特許第6247047号(P6247047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247047
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   C03C27/12 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-173831(P2013-173831)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-40165(P2015-40165A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】伊豆 康之
【審査官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−302289(JP,A)
【文献】 国際公開第2000/018698(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/004162(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/00−29/00
G02B27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタールと、可塑剤と、炭素数が1〜5のカルボン酸のカリウム塩と、耐湿性向上剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルを含む、第1の樹脂層を有することを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
炭素数が1〜5のカルボン酸のカリウム塩は、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、及び、プロピオン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
第1の樹脂層中のカリウム元素の含有量が300ppm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
第1の樹脂層がマグネシウム元素を含み、前記マグネシウム元素の含有量が80ppm以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されていることを特徴とする合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性を制御でき、かつ耐湿性に優れる合わせガラス用中間膜に関する。また、本発明は、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車等の車両のフロントガラス、サイドガラス、リアガラスや、航空機、建築物等の窓ガラス等として広く使用されている。合わせガラスとして、少なくとも一対のガラス間に、例えば、液状可塑剤とポリビニルアセタールとを含む合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させた合わせガラス等が挙げられる。
【0003】
例えば、自動車等の車両のフロントガラスに合わせガラスを使用するためには、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性を適切に制御することが必要である。ポリビニルアセタールと可塑剤とを含む合わせガラス用中間膜はガラスに対する接着力が強すぎる傾向にある。ガラスに対する合わせガラス用中間膜の接着力が強い合わせガラスに、人体等が衝突すると、合わせガラスが人体等の衝突による衝撃を吸収することが困難になる。一方で、ガラスに対する合わせガラス用中間膜の接着力が弱い合わせガラスに、人体等が衝突すると、人体等が合わせガラスを容易に貫通してしまう。このため、通常、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性を制御するために、接着力調整剤を使用している。
【0004】
特許文献1には、マトリックス樹脂と、液状可塑剤と、20〜120ppmのアルカリ金属と、15〜60ppmのマグネシウムとを含む合わせガラス用中間膜が開示されている。特許文献1には、アルカリ金属を配合する態様としてヘキサン酸カリウム等が記載され、マグネシウムを配合する態様としてヘキサン酸マグネシウム等が記載されている。ヘキサン酸カリウム等のアルカリ金属塩及びヘキサン酸マグネシウム等のマグネシウム塩を併用することで、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性を調整しているが、単独の金属塩では接着性を調整できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第06/095770号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、接着性を制御でき、かつ耐湿性に優れる合わせガラス用中間膜を提供することを目的とする。また、本発明は、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリビニルアセタールと、可塑剤と、炭素数が1〜5のカルボン酸のカリウム塩と、耐湿性向上剤とを含む、第1の樹脂層を有する合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、単独の金属塩を用いて、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性を適切に制御することを検討したところ、特定のカルボン酸のカリウム塩を含む合わせガラス用中間膜はガラスに対する接着性を容易に調整できることを見出した。しかしながら、特定のカルボン酸のカリウム塩を含む合わせガラス用中間膜は、耐湿性が低下してしまうという問題がある。そこで、本発明者らは、ポリビニルアセタールと、可塑剤と、特定のカルボン酸の金属塩と、耐湿性向上剤とを用いることで、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性を制御でき、かつ耐湿性に優れる合わせガラス用中間膜が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタールと、可塑剤と、炭素数が1〜5のカルボン酸のカリウム塩と、耐湿性向上剤とを含む、第1の樹脂層を有する合わせガラス用中間膜である。ポリビニルアセタールと、可塑剤と、炭素数が1〜5のカルボン酸のカリウム塩と、耐湿性向上剤とを用いることにより、接着性を制御でき、かつ耐湿性に優れる合わせガラス用中間膜が得られる。
【0010】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記第1の樹脂層のみを含む単層中間膜であってもよく、上記第1の樹脂層と上記第1の樹脂層の一方の面に配置されている第2の樹脂層とを有する多層中間膜であってもよい。本発明の合わせガラス用中間膜が多層中間膜である場合、上記第1の樹脂層は多層中間膜の最外層として配置されていることが好ましい。上記第2の樹脂層はポリビニルアセタールを含むことが好ましい。第2の樹脂層は上記第1の樹脂層の一方の面に直接積層されていてもよい。
【0011】
上記第1の樹脂層はポリビニルアセタールを含む。
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタールであれば特に限定されないが、ポリビニルブチラールが好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタールを併用してもよい。
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
【0012】
上記ポリビニルアセタールは、水酸基量の好ましい下限が15モル%、好ましい上限が35モル%である。水酸基量が15モル%以上であると、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。水酸基量が35モル%以下であると、得られる合わせガラス用中間膜の取り扱いが容易になる。
なお、上記アセタール化度及び水酸基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0013】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度70〜99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は500、好ましい上限は4000である。上記ポリビニルアルコールの重合度が500以上であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記ポリビニルアルコールの重合度が4000以下であると、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は3600である。
【0014】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記第1の樹脂層は、可塑剤を含む。上記可塑剤は特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0016】
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコールジカプロン酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコールジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキシル酸エステル等が好適である。
【0017】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
【0018】
上記有機エステル可塑剤は特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物、アジピン酸エステル、炭素数4〜9のアルキルアルコール及び炭素数4〜9の環状アルコールから作製された混合型アジピン酸エステル、アジピン酸ヘキシル等の炭素数6〜8のアジピン酸エステル等が挙げられる。
【0019】
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0020】
上記可塑剤のなかでも、ジヘキシルアジペート(DHA)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(4GH)、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(4G7)及びトリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(3G7)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
更に、上記可塑剤として、加水分解を起こしにくいため、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)を含有することが好ましく、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を含有することがより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含有することが更に好ましい。
【0022】
上記第1の樹脂層における上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する好ましい下限が30重量部、好ましい上限が70重量部である。上記可塑剤の含有量が30重量部以上であると、合わせガラス用中間膜の溶融粘度が低くなるため、合わせガラス用中間膜を容易に成形できる。上記可塑剤の含有量が70重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は35重量部、より好ましい上限は63重量部である。
【0023】
上記第1の樹脂層は炭素数が1〜5のカルボン酸のカリウム塩を含む。
上記カリウム塩を含むことにより、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着力を容易に制御することができる。上記炭素数が1〜5のカルボン酸は特に限定されないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−ブタン酸、i−ブタン酸、n−ペンタン酸、i−ペンタン酸、ビバル酸又はヒドロアンゲリカ酸等が挙げられる。合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性をより一層容易に制御することができることから、上記炭素数が1〜5のカルボン酸は、ギ酸、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、ギ酸又は酢酸が更に好ましく、ギ酸が特に好ましい。上記カリウム塩としては特に限定されないが、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、n−ブタン酸カリウム、i−ブタン酸カリウム、n−ペンタン酸カリウム、i−ペンタン酸カリウム、ビバル酸カリウム又はヒドロアンゲリカ酸カリウム等が挙げられる。合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性をより一層容易に制御することができることから、上記カリウム塩は、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、及び、プロピオン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、ギ酸カリウム又は酢酸カリウムがより好ましく、ギ酸カリウムが更に好ましい。
【0024】
上記カリウム塩の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する好ましい下限が0.001重量部、好ましい上限が0.5重量部である。上記カリウム塩の含有量が0.001重量部以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記カリウム塩の含有量が0.5重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記カリウム塩の含有量のより好ましい下限は0.015重量部、より好ましい上限は0.25重量部である。
合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性をより一層容易に制御することができることから、上記第1の樹脂層中のカリウム元素の含有量は300ppm以下であることが好ましく、250ppm以下であることがより好ましく、200ppm以下であることが更に好ましく、150ppm以下であることが特に好ましい。上記カリウム元素は、カリウム塩に由来するカリウムとして含んでもよく、ポリビニルアセタールを合成する際に用いる中和剤に由来するカリウムとして含んでもよい。上記第1の樹脂層中のカリウム元素の含有量の好ましい下限は30ppm、より好ましい下限は80ppm、更に好ましい下限は100ppm、特に好ましい下限は120ppmである。
【0025】
上記第1の樹脂層は、本発明の課題の解決を阻害しない範囲であれば、マグネシウム塩を含んでもよい。上記マグネシウム塩を含むことにより、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着力をより一層容易に制御することができる。上記マグネシウム塩は特に限定されないが、炭素数2〜16の有機酸のマグネシウム塩であることが好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩であることがより好ましい。上記炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0026】
上記マグネシウム塩の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する好ましい下限が0.02重量部、好ましい上限が0.5重量部である。上記マグネシウム塩の含有量が0.02重量部以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記マグネシウム塩の含有量が0.5重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記マグネシウム塩の含有量のより好ましい下限は0.03重量部、より好ましい上限は0.2重量部である。
本発明の合わせガラス用中間膜の接着性をより一層容易に制御できることから、上記第1の樹脂層中のマグネシウム元素の含有量は80ppm以下であることが好ましい。上記マグネシウム元素は、マグネシウム塩に由来するマグネシウムとして含んでもよく、ポリビニルアセタールを合成する際に用いる中和剤に由来するマグネシウムとして含んでもよい。上記第1の樹脂層中のマグネシウム元素の含有量の好ましい下限は20ppm、より好ましい上限は75ppm、より好ましい下限は30ppm、更に好ましい上限は70ppmである。なお、上記カリウム元素や上記マグネシウム元素の含有量は、ICP発光分析装置(島津製作所社製、「ICPE−9000」)により測定することができる。
【0027】
上記第1の樹脂層は、耐湿性向上剤を含む。
合わせガラス用中間膜とガラスとの接着力を調整するために、接着力調整剤として、炭素数が1〜5のカルボン酸のカリウム塩を含有させたところ、接着力を容易に調整することができる。しかし、炭素数が1〜5のカルボン酸のカリウム塩を含有する第1の樹脂層を有する合わせガラス用中間膜は、耐湿性が低下してしまうという問題がある。そのため、上記第1の樹脂層は、耐湿性向上剤を含有する。
上記耐湿性向上剤として、上記カリウム塩との相溶性に優れる化合物や上記カリウム塩を捕捉する化合物を用いることにより、上記カリウム塩の周辺に水が集まりにくくなり、耐湿性が向上すると考えられる。
【0028】
上記カリウム塩との相溶性に優れる化合物としては、例えば、アニオン性の官能基を有する化合物等が挙げられる。
上記アニオン性の官能基としては、リン酸(エステル)基、カルボン酸(エステル)基、スルホン酸基等が挙げられる。なかでも耐湿性に優れることから、リン酸(エステル)基であることが好ましい。
上記アニオン性の官能基を有する化合物として、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
【0029】
上記カリウム塩を捕捉する化合物としては、例えば、上記非イオン性の官能基を有する化合物等が挙げられる。
上記非イオン性の官能基としては、例えば、エーテル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。
エーテル基を有する化合物としては、カリウム塩を捕捉する効果に優れることから、クラウンエーテルが好ましい。
【0030】
上記耐湿性向上剤としては、具体的には例えば、上記アニオン性の官能基を有する化合物として下記一般式(1)で表されるリン酸エステル、カルボン酸基を有する分子量100以上の化合物、上記カリウム塩を捕捉する化合物として18−クラウンエーテル−6等が挙げられる。これらの耐湿性向上剤は、後述する分散剤としても機能する。
【0031】
【化1】
【0032】
上記一般式(1)中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表し、mは1〜300、nは1〜3である。
【0033】
上記ポリビニルアセタール100重量部に対する上記耐湿性向上剤の含有量の好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は5重量部である。上記耐湿性向上剤の含有量がこの範囲内であると、得られる合わせガラス用中間膜の耐湿性をより一層向上させることができる。上記耐湿性向上剤の含有量のより好ましい上限は1重量部である。
【0034】
上記第1の樹脂層は、更に、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。上記第1の樹脂層が紫外線吸収剤を含有することにより、上記第1の樹脂層の耐光性が高くなる。なお、上記第1の樹脂層は紫外線吸収剤を含有していなくともよい。上記第1の樹脂層中における上記紫外線吸収剤の、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する含有量の好ましい上限は1重量部、より好ましい上限は0.5重量部、更に好ましい上限は0.2重量部、特に好ましい上限は0.1重量部である。
【0035】
上記紫外線吸収剤は、例えば、マロン酸エステル構造を有する化合物、シュウ酸アニリド構造を有する化合物、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、ベンゾフェノン構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、ベンゾエート構造を有する化合物、ヒンダードアミン構造を有する化合物等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0036】
上記第1の樹脂層は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、青色顔料、青色染料、緑色顔料、緑色染料等の添加剤を含有してもよい。
【0037】
優れた耐光性を得ることができることから、上記第1の樹脂層は、酸化防止剤を含有することが好ましい。上記酸化防止剤は特に限定されず、フェノール構造を有する酸化防止剤、硫黄を含む酸化防止剤及びリンを含む酸化防止剤等が挙げられる。
上記フェノール構造を有する酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記フェノール構造を有する酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及びビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。上記酸化防止剤は一種のみでもよく、二種以上を併用しても良い。
【0038】
上記第1の樹脂層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は100μm、好ましい上限は2000μmである。上記第1の樹脂層の厚さがこの範囲内であると、得られる合わせガラスの耐貫通性をより一層高くすることができる。上記第1の樹脂層の厚さのより好ましい下限は350μm、より好ましい上限は1000μmである。
【0039】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記第1の樹脂層の一方の面に、第2の樹脂層が積層されていてもよく、2つの第1の樹脂層によって第2の樹脂層が挟持された3層中間膜であることが好ましい。第2の樹脂層はポリビニルアセタールを含むことが好ましく、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含むことがより好ましい。更に、上記第1、2の樹脂層以外に、他の層が積層されていてもよい。上記他の層として、ポリエチレンテレフタレートやポリビニルアセタール等の熱可塑性樹脂を含む層が挙げられる。また、上記他の層は紫外線吸収剤を含有する紫外線遮断層であってもよい。上記紫外線遮断層に用いる紫外線吸収剤として、上述の第1の樹脂層に用いる紫外線吸収剤を用いることができる。
【0040】
第2の樹脂層に含まれるポリビニルアセタールとして、上記第1の樹脂層に含まれるポリビニルアセタールを用いることができる。第2の樹脂層に含まれるポリビニルアセタールと上記第1の樹脂層に含まれるポリビニルアセタールとは同一であってもよく、異なっていてもよい。第2の樹脂層に含まれる可塑剤は、上記第1の樹脂層に含まれる可塑剤と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
本発明の合わせガラス用中間膜に遮熱性が要求される場合には、上記第1、2の樹脂層のいずれか1層、又は、すべての層に熱線吸収剤を含有させてもよい。あるいは、上記第1、2の樹脂層以外に、更に、熱線吸収剤を含有する熱線遮蔽層を積層してもよい。
【0042】
上記熱線吸収剤は、赤外線を遮蔽する性能を有すれば特に限定されないが、錫ドープ酸化インジウム(ITO)粒子、アンチモンドープ酸化錫(ATO)粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)粒子、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)粒子、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子、6ホウ化ランタン粒子及び6ホウ化セリウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。
【0043】
本発明の合わせガラス用中間膜は、遮音性能を向上させる目的で、更に、遮音層を有してもよい。上記第1、2の樹脂層のいずれか1層に遮音性を付与し、遮音層としてもよく、上記第1、2の樹脂層以外に、更に、遮音層を積層してもよい。
上記遮音層は、例えば、上記ポリビニルアセタール100重量部に対して上記可塑剤を50〜80重量部含む層等が挙げられる。上記遮音層はポリビニルアセタールを含むことが好ましく、ポリビニルブチラールを含むことがより好ましい。上記遮音層に含まれる上記ポリビニルアセタールは、水酸基量が20〜28モル%の範囲内であることが好ましい。上記遮音層に含まれる上記ポリビニルアセタールは、アセチル基量が8〜30モル%であるポリビニルアセタールA、アセチル基量が0モル%を超え5モル%未満、かつアセタール化度が70〜85モル%であるポリビニルアセタールB、又は、アセチル基量が5モル%以上8モル%未満、かつアセタール化度が65〜80モル%であるポリビニルアセタールCであってもよい。
【0044】
本発明の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されている合わせガラスもまた、本発明の1つである。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層が形成された紫外線遮蔽ガラスも用いることができる。更に、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、本発明の合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、接着性を制御でき、かつ耐湿性に優れる合わせガラス用中間膜を提供することができる。また、本発明によれば、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されない。
【0047】
(実施例1)
(1)第1の樹脂層を形成する樹脂組成物
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部に、炭素数1〜5のカルボン酸のカリウム塩として、ギ酸カリウム0.045重量部と、耐湿性向上剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬社製、「プライサーフA208B」)0.13重量部を加え、可塑剤溶液を調製した。得られた可塑剤溶液の全量と、重合度が1700であるポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量0.9モル%、水酸基量30.6モル%、ブチラール化度68.5モル%)100重量部とをミキシングロールで充分に混練することにより、第1の樹脂層を形成する樹脂組成物を調製した。
【0048】
(2)合わせガラス用中間膜の製造
第1の樹脂層を形成する樹脂組成物を、押出機を用いて押出し、合わせガラス用中間膜(縦30cm×横15cm)を得た。得られた合わせガラス用中間膜(第1の樹脂層)の厚みは、760μmであった。
【0049】
(3)合わせガラスの製造
得られた合わせガラス用中間膜を、縦30cm×横15cmの一対のクリアガラス(厚み2.5mm)の間に積層し、積層体を得た。得られた積層体を、真空ラミネーターにて90℃下、30分保持しつつ真空プレスを行い圧着した。圧着後140℃、14MPaの条件でオートクレーブを用いて20分間圧着を行い、合わせガラスを得た。
【0050】
実施例2、3、6〜8、参考例4、5、9、10、比較例1、2)
表1の組成に変更したこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0051】
(評価)
実施例、参考例及び比較例で得られた各合わせガラスについて、以下の方法で評価を行った。結果を表1に示した。
【0052】
(1)接着性
(合わせガラス用中間膜のパンメル値の測定)
得られた合わせガラスを−18℃±0.6℃の温度の環境下に16時間静置し、この合わせガラスの中央部(縦150mm×横150mmの部分)を頭部が0.45kgのハンマーで打って、ガラスの粒径が6mm以下になるまで粉砕し、ガラスが部分剥離した後の膜の露出度を測定し、表2によりパンメル値を求めた。
【0053】
(2)耐湿性
得られた合わせガラスを50℃、湿度95%RHの環境下に8週間静置した後、合わせガラスの各周辺の中央部分からの白化距離をそれぞれ測定した。合わせガラスの各周辺の中央部分からの白化距離のうち、白化距離の最大値を表1に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、接着性を制御でき、かつ耐湿性に優れる合わせガラス用中間膜を提供することができる。また、本発明によれば、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラスを提供することができる。