(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の偏心揺動型歯車装置では、第1ワッシャ78aが基板部64aと第1偏心部70aとの間に挟み込まれ、第2ワッシャ78bが端板部64bと第2偏心部70bとの間に挟み込まれている。したがって、以下のような問題点がある。
【0006】
すなわち、ワッシャ78a,78bはクランク軸70が軸方向に移動しないように規制するために用いられているが、クランク軸70が軸回りに回転するのを阻害しないようにする必要がある。したがって、基板部64a、端板部64b、偏心部70a,70b、ワッシャ78a,78b等の寸法が精度良く管理されている。しかしながら、各部品を実際に組み付けてみると、クランク軸70のガタが少し大きい場合や、逆に、偏心部70a,70bへのワッシャ78a,78bの当たりが少し大きい場合が生ずることがある。このような場合には、歯車装置を一度ばらして、厚みの異なるワッシャ78a,78bに交換したり、シムを用いる等の対処を行い、再度組み直す必要がある。このように、歯車装置を組み上げた後クランク軸70の動きを調整する作業が必要な場合に、部品毎にばらす等の作業が必要となる。
【0007】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、クランク軸の調整作業を簡素化できる偏心揺動型歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、偏心部を有するクランク軸と、歯部を有し、前記偏心部に連動する揺動歯車と、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有する外筒部と、前記クランク軸が挿通されるクランク軸孔が形成された基板部と、前記基板部に結合される端板部とを有し、前記基板部及び前記端板部の間に前記揺動歯車が配置される内筒部と、前記基板部及び前記端板部に対して前記揺動歯車とは反対側に配置されて、前記クランク軸の軸方向移動を規制する移動規制部と、を備え
、前記移動規制部は、基板側規制部を有し、前記クランク軸は、前記偏心部よりも基板部側の第1ジャーナル部を有し、前記基板側規制部は、前記第1ジャーナル部に当接して前記クランク軸の軸方向移動を規制している偏心揺動型歯車装置である。
【0009】
本発明では、クランク軸の軸方向移動を規制するための移動規制部が、基板部及び端板部に対して揺動歯車とは反対側に配置されている。言い換えると、移動規制部は、基板部及び端板部の間に配置されるのではなく、基板部及び端板部の外側に配置される。このため、クランク軸の軸方向移動を規制するためのワッシャを内筒部の基板部とクランク軸の偏心部との間に設ける必要がなく、また、内筒部の端板部とクランク軸の偏心部との間にもワッシャを設ける必要がない。すなわち、クランク軸の軸方向に揺動歯車と重なるワッシャが、基板部と揺動歯車との間に設けられることがなく、また端板部と揺動歯車との間にも設けられない。このため、歯車装置を組み上げた後で、クランク軸の動きを調整する作業が必要になった場合には、基板部及び端板部の外側に配置された移動規制部を交換したり、基板部又は端板部と移動規制部との間にシムをかませたりすることで対処することができる。したがって、歯車装置を各部品毎にばらさなくても、クランク軸の動きを調整することが可能となる。
また、本発明は、偏心部を有するクランク軸と、歯部を有し、前記偏心部に連動する揺動歯車と、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有する外筒部と、前記クランク軸が挿通されるクランク軸孔が形成された基板部と、前記基板部に結合される端板部とを有し、前記基板部及び前記端板部の間に前記揺動歯車が配置されるキャリアと、前記基板部及び前記端板部に対して前記揺動歯車とは反対側に配置されて、前記クランク軸の軸方向移動を規制する移動規制部と、を備え、前記移動規制部は、端板側規制部を有し、前記クランク軸は、前記偏心部よりも端板部側の第2ジャーナル部を有し、前記端板側規制部は、前記第2ジャーナル部に当接して前記クランク軸の軸方向移動を規制している偏心揺動型歯車装置である。
【0010】
ここで、前記移動規制部は、
前記基板側規制部
に加えて端板側規制
部を有していてもよい。この場合、前記基板側規制部が前記基板部に対して着脱可能である構成及び前記端板側規制部が前記端板部に対して着脱可能である構成の少なくとも一方が採用されていてもよい。
【0011】
この好ましい態様において、前記基板側規制部は、前記基板部に対してボルトで着脱可能に結合されていてもよい。前記端板側規制部は、前記端板部に対してボルトで着脱可能に結合されていてもよい。
【0012】
この態様では、ボルトを取り外すことによって、基板側規制部を基板部から容易に取り外すことができる。また、ボルトを取り外すことによって、端板側規制部を端板部から容易に取り外すことができる。なお、基板側規制部及び端板側規制部は、基板部及び端板部に対して揺動歯車とは反対側に配置されているので、ボルトによって基板部及び端板部に対して容易に締結することができる。
【0013】
この好ましい態様において、前記基板部の前記クランク軸孔内に配置されるとともに前記クランク軸の
前記第1ジャーナル部に装着される第1クランク軸受と、前記端板部に形成されたクランク軸孔に配置されるとともに前記クランク軸の第2ジャーナル部に装着される第2クランク軸受と、を備えていてもよい。前記基板側規制部は、前記第1ジャーナル部に当接して前記クランク軸の軸方向移動を規制し、前記端板側規制部は、前記第2ジャーナル部に当接して前記クランク軸の軸方向移動を規制してもよい。
【0014】
この態様では、基板側規制部が基板部に取り付けられた状態では、基板側規制部は、クランク軸の第1ジャーナル部に当接する。したがって、クランク軸が基板部の外側へ向かう方向のクランク軸の移動が基板側規制部によって規制される。また、端板側規制部が端板部に取り付けられた状態では、端板側規制部は、クランク軸の第2ジャーナル部に当接する。したがって、クランク軸が端板部の外側へ向かう方向のクランク軸の移動が端板側規制部によって規制される。そして、基板部及び端板部間の結合が解除された状態では、基板側規制部が基板部から取り外されているか否かに拘わらず、また、端板側規制部が端板部から取り外されているかに拘わらず、クランク軸を取り外すことができる。
【0015】
前記基板側規制部と前記端板側規制部とは、同じ構成であってもよい。この態様では、基板側規制部と端板側規制部とを別部品として管理する必要がない。したがって、部品として管理される種類を低減することができる。
【0016】
前記基板側規制部及び前記端板側規制部の少なくとも一方は、前記基板部と前記端板部とを締結するボルトによって結合されていてもよい。この態様では、前記移動規制部を前記基板部あるいは前記端板部に結合するボルトを新たに設ける必要がない。
【0017】
この態様において、前記移動規制部は、前記ボルトの座金としても機能してもよい。この態様では、ボルトの頭部が押圧される部分が陥没したり、ボルトの緩みを防止することができる。
【0018】
前記基板部に対する前記端板部の位置を合わせるための位置決めピンが設けられていてもよい。この場合、前記移動規制部は、前記位置決めピンの脱落防止部材としても機能してもよい。
【0019】
この態様では、位置決めピンによって、基板部に対する端板部の位置を精度良く合わせることができる。しかも、移動規制部によって位置決めピンの孔が塞がれるため、位置決めピンが抜けて脱落し、ピンが歯車に噛み込むといった不具合が発生してしまう、という事態を回避することができる。
【0020】
前記クランク軸を含む複数のクランク軸が設けられていてもよい。この場合、前記移動規制部は、全てのクランク軸の移動を規制する部材として構成されていてもよい。
この態様では、クランク軸毎に別個に移動規制部を設ける必要がないため、部品点数が多くなることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、クランク軸の調整作業を簡素化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態の偏心揺動型歯車装置(以下、歯車装置と称する)1は、例えばロボットの旋回胴や腕関節等の旋回部、各種工作機械の旋回部等に減速機として適用されるものである。
【0024】
本実施形態に係る歯車装置1は、クランク軸10の偏心部10a,10bを回転させることによって揺動歯車14,16を揺動回転させ、それによって入力された回転数から減速された回転数の出力を得るように構成されている。これにより、例えばロボットのベース(第1の相手部材)と旋回胴(第2の相手部材)との間で、相対回転を生じさせることができる。
【0025】
図1及び
図2に示すように、歯車装置1は、外筒部2と、内筒部としてのキャリア4と、複数(例えば3つ)のクランク軸10と、揺動歯車(第1揺動歯車14、第2揺動歯車16)と、を備えている。
【0026】
外筒部2は、歯車装置1の外面を構成するものであり、略円筒形状を有している。外筒部2の内周面には、多数のピン溝2bが形成されている。各ピン溝2bは、外筒部2の軸方向に延びるように配置され、軸方向に直交する断面において半円形の断面形状を有している。これらのピン溝2bは、外筒部2の内周面に周方向に等間隔で並んでいる。
【0027】
外筒部2は、多数の内歯ピン3を有している。各内歯ピン3は、ピン溝2bにそれぞれ取り付けられている。具体的に、各内歯ピン3は、対応するピン溝2bにそれぞれ嵌め込まれており、外筒部2の軸方向に延びる姿勢で配置されている。これにより、多数の内歯ピン3は、外筒部2の周方向に沿って等間隔で並んでいる。これらの内歯ピン3には、第1揺動歯車14の第1外歯(歯部)14a及び第2揺動歯車16の第2外歯(歯部)16aが噛み合う。
【0028】
外筒部2には、フランジ部が設けられており、このフランジ部は、例えばロボットのベースに固定するための締結具(ボルト)を挿通するための挿通孔2aが形成されている。
【0029】
キャリア4は、外筒部2と同軸上に配置された状態で外筒部2内に収容されている。キャリア4は、外筒部2に対して同じ軸回りに相対回転する。具体的に、キャリア4は、外筒部2の径方向内側に配置されており、この状態で、軸方向に互いに離間して設けられた一対の主軸受6によって外筒部2に対して相対回転可能に支持されている。なお、外筒部2とキャリア4との間には、環状のシール部材25が設けられている。
【0030】
キャリア4は、基板部4aと複数(例えば3つ)のシャフト部4cとを有する基部5と、この基部5とは別体に形成された端板部7と、を備えている。
【0031】
基板部4aは、外筒部2内において軸方向の一端部近傍に配置されている。この基板部4aの径方向中央部には断面円形の貫通孔4dが設けられている。貫通孔4dの周囲には、複数(例えば3つ)のクランク軸孔4eが周方向に等間隔で設けられている。
【0032】
基板部4aには、キャリア4を例えばロボットの旋回胴に固定するための図略の締結具(ボルト)を締結するための締結孔4gが形成されている。締結孔4gは、基板部4aにおける端板部7とは反対側の端面4hに形成されている。この端面(外端面)4hには、凹部4iが形成されている。凹部4iは、基板部4aの軸心と同心状の円板状に形成された底面4jを有している。底面4jは、キャリア4の回転軸心に垂直な面となっている。なお、締結孔4gは、凹部4iの径方向外側に位置している。
【0033】
端板部7は、基板部4aに対して軸方向に離間して設けられており、外筒部2内において軸方向の他端部近傍に配置されている。端板部7の径方向中央部には断面円形の貫通孔7aが設けられている。貫通孔7aの周囲には、複数(例えば3つ)のクランク軸孔7bが基板部4aの複数のクランク軸孔4eと対応する位置に設けられている。クランク軸孔4eの内径とクランク軸孔7bの内径とは同じ寸法となっている。
【0034】
複数のシャフト部4cは、基板部4aと一体的に設けられており、基板部4aから端板部7側へ直線的に延びている。この複数のシャフト部4cは、周方向に等間隔で配設されている。
【0035】
端板部7は、ボルト9によって基部5に締結されている。すなわち、端板部7にはボルト挿通孔7cが形成され、シャフト部4c(基部5)には、その先端面から軸方向に延びるように締結孔4fが形成されている。そして、端板部7のボルト挿通孔7cに、基部5(基板部4a)と反対側からボルト9が挿入されている。このボルト9は、シャフト部4cの締結孔4fに螺合されている。これにより、基板部4a、シャフト部4c及び端板部7が一体化されている。つまり、端板部7は、基板部4aに着脱可能に結合されている。
【0036】
基部5及び端板部7には、ピン孔22が形成されていて、基部5から端板部7に渡って位置決めピン11がピン孔22に挿入されている。これにより、基部5に対する端板部7の位置が精度良く決められている。
【0037】
端板部7には、基板部4aと反対側の端面(外端面)7dに凹部7eが形成されている。凹部7eは、端板部7の軸心と同心状の円板状に形成された底面7fを有している。底面7fは、キャリア4の回転軸心に垂直な面となっている。なお、クランク軸孔7b、ボルト挿通孔7c及びピン孔22はそれぞれ、凹部7eの底面7fに開口している。
【0038】
複数のクランク軸10は、外筒部2内において中央の貫通孔4d,7aの周囲に等間隔で配置されている。各クランク軸10は、一対のクランク軸受12a,12bによりキャリア4に対して軸回りに回転可能に支持されている。
【0039】
具体的に、各クランク軸10には、軸方向における基板部側の部位に第1クランク軸受12aが取り付けられており、この第1クランク軸受12aは、基板部4aのクランク軸孔4e内に配置されている。第1クランク軸受12aは、基部5(基板部4a)に対してクランク軸10を回転可能に支持する基板側クランク軸受として機能する。また、各クランク軸10には、軸方向における端板部側の部位に第2クランク軸受12bが取り付けられており、この第2クランク軸受12bは、端板部7のクランク軸孔7b内に配置されている。第2クランク軸受12bは、端板部7に対してクランク軸10を回転可能に支持する端板側クランク軸受として機能する。これにより、クランク軸10は、基板部4a及び端板部7に回転可能に支持されている。
【0040】
各クランク軸10は、軸本体10cと、この軸本体10cに一体的に形成された偏心部10a,10bと、を有する。基板部4a側に配置された第1偏心部10aと、端板部7側に配置された第2偏心部10bは、両クランク軸受12a,12bによって支持された部分の間に軸方向に並んで配置されている。第1偏心部10aと第2偏心部10bは、それぞれ円柱形状を有しており、いずれも軸本体10cの軸心に対して偏心した状態で軸本体10cから径方向外側に張り出している。第1偏心部10aと第2偏心部10bは、それぞれ軸心から所定の偏心量で偏心しており、互いに所定角度の位相差を有するように配置されている。
【0041】
軸本体10cは、第1偏心部10aよりも基板部側の第1ジャーナル部10fと、第2偏心部10bよりも端板部側の第2ジャーナル部10gと、第2ジャーナル部10gから軸方向外側に突出した突出部10hと、を有している。
【0042】
第1ジャーナル部10fは円柱状に形成されており、該第1ジャーナル部10fには、第1クランク軸受12aが取り付けられている。また、第2ジャーナル部10gも円柱状に形成されており、該第2ジャーナル部10gには、第2クランク軸受12bが取り付けられている。クランク軸受12a,12bはニードル軸受等、針状ころ又は円柱状ころを有する軸受によって構成されている。第1ジャーナル部10fと第2ジャーナル部10gとは互いに同じ外径を有している。
【0043】
第1ジャーナル部10fの外端面は、軸方向に垂直な面(軸垂直面)10iとして軸本体10cの一方の外端面を構成している。軸垂直面10iは、基板部4aにおける端板部7とは反対側の軸垂直面(凹部4iの底面4j)と面一の状態で配置されている。なお、基板部4aにおいて凹部4iを省略することができる。この場合には、軸垂直面10iは、基板部4aにおける端板部7とは反対側の端面(軸垂直面)4hと面一の状態で配置されていればよい。
【0044】
第2ジャーナル部10gの外端面(基板部4aと反対側の面であって軸方向に垂直な面)は、軸方向に垂直な面(軸垂直面)10jとなっている。軸垂直面10jは、端板部7における基板部4aとは反対側の軸垂直面(凹部7eの底面7f)と面一の状態で配置されている。なお、端板部7において凹部7eを省略することができる。この場合には、軸垂直面10jは、端板部7における基板部4aとは反対側の端面(軸垂直面)7dと面一の状態で配置されていればよい。
【0045】
突出部10hは、軸垂直面10jから軸方向に延出されている。突出部10hには、伝達歯車20を装着できるようにスプライン加工が施されている。伝達歯車20は、図外の入力ギアと噛み合い、該入力ギアを通して入力される回転駆動力をクランク軸10に伝える。
【0046】
第1揺動歯車14は、外筒部2内側の閉空間S内において基板部4a側に配置されており、各クランク軸10の第1偏心部10aに第1ころ軸受18aを介して取り付けられている。第1揺動歯車14は、各クランク軸10が回転して第1偏心部10aが偏心回転すると、この偏心回転に連動して内歯ピン3に噛み合いながら揺動回転する。
【0047】
第1揺動歯車14は、外筒部2の内径よりも少し小さい大きさを有している。第1揺動歯車14は、第1外歯14aと、中央部貫通孔14bと、複数(例えば3つ)の第1偏心部挿通孔14cと、複数(例えば3つ)のシャフト部挿通孔14dとを有している。第1外歯14aは、揺動歯車14の周方向全体に亘って滑らかに連続する波形状を有している。
【0048】
中央部貫通孔14bは、第1揺動歯車14の径方向中央部に設けられている。
【0049】
複数の第1偏心部挿通孔14cは、第1揺動歯車14において中央部貫通孔14bの周囲に周方向に等間隔で設けられている。各第1偏心部挿通孔14cには、第1ころ軸受18aが介装された状態で各クランク軸10の第1偏心部10aがそれぞれ挿通されている。
【0050】
複数のシャフト部挿通孔14dは、第1揺動歯車14において中央部貫通孔14bの周りに周方向に等間隔で設けられている。各シャフト部挿通孔14dは、周方向において、隣り合う第1偏心部挿通孔14c間の位置にそれぞれ配設されている。各シャフト部挿通孔14dには、対応するシャフト部4cが遊びを持った状態で挿通されている。
【0051】
第2揺動歯車16は、外筒部2内側の閉空間S内において端板部7側に配設されており、各クランク軸10の第2偏心部10bに第2ころ軸受18bを介して取り付けられている。第1揺動歯車14と第2揺動歯車16は、第1偏心部10aと第2偏心部10bの位置に対応して軸方向に並んで設けられている。第2揺動歯車16は、各クランク軸10が回転して第2偏心部10bが偏心回転すると、この偏心回転に連動して内歯ピン3に噛み合いながら揺動回転する。
【0052】
第2揺動歯車16は、外筒部2の内径よりも少し小さい大きさを有しており、第1揺動歯車14と同様の構成となっている。すなわち、第2揺動歯車16は、第2外歯16a、中央部貫通孔16b、複数(例えば3つ)の第2偏心部挿通孔16c及び複数(例えば3つ)のシャフト部挿通孔16dを有している。これらは、第1揺動歯車14の第1外歯14a、中央部貫通孔14b、複数の第1偏心部挿通孔14c及び複数のシャフト部挿通孔14dと同様の構造を有している。各第2偏心部挿通孔16cには、第2ころ軸受18bが介装された状態でクランク軸10の第2偏心部10bが挿通されている。
【0053】
歯車装置1は、クランク軸10の軸方向移動を規制する移動規制部30を備えている。移動規制部30は、基板部4aに接触するように配置された基板側規制部31と、端板部7に接触するように配置された端板側規制部32とを有する。基板側規制部31は、基板部4aに対して揺動歯車14,16とは反対側に配置されている。端板側規制部32は、端板部7に対して揺動歯車14,16とは反対側に配置されている。そして、基板側規制部31及び端板側規制部32は、何れもキャリア4の外側に露出するように配置されており、基板部4a及び端板部7の外側からクランク軸10の軸方向移動を規制する。
【0054】
基板側規制部31と端板側規制部32は、同じ構成となっている。したがって、両規制部31,32を共通の部品によって構成することができる。
【0055】
基板側規制部31及び端板側規制部32は同じ形状を有しているので、以下、基板側規制部31の構成について説明する。
図2に示すように、基板側規制部31は、薄い板状に形成された金属製部材によって構成されている。本実施形態では、基板側規制部31が円板状に形成されているが、これに限られない。
【0056】
基板側規制部31には、クランク軸10の突出部10hを挿通可能な第1挿通孔31aと、ボルト35を挿通させる第2挿通孔31bと、中央の第3挿通孔31cと、通油孔31dと、が形成されている。なお、本実施形態では、クランク軸10の突出部10hが端板側に位置しているので、基板側規制部31の第1挿通孔31aに突出部10hが挿通されておらず、端板側規制部32の第1挿通孔32aに突出部10hが挿通されている。また、第3挿通孔31cは省略することができる。
【0057】
ボルト35は、基板側規制部31を基板部4aに固定するための締結具である。このボルト35は、基板部4a及び端板部7を結合するためのボルト9と同じ径の雄ねじ部及び頭部を有している。基板部4aにはボルト35の雄ねじ部が螺合される締結孔4kが形成されている。この締結孔4kは凹部4iの底面4jに開口している。したがって、基板側規制部31は、基板部4aにおける凹部4i内に配置されて底面4jに面接触している。この状態で、基板側規制部31は、ボルト35によって基板部4aに締結されている。すなわち、基板側規制部31(移動規制部30)は基板部4aに対して着脱可能となっている。なお、ボルト35の頭部も凹部4i内に収まっているため、ボルト35の頭部がロボットの旋回胴と干渉することはない。
【0058】
第1挿通孔31aは、複数のクランク軸10に対応するように複数設けられている。第1挿通孔31aは、クランク軸10の位置に対応する位置に形成されている。第1挿通孔31aは、突出部10hを挿入できる一方で第1ジャーナル部10fを挿入できない大きさに形成されている。このため、基板側規制部31には、第1ジャーナル部10fの外端面が当接している。したがって、クランク軸10は、基板側規制部31によって端板部7から基板部4aに向かう方向の移動が規制されている。
【0059】
なお、端板側規制部32の第1挿通孔32aは、突出部10hを挿入できる一方で第2ジャーナル部10gを挿入できない大きさに形成されている。このため、端板側規制部32には、第2ジャーナル部10gの外端面が当接している。したがって、クランク軸10は、端板側規制部32によって基板部4aから端板部7に向かう方向の移動が規制されている。
【0060】
第2挿通孔31bは、ボルト35の位置に対応する位置に形成されている。第2挿通孔31bは、ボルト35の雄ねじ部を挿入できる一方で、ボルト35の頭部を挿入できない大きさに形成されている。
【0061】
端板側規制部32の第2挿通孔32bには、基板部4a及び端板部7を結合するためのボルト9が挿通されている。第2挿通孔32bは、ボルト9の雄ねじ部を挿入できる一方で、ボルト9の頭部を挿入できない大きさに形成されている。このため、ボルト9の頭部が端板側規制部32の一方の面に当接しており、この一方の面は、ボルト9の締結力を受けている。このため、端板側規制部32はボルト9の座金としても機能している。端板側規制部32はボルト9によって端板部7に締結されている。すなわち、端板側規制部32(移動規制部30)は、端板部7に対して着脱可能となっている。なお、端板側規制部32は、端板部7の凹部7e内に配置されて底面7fに面接触しており、この状態で位置決めピン11が挿入されているピン孔を塞いでいる。
【0062】
なお、第2挿通孔32bには、基板部4a及び端板部7を結合するためのボルト9が挿通される構成に限られない。このボルト9とは別個のボルトで、端板側規制部32を固定する構成とし、このボルトが第2挿通孔32bに挿通される構成としてもよい。このボルトは端板側規制部32を端板部7に締結するためだけに用いられ、端板部にはこのボルトを締結するための締結孔が形成される。この場合、端板側規制部32は、第2挿通孔32bを塞がない形状に形成される。
【0063】
通油孔31dは、第1挿通孔31aの周囲に互いに間隔をおいて複数形成されている。この通油孔31dを通して潤滑油を供給することができる。
【0064】
この歯車装置1では、伝達歯車20が回転することによって各クランク軸10が回転すると、偏心部10a,10bに取り付けられた揺動歯車14,16は、偏心部10a,10bの回転に伴って内歯ピン3に噛み合いながら揺動し、これによってキャリア4及び外筒部2が互いに相対的に回転する。これにより、入力された回転数から減速された回転数の出力が得られる。
【0065】
ここで、本実施形態に係る歯車装置1において、クランク軸10に対する移動規制部30の当たり具合を調整する必要がある場合に行う調整作業の手順について説明する。
【0066】
まず、歯車装置1が組上がった後、クランク軸10の動きをチェックする。すなわち、歯車装置1の組立が完成した後で、クランク軸10が軸方向に移動しないか、あるいは軸方向の移動量が想定された以上になっていないか、あるいはクランク軸10の軸垂直面10i,10jと移動規制部30との当たりが強くなり過ぎていないか等をチェックする。
【0067】
そして、クランク軸10の軸方向におけるクランク軸10の移動量が想定された以上となっている場合には、例えば
図3に示すように、シム(スペーサ)36aを使用することができる。この場合には、例えば、ボルト35を基板部4aから外すとともに、基板側規制部31を基板部4aから取り外す。
【0068】
そして、クランク軸10の第1ジャーナル部10fにシム(環状の板部材)36aを装着し、そこに前記基板側規制部31を構成する板部材と同じ形状の板部材からなる規制部本体36bを被せる。これにより、シム36aが第1クランク軸受12aと規制部本体36bとの間に挟み込まれる。この状態で、ボルト35を締結孔4kに螺合させる。これにより、規制部本体36bが基板部4aに固定され、これにより、規制部本体36bは、シム36aを介してクランク軸10を押圧する。この状態で、クランク軸10の軸方向移動は、シム36a及び規制部本体36bによって規制される。すなわち、この場合には、規制部本体36bとシム36aとによって基板側規制部31が構成される。このように、基板側規制部31を基板部4aから取り外すのみでクランク軸10の調整を行うことができ、歯車装置1を、その構成部品毎にばらす必要はない。なお、シム36aは、第1クランク軸受12aと規制部本体36bとの間に挟み込まれる構成に限られるものではない。例えば、シム36aは、揺動歯車14と規制部本体36bとの間に挟み込まれていてもよい。
【0069】
なお、クランク軸10がどの程度軸方向に移動するかにより、それに応じた厚みを有するシムを選定すればよい。
【0070】
図3では、第1ジャーナル部10fに外嵌されるシム36a、すなわち基板部4a側に配置されるシム36aを示しているが、これに限られるものではない。これに代え、又はこれとともに、第2ジャーナル部10gに装着されるシム(図示省略)、すなわち端板部側に配置されるシムを用いるようにしてもよい。この場合には、当該シムと、当該シムを第2クランク軸受12bとの間に挟み込むための規制部本体とによって端板側規制部32が構成されることになる。規制部本体は、ボルト9によって端板部7に固定されることにより、シムを介してクランク軸10を押圧する。なお、この場合には、伝達歯車20がクランク軸10から取り外された状態で作業を行う必要がある。
【0071】
一方、クランク軸10の軸垂直面10i,10jに対する移動規制部30の当たり具合が強くなり過ぎている場合には、
図4に示すように、基板部4aに接触するように配置されるシム(スペーサ)37aを使用することができる。このシム37aは、前記基板側規制部31を構成する板部材と同じ形状の板部材からなる平板状の規制部本体37bと、基板部4aとの間に挟み込まれる。この状態で、ボルト35が締結孔4kに螺合される。これにより、クランク軸10に対する移動規制部30の当たりが強くなり過ぎないように、規制部本体37bによってクランク軸10の軸垂直面10iを押圧することができる。この場合、規制部本体37bとシム37aとによって基板側規制部31が構成される。
【0072】
図4では、基板部4aと規制部本体37bとの間に挟み込まれるシム37aを示しているが、これに限られるものではない。これに代え、又はこれとともに、端板部7と規制部本体(図示省略)との間に挟み込まれるシム(図示省略)、すなわち端板部7側に配置されるシムを用いるようにしてもよい。この場合には、当該シムと、規制部本体とによって端板側規制部32が構成されることになる。規制部本体は、ボルト9によって端板部7に固定されることにより、クランク軸10の軸垂直面10jを押圧することができる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態では、クランク軸10の軸方向移動を規制するための移動規制部30が、基板部4a及び端板部7に対して揺動歯車14,16とは反対側に配置されている。言い換えると、移動規制部30は、基板部4a及び端板部7の間に配置されるのではなく、基板部4a及び端板部7の外側に配置される。このため、クランク軸10の軸移動方向を規制するためのワッシャをキャリア4の基板部4aとクランク軸10の第1偏心部10aとの間に設ける必要がなく、また、端板部7とクランク軸10の第2偏心部10bとの間にもワッシャを設ける必要がない。すなわち、クランク軸10の軸方向に第1揺動歯車14と重なるワッシャが、基板部4aと揺動歯車14,16との間に設けられることがなく、また端板部7と第2揺動歯車16との間にも設けられない。このため、歯車装置1を組み上げた後で、クランク軸10の動きを調整する作業が必要になった場合には、基板部4a及び端板部7の外側に配置された移動規制部30を交換したり、基板部4a又は端板部7と規制部本体36bとの間にシム36aをかませたりすることで対処することができる。したがって、歯車装置1を各部品毎にばらさなくても、クランク軸10の動きを調整することが可能となる。
【0074】
また本実施形態では、基板側規制部31が基板部4aに取り付けられた状態では、基板側規制部31は、クランク軸10の第1ジャーナル部10fに当接する。したがって、クランク軸10が基板部4aの外側へ向かう方向のクランク軸10の移動が基板側規制部31によって規制される。また、端板側規制部32が端板部7に取り付けられた状態では、端板側規制部32は、クランク軸10の第2ジャーナル部10gに当接する。したがって、クランク軸10が端板部7の外側へ向かう方向のクランク軸10の移動が端板側規制部32によって規制される。そして、基板部4a及び端板部7間の結合が解除された状態では、基板側規制部31が基板部4aから取り外されているか否かに拘わらず、クランク軸10を取り外すことができる。
【0075】
また本実施形態では、基板側規制部31と前記端板側規制部32とが同じ形状に形成されているため、基板側規制部31と端板側規制部32とを別部品として管理する必要がない。したがって、部品として管理される種類を低減することができる。
【0076】
また本実施形態では、端板側規制部32が、基板部4a及び端板部7を結合するボルト9の座金としても機能する。このため、ボルト9の頭部が押圧される部分が陥没したり、ボルト9の緩みを防止することができる。
【0077】
また本実施形態では、端板側規制部32が位置決めピン11の脱落防止部材としても機能するため、位置決めピン11によって、基板部4aに対する端板部7の位置を精度良く合わせることができるばかりでなく、端板側規制部32によって位置決めピン11の脱落防止がなされる。したがって、位置決めピン11が脱落して、ピンが歯車に噛み込むといった不具合が発生してしまう、という事態を回避することができる。
【0078】
また本実施形態では、移動規制部30が全てのクランク軸10の移動を規制する部材として構成されているため、クランク軸10毎に別個に移動規制部30を設ける必要がない。このため、部品点数が多くなることを抑制することができる。
【0079】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、基板側規制部31及び端板側規制部32を共通の部材によって構成したが、基板側規制部31及び端板側規制部32を共通の部材として形成しなくてもよい。この場合、基板側規制部31では、突出部10hを挿通させる挿通孔が省略されていてもよい。また、基板側規制部31と端板側規制部32とにおいて、ボルト9,35を挿通させる第1挿通孔31a,32aの位置や大きさが異なっていてもよい。
【0080】
前記実施形態では、基板側規制部31が基板部4aに対してボルト35によって着脱可能であり、かつ端板側規制部32が端板部7に対してボルト9によって着脱可能な構成となっているが、これに限られない。基板側規制部31及び端板側規制部32の何れか一方のみが着脱可能であり、他方が溶接等によって着脱できない構成となっていてもよい。
【0081】
図5に示すように、基板側規制部31は基板部4aの凹部4iに圧入されることによって基板部4aに固定されていてもよい。また、端板側規制部32は、端板部7の凹部7eに圧入されることによって、端板部7に固定されていてもよい。また、基板側規制部31は、基板部4aに接着剤によって接着固定されていてもよい。また、端板側規制部32は、端板部7に接着剤によって接着固定されていてもよい。
【0082】
前記実施形態では、クランク軸10が端板部7側に突出する突出部10hを有し、端板部7側に伝達歯車20が配置された構成となっているが、これに限られない。クランク軸10の突出部10hが基板部4a側に配置され、伝達歯車20が基板部4a側に配置された構成であってもよい。
【0083】
前記実施形態では、端板部7にクランク軸孔7bが形成された例について説明したが、端板部7のクランク軸孔7bが省略され、クランク軸10が基板部4aのクランク軸孔4eで片持ち支持される構成としてもよい。なお、この場合は、クランク軸10の突出部10h、伝達歯車18は基板部4a側に配置される。
【0084】
前記実施形態では、2つの揺動歯車14,16が設けられた構成としたが、これに限られるものではない。例えば、1つの揺動歯車が設けられる構成、又は3つ以上の揺動歯車が設けられる構成であってもよい。
【0085】
前記実施形態では、複数のクランク軸10が中央の貫通孔4d,7aの周囲に配設された構成としたがこれに限られるものではない。例えば、1つのクランク軸10がキャリア4の中央部に配設されたセンタークランク式であってもよい。
【0086】
前記実施形態では、キャリア4を旋回胴に締結して旋回するようにし、外筒部2をロボットのベースに固定して不動にしている例が示されているが、その逆の配置でもよい。すなわち、外筒部2が旋回胴に締結され、キャリア4がロボットのベースに締結されていてもよい。この場合には、外筒部2がキャリア4に対して相対回転することにより、ロボットの旋回胴は、ベースに対して旋回することになる。