシートにたるみが生じなかったものを〇、たるみが生じたものを×とした。結果を表1に示す。
【0100】
〔試験例7〕(エキスパンド性の評価)
上記試験例6においてマウント適性が○と評価された実施例および比較例のダイシングシートについて、試験例4と同様の装置を同様の条件で使用して、ダイシングを行った。
【0101】
その後、基材フィルム側から紫外線を照射(光量:160mJ/cm
2)した。続いて、エキスパンディング治具(NECマシナリー社製,製品名「ダイボンダーCSP−1000VX」)を用いて、ダイシングシートを速度2mm/秒で20mm引き落とした。その際に、ダイシングシートが裂けたり、ダイシングシートがフレームから剥離したりすることなく、問題なくエキスパンドできたものを○とし、ダイシングシートが裂けたり、ダイシングシートがフレームから剥離したりしたものを×と評価した。結果を表1に示す。
【0102】
〔試験例8〕(耐溶剤性の評価)
上記試験例4において製膜性が○と評価された実施例および比較例について、これらの実施例および比較例で得られた基材フィルム上に酢酸ブチルを滴下した。室温で10分間放置した後、何も起こらなかったものを○、膨潤が生じたものを×、とした。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
表1から明らかなように、実施例で製造したダイシングシートは、糸状の切削片が生じ難く、優れたエキスパンド性を示した。さらに、実施例で製造したダイシングシートは、製膜性、マウント適性および耐溶剤性が優れていた。