特許第6247006号(P6247006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6247006電子デバイス、発振器及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247006
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】電子デバイス、発振器及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/04 20060101AFI20171204BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20171204BHJP
   H03H 9/10 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01L23/04 E
   H03H9/02 A
   H03H9/02 K
   H03H9/02 L
   H03H9/10
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-10531(P2013-10531)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-143288(P2014-143288A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(72)【発明者】
【氏名】上月 敦詞
【審査官】 麻川 倫広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−191446(JP,A)
【文献】 特開2008−084933(JP,A)
【文献】 特開2013−004754(JP,A)
【文献】 特開2011−166310(JP,A)
【文献】 特開2011−155506(JP,A)
【文献】 特開2005−222966(JP,A)
【文献】 特開2012−044105(JP,A)
【文献】 特開2011−010143(JP,A)
【文献】 特開2008−205672(JP,A)
【文献】 特開2010−4216(JP,A)
【文献】 特開2010−103479(JP,A)
【文献】 特開平11−163042(JP,A)
【文献】 特開2001−274289(JP,A)
【文献】 特開平9−283878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447−21/449
21/54
21/60−21/607
23/00−23/04
23/06−23/10
23/16−23/26
H03H 3/007−3/06
9/00−9/135
9/15−9/24
9/30−9/40
9/46−9/62
9/66
9/70
9/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板の一方の表面に実装される電子素子と、
前記電子素子を覆って前記ガラス基板に接合される蓋体と、を備え
前記ガラス基板には、鉄−ニッケル系合金からなり、一方の表面から他方の表面に貫通する貫通電極が形成され、
前記ガラス基板の他方の表面に露出する前記貫通電極の端面と、前記端面の近傍であり前記ガラス基板の表面に、ニッケル膜が形成され、
前記ガラス基板表面上のニッケル膜が、前記端面から離れるに従いその膜厚が減少する電子デバイス。
【請求項2】
前記ニッケル膜は、前記端面上の厚さが1μm〜5μmであり、前記端面から1μm〜5μmの距離範囲で膜厚が漸次減少し前記ガラス基板の表面に形成される電子デバイス。
【請求項3】
前記ガラス基板の他方の表面と前記端面とは面一に形成される請求項1または2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記ニッケル膜の表面に前記ニッケル膜よりもイオン化傾向の小さい金属膜が形成される請求項1〜3に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記金属膜は金薄膜である請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記電子素子は水晶振動片である請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の電子デバイスと、
前記電子デバイスに駆動信号を供給する駆動回路、を備える発信器。
【請求項8】
ガラス基板に鉄−ニッケル系合金からなる貫通電極を形成する貫通電極形成工程と、
前記ガラス基板の一方の表面に電子素子を実装する電子素子実装工程と、
前記ガラス基板に前記電子素子を収納する蓋体を設置する蓋設置工程と、
前記ガラス基板の他方の表面に露出する前記貫通電極の端面と前記端面近傍のガラス基板上に、無電解メッキ法によりニッケル膜を形成するニッケル膜形成工程と、を備え
前記ニッケル膜形成工程は、前記ガラス基板上のニッケル膜の厚みが前記端面から漸次減少する電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記貫通電極形成工程の後に前記ガラス基板の他方側の表面を研削し、前記ガラス基板の表面と前記貫通電極の端面とを面一に形成する研削工程を備える請求項8に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記ニッケル膜形成工程は、前記ニッケル膜を1μm〜5μmの厚さに形成する請求項8または9に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記ニッケル膜の表面に前記ニッケル膜よりもイオン化傾向の小さい金属膜を形成する金属膜形成工程を備える請求項8〜10のいずれか一項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記電子素子は水晶振動片である請求項8〜11のいずれか一項に記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージに水晶振動子等の電子素子を収納する電子デバイス、これを用いた発振器及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話や携帯情報端末機には表面実装型の電子デバイスが多く用いられている。このうち、水晶振動子やMEMS、ジャイロ、加速度センサ等は、パッケージの内部に中空のキャビティが形成され、このキャビティに水晶振動子やMEMS等の電子素子が封入されている。パッケージとしてガラス材料が用いられる。例えばガラス基板に電子素子が実装され、その上にガラス蓋が陽極接合により接合されて電子素子が密封される。ガラスどうしの陽極接合は気密性が高くしかも安価であるという利点がある。
【0003】
図6は、この種の電子デバイスの断面図である(特許文献1の図1)。電子デバイス101は、ベース110と、ベース110に搭載される電子部品140と、電子部品140を収納してベース110に接合されるキャップ150とを備える。ベース110には板厚方向に貫通する貫通電極121と、貫通電極121に電気的に接続される第一の金属膜122と、貫通電極121と電子部品140とを電気的に接続する回路パターン130及び第二の金属膜123が形成される。第一の金属膜122の外部には金属膜からなる外部電極160が形成される。
【0004】
ここで、貫通電極121は鉄−ニッケル系合金が使用される。第一の金属膜122として無電解メッキ法により形成される金が使用される。また、貫通電極121とベース110との間には図示しない低融点ガラスが使用され、熱溶着により気密性を向上させている。低融点ガラスを使用して熱溶着し貫通電極121とベース110との間の気密性を向上させようとすると、貫通電極121の端面に酸化膜が形成され、他の金属との間の導電性が低下する。そこで、貫通電極121の熱溶着時に形成される酸化膜を取り除いた後に、貫通電極121の端面に第一の金属膜122や第二の金属膜123を形成して貫通電極121の酸化を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−155506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
貫通電極121として鉄−ニッケル系合金を使用し、貫通電極121の酸化防止用の第一の金属膜122として金薄膜を使用している。鉄−ニッケル系合金と金とはイオン化傾向の差が大きいので、貫通電極121と第一の金属膜122の間に水分等が付着すると、電池効果により貫通電極121が腐食し、導電性が低下する原因となる。また、特許文献1では、貫通電極121とベース110との間に低融点ガラスを使用し、貫通電極121の端面に無電解メッキ法により第一の金属膜122の金薄膜を形成している。低融点ガラスには無電解メッキ法による金薄膜が形成し難いので、貫通電極121と第一の金属膜122との間の境界部が露出し腐食が一層進行しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子デバイスは、ガラス基板と、前記ガラス基板の一方の表面に実装される電子素子と、前記電子素子を覆って前記ガラス基板に接合される蓋体と、を備え、前記ガラス基板には、鉄−ニッケル系合金からなり、一方の表面から他方の表面に貫通する貫通電極が形成され、前記ガラス基板の他方の表面に露出する前記貫通電極の端面と、前記端面の近傍であり前記ガラス基板の表面に、ニッケル膜が形成され、前記ガラス基板表面上のニッケル膜が、前記端面から離れるに従いその膜厚が減少することとした
【0008】
また、前記ガラス基板の表面と前記端面とは面一に形成されることとした。
【0009】
また、前記ニッケル膜は、厚さが1μm〜5μmであることとした。
【0010】
また、前記ニッケル膜は、前記端面から1μm〜5μmの範囲の前記ガラス基板の表面に形成されることとした。
【0011】
また、前記ニッケル膜の表面に前記ニッケル膜よりもイオン化傾向の小さい金属膜が形成されることとした。
【0012】
また、前記金属膜は金薄膜であることとした。
【0013】
また、前記電子素子は水晶振動片であることとした。
【0014】
本発明の発振器は、上記いずれかに記載の電子デバイスと。前記電子デバイスに駆動信号を供給する駆動回路と、を備えることとした。
【0015】
本発明の電子デバイスの製造方法は、ガラス基板に鉄−ニッケル系合金からなる貫通電極を形成する貫通電極形成工程と、前記ガラス基板の一方の表面に電子素子を実装する電子素子実装工程と、前記ガラス基板に前記電子素子を収納する蓋体を設置する蓋体設置工程と、前記ガラス基板の他方の表面に露出する前記貫通電極の端面に無電解メッキ法によりニッケル膜を形成するニッケル膜形成工程と、を備えることとした。
【0016】
また、前記貫通電極形成工程の後に前記ガラス基板の他方側の表面を研削し、前記ガラス基板の表面と前記貫通電極の端面とを面一に形成する研削工程を備えることとした。
【0017】
また、前記ニッケル膜形成工程は、前記ニッケル膜を1μm〜5μmの厚さに形成することとした。
【0018】
また、前記ニッケル膜の表面に前記ニッケル膜よりもイオン化傾向の小さい金属膜を形成する金属膜形成工程を備えることとした。
【0019】
また、前記電子素子は水晶振動片であることとした。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電子デバイスは、ガラス基板と、ガラス基板の一方の表面に実装される電子素子と、電子素子を覆ってガラス基板に接合される蓋体と、を備え、ガラス基板には、鉄−ニッケル系合金からなり、一方の表面から他方の表面に貫通する貫通電極が形成され、ガラス基板の他方の表面に露出する貫通電極の端面と、端面の近傍の前記ガラス基板の表面に、ニッケル膜が形成されることとした。この構成により、貫通電極の腐食を防止し、耐久性の優れた電子デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態に係る電子デバイスの説明図である。
図2】本発明の第二実施形態に係る電子デバイスの製造方法を表す工程図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る電子デバイスの製造工程の説明図である。
図4】本発明の第三実施形態に係る電子デバイスの製造方法を表す工程図である。
図5】本発明の第四実施形態に係る発振器の上面模式図である。
図6】従来公知の電子デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
図1は本発明の第一実施形態に係る電子デバイス1の説明図である。図1(a)は電子デバイス1の断面模式図であり、図1(b)は電子デバイス1に使用されるガラス基板2の部分断面模式図である。
【0023】
図1に示すように、電子デバイス1は、貫通電極3が形成されるガラス基板2と、ガラス基板2の一方の表面USに実装される電子素子5と、電子素子5を覆ってガラス基板2に接合される蓋体6とを備える。ここで、ガラス基板2には、鉄−ニッケル合金からなり、一方の表面USから他方の表面LSに貫通する貫通電極3が形成される。ガラス基板2の他方の表面LSに露出する貫通電極3の端面Mと、端面Mの近傍のガラス基板2の表面に、ニッケル膜4が形成される。ガラス基板2として、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス材を使用することができる。蓋体6として、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス材を使用すれば、信頼性の高い電子デバイス1を形成することができる。
【0024】
図1(b)を用いて詳しく説明する。貫通電極3はガラス基板2に埋め込まれている。ガラス基板2の他方の表面LSと貫通電極3の端面Mとは面一に形成される。端面Mには無電解メッキ法によりニッケル膜4が形成される。ニッケル膜4は膜厚Tが1μm〜5μmに形成される。ニッケル膜4は貫通電極3の端面Mの近傍であり、ガラス基板2の表面LSにも形成される。ガラス基板2の表面に形成されるニッケル膜4は、貫通電極3の端面Mからニッケル膜4の膜厚Tと同程度の1μm〜5μmの距離Kの範囲に形成される前記ニッケル膜は、前記端面上の厚さが1μm〜5μmであり、前記端面から1μm〜5μmの距離範囲で膜厚が漸次減少し前記ガラス基板の表面に形成される。
【0025】
なお、貫通電極3は鉄−ニッケル系合金からなり、その端面Mに形成するニッケル膜4とはイオン化傾向の差が小さく、電池効果による腐食は起こり難い。また、ニッケル膜4の表面にニッケル膜よりもイオン化傾向の小さい金属膜7、例えば金薄膜を形成することができる。金属膜7によりニッケル膜4の表面に酸化膜が形成され導電性が低下するのを防止することができる。また、金属膜7と貫通電極3との間はニッケル膜4が介在するので水分等が遮られて電池効果が発生せず、貫通電極3の腐食が防止される。なお、本発明において、ニッケル膜4の表面に形成される金属膜7は必須要件ではなく、ニッケル膜4のみでもよい。
ニッケル膜4の膜厚Tは1μmよりも薄くすると貫通電極3の端面Mを水分等から隔離するキャップ効果が低下しやすくなり、膜厚Tを5μmよりも厚くすると、ニッケル膜4の内部応力が大きくなって膜下部のガラス基板2にガラスの欠けや割れが発生しやすくなる。より好ましくは、ニッケル膜4の膜厚を1μm〜3μmとする。これにより、ニッケル膜4下部のガラスの欠けや割れの発生を確実に防止することができる。
【0026】
ガラス基板2の一方の表面USには、貫通電極3に電気的に接続する配線電極8、配線電極8の上部に形成される金属バンプ10、金属バンプ10を介して表面実装される電子素子5が設置される。蓋体6はガラス基板2の外周部に接合材9を介して接合される。蓋体6とガラス基板2との間は気密封止され、内部は真空に引かれている。電子素子5として、圧電振動片、例えば水晶振動片、発光素子、受光素子、加速度センサ、MEMS(Micro−Electro−Mechanical−Systems)、その他の素子を使用することができる。接合材9として金属膜を用いて陽極接合や金属間接合を行うことができる。また、接合材9として接着剤を用いて蓋体6とガラス基板2を接合することができる。なお、配線電極8と電子素子5とを金属バンプ10を介して表面実装する他に、配線電極8と電子素子5とをワイヤーボンディングにより電気的に接続してもよい。
【0027】
(第二実施形態)
図2は、本発明の第二実施形態に係る電子デバイスの製造方法を表す工程図である。図3は、本発明の第二実施形態に係る電子デバイスの製造工程の説明図である。図2に示すように、まず、貫通電極形成工程S1において、ガラス基板に鉄−ニッケル系合金からなる貫通電極を形成する。次に、電子素子実装工程S2において、ガラス基板の一方の表面に電子素子を実装する。次に、蓋体設置工程S3において、ガラス基板に電子素子を収納して蓋体を設置する。次に、ニッケル膜形成工程S4において、ガラス基板の他方の表面に露出する貫通電極の端面に無電解メッキ法によりニッケル膜を形成する。次に、金属膜形成工程S5においてニッケル膜の表面に金属膜を形成する。
【0028】
ガラス基板としては、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、その他のガラスを使用することができる。貫通電極として、コバール、インバー、パーマロイ、42アロイ、ステンレス鋼等の鉄−ニッケル系合金を使用することができる。貫通電極の端面に無電解メッキ法によりニッケル膜を形成することにより、ニッケル膜は貫通電極の端面と端面近傍のガラス基板の表面にキャップを被せたように形成され、貫通電極の端面は密閉される。そのため、周囲に水分等が付着しても貫通電極とは接触せず、貫通電極が電池効果によって腐食することが防止される。ニッケル膜の酸化を防止するため、ニッケル膜の上面に金等のイオン化傾向の小さな金属材料を形成することができる。
【0029】
なお、貫通電極形成工程S1の後であり、電子素子実装工程S2の前に、ニッケル膜形成工程S4を行って貫通電極3の端面にニッケル膜を形成し、次に金属膜形成工程S5においてニッケル膜の表面に金属膜を形成し、次に電子素子実装工程S2と蓋体設置工程S3を行ってもよい。また、蓋体設置工程S3の後であり、ニッケル膜形成工程S4の前に、ガラス基板の他方の表面を研削又は研磨して貫通電極の端面とガラス基板の他方の表面を面一に形成すると共に端面に形成される酸化膜を除去する研削工程を付加することができる。これにより、ニッケル膜と貫通電極の間の導電性が低下するのを防止することができる。
【0030】
図3を用いて、本発明の電子デバイス1の製造方法をより具体的に説明する。図3(S1)は、貫通電極形成工程S1において、ガラス基板2に貫通電極3を形成した状態を表す断面模式図である。ガラス基板2として、例えばソーダ石灰ガラスを使用することができる。ガラス材を軟化又は溶融し、型成形により貫通孔を形成する。貫通孔に鉄−ニッケル系合金の線材を充填し、加熱・軟化させて線材とガラス基板とを溶着する。ガラス基板を冷却後に両面を研磨して平坦化し、貫通電極3の端面Mの酸化膜を除去するとともに、端面Mとガラス基板2の表面とを面一に形成する。平坦化されたガラス基板2は、例えば、厚さが0.2mm〜1mmである。なお、ガラス基板2の貫通孔は、サンドブラスト法やエッチング法により形成することもできる。
【0031】
図3(S2)は、電子素子実装工程S2において、ガラス基板2に電子素子5を表面実装した状態を表す断面模式図である。ガラス基板2の一方の表面USに蒸着法やスパッタリング法等により金属膜を形成し、フォトリソグラフィ及びエッチング法により金属膜のパターニングを行って配線電極8を形成する。配線電極8は、蒸着法やスパッタリング法に代えて印刷法により形成してもよい。次に、金属バンプ10を介して電子素子5を表面実装によりガラス基板2に設置する。表面実装に代えて、電子素子5をガラス基板2の表面に接着剤等により接着し、ワイヤーボンディングにより配線電極8と電子素子5とを金線を介して電気的に接続してもよい。
【0032】
図3(S3)は、蓋体設置工程S3において、ガラス基板2に電子素子5を接合した状態を表す断面模式図である。蓋体6として、例えばガラス基板2と同じソーダ石灰ガラスを使用することができる。蓋体6は中央に窪みを備え、窪みの上端面には予め接合材9を形成しておく。接合材9として、例えば、蒸着法やスパッタリング法等によりアルミニウム膜、クロム膜、シリコン膜等の導電性膜、又はこれらの複合層を形成する。そして、中央の窪みに電子素子5を収納してガラス基板2と蓋体6を陽極接合により接合する。接合の際に電子素子5が収納されるパッケージ内部を真空にすることができる。例えば、電子素子5として水晶振動片を使用する場合に、パッケージ内部を真空に維持すれば、水晶振動片の物理的な振動に対する空気抵抗を無くすことができる。なお、ガラス基板2と蓋体6との間は、陽極接合の他に用途に応じて金属間接合や接着剤によって接合することもできる。
【0033】
図3(S4)は、ニッケル膜形成工程S4において、ガラス基板2の他方の表面LSに露出する貫通電極3の端面Mにニッケル膜4を形成した状態を表す断面模式図である。第一実施形態において説明したように、無電解メッキ法により他方の表面LSに露出する端面Mにニッケル膜4を1μm〜5μmの厚さに形成する。これにより、端面Mからの距離が1μm〜5μmの範囲のガラス基板2の表面にニッケル膜4が形成される。つまり、貫通電極3の端面Mはニッケル膜4によりキャップされたように覆われる。ニッケル膜4が1μmよりも薄くなると外部から侵入する水分等が貫通電極3と接触しやすくなり、ニッケル膜4が5μmよりも厚くなると端面M近傍のガラス基板2にニッケル膜4の内部応力が働いてガラスの欠けやクラックが発生しやすくなり、いずれの場合も信頼性が低下する。
【0034】
図3(S5)は、金属膜形成工程S5において、ニッケル膜4の表面に金属膜7を形成した状態を表す断面模式図である。ニッケル膜4の表面に、ニッケル膜4よりもイオン化傾向の小さい金属膜7を形成し、ニッケル膜4の表面に酸化膜が形成されて導電性が低下するのを防止する。金属膜7として、例えば金薄膜を形成することができる。金薄膜は無電解メッキ法により簡単に形成することができる。また、金属膜7として、銅、銀、白金等の金属材料を使用することができる。金属膜形成工程S5の後に、ニッケル膜4と金属膜7を覆うように外部電極を形成することができる。外部電極は、銀ペースト等の導電材料を印刷し、焼成して形成することができる。
【0035】
このように、鉄−ニッケル系合金からなる貫通電極3の端面Mにニッケル膜4を形成したことにより、貫通電極3の腐食を防止することができる。なお、本発明において金属膜形成工程S5は必須要件ではなく、この金属膜形成工程S5を省いても、貫通電極3の腐食を防止する効果を奏することができる。
【0036】
(第三実施形態)
図4は、本発明の第三実施形態に係る電子デバイスの製造方法を表す工程図である。電子素子として圧電振動片を実装した圧電振動子からなる電子デバイスを製造する具体例である。なお、本実施形態は、多数の窪みが形成されるガラスウエハーと、多数の電子素子が実装されるガラスウエハーとを重ね合わせて接合し、多数の電子デバイス1を同時に形成する製造方法である。同一の工程には同一の符号を付している。
【0037】
ガラス基板に実装する電子素子は水晶振動子などからなる圧電振動片である。蓋体形成工程S20を説明する。ソーダ石灰ガラスからなる板状のガラスウエハーを準備する。まず、研磨、洗浄、エッチング工程S21においてガラスウエハーを所定の厚さまで研磨し、洗浄した後にエッチング処理を行って最表面の加工変質層を除去する。次に、窪み形成工程S22において、各電子デバイスが形成される領域の中央部に加熱プレスの型成形により窪みを形成する。次に、研磨工程S23において、窪みの周囲の上端面を平坦な鏡面に研磨加工する。次に、接合材堆積工程S24において、蓋体の窪みを形成した表面にスパッタリング法又は蒸着法により、例えばアルミニウムからなる接合材を50nm〜150nmの厚さで堆積する。次に、パターン形成工程S25において、フォトリソグラフィ及びエッチング法により、窪み周囲の上端面以外の表面から接合材を除去する。このようにしてガラスウエハーからなる蓋体を形成する。
【0038】
圧電振動片作成工程S30を説明する。水晶の原石を所定角度でスライスし、水晶ウエハーを形成し、次に、水晶ウエハーを研削及び研磨加工して一定の厚みとする。次に、水晶ウエハーの加工変質層をエッチング処理を行って除去する。次に、水晶ウエハーの両表面に金属膜を堆積し、フォトリソグラフィ及びエッチング法により金属膜をパターニングし、所定形状の励振電極、配線電極、マウント電極に加工する。次にフォトリソグラフィ及びエッチング法あるいはダイシングにより水晶ウエハーを圧電振動片の外形形状に加工する。
【0039】
ガラス基板形成工程S40を説明する。ソーダ石灰ガラスからなる板状のガラスウエハーを準備する。まず、研磨、洗浄、エッチング工程S41においてガラスウエハーを所定の厚さまで研磨し、洗浄した後にエッチング処理を行って最表面の加工変質層を除去する。次に、貫通電極形成工程S1において、加熱プレスの型成形により、或いは表面にマスクを設置後にエッチング処理あるいはサンドブラストにより研削してガラスウエハーの板厚方向に貫通孔を形成する。次に、この貫通孔に鉄−ニッケル系合金からなる貫通電極を埋め込む。次に、研削工程S42において、貫通電極の両端部及びガラスウエハーの両面を研磨して平坦化し、貫通電極の端面を露出させる。次に、配線電極形成工程S43において、スパッタリング法あるいは蒸着法によりガラス基板の一方の表面に金属膜を堆積し、フォトリソグラフィ及びエッチング法により配線電極にパターニングする。
【0040】
次に、電子素子実装工程S2において、圧電振動片をガラス基板の表面に実装する。実装の際に、ガラス基板の配線電極に導電性接着剤又は金属バンプを設置し、その上に圧電振動片のマウント電極を接合してガラス基板上に圧電振動片を片持ち状に固定する。これにより、貫通電極と圧電振動片の励振電極とを電気的に接続する。このように多数の圧電振動片が実装されるガラスウエハーからなるガラス基板を形成する。
【0041】
次に、重ね合わせ工程S11において、蓋体の各窪み各圧電振動片が収納されるように蓋体をガラス基板の上に載置し、上下方向から押圧する。次に、蓋体設置工程S3において、ガラス基板及び蓋体を200℃以上の温度に加熱し、蓋体の接合材を陽極にガラス基板を陰極にして数百Vの電圧を印加し、接合材を介してガラス基板と蓋体とを接合する。接合の際には周囲を真空に保持する。
【0042】
次に、ニッケル膜形成工程S4において、ガラス基板の他方の表面に露出する貫通電極の端面にニッケル膜を堆積する。ニッケル膜は無電解メッキにより膜厚1μm〜5μmの範囲内に堆積する。これにより、端面から1μm〜5μmの距離のガラス基板の表面にニッケル膜が堆積する。ニッケル膜はキャップを被せたように貫通電極の端面を覆う。これにより、貫通電極に水分等が接触せず腐食が防止される。
【0043】
次に、金属膜形成工程S5において、ニッケル膜の表面に例えば金からなる金属膜を無電解メッキ法により形成し、ニッケル膜表面の酸化を防止して導電性を確保する。次に、外部電極形成工程S12において、上記ニッケル膜と金薄膜の積層電極を覆うように銀ペースト等からなる導電材料を印刷し、焼成して外部電極を形成する。次に、切断工程S13において、接合体の表面にスクライブ線を設け、切断刃を押し当てて割断する、あるいはダイシングブレードやダイシングソーを用いて分割し、個々の電子デバイス1を得る。次に、電気特性検査工程S14において、電子デバイス1の共振周波数や共振抵抗値等を測定して検査する。
【0044】
(第四実施形態)
図5は、本発明の第四実施形態に係る発振器40の上面模式図である。上記第一実施形態において説明した電子デバイス1、又は、第二又は第三実施形態において説明した製造方法により製造した電子デバイス1を組み込んでいる。図5に示すように、発振器40は、基板43、この基板上に設置した電子デバイス1、集積回路41及び電子部品42を備えている。電子デバイス1は、外部電極に与えられる駆動信号に基づいて一定周波数の信号を生成し、集積回路41及び電子部品42は、電子デバイス1から供給される一定周波数の信号を処理して、クロック信号等の基準信号を生成する。本発明による電子デバイス1は、高信頼性でかつ小型に形成することができるので、発振器40の全体をコンパクトに構成することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 電子デバイス
2 ガラス基板
3 貫通電極
4 ニッケル膜
5 電子素子
6 蓋体
7 金属膜
8 配線電極
9 接合材
10 金属バンプ
US 一方の表面、LS 他方の表面、M 端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6