(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247013
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 8/10 20060101AFI20171204BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20171204BHJP
F21W 101/14 20060101ALN20171204BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20171204BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20171204BHJP
【FI】
F21S8/10 360
F21S8/10 181
F21V23/00 130
F21W101:14
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-76092(P2013-76092)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-203532(P2014-203532A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】江藤 豊蔵
(72)【発明者】
【氏名】曽根 孝
【審査官】
當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−213862(JP,A)
【文献】
特開2010−278029(JP,A)
【文献】
特開2000−207908(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0202151(US,A1)
【文献】
特開2010−129923(JP,A)
【文献】
特開2013−026095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
F21V 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子が搭載される基板と、
前記基板の前方に設けられるエクステンションであって、その前面の少なくとも一部に金属の蒸着部が形成されたエクステンションと、
前記エクステンションの前面を覆う樹脂製の前面カバーと、
前記基板のアースパターンと前記エクステンションの蒸着部とを接続する導電部材と、
を備え、
前記前面カバーと前記エクステンションは近接しており、
前記基板は、複数の半導体発光素子を搭載可能に構成されており、
前記エクステンションは、複数の半導体発光素子をそれぞれ取り囲むように形成された複数のリフレクタ部を備え、
前記リフレクタ部と前記半導体発光素子とが近接しており、
前記エクステンションは、灯室内部構造を目隠しするよう構成され、
前記導電部材は、導電性のコードであり、
前記コードは、前記基板のアースパターンに電気的に接続される第1端部と、前記エクステンションの蒸着部に電気的に接続される第2端部と、を有することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記基板のアースパターンと前記コードの第1端部は、ハンダ付けにより電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記エクステンションの蒸着部に貼り付けられた導電テープをさらに備え、
前記導電テープに前記コードの第2端部を結線することにより、前記基板のアースパターンと前記エクステンションの蒸着部とが電気的に接続されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
半導体発光素子が搭載される基板と、
前記基板の前方に設けられるエクステンションであって、その前面の少なくとも一部に金属の蒸着部が形成されたエクステンションと、
前記エクステンションの前面を覆う樹脂製の前面カバーと、
前記基板のアースパターンと前記エクステンションの蒸着部とを接続する導電部材と、
前記前面カバーと組み合わせることで、前記基板、前記エクステンションおよび前記導電部材を収容する灯室を形成するランプボディと、
を備え、
前記導電部材は、前記エクステンションの蒸着部に電気的に接続する第1端部と、前記基板のアースパターンに電気的に接続する第2端部と、を有し、
前記ランプボディは、前記基板と前記導電部材の第2端部とを押圧して、前記導電部材の第2端部を前記基板のアースパターンに当接させる押圧部を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
前記導電部材は、金属板を折り曲げて形成された板状部材であり、
前記導電部材の第2端部には穴部が形成されており、
前記基板には穴部が形成されており、該穴部の周囲には前記アースパターンが形成されており、
前記エクステンションは自身を前記ランプボディに固定するための固定部を備え、該固定部には台座部が突設されており、
前記台座部は、前記導電部材の第2端部の穴部と前記基板の穴部を挿通しており、
前記ランプボディを前記エクステンションの固定部に固定することにより、前記ランプボディの押圧部が前記基板および前記導電部材の第2端部が前記台座部に押し付けられ、前記導電部材の第2端部が前記基板のアースパターンに当接することを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記半導体発光素子の静電気保護要素が実装されていないことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記エクステンションの蒸着部は、前記半導体発光素子から出射された光を前方へ反射するリフレクタ部を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、特に光源としてLED等の半導体発光素子を用いた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、LED等の半導体発光素子を用いた車両用灯具が知られている。例えば特許文献1には、複数のLEDが前面レンズおよびランプボディに沿って配設された車両用灯具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−160430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1には、LEDの周囲に、LEDからの光を反射するリフレクタを設けた照明装置が開示されている。このような照明装置ではリフレクタの表面にアルミなどの金属が蒸着されるが、この金属蒸着部に帯電した静電気により、LEDが損傷する可能性がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、静電気によるLEDの損傷を回避できる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、半導体発光素子が搭載される基板と、基板の前方に設けられるエクステンションであって、その前面の少なくとも一部に金属の蒸着部が形成されたエクステンションと、エクステンションの前面を覆う樹脂製の前面カバーと、基板のアースとエクステンションの蒸着部とを接続する導電部材とを備える。
【0007】
この態様によると、導電部材によりエクステンションの蒸着部に帯電した静電気が基板のアースに逃がすことができるので、静電気によるLEDの損傷を回避できる。
【0008】
当該車両用灯具において、半導体発光素子の静電気保護要素が実装されていなくてもよい。
【0009】
エクステンションの蒸着部は、半導体発光素子から出射された光を前方へ反射するリフレクタ部を有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、静電気によるLEDの損傷を回避できる車両用灯具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るリアコンビネーションランプの分解図である。
【
図2】リアコンビネーションランプにおけるテール&ストップランプの一部の水平断面図である。
【
図3】導電部材の別の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る車両用灯具について詳細に説明する。ここでは、本発明を適用した車両用灯具として、リアコンビネーションランプを例示する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るリアコンビネーションランプ100の分解図である。
図1に示すリアコンビネーションランプ100は、車両の右後方に搭載される。リアコンビネーションランプ100は、テール&ストップランプと、ターンシグナルランプと、バックアップランプとを含む。
【0014】
リアコンビネーションランプ100は、ランプボディ10と、ランプボディ10の前面開口部を覆う透明な樹脂製の前面カバー12とを備える。ランプボディ10と前面カバー12は、灯室を形成している。そしてこの灯室内に、テール&ストップランプ用基板アセンブリ14、ターンシグナルランプ用バルブ16、バックアップランプ用バルブ18、およびエクステンション20が収容されている。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るリアコンビネーションランプ100は、縦長のランプである。テール&ストップランプ用基板アセンブリ14は、リアコンビネーションランプ100の灯室内の上方から中央や下方にかけて配置されている。テール&ストップランプ用基板アセンブリ14の下方にはターンシグナルランプ用バルブ16が配置されており、さらにその下方にはバックアップランプ用バルブ18が配置されている。
【0016】
テール&ストップランプ用基板アセンブリ14は、プリント基板22と、プリント基板22上に搭載された複数のLED24と、ターミナル26とを備える。プリント基板22には、LED24に給電するための給電パターンと、アースパターンとが形成されている。給電パターンおよびアースパターンは、ターミナル26に接続されており、ターミナル26を介してリアコンビネーションランプ100の外部、すなわち車体側に接続される。
【0017】
車両用灯具のエクステンションは、通常、表面アルミ蒸着処理された樹脂成形体であり、配線等の灯室内部構造を外部から見えないようにするための単なる目隠し用部材である。しかしながら、本実施形態に係るリアコンビネーションランプ100では、エクステンション20は、単なる目隠し用部材としての機能だけでなく、光源からの光を反射する機能を有する。すなわち、エクステンション20は、テール&ストップランプ用基板アセンブリ14に搭載された複数のLED24から出射された光を灯具前方に反射するための複数のテール&ストップランプ用リフレクタ部28と、ターンシグナルランプ用バルブ16から出射された光を灯具前方に反射するためのターンシグナルランプ用リフレクタ部30と、バックアップランプ用バルブ18から出射された光を灯具前方に反射するためのバックアップランプ用リフレクタ部32とを有する。
【0018】
前面カバー12は、テール&ストップランプの配光を制御するためのテール&ストップランプ用レンズ部34と、ターンシグナルランプの配光を制御するためのターンシグナルランプ用レンズ部36と、バックアップランプの配光を制御するためのバックアップランプ用レンズ部38とを有する。
【0019】
テール&ストップランプ用基板アセンブリ14、テール&ストップランプ用リフレクタ部28、およびテール&ストップランプ用レンズ部34は、テール&ストップランプを構成している。また、ターンシグナルランプ用バルブ16、ターンシグナルランプ用リフレクタ部30、およびターンシグナルランプ用レンズ部36は、ターンシグナルランプを構成している。また、バックアップランプ用バルブ18、バックアップランプ用リフレクタ部32、およびバックアップランプ用レンズ部38は、バックアップランプを構成している。
【0020】
図2は、リアコンビネーションランプ100におけるテール&ストップランプの一部の水平断面図である。
図2に示すように、ランプボディ10上にプリント基板22が設けられており、該プリント基板22上にはLED24が搭載されている。プリント基板22の前方にはエクステンション20が配置されており、さらにエクステンション20の前面を覆うように前面カバー12が設けられている。
【0021】
エクステンション20は、LED24を取り囲むように形成されたテール&ストップランプ用リフレクタ部28と、エクステンション20をランプボディ10に固定するための固定部40と、エクステンション20の周縁に形成された周縁部42とを含む。これらのテール&ストップランプ用リフレクタ部28、固定部40、周縁部42の前面には、連続したアルミ蒸着処理が施されている。
図2では、アルミが蒸着されたアルミ蒸着部が符号「44」で図示されている。
図2に示すアルミ蒸着部44は、図示を明瞭にするために実際よりも厚みが大きく図示されている。
【0022】
LED24から出射された光をテール&ストップランプ用リフレクタ部28により効率よく反射するために、テール&ストップランプ用リフレクタ部28のLED24側の端部とLED24との隙間をできるだけ減らすことが効果的である。しかしながら、
図2に示すようにテール&ストップランプ用リフレクタ部28のLED24側の端部とLED24との隙間を小さくすると、テール&ストップランプ用リフレクタ部28のアルミ蒸着部44に帯電した静電気によりLED24が破壊されやすくなる。
【0023】
そこで、本実施形態に係るリアコンビネーションランプは、プリント基板22のアースパターンとエクステンション20のアルミ蒸着部44とを接続する導電部材50を備える。この導電部材50は、金属板を折り曲げ加工して形成された板状部材であり、その第1端部50aは、エクステンション20の周縁部42に形成されたアルミ蒸着部44に当接している。従って、エクステンション20のアルミ蒸着部44は、導電部材50の第1端部50aと電気的に接続している。
【0024】
一方、導電部材50の第2端部50bには、穴部が形成されており、該穴部にはエクステンション20の固定部40の裏面に突設された台座部40aが挿通されている。該台座部40aは、プリント基板22に形成された穴部も挿通している。台座部40aには、ネジ穴が形成されており、ネジ52を用いてランプボディ10を固定部40に固定することで、ランプボディ10の押圧部10aによりプリント基板22および導電部材50の第2端部50bが台座部40aに押しつけられ、プリント基板22と導電部材50の第2端部50bが当接している。
【0025】
プリント基板22の穴部の周囲には、アースパターンが形成されており、プリント基板22と導電部材50の第2端部50bが当接することにより、導電部材50とプリント基板22のアースパターンは電気的に接続している。上述したように、導電部材50の第1端部50aはエクステンション20のアルミ蒸着部44と電気的に接続しているので、エクステンション20のアルミ蒸着部44はプリント基板22のアースパターンと電気的に接続している。従って、アルミ蒸着部44に帯電した静電気を、導電部材50、プリント基板22のアースパターン、およびプリント基板22のターミナル26(
図1参照)を介して車体側のアースに逃がすことができる。これにより、エクステンション20のアルミ蒸着部44に帯電した静電気によりLED24が損傷する事態を回避することができる。
【0026】
リアコンビネーションランプには複数の灯具が組み込まれるため、前面カバーの面積が大きくなりがちである。前面カバーの面積が大きくなると、前面カバーに近接するエクステンションに帯電する静電気は大きくなる傾向にあり、LEDの静電破壊が起こりやすい。本実施形態に係るリアコンビネーションランプ100によれば、エクステンション20のアルミ蒸着部44に帯電した静電気をプリント基板22のアースパターンに逃がすための導電部材50を備えることにより、エクステンション20のアルミ蒸着部44に帯電する静電気が無くなる又は少なくとも少なくなるので、LED24の静電破壊を回避できる。
【0027】
本実施形態の構成は、LED24にツェナーダイオード等の静電気保護要素が実装されていない場合に特に有効である。静電気保護要素が実装されていないLED24を用いることができるので、リアコンビネーションランプ100の低コスト化を図ることができる。
【0028】
図3は、導電部材の別の実施形態を説明するための図である。
図2に示す実施形態では、プリント基板22のアースパターンとエクステンション20のアルミ蒸着部44とを電気的に接続する導電部材として金属の板状部材を用いた。しかしながら、導電部材は特に板状部材に限定されず、例えば、
図3に示すように例えばアースコード46が用いられてもよい。
図3に示す実施形態では、アースコード46の一端は、プリント基板22のアースパターン47にハンダ付けされている。一方、アースコード46の他端は金属のターミナル48を介してエクステンション20のアルミ蒸着部44に機械的および電気的に接続されている。本実施形態においても、アルミ蒸着部44に帯電した静電気を、ターミナル48、アースコード46、プリント基板22のアースパターン47、およびプリント基板22のターミナル26(
図1参照)を介して車体側のアースに逃がすことができる。これにより、エクステンション20のアルミ蒸着部44に帯電した静電気によりLED24が損傷する事態を回避することができる。
【0029】
図3に示す実施形態において、エクステンション20のアルミ蒸着部44からエクステンションの裏面にかけてアルミ導電テープを貼り付け、該アルミ導電テープにアースコード46の他端を結線することにより、プリント基板22のアースパターンとエクステンション20のアルミ蒸着部44とが接続されてもよい。
【0030】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0031】
例えば、上述の実施形態では、半導体発光素子としてLEDを例示したが、半導体発光素子であればLEDに限定されず、例えば半導体レーザが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 ランプボディ、 12 前面カバー、 14 テール&ストップランプ用基板アセンブリ、 16 ターンシグナルランプ用バルブ、 18 バックアップランプ用バルブ、 20 エクステンション、 22 プリント基板、 24 LED、 26 ターミナル、 28 テール&ストップランプ用リフレクタ部、 30 ターンシグナルランプ用リフレクタ部、 32 バックアップランプ用リフレクタ部、 34 テール&ストップランプ用レンズ部、 36 ターンシグナルランプ用レンズ部、 38 バックアップランプ用レンズ部、 40 固定部、 42 周縁部、 44 アルミ蒸着部、 50 導電部材、 100 リアコンビネーションランプ。