(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記除電手段は導電性繊維を含む複数の紐体を所定の間隔で前記エアシャワー室内の入口側の天井から吊り下げ、上端部で接地してなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエアシャワー装置。
エアシャワー室の入口からエアシャワー室内の中央部に向けて被処理体を移動させる際に、エアシャワー室の入口側に設けられた除電手段に前記被処理体を接触させることにより、前記被処理体の静電気を除去することで静電気力により前記被処理体に付着している粒子を脱離させ、
次に、エアシャワー室の扉を閉じた状態で、前記エアシャワー室内の中央部に移動させた被処理体に向けて気体を吹き付けることで、前記被処理体に付着している前記粒子よりも小さな塵埃を前記被処理体から脱離させ、
その後、前記扉を閉じた状態で、前記エアシャワー室内の中央部に移動した被処理体に除菌液を噴霧することにより前記被処理体の表面を除菌し、
前記気体の吹き出し口は、前記エアシャワー室の側壁に設けられ、
前記除菌液の噴霧口は、前記エアシャワー室の側壁に設けられた前記吹き出し口に対して、前記エアシャワー室における高さ方向の上方に設けられ、
前記気体の吹き付け開始後、前記除菌液の噴霧を開始し、
前記除菌液の噴霧を開始した後も前記気体の吹き付けを継続する、ことを特徴とする除菌方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、除電を行わずに除塵及び除菌を行う場合、静電気により着衣に付着した塵埃が除去しきれないため、残存する塵埃に病原性の微生物が残存するおそれがある。また、残存する塵埃中の微生物を完全に死滅させるためには、残存する塵埃に除菌液を浸透させるため、除菌液の必要量が増加するという問題がある。
気流の噴射口に導電性プラスチック帯を取り付けた場合、気流により動く導電性プラスチック帯が衝突することにより利用者の被服が傷つくおそれや利用者が不快に感じるおそれがある。また、電荷が完全に除去される前に気流を噴射するため、完全に除塵ができず、次段の除塵が必要となる。さらに、導電性プラスチック帯により気流が弱められ、除塵が充分にできないおそれもある。さらに、除菌液を噴霧する場合、導電性プラスチック帯に噴霧した除菌液が付着し、除菌液の必要量が増加するおそれもある。
【0007】
そこで、本発明は、従来の問題点を解決するために、エアシャワー室において被処理体の静電気及び被処理体に付着した塵埃を除去するとともに、被処理体の表面を除菌することができるエアシャワー装置及びこれを用いた除菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、 エアシャワー室内への入口を塞ぐ扉と、
前記エアシャワー室内の入口側に設けられ、前記エアシャワー室内の中央部に向けて移動する被処理体の静電気を除去することで静電気力により前記被処理体に付着している粒子を脱離させる除電手段と、
前記扉を閉じた状態で、前記エアシャワー室内の中央部に移動した被処理体に向けて気体を吹き付けることで、前記被処理体に付着していた前記粒子よりも小さな微粒子を前記被処理体から脱離させ除去する除塵装置と、
前記扉を閉じた状態で、前記エアシャワー室内の中央部に移動した被処理体に除菌液を噴霧する除菌装置と、を備え、
前記除塵装置の前記気体の吹き出し口は、少なくとも前記エアシャワー室の側壁に設けられ、
前記除菌装置の前記除菌液の噴霧口は、前記エアシャワー室の側壁に設けられた前記吹き出し口に対して、前記エアシャワー室における高さ方向の上方に設けられ、
前記除菌装置は、前記除塵装置による前記気体の吹き付け開始後、前記除菌液の噴霧を開始し、
前記除塵装置は、前記除菌装置が前記除菌液の噴霧を開始した後も前記気体の吹き付けを継続することを特徴とするエアシャワー装置である。
前記除菌液は次亜塩素酸溶液であることが好ましい。また、エアシャワー装置の筐体の腐食を防ぐために、前記除菌液のpHは7.5〜12.8であることが好ましい。
【0009】
前記除塵装置は、前記粒子および微粒子を除去することで前記エアシャワー室内の気体を清浄化するエアフィルタと、前記エアシャワー室内の気体を前記粒子および微粒子とともに前記エアフィルタに送るファンと、前記エアフィルタにより清浄化された気体を前記被処理体に吹き付けるノズルと、を備えることが好ましい。また、前記除菌装置は、前記除菌液を粒径10μm以下の液滴にして前記エアシャワー室内の被処理体に噴霧する噴霧装置を備えることが好ましい。
【0010】
前記除電手段は導電性繊維を含む複数の紐体を所定の間隔で前記エアシャワー室内の入口側の天井から吊り下げ、上端部で接地してなることが好ましい。
【0012】
本発明の他の態様は、エアシャワー室の入口からエアシャワー室内の中央部に向けて被処理体を移動させる際に、エアシャワー室の入口側に設けられた除電手段に前記被処理体を接触させることにより、前記被処理体の静電気を除去することで静電気力により前記被処理体に付着している粒子を脱離させ、
次に、エアシャワー室の扉を閉じた状態で、前記エアシャワー室内の中央部に移動させた被処理体に向けて気体を吹き付けることで、前記被処理体に付着している前記粒子よりも小さな塵埃を前記被処理体から脱離させ、
その後、前記扉を閉じた状態で、前記エアシャワー室内の中央部に移動した被処理体に除菌液を噴霧することにより前記被処理体の表面を除菌
し、
前記気体の吹き出し口は、前記エアシャワー室の側壁に設けられ、
前記除菌液の噴霧口は、前記エアシャワー室の側壁に設けられた前記吹き出し口に対して、前記エアシャワー室における高さ方向の上方に設けられ、
前記気体の吹き付け開始後、前記除菌液の噴霧を開始し、
前記除菌液の噴霧を開始した後も前記気体の吹き付けを継続する、ことを特徴とする除菌方法である。
【発明の効果】
【0013】
上述のエアシャワー装置によれば、エアシャワー室の入口側において被処理体の静電気を除去し、エアシャワー室において被処理体に付着した塵埃を除去するとともに、被処理体の表面を除菌することができる。エアシャワー室に入る段階で被処理体の静電気をあらかじめ除去することで、静電気力により被処理体に付着している比較的大きな粒子を脱離させるため、被処理体に空気を吹き付けて被処理体に付着した塵埃を除去する際に必要な時間を減らすことができる。また、静電気を除去した被処理体に除菌液を噴霧するため、その加湿効果からエアシャワーにより発生しやすい2次静電気の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のエアシャワー装置は、エアシャワー室の入口側に除電手段を設け、まず、被処理体が入口からエアシャワー室の中央部に移動する段階で被処理体の静電気を除去する。次に、エアシャワー室内に移動した被処理体に空気を吹き付けて被処理体に付着した塵埃を除去する。また、静電気を除去した被処理体に除菌液を噴霧することで、被処理体の表面の微生物を減少させる。この際、静電気を除去することで静電気により付着していた粒径20〜30μm以上の粒子が被処理体から脱離するため、粒子に付着している菌に対する除菌液量が要らなくなり、除菌液量を抑えることができる。
以下、本発明のエアシャワー装置について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態のエアシャワー装置1の入口側扉15が開いた状態を示す斜視図である。本実施形態のエアシャワー装置1は、内部に入った被処理体である利用者に空気を吹き付けて、利用者の衣服に付着した粒子やそれよりも小さな微粒子、および、これらに付着した微生物を除去し捕集する装置である。エアシャワー装置1は、例えば、医療用途、食品製造加工用途等のクリーンルームの出入口に設けられる。
【0017】
図2は
図1のエアシャワー装置1のII−II矢視断面図である。また、
図3は
図2のIII−III矢視断面図であり、
図4は
図2のIV−IV矢視断面図である。
図1〜
図4に示すように、エアシャワー装置1は、筐体10と、除電手段30と、除塵装置50と、除菌装置70と、等から概略構成される。
【0018】
筐体10は、床部11と、天井部12と、第1側壁部13と、第2側壁部14と、左右一対の入口側扉15と、出口側扉16と、等を備える。なお、
図3及び
図4において、入口側扉15及び出口側扉16は閉じた状態である。エアシャワー装置1に設けられるエアシャワー室17は、これらの構成部材に囲まれている。床部11、天井部12、第1側壁部13、第2側壁部14により形成される2つの開口の一方がエアシャワー室17への入口18となり、他方が出口19となる。ここで、
図2の紙面に対して手前側、
図3の下側、
図4の右側が入口18側であり、
図2の紙面に対して奥側、
図3の上側、
図4の左側が出口19側である。左右一対の入口側扉15は引き戸であり、第1側壁部13および第2側壁部14の内外に移動することで入口18を開閉可能に取付けられる。入口側扉15は図示しない駆動機構により駆動される自動ドアである。なお、駆動機構は図示しない制御装置によって制御される。出口側扉16は第1側壁部13の出口19側の端部に例えば蝶番16aにより開閉可能に取付けられている。なお、出口側扉16を入口側扉15と同様に自動ドアとしてもよい。なお、エアシャワー室17内に利用者を検出する光センサ等の検知手段(図示せず)を設け、検知手段により利用者を検知したときに入口側扉15を閉じてもよい。
【0019】
除電手段30は天井部12の下面であって入口側扉15側よりもエアシャワー室17内側の端部に設けられている。例えば、除電手段30として、コロナ放電により空気を電離してイオンを生成し、帯電した被処理体に対して生成したイオンを放出することで、被処理体の静電気を除去するイオナイザを用いてもよい。
また、被処理体に導電性の素材を接触させることで直接、被処理体の静電気を除去してもよい。除電手段30として接触型の導電性素材を用いる場合、例えば導電性材料の一端をエアシャワー室17への入口に固定し、他端がエアシャワー室17へ入る被処理体に接触するようにしてもよい。例えば導電性繊維を含む複数の紐体31の上端部を、天井部12の下面であって入口側扉15側よりもエアシャワー室17内側の端部に所定の間隔で固定し、吊り下げることで、のれん状の除電手段30を設けてもよい。ここで、紐体31は、導電性繊維を含む糸であってもよいし、導電性繊維を含む短冊状の織布、不織布であってもよいし、テープ状であってもよい。また、紐体31を上下方向に所定の間隔を空けて水平方向に配置することで、すだれ状に設けてもよい。このように、各紐体31を吊り下げることで、被処理体が各紐体31に接触する確率を高くし、被処理体の静電気を確実に除去することができる。このような接触型の導電性素材を用いることで、被処理体に帯電した電荷が導電性素材を通じて放電されるため、非接触型のイオナイザを用いる場合よりも短時間で被処理体の帯電量を減衰させることができる。
【0020】
各紐体31の上端部は接地することが好ましい。例えば、天井部12への固定部において紐体31を接地することができる。紐体31を接地することで、紐体31が被処理体から除去した静電気を速やかに紐体31の外部へ放電することができる。
なお、塵埃を含む微粒子の被処理体への付着力には、一般に、静電気力のほか、ファンデルワールス力(ロンドン分散力)が寄与するが、粒径が大きい粒子ほど静電気力が支配的となる。このため、除電により大きい粒子を自然落下させることができる。
【0021】
除塵装置50は、吸気口51と、ジェットエア用ファン52と、エアフィルタ53と、送気ダクト54と、パンカールーバ55と、等を備える。
吸気口51は、床部11の上面に設けられている。吸気口51からは、エアシャワー室17内の空気が床部11内に吸引される。なお、吸気口51は、被処理体の落下を防ぐために、格子状の蓋56(例えば、グレーチング)により塞がれている。
【0022】
吸気口51には、蓋56の下部に、プレフィルタ57が設けられている。プレフィルタ57は、蓋56を通過した空気中の微粒子の一部を除去する。プレフィルタ57は、例えば対象粒径5μm以下で粒子捕集率(質量法)(JIS B 9908形式3、JIS Z 8901 15種粉塵)が20〜90%のものを用いることができる。具体的には、太いガラス繊維や太い合成繊維の乾式フェルト、マット、不織布を、平板状あるいはプリーツ状のろ材として用いることができる。
【0023】
ジェットエア用ファン52は、第2側壁部14内に設けられ、図示しない制御装置により駆動され、床部11内の空気を吸引し、空気をエアフィルタ53に送気する。これにより床部11内の圧力がエアシャワー室17内の圧力よりも低くなるため、エアシャワー室17内の空気が吸気口51から床部11内に吸引される。ジェットエア用ファン52として、例えば多翼ファン(シロッコファン)を用いることができる。なお、エアシャワー室17内に利用者を検出する光センサ等の検知手段(図示せず)を設け、検知手段により利用者を検知したときにジェットエア用ファン52の駆動を開始してもよい。
【0024】
エアフィルタ53は、第2側壁部14内に設けられ、プレフィルタ57を通過しジェットエア用ファン52より送気された空気中の塵埃を除去し清浄化する。エアフィルタ53には、例えばHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)等を用いることができる。ここで、HEPAフィルタは、定格流量で粒径0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ、初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタである(JIS Z 8122)。
エアフィルタ53の具体的なろ材として、例えば、微細ガラス繊維で抄紙したガラス繊維紙、微細合成繊維にエレクトレット加工して構成された帯電不織布、あるいはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂膜を延伸加工したPTFE膜を用いることができる。これらのろ材を、セパレータ、リボン(ホットメルト樹脂)あるいはエンボス加工を用いてプリーツ化して、樹脂あるいは金属製のフィルタ枠にウレタン樹脂等のシール剤で固定したものをエアフィルタ53として用いることができる。
【0025】
送気ダクト54は第2側壁部14及び天井部12の内部に設けられている。送気ダクト54には、エアフィルタ53を通過し清浄化された空気が供給され、送気ダクト54に供給された空気は天井部12のパンカールーバ55からエアシャワー室17内に供給される。
【0026】
パンカールーバ55は、第2側壁部14のエアシャワー室17内側の面、及び、天井部12のエアシャワー室17内側の面(すなわち、下面)に設けられ、エアフィルタ53を通過し清浄化された空気をエアシャワー室17内へ放出する吹き出し口である。なお、パンカールーバ55の噴射口は絞られており、送気ダクト54にはジェットエア用ファン52により送気されエアフィルタ53を通過し清浄化された空気の圧力はエアシャワー室17内の圧力よりも高くなっている。したがって、清浄化された空気はパンカールーバ55からエアシャワー室17内へ勢いよく噴出される。この気流をエアシャワー室17内に入った被処理体に空気を吹き付けることで、被処理体に付着した塵埃等の微粒子や微粒子に付着した微生物を除去することができる。除去された微粒子や微生物はエアシャワー室17内の空気とともに吸気口51より吸引され、プレフィルタ57及びエアフィルタ53により捕集される。
【0027】
なお、パンカールーバ55の一部は、除電手段30の位置よりも高い位置に設けられていることが好ましい。除電手段30の位置よりも高い位置にパンカールーバ55を設けることで、除電手段30に空気を吹き付けて除電手段30に付着した塵埃を除去することができる。
【0028】
除菌装置70は、第2側壁部14の上部に設けられており、タンク71と、コンプレッサ72と、噴霧装置73と、配管74と、等を備える。
タンク71には、除菌液が貯留されている。除菌液として、例えば、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液を用いることができる。次亜塩素酸ナトリウムを水中に安定化させるために、除菌液をアルカリ性にすることが好ましく、除菌液のpHを7.5〜12.8にすることが好ましい。また、除菌液をアルカリ性にすることで、筐体10が除菌液により腐食されることを防ぐことができる。
タンク71内の除菌液は、配管74により噴霧装置73に供給される。
コンプレッサ72は送気ダクト54内の空気を圧縮し噴霧装置73に供給する。
【0029】
噴霧装置73は、除菌液を霧状の微粒子(粒径10μm以下)にしてエアシャワー室17内に噴霧する装置である。例えば、超音波法等により直接、除菌液を微粒子にしてもよいし、除菌液をノズルから高圧で噴霧することにより除菌液を微粒子にしてもよい。また、除菌液を高圧の空気と混合することで除菌液を微粒子にしてもよい。ここで、除菌液と混合する空気として、送気ダクト54内の清浄化された空気を用いてもよいし、除塵装置50とは別の換気系統から供給される空気を用いてもよい。
図5は噴霧装置73の一例の断面図である。噴霧装置73は、内部ノズル75と、内部ノズル75の外側に設けられた外部ノズル76とからなる。内部ノズル75は配管74に接続され内部に除菌液が供給される。外部ノズル76はコンプレッサ72と接続され、コンプレッサ72より圧縮空気が供給される。
内部ノズル75及び外部ノズル76の噴射口はともにエアシャワー室17内に向けて設けられており、
図5に示すように、内部ノズル75の噴射口は、外部ノズル76の噴射口の中央部に配置されている。外側の外部ノズル76より圧縮空気がエアシャワー室17内に向けて噴出されることで、ベンチュリ効果により内側の内部ノズル75から除菌液が引き出され、除菌液が微細な(例えば直径10μm以下の)液滴となって圧縮空気と混合され、エアシャワー室17内に供給される。なお、除菌液の液滴の大きさは内部ノズル75及び外部ノズル76の噴射口径、及び圧縮空気の圧力により調整することができる。除菌液の液滴の直径が大きいと、液滴中の水が蒸発しにくいので、利用者の衣服が濡れるのを防ぐために、液滴の直径を10μm以下とすることが好ましい。また、除菌液を微細な液滴として噴霧することで、除菌液中の水がエアシャワー室17内で蒸発するため、エアシャワー室17内の湿度を高めることができる。これにより、静電気による塵埃の利用者への再付着が防止できる。
なお、
図1に示すように、第1側壁部13(または第2側壁部14)の前面に、利用者の手に除菌液を噴霧する手洗装置77を設けてもよい。手洗装置77には、図示しない光センサ等の検知手段が設けられており、検知手段が利用者の手を検知すると、利用者の手に対して除菌液を噴霧する。手洗装置77から噴霧する除菌液はタンク71に貯留される除菌液と同一の組成の用いてもよい。また、手洗装置77から除菌液を噴霧するノズルとして、噴霧装置73と同様のノズルを用いてもよい。
また、図示しない制御装置により、検知手段による利用者の手の検出および除菌液の噴霧と、入口側扉15の開閉動作およびジェットエア用ファン52の駆動を連動させてもよい。
以上が、エアシャワー装置1の概略の説明である。
【0030】
このようなエアシャワー装置1では、利用者の手を検出すると、手洗装置77が利用者の手に除菌液を噴射し、除菌する。除菌液の噴射は1回当たり、所定量(例えば、0.2〜0.5μL/秒)で、所定時間(例えば10秒〜30秒間)継続する。利用者の手への除菌液の噴射が終了すると、図示しない制御装置が入口側扉15を開く。その後、利用者がエアシャワー室17に入る際に、除電手段30の紐体31が利用者の表面(衣服)に接触することで表面の静電気が除去される。図示しない検知手段により利用者がエアシャワー室17に入ったことを検出すると、制御装置が入口側扉15を閉じる。入口側扉15を閉じた後、制御装置がジェットエア用ファン52を作動させる。これにより、パンカールーバ55から空気が噴射される。利用者の表面から離脱しエアシャワー室17の床面に落下した微粒子は、吸気口51から空気とともに吸引される。空気中に含まれる微粒子の一部は、プレフィルタ57によって除去される。プレフィルタ57を通過した空気は、ジェットエア用ファン52を通過してエアフィルタ53により濾過される。この際、プレフィルタ57を通過した微粒子がエアフィルタ53により捕捉され、清浄な空気が送気ダクト54に供給され、パンカールーバ55から噴射エアシャワー室17内に噴射される。利用者は、空気の噴射中、必要に応じてエアシャワー室24内で向きを変えながら、噴射した空気を浴びる。こうして、利用者の衣服あるいは頭髪に付着した微粒子を除去する。空気の噴射は1回当たり、風速25m/秒以上で、数10秒、例えば20秒間継続する。
【0031】
また、ジェットエア用ファン52が作動し、パンカールーバ55に清浄な空気が供給されるのに充分な所定時間(例えば、10秒)が経過すると、制御装置がコンプレッサ72を作動させる。
【0032】
コンプレッサ72が作動すると、エアフィルタ53を通過した清浄な空気が圧縮されて二流体バルブ73に供給され、外部ノズル76から圧縮空気が噴出することで、内部ノズル75から除菌液が引き出され、除菌液が圧縮空気と混合されて微細な(例えば直径約10μmの)液滴となってエアシャワー室17内に供給される。除菌液の噴射は1回当たり、所定量(例えば、0.2〜0.5μL/秒)で、所定時間(例えば10秒〜30秒間)継続する。利用者は、除菌液の噴射中、必要に応じてエアシャワー室17内で向きを変えながら、噴射された除菌液の液滴を浴びる。こうして、利用者の衣服の除菌が行われる。
【0033】
以上示したように、本実施形態のエアシャワー装置1によれば、エアシャワー室17に入る段階で利用者の静電気を除電手段30により除去することで、静電気により利用者に付着している粒子が脱離しやすくなる。次に、除塵装置50により利用者に空気を吹き付けて利用者に付着した微粒子を除去するとともに、静電気を除去した利用者に除菌液を噴霧して除菌を行う。このため静電気により利用者に付着した粒子および微粒子を脱離することにより、粒子および微粒子に付着している菌をあらかじめ除去することができるため、除菌に必要な除菌液の量を減らすことができる。
また、除電手段30が入口側扉15側よりもエアシャワー室17内側の端部に設けられているので、除電手段30がエアシャワー装置1の外部の空気に常時さらされることがなく、外部の空気に含まれる粒子および微粒子による除電手段30の汚染を防ぐことができる。
【0034】
また、清浄な圧縮空気を除菌液と混合してエアシャワー室17に噴霧することができ、粒子および微粒子による利用者の再汚染を防ぐことができる。
以下、本発明の実施例を挙げてさらに詳細に説明する。
【0035】
〔実施例〕
以下の通り、除電、除塵、除菌を行った後、残存塵数、残存菌数の評価を行った。
〔被処理体〕
被処理体としてガーゼを用いた。同一の形状、大きさで一定の帯電量のガーゼを複数用意し、一定の塵埃量の空間に一定時間放置した後、各ガーゼに既知の大腸菌およびブドウ球菌を付着させた。
【0036】
〔除電〕
エアシャワー装置の入口に、紐体として直径6mmの除電組紐(株式会社トスコ製、TSJO425)を30mm間隔で天井からぶら下げるとともに上端部を接地し、除電手段を形成した。エアシャワー室にガーゼを入れる際に紐体をガーゼに接触させることで除電を行った。
【0037】
〔除塵〕
エアシャワー装置において、20秒間、風速25m/秒の風をガーゼに吹き付けることで除塵を行った。
【0038】
〔除菌〕
除塵の開始から10秒後、風速25m/秒の風を吹き付けながら、ガーゼに対して除菌液を0.3μL/秒で、20秒間継続して噴霧した。除菌液として0.002wt%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いた。
<比較例1>
実施例と同様に除電、除塵を行ったが、除菌を行わなかった。
<比較例2>
除電を行わずに、実施例と同様に除塵、除菌を行った。
<比較例3>
除電、除塵、除菌のいずれも行わなかった。
【0039】
〔残存菌数の評価〕
実施例および比較例1〜3において5枚のガーゼを処理した後、各ガーゼをそれぞれ生理食塩水に浸漬した。各溶液を0.1〜0.3mlずつ寒天培地に塗布し、35℃で2日間培養し、35℃で48時間培養した後、各寒天培地のコロニー数を計測した。実施例、比較例1〜3において5枚の培地のコロニー数の平均値を求め、比較例3のコロニー数の平均値を10としたときの相対値(四捨五入した整数値)で評価した。
結果を表1に示す。
【0041】
表1に示すように、除電を行った場合(実施例)、除電を行わない場合(比較例2)よりも残存菌数が減少することがわかる。これは、除電を行うことで静電気により被処理体に付着していた粒子が除去されるため、除去された粒子に付着していた菌が減少したものと考えられる。
【0042】
除菌を行った場合(実施例)、除菌を行わない場合(比較例1)よりも残存菌数が少ないことがわかる。なお、除菌液によりエアシャワー室内が加湿されることで、空気との摩擦によりガーゼに静電気が発生することが抑制され、塵埃のガーゼへの再付着が防止され、単に除菌をするのみの場合よりも残存菌数の減少が著しくなるものと考えられる。このため、除菌液による殺菌効果に加え、残存塵数の減少によっても残存菌数が減少したものと考えられる。
【0043】
以上、本発明のエアシャワー装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。例えば、タンク71に除菌液を貯留する代わりに、除菌液の原料液(例えば、塩化ナトリウム水溶液)を貯留するとともに、原料液から除菌液を製造する装置(例えば電気分解装置)を設け、製造された除菌液(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)を配管74により供給してもよい。
また、除菌液と圧縮空気とを外部で混合する噴霧装置73について説明したが、本発明はこれに限らず、除菌液と圧縮空気とを内部で混合する噴霧装置を用いてもよい。